電力管理装置
【課題】 電気自動車に搭載された蓄電池の劣化を抑制する電力管理装置を提供する。
【解決手段】 電力供給システムは、負荷機器22を含む住宅システム2と電気自動車1との間で授受される電力を管理するために、電気自動車1に搭載されたEV蓄電池11の充放電履歴情報を蓄電池情報記憶部12によって取得し、通信部13及び通信部25を介して、電気自動車1の制御部24に供給する。制御部24は、取得された充放電履歴情報に基づいて、住宅との間のEV蓄電池11の充放電を制御する。
【解決手段】 電力供給システムは、負荷機器22を含む住宅システム2と電気自動車1との間で授受される電力を管理するために、電気自動車1に搭載されたEV蓄電池11の充放電履歴情報を蓄電池情報記憶部12によって取得し、通信部13及び通信部25を介して、電気自動車1の制御部24に供給する。制御部24は、取得された充放電履歴情報に基づいて、住宅との間のEV蓄電池11の充放電を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅と電気自動車との間で授受される電力を管理する電力管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の寿命劣化を低減する技術として下記の特許文献1のような充放電方法が知られている。また、電気自動車から住宅に電力を供給する技術としては、下記の特許文献2のような充放電方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、組電池で構成された蓄電池の放電量を制御することによって蓄電池の長寿命化を図ることが記載されている。このために、特許文献1には、放電回数や深放電状態によって、蓄電池の放電量を減少する制限を行うことが記載されている。また、特許文献1には、充電は常に満充電とし、深夜時間に充電、昼間時間に放電することが記載されている。
【0004】
特許文献2の充放電方法は、日常の車両走行によるバッテリ消費を学習し、学習結果を基に、電気自動車に確保すべき電力量を決定している。また、この充放電方法は、深夜時間帯に電気自動車に対して充電を行い、深夜時間帯以外に確保電力量を残しながら住宅へ電力供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−204626号公報
【特許文献2】特開2001−8380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の充放電方法では、蓄電池を満充電としない場合には、深放電となって蓄電池が劣化してしまう。また、蓄電池の用途(EV走行、住宅への供給)に応じて制御を区別しないため、電気自動車の蓄電池から住宅への電力供給によって蓄電池の劣化が大きくなる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2の充放電方法では、深夜時間帯以外に確保電力量を残しながら住宅へ電力供給するので、電気自動車の蓄電池の寿命を考慮せず住宅への供給を行うため、蓄電池の寿命劣化が懸念される。
【0008】
このように、特許文献1,2のような電気自動車から住宅へ電力を供給するシステムは、通常の電気自動車の走行に加えて、電気自動車から住宅への電力供給を行う場合に、蓄電池の充放電回数や充放電量が多くなり、蓄電池の寿命劣化が懸念される。
【0009】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、電気自動車に搭載された蓄電池の劣化を抑制する電力管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る電力管理装置は、電気機器を含む住宅と電気自動車との間で授受される電力を管理する電力管理装置であって、電気自動車に搭載された蓄電池の充放電履歴情報を取得する情報取得手段と、情報取得手段により取得された充放電履歴情報に基づいて、住宅との間の蓄電池の充放電を制御する電力制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、情報取得手段が、少なくとも所定の過去期間に亘って蓄電池の充放電履歴を取得し、電力制御部が、所定の過去期間において蓄電池の放電深度が所定の閾値以上となった充放電履歴がある場合に、住宅との間の蓄電池の充放電を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、情報取得手段が、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、電力制御部が、所定の過去期間内の蓄電池の充電及び放電された電力積算量が所定の閾値を超えた場合に、住宅との間の蓄電池の充放電を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、電力制御部が、所定の過去期間において蓄電池の単位時間当たりの充電レベル変動量が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、住宅との間の蓄電池の充放電を制御することを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の態様に係る電力管理装置は、上記第1乃至第4の態様の何れかの電力管理装置に対し、電力制御部が、住宅との間の蓄電池の充放電を制御する動作として、電気自動車の蓄電池から前記住宅への放電電力を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の態様に係る電力管理装置は、上記第1乃至第4の何れかの態様の電力管理装置に対し、電力制御部が、住宅との間の蓄電池の充放電を制御する動作として、電気自動車の蓄電池と住宅との間で授受される電力の単位時間当たりの充電レベル変動量を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする。
【0016】
本発明の第7の態様に係る電力管理装置は、上記第1乃至第6の何れかの態様の電力管理装置に対し、電力制御部が、蓄電池周辺の温度に基づいて、閾値を切り替える、又は、蓄電池の充放電を制御する動作の制御量を切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄電池の充放電履歴情報に基づいて、電気自動車と住宅との間の蓄電池の充放電を制御するので、電気自動車に搭載された蓄電池の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態として示す電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおけるEV蓄電池の充電レベルの変化を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおけるEV蓄電池に対する充放電の制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の放電電力の決定処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の放電電力を決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電積算量の変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図7】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の放電電力を決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図9】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の充放電レートを決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図11】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の充放電レートを決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充放電積算量の変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図13】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の充放電レートを決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図15】本発明の一実施形態として示す電力供給システムの他の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池11の周辺温度に応じて所定値としての閾値及び制御量を切り替える処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本発明の実施形態として示す電力供給システムは、例えば図1に示すように構成される。この電力供給システムは、電気自動車(EV)1、住宅システム2を含む。住宅システム2は、電力系統3と接続されている。この電力供給システムは、電気自動車1が電力ケーブルを介して住宅システム2と電気的に接続が可能である。
【0021】
この電力供給システムは、住宅システム2が電力系統3から電力(以下、系統電力と呼ぶ。)が供給され、当該系統電力を住宅の家電製品等の負荷機器(電気機器)22に供給する。また、この電力供給システムは、電力系統3から住宅システム2に供給された系統電力を電気自動車1に供給可能となっている。更に、この電力供給システムは、電気自動車1に蓄えられた電力を住宅システム2の負荷機器22に供給可能である。
【0022】
電気自動車1は、EV蓄電池11、蓄電池情報記憶部12、及び、通信部13を含む。
【0023】
EV蓄電池11は、電気自動車1に搭載された蓄電池である。EV蓄電池11は、電気自動車1が走行するために、電力を蓄積する。この電力は、住宅システム2から供給されてEV蓄電池11に蓄電され、電気自動車1の走行に応じて消費される。また、この電力は、電気自動車1が住宅システム2以外の電気スタンド等でも充電可能である
蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11の蓄電池情報として、充電レベル(例えば、SOC:State Of Charge)の変化を示す充放電履歴情報を記憶している。蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11に対する充電及び放電に応じて、充電レベルを更新する。そして、蓄電池情報記憶部12は、所定時刻ごとの充電レベルを少なくとも記憶する。
【0024】
また、蓄電池情報記憶部12は、電気自動車1によって演算された充放電履歴情報を記憶していてもよい(情報取得手段)。この充放電履歴情報としては、EV蓄電池11の放電深度の履歴、充放電量の履歴、充放電レートの履歴が挙げられる。放電深度は、満充電状態からの放電度合いを示す値である。充放電レートは、単位時間当たりの充放電量である。
【0025】
通信部13は、住宅システム2の通信部25との間で通信信号の授受を行う。通信部13は、住宅システム2の通信部25に対して蓄電池情報記憶部12に記憶している充放電履歴情報を送信する。通信部25は、電気自動車1と住宅システム2とを接続する電力ケーブルに内蔵された通信ケーブルを介して通信を行ってもよく、無線通信によって通信を行ってもよい。
【0026】
住宅システム2は、分電盤21、負荷機器22、充放電コンバータ23、制御部24、及び、通信部25を含む。
【0027】
充放電コンバータ23は、電力ケーブルを介して電気自動車1と電気的に接続される。充放電コンバータ23は、電気自動車1と接続された場合に、制御部24の制御に従って、当該電気自動車1との間で電力を授受する。充放電コンバータ23は、DC−DC変換回路と、AC−DC変換回路とを含む。充放電コンバータ23は、住宅システム2に適した電圧と電気自動車1のEV蓄電池11に適した電圧との間でAC/DC変換を行う。例えば、住宅システム2に適した電圧は100Vの交流電圧である。例えば、電気自動車1におけるEV蓄電池11の充放電に適した電圧は300V〜400Vの直流電圧である。
【0028】
分電盤21は、負荷機器22、電力系統3及び充放電コンバータ23と接続されている。分電盤21は、分岐回路やリレー、ブレーカ等を備える。分電盤21は、電力系統3から供給された系統電力を分岐して、負荷機器22に供給する。また、分電盤21は、電気自動車1のEV蓄電池11に対して充電を行う場合に、充放電コンバータ23に電力を供給する。更に、分電盤21は、電気自動車1のEV蓄電池11から放電された電力が充放電コンバータ23を介して供給された場合、当該EV蓄電池11から放電された電力を負荷機器22等に分岐する。
【0029】
なお、分電盤21には、太陽電池や燃料電池が接続されていてもよい。分電盤21は、太陽電池や燃料電池によって電力が生成された場合に、負荷機器22や充放電コンバータ23に分岐することができる。
【0030】
負荷機器22は、住宅システム2における各種の家電機器である。
【0031】
制御部24は、負荷機器22を含む住宅システム2と電気自動車1との間で授受される電力を管理する電力管理装置の電力制御部として機能する。制御部24には、通信部25が接続されている。
【0032】
制御部24は、充放電履歴情報に基づいて、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する電力制御部として機能する。制御部24は、EV蓄電池11の劣化が大きくなるような充放電履歴を検出した場合に、以降においてはEV蓄電池11の劣化を抑制するような充放電制御を行う。すなわち、EV蓄電池11が劣化する充放電履歴を検出した場合には、それ以降では、EV蓄電池11の劣化を低減するように電気自動車1から住宅システム2に電力を供給する。一方、EV蓄電池11が劣化する充放電履歴を検出していない場合には、それ以降では、充分な電力量を電気自動車1から住宅システム2に供給できるようにする。なお、具体的な動作については後述する。
【0033】
なお、制御部24は、自身で充放電履歴情報を算出してもよい。例えば、電気自動車1の通信部13から充電レベルの変化のみを制御部24によって受信した場合、制御部24は、EV蓄電池11の放電深度の履歴、充放電量の履歴、充放電レートの履歴といった充放電履歴情報を演算する。
【0034】
以上のように、この電力供給システムは、EV蓄電池11の充放電履歴情報に基づいて、電気自動車1と住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御するので、電気自動車1に搭載されたEV蓄電池11の劣化を抑制することができる。すなわち、ある所定の過去期間において、EV蓄電池11の劣化を促進するような充放電があった場合には、それ以降においては、EV蓄電池11の劣化を低減するような充放電制御を行う。
【0035】
つぎに、上述した電力供給システムにおける具体的な動作について説明する。
【0036】
上述した電力供給システムは、EV蓄電池11の充放電履歴情報に基づいて、電気自動車1と住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する。具体的には、電力供給システムは、図2に示すように、過去所定期間(所定の過去期間)T1におけるEV蓄電池11の放電深度が、所定の閾値以上となった充放電履歴がある場合に、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する。放電深度の閾値以上は、充電レベルが所定の閾値以下で判断する。
【0037】
より具体的には、電力供給システムは、過去所定期間T1におけるEV蓄電池11の充電レベルが、所定の閾値以下となった充放電履歴の有無に応じて、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を切り替える。これにより、当該充電レベルの下限値に至るまで、電気自動車1から住宅に電力を放電させるよう制限できる。EV蓄電池11の充電レベルが所定の閾値以下となっていなかった場合には、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を低く制御する。一方、EV蓄電池11の充電レベルが所定の閾値以下となっていた場合には、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を高く制御する。以下、図3を参照して、EV蓄電池11に対する充放電の制御について説明する。
【0038】
電力供給システムは、図3に示すような動作を行って、電気自動車1から住宅システム2に電力を供給する。なお、予め設定した所定時間毎にステップS1が実施される。
【0039】
先ずステップS1において、制御部24は、図示しないタイマを参照し、現在が夜間時間帯か否かを判定する。この夜間時間帯は、予めユーザ等によって設定されている。現在が夜間時間帯である場合にはステップS2に処理を進め、そうでない場合にはステップS3に処理を進める。
【0040】
ステップS2において、制御部24は、EV蓄電池11が満充電となるように充電を実施する。このとき、制御部24は、充放電コンバータ23から電気自動車1に対して所定電圧値の直流電圧を供給する。電気自動車1は、直流電圧が供給されたことに応じて、EV蓄電池11に充電を行う。
【0041】
ステップS3において、電気自動車1の通信部13はEV蓄電池11の充電レベルを検出し、住宅システム2の通信部25に送信する。制御部24は、通信部13と通信部25との通信によって、EV蓄電池11の充電レベルを検出する。
【0042】
次のステップS4において、制御部24は、ステップS3にて検出した充電レベルが所定の下限値より高いか否かを判定する。充電レベルが所定の下限値よりも高い場合、ステップS5に処理を進め、そうでない場合にはステップS6に処理を進める。この所定の下限値は、後述する図4を参照して説明する。
【0043】
ステップS5において、制御部24は、予め設定された下限値までEV蓄電池11の電力の放電を実施させる。このとき、制御部24は、充放電コンバータ23を制御して、EV蓄電池11から電力を取り出す。これによって、充放電コンバータ23は、EV蓄電池11からの放電電力を所定の交流電源に変換して、分電盤21から負荷機器22に供給可能とする。
【0044】
ステップS6において、制御部24は、予め設定された下限値までEV蓄電池11に対して充電を実施させる。このとき、制御部24は、充放電コンバータ23を制御して、EV蓄電池11に対して直流電圧を供給させる。充放電コンバータ23は、制御部24の制御に従って、分電盤21から系統電力を取り出し、所定の直流電圧に変換して、EV蓄電池11に供給する。
【0045】
このように、電力供給システムは、予め設定された充電レベルの下限値に従って、住宅システム2から電気自動車1に充電を行うと共に電気自動車1から住宅システム2に放電を行う。
【0046】
図4に、所定の下限値を決定することによって、EV蓄電池11から放電できる電力を決定する処理を示す。この所定の下限値の決定処理は、予め設定した所定時間毎にステップS11が実施される。
【0047】
先ずステップS11において、制御部24は、電気自動車1の通信部13及び通信部25を介して、充放電履歴情報を取得する。
【0048】
次のステップS12において、制御部24は、過去所定期間T1における充放電履歴情報を参照し、当該過去所定期間T1の放電深度が閾値以上か否かを判定する。この放電深度の閾値は、電気自動車1のEV蓄電池11の容量やEV蓄電池11の種類、EV蓄電池11の劣化を抑制したい度合いなどによって、予め設定されている。過去所定期間T1の放電深度が閾値以上である場合にはステップS13に処理を進め、そうでない場合にはステップS14に処理を進める。
【0049】
ステップS13において、制御部24は、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を、所定値A(高レベル)に設定する。ステップS13においてEV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に設定した後、制御部24は、タイマを起動する。一方、ステップS14において、制御部24は、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を、所定値B(低レベル)に設定する。
【0050】
ステップS15において、制御部24は、以前のステップS13の後に計時を開始した後から、所定の制御期間T2が経過したか否かを判定する。この所定の制御期間T2は、EV蓄電池11の劣化を抑制するために制御を行うための期間である。この所定の制御期間T2は、過去所定期間T1と同じ期間であってもよい。また、所定の制御期間T2は、EV蓄電池11に対して劣化を抑制したい期間であれば任意であってもよい。更に、所定の制御期間T2は、過去所定期間T1におけるEV蓄電池11の劣化の程度に応じて調整してもよい。
【0051】
所定の制御期間T2が経過したと判定した場合にはステップS16に処理を進め、経過していない場合にはステップS13以降の処理を繰り返す。一方、所定の制御期間T2が経過した場合にはステップS16に処理を進める。ステップS16においては、制御部24によって、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を、所定値B(低レベル)に設定する。
【0052】
以上のように、この電力供給システムによれば、図2に示すように、過去所定期間T1において、EV蓄電池11の充電レベルが著しく低下して所定の放電深度の閾値を超えた場合には、充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に設定する。その後の所定の制御期間T2において、電力供給システムは、EV蓄電池11の充電レベルが所定値A(高レベル)より高くなるように住宅システム2から電気自動車1に対して充電を行う。更にその後の所定の制御期間T2内では、所定値A(高レベル)までしか電気自動車1から住宅システム2に放電できないよう制限を行う。所定の制御期間T2を経過すると、制御部24は、充電レベルの下限値を所定値B(低レベル)に戻す。これにより、電力供給システムは、EV蓄電池11から住宅システム2に、所定値B(低レベル)に至るまで放電を行うことができる。
【0053】
この電力供給システムによれば、上述と同様に、過去所定期間T1における放電深度が閾値を超えた場合に、電気自動車1と住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制限する。これにより、この電力供給システムによれば、EV蓄電池11の劣化が大きい場合を判断して、その後の所定の制御期間T2において確実にEV蓄電池11の劣化を抑制できる。
【0054】
また、この電力供給システムは、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する動作として、電気自動車1のEV蓄電池11から住宅システム2への放電電力を、所定の制御期間に亘って制限する。すなわち、充電レベルを所定値A(高レベル)に設定することによって、EV蓄電池11から住宅システム2への放電電力を制限できる。
【0055】
なお、上述した電力供給システムでは、電気自動車1の制御部24によって充放電コンバータ23の動作を制御して、EV蓄電池11の充電レベルを制御したが、住宅システム2以外にコントローラとしての制御部24を設けてもよい。例えば、制御部24の機能を電気自動車1に搭載してもよい。
【0056】
また、上述した電力供給システムでは、充電レベルの下限値を切り替えて住宅への放電電力を決定するものとしたが、放電電力許容量を設定して切り替えることで、住宅への放電電力を決定するものとしても良い。例えば過去所定期間T1における放電深度が閾値を超えた場合に、放電電力許容量を0とすることで、所定期間T2においてEV蓄電池11から住宅への放電を禁止することができる。
【0057】
さらに、上述した電力供給システムでは、夜間時間帯に充電して夜間時間帯以外に放電するものとしたが、太陽電池や燃料電池などの発電装置を備えるものとして、発電電力の余剰分で充電し、発電電力が不足する際に放電するものとしても良い。
【0058】
つぎに、上述した電力供給システムにおける他の構成について説明する。
【0059】
電力供給システムは、過去所定期間T1内のEV蓄電池11の充電及び放電された電力積算量が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御してもよい。
【0060】
この電力供給システムは、図5に示すように、充放電履歴情報を取得したステップS11の後のステップS12aにおいて、過去所定期間T1における充放電履歴情報を参照し、当該過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上か否かを判定する。このEV蓄電池11の充放電積算量の閾値は、電気自動車1のEV蓄電池11の容量やEV蓄電池11の種類、EV蓄電池11の劣化を抑制したい度合いなどによって、予め設定されている。過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上である場合にはステップS13に処理を進め、そうでない場合にはステップS14に処理を進める。
【0061】
具体的には、図6(a)に示すように、過去所定期間T1における充放電積算量が、充放電積算量の閾値を超えた場合には、図6(b)に示すように、所定の制御期間T2におけるEV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)とする。これにより、ステップS13の後の所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に切り替えることができる。
【0062】
以上のように、電力供給システムは、EV蓄電池11の劣化が大きい場合として充放電積算量を検出して、EV蓄電池11の劣化を低減するようEV蓄電池11の充放電を行うことができる。
【0063】
電力供給システムは、過去所定期間T1においてEV蓄電池11の単位時間当たりの充電レベル変動量(充放電レート)が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御してもよい。
【0064】
この電力供給システムは、図7に示すように、充放電履歴情報を取得したステップS11の後のステップS12bにおいて、過去所定期間T1における充放電履歴情報を参照し、当該過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上か否かを判定する。このEV蓄電池11の充放電レートの閾値は、電気自動車1のEV蓄電池11の容量やEV蓄電池11の種類、EV蓄電池11の劣化を抑制したい度合いなどによって、予め設定されている。過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上である場合にはステップS13に処理を進め、そうでない場合にはステップS14に処理を進める。
【0065】
具体的には、図8(a)に示すように、過去所定期間T1における充放電レートが、充放電レートの閾値を超えた場合には、図8(b)に示すように、所定の制御期間T2におけるEV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)とする。これにより、ステップS13の後の所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に切り替えることができる。
【0066】
以上のように、電力供給システムは、EV蓄電池11の劣化が大きい場合として充放電レートを検出して、EV蓄電池11の劣化を低減するようEV蓄電池11の充放電を行うことができる。
【0067】
つぎに、上述した電力供給システムにおいて、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する動作を説明する。この動作は、電気自動車1のEV蓄電池11と住宅システム2との間で授受される電力の単位時間当たりの充電レベル変動量を、所定の制御期間T2に亘って制限するものである。
【0068】
この電力供給システムは、図9に示すように、過去所定期間T1における放電深度が閾値以上か否かを判定した結果に応じて、EV蓄電池11に対する充放電レートの上限値を設定する。過去所定期間T1における放電深度が閾値以上となっていた場合にはステップS13aに処理を進める。過去所定期間T1における放電深度が閾値以上となっていなかった場合にはステップS14aに処理を進める。
【0069】
ステップS13aにおいて、制御部24は、EV蓄電池11の充放電レートの上限値を、所定値A(低レベル)に設定する。ステップS14aにおいて、制御部24は、EV蓄電池11の充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0070】
これにより、図10(b)に示すように過去所定期間T1における放電深度が閾値を下回った場合には、図10(a)に示すように、EV蓄電池11の充放電レートの上限値を所定値A(低レベル)に設定する。これにより、所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充放電レートの上限値が所定値A(低レベル)となるように、EV蓄電池11に対して充放電を行う。この結果、図10(b)に示すように、所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの変動を抑制して、EV蓄電池11の劣化を低減できる。所定の制御期間T2の経過後は、図9のステップS16aによって、充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0071】
以上のように、電力供給システムは、充放電レートを制御して住宅システム2とEV蓄電池11との間での充放電電力を少なくして、EV蓄電池11の寿命劣化を低減できる。また、EV蓄電池11の充放電レートを制限することにより、より確実にEV蓄電池11の寿命劣化を低減できる。
【0072】
同様に、電力供給システムは、図11に示すように、ステップS12aにて過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上か否かを判定して、充放電レートの上限値を設定してもよい。電力供給システムは、過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上となっていた場合には、ステップS13aにおいて充放電レートの上限値を所定値A(低レベル)に設定する。一方、過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上となっていない場合には、ステップS14aにおいて充放電レートの上限値を所定値B(高レベル)に設定する。
【0073】
これにより、図12(b)のように過去所定期間T1における充放電積算量が閾値を超えた場合には、図12(a)に示すように、その後の所定の制御期間T2における充放電レートを低くできる。この結果、図12(c)に示すように、所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの変動を抑制して、EV蓄電池11の劣化を低減できる。所定の制御期間T2の経過後は、図11のステップS16aによって、充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0074】
更に、電力供給システムは、図13に示すように、ステップS12bにて過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上か否かを判定して、充放電レートの上限値を設定してもよい。電力供給システムは、過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上となっていた場合には、ステップS13aにおいて充放電レートの上限値を所定値A(低レベル)に設定する。一方、過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上となっていない場合には、ステップS14aにおいて充放電レートの上限値を所定値B(高レベル)に設定する。所定の制御期間T2の経過後は、図11のステップS16aによって、充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0075】
これにより、図14(b)のように過去所定期間T1における充放電レートが閾値を超えた場合には、図14(a)に示すように、その後の所定の制御期間T2における充放電レートを低くできる。この結果、所定の制御期間T2においては、充放電レートを低くすることでEV蓄電池11の充電レベルの変動を抑制して、EV蓄電池11の劣化を低減できる。
【0076】
つぎに、上述した電力供給システムにおいて、EV蓄電池11の周辺の温度に基づいて、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値を切り替える、又は、EV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を切り替えるものについて説明する。
【0077】
この電力供給システムは、図15に示すように、電気自動車1に温度センサ14を備える。温度センサ14は、EV蓄電池11周辺の温度を検知する。蓄電池情報記憶部12は、温度センサ14により検知された温度を充放電履歴情報として記憶する。
【0078】
この電力供給システムは、図16に示すように、ステップS21において、所定期間ごとに温度センサ14のセンサ出力を検出する。
【0079】
次のステップS22において、制御部24は、ステップS21にて検出されたEV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲内か否かを判定する。また、制御部24は、ステップS23において、ステップS21にて検出されたEV蓄電池11の周辺温度よりも高いか否かを判定する。
【0080】
EV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲内である場合には、ステップS24において、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を条件Cに設定する。EV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲よりも高い場合には、ステップS25において、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を条件Bに設定する。EV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲よりも低い場合には、ステップS26において、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を条件Aに設定する。
【0081】
このEV蓄電池11の周辺温度の所定範囲は、EV蓄電池11が充放電を行ってもEV蓄電池11の劣化が大きくならないような温度範囲である。逆に、EV蓄電池11の周辺温度の所定範囲以外においてEV蓄電池11の充放電を行うと、EV蓄電池11の劣化が大きくなる。このような観点より、電力供給システムは、低温、高温時に充放電を控えるように、条件A〜Cによって、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を切り替える。
【0082】
例えば、EV蓄電池11の温度条件によって、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値としての充放電積算量を制限する場合には、以下のようになる。
【0083】
条件A(低温時):充放電積算量の閾値をPiAとする
条件B(高温時):充放電積算量の閾値をPiBとする
条件C(常温時):充放電積算量の閾値をPiCとする
ここで、PiA<PiC、PiB<PiCとする。この結果、EV蓄電池11の高温時及び低温時には充放電積算量の閾値を低くすることによって、EV蓄電池11の劣化を抑制できる。
【0084】
また、例えばEV蓄電池11の温度条件によって、所定の制御期間T2における充放電レートを制限する場合には、以下のようにする。
【0085】
条件A(低温時):充電レートの上限値をPcA、放電レートの上限値をPdAとする
条件B(高温時):充電レートの上限値をPcB、放電レートの上限値をPdBとする
条件C(常温時):充電レートの上限値をPcC、放電レートの上限値をPdCとする
ここで、PcA<PcC、PcB<PcC、PdA<PdC、PdB<PdCとする。この結果、EV蓄電池11の高温時及び低温時には充電レート及び放電レートの上限値を低くして、EV蓄電池11の劣化を抑制できる。
【0086】
また、この電力供給システムは、充放電制御を行うかを判断するための閾値として放電深度、充放電レートをEV蓄電池11の温度によって切り替えてもよい。さらに、この電力供給システムは、充放電制御における制御量としての充電レベルをEV蓄電池11の温度によって切り替えてもよい。
【0087】
以上のように、電力供給システムは、充放電履歴情報に加えて、EV蓄電池11の温度に応じて、充放電制御を行うかを判断するための閾値及び制御量を切り替えることができる。このような電力供給システムによれば、充放電履歴情報に加えて、主にEV蓄電池11の低温時における劣化を低減でき、更なる劣化の抑制を期待できる。
【0088】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
1 電気自動車
11 EV蓄電池
12 蓄電池情報記憶部
22 負荷機器(電気機器)
24 制御部(電力制御部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅と電気自動車との間で授受される電力を管理する電力管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の寿命劣化を低減する技術として下記の特許文献1のような充放電方法が知られている。また、電気自動車から住宅に電力を供給する技術としては、下記の特許文献2のような充放電方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、組電池で構成された蓄電池の放電量を制御することによって蓄電池の長寿命化を図ることが記載されている。このために、特許文献1には、放電回数や深放電状態によって、蓄電池の放電量を減少する制限を行うことが記載されている。また、特許文献1には、充電は常に満充電とし、深夜時間に充電、昼間時間に放電することが記載されている。
【0004】
特許文献2の充放電方法は、日常の車両走行によるバッテリ消費を学習し、学習結果を基に、電気自動車に確保すべき電力量を決定している。また、この充放電方法は、深夜時間帯に電気自動車に対して充電を行い、深夜時間帯以外に確保電力量を残しながら住宅へ電力供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−204626号公報
【特許文献2】特開2001−8380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の充放電方法では、蓄電池を満充電としない場合には、深放電となって蓄電池が劣化してしまう。また、蓄電池の用途(EV走行、住宅への供給)に応じて制御を区別しないため、電気自動車の蓄電池から住宅への電力供給によって蓄電池の劣化が大きくなる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2の充放電方法では、深夜時間帯以外に確保電力量を残しながら住宅へ電力供給するので、電気自動車の蓄電池の寿命を考慮せず住宅への供給を行うため、蓄電池の寿命劣化が懸念される。
【0008】
このように、特許文献1,2のような電気自動車から住宅へ電力を供給するシステムは、通常の電気自動車の走行に加えて、電気自動車から住宅への電力供給を行う場合に、蓄電池の充放電回数や充放電量が多くなり、蓄電池の寿命劣化が懸念される。
【0009】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、電気自動車に搭載された蓄電池の劣化を抑制する電力管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る電力管理装置は、電気機器を含む住宅と電気自動車との間で授受される電力を管理する電力管理装置であって、電気自動車に搭載された蓄電池の充放電履歴情報を取得する情報取得手段と、情報取得手段により取得された充放電履歴情報に基づいて、住宅との間の蓄電池の充放電を制御する電力制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、情報取得手段が、少なくとも所定の過去期間に亘って蓄電池の充放電履歴を取得し、電力制御部が、所定の過去期間において蓄電池の放電深度が所定の閾値以上となった充放電履歴がある場合に、住宅との間の蓄電池の充放電を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、情報取得手段が、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、電力制御部が、所定の過去期間内の蓄電池の充電及び放電された電力積算量が所定の閾値を超えた場合に、住宅との間の蓄電池の充放電を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の態様に係る電力管理装置は、上記第1の態様の電力管理装置に対し、情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、電力制御部が、所定の過去期間において蓄電池の単位時間当たりの充電レベル変動量が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、住宅との間の蓄電池の充放電を制御することを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の態様に係る電力管理装置は、上記第1乃至第4の態様の何れかの電力管理装置に対し、電力制御部が、住宅との間の蓄電池の充放電を制御する動作として、電気自動車の蓄電池から前記住宅への放電電力を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の態様に係る電力管理装置は、上記第1乃至第4の何れかの態様の電力管理装置に対し、電力制御部が、住宅との間の蓄電池の充放電を制御する動作として、電気自動車の蓄電池と住宅との間で授受される電力の単位時間当たりの充電レベル変動量を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする。
【0016】
本発明の第7の態様に係る電力管理装置は、上記第1乃至第6の何れかの態様の電力管理装置に対し、電力制御部が、蓄電池周辺の温度に基づいて、閾値を切り替える、又は、蓄電池の充放電を制御する動作の制御量を切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蓄電池の充放電履歴情報に基づいて、電気自動車と住宅との間の蓄電池の充放電を制御するので、電気自動車に搭載された蓄電池の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態として示す電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおけるEV蓄電池の充電レベルの変化を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおけるEV蓄電池に対する充放電の制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の放電電力の決定処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の放電電力を決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電積算量の変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図7】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の放電電力を決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図9】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の充放電レートを決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図11】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の充放電レートを決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充放電積算量の変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図13】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池の充放電レートを決定する他の処理を示すフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいて、(a)は充放電レートの変化を示し、(b)は充電レベルの変化を示す。
【図15】本発明の一実施形態として示す電力供給システムの他の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の一実施形態として示す電力供給システムにおいてEV蓄電池11の周辺温度に応じて所定値としての閾値及び制御量を切り替える処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本発明の実施形態として示す電力供給システムは、例えば図1に示すように構成される。この電力供給システムは、電気自動車(EV)1、住宅システム2を含む。住宅システム2は、電力系統3と接続されている。この電力供給システムは、電気自動車1が電力ケーブルを介して住宅システム2と電気的に接続が可能である。
【0021】
この電力供給システムは、住宅システム2が電力系統3から電力(以下、系統電力と呼ぶ。)が供給され、当該系統電力を住宅の家電製品等の負荷機器(電気機器)22に供給する。また、この電力供給システムは、電力系統3から住宅システム2に供給された系統電力を電気自動車1に供給可能となっている。更に、この電力供給システムは、電気自動車1に蓄えられた電力を住宅システム2の負荷機器22に供給可能である。
【0022】
電気自動車1は、EV蓄電池11、蓄電池情報記憶部12、及び、通信部13を含む。
【0023】
EV蓄電池11は、電気自動車1に搭載された蓄電池である。EV蓄電池11は、電気自動車1が走行するために、電力を蓄積する。この電力は、住宅システム2から供給されてEV蓄電池11に蓄電され、電気自動車1の走行に応じて消費される。また、この電力は、電気自動車1が住宅システム2以外の電気スタンド等でも充電可能である
蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11の蓄電池情報として、充電レベル(例えば、SOC:State Of Charge)の変化を示す充放電履歴情報を記憶している。蓄電池情報記憶部12は、EV蓄電池11に対する充電及び放電に応じて、充電レベルを更新する。そして、蓄電池情報記憶部12は、所定時刻ごとの充電レベルを少なくとも記憶する。
【0024】
また、蓄電池情報記憶部12は、電気自動車1によって演算された充放電履歴情報を記憶していてもよい(情報取得手段)。この充放電履歴情報としては、EV蓄電池11の放電深度の履歴、充放電量の履歴、充放電レートの履歴が挙げられる。放電深度は、満充電状態からの放電度合いを示す値である。充放電レートは、単位時間当たりの充放電量である。
【0025】
通信部13は、住宅システム2の通信部25との間で通信信号の授受を行う。通信部13は、住宅システム2の通信部25に対して蓄電池情報記憶部12に記憶している充放電履歴情報を送信する。通信部25は、電気自動車1と住宅システム2とを接続する電力ケーブルに内蔵された通信ケーブルを介して通信を行ってもよく、無線通信によって通信を行ってもよい。
【0026】
住宅システム2は、分電盤21、負荷機器22、充放電コンバータ23、制御部24、及び、通信部25を含む。
【0027】
充放電コンバータ23は、電力ケーブルを介して電気自動車1と電気的に接続される。充放電コンバータ23は、電気自動車1と接続された場合に、制御部24の制御に従って、当該電気自動車1との間で電力を授受する。充放電コンバータ23は、DC−DC変換回路と、AC−DC変換回路とを含む。充放電コンバータ23は、住宅システム2に適した電圧と電気自動車1のEV蓄電池11に適した電圧との間でAC/DC変換を行う。例えば、住宅システム2に適した電圧は100Vの交流電圧である。例えば、電気自動車1におけるEV蓄電池11の充放電に適した電圧は300V〜400Vの直流電圧である。
【0028】
分電盤21は、負荷機器22、電力系統3及び充放電コンバータ23と接続されている。分電盤21は、分岐回路やリレー、ブレーカ等を備える。分電盤21は、電力系統3から供給された系統電力を分岐して、負荷機器22に供給する。また、分電盤21は、電気自動車1のEV蓄電池11に対して充電を行う場合に、充放電コンバータ23に電力を供給する。更に、分電盤21は、電気自動車1のEV蓄電池11から放電された電力が充放電コンバータ23を介して供給された場合、当該EV蓄電池11から放電された電力を負荷機器22等に分岐する。
【0029】
なお、分電盤21には、太陽電池や燃料電池が接続されていてもよい。分電盤21は、太陽電池や燃料電池によって電力が生成された場合に、負荷機器22や充放電コンバータ23に分岐することができる。
【0030】
負荷機器22は、住宅システム2における各種の家電機器である。
【0031】
制御部24は、負荷機器22を含む住宅システム2と電気自動車1との間で授受される電力を管理する電力管理装置の電力制御部として機能する。制御部24には、通信部25が接続されている。
【0032】
制御部24は、充放電履歴情報に基づいて、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する電力制御部として機能する。制御部24は、EV蓄電池11の劣化が大きくなるような充放電履歴を検出した場合に、以降においてはEV蓄電池11の劣化を抑制するような充放電制御を行う。すなわち、EV蓄電池11が劣化する充放電履歴を検出した場合には、それ以降では、EV蓄電池11の劣化を低減するように電気自動車1から住宅システム2に電力を供給する。一方、EV蓄電池11が劣化する充放電履歴を検出していない場合には、それ以降では、充分な電力量を電気自動車1から住宅システム2に供給できるようにする。なお、具体的な動作については後述する。
【0033】
なお、制御部24は、自身で充放電履歴情報を算出してもよい。例えば、電気自動車1の通信部13から充電レベルの変化のみを制御部24によって受信した場合、制御部24は、EV蓄電池11の放電深度の履歴、充放電量の履歴、充放電レートの履歴といった充放電履歴情報を演算する。
【0034】
以上のように、この電力供給システムは、EV蓄電池11の充放電履歴情報に基づいて、電気自動車1と住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御するので、電気自動車1に搭載されたEV蓄電池11の劣化を抑制することができる。すなわち、ある所定の過去期間において、EV蓄電池11の劣化を促進するような充放電があった場合には、それ以降においては、EV蓄電池11の劣化を低減するような充放電制御を行う。
【0035】
つぎに、上述した電力供給システムにおける具体的な動作について説明する。
【0036】
上述した電力供給システムは、EV蓄電池11の充放電履歴情報に基づいて、電気自動車1と住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する。具体的には、電力供給システムは、図2に示すように、過去所定期間(所定の過去期間)T1におけるEV蓄電池11の放電深度が、所定の閾値以上となった充放電履歴がある場合に、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する。放電深度の閾値以上は、充電レベルが所定の閾値以下で判断する。
【0037】
より具体的には、電力供給システムは、過去所定期間T1におけるEV蓄電池11の充電レベルが、所定の閾値以下となった充放電履歴の有無に応じて、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を切り替える。これにより、当該充電レベルの下限値に至るまで、電気自動車1から住宅に電力を放電させるよう制限できる。EV蓄電池11の充電レベルが所定の閾値以下となっていなかった場合には、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を低く制御する。一方、EV蓄電池11の充電レベルが所定の閾値以下となっていた場合には、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を高く制御する。以下、図3を参照して、EV蓄電池11に対する充放電の制御について説明する。
【0038】
電力供給システムは、図3に示すような動作を行って、電気自動車1から住宅システム2に電力を供給する。なお、予め設定した所定時間毎にステップS1が実施される。
【0039】
先ずステップS1において、制御部24は、図示しないタイマを参照し、現在が夜間時間帯か否かを判定する。この夜間時間帯は、予めユーザ等によって設定されている。現在が夜間時間帯である場合にはステップS2に処理を進め、そうでない場合にはステップS3に処理を進める。
【0040】
ステップS2において、制御部24は、EV蓄電池11が満充電となるように充電を実施する。このとき、制御部24は、充放電コンバータ23から電気自動車1に対して所定電圧値の直流電圧を供給する。電気自動車1は、直流電圧が供給されたことに応じて、EV蓄電池11に充電を行う。
【0041】
ステップS3において、電気自動車1の通信部13はEV蓄電池11の充電レベルを検出し、住宅システム2の通信部25に送信する。制御部24は、通信部13と通信部25との通信によって、EV蓄電池11の充電レベルを検出する。
【0042】
次のステップS4において、制御部24は、ステップS3にて検出した充電レベルが所定の下限値より高いか否かを判定する。充電レベルが所定の下限値よりも高い場合、ステップS5に処理を進め、そうでない場合にはステップS6に処理を進める。この所定の下限値は、後述する図4を参照して説明する。
【0043】
ステップS5において、制御部24は、予め設定された下限値までEV蓄電池11の電力の放電を実施させる。このとき、制御部24は、充放電コンバータ23を制御して、EV蓄電池11から電力を取り出す。これによって、充放電コンバータ23は、EV蓄電池11からの放電電力を所定の交流電源に変換して、分電盤21から負荷機器22に供給可能とする。
【0044】
ステップS6において、制御部24は、予め設定された下限値までEV蓄電池11に対して充電を実施させる。このとき、制御部24は、充放電コンバータ23を制御して、EV蓄電池11に対して直流電圧を供給させる。充放電コンバータ23は、制御部24の制御に従って、分電盤21から系統電力を取り出し、所定の直流電圧に変換して、EV蓄電池11に供給する。
【0045】
このように、電力供給システムは、予め設定された充電レベルの下限値に従って、住宅システム2から電気自動車1に充電を行うと共に電気自動車1から住宅システム2に放電を行う。
【0046】
図4に、所定の下限値を決定することによって、EV蓄電池11から放電できる電力を決定する処理を示す。この所定の下限値の決定処理は、予め設定した所定時間毎にステップS11が実施される。
【0047】
先ずステップS11において、制御部24は、電気自動車1の通信部13及び通信部25を介して、充放電履歴情報を取得する。
【0048】
次のステップS12において、制御部24は、過去所定期間T1における充放電履歴情報を参照し、当該過去所定期間T1の放電深度が閾値以上か否かを判定する。この放電深度の閾値は、電気自動車1のEV蓄電池11の容量やEV蓄電池11の種類、EV蓄電池11の劣化を抑制したい度合いなどによって、予め設定されている。過去所定期間T1の放電深度が閾値以上である場合にはステップS13に処理を進め、そうでない場合にはステップS14に処理を進める。
【0049】
ステップS13において、制御部24は、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を、所定値A(高レベル)に設定する。ステップS13においてEV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に設定した後、制御部24は、タイマを起動する。一方、ステップS14において、制御部24は、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を、所定値B(低レベル)に設定する。
【0050】
ステップS15において、制御部24は、以前のステップS13の後に計時を開始した後から、所定の制御期間T2が経過したか否かを判定する。この所定の制御期間T2は、EV蓄電池11の劣化を抑制するために制御を行うための期間である。この所定の制御期間T2は、過去所定期間T1と同じ期間であってもよい。また、所定の制御期間T2は、EV蓄電池11に対して劣化を抑制したい期間であれば任意であってもよい。更に、所定の制御期間T2は、過去所定期間T1におけるEV蓄電池11の劣化の程度に応じて調整してもよい。
【0051】
所定の制御期間T2が経過したと判定した場合にはステップS16に処理を進め、経過していない場合にはステップS13以降の処理を繰り返す。一方、所定の制御期間T2が経過した場合にはステップS16に処理を進める。ステップS16においては、制御部24によって、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を、所定値B(低レベル)に設定する。
【0052】
以上のように、この電力供給システムによれば、図2に示すように、過去所定期間T1において、EV蓄電池11の充電レベルが著しく低下して所定の放電深度の閾値を超えた場合には、充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に設定する。その後の所定の制御期間T2において、電力供給システムは、EV蓄電池11の充電レベルが所定値A(高レベル)より高くなるように住宅システム2から電気自動車1に対して充電を行う。更にその後の所定の制御期間T2内では、所定値A(高レベル)までしか電気自動車1から住宅システム2に放電できないよう制限を行う。所定の制御期間T2を経過すると、制御部24は、充電レベルの下限値を所定値B(低レベル)に戻す。これにより、電力供給システムは、EV蓄電池11から住宅システム2に、所定値B(低レベル)に至るまで放電を行うことができる。
【0053】
この電力供給システムによれば、上述と同様に、過去所定期間T1における放電深度が閾値を超えた場合に、電気自動車1と住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制限する。これにより、この電力供給システムによれば、EV蓄電池11の劣化が大きい場合を判断して、その後の所定の制御期間T2において確実にEV蓄電池11の劣化を抑制できる。
【0054】
また、この電力供給システムは、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する動作として、電気自動車1のEV蓄電池11から住宅システム2への放電電力を、所定の制御期間に亘って制限する。すなわち、充電レベルを所定値A(高レベル)に設定することによって、EV蓄電池11から住宅システム2への放電電力を制限できる。
【0055】
なお、上述した電力供給システムでは、電気自動車1の制御部24によって充放電コンバータ23の動作を制御して、EV蓄電池11の充電レベルを制御したが、住宅システム2以外にコントローラとしての制御部24を設けてもよい。例えば、制御部24の機能を電気自動車1に搭載してもよい。
【0056】
また、上述した電力供給システムでは、充電レベルの下限値を切り替えて住宅への放電電力を決定するものとしたが、放電電力許容量を設定して切り替えることで、住宅への放電電力を決定するものとしても良い。例えば過去所定期間T1における放電深度が閾値を超えた場合に、放電電力許容量を0とすることで、所定期間T2においてEV蓄電池11から住宅への放電を禁止することができる。
【0057】
さらに、上述した電力供給システムでは、夜間時間帯に充電して夜間時間帯以外に放電するものとしたが、太陽電池や燃料電池などの発電装置を備えるものとして、発電電力の余剰分で充電し、発電電力が不足する際に放電するものとしても良い。
【0058】
つぎに、上述した電力供給システムにおける他の構成について説明する。
【0059】
電力供給システムは、過去所定期間T1内のEV蓄電池11の充電及び放電された電力積算量が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御してもよい。
【0060】
この電力供給システムは、図5に示すように、充放電履歴情報を取得したステップS11の後のステップS12aにおいて、過去所定期間T1における充放電履歴情報を参照し、当該過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上か否かを判定する。このEV蓄電池11の充放電積算量の閾値は、電気自動車1のEV蓄電池11の容量やEV蓄電池11の種類、EV蓄電池11の劣化を抑制したい度合いなどによって、予め設定されている。過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上である場合にはステップS13に処理を進め、そうでない場合にはステップS14に処理を進める。
【0061】
具体的には、図6(a)に示すように、過去所定期間T1における充放電積算量が、充放電積算量の閾値を超えた場合には、図6(b)に示すように、所定の制御期間T2におけるEV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)とする。これにより、ステップS13の後の所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に切り替えることができる。
【0062】
以上のように、電力供給システムは、EV蓄電池11の劣化が大きい場合として充放電積算量を検出して、EV蓄電池11の劣化を低減するようEV蓄電池11の充放電を行うことができる。
【0063】
電力供給システムは、過去所定期間T1においてEV蓄電池11の単位時間当たりの充電レベル変動量(充放電レート)が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御してもよい。
【0064】
この電力供給システムは、図7に示すように、充放電履歴情報を取得したステップS11の後のステップS12bにおいて、過去所定期間T1における充放電履歴情報を参照し、当該過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上か否かを判定する。このEV蓄電池11の充放電レートの閾値は、電気自動車1のEV蓄電池11の容量やEV蓄電池11の種類、EV蓄電池11の劣化を抑制したい度合いなどによって、予め設定されている。過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上である場合にはステップS13に処理を進め、そうでない場合にはステップS14に処理を進める。
【0065】
具体的には、図8(a)に示すように、過去所定期間T1における充放電レートが、充放電レートの閾値を超えた場合には、図8(b)に示すように、所定の制御期間T2におけるEV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)とする。これにより、ステップS13の後の所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの下限値を所定値A(高レベル)に切り替えることができる。
【0066】
以上のように、電力供給システムは、EV蓄電池11の劣化が大きい場合として充放電レートを検出して、EV蓄電池11の劣化を低減するようEV蓄電池11の充放電を行うことができる。
【0067】
つぎに、上述した電力供給システムにおいて、住宅システム2との間のEV蓄電池11の充放電を制御する動作を説明する。この動作は、電気自動車1のEV蓄電池11と住宅システム2との間で授受される電力の単位時間当たりの充電レベル変動量を、所定の制御期間T2に亘って制限するものである。
【0068】
この電力供給システムは、図9に示すように、過去所定期間T1における放電深度が閾値以上か否かを判定した結果に応じて、EV蓄電池11に対する充放電レートの上限値を設定する。過去所定期間T1における放電深度が閾値以上となっていた場合にはステップS13aに処理を進める。過去所定期間T1における放電深度が閾値以上となっていなかった場合にはステップS14aに処理を進める。
【0069】
ステップS13aにおいて、制御部24は、EV蓄電池11の充放電レートの上限値を、所定値A(低レベル)に設定する。ステップS14aにおいて、制御部24は、EV蓄電池11の充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0070】
これにより、図10(b)に示すように過去所定期間T1における放電深度が閾値を下回った場合には、図10(a)に示すように、EV蓄電池11の充放電レートの上限値を所定値A(低レベル)に設定する。これにより、所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充放電レートの上限値が所定値A(低レベル)となるように、EV蓄電池11に対して充放電を行う。この結果、図10(b)に示すように、所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの変動を抑制して、EV蓄電池11の劣化を低減できる。所定の制御期間T2の経過後は、図9のステップS16aによって、充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0071】
以上のように、電力供給システムは、充放電レートを制御して住宅システム2とEV蓄電池11との間での充放電電力を少なくして、EV蓄電池11の寿命劣化を低減できる。また、EV蓄電池11の充放電レートを制限することにより、より確実にEV蓄電池11の寿命劣化を低減できる。
【0072】
同様に、電力供給システムは、図11に示すように、ステップS12aにて過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上か否かを判定して、充放電レートの上限値を設定してもよい。電力供給システムは、過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上となっていた場合には、ステップS13aにおいて充放電レートの上限値を所定値A(低レベル)に設定する。一方、過去所定期間T1の充放電積算量が閾値以上となっていない場合には、ステップS14aにおいて充放電レートの上限値を所定値B(高レベル)に設定する。
【0073】
これにより、図12(b)のように過去所定期間T1における充放電積算量が閾値を超えた場合には、図12(a)に示すように、その後の所定の制御期間T2における充放電レートを低くできる。この結果、図12(c)に示すように、所定の制御期間T2においては、EV蓄電池11の充電レベルの変動を抑制して、EV蓄電池11の劣化を低減できる。所定の制御期間T2の経過後は、図11のステップS16aによって、充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0074】
更に、電力供給システムは、図13に示すように、ステップS12bにて過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上か否かを判定して、充放電レートの上限値を設定してもよい。電力供給システムは、過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上となっていた場合には、ステップS13aにおいて充放電レートの上限値を所定値A(低レベル)に設定する。一方、過去所定期間T1の充放電レートが閾値以上となっていない場合には、ステップS14aにおいて充放電レートの上限値を所定値B(高レベル)に設定する。所定の制御期間T2の経過後は、図11のステップS16aによって、充放電レートの上限値を、所定値B(高レベル)に設定する。
【0075】
これにより、図14(b)のように過去所定期間T1における充放電レートが閾値を超えた場合には、図14(a)に示すように、その後の所定の制御期間T2における充放電レートを低くできる。この結果、所定の制御期間T2においては、充放電レートを低くすることでEV蓄電池11の充電レベルの変動を抑制して、EV蓄電池11の劣化を低減できる。
【0076】
つぎに、上述した電力供給システムにおいて、EV蓄電池11の周辺の温度に基づいて、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値を切り替える、又は、EV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を切り替えるものについて説明する。
【0077】
この電力供給システムは、図15に示すように、電気自動車1に温度センサ14を備える。温度センサ14は、EV蓄電池11周辺の温度を検知する。蓄電池情報記憶部12は、温度センサ14により検知された温度を充放電履歴情報として記憶する。
【0078】
この電力供給システムは、図16に示すように、ステップS21において、所定期間ごとに温度センサ14のセンサ出力を検出する。
【0079】
次のステップS22において、制御部24は、ステップS21にて検出されたEV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲内か否かを判定する。また、制御部24は、ステップS23において、ステップS21にて検出されたEV蓄電池11の周辺温度よりも高いか否かを判定する。
【0080】
EV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲内である場合には、ステップS24において、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を条件Cに設定する。EV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲よりも高い場合には、ステップS25において、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を条件Bに設定する。EV蓄電池11の周辺温度が所定の範囲よりも低い場合には、ステップS26において、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を条件Aに設定する。
【0081】
このEV蓄電池11の周辺温度の所定範囲は、EV蓄電池11が充放電を行ってもEV蓄電池11の劣化が大きくならないような温度範囲である。逆に、EV蓄電池11の周辺温度の所定範囲以外においてEV蓄電池11の充放電を行うと、EV蓄電池11の劣化が大きくなる。このような観点より、電力供給システムは、低温、高温時に充放電を控えるように、条件A〜Cによって、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値及びEV蓄電池11の充放電を制御する動作の制御量を切り替える。
【0082】
例えば、EV蓄電池11の温度条件によって、所定の制御期間T2にて充放電制御を行うと判断する閾値としての充放電積算量を制限する場合には、以下のようになる。
【0083】
条件A(低温時):充放電積算量の閾値をPiAとする
条件B(高温時):充放電積算量の閾値をPiBとする
条件C(常温時):充放電積算量の閾値をPiCとする
ここで、PiA<PiC、PiB<PiCとする。この結果、EV蓄電池11の高温時及び低温時には充放電積算量の閾値を低くすることによって、EV蓄電池11の劣化を抑制できる。
【0084】
また、例えばEV蓄電池11の温度条件によって、所定の制御期間T2における充放電レートを制限する場合には、以下のようにする。
【0085】
条件A(低温時):充電レートの上限値をPcA、放電レートの上限値をPdAとする
条件B(高温時):充電レートの上限値をPcB、放電レートの上限値をPdBとする
条件C(常温時):充電レートの上限値をPcC、放電レートの上限値をPdCとする
ここで、PcA<PcC、PcB<PcC、PdA<PdC、PdB<PdCとする。この結果、EV蓄電池11の高温時及び低温時には充電レート及び放電レートの上限値を低くして、EV蓄電池11の劣化を抑制できる。
【0086】
また、この電力供給システムは、充放電制御を行うかを判断するための閾値として放電深度、充放電レートをEV蓄電池11の温度によって切り替えてもよい。さらに、この電力供給システムは、充放電制御における制御量としての充電レベルをEV蓄電池11の温度によって切り替えてもよい。
【0087】
以上のように、電力供給システムは、充放電履歴情報に加えて、EV蓄電池11の温度に応じて、充放電制御を行うかを判断するための閾値及び制御量を切り替えることができる。このような電力供給システムによれば、充放電履歴情報に加えて、主にEV蓄電池11の低温時における劣化を低減でき、更なる劣化の抑制を期待できる。
【0088】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
1 電気自動車
11 EV蓄電池
12 蓄電池情報記憶部
22 負荷機器(電気機器)
24 制御部(電力制御部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を含む住宅と電気自動車との間で授受される電力を管理する電力管理装置であって、
前記電気自動車に搭載された蓄電池の充放電履歴情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された充放電履歴情報に基づいて、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御する電力制御部と
を備えることを特徴とする電力管理装置。
【請求項2】
前記情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って前記蓄電池の充放電履歴を取得し、
前記電力制御部は、前記所定の過去期間において前記蓄電池の放電深度が所定の閾値以上となった充放電履歴がある場合に、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、
前記電力制御部は、前記所定の過去期間内の前記蓄電池の充電及び放電された電力積算量が所定の閾値を超えた場合に、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、
前記電力制御部は、前記所定の過去期間において前記蓄電池の単位時間当たりの充電レベル変動量が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記電力制御部は、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御する動作として、前記電気自動車の前記蓄電池から前記住宅への放電電力を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電力管理装置。
【請求項6】
前記電力制御部は、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御する動作として、前記電気自動車の前記蓄電池と前記住宅との間で授受される電力の単位時間当たりの充電レベル変動量を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電力管理装置。
【請求項7】
前記電力制御部は、前記蓄電池周辺の温度に基づいて、前記閾値を切り替える、又は、前記蓄電池の充放電を制御する動作の制御量を切り替えることを特徴とする請求項2乃至請求項6の何れか一項に記載の電力管理装置。
【請求項1】
電気機器を含む住宅と電気自動車との間で授受される電力を管理する電力管理装置であって、
前記電気自動車に搭載された蓄電池の充放電履歴情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された充放電履歴情報に基づいて、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御する電力制御部と
を備えることを特徴とする電力管理装置。
【請求項2】
前記情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って前記蓄電池の充放電履歴を取得し、
前記電力制御部は、前記所定の過去期間において前記蓄電池の放電深度が所定の閾値以上となった充放電履歴がある場合に、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、
前記電力制御部は、前記所定の過去期間内の前記蓄電池の充電及び放電された電力積算量が所定の閾値を超えた場合に、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記情報取得手段は、少なくとも所定の過去期間に亘って充放電履歴を取得し、
前記電力制御部は、前記所定の過去期間において前記蓄電池の単位時間当たりの充電レベル変動量が所定の閾値を超えていた充放電履歴がある場合に、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項5】
前記電力制御部は、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御する動作として、前記電気自動車の前記蓄電池から前記住宅への放電電力を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電力管理装置。
【請求項6】
前記電力制御部は、前記住宅との間の前記蓄電池の充放電を制御する動作として、前記電気自動車の前記蓄電池と前記住宅との間で授受される電力の単位時間当たりの充電レベル変動量を、所定の制御期間に亘って制限することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電力管理装置。
【請求項7】
前記電力制御部は、前記蓄電池周辺の温度に基づいて、前記閾値を切り替える、又は、前記蓄電池の充放電を制御する動作の制御量を切り替えることを特徴とする請求項2乃至請求項6の何れか一項に記載の電力管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−102608(P2013−102608A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244635(P2011−244635)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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