説明

電動ステープラ

【課題】駆動カム,駆動リンク等の駆動部材を少なくして、機械サイズ、部品点数および製造コストを改善し、アンビル等を取り付けたスライドブロック部等が脱着方式であっても、アンビル等とステープラ本体側針通路との相対位置精度を向上させる。
【解決手段】針を打ち込むドライバ部5と、ドライバ部5の打ち込み動作をガイドするアンビル15付きのスライドブロック部6を備え、上下に延びる長孔82をドライバ部5に設けると共に、長孔82に移動可能に嵌まる上下揺動自在なスライドブロックラッチ74をスライドブロック部6に設ける。ドライバ部5の駆動タイミングに応じて、スライドブロックラッチ74が長孔82の端部に係合することで、ドライバ部5の駆動に連動して、スライドブロック部6が駆動される。ガイドケース部16,17には、スライドブロックラッチ74のT状バーを支持面56a側に付勢押圧するスライドブロックプッシャ67を設け、上死点時にスライドブロック部6にガタツキ等が生ずることを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ステープラに関するものであり、特に、複写機等に内蔵される新規有用な電動ステープラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種の電動ステープラとしては、可動クリンチャを備えたクリンチャ部に対して、紙テーブルを挟んでフォーミングプレートを有するフォーミング部と、ドライバプレートを有するドライバ部とを上下に対向して配置させたものが知られている。このものでは、フォーミング部とドライバ部をクリンチャ部側に移動させて、フォーミングプレートで針をコ字形に折り曲げると共に、ドライバプレートで針を打ち出して紙テーブル上の紙に針の脚部を貫通させ、該脚部を可動クリンチャで折り曲げて、紙を綴じることができる。(特許文献1等を参照)。また、ドライバ部及びフォーミング部等をユニット化してステープラ本体に脱着可能に装着できるように構成することが提案されているが、この場合、ドライバ部の打ち込み動作をガイドするスライドブロック部が必要になる。
【特許文献1】特開2003−92488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記フォーミング部、ドライバ部及びスライドブロック部を一体化した場合、フォーミング部、ドライバ部及びスライドブロック部をそれぞれ独立別個のタイミングで動作させる必要がある。このため、3つの駆動手段、すなわち、3つの駆動カム又は駆動リンク等の駆動部材を必要とし、機械サイズ、部品点数および製造コストなどの面で不利になるという問題があった。
【0004】
また、スライドブロック部にアンビル(曲げ台)を取り付けた場合、スライドブロック部のホーム位置待機時に、アンビルとステープラ本体側針通路との相対位置は高い精度が要求される。しかし、駆動リンクにはある程度のガタが必要であり、加えて、フォーミング部、ドライバ部及びスライドブロック部がステープラ本体に対して脱着可能に装着されるために、スライドブロック部が上死点に位置した時にガタツキ(遊び)が生じて、アンビルと本体側針通路との相対位置が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、駆動カム,駆動リンク等の駆動部材を少なくして、機械サイズ、部品点数および製造コストなどを有利し、かつ、スライドブロック部等が脱着タイプであっても、ステープラ本体側針通路との相対位置精度が向上するようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はその課題を解決することを目的とするものである。即ち、本発明は、ドライバ部とスライドブロック部の駆動手段を共有化し、かつ、上死点でのスライドブロック部のガタ取りも可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、針を打ち込むドライバプレートを有するドライバ部と、該ドライバ部の昇降動作をスライド可能にガイドするスライドブロック部とを備えた電動ステープラであって、該ドライバ部に前記針打込み方向に延びる長孔を設けると共に、該長孔に移動可能に嵌まるスライドブロックラッチを前記スライドブロック部に上下揺動自在に設け、該スライドブロックラッチが前記ドライバ部の駆動タイミングに応じて前記長孔の端部に係合するように構成した電動ステープラを提供する。
【0007】
この構成によれば、スライドブロック部は、ドライバ部の長孔に上下動可能に嵌まるスライドブロックラッチを備える。そして、ドライバ部の駆動タイミングに応じて、スライドブロックラッチが長孔の端部に係合することにより、ドライバ部の駆動と連動して、スライドブロック部が所定のストロークだけ駆動される。例えば、針打ち込み時には、スライドブロックラッチの下端突部が長孔の上端部に係合するため、スライドブロック部は、ドライバ部の下降駆動に連動して下降駆動される。
【0008】
請求項2の発明は、上記スライドブロック部は、支持面を有するスライドガイドケース部に昇降可能に装着されていると共に付勢手段により下方へ付勢され、該付勢手段によって上記スライドブロックラッチの一部が、上死点時に前記スライドガイドケース部の支持面に押し付けられるように構成した請求項1記載の電動ステープラを提供する。
【0009】
この構成によれば、スライドブロック部が移動可能に装着収納されたスライドガイドケース部に、スライドブロック部を下方へ弾発的に付勢するバネ、押し下げ部材等の付勢手段を設けたことにより、スライドブロック部が上死点に位置した時は、スライドブロックラッチの一部、例えば、T状バーがスライドガイドケース部側の支持面に係合して押し付けられる。従って、待機時に、スライドブロック部にガタツキや遊びを発生させる恐れがない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明は、ドライバ部の駆動タイミングに応じて、スライドブロックラッチが長孔の端部に係合することにより、ドライバ部の駆動と連動して、スライドブロック部が駆動されるので、1つの駆動源によりドライバ部のドライバプレートとスライドブロック部の双方を駆動でき、スライドブロック部を駆動するための専用の駆動手段が不要になる。つまり、スライドブロック部とドライバ部とを所定の動作タイミングで連結・解除させるスライドブロックラッチを設けたことにより、スライドブロック部用の独立した駆動カム,駆動リンク等の駆動部材を削減でき、機械サイズ、部品点数、省スペース化および低コスト化が図れるという優れた効果を有する。
【0011】
請求項2記載の発明は、アンビル等を取り付けたスライドブロック部が上死点にあるとき、スライドブロックラッチの一部をスライドガイドケース部側の支持固定面に押し付けるためのコイルスプリング等の付勢手段を設けたので、請求項1記載の発明の効果に加えて、スライドブロック部にガタツキや遊びが発生することを解消でき、スライドブロック部側アンビルと本体側針通路との間で所要の相対位置精度が安定して確保できる。
【0012】
即ち、上死点(ホーム位置)にて、スライドブロック部を固定すべく、スライドブロックラッチの一部下面が、固定上面に当接すべく付勢力で押し付けられるので、スライドブロック部のガタツキを除去して、高精度の位置決め保持を確実に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による最良の実施形態は、駆動カム,駆動リンク等の駆動部材を少なくして、機械サイズ、部品点数および製造コストなどを有利し、かつ、アンビルを取り付けたスライドブロック部等が脱着タイプであっても、アンビルとステープラ本体側の針通路との相対位置精度が向上するようにするという目的を達成するため、針を打ち込むドライバ部と、該ドライバ部の打ち込み動作をガイドするスライドブロック部とを備え、前記打ち込み方向に延びる長孔をドライバ部に設けると共に、長孔に移動可能に嵌まる上下揺動自在なスライドブロックラッチをスライドブロック部に設け、ドライバ部の駆動タイミングに応じて、スライドブロックラッチが長孔の端部に係合することにより、前記ドライバ部の駆動に連動して、スライドブロック部が駆動されることを特徴とする。
【0014】
動作ストロークの近いスライドブロック部とドライバ部を1つの駆動リンクで駆動し、スライドブロック部に、スライドブロックラッチと嵌まる溝孔等を適当に配置し、スライドブロックラッチとドライバホルダとの連結と解除をコントロールし、ドライバプレートの動きに従って、スライドブロック部の動きを、ホールド、駆動およびフリー移動に切り換わるようにし、これにより、駆動リンクはドライバプレート用とフォーミングプレート用の2種類で済む。
【0015】
この場合、駆動リンクの動作範囲は上死点よりも若干上側に設定し、駆動リンクとスライドブロック部の間にバネ(弾発付勢手段)を設けて、スライドブロック部を下方固定面側へ押し付ける。つまり、アンビル等を取り付けたスライドブロック部が上死点にあるとき、スライドブロックラッチをスライドガイドケース部の固定面に押し付けるバネを設ける。
【0016】
これにより、スライドブロック部の上死点位置決め時に、スライドブロックプッシャのバネ力によってスライドブロック部のガタ取りと位置決めが可能になる。即ち、スライドブロック部にアンビルなどを取り付けたものでは、ホーム位置待機時のアンビルの高さ位置と本体側針通路の高さ位置とは、相互に一致する必要があるが、駆動リンク等には動作上若干のガタが必要になり、上死点では遊びが生じる。そこで、上死点にてスライドブロックラッチの一部(例えばT状部分78)をスライドガイドケース部の固定部(例えばT状孔56の支持面56a)にバネで押し当てることによって、スライドブロック部のガタ発生を抑止して高精度な位置決めを可能にする。
【実施例】
【0017】
以下、本発明による一実施例について、図1乃至図16を参照しながら説明する。本実施例に係る電動ステープラ1は、紙テーブル2上に紙Pをセットし、フォーミング部4、ドライバ部5、スライドブロック部6をクリンチャ部7側に下降移動させて、フォーミング部4のフォーミングプレート8でコ字形に成形された針Sを、ドライバ部5のドライバプレート9により下方に打ち出して紙Pを貫通させ、針Sの脚部をクリンチャ部7の可動クリンチャで折り曲げるようにしたものである。
【0018】
本実施例では、動作ストロークの近いスライドブロック部6とドライバ部5を1つの駆動リンクで駆動し、スライドブロック部6に、スライドブロックラッチ74の上端部、下端部がドライバ部5、17の前面に所定位置で当接できるように長孔82、85等を適所に形成し、スライドブロックラッチ74を介するスライドブロック部6とドライバ部5との連結と解除を所定の動作タイミングでコントロールする。これにより、ドライバ部5の動きに従って、スライドブロック部6の動きを、ホールド、駆動およびフリー移動を順次可能にすべく切り換えるように構成されている。例えば、ドライバ部5の下降時、スライドブロック部6の動きはホールド、下降駆動、下降フリーとなる。尚、ドライバ部5の上昇時にはこれと逆の動作を辿る。
【0019】
即ち、針成形用フォーミングプレート8を有するフォーミング部4と、針打込み用ドライバプレート9を有するドライバ部5と、ドライバ部用ガイド凹部73を有するスライドブロック部6と、曲げ台であるアンビル15及びフェースバックプレート59等を備え、スライドブロック部6とドライバ部5とを所定のタイミングで連結・解除させるスライドブロックラッチ74を設けることにより、ドライバ部5の駆動に連動してスライドブロック部6を駆動させ、スライドブロック部用の独立した駆動リンク等を不要にしたものである。
【0020】
図1に示すように、電動ステープラ1は、可動クリンチャを備えたクリンチャ部7と、ドライバアッセンブリー3及び針送りアッセンブリー10が脱着可能に装着されたステー
プラ本体11とから成る。クリンチャ部7、ステープラ本体11はそれぞれ、支柱12で連結された上部プレート13、下部プレート14に取り付けられ、紙テーブル2を挟んで上下に対向して配置されている。ドライバアッセンブリー3は、アンビル15上の針Sをコ字形に成形するフォーミング部4と、該コ字形針を紙Sに打ち込むドライバ部5と、ドライバ部5の打ち込み動作をスライド可能にガイドするスライドブロック部6とをユニット化して、これをスライドガイドケース部16,17内に所定ストローク移動可能に組付ける。
【0021】
図2に示すように、針送りアッセンブリー10は針送りモータ19で駆動され、メインマガジン20に収容されたシート状ステープルをドライバアッセンブリー3側に所定のタイミングで送り出す。この針送りアッセンブリー10の前面下部には左右一対の位置決めピン21が設けられ、位置決めピン21等は圧縮コイルスプリング24によりドライバアッセンブリー3側に付勢されている。
【0022】
図3に示すように、ステープラ本体11の筐体は前面開口部を有し、筐体の前面側、背面側(前方向F側、後方向B側)よりドライバアッセンブリー3、針送りアッセンブリー10がそれぞれステープラ本体11内に脱着可能に装着されている。又、図2に示すように、ステープラ本体11前面開口部の下部両側縁には、ピン孔22を有するプレート23が固設されている。
【0023】
ステープラ本体11の前部両側には、ピン25,ピン26を上部、下部に有するサイドパネル28が設けられ、ピン25,ピン26は、ステープラ本体11側面の上部、下部に斜め方向に形成した長孔29,長孔30にスライド自在に嵌まっている。更に、サイドパネル28の前側には上下一対の爪部31,32が形成され、爪部31,32内側の切欠凹部33,34には、後側スライドガイドケース側の突起35,36が係脱可能に係合している。
【0024】
ステープラ本体11の前面開口部上側には、ドライバアッセンブリー3の上側部分をロック解除可能に固定するレバー式保持カバー38が設けられ、保持カバー38の下側部分は、手前側に屈曲して形成されている。保持カバー38の上部背面には、水平に延びるシャフト39が連結され、図4に示すように、シャフト39の両端近傍部には、左右一対の引っ張りコイルスプリング40の下端部が掛止され、引っ張りコイルスプリング40の上端部は、前記シャフト39と平行なシャフト41の両端近傍部に掛止されている。
【0025】
上側シャフト41の両端部は、サイドパネル28の上部に形成した水平方向の長孔42にスライド自在に嵌まっている。従って、保持カバー38を持ち上げると、保持カバー38が水平軸43の回りに上方回動し、サイドパネル28が長孔29,30に沿って斜め上方に動くため、切欠凹部33,34とアッセンブリー側突起35,36との係合ロックが解除される。
【0026】
一方、ステープラ本体11の上部には駆動モータ45が配設されていると共に、上カバー46が取り付けられている。図3に示すように、駆動モータ45の出力は、ギャー機構47を介して駆動カム48に伝達され、ドライバ用駆動リンク49を上下に揺動させる。駆動リンク49の揺動に伴い、ドライバ部側の突起52が所定のタイミングで昇降する。又、駆動モータ45の駆動に関連して、駆動リンク50が上下に揺動し、フォーミング部側の突起53が所定のタイミングで昇降する。
【0027】
次に、ドライバアッセンブリー3の構成について説明する。図5に示すように、ドライバアッセンブリー3の組付け収納体は、一対の前側スライドガイドケース部16と後側スライドガイドケース部17とをピン54等で相互連結して形成されている。このガイドケ
ース部内には、フォーミングプレート8を有するフォーミング部4と、ドライバプレート9を有するドライバ部5と、アンビル15を有するスライドブロック部6とが、夫々所要ストロークだけ昇降できるように装着収納されている。
【0028】
図6に示すように、前側スライドガイドケース部16の上部中央には、T状孔56と長孔57と方形孔58とが順次連通して形成されている。又、前側スライドガイドケース部16の下部中央には、縦長の切欠凹所60が形成され、前側スライドガイドケース部16の左右幅方向W両側の下縁部には、ピン54が水平方向に植設されている。
【0029】
前側スライドガイドケース部16の幅方向両側の取付け部61には、ピン62を介してフェースバックプレート59の上部が回動可能に枢着され、フェースバックプレート59の左右両側下部は、前側スライドガイドケース部16の背面を水平に囲むように内側に折り曲げられ、該折り曲げ部に左右一対の位置決め孔37が形成されている。開閉可能なフェースバックプレート59下部の左右折曲端同士は互いに近接し、該近接部の間にはガイド部63が一体に設けられている。前側スライドガイドケース部16の下端部には、フェースバックプレート59の回動をロックするためのツマミ64付きロックレバー65が設けられ、ツマミ64でロックレバー65を持ち上げることにより、フェースバックプレート59のロック状態が解除される。
【0030】
一方、後側スライドガイドケース部17の前面上端側には突起66が形成され、突起66にはスライドブロックプッシャ67が設けられている。スライドブロックプッシャ67は圧縮コイルスプリング68により常に下方へ弾発付勢され、スライドブロックプッシャ67の下端でスライドブロック部6の上端面を弾性的に下方に押圧している。後側スライドガイドケース部17の上側部分には、上下に延びるラッチ用長孔70が形成されていると共に、その左右両側には、ラッチ用長孔70と平行な突起53用の長孔71,71が形成されている。
【0031】
後側スライドガイドケース部17の下側部分の左右両縁部には、ピン54と対応するピン孔55が穿設され、後側スライドガイドケース部17の下端中央部は方形に切り欠かれている。後側スライドガイドケース部17の左右両側には、上下一対の幅方向外方に延びる上側突起35,35と下側突起36,36とが設けられている。
【0032】
スライドブロック部6の上側部分中央には、ケース側長孔56,57,58と対応する略I字形のラッチ用長孔72が形成されている。又、スライドブロック部6の左右両側縁部には、上下へ所定寸法だけ延びる凹部73が形成されている。スライドブロック部6の前側上部には、スライドブロックラッチ74が上下方向に取り付けられ、スライドブロックラッチ74は、上下方向中間部の水平ピン75(図12参照)の回りに前後方向F,Bに揺動可能に設けられている。
【0033】
スライドブロックラッチ74背面側の下端突部76は、後側スライドガイドケース部17の前面に摺動可能に当接している一方、スライドブロックラッチ74の上端突部77はドライバ部5の前面に摺動可能に当接している。上端突部77の前面側には、T状バー78がT形孔56の支持下面56aに支持可能に設けられ、前記下端突部76の前面側には、T状バー79が角形孔58に昇降可能に嵌合して設けられている。これにより、スライドブロックラッチ74は横振れすることなく、スムーズに上下揺動するようになっている。
【0034】
スライドブロック部6の下側部分には、アンビル15が前後方向に開閉可能に設けられ、アンビル15は、フォーミングプレート8で針Sをコ字形に成形する際の曲げ台として機能する。スライドブロック部6の下端中央部には、図8に示すように、クラウンサポー
ト80が前後方向に開閉可能に設けられ、クラウンサポート80は閉じられると垂下状態になる。クラウンサポート80は、針打込み時に、針Sのクラウン部を安定支持する。又、クラウンサポート80の左右幅方向両側には、図9に示すように、針Sの下降を許容する針通路81が形成されている。
【0035】
図6に示すように、ドライバ部5は、上下方向に延びるラッチ用長孔82を有するドライバホルダ18と、ドライバホルダ18の下部に取り付けられたドライバプレート9とから成る。前記長孔82には、スライドブロックラッチ74の下端突部76がスライド自在に嵌合している。又、ドライバホルダ18の上端部左右両側には、駆動リンク49の一端側凹部83に係合する突起52が設けられ、突起52はスライドブロック部6の凹部73内を昇降できるようになっている。
【0036】
ドライバホルダ18は駆動モータ45により、駆動カム48及び駆動リンク49を介して昇降し、ドライバプレート9の下降時にコ字形針Sを切断して紙P側に打ち込む。又、ドライバ部5の下降又は上昇に関連して、アンビル15及びクラウンプレート80が所定のタイミングでスライドブロック部6側に退避又は突出する。
【0037】
フォーミング部4は、針Sをコ字形に成形するためのフォーミングプレート8と、フォーミングプレート8の上部を保持するフォーミングホルダ84とから成る。フォーミングホルダ84の中央部には、上下方向に延びるラッチ用長孔85が形成され、長孔85には、スライドブロックラッチ74の下端突部76がスライド自在に嵌まっている。又、フォーミングホルダ84の上端部左右両側には、一対の突起53が水平に突出して設けられ、突起53の先端部には切欠凹部86が形成されている。突起53は、図7に示すように、長孔71を貫通遊嵌して、切欠凹部86にフォーミング用駆動リンク50のピン51が駆動可能に係合している。
【0038】
次に、本実施例の作用について説明する。まず、図10(a)に示すように、ドライバアッセンブリー3はホーム位置に待機しており、この待機状態では、アンビル15等を取り付けたスライドブロック部6は上死点に位置しているが、圧縮コイルスプリング68の力により、スライドブロックプッシャ67の下端面がスライドブロック部6に弾性的に当接して下方に付勢している。このため、スライドブロックラッチ74のT状バー78は、T状孔56下端面56aに当たって押し付けられるので、スライドブロック部6がスライドガイドケース部16,17に対してガタや遊びを生じる恐れがない(図11、図12(a))。尚、図12中の符号Hは、スライドブロック部6の下端面と一致するマガジン面の高さを示す。
【0039】
スライドブロックラッチ74の下端突部76は後側スライドガイドケース部17の前面に当接し、かつ、スライドブロックラッチ74の上端突部77はドライバ部5の前面に当接している(図12(b))。尚、シート状針Sは所定のタイミングでドライバアッセンブリー3側に送られるが、その最先端側の1本目は既にコ字形に成形されているものとする。
【0040】
いま、駆動モータ45が駆動すると、図10(b)に示すように、まず、フォーミング用駆動リンク50を介してフォーミング部4が下降を開始し、フォーミング部4のフォーミングプレート8が所定の成形位置まで下降すると、アンビル15上の直線状針Sをコ字形に成形する。成形後、ドライバ部5の下降に伴い、アンビル15がスライドブロック部6側に退避する。
【0041】
又、駆動モータ45が駆動すると、ドライバ用駆動リンク49を介してドライバ部5が下降を開始し、この時、スライドブロック部6は未だ下降を開始しない(図12(b))
。そして、ドライバ部5のドライバプレート9は所定の切断位置まで下降すると、コ字形Sを切断分離してクラウンサポート80上に支持される。この針切断と略同時に、スライドブロックラッチ74の下端突部76がラッチ用長孔82の上端部に当接すると共に、スライドブロックラッチ74の上端突部77がT状孔56下端面56aから外れる(図12(c))。
【0042】
この後、図10(c)に示すように、ドライバ部5の下降に伴い、スライドブロック部6がドライバ部5と一体に下降を開始する。そして、図10(d)に示すように、ドライバ部5及びスライドブロック部6が所定のクランプ位置まで下降すると、ドライバプレート9による針打ち込みを開始する。即ち、コ字形針Sを支持するクラウンサポート80が下方に回動しつつ、コ字形針Sの脚部を紙Pに貫通させる(図12(d))。
【0043】
続いて、ドライバ部5及びスライドブロック部6が所定ストロークだけ更に下降すると、コ字形針Sの脚部が可動クリンチャにより紙P裏面に沿って折り曲げられて、図10(e)に示すように、針Sの打ち込みが完了する。
【0044】
ここで、図13の状態において、保持カバー38を持ち上げると、シャフト39とシャフト41が水平軸43の回りに上方回動し、サイドパネル28が上斜め方向に移動し、突起35,36と切欠凹部33,34との係合が解除される。ついで、ドライバアッセンブリー3を手前に引くと、ピン54及び位置決め孔37がピン孔22及び位置決めピン21から離脱することにより、ステープラ本体11に対してドライバアッセンブリー3が取り外される(図14)。
【0045】
ここで、針ジャムの処理を行う場合は、フェースバックプレート59の回動ロックを解除してツマミ64を持ち上げればよい(図15)。即ち、に示すフェースバックプレート59のロック状態を解除して、ツマミ64でフェースバックプレート59を上方に回動させると、ガイド部63が開放されるため、針Sを簡単に除去できる(図16(a)、(b))。
【0046】
以上の如く、スライドブロック部6は、ドライバ部5の長孔82に上下動可能に嵌まるスライドブロックラッチ74を備える。そして、ドライバ部5の駆動タイミングに応じて、スライドブロックラッチ74が長孔82の端部に係合することにより、ドライバ部5の駆動と連動して、スライドブロック部6が所定のストロークだけ駆動される。例えば、針打ち込み時には、スライドブロックラッチ74の下端突部76が長孔82の上端部に係合するため、スライドブロック部6は、ドライバ部5の下降駆動に連動して、下降駆動される。尚、ドライバ部5の上昇駆動時には、上記とは逆の動作により、ドライバ部5と連動してスライドブロック部6が上昇駆動される。
【0047】
本実施例によれば、スライドブロック部6とドライバ部5とを所定の動作タイミングで連結・解除させるスライドブロックラッチ74を設けたことにより、スライドブロック部用の独立した駆動カム,駆動リンク等の駆動部材を削減でき、機械サイズの縮小化、部品点数の減少化が図れる。
【0048】
従来方式であれば、スライドブロック部6の駆動を独立した駆動手段で行うには、それ専用の駆動カム、駆動リンクが必要となり、スペースや部品点数が増加するが、本実施例はこれを解消する。即ち、針切断後、駆動モータ45により駆動されるドライバ部5と共にスライドブロック部6も一体的に駆動されるので、スライドブロック部6専用の独立した駆動手段が不要になり、駆動リンクは、フォーミング部4用とドライバ部5用の2種類で済み、その分だけ省スペース化および低コスト化が図れる。
【0049】
スライドブロック部6が上死点にある時、駆動リンク49の動作範囲はスライドブロック部6の上死点よりも若干上側に設定されているが、スライドブロックプッシャ67のT状バー79は、圧縮コイルスプリング68の力によってスライドガイドケース部16の固定面(T状孔56の下端面56a)に押し付けられる。したがって、スライドガイドケース部16,17及びステープラ本体11側に対してスライドブロック部6にガタや遊びが生ずる虞がない。よって、アンビル15等と本体側針通路81との相対位置精度が向上し、正確な位置決めが可能になる。
【0050】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例に適用された電動ステープラを前方から見た全体構成を示す斜視図。
【図2】同上電動ステープラの分解斜視図。
【図3】同上電動ステープラの駆動機構の内部側面図。
【図4】同上電動ステープラの保持カバーのロック機構を示す要部斜視図。
【図5】同上電動ステープラのドライバアッセンブリーの背面側を示す斜視図。
【図6】図5の分解斜視図。
【図7】同上電動ステープラのステープラ本体にドライバアッセンブリーを組付けるときの状態を説明する分解斜視図。
【図8】同上電動ステープラのクラウンプレートを示す要部側面図。
【図9】図8の平面図。
【図10】同上電動ステープラのドライバアッセンブリー(ガイドケース部を省略)の動作を説明する斜視図であり、(a)は待機時の状態を示す斜視図、(b)はフォーミング時の状態を示す斜視図、(c)はドライバ部下降時(針切断時)の状態を示す斜視図、(d)はクランプ時の状態を示す斜視図、(e)は打込み完了時の状態を示す斜視図。
【図11】同上電動ステープラのドライバアッセンブリーの背面図。
【図12】図11のA−A線矢視断面図であって、(a)は待機時の状態を示す断面図、(b)はドライバ部のみ下降時の状態を示す断面図、(c)はスライドブロック部の下降時の状態を示す断面図、(d)はスライドブロック部のフリー下降時の状態を示す断面図。
【図13】同上電動ステープラのドライバアッセンブリーを取り外す前の状態を示す斜視図。
【図14】同上電動ステープラのドライバアッセンブリーを取り外した後の状態を示す斜視図。
【図15】同上電動ステープラのドライバアッセンブリーの背面側を示す斜視図。
【図16】同上電動ステープラのスライドブロック部の下端部を示し、(a)はフェースバックプレートのロックを解除する前の状態を示す要部側面図、(b)はフェースバックプレートのロックを解除した後の状態を示す要部側面図。
【符号の説明】
【0052】
1 電動ステープラ
2 紙テーブル
3 ドライバアッセンブリー
4 フォーミング部
5 ドライバ部
6 スライドブロック部
7 クリンチャ部
8 フォーミングプレート
9 ドライバプレート
10 針送りアッセンブリー
11 ステープラ本体
15 アンビル(曲げ台)
16 前側スライドガイドケース部
17 後側スライドガイドケース部
18 ドライバホルダ
21 位置決めピン
22 ピン孔
28 サイドパネル
29,30長孔
31,32爪部
33,34切欠凹部
37 位置決め孔
38 保持カバー
46 駆動モータ
48 駆動カム
49 ドライバ用駆動リンク
50 フォーミング用駆動リンク
56 T状孔
56a 支持面(下端面)
59 フェースバックプレート
63 ガイド板
64 ツマミ
65 ロックレバー
67 スライドブロックプッシャ(付勢手段)
68 圧縮コイルスプリング(付勢手段)
70 ラッチ用長孔
71,72長孔
74 スライドブロックラッチ
76 下端突部
77 上端突部
78,79T状バー
80 クラウンサポート
82 ラッチ用長孔
84 フォーミングホルダ
85 ラッチ用長孔
86 切欠凹部
P 紙
S 針







【特許請求の範囲】
【請求項1】
針を打ち込むドライバプレートを有するドライバ部と、該ドライバ部の昇降動作をスライド可能にガイドするスライドブロック部とを備えた電動ステープラであって、該ドライバ部に前記針打込み方向に延びる長孔を設けると共に、該長孔に移動可能に嵌まるスライドブロックラッチを前記スライドブロック部に上下揺動自在に設け、該スライドブロックラッチが前記ドライバ部の駆動タイミングに応じて前記長孔の端部に係合する構成としたことを特徴とする電動ステープラ。
【請求項2】
上記スライドブロック部は、支持面を有するスライドガイドケース部に昇降可能に装着されていると共に付勢手段により下方へ付勢され、該付勢手段により上記スライドブロックラッチの一部が上死点時に前記スライドガイドケース部の支持面に押し付けられる構成としたことを特徴とする請求項1記載の電動ステープラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−98770(P2007−98770A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291483(P2005−291483)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】