説明

電動モータ及び作業機械

【課題】プリント配線板から構成される回転子を備え、製造が容易であると共に高効率かつ長寿命な電動モータ、及びこれを備える作業機械を提供する。
【解決手段】モータ20は、回転可能に支持された回転軸52と、回転軸52と同軸一体に設けられた円板状のコイルディスク62及び円筒状のコミュテータ63から構成される回転子53と、コイルディスク62を回転軸52の軸線7方向に通過する磁束を生成する固定子54と、コミュテータ63の外周面に回転軸52の軸線7と略直交する方向から摺接する摺動子55と、を備える。また、送風機1は、モータ20と、モータ20の動力を受けて回転するファン30と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータ及びこれを駆動源とする作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータには、プリント配線板から構成された回転子を備えるものがある。例えば、特許文献1には、コミュテータの導体パターンが形成されたコミュテータディスクとコイルの導体パターンが形成されたコイルディスクとの積層体から構成された、円板状の回転子(ロータ)が開示されている。このような電動モータは、形状が扁平かつ小型であることに加え、振動や騒音が小さいことを特徴とするものが多く、種々の作業機械の駆動源として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−299288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された回転子(ロータ)は、コミュテータディスクとコイルディスクとを接続するために接続ディスクを備えるため、その製造工程が煩雑である。また、導体パターンにより形成されたコミュテータは、コミュテータディスクの歪みに伴う面振れを生じ易く、これにより整流性能が低下することから、モータ効率の低下を招き易い。さらに、コミュテータはブラシとの摺動により磨耗するが、導体パターンにより形成されたコミュテータは、その厚みに限界があるため、寿命が短い。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、プリント配線板から構成される回転子を備え、製造が容易であると共に高効率かつ長寿命な電動モータ、及びこれを備える作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による電動モータは、
回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸と同軸一体に設けられ、周方向に配列された複数のコイルの導体パターンが形成された円板状のプリント配線板と、周方向に配列されると共に前記複数のコイルの導体パターンに接続された複数のコミュテータ片から構成された円筒状のコミュテータと、を有する回転子と、
前記プリント配線板を前記回転軸の軸線方向に通過する磁束を生成する固定子と、
前記コミュテータの外周面に前記回転軸の軸線と略直交する方向から摺接する摺動子と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
前記プリント配線板は、前記複数のコイルの一部を構成する導体パターンが形成された複数のコイルディスクから構成されている、
ことが望ましい。
【0008】
例えば、前記複数のコミュテータ片は、前記プリント配線板の導体パターン上に、直接に半田付けされていても良い。
【0009】
例えば、前記プリント配線板には、前記複数のコミュテータ片と前記複数のコイルの導体パターンとを接続する複数のスルーホールが設けられ、
前記複数のコミュテータ片には、前記複数のスルーホールに挿通された突出部が形成されていても良い。
【0010】
前記回転子は、前記回転軸の軸線と略垂直な平坦面を有するフランジを備え、
前記プリント配線板は、前記フランジの前記平坦面に支持されている、
ことが望ましい。
【0011】
前記回転子は、前記プリント配線板と前記コミュテータとを周方向に位置決めする位置決め手段を更に備える、
ことが望ましい。
【0012】
前記摺動子は、交換可能に設けられている、
ことが望ましい。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明による作業機械は、
上述の電動モータと、
前記電動モータから動力を受けて作動する作業具と、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリント配線板から構成される回転子を備え、製造が容易であると共に高効率かつ長寿命な電動モータ、及びこれを備える作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る送風機を示す側面図。
【図2】図1のI−I線断面図。
【図3】図2に示された回転子及び回転軸を示す分解図。
【図4】図3に示されたフランジを示す上面図。
【図5】図3に示されたコイルディスクを示す上面図。
【図6】図3に示されたコミュテータを示す上面図。
【図7】図2に示された回転子及び回転軸を示す上面図。
【図8】図2に示された回転子の変形例及び回転軸を示す分解図。
【図9】図8に示されたコイルディスクを示す上面図。
【図10】図8に示されたコミュテータを示す上面図。
【図11】図2に示された回転子の変形例及び回転軸を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
【0017】
(実施形態1)
実施形態1に係る送風機は、図1に示す送風機1である。送風機1は、本体3と、ノズル5と、から構成されている。
【0018】
本体3は、図2に示すように、ケーシング10と、モータ20と、ファン30と、から構成されている。
【0019】
ケーシング10は、モータケース11と、ファンケース12と、から構成されている。モータケース11とファンケース12とは、モータ20の回転軸を示す軸線7方向に隣接して配置されている。さらに、モータケース11は、軸線7方向に接合及び締結された二つ割りのケース11a,11bから構成されている。また、ファンケース12は、軸線7方向に接合及び締結された二つ割りのケース12a,12bから構成されている。なお、軸線7方向に隣接するモータケース11のケース11bとファンケース12のケース12aとは、一体に形成されている。
【0020】
モータケース11には、空気(外気)をモータケース内に取り込むための複数の通気口13が形成されている。
【0021】
ファンケース12には、吸込み口14と、吹出し口15(図1参照)と、が形成されている。吸込み口14は、軸線7と略同軸に、ケース12bから反モータ20側に突出し、円筒状に形成されている。吹出し口15は、図1及び図2から理解できるように、ケース12a,12bから軸線7と略垂直な方向(ファン30の接線方向)に突出し、円筒状に形成されている。なお、吸込み口14にはホース又はノズル等のアタッチメントを装着することができる。また、吹出し口15には、図1に示すノズル5に加えて、ホース又は集塵袋等のアタッチメントを装着することができる。
【0022】
また、図2に示すように、ケーシング10にはハンドル16が設けられている。ハンドル16は、モータケース11上及びファンケース12上に跨って、詳細にはモータケース11を構成するケース11b上及びファンケース12を構成するケース12a上に跨って、配置されている。また、ハンドル16は、軸線7方向に接合及び締結された二つ割りのハンドル部材16a,16bから構成されている。ハンドル部材16aは、モータケース11を構成するケース11aと一体に形成されている。また、ハンドル部材16bは、モータケース11を構成するケース11b及びファンケース12を構成するケース12aと一体に形成されている。
【0023】
ハンドル16には、図1に示すように、電源プラグ17を有する電源コード18と、トリガスイッチ19と、が設けられている。電源コード18は、電源プラグ17と接続されるAC電源の電力を、ケーシング10に収容された図略の電源回路に供給する。電源回路は、AC電源の電力を所定の直流電圧に変換し、モータ20に供給する。トリガスイッチ19は、電源回路の出力電圧をON/OFFすると共に、引き量に応じて電源回路の出力電圧を調整する機能を有する。従って、トリガスイッチ19の操作により、モータ20を駆動/停止すると共に、モータ20の出力(回転数)を調整することができる。
【0024】
モータ20は、図2に示すように、回転軸52と、回転子53と、固定子54と、一対の摺動子55と、から構成された、整流子モータである。
【0025】
回転軸52は、モータケース11に設けられた軸受57,58により、軸線7回りに回転可能に支持されている。回転軸52の一端は、モータケース11からファンケース12へと突出し、ファン30に接続されている。
【0026】
回転子53は、回転軸52と一体に設けられ、軸線7を中心とする円盤状に形成され、モータケース11に収容されている。回転子53は、図3に示すように、フランジ61と、複数(6つ)のコイルディスク62と、コミュテータ63と、から構成されている。
【0027】
フランジ61は、アルミニウム合金から形成されており、軸線7を中心とする円筒状の固定部61aと、軸線7と略垂直な平坦面を有して固定部61aの外周面から延出する円板状の支持部61bと、から構成されている。図4に示すように、固定部61aの内周面にはキー溝61cが形成されている。また、固定部61aの外周面には、一対の係合凹部61dが形成されている。図3及び図4を参酌すると解るように、フランジ61は、固定部61aが回転軸52と嵌合すると共に、キー溝61cが回転軸52のキー52cに嵌合することにより、回転軸52に回転止め固定されている。
【0028】
コイルディスク62は、絶縁体基板と導体パターンとから構成されたプリント配線板であり、図3及び図5に示すように、軸線7を中心とする円板状に形成されている。
【0029】
図5に示すように、コイルディスク62上面には、導体パターンにより、軸線7を中心として放射状に形成された複数のコイル片82が形成されている。なお、各コイル片82の外側端部82bは、軸線7回りの所定方向に曲折して形成されている。各コイル片82の内側端部82aには、コイルディスク62を貫通するスルーホール83aが形成されている。そして、各コイル片82の外側端部82bには、コイルディスク62を貫通するスルーホール83bが形成されている。
【0030】
また、図示は省略するが、コイルディスク62下面には、コイルディスク62上面と略同様に、導体パターンにより、軸線7を中心として放射状に形成された図略の複数のコイル片が形成されている。図略の各コイル片の外側端部は、スルーホール83bに充填された半田を介して、コイルディスク62上面の対応するコイル片82の外側端部82bに接続されている。また、図略の各コイル片の内側端部は、スルーホール83aに充填された半田を介して、コイルディスク62上面の他の対応するコイル片82の内側端部82aに接続されている。このようにして、コイルディスク62上面の複数のコイル片82とコイルディスク62下面の図略の複数のコイル片とは、軸線7方向視において周方向に配列された略環状(略コ字状)の複数のコイル81を構成している。
【0031】
また、図5に示すように、コイルディスク62には、軸線7を中心として、一対の係合凸部62dを有する取付孔62aが形成されている。図4及び図5を参酌すると解るように、コイルディスク62の取付孔62aとフランジ61の固定部61aの外周面とは嵌合可能に形成されている。さらに、コイルディスク62の係合凸部62dと、フランジ61の係合凹部61dとは、コイルディスク62とフランジ61とを周方向に位置決めする役割を果たす。従って、図3に示された複数のコイルディスク62は、フランジ61の固定部61aと嵌合してフランジ61の支持部61b上に積層されることにより、軸線7方向視において各コイルディスク63の複数のコイル81及びスルーホール83a,83bが重なり合うように、相互に周方向に位置決めされている。なお、コイルディスク62とフランジ61の支持部61bとは接着剤により固定され、複数のコイルディスク63は相互に図略の絶縁層を介して積層されている。そして、各コイルディスク62に形成された複数のコイル81は、スルーホール83aに充填された半田を介して、他のコイルディスク63に形成された複数のコイル81とそれぞれ並列に接続されている。
【0032】
コミュテータ63は、図3及び図6に示すように、軸線7を中心とする円筒状のベース部90と、ベース部90の外周面に沿って周方向に配列された複数のコミュテータ片92と、から構成され、円筒状に形成されている。ベース部90は合成樹脂から形成されており、複数のコミュテータ片92は銅合金から形成されている。また、各コミュテータ片92のコイルディスク62側の端部には、外周面から軸線7と略垂直な方向に突出する平板状の突出部93が一体に形成されている。なお、複数のコミュテータ片92の配置は、図5及び図6を参酌すると解るように、コイルディスク62の複数のコイル片82の内側端部82a及びスルーホール83aの配置に対応している。
【0033】
また、図6に示すように、コミュテータ63のベース部90には、軸線7を中心として、一対の係合凸部63dを有する取付孔63aが形成されている。図4及び図6を参照すると解るように、コミュテータ63の取付孔63aとフランジ61の固定部61aの外周面とは嵌合可能に形成されている。さらに、コミュテータ63の係合凸部63dと、フランジ61の係合凹部61dとは、コミュテータ63とフランジ61とを周方向に位置決めする役割を果たす。従って、図3に示されたコミュテータ63は、フランジ61の固定部61aと嵌合してコイルディスク62上に載置されることにより、図7に示すように、軸線7方向視において各コミュテータ片92の突出部93がコイルディスク62の各コイル片82の内側端部82a及びスルーホール83a上に位置するように、周方向に位置決めされている。なお、コミュテータ63とフランジ61とは接着剤により固定され、コミュテータ片92の突出部93とコイルディスク62の複数のコイル片82の内側端部82aとは直接に半田付けされている。従って、各コミュテータ片92は、コイルディスク62の各スルーホール83aを介して、コイルディスク62に形成された対応するコイル91に接続されている。
【0034】
なお、フランジ61の係合凹部61d、コイルディスク62の係合凸部62d、及びコミュテータ63の係合凸部63dは、本発明の位置決め手段を構成する。
【0035】
図2に示すように、固定子54は、永久磁石であるマグネット71と、一対のヨーク72,73と、から構成されている。一対のヨーク72,73は、鉄等の磁性体から円環板状に形成されており、モータケース11に固定されている。ヨーク72は、コイルディスク63の下面と対向するように、ケース11bに配置されている。ヨーク73は、コイルディスク63の上面と対向するように、ケース11aに配置されている。マグネット71は、周方向に配列された複数の磁極を有して円環状に形成されており、ヨーク72の上面に固着されている。従って、一対のヨーク72,73は、マグネット71が発生する磁束がコイルディスク62を軸線7方向に通過するように、磁路を形成している。
【0036】
一対の摺動子55は、モータケース11に固定された一対の摺動子ホルダ59に保持され、軸線7及びコミュテータ63を挟んで配置されている。一対の摺動子55は、図略の付勢手段により軸線7と略直交する方向からコミュテータ63の周面に向けて付勢されており、コミュテータ63の外周面(図6に示すコミュテータ片92の外周面)と略垂直に摺接する。なお、摺動子55は、電気伝導性を有するカーボンから形成されており、上述の電源回路に接続されている。また、摺動子55を保持する摺動子ホルダ59には、着脱可能に螺着された図略のキャップが設けられており、摺動子55は、キャップを取り外すことにより、外部から交換可能に設けられている。
【0037】
ファン30は、モータ20の回転軸52に結合され、ファンケース12に収容されている。ファン30は、回転軸52にねじ止め固定された取付部31と、取付部31から軸線7と略垂直に延出する円板状の基板部32と、基板部32から反モータ20側に延出する複数の羽根部33と、から構成された、遠心ファンである。なお、基板部32には、モータケース11内の空気を複数の羽根部33の間に吸い込むための通気口34が形成されている。また、複数の羽根部33は、軸線7方向視において、ファン30の外径方向に向かうに従ってファン30の反回転方向に屈曲し、渦巻いた形状に形成されている。
【0038】
次に、上記構成の送風機1の動作について説明する。
【0039】
トリガスイッチ19がONされると、図略の電源回路からモータ20の摺動子55に所定の電圧が印加される。
【0040】
モータ20の一対の摺動子55に印加された電圧は、コミュテータ63を介して、固定子54が発生する磁束を通過するコイルディスク62のコイル81に印加される。電圧が印加されたコイル81には、固定子54が発生する磁束と垂直方向かつ軸線7と直交方向に電流が流れることから、コイルディスク62には、軸線7を中心とする回転力が発生する。従って、コイルディスク62を有する回転子53、回転子53に固定された回転軸52、及び回転軸52に接続されたファン30が、軸線7を中心として一体に回転する。
【0041】
ファン30の回転運動により、吸込み口14からファンケース12内に空気(外気)が吸い込まれる。ファンケース12内に吸い込まれた空気は、ファン30の複数の羽根部33の間に入り込み、ファン30と共に回転しながらファン30の外径方向に流れ、吹出し口15から吹き出される。
【0042】
また、ファン30の回転運動により、通気口13からモータケース11内に空気(外気)が吸い込まれる。モータケース11内に吸い込まれた空気は、モータ20のコイルディスク62を冷却し、ファン30の基板部32に形成された通気口34から複数の羽根部33の間に吸い込まれ、吸込み口14から吸い込まれた空気と合流して、吹出し口15から吹き出される。
【0043】
なお、吹出し口15にホースやノズルを装着することにより、送風機1は粉塵等を吹き飛ばすためのブロワとして機能する。また、吸込み口14にホースやノズルを装着すると共に、吹出し口15に集塵袋を装着することにより、送風機1は粉塵等を集塵するための集塵機として機能する。
【0044】
以上説明したように、上記構成のモータ20は、回転軸52と同軸一体に設けられ、周方向に配列された複数のコイル81の導体パターンが形成された円板状のコイルディスク62から構成された回転子53と、コイルディスク62を回転軸52の軸線7方向に通過する磁束を生成する固定子54と、を備える。従って、所謂コアに巻回されたコイルを有するモータと比較して、モータ20は、軸線7方向の幅が抑制された扁平かつ小型な形状を有する。また、回転子53を構成するコイルディスク62が軽量であることから、モータ20は軽量であると共に起動が早い。また、回転子53を構成するコイルディスク62が所謂コイルエンド(コアに巻回されたコイルにおいて、コアからはみ出す屈曲部分)を要しないことから、モータ20はより扁平かつ小型に構成されるほか、コイル81の発熱が抑制される。さらに、コイルディスク62から構成された回転子53は、表面積、すなわち放熱面積が大きいことから、モータ20はコイル81の冷却能力に優れる。従って、コイル81の過熱によるモータ20の出力低下が抑制されるほか、例えばモータ20を収容するモータケース11に形成された通気口13を縮小又は省略する等、コイル81を冷却する手段を簡略化することができる。
【0045】
また、モータ20は、回転軸52と同軸一体に設けられ、周方向に配列された複数のコミュテータ片92から構成された円筒状のコミュテータ63を備える。コミュテータ63は、プリント配線板に導体パターンにより形成された平面状のコミュテータ(例えば特許文献1参照)と異なり、摺動子55から受ける荷重やコイルディスク62の歪み等に伴う面振れを生じないことから、摺動子55との接続の安定性に優れ、整流性能に優れる。また、プレス等の機械加工により形成されるコミュテータ片92は、導体パターンにより形成されるコミュテータ片と比較して、容易に厚く形成できることから、摺動子55との摺動による摩耗に対する耐久性に優れる。従って、モータ20によれば、高効率かつ長寿命なモータを実現することができる。
【0046】
また、回転子53を構成するプリント配線板が、複数のコイル81の導体パターンが形成された複数のコイルディスク62の積層体から構成されることにより、モータ20の出力をより向上することができる。
【0047】
また、コミュテータ片92がコイルディスク62の導体パターン上に直接に半田付けされることにより、モータ20の製造をより容易とすることができる。
【0048】
また、コイルディスク62がフランジ61の支持部61bに支持されることにより、摺動子55から受ける荷重や固定子54から受ける吸引力(反発力)等に起因するコイルディスク62の歪みが抑制されることから、コイルディスク62の耐久性を向上し、モータ20の耐久性を向上することができる。
【0049】
また、回転子53がコイルディスク62とコミュテータ63とを周方向に位置決めする位置決め手段を備えることにより、モータ20の製造をより容易とすることができる。さらに、組立誤差が抑制されることにより、モータ性能のばらつきを抑制することができる。
【0050】
また、摺動子55が、モータ20の分解を必要とせずに、外部から交換可能に設けられることにより、モータ20のメンテナンスが容易となる。
【0051】
そして、上述のモータ20を駆動源として、種々の作業機械を構成することができる。上記構成の送風機1は、モータ20と、モータ20から動力を受けて回転するファン30と、から構成されている。これにより、送風機1は、製造が容易であると共に、高効率、長寿命であるという利点を有する。
【0052】
(実施形態2)
次に、図8〜図11を参照して、実施形態2に係る回転子153について説明する。回転子153は、主に、コミュテータ163とプリント配線板(コイルディスク162)との接続方法において、実施形態1の回転子53と異なる。以下、詳細に説明するが、回転子153の構成について、実施形態1の回転子53と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図8に示すように、回転子153は、フランジ61と、複数(6つ)のコイルディスク162と、コミュテータ163と、から構成されている。
【0054】
コイルディスク162は、図9に示すように、主に、複数のコイル片182の内側端部182aを貫通するスルーホール183aの大きさにおいて、実施形態1のコイルディスク62(図5)と相異する。図5及び図9から解るように、コイルディスク162のスルーホール183aは、コイルディスク62のスルーホール83aよりも大きく形成されている。
【0055】
コミュテータ163は、図8及び図10に示すように、コミュテータ片192の突出部193の形状において、実施形態1のコミュテータ63(図3,図6)と相異する。コミュテータ63の突出部93は、外周面から軸線7と略垂直に延出する平板状に形成されていたが、コミュテータ163の突出部193は、外周面から軸線7と略平行に延出する柱状に形成されている。
【0056】
上述のコイルディスク162とコミュテータ163とは、フランジ61の固定部61aと嵌合することにより、図11に示すように、コミュテータ163の各突出部193がコイルディスク162の各スルーホール183aに挿通されるように、相互に周方向に位置決めされている。従って、コミュテータ163の各コミュテータ片192は、コイルディスク162の各スルーホール183aを介して、コイルディスク162に形成された対応するコイル191に接続されている。なお、各突出部193は、各スルーホール183aに挿通された後、各スルーホール183aに半田が充填されることにより、複数のコイルディスク162と半田付けにより固定されている。
【0057】
上記構成の回転子153によれば、実施形態1の回転子53と同様の効果を得ることができるほか、コミュテータ片192にスルーホール183aに挿通される突出部193を設けることにより、製造工程を煩雑化することなく、コミュテータ163とコイルディスク162との接続を強化することができ、コミュテータ163のコミュテータ片192とコイルディスク162の導体パターンとの断線を抑制することができる。また、複数のコイルディスク162が、各スルーホール183aだけでなく、各スルーホール183aに挿通された突出部193と半田を介して接続される構成とすることで、コミュテータ片192から各コイルディスク162への電力の供給を確実に行うことができる。以上により、製造が容易であると共に高効率かつ長寿命なモータを提供することができる。
【0058】
(変形例)
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形をしたものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
例えば、実施形態では、コイルの導体パターンはコイルディスク62の両面に形成されていたが、片面にのみ形成されていても良い。
【0060】
また、実施形態のコイルディスク62,162は、それ自体がプリント配線板であったが、本発明に係るコイルディスクはこれに限定されず、例えば多層プリント配線板を構成する各層であっても良い。
【0061】
また、プリント配線板に形成されるコイルの形態、固定子の磁極の配置等は、整流子モータを構成することができるならば、任意に変更可能である。
【0062】
また、本発明は、実施形態に示された送風機に限定されず、電動モータを駆動源とする作業機械に広く応用することが可能であり、特に、刈払機、サンダ、ポリッシャ、ルータ、集じん機等、電動モータの動力が減速機を介さずに作業具(回転刃、ファン等)に直接に伝達される作業機械に適する。
【0063】
その他、各構成の材質、形状、数量、配置等についても、本発明の目的を達成することが可能な範囲において、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 送風機
3 本体
5 ノズル
7 軸線
10 ケーシング
11 モータケース
11a,11b ケース
12 ファンケース
12a,12b ケース
13 通気口
14 吸込み口
15 吹出し口
16 ハンドル
16a,16b ハンドル部材
17 電源プラグ
18 電源コード
19 トリガスイッチ
20 モータ
30 ファン
31 取付部
32 基板部
33 羽根部
34 通気口
52 回転軸
52c キー
53 回転子
54 固定子
55 摺動子
57,58 軸受
59 摺動子ホルダ
61 フランジ
61a 固定部
61b 支持部
61c キー溝
61d 係合凹部
62 コイルディスク
62a 取付孔
62d 係合凸部
63 コミュテータ
63a 取付孔
63d 係合凸部
71 マグネット
72,73 ヨーク
81 コイル
82 コイル片
82a 内側端部
82b 外側端部
83a,83b スルーホール
90 ベース部
92 コミュテータ片
93 突出部
153 回転子
162 コイルディスク
163 コミュテータ
192 コミュテータ片
181 コイル
182 コイル片
182a 内側端部
182b 外側端部
183a,b スルーホール
192 コミュテータ片
193 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸と同軸一体に設けられ、周方向に配列された複数のコイルの導体パターンが形成された円板状のプリント配線板と、周方向に配列されると共に前記複数のコイルの導体パターンに接続された複数のコミュテータ片から構成された円筒状のコミュテータと、を有する回転子と、
前記プリント配線板を前記回転軸の軸線方向に通過する磁束を生成する固定子と、
前記コミュテータの外周面に前記回転軸の軸線と略直交する方向から摺接する摺動子と、を備える、
ことを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
前記プリント配線板は、前記複数のコイルの一部を構成する導体パターンが形成された複数のコイルディスクから構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動モータ。
【請求項3】
前記複数のコミュテータ片は、前記プリント配線板の導体パターン上に、直接に半田付けされている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動モータ。
【請求項4】
前記プリント配線板には、前記複数のコミュテータ片と前記複数のコイルの導体パターンとを接続する複数のスルーホールが設けられ、
前記複数のコミュテータ片には、前記複数のスルーホールに挿通された突出部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動モータ。
【請求項5】
前記回転子は、前記回転軸の軸線と略垂直な平坦面を有するフランジを備え、
前記プリント配線板は、前記フランジの前記平坦面に支持されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電動モータ。
【請求項6】
前記回転子は、前記プリント配線板と前記コミュテータとを周方向に位置決めする位置決め手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電動モータ。
【請求項7】
前記摺動子は、交換可能に設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電動モータ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の電動モータと、
前記電動モータから動力を受けて作動する作業具と、を備える、
ことを特徴とする作業機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−125168(P2011−125168A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282252(P2009−282252)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】