説明

電力機器の電圧測定装置

【課題】低電圧側コンデンサ回路の取り替え作業や、コンデンサの追加のための装着作業が不要である電力機器の電圧測定装置を提供する。
【解決手段】電圧測定装置20は、電圧補整用の複数の調整コンデンサを含む調整回路60を備える。調整回路60は、複数の調整コンデンサのうちの1つ、又は2つ以上の組合せからなる合成コンデンサが、第2コンデンサ回路25と並列に接続可能であるジャンパ用の端子を備えるとともに、該端子間を接続するジャンパソケットを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力機器の電圧測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電力機器に搭載され、配電線の相電圧を検出する電圧測定装置として、特許文献1が知られている。特許文献1の電圧測定装置は、コンデンサ分圧方式で電圧測定を行うようにされており、具体的には、高電圧側コンデンサと低電圧側コンデンサとを互いに直列に接続したコンデンサ直列回路が用いられている。そして、相電圧はこのコンデンサ直列回路の両端に入力され、高電圧側コンデンサの静電容量と低電圧側コンデンサの静電容量との比に応じて分圧されるが、相電圧の検出は、低電圧側コンデンサに分圧された分圧電圧に基づいて行われる。
【0003】
図1は、コンデンサ分圧方式の電圧測定装置に含まれる一対のコンデンサ回路100,200の直列回路を示している。なお、図1では、説明の便宜上、一相分の電圧測定を行う回路分のみを示している。ここで、以下、コンデンサ回路100は、高電圧側コンデンサ回路といい、コンデンサ回路200を、低電圧側コンデンサ回路という。
【0004】
同図において、該直列回路の両端子のうち、一方の端子は、一相の配電線Lに対して接続される入力端子T100とされ、他方の端子は接地されるとともに、第1出力端子T110とされている。又、高電圧側コンデンサ回路100と、低電圧側コンデンサ回路200の接続点は、第2出力端子T120に接続されている。
【0005】
配電線Lの電圧(相電圧)を、Vinとすると、第1出力端子T110と第2出力端子T120出力端子間の分圧出力Voutは、
Vout = {Ca/(Ca+Cb)}Vin
となる。なお、Caは高電圧側コンデンサ回路100の静電容量であり、Cbは低電圧側コンデンサ回路200の静電容量である。
【0006】
又、分圧比は、下記の通りである。
分圧比=Ca/(Ca+Cb)
【特許文献1】特許第3632920号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記電圧測定を精度よく行うためには、コンデンサの静電容量を精度よく調整する必要がある。
従来、分圧出力Voutを目標の値とするために、作業者は、高電圧側コンデンサ回路100と低電圧側コンデンサ回路200からなる直列回路を実際に開閉器等の電力機器に装着した後、分圧出力Voutを測定するようにしている。そして、測定値が目標値に達しない場合には、作業者は測定値が目標値になるように低電圧側コンデンサ回路200を取り替えたり、或いは、静電容量の小さなコンデンサを低電圧側コンデンサ回路200に並列に装着したりして対応している。この低電圧側コンデンサ回路200の取り替えや、或いは静電容量の小さなコンデンサの装着を行う必要がある。
【0008】
このように、測定値が目標値に達しない理由は、低電圧側コンデンサ回路200は回路基板に実装される場合が多く、高電圧側コンデンサ回路100と低電圧側コンデンサ回路200を接続するリード線の静電容量や回路基板の静電容量等の機器固有の静電容量が低電圧側コンデンサ回路200と並列に接続されるためである。このため、微少ながら、目的の分圧比に対して実際の分圧比には、ずれが生ずる。
【0009】
上記のように、従来は、分圧比のずれを解消するために、低電圧側コンデンサ回路200の取り替えや、低電圧側コンデンサ回路200に対して、静電容量の小さなコンデンサを並列に装着する作業が必要である問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、低電圧側コンデンサ回路の取り替え作業や、コンデンサの追加のための装着作業が不要である電力機器の電圧測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、一対のコンデンサ回路を直列接続し、一方のコンデンサ回路の分圧出力により相電圧を測定可能にした電力機器の電圧測定装置において、電圧補整用の複数の調整コンデンサを含む調整回路を備え、前記調整回路には、前記複数の調整コンデンサの組合せからなる合成コンデンサが、前記一方のコンデンサ回路と並列に接続可能である接続端子を備えるとともに、接続端子間を接続する接続手段を備えたことを特徴とする電力機器の電圧測定装置を要旨とするものである。なお、コンデンサの組合せとは、コンデンサの並列接続や、コンデンサの直列接続を含む趣旨である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記調整コンデンサは、温度補整用コンデンサを含むことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2において、前記温度補整用コンデンサは、ポリエステルフィルムコンデンサであることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1において、前記調整コンデンサはセラミックコンデンサであることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項において、前記接続手段は、ジャンパ接続可能なジャンパソケットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、複数の調整コンデンサの組合せからなる合成コンデンサが、一方のコンデンサ回路と並列に接続可能である端子を備えているため、仮接続において、相電圧を測定するコンデンサ回路の出力電圧を測定して基準電圧と比較し、基準電圧に合わない場合は、その接続を変して、基準電圧にあったところの接続端子を本接続する。このことにより、電力機器に接続される相電圧の計測を精度よく測定できる。なお、基準電圧にあったとは、完全に基準電圧と一致する場合と、許容精度範囲内にある場合の両者の場合を含む趣旨である。そして、請求項1によれば、低電圧側コンデンサ回路の取り替え作業や、コンデンサの追加のための装着作業が不要となる効果がある。
【0015】
請求項2の発明によれば、温度補整用コンデンサが調整コンデンサに含まれることにより、分圧比の温度変化率を小さくでき、このことにより、電力機器に接続される相電圧の計測を精度よく測定できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、温度補整用コンデンサとして、ポリエステルフィルムコンデンサを使用することにより、請求項2の効果を容易に実現できる。
請求項4の発明によれば、調整コンデンサをセラミックコンデンサにすることにより、請求項1の効果を容易に実現できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、接続手段をジャンパソケットにすることにより、容易に調整コンデンサの仮接続と本接続ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を電力機器としての開閉器の電圧測定装置に具体化した一実施形態を図1〜4を参照して説明する。
図3に示すように開閉器10には、配電線LのU,V,W相毎に設けられるとともに各相の配電線Lの電力伝送をオンオフ可能にされた開閉部10aと、各相の配電線Lの電圧を測定する電圧測定装置20を備えている。
【0019】
図4に示すように、電圧測定装置20には、U相、V相及びW相の配電線Lの電圧Vu、Vv、Vwを検出するための電圧検出回路21〜23を備えている。
又、開閉器10には、制御装置30が接続され、該制御装置30には、電圧測定装置20の電圧測定結果に基づいて、信号処理する信号処理部26と前記開閉部10aを開閉制御する制御部27とを備えている。
【0020】
電圧検出回路21〜23は同一構成であるため、以下では電圧検出回路21の構成について代表的に説明する。
電圧検出回路21は、配電線LのU相の電圧Vuを検出するにあたり、その入力端子T10がU相線に接続されている。もう1つの入力端子T20は図示しない中性線を介して接地されており、U相の電圧Vuは入力端子T10,T20間に入力される。
【0021】
なお、電圧検出回路22、23についても同様であって、配電線LのV相、W相の電圧Vv、Vwが、それぞれ、電圧検出回路22、23に入力可能にされている。
図2,図4に示すように、電圧検出回路21は、第1コンデンサ回路24と、第2コンデンサ回路25の直列回路、及び第2コンデンサ回路25に並列接続される調整回路60からなる。本実施形態では、第1コンデンサ回路24が高電圧側コンデンサ回路に相当し、第2コンデンサ回路25が低電圧側コンデンサ回路に相当する。本実施形態では、第1コンデンサ回路24は単体のコンデンサ51から構成されている。前記コンデンサ51としては、例えば、セラミックコンデンサが用いられる。
【0022】
第2コンデンサ回路25は、コンデンサ52を含んでいる。なお、図4では、説明の便宜上、調整コンデンサには53の符号を付すとともに、端子J1〜J3は省略している。コンデンサ52は、単体のコンデンサからなり、例えば、セラミックコンデンサから構成されている。又、コンデンサ52の静電容量C52と、コンデンサ51の静電容量C51とは、C52>>C51の大小関係を有する。
【0023】
前記第1コンデンサ回路24と第2コンデンサ回路25は、互いに直列に接続されており、すなわち、コンデンサ51とコンデンサ52とは互いに直列に接続されている。第1、第2コンデンサ回路24、25の直列回路は、両端が入力端子T10、T20に接続されている。すなわち、この直列回路の一端は入力端子T10に接続され、直列回路の他端がもう1つの入力端子T20に接続されている。
【0024】
又、コンデンサ51とコンデンサ52との接続点は出力端子T30に接続されている。出力端子T40は、入力端子T20とともに前記直列回路の他端に接続されている。
調整回路60を構成している各調整コンデンサ53a,53b,53cは、図2に示すように、コンデンサ52に対してジャンパ用の端子J1〜J3を介してそれぞれ単独で、或いはいずれか2つを組み合わせて、或いは全てを並列接続可能に設けられている。すなわち、各調整コンデンサ53a,53b,53cにおいて、出力端子T40側の端子には、ジャンパ用の端子J1〜J3が設けられている。ジャンパ用の端子J1〜J3は、接続端子に相当する。
【0025】
本実施形態では、ジャンパ用の端子J1〜J3は、ジャンパピンが設けられた一対の端子であり、該端子に対して着脱自在に設けられたジャンパソケットJSにより、短絡可能である。前記ジャンパソケットJSは接続手段に相当する。
【0026】
前記調整コンデンサ53a,53b,53cは、電圧補整用のコンデンサであり、それぞれ異なる静電容量を有するとともにその静電容量C53a,C53b,C53cは、コンデンサ52の静電容量C52よりも、小さな値の静電容量を有している。
【0027】
すなわち、
C52>>C53a,C53b,C53c
である。
【0028】
ジャンパ用の端子J1〜J3のいずれか1つがジャンパソケットJSにて短絡されることにより、1つの調整コンデンサが、電圧調整のために使用される。又、ジャンパ用の端子J1〜J3のいずれか2つ、或いは全てが前記ジャンパソケットJSにて短絡されることにより、電圧調整のための合成コンデンサが構成される。このように、調整回路60は、前記調整コンデンサ53a,53b,53cや、ジャンパ用の端子J1〜J3を含み、各調整コンデンサ53a,53b,53cが、コンデンサ52に対して並列回路を構成し得る回路とされている。
【0029】
なお、図2、及び図4において、コンデンサ52に対して並列に接続されているCxは、コンデンサ52と調整コンデンサ53を接続するリード線(図示しない)の静電容量や、前記各種コンデンサが搭載される回路基板(図示しない)の静電容量等を含む電力機器固有の静電容量を示している。
【0030】
前記電圧検出回路21の出力端子T30、T40は信号処理部26に接続されており、出力端子T30,T40間の電圧V1が信号処理部26に供給されるようにされている。
この電圧V1は、コンデンサ51、コンデンサ52、調整コンデンサ53、及び電力機器固有の静電容量Cxの下記の分圧比に基づいて得られる。電力機器固有の静電容量Cxは、前記各種コンデンサ(調整コンデンサを含む)及び各種電気回路を搭載している回路基板や、出力コネクタや、或いはケーブル(すなわち、リード線)等に起因する静電容量である。
【0031】
分圧比={C51/(C51+C52+C53+Cx)} …(1)
すなわち、電圧V1は、下記の式(2)に基づいて得られる電圧である。
V1= {C51/(C51+C52+C53+Cx)}Vu …(2)
なお、C53は調整コンデンサ53の静電容量(単体の調整コンデンサの静電容量又は前記合成コンデンサの容量を含む)である。なお、調整コンデンサ53において、ジャンパ用の端子J1〜J3のいずれもが、短絡されていない場合には、静電容量C53は0である。
【0032】
他の電圧検出回路22、23についても同様に配電線LのV相、W相の電圧Vv、Vwが印加され、電圧検出回路22、23からは、それに応じて検出された値である電圧V2、V3が信号処理部26に供給される。信号処理部26は、電圧検出回路21〜23からの電圧V1〜V3に基づいて電圧検出信号を制御部27に出力する。なお、信号処理部26は、アナログ回路やデジタル回路等により構成されている。制御部27は、電圧検出信号に基づいて、開閉部10aを開閉制御する。
【0033】
さて、上記のように構成された電圧測定装置20の作用を説明する。
開閉器10の電圧測定装置20においては、電力機器固有の静電容量Cxがあるために、第1コンデンサ回路24と第2コンデンサ回路25の分圧比にずれが生ずる。この分圧比のずれは、出力電圧値が、静電容量Cxがない場合に比較して、小さい値となる。
【0034】
そのために、この分圧比のずれを、調整コンデンサ53a,53b,53cを使用して修正、すなわち、調整する。
具体的には、まず、コンデンサ52は電力機器固有の静電容量Cxを考慮した静電容量に決められており、考慮された静電容量Cxの静電容量となる組合せ(調整コンデンサ53a,53b,53cを接続した組合せ)を出力電圧の変化率を考慮して計算し、決定する。決定した組合せに調整コンデンサ53a,53b,53cに設けられたジャンパ用の端子J1〜J3をジャンパソケットJSで短絡する。そして、入力端子T10,T20間に相電圧と同じ電圧を印加した状態で、出力端子T30,T40の出力電圧を検出する。そして、この出力電圧と、予め前記相電圧が印加された状態で得られるべき基準電圧と比較する。
【0035】
この出力電圧が基準電圧と一致していない場合には、調整コンデンサ53a,53b,53cのジャンパソケットJSを取り外し又は取付けて、いずれかの2つの調整コンデンサを、或いは、いずれか1つの調整コンデンサをコンデンサ52に対して並列接続する。このジャンパソケットJSの変更によって、前記分圧比のずれを修正して、最終的に、出力電圧が基準電圧と一致、又は、出力電圧を許容精度の範囲内となるように繰り返し修正する。
【0036】
従って、全ての調整コンデンサ53a,53b,53cに接続する可能性も、調整コンデンサを一つも接続しない可能性もある。
このような調整を行なう場合の調整コンデンサの組み合わせ、又は単独の使用によって得られる調整コンデンサの合成コンデンサの静電容量は、順次小さくなるように、接続をかえる。この例を下記の実施例で述べる。
【0037】
(実施例)
この実施例は、調整コンデンサ53a,53b,53cの値をそれぞれ680pF,330pF,180pFとし、電力機器固有の静電容量Cxを250pFとした場合の例である。また、コンデンサ51の静電容量は、50pF、コンデンサ52の静電容量は、49500pFであり、入力端子T10,T20間の印加電圧は、3810Vである。なお、静電容量Cxは、想定値であり、機器により多少のばらつきがある。
【0038】
表1は、調整コンデンサ53a,53b,53cを使用しない場合、単独で、又はいずれか2つを組み合わせて、或いは全てを使用した場合のT30,T40間の出力電圧を前記(2)式より分圧比を計算し、その計算値に基づいて出力値変化率を算出した結果を表している。
【0039】
ここで、中心値基準の出力値変化率は、調整コンデンサ53b,53cを組み合わせた並列回路をコンデンサ52に対して並列接続した場合の出力電圧を中心値とし、その出力電圧を基準として、他の出力電圧の出力値変化率を算出したものである。
【0040】
【表1】

又、初期状態基準の出力値変化率は、調整コンデンサ53a,53b,53cを全て組み合わせた並列回路をコンデンサ52に対して並列接続した場合の出力電圧を基準として、他の出力電圧の出力値変化率を算出したものである。
【0041】
表1は調整コンデンサの単独の使用、又は組合せによる使用により得られる静電容量を左側から大きい順に並べたものであるが、静電容量が順に小さくなると、出力値変化率は順に0.29〜0.36%の範囲で大きくなることが分かる。すなわち、本実施例の調整コンデンサは、単独の使用、又は調整コンデンサの組合せを変更することにより、コンデンサ51,52の分圧比が電力機器固有の静電容量Cxのばらつきによりずれたとしても、分圧比を修正することができる。
【0042】
しかも、本実施例のように、調整コンデンサの単独の使用、又は組合せによる使用により得られる静電容量を大きい順に並べた場合、出力値変化率が順に0.29〜0.36%の範囲で大きくなるようにしているため、各調整コンデンサの接続を変更することにより、出力電圧を微調整することができる。
【0043】
一般に、電力機器固有の静電容量Cxは、大きくはないが、出力電圧に大きな影響があるため、分圧比のずれを解消することが好ましい。しかも、許容精度は、小さいことが好ましい。本実施例では、室温時の許容精度は、±0.25%以内としている。
【0044】
さて、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の電圧測定装置20は、電圧補整用の複数の調整コンデンサ53a,53b,53cを含む調整回路60を備えるようにした。そして、調整回路60は、複数の調整コンデンサ53a,53b,53cのうちの1つ、又は2つ以上の組合せからなる合成コンデンサが、第2コンデンサ回路25と並列に接続可能であるジャンパ用の端子J1〜J3を備えるとともに、端子J1〜J3間を接続するジャンパソケットJSを備えるようにした。
【0045】
この結果、ジャンパソケットJSを使用していずれかの調整コンデンサを並列に仮接続しておいて、相電圧を測定するコンデンサ回路の出力電圧を測定して基準電圧と比較し、基準電圧に合わない場合は、その接続を変更することができる。そして、基準電圧にあったところの端子J1〜J3をジャンパソケットJSにて本接続する。このことにより、電力機器に接続される相電圧の計測を精度よく測定できる。
【0046】
(2) 又、本実施形態では、調整コンデンサ53a,53b,53cが並列回路を構成し得るように、調整コンデンサを複数設けているため、開閉器10は、同じものを量産することができる。
【0047】
(3) さらに、本実施形態では、電圧測定用の低電圧側コンデンサ回路である第2コンデンサ回路25を構成するコンデンサ52の調整も単にジャンパソケットJSを1つ又は2つ以上をJ1〜J3にセットするだけでよくなる。
【0048】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を図5を参照して説明する。
第2実施形態の電圧測定装置20の調整回路60の構成が異なっており、他の構成については、同じであるため、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0049】
具体的には、調整回路60は、調整コンデンサ53a,53b,53cの他に、さらに調整コンデンサとして、温度補整用コンデンサ53dがコンデンサ52に対してジャンパ用の端子J4を介して並列接続可能に設けられている。ジャンパ用の端子J4は、接続端子に相当する。
【0050】
この場合、温度補整用コンデンサ53dは、電力機器の使用する環境温度に応じて接続することになる。
温度補整用コンデンサ53dは、コンデンサ52,調整コンデンサ53a,53b,53cの静電容量に関して温度変化があっても、温度補整用コンデンサ53dを並列接続することにより、その変化を抑制するために設けられたものである。このため、温度補整用コンデンサ53dはコンデンサ52,調整コンデンサ53a,53b,53cとは逆の温度係数を有するコンデンサが用いられる。本実施形態では、温度補整用コンデンサ53dは、ポリエステルフィルムコンデンサにより構成されている。そして、温度補整用コンデンサ53dは端子J4に対してジャンパソケットJSを接続することにより、コンデンサ52に対して並列接続される。
【0051】
なお、第2実施形態では、コンデンサ51は、NP0(=温度係数0ppm/℃)のセラミックコンデンサを使用する。
さて、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0052】
(1) 本実施形態の電圧測定装置20は調整コンデンサとして、温度補整用コンデンサを含むようにしている。この結果、温度補整用コンデンサを使用する場合には、分圧比の温度変化率を小さくでき(温度変化率を抑制でき)、このことにより、電力機器に接続される相電圧の計測を精度よく測定できる。
【0053】
すなわち、例えばコンデンサ52、調整コンデンサ53a,53b,53cが周囲温度の変化(上昇)により、その容量が小さくなる温度係数を有する場合、逆の温度係数を有する温度補整用コンデンサ53dは、その容量は大きくなるため、
分圧比={C51/(C51+C52+C53+Cx)}
の温度変化率を抑制できる。
【0054】
なお、C53には、温度補整用コンデンサ53dの容量分も含む。
又、コンデンサ52、調整コンデンサ53a,53b,53cが周囲温度の変化(上昇)により、その容量が大きくなる温度係数を有する場合、逆の温度係数を有する温度補整用コンデンサ53dは、その容量は小さくなるため、前記分圧比の温度変化率を抑制できる。
【0055】
(2) 本実施形態では、温度補整用コンデンサ53dをポリエステルフィルムコンデンサにより構成した。この結果、上記本実施形態の(1)の効果を容易に実現できる。
なお、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
【0056】
○ 前記実施形態では、コンデンサ52は、セラミックコンデンサから構成したが、ポリスチレンフィルムコンデンサ又はポリプロピレンフィルムコンデンサを使用してもよい。
【0057】
○ 前記実施形態において、ジャンパ用の端子J1〜J3は、ジャンパピンとしたが、この構成の他に、パットや、ハトメ等の金属端子であってもよい。この場合、ジャンパソケットの代わりに、ジャンパ線や、金属板等の短絡部材にて接続してもよい。この場合、接続手段は、前記金属端子と短絡部材とにより構成される。
【0058】
○ 前記実施形態では、接続手段として、ジャンパ用の端子J1〜J3は、ジャンパピン及び、ジャンパソケットにて構成したが、下記のように構成してもよい。
電圧測定装置を組立する際に、ジャンパ用の端子J1〜J3を全て予めジャンパ線で短絡しておき、すなわち、仮接続しておき、工場出荷前において、基準電圧を入力端子T10,T20間に印加した状態で、T30,T40間の出力電圧を測定する。この状態で該出力電圧が、基準電圧となっていない場合には、予め決められた手順で接続されているジャンパ線を切断して、出力電圧が基準電圧と一致、又は、出力電圧を許容精度の範囲内となるようにする。この場合、ジャンパ線が切断されていない端子がジャンパ線にて短絡されて本接続となる。
【0059】
○ 又、接続手段として、ジャンパ用の端子とジャンパソケットに代えて、オンオフの切替が可能なディップスイッチで構成してもよい。
○ 前記実施形態では、開閉器10が設けられた配電線Lの需要家側において、各相の配電線Lの電圧を測定するように1つのみ設けたが、1つに限定されるものではない。開閉器において、変電所側の配電線Lの各相の電圧を測定できるようにさらに1つの電圧測定装置20を設けても良い。
【0060】
○ 又、電圧測定装置20において、電圧検出回路21〜23の個数は3つに限定するものではなく、例えば、1つ、或いは2つでもよい。
○ 前記実施形態では、電力機器として開閉器としたが、電圧測定装置を配電線に設けられる電力機器としては変圧器、遮断器、断路器もあり、これらの機器に設けても良い。
【0061】
○ 前記実施形態では、複数の調整コンデンサ53a,53b,53cは、異なる静電容量を有するようにしたが、同容量であってもよい。
○ 第2実施形態では、温度補整用コンデンサ53dがコンデンサ52に対して並列接続が可能なように、接続端子としての端子J4を設けたが、図6に示すように温度補整用コンデンサ65をコンデンサ52に対して並列接続してもよい。この場合、温度補整用コンデンサ65は、コンデンサ52、調整コンデンサ53a,53b,53cとは逆の温度係数を有するコンデンサが用いられる。又、本実施形態では、第2コンデンサ回路25は、コンデンサ52と温度補整用コンデンサ65の並列回路により構成されている。
【0062】
○ 前記各実施形態において、第1コンデンサ回路24は、単体のコンデンサ51により構成したが、単体に限定するものではなく、2個以上の複数のコンデンサの直列回路で構成したり、或いは、2個以上の複数のコンデンサの並列回路で構成してもよい。
【0063】
○ 前記各実施形態において、第2コンデンサ回路25は単体のコンデンサ52により構成したが、単体に限定するものではなく、2個以上の複数のコンデンサの直列回路で構成したり、或いは、2個以上の複数のコンデンサの並列回路で構成してもよい。
○ 調整コンデンサ53a,53b,53cの値を前記実施例よりも、各々に100pF、200pF、390pFのように小さくすることにより、より出力電圧を微調整することができる。
○ 調整コンデンサ53a,53b,53cの数を増やすことにより、より調整範囲の拡大ができる。
○ 前記各実施形態において、調整コンデンサ53a,53b,53cの各々に1つの接続端子を設けたが、例えば、図7の例のように、調整コンデンサの電源側、接地側及び各調整コンデンサ接続間にジャンパソケットJSが接続可能な接続端子Jを設けることにより静電容量が異なる調整回路60を13通り得ることができる。また、図8の例のように、各調整コンデンサ接続間を複雑に接続し、その間にジャンパソケットJSが接続可能な接続端子Jを設けることにより静電容量が異なる調整回路60を17通り得ることができる。
○ 前記各実施形態において、想定した静電容量Cxを考慮した上で調整コンデンサ53a,53b,53cの組合せと出力電圧の変化率を計算し、組合せを決定する。決定した組合せ間のジャンパ用の端子を短絡しておき、入力端子T10,T20間に相電圧と同じ電圧を印加して、出力端子T30,T40の出力電圧を検出する。そして、この出力電圧と、基準電圧と比較してジャンパ用の端子の変更によって出力電圧が基準電圧と一致、又は、出力電圧を許容精度の範囲内となるように調整したが、下記のように構成してもよい。
【0064】
最初に入力端子T10,T20間に相電圧と同じ電圧を印加して、出力端子T30,T40の出力電圧を検出する。その出力電圧と基準電圧とを比較してずれ分を算出し、調整コンデンサ53a,53b,53cの組合せを決定する。決定した組合せ間の端子を短絡し、出力電圧を確認しながら端子の変更によって出力電圧が基準電圧と一致、又は、出力電圧を許容精度の範囲内となるように調整しても良い。
【0065】
又、最初に全ての調整コンデンサ53a,53b,53cに設けられたジャンパ用の端子すべて短絡しておき、入力端子T10,T20間に相電圧と同じ電圧を印加して、出力端子T30,T40の出力電圧を検出する。そして、この出力電圧と、基準電圧と比較しながら端子の変更によって出力電圧が基準電圧と一致、又は、出力電圧を許容精度の範囲内となるように調整してもよい。
【0066】
次に、請求項以外に上記実施形態から把握できる技術的思想を下記に述べる。
(1) 一対のコンデンサ回路(C1,C2)を直列接続し、分圧により各相の電圧を測定可能にした電力機器の電圧測定方法において、一方のコンデンサ回路と並列に、電圧補整用の調整コンデンサを仮接続するとともに、電圧補償調整時に基準電圧に合わせるように前記調整コンデンサの内、1又は2以上の調整コンデンサを本接続可能としたことを特徴とする電力機器の電圧測定方法。このようにすることにより、温度補整用コンデンサを使用する場合には、分圧比の温度変化率を小さくでき(温度変化率を抑制でき)、このことにより、電力機器に接続される相電圧の計測を精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】従来のコンデンサ回路の直列回路の説明図。
【図2】実施形態のコンデンサ回路の直列回路の説明図。
【図3】開閉器10の概略を示すブロック図。
【図4】電圧測定装置20の概略を示すブロック図。
【図5】他の実施形態の調整回路60の説明図。
【図6】他の実施形態の調整回路60の説明図。
【図7】他の実施形態の調整回路60の説明図。
【図8】他の実施形態の調整回路60の説明図。
【符号の説明】
【0068】
24…第1コンデンサ回路(コンデンサ回路)、
25…第2コンデンサ回路(コンデンサ回路)、60…調整回路、
J1〜J3…端子(接続端子)、S…ジャンパソケット(接続手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコンデンサ回路を直列接続し、一方のコンデンサ回路の分圧出力により相電圧を測定可能にした電力機器の電圧測定装置において、
電圧補整用の複数の調整コンデンサを含む調整回路を備え、
前記調整回路には、前記複数の調整コンデンサの組合せからなる合成コンデンサが、前記一方のコンデンサ回路と並列に接続可能である接続端子を備えるとともに、接続端子間を接続する接続手段を備えたことを特徴とする電力機器の電圧測定装置。
【請求項2】
前記調整コンデンサは、温度補整用コンデンサを含むことを特徴とする請求項1に記載の電力機器の電圧測定装置。
【請求項3】
前記温度補整用コンデンサは、ポリエステルフィルムコンデンサであることを特徴とする請求項2に記載の電力機器の電圧測定装置。
【請求項4】
前記調整コンデンサはセラミックコンデンサであることを特徴とする請求項1に記載の電力機器の電圧測定装置。
【請求項5】
前記接続手段は、ジャンパ接続可能なジャンパソケットであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の電力機器の電圧測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−205785(P2007−205785A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23146(P2006−23146)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】