説明

電力用ガス遮断器

【課題】コンパクトで、かつ、全ての電流レベルで遮断性能が高い電力用ガス遮断器を得ること。
【解決手段】可動コンタクトは、シャフト24を挿通させてシャフトの一端部に固定され固定コンタクト10に対向する一端側にガス噴出口22aを有し他端側が開口されたシリンダ25と、容器内の他方側で固定されシリンダの開口側に嵌入されてシリンダ内にパッファ室を形成し、シャフトの移動に伴ないパッファ室内の消弧ガスを圧縮してガス噴出口からアークに向けて噴出させる固定ピストン26と、パッファ室内に嵌入されパッファ室を一端部側の第1パッファ室22と固定ピストン側の第2パッファ室23とに区画し、第1、第2パッファ室の圧力差に応じてパッファ室内を摺動する可動ピストン28と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、変電所や開閉所に設置される電力用のガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電力用ガス遮断器の接点間のアークを消弧する消弧室には、主に、機械的操作力により消弧ガス(以下単に「ガス」という)を圧縮してアークに吹き付ける機械パッファ型が採用されていたが、最近、この機械パッファ型に、アークの熱によってガスの圧力を高めてアークに吹付ける熱パッファ型を併用する方式が実用化されている。
【0003】
従来の熱パッファ・機械パッファ併用型ガス遮断器は、特許文献1に開示されている。図5は、特許文献1に開示された従来のガス遮断器の投入(通電)状態を図解する断面図であり、図6は、遮断状態を図解する断面図である。
【0004】
図5及び図6に図解するように、このガス遮断器は、例えば、SF6ガスのような消弧ガスを充填した、一部分が図示された容器230内に収容され、容器230内の一方側に固定された固定コンタクト210と、図示しない操作装置によって駆動され、中心軸X上を直線移動して固定コンタクト210と接離するように配置された可動コンタクト220とを備えている。
【0005】
固定コンタクト210は、中心軸X上に配置された固定アーク接点211を有している。可動コンタクト220は、可動アーク接点221と、加熱室222と、圧縮室223とを備えている。可動アーク接点221は、固定アーク接点211に対して直線的に移動し、電気的に接離する。
【0006】
加熱室222は、可動アーク接点221と圧縮室223の間に配置され、中空シャフト224の操作により、可動アーク接点221とともに中心軸X上を直線的に移動する。圧縮室223は、可動アーク接点221や加熱室222とともに直線移動するシリンダ225と、容器230に支持された固定ピストン226により形成され、可動コンタクト220の遮断動作(図5の右方へ移動する動作)とともに圧縮室223の容積が小さくなり、内部のガスを圧縮する。
【0007】
加熱室222は、可動アーク接点221への通気口222aと、圧縮室223への通気口222bの、2つの通気口を有する。加熱室222と圧縮室223との間の通気口222bには、逆止弁222cが設けられており、逆止弁222cは、圧縮室223の圧力が加熱室222の圧力より高くなった場合に開き、圧縮室223から加熱室222へガスが流れ、逆に、加熱室222の圧力が圧縮室223の圧力より高くなった場合に閉じ、加熱室222から圧縮室223へのガスの流れを遮るようになっている。
【0008】
また、固定ピストン226には、リリーフ弁223aが設けられている。リリーフ弁223aは、電流遮断動作時に、圧縮室223が、所定の圧力以上になったときに開き、圧縮室223内のガスを容器230内に排出し、圧縮室223内の圧力が高くなりすぎるのを防止している。
【0009】
投入時(通電時)には、固定コンタクト210と可動コンタクト220が電気的に接触しており、両コンタクト210、220間に電流が流れている。電流遮断時には、可動コンタクト220が図5の右方へ移動して固定コンタクト210から離れ、固定アーク接点211と可動アーク接点221の間にアークが発生する。
【0010】
遮断電流が大きいときには、アークの熱によって加熱室222のガスの温度が上がって膨張し、加熱室222内の圧力が上昇する。加熱室222の圧力が圧縮室223において圧縮されたガスの圧力より高くなると、両室222、223の間の逆止弁222cが閉じ、電流が零に近づくにつれて、加熱室222内の高圧になったガスが、通気口222aを通って固定、可動両アーク接点211、221間に発生しているアークに吹付けられ、アークが冷却されることによって電流が遮断される。
【0011】
遮断電流が小さいときには、アークによる加熱室222の温度上昇が小さいので、遮断動作によって内部のガスが圧縮された圧縮室223の圧力が加熱室222の圧力に比べて高くなる。そのため、加熱室222と圧縮室223の間にある逆止弁222cが開き、圧縮室223内の高圧のガスが、加熱室222、通気口222aを通って固定アーク接点211と可動アーク接点221の間に発生したアークに吹付けられ、電流を遮断する(特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】特公平07−109744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の技術によれば、大電流遮断性能は、加熱室222と圧縮室223の容積によって決まる。一方、可動コンタクト220の可動アーク接点221と圧縮室223の間に加熱室222を配置する必要があるため、固定コンタクト211と固定ピストン226の間には、可動コンタクト220の動作ストロークに加え、加熱室222の容積に見合った長さが必要となる。
【0014】
このため、遮断電流の増加に伴い加熱室222の容積を増加させる場合には、ガス遮断器全体の軸方向長さも長くしなければならず、ガス遮断器を小形化することができなかった。また、遮断電流が小さい場合には、圧縮室223の容積を縮小させても、加熱室222の容積がデッドボリュームになってしまい、ガスの圧力を高圧にすることができない、という問題があった。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、大容量であってもコンパクトで、かつ、全ての電流レベルで遮断性能が高い電力用ガス遮断器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、消弧ガスを充填した容器内に収容され、電流を遮断するときに接点間に発生するアークを、前記消弧ガスを吹付けて消弧する電力用ガス遮断器において、前記容器内の一方側に固定され固定アーク接点を有する固定コンタクトと、前記容器の他方側に向けて延設された移動可能なシャフト、及び該シャフトの一端部に固定されて前記固定コンタクトに対向するように設置され該シャフトの移動により前記固定アーク接点と接離する可動アーク接点を有する可動コンタクトと、を備え、前記可動コンタクトは、前記シャフトを挿通させて該シャフトの一端部に固定され前記固定コンタクトに対向する一端側にガス噴出口を有し他端側が開口されたシリンダと、前記容器内の他方側で固定され前記シリンダの開口側に嵌入されて該シリンダ内にパッファ室を形成し、前記シャフトの移動に伴ない前記パッファ室内の消弧ガスを圧縮して前記ガス噴出口から前記アークに向けて噴出させる固定ピストンと、前記パッファ室内に嵌入され該パッファ室を前記一端部側の第1パッファ室と前記固定ピストン側の第2パッファ室とに区画し、第1、第2パッファ室の圧力差に応じて前記パッファ室内を摺動する可動ピストンと、を備えることを特徴とする電力用ガス遮断器であり、加熱室と圧縮室の両方の役割を果たすパッファ室を設け、電流の大きさに応じて加熱室又は圧縮室の役割を果たすようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、従来、加熱室及び圧縮室の二つあったパッファ室を一つに集約し、遮断電流に応じて二つのパッファ室の機能を果たすようにし、従来必要であった加熱室を無くし、電力用ガス遮断器全体を小形化し、コストを下げるとともに、全ての電流レベルにおいて高い遮断性能を有するガス遮断器が得られる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる電力用ガス遮断器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
実施の形態
図1は、本発明にかかる電力用ガス遮断器の実施の形態の投入状態を示す断面図であり、図2は、遮断電流が大きい場合の遮断途中の状態を示す断面図であり、図3は、遮断電流が小さい場合の遮断途中の状態を示す断面図であり、図4は、遮断状態を示す断面図である。
【0020】
図1〜図4に示すように、実施の形態の電力用ガス遮断器(以下、単に「遮断器」という)100は、SF6ガスのような消弧ガスが充填された、一部のみ図示されている容器30内に収容され、電力を遮断するときに接点間に発生するアークを、消弧ガス吹付けて消弧する。
【0021】
遮断器100は、容器30内の一方側(図1の左方)に固定される固定コンタクト10と、中心軸Z上に配置され容器30の他方側(図1の右方)の外まで延出する中空シャフト24に連結された図示しない操作装置によって軸方向に移動し、固定コンタクト20と接離する可動コンタクト20とを備えている。
【0022】
固定コンタクト10は、中心軸Z上に配置された棒状の固定アーク接点11と、中心軸Zから離間した位置に配置された固定第2接点12を有している。
【0023】
可動コンタクト20は、上述の中空シャフト24と、中空シャフト24の一端部に固定されて固定コンタクト10に対向するように設置され、中空シャフト24の軸方向の移動により固定アーク接点11と接離する可動アーク接点21と、中空シャフト24の一端部に固着されガス噴出口22aを有する端板22dと、端板22dに一端部が固着され、中空シャフト24を内部に挿通させ、他方側(図1の右方)へ延設され、他端側が開口されたシリンダ25と、を備えている。ガス噴出口22aは、固定コンタクト10に対向している。
【0024】
シリンダ25の一端部には、中空シャフト24の移動により固定第2接点12と接離する可動第2接点29と、漏斗状に形成されてシリンダ25の一端部に大口径部が取付けられ小口径部に固定アーク接点11が挿入され固定、可動両アーク接点11、21を内部に収め、ガス噴出口22aからガスが噴出される消弧室となる絶縁ノズル27と、が取付けられている。
【0025】
容器30内の他方側には、シリンダ25の開口側に嵌入されてシリンダ25内にパッファ室を形成し、中空シャフト24の移動に伴ないシリンダ25内パッファ室のガスを圧縮し、ガス噴出口22aからアークに向けて噴出させる固定ピストン26が固定されている。また、端板22dと固定ピストン26との間のシリンダ25内パッファ室には、シリンダ25内パッファ室を、端板22d側の第1パッファ室22と、固定ピストン26側の第2パッファ23とに区画し、第1、第2パッファ室22、23の圧力差に応じてシリンダ25内パッファ室を摺動する可動ピストン28が嵌入されている。
【0026】
シリンダ25内パッファ室には、端板22d(シリンダ25の一端側)と可動ピストン28との間の距離が所定距離以上にならないように、端板22dからの可動ピストン28の摺動距離を規制するストッパ25aが設けられている。また、固定ピストン26には、リリーフ弁23aが設けられ、遮断器100の遮断動作時に、第2パッファ室23が所定圧力以上になると開き、第2パッファ室23内のガスを容器30内に排出し、第2パッファ室23内の圧力が設定圧力以上になるのを防止している。
【0027】
次に、実施の形態の電力用ガス遮断器100の作用について説明する。通電時(投入時)には、固定コンタクト10と可動コンタクト20とが、固定第2接点12と可動第2接点29同士、固定アーク接点11と可動アーク接点21同士で電気的に接触しており、両コンタクト10、20間に電流が流れている。
【0028】
図2に示すように、電流遮断時には、可動コンタクト20が右方に移動して固定コンタクト10から離れる。このとき、最初に、固定第2接点12と可動第2接点29同士が離れ、電流は、固定アーク接点11と可動アーク接点21の間のみを流れるようになる。続いて固定アーク接点11と可動アーク接点21同士が離れ、固定アーク接点11と可動アーク接点21との間にアークが発生する。
【0029】
遮断電流が大きな時には、アークの熱によって第1パッファ室22のガスの温度が上昇し、ガスが膨張して第1パッファ室22の圧力が上昇する。第1パッファ室22の圧力の上昇により、可動ピストン28が可動アーク接点21と反対方向に移動し、ストッパ25aの位置で停止する(図2参照)。
【0030】
可動ピストン28の移動により、第2パッファ室23の容積が小さくなり圧力が上昇するが、第1パッファ室22の圧力上昇のほうが大きいので、可動ピストン28は、ストッパ25aに押圧された状態になり、第1パッファ室22は、容積一定のまま圧力が上昇する。第1パッファ室22内で高圧になったガスは、ガス噴出口22aを通って消弧室27内へ噴出し、固定、可動両アーク接点11、21間のアークに吹付けられ、アークを冷却して電流を遮断する。消弧室27内へ噴出されたガスは、中空シャフト24内を通って容器30内へ排出される。
【0031】
一方、図3に示すように、遮断電流が小さい時には、固定ピストン26による機械的圧縮により発生する第2パッファ室23の圧力が、第1パッファ室22の圧力より高くなるので、可動ピストン28は、可動アーク接点21方向に移動して第1パッファ室22を圧縮する。圧縮された第1パッファ室22内のガスが、ガス噴出口22aを通ってアークに吹付けられ、アークを冷却して電流を遮断する。
【0032】
以上説明した実施の形態の遮断器100においては、第1パッファ室22は、遮断電流が大きいときには、容積一定の熱パッファ室として機能し、逆に、遮断電流が小さいときには、固定ピストン26及び可動ピストン28による機械的圧縮により、機械パッファ室として機能する。
【0033】
このように、一つの第1パッファ室22が、機械パッファ室と熱パッファ室の二つの役割を果たすので、従来の熱パッファ室の長さ分だけ可動コンタクト20の長さを短くすることができる。
【0034】
また、第1パッファ室22のストッパ25aの位置は、第1パッファ室22の最大容積が大電流遮断時にアークを消弧するのに必要なパッファ室容積となるように設定されるが、遮断電流の大きさが異なる場合、ストッパ25aの位置を変更するだけで対応することができるので、遮断器全体の寸法を変更する必要はない。
【0035】
また、遮断電流が小さい場合においては、従来の加熱室のような大容量のデッドボリューム無しで第1パッファ室22を圧縮することができるので、従来に比べて高い小電流遮断性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる電力用ガス遮断器の実施の形態の投入状態を示す断面図である。
【図2】実施の形態の電力用ガス遮断器の大電流遮断途中を示す断面図である。
【図3】実施の形態の電力用ガス遮断器の小電流遮断途中を示す断面図である。
【図4】実施の形態の電力用ガス遮断器の遮断状態を示す断面図である。
【図5】従来の電力用ガス遮断器の投入状態を示す断面図である。
【図6】従来の電力用ガス遮断器の遮断状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 固定コンタクト
11 固定アーク接点
12 固定第2接点
20 可動コンタクト
21 可動アーク接点
22 第1パッファ室
22a ガス噴出口
22d 端板
23 第2パッファ室
23a リリーフ弁
24 中空シャフト(シャフト)
25 シリンダ
25a ストッパ
26 固定ピストン
27 絶縁ノズル(消弧室)
28 可動ピストン
29 可動第2接点
30 容器
100 電力用ガス遮断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消弧ガスを充填した容器内に収容され、電流を遮断するときに接点間に発生するアークを、前記消弧ガスを吹付けて消弧する電力用ガス遮断器において、
前記容器内の一方側に固定され固定アーク接点を有する固定コンタクトと、
前記容器の他方側に向けて延設された移動可能なシャフト、及び該シャフトの一端部に固定されて前記固定コンタクトに対向するように設置され該シャフトの移動により前記固定アーク接点と接離する可動アーク接点を有する可動コンタクトと、
を備え、前記可動コンタクトは、
前記シャフトを挿通させて該シャフトの一端部に固定され前記固定コンタクトに対向する一端側にガス噴出口を有し他端側が開口されたシリンダと、
前記容器内の他方側で固定され前記シリンダの開口側に嵌入されて該シリンダ内にパッファ室を形成し、前記シャフトの移動に伴ない前記パッファ室内の消弧ガスを圧縮して前記ガス噴出口から前記アークに向けて噴出させる固定ピストンと、
前記パッファ室内に嵌入され該パッファ室を前記一端部側の第1パッファ室と前記固定ピストン側の第2パッファ室とに区画し、第1、第2パッファ室の圧力差に応じて前記パッファ室内を摺動する可動ピストンと、
を備えることを特徴とする電力用ガス遮断器。
【請求項2】
漏斗状に形成されて前記シリンダの一端側に大口径部が取付けられ小口径部に前記固定アーク接点が挿入され前記固定、可動両アーク接点を内部に収め、前記ガス噴出口から消弧ガスが噴出される消弧室となる絶縁ノズルをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電力用ガス遮断器。
【請求項3】
前記シリンダ内に設けられ該シリンダの一端側と前記可動ピストンとの間の距離が所定距離以上にならないように前記可動ピストンの摺動を規制するストッパをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力用ガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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