説明

電動圧縮機およびその製造方法

【課題】二酸化炭素などの冷媒ガスを超臨界状態に圧縮する電動圧縮機において、シェルに抵抗溶接される密封端子の接合強度を高め、ガス漏れ等を防止すること。
【解決手段】端子台座26のフレア部26dのフレア内周面を、前記抵抗溶接機の下部電極が接触し通電する下部接触面とし、前記抵抗溶接機の荷重方向に凸形状となる円錐形状に傾斜させることにより、フレア部根元の強度を確保するとともに、溶接の際にフレア部が下部電極から内側に向かう水平方向反力が作用することで、溶接時に封着ガラスに生じる引張り応力を抑制して封着ガラスのクラックや割れ等の損傷を防止でき、密封性の高い圧縮機sを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機やヒートポンプ式給湯機などに用いられる電動圧縮機及びその製造方法に関するものである。特に、炭酸ガスなどの冷媒を高圧の超臨界状態に圧縮する電動圧縮機とその製造方法であって、圧縮機の密閉容器であるシェルと密封端子との接合に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題への対応から、従来用いられていたCFC系やHCFC系冷媒の使用が抑制され、地球温暖化係数の小さいHFC系冷媒(例えば、R410A,またはR32等を、主成分としたHFC系冷媒等)、あるいは自然冷媒(例えば、二酸化炭素)などを、冷媒に用いた機器の開発、利用が進められている。
【0003】
従来より、家庭用、業務用の冷凍空調機器において、ローリングピストン形やスクロール形の密閉構造の電動圧縮機が多く使用されている。いずれの圧縮機も、密閉容器内に、圧縮機構部、その駆動シャフト、及び電動機等を収容して構成されている。例えば、特許文献1には、空調機用のスクロール式の密閉構造の電動圧縮機について動作等が説明されている。
【0004】
ここでは、スクロール圧縮機を例にとり、従来の技術を説明する。図4に二酸化炭素(以後CO2と記す)冷媒を用いた従来のスクロール圧縮機の縦断面図を示す。
【0005】
密閉容器1は、円筒状の胴シェル21と、その上端側と下端側に円周溶接された深皿状の上部シェル22と底部シェル10により構成されている。胴シェル21に吸入管11、上部シェル22に吐出管16がロー付けなどで接合され、さらに上部シェル22には電動機7に給電する密封端子25が抵抗溶接などで接合されている。
【0006】
密閉容器1の内部には、固定スクロール2と可動スクロール3、可動スクロール3を駆動するシャフト5と、シャフト5の回転を支持する軸受部材6とから構成された圧縮機構部4が上部に収納されており、シャフト5には電動機7の回転子8が、胴シェル21に焼き嵌め固定された固定子9とともに軸受部材6の下部に収納されている。
【0007】
この構成で、空調機の冷凍サイクルを循環してきた低圧の冷媒ガスは吸入管11より圧縮機構部4に吸入され、固定スクロール2と可動スクロール3との間に形成された圧縮室で、可動スクロール3の旋回運動により冷媒ガスは圧縮され高圧ガスとなり吐出孔12より吐出される。さらに、高圧ガスは吐出孔12よりガス通路14を通じ、電動機7が収容された下部空間に流れた後、ガス通路15から上シェル側の空間に流れて吐出管16より、冷凍サイクルへ吐出される。
【0008】
次に、その上シェルと密封端子の接合構造について、図4の圧縮機の部分断面図を参照して説明する。図5は上部シェル22と密封端子25の接合状況を示したものである。
【0009】
密封端子25は、端子台座26に絶縁体の封着ガラス28を介して電流が流れる端子ピン27が封止されたもので、端子台座26はプレス加工成形した板金部品であり、端子ピン27が挿入されるピン孔26aが形成された天板部26bと、天板部26bの外側に絞り成形された円筒部26cと、円筒部26cからフレア状に成形され上部シェル22と接合されるフレア部26dから形成されている。
【0010】
抵抗溶接であるプロジェクション溶接によって上部シェル22に端子台座26を接合させる際、密封端子のフレア部26dが下部電極32の円錐状電極面32aに接触して設置され、上部シェル22に設けられた端子接合孔22aに円筒部26cを挿入され、端子接合孔22aのエッジとフレア部26dを接触させ、端子接合孔22aの淵の外側を上方から上部電極31により荷重(図中の矢印W)をかけられ固定される。この状態で高い溶接電流(図中の点線矢印A)を流すことで、接触抵抗の高い端子接合孔22aのエッジとフレア部26dの接触部をそのジュール発熱で溶融し溶接部29を形成し、上部シェル22と密封端子25の両者が接合されるものである。そのため、上部電極31と上部シェル22との接触面、及び下部電極32とフレア部26dとの接触面は、ともに接触抵抗が小さくなるように十分に接触面積が確保されている。また、溶接電流による温度上昇を防止するため、上部電極31と下部電極32は水冷されている。
【0011】
ところで、R22、R410A冷媒を用いた一般的なエアコンの冷媒サイクルでは、冷媒が臨界圧力未満にしか圧縮されないのに対して、CO2を冷媒とする場合は、冷媒を臨界圧よりも高い圧力にまで圧縮した冷凍サイクルが用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
このように、CO2を冷媒とする場合は、冷凍サイクルの高圧側の圧力を臨界圧力よりも高く設定することが多く、冷凍サイクルの高圧側圧力が一般的な冷凍サイクルに比べて非常に高くなっている。このように、CO2冷媒を用いた場合、動作圧力が従来の冷媒より高いため、密閉容器1の耐圧強度を上げる必要があり、各シェル部材の材料強度及び板厚の変更、さらに密閉端子などの強度向上が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−48682号公報
【特許文献2】特開平10−054617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記従来の構成では、次のような課題が生じていた。すなわち、図5の密封端子25は、端子台座26はプレス加工成形した板金部品であり、従来の板厚では、密閉容器1内が臨界状態のような高圧となった場合、強度不足により変形し絶縁体の封着ガラス28にクラック状のヒビ割れが生じて漏れが発生する課題を有していた。また、プレス成形のため、板厚taを厚くして強度を上げることにも限界があった。
【0015】
このため、図6に示すように切削加工によりブロックの鋼材から端子台座26を形成し、フレア部26dの厚みtbを厚くする事が出来るが、溶接の際に上方より荷重Wが印加されると、下部電極32の反力Rcの水平方向の分力Rtにより、フレア部26dは外側へ押し広げられながら溶接されるため、封着ガラス28に引張り応力が作用することになり、溶接時の衝撃や熱応力の影響で封着ガラス28にクラックや欠けなどの損傷が生じて漏れが発生しやすいという課題が生じていた。
【0016】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、CO2(二酸化炭素)などのガスを超臨界状態の高圧に圧縮することにより密閉容器内が従来よりも高い圧力になる圧縮機において、抵抗溶接でシェルに接合される密封端子の接合強度を高めるとともに、溶接時の封着ガラスの損傷などによって密閉容器となるシェルの密封性が低下しない電動圧縮機とその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動圧縮機は、抵抗溶接機の荷重方向と密封端子のフレア部内周面の角度を、前記荷重方向と前記フレア部外周面の角度より大きくすることにより、強度の必要なフレア部の根元部分の厚みを確保するとともに、溶接の際にフレア部が下部電極から内側に向かう水平方向反力Rtが作用するようにしたものである。これによって、溶接時に封着ガラスに生じる引張り応力を抑制でき、封着ガラスのクラックや割れ等の損傷を防止できる。
【0018】
さらに、本発明の電動圧縮機は、密閉端子の端子台座を鋼材のブロックにより形成することで、端子台座の強度を増加したものである。これにより、抵抗溶接時の高荷重や圧縮機運転時の高圧に対して変形しにくく、より封着ガラスのクラックや割れ等の損傷を防止できる。
【0019】
また、本発明の電動圧縮機の製造方法は、密封端子の端子台座をシェルに抵抗溶接で接合する際、抵抗溶接機の荷重方向と密封端子のフレア部内周面の角度が、抵抗溶接機の荷重方向と前記フレア部外周面の角度より大きくし、強度の必要な部分の厚みを確保した密封端子を、円錐状の下部電極に前記フレア部内周面を密着させ位置決めした状態で、密閉端子のフレア部内周面が抵抗溶接機の電極から受ける水平方向反力を内側に向かうようにしたものである。これによって、位置決めが容易で、高い荷重をかけ抵抗溶接を行う場合でも、封着ガラスに圧縮応力が作用し封着ガラスのクラックや割れ等の損傷発生を防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電動圧縮機は、抵抗溶接時の熱衝撃や熱応力による封着ガラスの損傷が防止できる。
【0021】
また、本発明の電動圧縮機の製造方法は、密封端子の抵抗溶接による接合工程において、加圧力を高めても、封着ガラスに圧縮応力を作用させながら溶接できるため、接合箇所の強度を高めつつ封着ガラスへの損傷を防止できる。
【0022】
したがって、CO2冷媒ガスを超臨界状態の高圧に圧縮する圧縮機において、先の溶接強度を高め、冷媒の漏れなどの問題を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における上シェルと密封端子の溶接状態を示す断面図
【図2】図1における上シェルと密封端子との接合部の拡大断面図
【図3】本発明の実施の形態2における上シェルと密封端子の溶接状態を示す断面図
【図4】従来の圧縮機の密閉型圧縮機を示す断面図
【図5】従来の圧縮機における上シェルと従来の密封端子の溶接状態を示す断面図
【図6】図5とは別の密封端子の溶接時の状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の発明の電動圧縮機は、圧縮機構と前記圧縮機構を駆動する電動機をシェルの内部に収納し、前記電動機に給電する密封端子を有し、前記密封端子が上記シェルに密封して抵抗溶接により荷重をかけ接合され、かつ、ガスを超臨界状態に圧縮する電動圧縮機であって、前記密封端子は、給電用のピンが絶縁体の封着ガラスにより絶縁されて端子台座に固定され、前記端子台座は外形状が軸対称で、その一部から円錐状にのびたフレア部を有し、前記フレア部のフレア外周面を、前記シェル側の突起が接触し通電し溶融接合する上部接触面とし、前記フレア部のフレア内周面を、前記抵抗溶接機の下部電極が接触し通電する下部接触面とし、前記抵抗溶接機の荷重方向に凸形状となる円錐形状に傾斜させることにより、強度の必要なフレア部の根元部分の厚みを確保するとともに、溶接の際にフレ
ア部が下部電極から内側に向かう水平方向反力が作用するようにしたものである。
【0025】
これによって、溶接時に封着ガラスに生じる引張り応力を抑制できるため、封着ガラスのクラックや割れ等の損傷を防止でき、密封性の高い圧縮機を実現できる。
【0026】
第2の発明の電動圧縮機の製造方法は、超臨界状態にガスを圧縮する電動圧縮機の製造方法であって、シェルの内部に設けられた電動機に給電する密封端子の端子台座を前記シェルに抵抗溶接で接合する接合工程を有し、前記接合工程において、前記端子台座が軸対称でその一部から円錐状にのびたフレア部にフレア外周面とフレア内周面を有し、前記抵抗溶接機の下部電極と接触し通電する下部接触面となる前記フレア内周面が、前記抵抗溶接機の荷重方向に凸形状となる円錐形状に傾斜した密封端子を、前記フレア内周面と同形状の円錐状下部電極に前記フレア内周面を密着させ位置決めし、前記抵抗溶接機の荷重の作用点より、前記抵抗溶接機の下部電極からフレア内周面に作用する反力の作用点が内側にあり、前記荷重に対し垂直方向の前記反力が内側に向いて作用する状態で、前記荷重をかけながら抵抗溶接を行うものである。
【0027】
これにより、フレア内周面の下部電極からの水平反力を内側に作用させて封着ガラスに圧縮応力を生じさせながら確実に固定して溶接できるため、封着ガラスの損傷や溶接部強度低下による、ガス漏れ等の密封性の低下を防止でき、密封性の高い圧縮機の製造が実現できる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。圧縮機の構造で従来と同等部分の説明は省略する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における、上部シェル22と密封端子25の抵抗溶接による溶接時の設置状態を示す断面図である。また、図2は図1の一部(P部)を拡大した図である。
【0030】
密封端子25は、端子台座26と電動機への給電電流が流れる端子ピン27、及び端子台座26に端子ピン27を電気的に絶縁しかつ気密封止する絶縁体の封着ガラス28から構成されている。また、端子台座26はブロックの鋼材から切削加工などに成型されたもので、天板部26bを有する円筒部26cと、円筒部26cからフレア状に成形され上部シェル22と接合されるフレア部26dを有しており、端子ピン27が挿入されるピン孔26aが天上部26bに開口され円筒部26bに貫通して設けている。
【0031】
図2において、フレア部26dには、上方の面は上方に凸形状で円錐面である外周面と、下方の面は下方に凸形状で円錐面である内周面が設けられており、密封端子25が溶接される際、外周面が溶接部となり、内周面は設置および電気的接地面となる。
【0032】
この構成による密封端子25の抵抗溶接による溶接工程について説明する。
【0033】
抵抗溶接にプロジェクション溶接を用い、上部シェル22に端子台座26を接合させる際、密封端子25のフレア部26dの内周面30bが下部電極32の円錐状電極面32aに接触して設置され、上部シェル22に設けられた端子接合孔22aに円筒部26cを挿入され、端子接合孔22aのエッジとフレア部26dの外周面30aを接触させ、端子接合孔22aの淵の外側を上方から上部電極31により荷重(図中の矢印W)をかけられ固定される。
【0034】
この状態で上部電極31と下部電極32との間に高い溶接電流(図中の点線矢印A)を流すことで、接触抵抗の高い端子接合孔22aのエッジとフレア部26dの接触部をそのジュール発熱で溶融し溶接部29を形成し、上部シェル22と密封端子25の両者が接合されるものである。
【0035】
そのため、上部電極31と上部シェル22との接触面、及び下部電極32とフレア部との接触面は、ともに接触抵抗が小さくなるように十分に接触面積が確保されている。尚、溶接電流による温度上昇を防止するため、上部電極31と下部電極32は水冷されている。
【0036】
この溶接において、図中の上方より荷重Wが印加されると、フレア部の内周面30bに下部電極32からその反力Rcが作用し、その反力Rcの直角方向の分力Rtが内側方向(従来の図6では外側方向)に作用するため、端子台座26、封着ガラス28には圧縮応力(図中の矢印σ0、σ1)が生じる。
【0037】
封着ガラス28にこの圧縮応力が生じた状態で上シェル22に溶接固定されるため、封着ガラス28のクラックや欠けなどの損傷が発生することがない。
【0038】
また、端子台座26は、内周面30bが角度α1を有するため、先の角度α1に沿うように形成された下部電極32の電極面32aに対して確実に位置決め固定され、上部シェル22との位置ずれによる溶接不良の発生も防止できる。
【0039】
この封着ガラス28は、材料的に圧縮応力に強いが引張り応力に非常に弱いため、密封端子25の封着ガラス28には圧縮応力をかけた状態で設計されているが、上部シェル22に密封端子25が接合された電動圧縮機が動作する際は、図1、2の上方(密閉容器の外側に対応)から大気圧P0、下方(密閉容器の内側に対応)から高圧P1が作用し、この圧力により、端子台座26は上方に凸の変形を生じようとするため、端子台座26の上部には引張り応力σ0、下部には圧縮応力σ1が発生する傾向がある。
【0040】
この際、フレア部26dの根元厚みtcには、高圧P1が作用しても溶接部の強度を確保するために相当の厚みが必要となるが、本形態では、フレア部26dの内周面30bが矢印Wの荷重方向(図2参照)に対して矢印方向に凸形状の円錐形状で、外周面30aが矢印Wとなす角度α0が、内周面30bが成す角度α1より大きく形成されているため、従来のものよりもフレア部26dの根元厚みtcを厚く、強度を確保できる。
【0041】
このように、本形態によれば、端子台座26の厚みtcが厚く、溶接部29が端子台座26の下方に設けているため、封着ガラス28に過大な引張り応力は発生しにくい。また、多少の引張り応力が作用する場合にも、先の溶接により密封端子には上方にも圧縮応力をかけられているため、合力として引張り応力が封着ガラス28に作用することを抑制でき、封着ガラス28の損傷を防止できる。
【0042】
尚、本実施形態の圧縮機1は、以上説明した溶接工程を始め、胴シェル21内に圧縮機構4及び電動機7などを固定する工程や、胴シェル21に上部シェル22及び底部シェル10を溶接する工程などを行うことにより製造することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態における、上部シェル22と密封端子25の密封端子溶接工程における、溶接時の状態を示す断面の拡大図である。
【0044】
密封端子25は、図2に示す実施の形態1と同様の構成である。実施の形態1と異なる
点は、下部電極32の電極接触面32aと接触する内周面30bが幅kcでフレア部26dの根元側に形成されており、内周面30bに作用する反力Rcの荷重W方向成分Rnの作用点が、外周面30aに作用する荷重Wの作用点より、端子台座26の中心線に近くなるように構成されている。
【0045】
これにより、実施の形態1(図2)で説明した反力Rcの水平方向成分で内側に向くRtによる圧縮応力に加え、本形態では、溶接の際端子台座26が上方に凸の変形する方向にモーメントが作用するため、端子台座26の下部には圧縮応力σ3が生じる。この圧縮応力σ1は、封着ガラス28の損傷を防止する方向に働くため、溶接時の損傷による不良を防止することができる。
【0046】
密封端子25の溶接工程において、端子台座26を上部シェル22側に荷重Wをかけながら溶接しているので、その荷重Wを増加することで溶接部29が十分に溶融することで溶接面積が大きくなり、溶接強度も十分に強化することができる。
【0047】
したがって、本実施の形態の溶接工程によれば、実施封着ガラス28の損傷を防止しつつ、荷重Wを増加させることができるため、溶接部29の溶接強度を向上する事ができ、密封性の高い圧縮機を製造できる。
【0048】
尚、端子台座26の上部には引張り応力が発生する傾向となるが、フレア部26dが端子台座26の下部に形成されているため、影響が及びにくい。
【0049】
尚、反力Rcの荷重Wの垂直成分Rtの影響は、電極接触面32aの摩擦力で吸収されるが、場合によっては、図3に示すように下部電極32に反力Rrを作用させる支持壁32bを設けてもよい。
【0050】
また、端子台座26を、例えば鋼材のブロックから形成した厚肉の部品にしているので、該端子台座26の剛性を高めることができるとともに、プロジェクション溶接などの抵抗溶接を行う際の封着ガラス28の損傷などを確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる電動圧縮機は、密封端子のフレア部の強度を確保するとともに、溶接電流の経路を短かくすることで、端子台座の温度上昇による熱衝撃や熱応力による封着ガラス部のクラックや欠けが防止でき、漏れのない密閉容器が可能となるので、圧縮機に限らず超臨界状態のような高圧で動作させる必要のあるポンプ等の流体機械の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 密閉容器
7 電動機
21 胴シェル
22 上部シェル
22a 端子接合孔
25 密封端子
26 端子台座
26a ピン孔
26b 天板部
26c 円筒部
26d フレア部
27 ピン
28 封着ガラス
29 溶接部
31 上部電極
32 下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構と前記圧縮機構を駆動する電動機をシェルの内部に収納し、前記電動機に給電する密封端子を有し、前記密封端子が上記シェルに密封して抵抗溶接により荷重をかけ接合され、かつ、ガスを超臨界状態に圧縮する電動圧縮機であって、前記密封端子は、給電用のピンが絶縁体の封着ガラスにより絶縁されて端子台座に封着固定され、前記端子台座は外形状が軸対称で、その一部から円錐状にのびたフレア部を有し、前記フレア部のフレア外周面を、前記シェル側の突起が接触し通電し溶融接合する上部接触面とし、前記フレア部のフレア内周面を、前記抵抗溶接機の下部電極が接触し通電する下部接触面とし、前記フレア部のフレア内周面が、前記抵抗溶接機の下部電極が接触し通電する下部接触面であり、前記抵抗溶接機の荷重方向に凸形状となる円錐形状に傾斜して形成されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
超臨界状態にガスを圧縮する電動圧縮機の製造方法であって、シェルの内部に設けられた電動機に給電する密封端子の端子台座を前記シェルに抵抗溶接機で接合する接合工程を有し、前記接合工程において、前記端子台座が軸対称でその一部から円錐状にのびたフレア部にフレア外周面とフレア内周面を有し、前記抵抗溶接機の下部電極と接触し通電する下部接触面となる前記フレア内周面が、前記抵抗溶接機の荷重方向に凸形状となる円錐形状に傾斜した密封端子を、前記フレア内周面と同形状の円錐状下部電極に前記フレア内周面を密着させ位置決めし、前記抵抗溶接機の荷重の作用点より、前記抵抗溶接機の下部電極からフレア内周面に作用する反力の作用点が内側にあり、前記荷重に対し垂直方向の前記反力が内側に向いて作用する状態で、前記荷重をかけながら抵抗溶接を行うことを特徴とする電動圧縮機の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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