説明

電動プレス

【課題】 安全性の高い電動プレスを提供する。
【解決手段】メインCPU1は、サーボドライバ10からの信号によりラム51が所定の位置の時に、検出信号をリレー2に出力し、ミュート信号をエリアセンサ30に送る。サブCPU3は、エンコーダ9の位置信号によりラム51が所定の状態にある時、検出信号をリレー4に出力し、ミュート信号をエリアセンサ30に送る。メインとサブのCPUは相互に監視し、メインCPU1は、リレー4の出力をチェックし、ミュート信号が出力されていない時には、該リレー2をオフにする。そして、サブCPU3の状態とメインCPU1の状態を比較し、両者が一致すれば、リレー4の異常と判断する。サブCPU3も同様の動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動プレスに関する。
【背景技術】
【0002】
電動プレスは、モータを駆動源として、被加工物に対してラムを昇降させて加圧する構成を有するものであるが、安全のためにエリアセンサを設け、稼働中に操作者などが所定エリアに侵入するとモータを非常停止する構成を備えている場合が多い。
一方、電動プレスはラムに装着するワークの交換や動作をプレスにティーチングする必要などから、操作者が前記所定エリア内に入る必要がある。そのため、電動プレスが待機状態にある時など、所定の状態の時には、前記エリアセンサにミューティング信号を出力して、エリアセンサを無効化する装置を備えている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−277800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CPUの暴走などにより、電動プレスが待機状態などの所定の状態にない時に無効化装置が働き、エリアセンサが働かない状態になる危険があった。そのため、複数のCPUを用いてCPU間でウオッチドッグ信号を監視し暴走検出を行っているものもあるが、ウオッチドッグ信号はソフトで作成するものであり、CPU暴走時に同様にプログラムが暴走することも想定されるため信頼性が十分ではない。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、所定の領域内への人の侵入を検出するエリアセンサを接続する電動プレスであって、前記電動プレスが所定の状態にあることを検出する検出手段と、前記検出手段の検出に対応して、前記電動プレスが所定の状態にある時前記エリアセンサを無効化させるための信号を出力する信号出力手段と、前記信号出力手段が正常に動作していることを監視する監視手段と、を備えたことを特徴とする。
前記検出手段として、第1の検出手段と第2の検出手段の2つの検出手段を備え、前記信号出力手段として、第1の信号出力手段と第2の信号出力手段の2つの信号出力手段を備えることが望ましい。また前記監視手段として、前記第1の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第1の監視手段と、前記第2の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第2の監視手段とを備えることが望ましく、更に前記第1の信号出力手段と第2の信号出力手段は他方の信号出力手段が正常に動作していない時には、前記無効化させるための信号を出力しないように構成することが望ましい。
前記信号出力手段と監視手段は同一の中央演算処理装置(CPU)により実現可能である。例えば、前記第1の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第1の監視手段と前記第2の信号出力手段とを実現するサブ中央演算処理装置と、前記第2の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第2の監視手段と前記第1の信号出力手段とを実現するメイン中央演算処理装置とで構成することが可能である。
また前記第1の検出手段は、電動プレスの駆動モータの駆動信号により電動プレスが所定の状態にあることを検出し、前記第2の検出手段は、電動プレスのラムの位置を検出し、この位置検出により電動プレスが所定の状態にあることを検出する、ように構成することが可能である。
更に前記所定の状態として、電動プレスが待機位置にある状態、或いは電動プレスが待機位置に移動中の状態、などとすることが可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電動プレスによれば、エリアセンサの無効化の誤動作がなく、安全な作業を行える効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、電動プレスAはラム51を備えており、このラム51はサーボモータ50により上下方向に移動し、サーボモータ50はサーボドライバ10を介してメインCPU1により制御されている。
メインCPU1はサーボモータ50の回転量を数値制御し、該サーボモータ50の回転量をネジ機構により直線運動に変換してラム51を昇降させるようになっている。52はエンコーダ、53はブレーキであり、メインCPU1はエンコーダ52からのフィードバック信号によりサーボドライバ10を介してサーボモータ50を高精度に位置制御するようになっている。
【0008】
ラム51側には、更にエンコーダ9が設けられており、ラム51の位置を直接検出するようになっている。ラム51の位置検出信号はサブCPU3に送られるように構成されている。
サブCPU3とメインCPU1は相互に互いの位置信号を受けるように構成されている。
【0009】
メインCPU1は、エンコーダ52からの信号によりラム51が所定の位置、この実施形態では待機位置に有る時、及び待機位置に移動中の時に、その旨の検出信号をリレー2に出力するように構成されている。リレー2は該検出信号に応答して動作し、ミュート信号をエリアセンサ30に送るように構成されている。エリアセンサ30にはAND回路31が設けられており、このミュート信号によりAND回路31がオンになるとエリアセンサ30は無効化されるようになっている。
【0010】
エリアセンサ30には、非常停止回路32が備えられており、非常停止回路32は動力遮断回路33に接続している。動力遮断回路33はメインCPU1とサーボドライバ10の間に介在し、メインCPU1からの信号を遮断して電動プレスAを停止することができるようになっている。
エリアセンサ30は電動プレスAの所定領域に作業者などが入ったことを検知し、非常停止回路32、動力遮断回路33を駆動して電動プレスAを停止するようになっている。
エリアセンサ30が無効化されると、所定領域に作業者が侵入しても電動プレスAは停止せず、例えばティーチングなどを行える状態になる。
【0011】
サブCPU3は、エンコーダ9からのラム51の位置信号によりラム51が待機位置に有る時或いは待機位置に移動中の状態にある時、その旨の検出信号をリレー4に出力するように構成されている。リレー4は該検出信号に応答して動作し、ミュート信号をAND回路31を介してエリアセンサ30に送るように構成されている。
【0012】
メインCPU1とサブCPU3は、エリアセンサ30への無効化信号を出力する信号出力手段としての機能に加えて、相互に監視する監視手段としての機能を備えている。
即ち、メインCPU1は、前記した待機位置に有る時或いは待機位置に移動中の旨の検出信号をリレー2に出力した時に、同時にリレー4の出力をチェックし、ミュート信号が出力されていない時には、該リレー2をオフとしてミュート信号をオフにする。そして、サブCPU3にリレー4が異常である旨の信号を出力し、サブCPU3の状態を受信する。このサブCPU3の状態とメインCPU1の状態を比較して、両者が一致すれば、サブCPU3は正常でリレー4が異常であると判断するように構成されている。両者が一致しない場合は、サブCPU3が異常であると判断するように構成されている。
該判断に基づいて、エラー表示やシステム停止などのエラー処理を行うようになっている。
【0013】
一方サブCPU3も同様に、前記した待機位置に有る時或いは待機位置に移動中の旨の検出信号をリレー4に出力した時に、同時にリレー2の出力をチェックし、ミュート信号が出力されていない時には、該リレー4をオフとしてミュート信号をオフにする。そして、メインCPU1にリレー2が異常である旨の信号を出力し、メインCPU1の状態を受信する。このメインCPU1の状態とサブCPU3の状態を比較して、両者が一致すれば、メインCPU1は正常でリレー2が異常であると判断するように構成されている。両者が一致しない場合は、メインCPU1が異常であると判断するように構成されている。
また同様に該判断に基づいて、エラー表示やシステム停止などのエラー処理を行うようになっている。
以上の構成によりメインCPU1、サブCPU3或いはサーボドライバ10やサーボモータ50、エンコーダ52、エンコーダ9、リレー2或いはリレー4に誤動作があった場合には、リレー2、4からミュート信号は出力されず、エリアセンサ30は無効化されることがない。そのため、安全を確保できる。
【0014】
次に図2と図3により動作を説明する。
最初に図2によりメインCPU1とリレー2の動作を説明する。
電源投入に際して或いはティーチングによる待機位置変更時に、メインCPU1はサブCPU3に待機位置にある旨の信号を送り、同じ待機位置にあることを確認する(ステップS1)。
メインCPU1は電動プレスAが所定の状態にあるか否かチェックする。この実施形態では、電動プレスAが待機位置にあるか或いは待機位置に上昇中であるか否かをチェックする(ステップS2)。所定の状態である場合、メインCPU1はその旨の検出信号を出力し(ステップS4)、この信号に対応してリレー2がオンとなりミュート信号をエリアセンサ30のAND回路31に出力する(ステップS5)。
なお、電動プレスAが所定の状態にない場合、リレー2をオフ、ミュート信号をオフとして(ステップS3)、ステップS2に戻る。
【0015】
メインCPU1は、またサブCPU3側のリレー4を監視して、リレー4がミュート信号を出力していないかチェックする(ステップS6)。リレー4がミュート信号を出力している場合は、ステップS2に戻る。
リレー4がミュート信号を出力していない場合は、該リレー2をオフとしてミュート信号をオフにする(ステップS7)。そして、サブCPU3にリレー4が異常である旨の信号を出力し(ステップS8)、サブCPU3の状態を受信する(ステップS9)。このサブCPU3の状態とメインCPU1の状態を比較して(ステップS10)、両者が一致すれば、サブCPU3は正常でリレー4が異常であると判断する(ステップS11)。両者が一致しない場合は、サブCPU3側が異常であると判断する(ステップS12)。そして、エラー表示やシステム停止などのエラー処理を実行する(ステップS13)。
【0016】
次に図3によりサブCPU3とリレー4の動作を説明する。
電源投入に際して或いはティーチングによる待機位置変更時に、メインCPU1から送られてきた待機位置にある旨の信号を受信し、同じ待機位置にあることを確認する(ステップS30)。
次にサブCPU3はエンコーダ9からのラム51の位置信号をチェックし、待機位置にあるか或いは待機位置に上昇中であるか否かをチェックする(ステップS31)。待機位置にあるか或いは待機位置に上昇中である場合には、サブCPU3はその旨の検出信号を出力し(ステップS33)、この信号に対応してリレー4がオンとなりミュート信号をエリアセンサ30のAND回路31に出力する(ステップS34)。
なお、待機位置にあるか或いは待機位置に上昇中の状態にない場合、リレー4をオフ、ミュート信号をオフとして(ステップS32)、ステップS31に戻る。
【0017】
サブCPU3は、またメインCPU1側のリレー2を監視して、リレー2がミュート信号を出力していないかチェックする(ステップS35)。リレー2がミュート信号を出力している場合は、ステップS31に戻る。リレー2がミュート信号を出力していない場合は、該リレー4をオフとしてミュート信号をオフにする(ステップS36)。そして、メインCPU1にリレー2が異常である旨の信号を出力し(ステップS37)、メインCPU1の状態を受信する(ステップS38)。このメインCPU1の状態とサブCPU3の状態を比較して(ステップS39)、両者が一致すれば、メインCPU1は正常でリレー2が異常であると判断する(ステップS40)。両者が一致しない場合は、メインCPU1側が異常であると判断する(ステップS41)。そして、エラー表示やシステム停止などのエラー処理を実行する(ステップS42)。
【0018】
エリアセンサ30側では、リレー2とリレー4が両方ともオンの時にAND回路31がオンとなり、無効化信号を出力してエリアセンサ30を無効化する。
従って、メインCPU1による状態検出とサブCPU3からの位置検出が一致しない時は、エリアセンサ30の無効化は行われない。また、リレー2とリレー4のどちらか或いは双方に異常が有る時も、エリアセンサ30の無効化は行われない。
そのため、誤動作によるエリアセンサ30の無効化が防止でき、安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0020】
1:メインCPU、2:リレー、3:サブCPU、4:リレー、9:エンコーダ、10:サーボドライバ、11:サーボモータ、30:エリアセンサ、31:AND回路、32:非常停止回路、33:動力遮断回路、50:サーボモータ、51:ラム、52:エンコーダ、53:ブレーキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域内への人の侵入を検出するエリアセンサを接続する電動プレスであって、
前記電動プレスが所定の状態にあることを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出に対応して、前記電動プレスが所定の状態にある時前記エリアセンサを無効化させるための信号を出力する信号出力手段と、
前記信号出力手段が正常に動作していることを監視する監視手段と、
を備えたことを特徴とする電動プレス。
【請求項2】
前記検出手段として、第1の検出手段と第2の検出手段の2つの検出手段を備え、
前記信号出力手段として、第1の信号出力手段と第2の信号出力手段の2つの信号出力手段を備え、
前記監視手段として、前記第1の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第1の監視手段と、前記第2の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第2の監視手段とを備え、
前記第1の信号出力手段と第2の信号出力手段は、他方の信号出力手段が正常に動作していない時には、前記無効化させるための信号を出力しない、
請求項1の電動プレス。
【請求項3】
前記第1の検出手段は、電動プレスの駆動モータの駆動信号により電動プレスが所定の状態にあることを検出し、
前記第2の検出手段は、電動プレスのラムの位置を検出し、この位置検出により電動プレスが所定の状態にあることを検出する、
請求項2の電動プレス。
【請求項4】
前記第1の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第1の監視手段と前記第2の信号出力手段とを実現するサブ中央演算処理装置と、前記第2の信号出力手段が正常に動作していることを監視する第2の監視手段と前記第1の信号出力手段とを実現するメイン中央演算処理装置と、
を備えた請求項2又は3の電動プレス。
【請求項5】
前記所定の状態が、電動プレスが待機位置にある状態である、
請求項1又は2又は3又は4の電動プレス。
【請求項6】
前記所定の状態が、電動プレスが待機位置に移動中の状態である、
請求項1又は2又は3又は4の電動プレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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