説明

電動アシスト自転車

【課題】運転途中でハンドルを大きく切る必要が生じた場合でも安全に乗りこなすことができる電動アシスト自転車を提供する。
【解決手段】電動アシスト自転車は、電池41を電源として駆動されるモータ40によりペダルを踏み込む力をアシストする。フレームのヘッドチューブにはハンドル切れ角検出装置60が取り付けられている。モータ40を制御する制御装置50は、ハンドル切れ角検出装置60が検出したハンドル切れ角が所定値を超えたときは、モータ40によるアシスト力を弱める制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
電池駆動のモータでペダルを踏み込む力をアシストする電動アシスト自転車は、重い荷物を載せていたり、坂道を登ったりするときに楽であることから、それを選択して購入する消費者が多くなっている。特許文献1に電動アシスト自転車の例を見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−107266号公報(国際特許分類:B62M23/02、B62K11/00、B62M17/00)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動アシスト自転車は、搭乗者がペダルを踏み込む力(以下「ペダル踏力」と称する)をトルクセンサで検出し、ペダル踏力が所定値を超えたらモータで車輪回転をアシストする仕組みを備えている。この時、Uターンなどを意図してハンドルが大きく切られると、モータの力が加わった状態で車体が急に切れ込むからハンドルコントロールが難しくなり、転倒や暴走の危険が生じる。
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、運転途中でハンドルを大きく切る必要が生じた場合でも安全に乗りこなすことができる電動アシスト自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい実施形態によれば、電動アシスト自転車は、電池駆動のモータでペダル踏力をアシストするものであって、ハンドル切れ角検出装置を備え、前記モータの制御装置は、前記ハンドル切れ角検出装置が検出したハンドル切れ角に基づきアシスト力を加減する制御を行う。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動アシスト自転車において、前記制御装置は、ハンドル切れ角が所定値を超えたとき、アシスト力を弱める制御を行う。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動アシスト自転車において、前記ハンドル切れ角検出装置は、ヘッドチューブに対するハンドルステムの角度変化を検出する。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動アシスト自転車において、前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定されたスイッチと、他方に固定されたスイッチ操作体を含み、前記スイッチと前記スイッチ操作体の位置関係が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化する。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動アシスト自転車において、前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定されたフォトセンサと、他方に固定された干渉板を含み、前記フォトセンサに対する前記干渉板の関係が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化する。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動アシスト自転車において、前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定された磁気センサと、他方に固定された磁性体を含み、前記磁気センサと前記磁性体の位置関係が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化する
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の電動アシスト自転車において、前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定された可変抵抗と、他方に固定された摺動接点を含み、前記可変抵抗に対する前記摺動接点の接触位置が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、ハンドルの切れ角が大きいときはアシスト力を弱める制御を行うことができるから、アシスト力がハンドルコントロールを難しくするようなことがなく、転倒や暴走の危険を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】電動アシスト自転車の側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電動アシスト自転車のブロック構成図である。
【図3】ハンドル切れ角検出装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図4】図3のハンドル切れ角検出装置に含まれるスイッチ操作体の平面図である。
【図5】ハンドル切れ角検出装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図6】図5のハンドル切れ角検出装置に含まれる干渉板の平面図である。
【図7】ハンドル切れ角検出装置の第3実施形態を示す断面図である。
【図8】図7のハンドル切れ角検出装置に含まれる磁性体の平面図である。
【図9】ハンドル切れ角検出装置の第4実施形態を示す断面図である。
【図10】図9のハンドル切れ角検出装置に含まれる可変抵抗の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1から図4までの図に基づき本発明の実施形態に係る電動アシスト自転車の構造を説明する。
電動アシスト自転車1のフレーム10は、前端のヘッドチューブ11と、搭乗者の騎乗位置に配置されるシートチューブ12をダウンチューブ13で連結した構造を有する。シートチューブ12には上端にサドル14を有するシートポスト15が上下位置調整可能に挿入される。ヘッドチューブ11はハンドル16のハンドルステム17を回転自在に保持する。
前輪18は、ハンドルステム17に回転不能に連結するフロントフォーク19に支持される。後輪20は、シートチューブ12の上端から後方に延び出すシートステー21と、シートチューブ12の下端から後方に延び出すチェーンステー22によって支持される。
シートチューブ12、ダウンチューブ13、及びチェーンステー22が集合する箇所に、ペダル23を備えたクランク24が配置される。クランク24の回転力はチェーン25により後輪20に伝達される。
前輪18に対しては、そのリムに制動をかける前ブレーキ26が設けられる。前ブレーキ26はフロントフォーク19に支持されている。後輪20に対しては、そのハブに対し制動をかける後ブレーキ(図示せず)が設けられる。
フロントフォーク19にはヘッドランプ27が取り付けられ、シートステー21にはブレーキランプ28が取り付けられる。フロントフォーク19には前かご29も取り付けられる。シートステー21とチェーンステー22は荷台30を支持する。チェーンステー22にはスタンド31が取り付けられる。
電動アシスト自転車1の要であるモータ40(図2参照)は、前輪18のハブの中にダイレクトドライブ方式のものが組み込まれている。モータ40に電力を供給する電池41は、シートチューブ12の後面に着脱可能に取り付けられる電池ケース42に収納されている。電池41は充電可能な二次電池である。電動アシスト自転車1の制御を司る制御装置50には、ハンドル16に取り付けられた手元操作部51より操作指示が伝えられる。
制御装置50の主要構成要素はマイクロコンピュータ52である。制御装置50はインバータ53を介してモータ40を制御する。モータ40は、ペダル23を踏んでいるときは前輪18を駆動する力を発生し、前進する電動アシスト自転車1の持つ慣性により前輪18が回っているときは回生制動を行うものであり、回生制動時に発生する電力は電池41の補助充電に利用される。
制御装置50にはトルクセンサ54からペダル踏力に関する情報が伝えられる。トルクセンサ54はクランク24の設置箇所に設けられている。
手元操作部51には、電動アシスト走行を選択する電源スイッチや、電動アシスト走行の際の走行モードを選択するモードスイッチ、ヘッドランプ27の点灯/消灯を選択するヘッドランプスイッチなどが配置されている。ハンドル16に設けられた後ブレーキ用のブレーキレバー32にはブレーキスイッチ55が設けられており、ブレーキレバー32を握りしめると後ブレーキがかかると共にブレーキランプ28が点灯する。
ヘッドチューブ11とハンドルステム17の間にハンドル切れ角検出装置60が配置される。以下、その構造を説明する。
図3及び図4に示すのはハンドル切れ角検出装置60の第1実施形態である。第1実施形態のハンドル切れ角検出装置60は、ヘッドチューブ11を囲むドーナツ形の筐体61を有する。筐体61は上ケース61Uと下ケース61Dからなり、防滴対策のため、上ケース61Uは下ケース61Dに外側から被さる形になっている。上ケース61Uはハンドルステム17に固定され、下ケース61Dはヘッドチューブ11に固定される。上ケース61Uの天井面にはアクチュエータ62aを下向きに突き出したスイッチ62が固定され、下ケース61Dの床面にはアクチュエータ62aに組み合わせられるスイッチ操作体63が固定される。スイッチ62とスイッチ操作体63の位置関係は、ヘッドチューブ11とハンドルステム17の相対角度によって変化する。スイッチ操作体63は、アクチュエータ62aの移動軌跡の一部に円弧状のスリット64aを形成したディスク64からなる。
ハンドル切れ角検出装置60の機能について説明する。ハンドル16が中立角度にあるときは、すなわち前輪18が真っ直ぐ前方に向けられているときは、スイッチ62のアクチュエータ62aとスイッチ操作体63は図4に示す位置関係にある。この時はアクチュエータ62aがスイッチ操作体63で押し込まれている。この状態であれば、制御装置50は通常の電動アシスト制御を行う。
ハンドル16を切って行くと、アクチュエータ62aとスリット64aが接近する。ハンドル16の切れ角が所定の大きさになると、アクチュエータ62aがスリット64に落ち込み、スイッチ62のON/OFF状態が反転する。これを受けて制御装置50は、モータ40によるアシスト力を弱める。これにより、ハンドル16が大きく切られているところへ強力なアシスト力が加わってハンドルコントロールが難しくなり、転倒や暴走を招くといった事態を防ぐことができる。ハンドル16を切れ角大の状態から切れ角小の状態に戻し、アクチュエータ62aをスイッチ操作体63に乗り上げさせれば、元のアシスト力に復帰する。
アシスト力をどの程度まで弱めるか、場合によってはアシスト力ゼロとするかは実験に基づき定めるとよい。電動アシスト自転車1の速度があるレベル以上に達しているときにスイッチ62のON/OFF状態が反転したときには、モータ40で回生ブレーキをかけて減速するようにしてもよい。
ハンドル切れ角検出装置60には、スイッチとスイッチ操作体の組み合わせの他、以下の実施形態に示す様々な動作原理の検出手段を用いることができる。なお、第1実施形態と共通する構成要素には第1実施形態で用いたのと同じ符号を附し、説明は省略する。
図5及び図6に示す第2実施形態では、フォトセンサ65と干渉板66の組み合わせが用いられている。発光部65aと受光部65bを備えたフォトセンサ65は上ケース61Uの天井面に固定され、ディスク状の干渉板66は発光部65aと受光部65bの間を遮る形で下ケース61Dに固定されている。フォトセンサ65と干渉板66の位置関係は、ヘッドチューブ11とハンドルステム17の相対角度によって変化する。干渉板66には、フォトセンサ65の移動軌跡の一部に円弧状のスリット66aが形成されている。
ハンドル16が中立角度にあるときは、すなわち前輪18が真っ直ぐ前方に向けられているときは、フォトセンサ65と干渉板66は図6に示す位置関係にある。すなわちフォトセンサ65の光路は干渉板66で遮られている。この状態であれば、制御装置50は通常の電動アシスト制御を行う。
ハンドル16を切って行くと、フォトセンサ65とスリット66aが接近する。ハンドル16の切れ角が所定の大きさになると、スリット66aがフォトセンサ65の光路に重なって発光部65aからの光が受光部65bに届き、フォトセンサ65のON/OFF状態が反転する。これを受けて制御装置50は、モータ40によるアシスト力を弱める。ハンドル16を切れ角大の状態から切れ角小の状態に戻し、干渉板66をフォトセンサ65の光路に干渉させれば、元のアシスト力に復帰する。
図7及び図8に示す第3実施形態では、磁気センサ67と磁性体68の組み合わせが用いられている。磁気センサ67としては例えばホールICを用いることができる。磁気センサ67は基板69に実装され、上ケース61Uの天井面に固定されている。磁性体68は下ケース61Dに固定された磁性金属のディスクであって、その一部には磁気センサ67との距離が近くなる突出部68aが形成されている。磁気センサ67と磁性体68の位置関係は、ヘッドチューブ11とハンドルステム17の相対角度によって変化する。
ハンドル16が中立角度にあるときは、すなわち前輪18が真っ直ぐ前方に向けられているときは、磁気センサ67と磁性体68は図8に示す位置関係にある。すなわち磁性体68の突出部68aが磁気センサ67に接近し、磁気センサ67は磁性体68を検出している。この状態であれば、制御装置50は通常の電動アシスト制御を行う。
ハンドル16を切って行くと、磁気センサ67から磁性体68の突出部68aが離れる。ハンドル16の切れ角が所定の大きさになると、磁気センサ67は磁性体68を検出しなくなる。これを受けて制御装置50は、モータ40によるアシスト力を弱める。ハンドル16を切れ角大の状態から切れ角小の状態に戻し、磁気センサ67による磁性体68の検出を復活させれば、元のアシスト力に復帰する。
図9及び図10に示す第4実施形態では、可変抵抗70と摺動接点71の組み合わせが用いられている。可変抵抗70は、下ケース61Dの床面に固定されたドーナツ形の絶縁基板72の上面に、円環の一部が切れた形の抵抗体73を形成したものである。摺動接点71は、上ケース61Uの天井面に固定された絶縁基板74から垂下して抵抗体73に接触する。抵抗体73の両端は接点75、76に接続され、摺動接点71は接点77に接続される。制御装置50には、接点75、77間の抵抗値のデータと接点76、77間の抵抗値のデータが伝えられる。可変抵抗70と摺動接点71の位置関係は、ヘッドチューブ11とハンドルステム17の相対角度によって変化する。
ハンドル16が中立角度にあるときは、すなわち前輪18が真っ直ぐ前方に向けられているときは、可変抵抗70と摺動接点71は図10に示す位置関係にある。すなわち摺動接点71は抵抗体73の両端から等距離の位置にあり、接点75、77間の抵抗値と、接点76、77間の抵抗値は等しい。ハンドル16を切ると、接点75、77間の抵抗値と接点76、77間の抵抗値が等しくなくなる。制御装置50は、それらの抵抗値の比率からハンドル16の切れ角を判定する。ハンドル16の切れ角が所定の範囲内であれば、制御装置50は通常の電動アシスト制御を行う。ハンドル16の切れ角が所定の範囲を超えて大きくなったときは、制御装置50は、モータ40によるアシスト力を弱める。ハンドル16を切れ角大の状態から切れ角小の状態に戻し、接点75、77間の抵抗値と接点76、77間の抵抗値の比率が所定範囲内に戻れば、元のアシスト力に復帰する。
第4実施形態では、ハンドル16の切れ角の変化を連続的な数値で把握することができる。そのため、アシスト力を単に強弱に切り替えるのでなく、ハンドル16の切れ角が大きくなるにつれアシスト力を段階的に、あるいは連続的に弱めるといった制御も可能である。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は電動アシスト自転車に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0010】
1 電動アシスト自転車
10 フレーム
11 ヘッドチューブ
16 ハンドル
17 ハンドルステム
18 前輪
20 後輪
40 モータ
41 電池
50 制御装置
60 ハンドル切れ角検出装置
62 スイッチ
63 スイッチ操作体
65 フォトセンサ
66 干渉板
67 磁気センサ
68 磁性体
70 可変抵抗
71 摺動接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池駆動のモータでペダル踏力をアシストする電動アシスト自転車において、
ハンドル切れ角検出装置を備え、前記モータの制御装置は、前記ハンドル切れ角検出装置が検出したハンドル切れ角に基づきアシスト力を加減する制御を行うことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
前記制御装置は、ハンドル切れ角が所定値を超えたとき、アシスト力を弱める制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項3】
前記ハンドル切れ角検出装置は、ヘッドチューブに対するハンドルステムの角度変化を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の電動アシスト自転車。
【請求項4】
前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定されたスイッチと、他方に固定されたスイッチ操作体を含み、前記スイッチと前記スイッチ操作体の位置関係が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化することを特徴とする請求項3に記載の電動アシスト自転車。
【請求項5】
前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定されたフォトセンサと、他方に固定された干渉板を含み、前記フォトセンサに対する前記干渉板の関係が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化することを特徴とする請求項3に記載の電動アシスト自転車。
【請求項6】
前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定された磁気センサと、他方に固定された磁性体を含み、前記磁気センサと前記磁性体の位置関係が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化することを特徴とする請求項3に記載の電動アシスト自転車。
【請求項7】
前記ハンドル切れ角検出装置は、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの一方に固定された可変抵抗と、他方に固定された摺動接点を含み、前記可変抵抗に対する前記摺動接点の接触位置が、前記ヘッドチューブと前記ハンドルステムの相対角度によって変化することを特徴とする請求項3に記載の電動アシスト自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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