説明

電動乗用草刈機

【課題】草刈作業と運搬作業とを選択的に行うことが可能な電動乗用草刈機を提供する。
【解決手段】モアブレードと、モアデッキ15と、左右一対の後輪12と、一対の後輪12をそれぞれ独立に駆動する2つの走行モータと、2つの走行モータの駆動をそれぞれ独立に操作する左右の走行操作レバー14L,14Rとを備え、走行操作レバー14L,14Rを操作することで、前後進、左右旋回を行う電動ローンモア10であって、運転席13と、運転者が乗降時に足を載せるためのステップSTとを備え、運転席13が前向きと後向きとに変更可能であるとともに、走行モータが前後いずれにも回転可能であり、さらに、走行操作レバー14L,14Rは、運転席13が前向き、後向きのいずれであっても操作可能であって、運転席13が後向きのとき、ステップSTに物体を載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モアブレードと、モアデッキと、左右一対の駆動輪と、一対の駆動輪をそれぞれ独立に駆動する2つの走行モータと、2つの走行モータの駆動をそれぞれ独立に操作する左右一対の操作部とを備え、一対の操作部を操作することで、前後進、左右旋回を行う電動乗用草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0003】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機の分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状である。したがって、電動によるローンモア(乗用草刈機)を開発することは重要な意義を持っている。
【0004】
一方、従来のユーティリティ・ビークル(UTV)は、エンジンと、一対の前輪と、エンジン駆動で回転する一対の後輪と、運転席と、運転席後部に備えられる荷台とを備え、各種運搬用として、農業、林業、レジャー、また、ゴルフ場整備などに用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−95110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、ゴルフ場の整備を行うにあたり、ローンモアで芝刈りをした後、ゴルフ場の整備の資材を運搬するといった場合には、ローンモアに加えてUTVが別途、必要であった。2種類の作業車両を保管するためのスペースが必要となり、また、2つの作業車両の整備に手間が掛かってしまうという問題があった。そこでこの発明は、草刈作業と運搬作業とを選択的に行うことが可能な電動乗用草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため請求項1に記載の発明は、回転して草を刈るモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、
走行のための左右一対の駆動輪と、
該一対の駆動輪をそれぞれ独立に駆動する2つの走行モータと、
該2つの走行モータの駆動をそれぞれ独立に操作する左右一対の操作部とを備え、
該一対の操作部を操作することで、前後進、左右旋回を行う電動乗用草刈機であって、
前記操作部を操作する際に運転者が着席する運転席と、
機体の前部に設けられ、前記運転者が乗降時に足を載せるためのステップとを備え、
前記運転席が前向きと後向きとに変更可能であるとともに、前記走行モータが前後いずれにも回転可能であり、
さらに、前記操作部は、前記運転席が前向き、後向きのいずれであっても操作可能であって、
前記運転席が後向きのとき、前記ステップに物体を載置することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記運転席の下に、前記運転席が前向きか後向きかを検出するための検出手段を備え、
該検出手段で検出した前記運転席の向きによって、前記走行モータの制御モードを切り替えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記運転席が後向きの場合に前記運転者が乗り降りする際に使用する後部ステップを前記運転席の後方に備え、
足を載置するための後部フットレストを前記後部ステップに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電動乗用草刈機において、前記後部フットレストを出没自在に備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、一対の後輪と、
該後輪を一定の距離を隔てて上方より覆う、前記運転席の左右両側に設けられる左右一対のフェンダーとを備え、
飲料容器を保持するための保持部を前記左右一対のフェンダーに一体に形成した電動乗用草刈機であって、
一方の前記フェンダーの前部であって前記運転席が前向きのときに該運転席から手が届く位置に前記保持部を形成するとともに、他方の前記フェンダーの後部であって前記運転席が後向きのときに該運転席から手が届く位置に前記保持部を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記ステップの幅方向両側に落下防止用ネットを掛け止めるためのフックを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記ステップの幅方向両側に、前記ステップよりも高さのある防護部を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記物体を載置するためのベッセルを備え、
ベッセル不使用時には、該ベッセルを前記運転席の下方に収納し、
ベッセル使用時には、前記ベッセルを前記ステップ上に載置することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の電動乗用草刈機において、車体フレームを備え、
前記運転席を下方より支持する支持台を前記車体フレーム上に固設し、
前記ベッセルが前記支持台の前部に回動可能に連結され、
前記ベッセル不使用時には、前記ベッセルを上下逆にして、前記支持台に被せるようにして載置され、
前記ベッセル使用時には、前記ベッセルが前記支持台の前部を中心として前側に向けて回動して前記ステップ上に載置されることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の電動乗用草刈機において、前記支持台上に前記運転席を取り付けるためのブラケットを設け、
該ブラケットを逃げるための逃げ穴を前記ベッセルの底部に設けるとともに、前記逃げ穴を塞ぐための閉塞部材を前記ベッセルの側部内側に着脱自在に取り付け、
前記ベッセル使用時には、前記閉塞部材を前記ベッセルの底部の逃げ穴に取り付けて閉塞することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、回転して草を刈るモアブレードと、モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、走行のための左右一対の駆動輪と、一対の駆動輪をそれぞれ独立に駆動する2つの走行モータと、2つの走行モータの駆動をそれぞれ独立に操作する左右一対の操作部とを備え、一対の操作部を操作することで、前後進、左右旋回を行う電動乗用草刈機であって、操作部を操作する際に運転者が着席する運転席と、機体の前部に設けられ、運転者が乗降時に足を載せるためのステップとを備え、運転席が前向きと後向きとに変更可能であるとともに、走行モータが前後いずれにも回転可能であり、さらに、操作部は、運転席が前向き、後向きのいずれであっても操作可能であって、運転席が後向きのとき、ステップに物体を載置する。
【0018】
これによって、たとえば、ゴルフ場の整備を行うにあたり、電動ローンモアで芝刈りをした後、ゴルフ場の整備の資材(物体)を運搬する場合には、運転席を後向きに転換するだけで、UTV作業をすることができるようになる。したがって、草刈作業と運搬作業とを選択的に行うことが可能な電動乗用草刈機を提供することができる。この発明によって、これまで、芝刈用のローンモアと、ゴルフ場整備用UTVとの2種類の作業車両を必要とし、広い保管スペースが必要であり、また、2種類の作業車両の整備に手間が掛かっていたが、これらの問題点を解決することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、運転席の下に、運転席が前向きか後向きかを検出するための検出手段を備え、検出手段で検出した運転席の向きによって、走行モータの制御モードを切り替えるので、運転席の向きを容易に検出することができる。また、運転席の向きに適応した走行モータの制御を容易に行うことができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、運転席が後向きの場合に運転者が乗り降りする際に使用する後部ステップを運転席の後方に備え、足を載置するための後部フットレストを後部ステップに備えるので、運転席を後向きに設定して、電動ローンモアを走行させる際に、後部フットレストに運転者が足を置くことができ、運転時の快適性を確保することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、後部フットレストを出没自在に備えるので、運転席を前向きとして電動ローンモアを運転する際には後部フットレストを収納することができる。これによって、後部フットレストを使用しないとき、運転者が不必要に後部フットレストにつまづいたり、引っかかったりすることを回避することができ、安全性を向上させることができる。また、後部フットレストを収納し、後部ステップに荷物(物体)を載置して運搬することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、一対の後輪と、後輪を一定の距離を隔てて上方より覆う、運転席の左右両側に設けられる左右一対のフェンダーとを備え、飲料容器を保持するための保持部を左右一対のフェンダーに一体に形成した電動乗用草刈機であって、一方のフェンダーの前部であって運転席が前向きのときに運転席から手が届く位置に保持部を形成するとともに、他方のフェンダーの後部であって運転席が後向きのときに運転席から手が届く位置に保持部を形成する。
【0023】
したがって、運転席が前向き、後向きのいずれにあっても、左右いずれかのフェンダー上の保持部を利用することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、ステップの幅方向両側に落下防止用ネットを掛け止めるためのフックを備えるので、ステップに荷物や資材(物体)などを載置したとき、これが落下するのを確実に防止することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、ステップの幅方向両側に、ステップよりも高さのある防護部を備えるので、ステップに荷物や資材(物体)などを載置したとき、電動草刈機が左右折や、左右方向に旋回したり、上下方向に振動した場合であっても、載置した荷物や資材がステップから側方に落下することを防止することができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、物体を載置するためのベッセルを備え、ベッセル不使用時には、ベッセルを運転席の下方に収納し、ベッセル使用時には、ベッセルをステップ上に載置するので、物体を落下させる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、車体フレームを備え、運転席を下方より支持する支持台を車体フレーム上に固設し、ベッセルが支持台の前部に回動可能に連結され、ベッセル不使用時には、ベッセルを上下逆にして、支持台に被せるようにして載置され、ベッセル使用時には、ベッセルが支持台の前部を中心として前側に向けて回動してステップ上に載置される。
【0028】
したがって、ベッセルを常時、電動ローンモアに備え、必要に応じていつでもベッセルを使用することができる。また、ベッセル不使用時には、上下さかさまにして支持台に被せて保管するので、保管場所を省スペース化することができる。さらに、ベッセルを支持台に連結しているので、ベッセルを固定するために、別途、留具材などを用いる必要がない。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、支持台上に運転席を取り付けるためのブラケットを設け、ブラケットを逃げるための逃げ穴をベッセルの底部に設けるとともに、逃げ穴を塞ぐための閉塞部材をベッセルの側部内側に着脱自在に取り付け、ベッセル使用時には、閉塞部材をベッセルの底部の逃げ穴に取り付けて閉塞する。
【0030】
したがって、ベッセル不使用時において、支持台に被せられたベッセルとブラケットが干渉することなくベッセルを支持台に覆い被せることができ、ベッセルの保管場所をいっそう省スペース化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモアの右斜視図である。
【図2】(a)は運転席付近の斜視図、(b)は運転席を外した状態を示す図、(c)は座席取付部材とコイルバネを示す図である。
【図3】(a)はベッセルを座席支持部にさかさまに被せた状態を示す斜視図、(b)はベッセルの座席支持部への取り付け部分の拡大図である。
【図4】座席支持部の斜視図である。
【図5】(a)は押当部材が運転席前側のリミットスイッチをONとしている状態を示す図、(b)は運転席後側のリミットスイッチとコイルバネとの位置関係を示す図である。
【図6】ベッセルの詳細を示す図であり、(a)はベッセル不使用時に上下さかさまにしている状態を示す斜視図、(b),(c)はグローメットの斜視図、(d)はベッセル使用時の状態を示す斜視図である。
【図7】走行操作レバーの要部を示す図であり、(a)は固定部付近の斜視図、(b)はレバー部の全体斜視図、(c)は固定部の側面図、(d)はストッパーの斜視図、(e)はバネの装着状況を説明するための正面図である。
【図8】座席支持部とフェンダーとの連結状況を示すための図であり、(a)は要部拡大正面図、(b)は(a)の平面図である。
【図9】(a)は電動ローンモアの前部の斜視図、(b),(c)はベッセルをフットレストに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図10】UTV作業時(ベッセル使用時)の電動ローンモアの斜視図である。
【図11】走行操作レバーの取り付けを説明するための図である。
【図12】後部フットレストを示す図であり、(a)は全体斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のX矢視断面図である。
【図13】(a)は車体フレームに備えるフックの斜視図、(b)は(a)のZ矢視断面図、(c)は落下防止用ネットの部分拡大図、(d)は(c)のさらに部分拡大図、(e)は落下防止用ネットで物体を覆った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。なお、この明細書において、「前」とは電動乗用草刈機の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ、前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれ、車両の「上下」方向を意味するものとする。図1には、この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモア(電動乗用草刈機)10の斜視図を示す。電動ローンモア(機体)10は、車体フレーム(シャーシ)18、左右の前輪11、左右の後輪(駆動輪)12、運転席13、走行操作レバー14(右:14R,左:14L)、モアブレード(不図示)、モアデッキ15などを備えてなる(なお、モアブレードとモアデッキ15とを合わせて作業部と称す。)。車体フレーム18は、前後方向に延びた左右一対のビームが一定間隔をもって備えられ、その一対のビームに渡し掛けるように床板を備えてなる。前輪11はその中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備える。ホイールの回転中心には車軸11Aを貫通させる。ホイールは、車軸11Aに対して回転自在となっている(すなわち、前輪11は従動回転する)。
【0033】
車軸11Aは、前輪ブラケット16の下端部に取り付けられている。前輪ブラケット16は、金属板を門型状に形成してなる。前輪ブラケット16の天面には円筒部17を載置する。円筒部17の中心には回動軸を回動自在に備え、回動軸の下端は前輪ブラケット16にボルトなどで固設する。左右の円筒部17の側面には、横フレーム19の両端を溶接などで固定する。そして、横フレーム19の、左右の円筒部17,17から少し隔たった位置にはそれぞれ車体フレーム18の先端を溶接などで固定する。なお、円筒部17は金属製の円筒、車体フレーム18および横フレーム19は、金属製の角筒である。また、車体フレーム18,18は左右側で対をなしており、それぞれ電動ローンモア10の前進方向に略直線的に延びて配置される。車体フレーム18,18の下面には金属板からなる床板FLを渡して、ボルトなどで下方より固設する。
【0034】
車体フレーム18の下方で、かつ、前輪11と後輪12との間にはモアデッキ15を備える。モアデッキ15は、楕円状の深皿状に形成され、モアデッキ15内には2つのモアブレード(不図示)を回転自在に備える。モアデッキ15の上面には、モアモータ(作業モータ)WMを2つ載置し、その回転軸をモアデッキ15内に向けて貫通させる。そして、それぞれの回転軸の先端をモアブレードの中央部に嵌合させる。
【0035】
モアデッキ15の前部の長手方向両側には、補助車輪23を取り付ける。補助車輪23は、その中心に金属製のホイールを備え、ホイールの外側にはゴム製のタイヤを備えてなる。ホイールの回転中心には車軸23Aを貫通させる。ホイールは、車軸23Aに対して回転自在となっている(すなわち、補助車輪23は従動回転する)。なお、芝刈りを行うときは、補助車輪23は常に走行面に接地した状態である。
【0036】
モアデッキ15は、リンク機構21を介して車体フレーム18に昇降自在に懸架されている。リンク機構21は昇降操作レバー27に連結されている。なお、図1では、モアデッキ15は下ろされた状態(補助車輪23が接地した状態)を示している。
【0037】
電動ローンモア10の前部には、フットレストFRを設ける。フットレストFRは、運転席13に向き合うように傾斜した面を有し、車幅方向に延びた三角柱状に形成される。
【0038】
運転席13の下方には不図示のバッテリーを2つ並べて平置きにする。バッテリーは、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。2つのバッテリーは直列に接続される。なお、バッテリーの上方には不図示の収納ケースを備え、バッテリーのコントローラ(電圧均等装置)などの電子機器を収納する。バッテリーのコントローラは、バッテリーの微小な電圧の変動を補正するものである。(なお、バッテリーコントローラを後述するフェンダー24L,24R内に収納してもよい。)
【0039】
そして、バッテリーを上方から覆うように座席支持部(支持台)SBを車体フレーム18上に固設する。座席支持部SBの上には、座席取付部材30を介して運転席13を取り付ける。座席取付部材30は、運転席13を車体に取り付けるものである。なお、座席支持部SBの両側には、フェンダー24L,24Rを備える。フェンダー24L,24Rには、その後部が後輪(駆動輪)12の上部と干渉しないように切り欠きが設けられている。また、左右のフェンダー24L,24Rの上面には、ペットボトルなどの飲料容器を収納できる、カップフォルダ25が設けられている。フェンダー24L,24Rは、強化プラスチック製でカップフォルダ25などを一体に形成してなるものである。
【0040】
運転席13の前方の車体フレーム18の中央付近は平坦に形成され、ステップSTとなる。ステップSTは、運転者が運転席13に乗降するために用いるものである。
【0041】
左右の後輪12の内側には、それぞれ後輪12を駆動させるための走行モータDMを備える。走行モータDMは、左右の後輪12,12に対して1つずつ備える。なお、走行モータDMは、インホイールモータを適用してもよい。走行モータDMのドライバは、運転席13の下方にある制御ボックス(不図示)に収納される(後述)。
【0042】
走行モータDMのドライバは、走行操作レバー14の傾動量に応じて走行モータDMの回転方向および回転速度を制御する。なお、モアモータWMの回転は、走行モータDMの回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0043】
走行操作レバー14は傾動可能に設けられ、運転者が走行操作レバー14を前に倒すと走行モータDMが前進方向に回転する。一方、走行操作レバー14が後に倒されると走行モータDMは後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー14の傾動度合いによって走行モータDMの回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー14を大きく前(後)に倒すと、走行モータDMが前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー14を小さく前(後)に倒すと、走行モータDMが前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転席13の左右に備える走行操作レバー14L,14Rはそれぞれ左右の走行モータDM,DMの回転動作に対応している。したがって、運転者は、左右の走行操作レバー14L,14Rを前後に適宜操作することで、前後進、左右折、旋回などを行うことができる。このような構成とすることで、車両の左右折、旋回のためのステアリング機構を設ける必要がなく、車両の構成を簡単にすることができる。
【0044】
運転席13の後方の車体フレーム18には平坦面が形成され、後部ステップBSTとなる。後部ステップBSTは、後述するように、電動ローンモア10がUTV作業時となっているときに、運転者が運転席13に乗降するために用いるものである。
【0045】
図2(a)〜(c)には、運転席13近傍の詳細を示す。運転席13の底部は、座席取付部材30にネジなどで固定される。座席取付部材30は、金属板を所定の形状にカットした後、折り曲げて、側部30S,30S、天部30U、前部30Fを備える。天部30Uは、その両側にバネ取付部30US,30USを備える。側部30S,30Sの前端部には、それぞれ貫通孔30A,30Aを形成する。また、バネ取付部30USの後部には、それぞれコイルバネ(弾性部材)32の先端を固設する。
【0046】
座席取付部材30は、座席固定棒31を介して座席支持部SBのブラケット29Aに固定される。ブラケット29AL,29ARはそれぞれ、座席支持部SBの前部上面の左右に直立して設けられる。また、ブラケット29BL,29BRはそれぞれ、座席支持部SBの後部上面の左右に直立して設けられる。座席取付部材30と座席支持部SBとの間には、ベッセル40を備える。ベッセル40は、上面の開放された容器状に形成され、上下逆さまにした状態で座席支持部SBに被せるようにして載置される。
【0047】
図3(a),(b)にはベッセル40を座席支持部(支持台)SBに取り付けた様子を、図4には座席支持部SBの詳細な構造を示す。座席支持部SBは、車体フレーム18の床板(ステップSTと後部ステップBSTとを結ぶ板)の上に固設されている。座席支持部SBは、金属板で形成され、前部28、左右一対の側部29L,29Rとで構成される。前部28は、金属板を逆L字状に折り曲げて形成され、前面には、一対のステー状の保持部28X,28Xを溶接などで固設する。保持部28Xには、ベッセル支持棒64を貫通させるための貫通孔を設ける。側部29L,29Rは、金属板の上下端をそれぞれ反対方向に折り曲げてZ状に形成される。側部29L,29Rはその下端が、それぞれ、車体フレーム18上にボルト(不図示)などで固定されるとともに、その上端が、前部28にボルトなどで固定される。また、側部29L,29Rの後端は、後部フレーム55の前面に当接している。後部フレーム55は、車体フレーム55後部にて、機体を補強するとともに、フェンダー24L,24Rを載置するためのものである。なお、符号54は補強フレームを示し、側部29L,29Rを補強するためのものであり、側部29L,29Rの間に渡し掛けられて固設されている。
【0048】
ここで、側部29Rの天面29RUの幅は、側部29Lの天面29LUよりも広く形成される。これは、後述する、リミットスイッチ(検知手段)65A,65Bを載置するためである。天面29LUには、運転席13を固定するためのブラケット29AL,29BLを直立させた状態で溶接などによって固定する。天面29RUには、運転席13を固定するためのブラケット29AR,29BRを直立させた状態で溶接などによって固定する。天面29RU上には、ブラケット29ARに一定距離を隔ててリミットスイッチ(検知手段)65Aを設け、ブラケット29BRに一定距離を隔ててリミットスイッチ(検知手段)65Bを設ける。リミットスイッチ65A,65Bは、後述する不図示の制御部と連結されている。なお、ブラケット29ARとリミットスイッチ65Aとの間に、また、ブラケット29BRとリミットスイッチ65Bとの間には後述するようにコイルバネ32,32が挿入される。
【0049】
ブラケット29AL,29AR,29BL,29BRにはそれぞれ、座席固定棒31を貫通させるための貫通孔H1を形成する。ブラケット29AL,29ARは、それぞれの側部29L,29Rの前側に、貫通孔H1が向き合うように機体の幅方向沿って設けられる。同様に、ブラケット29BL,29BRは、それぞれの側部29L,29Rの後側に、貫通孔H1が向き合うように機体の幅方向沿って設けられる。
【0050】
ベッセル40の底部の左右にはそれぞれ、逃げ穴40BL,40BRが形成されている。逃げ穴40BLは、ベッセル40を座席支持部SBに被せたときに、ブラケット29AL,29BLを逃げるためのものであり、逃げ穴40BRは、ベッセル40を座席支持部SBに被せたときに、ブラケット29AR,29BR、および、リミットスイッチ65A,65Bを逃げるためのものである(逃げ穴40BR,40BLは後述するように、コイルバネ32を逃げるためのものでもある)。したがって、逃げ穴40BRは、逃げ穴40BLよりも大きく形成される。なお、符号70は、走行モータDMのドライバ、草刈モータWMのドライバ、バッテリー制御部などの電装品類を収納する制御ボックスである。
【0051】
図5(a),(b)には、運転席13を前進方向に向けて取り付けた(芝刈作業時)詳細を示す。この状態においては、リミットスイッチ65Aは、金属製の座席固定棒31に備える押当部材31Aに当接して押し込まれてONとなっている。リミットスイッチ65AがONとなると、その旨が不図示の配線を介して制御部に電気的に伝達される。この情報によって制御部では、走行操作レバー14L,14Rを前進方向に押して傾けたときが電動ローンモア10の順走方向であることを認識する。これによって、走行モータDMの設定を順走方向の最大車速と加速度を逆走方向の最大車速よりも大きく設定する。このように、リミットスイッチ65AがONとなることで、制御部は、運転席13が前向きの状態の制御モードとなる。
【0052】
押当部材31Aは、円筒状のゴムなどで形成され、座席固定棒31に嵌め込まれる。押当部材31Aは、座席固定棒31をブラケット29AR,29ALに挿入したときにリミットスイッチ65Aを押し込む位置に配置される。押当部材31Aは座席固定棒31との間で摩擦によって左右方向の動きを規制されている。なお、座席固定棒31の両端部には、貫通孔を形成し、ここに抜け止めのための固定ピンPNを挿入する。
【0053】
一方、運転席13の後部に備えられるコイルバネ32,32はそれぞれ、側部29L,29Rの天面29LU,29RU上に載置される。このときに、運転席13の右側に配置されるコイルバネ32は、ブラケット29BRとリミットスイッチ65Bとの間に配置される(同様に、運転席13の左側に備えるコイルバネ32は、ブラケット29ARとリミットスイッチ65Aとの間に配置される)。
【0054】
ベッセル40はプラスチック製(または金属製)で、詳しくは、図6(a)〜(d)に示すように形成されている。すなわち、ベッセル40は、一対の側面部40SL,40SRと、第1面部40Fと、第2面部40Jと、底面部40TM,40TL,40TRとで構成された開口を有する容器である。開口の縁に沿って、側面部40SL,40SRと第1面部40Fには、縁部40Dが連続的に設けられている。縁部40Dは、外側に向けて所定量だけカールしてなる。また、第1面部40Fの縁部40Dには、所定の間隔を隔てて直立してステー40AL,40ARが形成されている。ステー40AL,40ARの略中央にはそれぞれ貫通孔が形成されている。この貫通孔にはベッセル支持棒64を貫通させる。ベッセル支持棒64の両端には、ステー40AL,40ARから抜け落ちないように、抜け止め処理が適宜施してある。
【0055】
側面部40SL,40SRは板状で、それぞれ開口端に向けて所定の角度で外側に傾斜してなる。一方、第1面部40Fは板状で、底面部40TM,40TL,40TRより略直角に立ち上がってなる。底面部40TMは底面の中央に配置され、その右側に底面部40TR、左側に底面部40TLがそれぞれ連続して形成される。底面部40TMと底面部40TL,40TRとの間には、底面を補強するためにそれぞれ所定量の段差が形成されている。すなわち、底面部40TMが底面部40TL,40TRに対して、上げ底状になっている。底面部40TRには、2つの逃げ穴40BR,40BRが形成されている。一方、底面部40TLには、2つの逃げ穴40BL,40BLが形成されている。前述のように、逃げ穴40BRには、ブラケット29AR、リミットスイッチ65A、コイルバネ32(または、ブラケット29BR、リミットスイッチ65B、コイルバネ32)が入り込むことができる。逃げ穴40BLには、ブラケット29ALおよびコイルバネ32(または、ブラケット29BLおよびコイルバネ32)が入り込むことができる。したがって、逃げ穴40BRは、逃げ穴40BLよりも大きく形成される。詳しくは、逃げ穴40BRは逃げ穴40BLに対して車幅方向に長く形成されている。
【0056】
側面部40SLには、内側に向けて突出した2つの突出部40EL,40ELが所定間隔をもって形成される。突出部40ELは角が丸まった直方体状に形成される。側面部40SRの内側には、内側に向けて突出した2つの突出部40ER,40ERが所定間隔をもって形成される。突出部40ERは角が丸まった直方体状に形成される。
【0057】
逃げ穴40BLを使用しないときは、グローメット(閉塞部材)42を取り付けて、逃げ穴40BLを塞ぐ。また、逃げ穴40BRを使用しないときは、グローメット(閉塞部材)41を取り付けて、逃げ穴40BRを塞ぐ。グローメット41,42はそれぞれ、角の丸まった略矩形状のゴム製のキャップで、側部の中央には全周にわたって溝部41S,42Sが形成される。また、グローメット41,42の内側はそれぞれ凹状に形成されて、嵌合部41B,42Bが形成されている。
【0058】
グローメット41を使用しない時は、嵌合部41Bを突出部40ERに嵌めつける。一方、グローメット42を使用しない時は、嵌合部42Bを突出部40ELに嵌めつける。グローメット41を使用する時は、突出部40ERから取り外して、逃げ穴40BRに嵌めつける。このとき、底面部40TRの板厚部分にグローメット41の溝部41Sが嵌合する。このようにすることで、グローメット41を逃げ穴40BRに確実に取り付けることができる。また、グローメット42を使用する時は、突出部40ELから取り外して、逃げ穴40BLに嵌めつける。このとき、底面部40TLの板厚部分にグローメット42の溝部42Sが嵌合する。このようにすることで、グローメット42を逃げ穴40BLに確実に取り付けることができる。
【0059】
図7(a)〜(e)には、走行操作レバー14Rの詳細を示す。走行操作レバー14Rは、運転者が握るグリップ部、レバー部14R1、レバー部14R1の下端に設けられる連結部14R2、連結部14R2を回動可能に固定する固定部14R3、固定部14R3が固設されるリンクバー14R4などを備える。レバー部14R1は上部が略直角に曲がった形状の金属製の円筒(または丸棒)である。レバー部14R1の下端には連結部14R2を備える。連結部14R2は厚めの金属板で形成され、2つの貫通孔HX1,HX2を備える。この貫通孔HX1,HX2には、ストッパー50の先端50C,50Dをそれぞれ挿入する。ストッパー50は、金属棒を略コの字状に折り曲げて形成される。持手部分50Hの両側に連続して形成された2つの先端50C,50Dのうち、先端50Dは、先端50Cよりも所定量だけ長く形成される。先端50C,50Dにはそれぞれ貫通孔50A1,50A2が設けられる。
【0060】
固定部14R3は、矩形の金属板を略直角に2度折り曲げて形成される。両側部14R3S,14R3Sにはそれぞれ、円形の貫通孔である、位置決め孔HA,HBおよび中心孔HCが形成されている。位置決め孔HA,HBの中心は、中心孔HCの中心から等距離である。また、位置決め孔HAの中心と中心孔HCの中心とを結ぶ線と中心孔HCの中心を通る鉛直線とのなす角と、位置決め孔HBの中心と中心孔HCの中心とを結ぶ線と中心孔HCの中心を通る鉛直線とのなす角とは、反対方向で同一角度となるように構成される。したがって、草刈作業時(前進方向)に設定したときと、UTV作業時(後進方向)に設定したときとでは、レバー部14R1が反対方向に同一角度で傾斜することになる。
【0061】
固定部14R3には、所定の隙間をもって連結部14R2が入り込むようになっている。固定部14R3は、リンクバー14R4の上端部に溶接などで固設される。リンクバー14R4の下端には、不図示の回転センサを取り付け、回転センサが検出する回転量や回転方向によって、走行モータDMの駆動を制御している。
【0062】
連結部14R2を固定部14R3に組み付けるには、連結部14R2を固定部14R3の一対の側部14R3Sの間に挿入し、貫通孔HX2と中心孔HCとを合わせてストッパー50の先端50Dを挿入する(後述するように、中心孔HCがレバー部14R1の回動中心となる)。次に、レバー部14R1をローンモア10の前進方向に倒して、貫通孔HX1と位置決め孔HAとを合わせてストッパー50の先端50Cを挿入する。そして、先端50Cの貫通孔50A1に抜け止めピン51を差し込んで抜け止めをする。一方、先端50Dには、バネSPをその先端が固定部14R3に当接するまで挿入した後、座金ZGを挿入してバネSPの後端に押し当てる。このとき、貫通孔50A2が座金ZGの外側に位置するまでバネSPの弾性力に抗して座金ZGを内側に向けて押し込む。そして、座金ZGの外側からピン51を貫通孔50A2に通して、座金ZGの抜け止めとする(なお、貫通孔50A2は、座金ZGとバネSPの厚み分だけ、貫通孔50A1よりも持手部分50Hから離れた位置に形成される)。
【0063】
このバネSPによって、ストッパー50は持手部分50Hが固定部14R3に向かう方向に付勢されている。このようにして、レバー部14R1は、ローンモア10の草刈作業位置となり、レバー部14R1がリンクバー14R4に対して固定され、レバー部14R1の回動に合わせて、リンクバー14R4が回動するようになる(なお、貫通孔HX1と位置決め孔HBとを合わせてストッパー50の先端50Cを挿入すると、ローンモア10のUTV作業位置となる。詳細は後述)。リンクバー14R4の下端には、後述するように回動支点14R5が設けられ、回動支点14R5には、回転センサが取り付けられ回転量に応じて走行モータDMの回転数や加速度などを制御するようになっている。なお、走行操作レバー14Lの構造は走行操作レバー14Rと同様である。
【0064】
ところで、図8(a),(b)に示すように、側部29Lの前部側面には、取付部材29LEを突設する。取付部材29LEは、断面視で門型状に形成された金属板であり、天面の先端部に貫通孔を備える。一方、フェンダー24Lの前部内側面には、取付部材24LEを突設する。取付部材24LEは、断面視で角張ったU字状に形成された金属板であり、底面の先端部に貫通孔を備える(この取付部材24LEは、フェンダー24Lと一体に形成されてもよい)。そして、取付部材29Lの貫通孔と取付部材24LEの貫通孔とを合わせ、ここにボルトBOを通して取付部材29Lと取付部材24LEとを連結する。なお、フェンダー24Lの後部は、車体フレーム55上に載置して固定する。また、フェンダー24Rと側部29Rとの連結は、フェンダー24Lと側部29Lとの連結と同様の構成である。
【0065】
次に、電動ローンモア10でUTV作業をする際(UTV作業時)について、図1〜8を参照しつつ説明する。まず、座席固定棒31の固定ピンPNを抜き、座席固定棒31をブラケット29AL,29ARから外して、運転席13を座席支持部SBから外す。次に、ベッセル40をベッセル支持棒64の回りに回動させて、開口を上向きとしてステップST上に載置する。また、グローメット41を逃げ穴40BRに、グローメット42を逃げ穴40BLにそれぞれ嵌めつける。そして、ベッセル40の第2面部40Jの先端をフットレストFTに固定する。詳しくは、図9(a)〜(c)に示すように、フットレストFTの足載部FT1の下端部に形成された2つの貫通孔HL1,HL1をベッセル40の第2面部40Jの先端に形成された2つの貫通孔HL3,HL3に合わせて、ボルトBT1を通して締め付けて固定する。また、フットレストFTの両側面部FT2に1つずつ形成された貫通孔HL2をベッセル40の両側面部40Jに1つずつ形成された貫通孔HL4に合わせて、ボルトBT2によって締め付けて固定する。
【0066】
次に、運転席13を元の位置(前向き)から水平面で180度回転させて後向きにし、左右のコイルバネ32,32を、ブラケット29ARとリミットスイッチ65Aとの間の天面29RU上と、ブラケット29ALに隣接して天面29LU上にそれぞれ載置する。そして、座席取付部材30の両側部30S,30Sにそれぞれ形成された貫通孔30Aをブラケット29BL,29BRの貫通孔H1,H1に合わせて、座席固定棒31の両端をそれぞれ挿入した後、座席固定棒31の両端部の貫通孔に固定ピンPNを挿入して抜け止めをする。このとき、座席固定棒31の押当部材31Aがリミットスイッチ65Bの先端に当接して押し込み、スイッチをONとする。
【0067】
リミットスイッチ65BがONとなると、その旨が不図示の配線を介して制御部に電気的に伝達される。この情報によって制御部では、走行操作レバー14L,14Rを後進方向に押して傾けたときが電動ローンモア10の順走方向であることを認識する。これによって、走行モータDMの設定を順走方向の最大車速と加速度を逆走方向の最大車速よりも大きく設定するように切り替える。言い換えると、UTV作業時の順走方向は芝刈作業時の後進方向であるため、制御部が、走行モータDMのトランスミッションの設定を変更し、UTV作業時の順走方向に走行モータDMが回転するときに、最大車速と加速度が大きくなるように制御する。このように、リミットスイッチ65BがONとなることで、制御部は、運転席13が後向きの状態の制御モードとなる。
【0068】
さらに、走行操作レバー14Lの方向を変える。走行操作レバー24Lのストッパー50の先端50Cにある抜け止めピン51をそれぞれ抜く。そして、持手部分50Hを把持してバネSPの付勢力に抗してストッパー50を引く。このとき、先端50Cを位置決め孔HAおよび貫通孔HX1から抜くようにストッパー50をスライドさせる。なお、ストッパー50の先端50Dは先端50Cよりも長く形成されており、中心孔HCおよび貫通孔HX2からは抜かない程度にストッパー50をスライドさせる(ストッパー50を全て固定部14R3から抜かないことで、ストッパー50を紛失する恐れがない)。そして、先端50Dを回動中心として、レバー部14R1を後方に回動させて、貫通孔HX1と位置決め孔HBとを合わせ、ここに先端50Cを貫通させるようにしてストッパー50をスライドさせる。その後、先端50Cの貫通孔50A1に抜け止めピン51を挿入して、ストッパー50を固定部14R3に対して抜け止めする。なお、走行操作レバー14Rの方向を変える手順も同様である。
【0069】
UTV作業時に電動ローンモア10を走行させるには、走行操作レバー14L,14Rを適宜操作する。このとき、走行操作レバー14L,14Rの傾動量と走行モータDMの回転速度との関係は、前述の、芝刈作業時のそれと同一とする。
【0070】
このようにして、電動ローンモア10をUTV作業用として使用することができる(図10)。なお、フェンダー24L,24Rの天面には、それぞれ飲料容器を保持するためのドリンクフォルダ(保持部)61L,61R、小物を置くための開口スペース62L,62Rを備える。ドリンクフォルダ61Lは、フェンダー24Lの前部であって、運転席13が前向き時(すなわち、芝刈作業時)に、運転手が運転席13に着席したときに運転席13の斜め左前方の手が届く位置に形成される。一方、ドリンクフォルダ61Rは、フェンダー24Rの後部であって、運転席13が後向き時(すなわち、UTV作業時)に、運転手が運転席13に着席したときに運転席13の斜め左前方の手が届く位置に形成される。このようにすることで、電動ローンモア10が、前後方向のいずれに運転席13を配置した場合にも、運転席13に対して左側にあるドリンクフォルダに手が届くことになり、好適である。また、フェンダー24L上には、電動ローンモア10の後側に開口スペース62Lを備える。一方、フェンダー24R上には、電動ローンモア10の前側に開口スペース62Rを備える。このようにすることで、電動ローンモア10が、前後方向のいずれに運転席13を配置した場合にも、運転席13に対して右側にある開口スペースに手が届くことになり、好適である。
【0071】
図11に示すように、リンクバー14R4の下端に設けられた円柱状の回動支点14R5の中心を通る鉛直線VL上に、固定部14R3の中心孔HCの中心が位置する。そして、回動支点14R5の位置は、電動ローンモア10の全長Lの略中間地点となっている。なお、図11に示すレバー14Rの位置は草刈作業時のニュートラル位置である(一点鎖線で示したレバー14RはUTV作業時のニュートラル位置を示している)。
【0072】
なお、図12(a)〜(c)に示すように、後部ステップBSTの略中央付近には、凹状の収納部64が形成され、その収納部64内に、後部フットレスト65が折り畳まれて収納されている。後部フットレスト65は、所定の厚みをもった矩形の金属製の箱状の足載部65A、矩形の金属板状の支持部65B、および、両者を回動自在に連結するヒンジ部HNで構成される。ヒンジ部HNを介して足載部65Aと支持部65Bとは折り畳まれて重なるようになっている。そして、足載部65Aの、ヒンジ部HNが形成されているのとは反対側には、回動支持棒66を貫通させる。回動支持棒66は金属製で足載部65Aは回動支持棒66の回りに回動自在に支持される。回動支持棒66の両端は、車体フレーム18によって固定されている。
【0073】
このように構成された後部フットレスト65は、電動ローンモア10が芝刈作業を行っている際には折り畳まれて収納部64に収納されている(すなわち、後部フットレスト65は、電動ローンモア10の機体に対して出没自在である)。このとき、折り畳まれた後部フットレスト65は、車体フレーム18の上面と略同一の高さとなるようにすることで、運転者が不使用時の後部フットレスト65に引っかかったりすることを防止でき、好適である。電動ローンモア10がUTV作業をする際には、上述の要領で、運転席13、走行操作レバー14L,14Rなどの設定を行った後、後部フットレスト65を収納部64から持ち上げる。そして、支持部65Bを足載部65Aから開きながら、支持部65Bの端部65B1を収納部64の後端64Bに当接させるようにする。このようにして、後部フットレスト65を組み立てる。運転者は、UTV作業時にこの後部フットレスト65に足を載せながら運転をすることができる。UTV作業を終了して、電動ローンモア10を芝刈作業にするときは、後部フットレスト65を折り畳んで収納部64に収納する。
【0074】
なお、後部フットレスト65は折り畳み自在でなく、組み立てた状態で固定され、常時、露出するようなタイプでもよい。
【0075】
なお、電動ローンモアにはベッセル40を備えなくてもよい。図13(a),(b)に示すように、車体フレーム18が、車幅方向の両側に備える一対の直線状フレーム18FL,18FLと、直線状フレーム18FL,18FLの間に備えるステップ板18STとで構成され、直線状フレーム18FLを断面視で門型に形成する。そして、その内側の下端を略直角に外側に向けて折り曲げ、ステップ板18STの側部に載置してボルトなどで固定する。したがって、直線状フレーム18FLは、ステップSTよりも高さのある防護部PTとなる。このように、車体フレーム18の一部である直線状フレーム18FLをステップSTよりも高い位置に備えることで、防護部PTと兼ねることができ、部品点数を低減することができる。直線状フレーム18FLの上端をステップSTの上面よりも高い位置に配置することで、UTV作業時にステップSTに荷物を積載した状態で電動ローンモア10が走行したとき、直線状フレーム18FLが落下防止の役割を担い、走行時の振動や、左右折・旋回時などの遠心力などによって載置した荷物がステップSTから落下することを防ぐことができる。
【0076】
さらに、ステップSTの幅方向両側に落下防止用ネットNTを掛け止めるためのフックFKを複数備えるようにすると好適である。詳しくは、直線状フレーム18FLの外側面に一定間隔で貫通孔を複数形成し、それぞれの貫通孔に、内側よりピン状のフックFKを貫通させる。そして、フックFKの基端部を直線状フレーム18FLの外側面の内側に当接させた状態で溶接などによって固定する。
【0077】
落下防止用ネットNTは、図13(c),(d)に示すように、ゴムなどの伸縮性のある部材で略矩形に網状に形成され、端部には、フックFKに掛け止めるための取付部NT1を複数備える。図13(e)に示すように、ステップSTに荷物LGを載置した後、荷物LGを上から落下防止用ネットNTで覆い、この取付部NT1をフックFKにそれぞれ掛け止めて落下防止用ネットNTを車体フレーム18に固定する。
【0078】
なお、機体の後部において、直線状フレーム18FLの上端を後部ステップBSTの上面よりも高い位置に配置するようにしてもよい。このようにすることで、電動ローンモア10で芝刈作業時に、後部フットレスト65を折り畳み、後部ステップBSTに荷物を載置して搬送することができる。また、機体の後部の直線状フレーム18FLの外側面にも上述の要領でフックFK形成してもよい。このようにすることで、後部ステップBSTに載置した荷物を落下防止用ネットで覆い、荷物が後部ステップBSTから落下することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
この発明の電動乗用草刈機は、ローンモアとして芝刈作業をするのに限定されるものではなく、あらゆる草刈作業に適用しうる。また、モアブレードの駆動源は、モータに限定されるものではなく、エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 電動ローンモア(電動乗用草刈機)
12 後輪(駆動輪)
13 運転席
14L,14R 走行操作レバー(操作部)
15 モアデッキ
18 車体フレーム
24L,24R フェンダー
28 前部
29AL,29AR,29BL,29BR ブラケット
40 ベッセル
40BR,40BL 逃げ穴
41,42 グローメット(閉塞部材)
61L,61R ドリンクフォルダ(保持部)
65 後部フットレスト
BST 後部ステップ
DM 走行モータ
FK フック
LG 荷物(物体)
NT 落下防止用ネット
PK 防護部
SB 座席支持台(支持台)
ST ステップ
WM 作業モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転して草を刈るモアブレードと、
該モアブレードを上方および側方から覆うモアデッキと、
走行のための左右一対の駆動輪と、
該一対の駆動輪をそれぞれ独立に駆動する2つの走行モータと、
該2つの走行モータの駆動をそれぞれ独立に操作する左右一対の操作部とを備え、
該一対の操作部を操作することで、前後進、左右旋回を行う電動乗用草刈機であって、
前記操作部を操作する際に運転者が着席する運転席と、
機体の前部に設けられ、前記運転者が乗降時に足を載せるためのステップとを備え、
前記運転席が前向きと後向きとに変更可能であるとともに、前記走行モータが前後いずれにも回転可能であり、
さらに、前記操作部は、前記運転席が前向き、後向きのいずれであっても操作可能であって、
前記運転席が後向きのとき、前記ステップに物体を載置することを特徴とする、電動乗用草刈機。
【請求項2】
前記運転席の下に、前記運転席が前向きか後向きかを検出するための検出手段を備え、
該検出手段で検出した前記運転席の向きによって、前記走行モータの制御モードを切り替えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項3】
前記運転席が後向きの場合に前記運転者が乗り降りする際に使用する後部ステップを前記運転席の後方に備え、
足を載置するための後部フットレストを前記後部ステップに備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項4】
前記後部フットレストを出没自在に備えることを特徴とする、請求項3に記載の電動乗用草刈機。
【請求項5】
一対の後輪と、
該後輪を一定の距離を隔てて上方より覆う、前記運転席の左右両側に設けられる左右一 対のフェンダーとを備え、
飲料容器を保持するための保持部を前記左右一対のフェンダーに一体に形成した電動乗用草刈機であって、
一方の前記フェンダーの前部であって前記運転席が前向きのときに該運転席から手が届く位置に前記保持部を形成するとともに、他方の前記フェンダーの後部であって前記運転席が後向きのときに該運転席から手が届く位置に前記保持部を形成することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項6】
前記ステップの幅方向両側に落下防止用ネットを掛け止めるためのフックを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項7】
前記ステップの幅方向両側に、前記ステップよりも高さのある防護部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項8】
前記物体を載置するためのベッセルを備え、
ベッセル不使用時には、該ベッセルを前記運転席の下方に収納し、
ベッセル使用時には、前記ベッセルを前記ステップ上に載置することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項9】
車体フレームを備え、
前記運転席を下方より支持する支持台を前記車体フレーム上に固設し、
前記ベッセルが前記支持台の前部に回動可能に連結され、
前記ベッセル不使用時には、前記ベッセルを上下逆にして、前記支持台に被せるようにして載置され、
前記ベッセル使用時には、前記ベッセルが前記支持台の前部を中心として前側に向けて回動して前記ステップ上に載置されることを特徴とする、請求項8に記載の電動乗用草刈機。
【請求項10】
前記支持台上に前記運転席を取り付けるためのブラケットを設け、
該ブラケットを逃げるための逃げ穴を前記ベッセルの底部に設けるとともに、前記逃げ穴を塞ぐための閉塞部材を前記ベッセルの側部内側に着脱自在に取り付け、
前記ベッセル使用時には、前記閉塞部材を前記ベッセルの底部の逃げ穴に取り付けて閉塞することを特徴とする、請求項9に記載の電動乗用草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−130257(P2012−130257A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283070(P2010−283070)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】