説明

電力無線供給式表示装置

【課題】
有機エレクトロルミネッセンスが低電圧でも発光し、極めてエネルギー効率がよいことに着目し、電源を搭載することなく極めて簡単な構成の発光表示装置を提供する。
【解決手段】
電力無線供給式表示装置は、少なくとも搬送高周波の発振器17と、これを駆動する電源19とを備えた電力送信機200、および電力送信機200が送信した搬送波RFを受信するアンテナ1と、アンテナ1に繋がる検波回路3と備えた受信機100を有し、受信機100の出力に、エレクトロルミネッセンス7が接続されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を無線により送信し、これを受信して、エレクトロルミネッセンス素子を発光表示させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
21世紀になってユビキタスネットワークシステムが急速に拡がってきている。
【0003】
駅構内での無線LAN接続、携帯電話による種々のサービスの拡大など、これらの無線での情報伝達は益々拡がっている。情報伝達の末端、すなわち人に対する伝達は、音声、画像で実行される。しかしながら、音声の再現や、画像の表示には少なからず電力を必要としている。テレビ放送の受像器やパソコンのモニタ画面の表示では、現在の主流である陰極線管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイは、発光のエネルギーの源泉を商用電源か、二次電池から得ている。
【0004】
一方、電力の無線供給については、大電力、長距離では殆ど実現されておらず、鉄道の改札や、入退室管理、電子マネー等のICカードシステム、データキャリアシステムなど、極めて近距離、小電力の信号通信で実用化されているに過ぎない。かかるデータキャリアシステムに相当するデータ通信装置が、例えば特許文献1に開示されており、このデータ通信装置の第1ユニットは電源電力を搭載しているが、第2ユニット(IDユニット)は第1ユニットとの無線通信により信号電力を得るパッシブなもので、アクティブな電源はない。
【0005】
特許文献2には、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイに信号を無線で送る画像表示が示されているが、ELディスプレイを回転させて視覚誤認により立体画像を得るもので、回転のための動力源電力を必要とする。
【0006】
【特許文献1】特開平1−151832号公報
【特許文献2】特開平2005−39581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子が低電圧でも発光し、極めてエネルギー効率がよいことに着目し、電源を搭載することなく極めて簡単な構成の発光表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された電力無線供給式表示装置は、少なくとも搬送高周波の発振器と、これを駆動する電源とを備えた電力送信機、および該電力送信機が送信した搬送波を受信するアンテナと、該アンテナに繋がる検波回路と備えた受信機を有し、該受信機の出力に、エレクトロルミネッセンス素子が接続されていることを特徴とする。
【0009】
この電力無線供給式表示装置は、電力送信機側には電源を備えているが、受信機側には電源を備えることなく、無線通信によって電力供給を受けてエレクトロルミネッセンス素子が発光する。電力送信機側の電源は、商用電源を由来とするもの、あるいは二次電池のいずれであってもよい。
【0010】
同じく請求項2に記載された電力無線供給式表示装置は、請求項1に記載された電力無線供給式表示装置であって、データ信号を前記搬送高周波で変調する変調器が該電力送信機に備えられ、データ信号変調波を送受し、該データ信号が該エレクトロルミネッセンス素子に表示されることを特徴とする。
【0011】
請求項2の電力無線供給式表示装置は、データ信号変調波を電力送信機から送信し、受信機で受信するので、データ信号に対応した電圧が検波出力として得られエレクトロルミネッセンス素子に印加されるから、エレクトロルミネッセンス素子はデータ信号に対応した発光表示がなされる。このときエレクトロルミネッセンス素子は、検波出力の電圧に対応した発光強度を示し、単にオンオフの点滅発光をするだけではないので、様々なディスプレイ用途に使用できる。
【0012】
変調の方式は、振幅変調、周波数変調、位相変調、負荷変調など、いずれの変調方式も使用できるが、受信機側の復調回路である交直変換回路が低電力で動作するものであることが必要である。
【0013】
請求項3に記載された電力無線供給式表示装置は、請求項1または2に記載された電力無線供給式表示装置であって、該エレクトロルミネッセンス素子が有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
【0014】
エレクトロルミネッセンス素子の発光材料が有機物であることで、構造的にも簡易で、極めて薄くでき長寿命化が図れ、様々な発光色を設計できる上に安価である。有機物発光材料のなかでもアルミキノリール錯体、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)に代表される金属錯体、ポリフェニレンビニレン(PPV)誘導体、ポリフルオレン誘導体などが特に好ましい。
【発明の効果】
【0015】
有機エレクトロルミネッセンス発光体は低消費電力であり、本発明の電力無線供給式表示装置のように無線により電源供給を受けても十分に発光するものである。また電源供給のための高周波を、データ信号で変調すれば、データ信号に対応した発光表示がなされる。
【0016】
したがって、本発明の電力無線供給式表示装置のエレクトロルミネッセンス素子を備えた受信機を、電源の得られ難い場所に設置し、人が携帯した電力送信機で情報および電力の供給を行うことで、情報の表示が可能となる。また、逆にエレクトロルミネッセンス素子を備えた受信機を携帯式の表示装置として、特定個所に設置された電力送信機で情報および電力の供給を行うことで、受信機の携帯者に可視情報を与えることができる。情報の伝達のみならず、一般広告、宣伝、指示、連絡等に使用が可能である。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0017】
本発明の電力無線供給式表示装置の好ましい実施の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明を適用する電力無線供給式表示装置の全体構成を示すブロック回路図を示すものである。同図に示すとおり、この電力無線供給式表示装置は、受信機100と、電力送信機200とを備えている。
【0019】
電力送信機200には、高周波の発振器17、データ信号を高周波変調する変調器15、電力増幅器13、および出力アンテナ10を備えている。電力送信機200は、バッテリ19を備えており、このバッテリ電力により駆動する。
【0020】
受信機100は、受信アンテナコイル1とコンデンサ2からなる受信回路に、検波ダイオード3とコンデンサ4からなる検波回路が接続され、有機エレクトロルミネッセンス素子7が配置されている。有機エレクトロルミネッセンス素子7の一面には金属薄膜電極5が形成され、その裏面にはパターン形成された導電性ガラス電極6が形成され、検波回路に接続されている。
【0021】
図2には受信機100の実体図が示されている。受信アンテナコイル1は、回路基板上に鍍金されている銅をエッジングして形成してある。有機エレクトロルミネッセンス素子7はセブンセグメント(7Segments)で0〜9の数字、4桁を表示するもので、図示の例では1、2、3、4を表示している。7は有機エレクトロルミネッセンス素子の発光表示部、7は有機エレクトロルミネッセンス素子の非発光部である。
【0022】
以下、図1に示した電力無線供給式表示装置の動作を、周波数変調方式が振幅変調である場合について図3に示す動作波形図を参照しながら説明する。
【0023】
図3(A)に示すのデータ信号が変調器15に入力し、発振器17から波形(B)の高周波が発振して変調器15に入力する。データ信号(A)は変調器15にて高周波(B)による振幅変調をされる。これが電力増幅器13で増幅され、変調搬送波RF(Ratio Frequency)として出力アンテナ10から発振される。
【0024】
出力アンテナ10を発振した変調搬送波RF、受信機100の受信アンテナコイル1が受信してコンデンサ2と共振し、検波回路に入力する。検波ダイオード3で半波整流検波を受けて検波出力(D)の脈流を生ずる。この検波出力(D)はコンデンサ4で平滑化され、直流データ信号(E)が再現される。この直流データ信号の電流が金属薄膜電極5、および導電性ガラス電極6を通じて有機エレクトロルミネッセンス素子7を流れて、発光タイミング(F)で有機エレクトロルミネッセンス素子7が発光する。
【実施例】
【0025】
本発明の電力無線供給式表示装置を以下の実施例とおりに試みた。
【0026】
受信機100は、図1、2に示す構成であり、詳細は以下のとおりである。受信アンテナコイル1は、ガラス強化エポキシ基板上に銅箔(厚み35μm)にて、Aタイプ(線幅1mm、線の全長375mm=マイクロウエーブ400MHzの半波長、アンテナ長34mm、アンテナ幅27mm)と、Bタイプ(線幅0.3mm、線長19mm、アンテナ幅13mm)の二種類を試作した。検波ダイオードはショットキーバリアダイオード(schottky barrier diode)ものを使用した。表示部は、日置電気株式会社製の有機エレクトロルミネッセンスパネルを使用した。
【0027】
電力送信機200としてアマチュア無線用トランシーバを用いた。このトランシーバは400MHz帯で1Wの出力を得られる。アンテナ(出力アンテナ10)は、発振側内臓のホイップアンテナである。
【0028】
以上の装置構成で受信機100の有機エレクトロルミネッセンス素子に電圧供給を行った。その結果、有機エレクトロルミネッセンス素子に供給された電圧は受信用アンテナの形状、発信器との距離、相対的な位置によって大きく変わるが、概ね、5〜10V程度の電圧で供給できることが分かった。
【0029】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光強度は、通常のテレビ画面の明るさ(200〜300cd/m2)以上の発光強度概ね800cd/m2(Aタイプアンテナコイル)程度が実現できた。Bタイプアンテナコイルでは450cd/m2であった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用する電力無線供給式表示装置の一実施例の全体構成を示すブロック回路図である。
【0031】
【図2】本発明を適用する電力無線供給式表示装置の受信機の一実施例の実体図である。
【0032】
【図3】本発明を適用する電力無線供給式表示装置の動作波形図である。
【符号の説明】
【0033】
1は受信アンテナコイル、2はコンデンサ、3は検波ダイオード、4はコンデンサ、5は金属薄膜電極、6は導電性ガラス電極、7は有機エレクトロルミネッセンス素子、10は出力アンテナ、13は電力増幅器、15は変調器、17は発振器、100は受信機、200は電力送信機、RFは変調搬送波である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも搬送高周波の発振器と、これを駆動する電源とを備えた電力送信機、および該電力送信機が送信した搬送波を受信するアンテナと、該アンテナに繋がる交直変換回路と備えた受信機を有し、該受信機の出力に、エレクトロルミネッセンス素子が接続されていることを特徴とする電力無線供給式表示装置。
【請求項2】
データ信号を前記搬送高周波で変調する変調器が該電力送信機に備えられ、データ信号変調波を送受し、該データ信号が該エレクトロルミネッセンス素子に表示されることを特徴とする請求項1に記載の電力無線供給式表示装置。
【請求項3】
該エレクトロルミネッセンス素子が有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1または2に記載の電力無線供給式表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−11098(P2007−11098A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193330(P2005−193330)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月24日 日本感性工学会主催の「日本感性工学会春季大会2005」において文書をもって発表
【出願人】(503398886)株式会社感性デバイシーズ (12)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【Fターム(参考)】