説明

電動射出成形機の電力供給方法

【課題】所定の電力貯蔵回路が設けられている電力供給装置を備えた電動射出成形機において、最大電力を低下させることができる電力供給方法を提供する。
【解決手段】サーボアンプ(SA1、SA2、…)に電力を供給する電力供給装置(1)を、交流直流変換器(2)と所定の電力貯蔵回路(3)とから構成する。射出工程以外の工程においては、交流直流変圧器(2)から電力を供給すると共に、電力貯蔵回路(3)に電力を貯蔵する。射出工程においては、交流直流変換器(2)と電力貯蔵回路(3)とを連動して制御して、射出に要する電力を電力貯蔵回路(3)に貯蔵された電力から供給し、交流直流変換器(2)から供給される電力が過大になるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動射出成形機の電力供給装置を制御して、スクリュ、型開閉装置、成形品突出装置等に設けられているサーボモータに電力を供給する電力供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、一対の金型、これらの金型を型締する型締装置、樹脂を溶融して金型内に射出する射出装置、等から構成され、射出装置は、射出シリンダ、この射出シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動されるスクリュ、プランジャ等から構成されている。電動式射出成形機においては、このような型締装置、スクリュ等は、それぞれに独立して設けられているサーボモータによって駆動される。射出成形機における成形サイクルの中で、射出工程は他の工程に比して短時間の工程であるにも拘わらず、高出力を要する。従って、射出工程時にスクリュを軸方向に駆動するサーボモータ、いわゆる射出軸用のサーボモータは、大型で高出力のものが採用されている。近年、転写性に優れ、複雑で微細な形状の成形品や薄肉の成形品であっても、転写性良く成形できる、いわゆる超高速射出成形のニーズが高まっている。このような超高速射出成形が実施できる射出成形機においては、射出工程はさらに高出力を要し、より大型のサーボモータが設けられるようになってきている。
【0003】
射出成形機には、従来周知のコンバータが設けられており、工場の受電設備から供給されている三相交流電圧は直流電圧に変換、すなわち整流される。そして、整流された直流電圧は、各サーボモータに関連して設けられているインバータ回路、すなわちサーボアンプに直流回路を介して供給されている。従って、サーボアンプにおいて所定の周波数で所定の電流の三相交流電圧に変換すると、サーボモータを駆動することができる。射出軸用のサーボモータを高出力で駆動する場合には、サーボアンプは、大電力をサーボモータに供給する必要があるので、サーボアンプに供給される直流電圧の電流は大電流を要する。そうすると、高出力で駆動することが要求される射出工程に備えて、工場の受電設備から供給される三相交流電源も大きな電流供給能力が必要になり、比較的大きな電力容量が要求されることになる。電力料金は契約する最大電力によって料金体系が異なるので、電力容量の大きい受電設備を設置すると電気料金が嵩むことになる。省エネルギやコスト削減の必要から、受電設備に要求される電力容量を小さくすることができ、必要な電気料金を下げることができる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−241287号公報
【0005】
特許文献1には、成形サイクルの各工程のうち消費電力が小さい工程において電力を貯蔵して、射出工程等の高出力が要求される工程において貯蔵された電力を供給し、それによって成形サイクルの各工程で必要な電力を平滑化して外部から供給される最大電力を低減することができる、電動射出成形機の電力供給装置が、本発明者によって提案されている。特許文献1に記載の電力供給装置は、交流直流変換器と電力貯蔵装置とから構成されている。交流直流変換器は、従来周知のダイオード整流回路、あるいはPWMコンバータ等からなり、入力側は工場内の三相交流電源に接続され、出力側は直流電圧線、すなわち直流回路に接続され、工場の受電設備から供給される三相交流電圧を直流電圧に整流して、各サーボモータに関連して設けられているサーボアンプに直流電圧を供給できるようになっている。電力貯蔵装置には所定の電力貯蔵回路が設けられており、交流直流変換器の出力側の直流回路に接続されている。そして、この電力貯蔵回路を適切に制御すると、直流回路から電力の供給を受けて電力を回路内に貯蔵することができ、必要に応じて貯蔵された電力を直流回路に供給することができるようになっている。従って、成形サイクルの各工程のうち消費電力が小さい工程において、電力を電力貯蔵回路に貯蔵して、高出力を要する工程において貯蔵された電力を直流回路に供給するようにすると、成形サイクルの各工程で必要な電力を平滑化することができ、三相交流電源から供給される最大電力を低減することができる。そうすると、工場の受電設備に要求される電力容量も少なくて済み、設備費を削減できると共に、必要な電気料金も下げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電力供給装置は、電力を貯蔵して、必要に応じて貯蔵された電力を供給することができるので、射出成形機において成形サイクルの各工程で必要な電力を平滑化することができ、三相交流電源から供給される最大電力を低減することができ優れてはいる。しかしながら、解決すべき課題も見受けられる。つまり、引用文献1に記載の電力供給装置自体は優れてはいるが、これを最適に制御する方法については示されていない。より詳しく説明すると、引用文献1には、電力貯蔵回路自体を単独で制御する方法については示されており、電力を貯蔵する方法や電力を供給する方法は記載されている。しかしながら、電力貯蔵回路を、交流直流変換器やサーボアンプの制御と連動して制御する方法については記載されていない。これらは直流回路を介して互いに接続されているので、もし互いに独立して制御すると、他の制御による直流電圧の変化が外乱になってしまい、適切に制御することができない。また、これらを連動して制御するとしても、具体的な制御方法が不明である。そうすると、射出工程時等に瞬間的に必要になる大電力に対して確実に対応することができる保障がない。つまり、最大電力を十分に低減できる保障がない。
【0007】
本発明は、上記したような問題点あるいは課題を解決した、電動射出成形機の電力供給方法を提供することを目的としている。具体的には、電動射出成形機の電力供給装置に設けられている電力貯蔵回路と、交流直流変換器やサーボアンプとを連動して制御して、成形サイクル全体で必要な電力を平滑化して、それによって外部から供給される最大電力を確実に低減することができる、電動射出成形機の電力供給方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、所定の電力貯蔵回路を備えた電力供給装置を所定の制御方法で制御して、電動射出成形機のサーボアンプに電力を供給するように構成する。このような電力供給装置は、PWMコンバータまたはダイオード整流回路からなり三相交流電圧を変換して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、直流回路に接続されている電力貯蔵回路とから構成し、サーボアンプにはこの直流回路から直流電圧を供給する。電力貯蔵回路は2種類の異なる構成とすることができる。
【0009】
電力貯蔵回路を、以下の構成からなる第1の電力貯蔵回路とすることができる。
・第1の電力貯蔵回路は、少なくとも第1、2のループ回路から構成する。
・第1のループ回路は、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子と、コイルと、第1のスイッチ回路と、コンデンサとから構成し、これらを直列に接続する。
・第2のループ回路は、前記正端子と、前記負端子と、前記コイルと、第2のスイッチ回路とから構成し、これらを直列に接続する。
・第1のスイッチ回路は、並列に接続された第1のダイオードと第1のトランジスタとから構成し、第1のダイオードは前記正端子から前記負端子の方向に、第1のトランジスタは駆動されると前記負端子から前記正端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設ける。
・第2のスイッチ回路は、並列に接続された第2のダイオードと第2のトランジスタとから構成し、第2のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、第2のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設ける。
【0010】
第1の電力貯蔵回路は、第2のトランジスタの開閉を制御すると、正負端子から電流が第1の電力貯蔵回路に流れて、コンデンサに電荷を貯蔵することができる。すなわち、第1の電力貯蔵回路に電力を貯蔵することができる。また、第1のトランジスタの開閉を制御すると、第1の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を直流回路に供給することができる。
【0011】
電力貯蔵回路は、第1の電力貯蔵回路に代えて、以下の構成からなる第2の電力貯蔵回路とすることもできる。
・第2の電力貯蔵回路は、少なくとも第3、4のループ回路から構成する。
・第3のループ回路は、コンデンサと、コイルと、第3のスイッチ回路と、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子とから構成し、これらを直列に接続する。
・第4のループ回路は、第4のスイッチ回路と、前記第3のスイッチ回路と、前記正端子と、前記負端子とから構成し、これらを直列に接続する。
・第3のスイッチ回路は、並列に接続された第3のダイオードと第3のトランジスタとから構成し、第3のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、第3のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設ける。
・第4のスイッチ回路は、並列に接続された第4のダイオードと第4のトランジスタとから構成し、第4のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、第4のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設ける。
【0012】
第2の電力貯蔵回路は、第3のトランジスタの開閉を制御すると、正負端子から電流が第2の電力貯蔵回路に流れて、コンデンサに電荷を貯蔵することができる。すなわち、第2の電力貯蔵回路に電力を貯蔵することができる。また、第4のトランジスタの開閉を制御すると、第2の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を直流回路に供給することができる。
【0013】
本発明においては、第1、2の電力貯蔵回路のいずれかの回路を備えた電力供給装置を、以下の3種類の異なる制御方法のいずれかを選択して制御して、電力を供給するように構成する。
第1の制御方法を採る場合、交流直流変換器は制御が可能なPWMコンバータから構成する必要がある。第1の制御方法は以下から構成する。
・射出工程以外の成形サイクルの工程において、第1の電力貯蔵回路の第2のトランジスタの開閉を制御して、コンデンサに所定の電荷を貯蔵して電力貯蔵回路に電力を貯蔵する。電力貯蔵回路が第2の電力貯蔵回路の場合には、第2のトランジスタではなく、第3のトランジスタの開閉を制御するようにする。
・射出工程における交流直流変換器の制御は、直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から交流直流変換器の直流電流についての仮の目標値である仮目標電流を得、この仮目標電流から所定のしきい値の周波数を越える高周波成分を除去して目標電流を得、そして交流直流変換器から供給する直流電流がこの目標電流になるように制御する。
・射出工程において、第1の電力貯蔵回路の第1のトランジスタの開閉を制御して、電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、コイルを流れる電流を制御するための目標コイル電流は、仮目標電流の前記高周波成分とする。電力貯蔵回路が第2の電力貯蔵回路の場合には、第1のトランジスタではなく、第4のトランジスタの開閉を制御するようにする。
【0014】
第2の制御方法は以下から構成する。
・射出工程以外の成形サイクルの工程において、第1の電力貯蔵回路の第2のトランジスタの開閉を制御して、コンデンサに所定の電荷を貯蔵して電力貯蔵回路に電力を貯蔵する。電力貯蔵回路が第2の電力貯蔵回路の場合には、第2のトランジスタではなく、第3のトランジスタの開閉を制御するようにする。
・射出工程において、第1の電力貯蔵回路の第1のトランジスタの開閉を制御して、電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、射出サーボモータの駆動電力の情報から、コイルにおける目標コイル電流を得、コイルにおけるコイル電流は目標コイル電流に基づいて制御する。電力貯蔵回路が第2の電力貯蔵回路の場合には、第1のトランジスタではなく、第4のトランジスタの開閉を制御するようにする。ここで目標コイル電流の大きさは、サーボモータの駆動電力に等しい電力を電力貯蔵回路から供給するときに、該電力貯蔵回路から流れる電流の大きさに対応するものである。
【0015】
第3の制御方法は以下から構成する。
・射出工程以外の成形サイクルの工程において、第1の電力貯蔵回路の第2のトランジスタの開閉を制御して、コンデンサに所定の電荷を貯蔵して電力貯蔵回路に電力を貯蔵する。電力貯蔵回路が第2の電力貯蔵回路の場合には、第2のトランジスタではなく、第3のトランジスタの開閉を制御するようにする。
・射出工程において、第1の電力貯蔵回路の第1のトランジスタの開閉を制御して、電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から交流直流変換器から供給する電流の仮の目標値である仮目標電流を得、射出サーボモータの駆動電力に基づいて算出した電流を仮目標電流に加算してコイルにおける目標コイル電流を得、コイルにおける電流を目標コイル電流に基づいて制御する。電力貯蔵回路が第2の電力貯蔵回路の場合には、第1のトランジスタではなく、第4のトランジスタの開閉を制御するようにする。ここで射出サーボモータの駆動電力に基づいて算出する電流の大きさは、サーボモータの駆動電力に等しい電力を電力貯蔵回路から供給するときに、該電力貯蔵回路から流す電流の大きさに対応するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明、および請求項4に記載の発明によると、電力供給装置は、第1、2の電力貯蔵回路のいずれかの電力貯蔵回路を備えており、このような電力貯蔵回路を備えた電力供給装置を第1の制御方法によって制御するように構成されているので、電力供給装置を構成している交流直流変換器と、電力貯蔵回路とを連動して制御することができる。具体的には、交流直流変換器を制御するとき、直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から、交流直流変換器の直流電流についての仮の目標値である仮目標電流を得ている。そして、この仮目標電流から所定のしきい値の周波数を越える高周波成分を除去し、これを目標電流として制御するように構成されている。また、射出工程時に電力貯蔵回路を制御するとき、この除去された高周波成分を目標コイル電流として、電力貯蔵回路内のコイルの電流を制御するように構成されている。射出時には、瞬間的に大容量の電力を要するので直流回路の直流電圧は短い周期で変動する。従って、直流電圧は高周波で変動する。つまり、直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から得られる仮目標電流において、高周波成分に射出時に必要となる直流電流があらわれることになる。そうすると、最大電力を要する射出時に必要な直流電流については電力貯蔵回路から供給することができ、それ以外の直流電流については交流直流変換器から供給することができる。従って、外部から供給される最大電力を確実に低減することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明、および請求項5に記載の発明によると、電力供給装置は、第1、2の電力貯蔵回路のいずれかの電力貯蔵回路を備えており、このような電力貯蔵回路を備えた電力供給装置を第2の制御方法によって制御するように構成されているので、電力貯蔵回路と、射出サーボモータに設けられているサーボアンプとを連動して制御することができる。具体的には、射出サーボモータの駆動電力の情報から目標コイル電流を得て、電力貯蔵回路内のコイルにおけるコイル電流がこの目標コイル電流になるように電力貯蔵回路を制御するように構成されている。従って、射出時にサーボアンプが必要とする直流電流を、直接電力貯蔵回路から供給することができる。つまり、射出サーボモータのサーボアンプの制御と、電力貯蔵回路の制御を連動することによって、射出サーボモータが要する電力を電力貯蔵回路から供給することができるので、確実に最大電力を低減することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明、および請求項6に記載の発明によると、電力供給装置は、第1、2の電力貯蔵回路のいずれかの電力貯蔵回路を備えており、このような電力貯蔵回路を備えた電力供給装置を第3の制御方法によって制御するように構成されているので、電力貯蔵回路と、射出サーボモータに設けられているサーボアンプとを連動して制御することができる。具体的には、直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から交流直流変換器によって供給する電流の仮の目標値である仮目標電流を得、射出サーボモータの駆動電力に基づいて算出した電流を仮目標電流に加算してコイルにおける目標コイル電流を得ている。そして、電力貯蔵回路を制御するとき、コイルにおける電流が目標コイル電流になるように制御している。従って、射出時にサーボアンプが必要とする直流電流を、直接電力貯蔵回路から供給することができ、また、直流電圧が目標電圧になるようにすることができる。そうすると、射出サーボモータが要する電力を電力貯蔵回路から供給することができ、さらに直流電圧を目標電圧に制御することができるので、確実に最大電力を低減することができるし、直流電圧を安定させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係る電力供給装置と射出成形機の各サーボアンプの接続状態を模式的に説明する配線図である。
【図2】本実施の第1の形態に係る電力貯蔵回路の回路を示す回路図である。
【図3】本実施の第1の形態に係る電力貯蔵回路の作用を模式的に説明する図であり、その(ア)と(イ)は、電力貯蔵回路に電力を貯蔵する場合の回路の動作状態を、その(ウ)と(エ)は、電力貯蔵回路から外部に電力を出力する場合の回路の動作状態を、それぞれ説明する動作説明図である。
【図4】本実施の形態に係る電力供給装置の第1の制御方法を示すブロック図である。
【図5】本実施の形態に係る電力供給装置の第2の制御方法を示すブロック図である。
【図6】本実施の形態に係る電力供給装置の第3の制御方法を示すブロック図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る電力貯蔵回路を示す回路図であり、その(ア)〜(ウ)は、第2〜4の実施の形態に係る電力貯蔵回路の回路図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る電力貯蔵装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る、電動射出成形機の電力供給装置も、従来周知の電力供給装置と同様に、三相交流電流を整流して、サーボアンプに直流電圧を供給する。従って、本実施の形態に係る、電力供給装置1も、図1に示されているように、三相交流電源PWに接続されていると共に、直流回路側の正の電圧線PがサーボアンプSA1、SA2、…に接続されている。電力供給装置1もサーボアンプSA1、SA2、…も負の電圧線Nに接続されているので、正の電圧線Pを介して電力供給装置1からサーボアンプSA1、SA2、…に直流電圧を供給できるようになっている。従って、サーボアンプSA1、SA2、…は、スクリュを軸方向に駆動する射出軸、スクリュを回転方向に駆動する可塑化軸、型開閉軸、エジェクタピンを駆動する突出軸に対応して設けられているサーボモータSM1、SM2、…を駆動することができる。本実施の形態に係る電力供給装置1は、三相交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換器2と、電力貯蔵回路3とからなる。交流直流変換器2は、三相交流電圧を直流電圧に変換するコンバータであり、従来周知のダイオード整流回路、PWMコンバータ等から構成することができる。ダイオード整流回路は格別に制御することはできないが、PWMコンバータは従来周知のように力率を改善したり、回生電力を戻す制御をすることができ、さらには電流を制御することもできる。本実施の形態においては、交流直流変換器2はこのように色々な制御をすることができるPWMコンバータから構成されている。電力貯蔵回路3は後で説明するように、交流直流変換器2から供給される電力の一部を貯蔵したり、出力要求を受けると貯蔵した電力を所定の電圧に制御して正の電圧線Pに供給できるようになっている。
【0021】
電動射出成形機には、コントローラ4が設けられ、交流直流変換器2、電力貯蔵回路3、サーボアンプSA1、SA2、…のそれぞれと信号線s1、s2、…によって接続されている。従って、これらをコントローラ4によって制御することができる。また、交流直流変換器2に関連して設けられている電流検出器CTと、正負の電圧線P、Nも信号線s7、s8によってコントローラ4に接続されており、交流直流変換器2を流れる電流や直流回路の電圧がコントローラ4に入力されるようになっている。そして、以下で説明する電力貯蔵回路3内にも電流検出器や電圧検出器が設けられており、これらは信号線s9によってコントローラ4に接続され、コントローラ4に電流や電圧が入力されるようになっている。
【0022】
電力貯蔵回路3は、色々な実施の形態を採ることができ、これらは概略的に2種類の構成である第1、2の構成のいずれかに分類することができる。以下、第1の構成に属する第1の実施の形態に係る電力貯蔵回路3aについて説明する。
【0023】
電力貯蔵回路3aは、図2に示されているように、直流回路の正の電圧線Pに接続される正端子Pと、負の電圧線に接続される負端子Nと、1個のコンデンサCと、1個のコイルLと、第1、2のスイッチ回路SW、SWとから構成されている。そして、第1のスイッチ回路SWは第1のトランジスタTr1と第1のダイオードDとから、第2のスイッチ回路SWは第2のトランジスタTr2と第2のダイオードDとから構成されている。このようなコンデンサCには例えば電気二重層キャパシタが採用され、トランジスタTr1、Tr2には例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、すなわちIGBTが採用されている。電力貯蔵回路3aについて配線状態を詳しく説明すると、電力貯蔵回路3aには、第1、2のループ回路LP、LPが設けられている。負端子Nと、正端子Pと、コイルLは直列に接続され、これらは第1、2のループ回路LP、LPによって共有されている。そして、第1のループ回路LPには第1のスイッチ回路SWとコンデンサCが直列に接続され、第2のループ回路LPには第2のスイッチ回路SWが接続されている。従って、第1のループ回路LPについて見ると、負端子Nと、正端子Pと、コイルLと、第1のスイッチ回路SWと、コンデンサCが直列に接続されていることになる。また、第2のループ回路LPについて見ると、負端子Nと、正端子Pと、コイルLと、第2のスイッチ回路SWが直列に接続されていることになる。第1、2のスイッチ回路SW、SWはいずれも、1個のダイオードと1個のトランジスタが並列に接続された回路であり、一方の方向には自由に電流を流すが、反対の方向にはトランジスタがONしたとき、すなわちスイッチングしたときのみ電流を流す、電流の流れを制御する回路になっている。具体的には、第1のスイッチ回路SWは、第1のダイオードDが正端子Pから負端子Nの方向に電流を流すように接続され、第1のトランジスタTr1は、ONすると逆方向に電流を流すように、第1のダイオードDと並列に接続されている。そして、第2のスイッチ回路SWは、第2のダイオードDが負端子Nから正端子Pの方向に電流を流すように接続され、第2のトランジスタTr2は、ONすると逆方向に電流を流すように、第2のダイオードDと並列に接続されている。
【0024】
コイルLの近傍には電流検出器CTが設けられ、コイルLを流れるコイル電流が測定されるようになっている。また、正負端子P、N間には電圧検出器Vが、コンデンサCの両端には電圧検出器Vがそれぞれ設けられ、直流電圧とコンデンサ電圧が測定されるようになっている。これらの電流や電圧は信号線s9によってコントローラ4に入力されるようになっている。図1には、電力貯蔵回路3は1本の信号線s2によってコントローラ4に接続されているように示されており、これによって電力貯蔵回路3が制御されるように説明したが、実際には第1、2のトランジスタTr1、Tr2を制御する2本の信号線が接続されている。そして、これらの信号線と第1、2のトランジスタTr1、Tr2とは、フォトカプラ等を介して電気的に絶縁された状態で接続され、電位の異なる電圧がコントローラ4に入力されないように保護されているが、このようなフォトカプラ等は図2に示されていない。
【0025】
図3により電力貯蔵回路3aの作用を説明する。電力貯蔵回路3aは、初期状態においては、第1のダイオードDが、正端子PからコンデンサCの向きに自由に電流を流す向きに設けられているので、コンデンサCの正(+)電極側の電位は、正端子Pの電位と等しい。従って、コンデンサCの電圧である貯蔵電圧Vは、直流回路側の電圧Vdc、すなわち正負端子P、N間の端子間電圧Vdcと等しくなっている。この状態から電力を貯蔵する場合について説明する。図3の(ア)に示されているように、第2のトランジスタTr2をスイッチング、すなわちONする。そうすると、直流回路の正負端子P、Nから供給される電流は矢印Yのように流れる。電流が流れて所定の時間が経過するとコイルLに磁気エネルギが蓄積される。第2のトランジスタTr2をOFFする。そうすると、図3の(イ)に示されているように、コイルLに蓄積された磁気エネルギによって瞬間的に矢印Yの方向の高電圧の起電力がコイルLに生じる。生じた起電力によって第1のダイオードDを経由して矢印Yのように電流が流れて、コンデンサCに電荷が貯蔵される。すなわち、コイルLの作用によって電圧が昇圧されてコンデンサCに蓄電される。以下、第2のトランジスタTr2のON/OFFを繰り返すと、コンデンサCに十分に電荷が貯蔵されて、貯蔵電圧Vは端子間電圧Vdcよりも高電圧になる。すなわち、電力貯蔵回路3aに電力が貯蔵される。
【0026】
電力貯蔵回路3aから、直流回路側に出力する場合について説明する。前節の動作によって、貯蔵電圧Vと端子間電圧Vdcとには、
>Vdc
の関係が成立しているため、第1のトランジスタTr1をONすると、図3の(ウ)に示されているように、矢印Yの方向に電流が流れる。電流が流れると、コイルLに磁気エネルギーが蓄積されるとともに、コイルLには矢印Yの方向に起電力が生じる。すなわち、貯蔵電圧Vと端子電圧Vdcとの電位差をコイルLの起電力が分担している。次に、第1のトランジスタTr1をOFFする。そうすると、図3の(エ)に示されているように、コイルLに蓄積された磁気エネルギーによって、コイルLの電流を維持するように、矢印Yの方向の高電圧の起電力がコイルLに生じ、コイルLに生じた起電力によって、第2のダイオードDを経由して矢印Yのように電流が流れる。このように第1のトランジスタTr1のON/OFFを繰り返すと電力貯蔵回路3aから直流回路に連続的に電流を流すことができる。
【0027】
本実施の形態に係る電力供給装置1は、本実施の形態に係る第1〜3の制御方法のいずれかの方法によって制御して、サーボアンプに直流電力を供給することができる。第1〜3の制御方法は、それぞれ射出工程における電力の供給方法に特徴があり、射出成形サイクルの他の工程における電力の供給方法は任意の方法で実施することができる。例えば、射出工程以外の工程において、PWMコンバータからなる交流直流変圧器2を直流回路側の直流電圧が一定になるようにPID制御してもよいし、他の制御方法を実施してもよい。ただし、電力貯蔵回路3aへの電力の貯蔵はこのときに実施するようにする。すなわち、射出成形サイクルの射出工程以外の工程において、電力貯蔵回路3aの第2のトランジスタTr2をON/OFFして電力貯蔵回路3aに電力を貯蔵する。射出工程以外の他の工程は消費電力が小さいので、三相交流電源PWに負荷を与えずに電力を貯蔵できるからである。以下、射出工程において実施する制御方法を説明するが、最初に第1の制御方法について図4を参照しながら説明する。
【0028】
第1の制御方法は、射出工程時に交流直流変換器2と電力貯蔵回路3aとを連動して制御する方法である。コントローラ4において、直流回路の目標電圧Vdc*と実測電圧Vdcとから偏差電圧Vdceを得る。
dce = Vdc* − Vdc
この偏差電圧Vdceを電圧制御器Kvにおいて所定のゲインによって増幅し、これを交流直流変換器2から供給する電流の仮の目標値、すなわち仮目標電流Icnv’とする。次いで、仮目標電流Icnv’をハイパスフィルタHPFを通して所定のしきい値の周波数を超える高周波成分IcnvHを得、これを仮目標電流Icnv’から除去して交流直流変換器2における電流の目標値、すなわち目標電流Icnv*を得る。
cnv* = Icnv’ − Icnv
もしくは、仮目標電流Icnv’をローパスフィルタに通して所定のしきい値の周波数を超える高周波成分を除去するようにしても同様に目標電流Icnv*を得ることができる。
以後、コントローラ4は目標電流Icnv*に基づいて交流直流変換器2を制御する。具体的には、交流直流変換器2の目標電流Icnv*と実測電流目標電流Icnvとから偏差電流Icnveを得る。
cnve = Icnv* − Icnv
この偏差電流Icnveを電流制御器K1において増幅し、パルス幅変調器PWM1によってパルス状の制御信号、すなわちコンバータDRV信号を得る。コンバータDRV信号によって、PWMコンバータからなる交流直流変換器2を制御する。そうすると、交流直流変換器2から供給される電流は目標電流Icnv*になるように制御される。
【0029】
第1の制御方法において、電力貯蔵回路3aは次のように制御する。
交流直流変換器2における仮目標電流Icnv’のうち、ハイパスフィルタHPFによって得られた所定のしきい値の周波数を超える高周波成分IcnvHを、電力貯蔵回路3aから直流回路に供給する電流Ichpの目標電流Ichp*とする。実際には、電力貯蔵回路3aから直流回路に供給する電流Ichpは、コイルLにおけるコイル電流と等しいので、この目標電流Ichp*を目標コイル電流Ichp*と呼ぶことにする。以後、コントローラ4は目標コイル電流Ichp*に基づいて電力貯蔵回路3aを制御する。具体的には、コイルLにおける目標コイル電流Ichp*と実測コイル電流目標コイル電流Ichpとから偏差コイル電流Ichpeを得る。
chpe = Ichp* − Ichp
この偏差コイル電流Ichpeを電流制御器K2において増幅し、パルス幅変調器PWM2によってパルス状の制御信号を得る。この制御信号によって電力貯蔵回路3aの第1のトランジスタTr1をON/OFFする。そうすると、コイル電流Ichpは目標コイル電流Ichp*になるように制御される。
【0030】
射出時には直流回路の電圧が瞬間的に変動するので、仮目標電流Icnv’は高周期で変動する。仮目標電流Icnv’の高周波成分を抽出すると、射出時に瞬間的に消費された電力の変化、すなわち電流の変化を得ることができる。従って、第1の制御方法によって交流直流変換器2と電力貯蔵回路3aを制御すると、射出時に瞬間的に要求される電力は電力貯蔵回路3aから供給され、他のタイミングにおける電力は交流直流変換器2から供給されることになる。そうすると、三相交流電源PWから供給される最大電力は抑制される。
【0031】
次に第2の制御方法について図5を参照しながら説明する。第2の制御方法は、スクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータに設けられているサーボアンプと、電力貯蔵回路3aとを連動して制御する方法であり、交流直流変換器2の制御は独立している。従って、交流直流変換器2はPWMコンバータでなくダイオード整流回路から構成して、制御の対象としないようにすることもできる。しかしながら、本実施の形態においては、交流直流変換器2は次のように制御して、直流電圧が一定に維持されるようにする。
コントローラ4において、直流回路の目標電圧Vdc*と実測電圧Vdcとから偏差電圧Vdceを得る。
dce = Vdc* − Vdc
この偏差電圧Vdceを電圧制御器Kvにおいて所定のゲインによって増幅し、交流直流変換器2における目標電流Icnv*を得る。次いで、目標電流Icnv*と実測電流目標電流Icnvとから偏差電流Icnveを得る。
cnve = Icnv* − Icnv
この偏差電流Icnveを電流制御器K1において増幅し、パルス幅変調器PWM1によってパルス状の制御信号、すなわちコンバータDRV信号を得る。コンバータDRV信号によってPWMコンバータからなる交流直流変換器2を制御する。交流直流変換器2の制御においては、目標電圧Vdc*に対する追随性が比較的緩やかになるように調整されている。従って、実測電圧Vdcの変動に対して緩やかに制御されることになり、直流電圧は概ね一定に維持されることになる。
【0032】
第2の制御方法において、コントローラ4は、射出サーボモータのサーボアンプの制御に連動して電力貯蔵回路3aを制御する。コントローラ4は射出サーボモータに要求される回転速度ωとトルクτとを掛け合わせ、さらに増幅器K3によって増幅してサーボアンプに供給する目標電流Isv*を得て、目標電流Isv*に基づいてサーボアンプを制御する。コントローラ4は、サーボアンプの目標電流Isv*を、電力貯蔵回路3aから直流回路に供給する電流の目標値、すなわち目標コイル電流Ichp*とする。以下、コントローラ4は目標コイル電流Ichp*に基づいて電力貯蔵回路3aを制御する。具体的には、目標コイル電流Ichp*と実測コイル電流Ichpとから偏差コイル電流Ichpeを得る。
chpe = Ichp* − Ichp
この偏差コイル電流Ichpeを電流制御器K2において増幅し、パルス幅変調器PWM2によってパルス状の制御信号を得る。この制御信号によって電力貯蔵回路3aの第1のトランジスタTr1をON/OFFする。そうすると、コイル電流Ichpは目標コイル電流Ichp*になるように制御される。
【0033】
第2の制御方法によると、射出サーボアンプが射出サーボモータに供給する電力に基づいて直接電力貯蔵回路3aを制御するので、射出時に要する電力を確実に電力貯蔵回路3aから供給できることになる。なお、交流直流変換器2の制御は、直流電圧が一定になるように緩やかに制御するので、レギュレータとしての作用を奏することになる。
【0034】
次に第3の制御方法について図6を参照しながら説明する。
コントローラ4は射出サーボモータに要求される回転速度ωとトルクτとを掛け合わせ、さらに増幅器K3によって増幅してサーボアンプに供給する目標電流Isv*を得て、目標電流Isv*に基づいてサーボアンプを制御する。
一方、コントローラ4は直流回路の目標電圧Vdc*と実測電圧Vdcとから偏差電圧Vdceを得る。
dce = Vdc* − Vdc
この偏差電圧Vdceを電圧制御器Kvにおいて所定のゲインによって増幅し、交流直流変換器2から供給する電流の目標値、すなわち目標電流Icnv*を得る。
コントローラ4は、サーボアンプの目標電流Isv*と交流直流変換器2における目標電流Icnv*を加算して、電力貯蔵回路3aから直流回路に供給する電流の目標値、すなわち目標コイル電流Ichp*とする。以下、コントローラ4は目標コイル電流Ichp*に基づいて電力貯蔵回路3aを制御する。具体的には、目標コイル電流Ichp*と実測コイル電流Ichpとから偏差コイル電流Ichpeを得る。
chpe = Ichp* − Ichp
この偏差コイル電流Ichpeを電流制御器K2において増幅し、パルス幅変調器PWM2によってパルス状の制御信号を得る。この制御信号によって電力貯蔵回路3aの第1のトランジスタTr1をON/OFFする。そうすると、コイル電流Ichpは目標コイル電流Ichp*になるように制御される。
【0035】
第3の制御方法においては、コントローラ4は交流直流変換器2を直接制御しない。もしくは交流直流変換器2を制御する場合であっても、直流回路の電圧を一定にすることについては考慮されない。直流回路の電圧は、電力貯蔵回路3aを制御することによって、安定するように意図されているからである。従って、交流直流変換器2はダイオード整流回路から構成されていても、第3の制御方法を実施することができる。
【0036】
図7の(ア)〜(ウ)には、第1の構成の電力貯蔵回路3に分類される他の実施の形態が示されている。すなわち、第2、3、4の実施の形態に係る電力貯蔵回路3b、3c、3dが示されている。これらの実施の形態は、第1の実施の形態に係る電力貯蔵回路3aの構成要素、すわなち電気部品の配置が一部変更されているだけで、電気部品は共通している。従って、同じ電気部品には同じ参照番号を付けて詳しく説明はしない。第2の実施の形態に係る電力貯蔵回路3bは、第1の実施の形態に係る電力貯蔵回路3aの、コンデンサCと第1のスイッチ回路SWの配置が入れ替えられた回路である。第3の実施の形態に係る電力貯蔵回路3cは、第1の実施の形態に係る電力貯蔵回路3aの正端子Pに接続されていたコイルLが、N端子に接続された回路である。第4の実施の形態に係る電力貯蔵回路3dは、第3の実施の形態に係る電力貯蔵回路3cの、コンデンサCと第1のスイッチ回路SWの配置が入れ替えられた回路である。当業者であれば容易に理解できるので説明を省略するが、第2〜4の実施の形態に係る電力貯蔵回路3b、3c、3dも、実質的に第1の実施の形態に係る電力貯蔵装置3aと同等の作用を奏し、上記したような第1〜3の制御方法によって制御することができる。
【0037】
図8には、第2の構成の電力貯蔵回路3に分類される実施の形態、すなわち第5の実施の形態に係る電力貯蔵回路3eが示されている。第5の実施の形態に係る電力貯蔵回路3eは、第1〜4の実施の形態に係る電力貯蔵回路3a、3b、…と電気部品の配置が異なっている。第5の実施の形態に係る電力貯蔵回路3eにおいては、第3、4のループ回路LP、LPが設けられている。負端子Nと、正端子Pと、第3のスイッチ回路SWは直列に接続され、これらは第3、4のループ回路LP、LPによって共有されている。そして、第3ループ回路LPにはコイルL’とコンデンサC’が直列に接続され、第4のループ回路LPには第4のスイッチ回路SWが接続されている。従って、第3のループ回路LPには、負端子Nと、正端子Pと、第3のスイッチ回路SWと、コイルL’と、コンデンサC’が直列に接続されていることになり、第4のループ回路LPには負端子Nと、正端子Pと、第3のスイッチ回路SWと、第4のスイッチ回路SWが直列に接続されていることになる。そして、第3のスイッチ回路SWは、第3のダイオードDと第3のトランジスタTr3とから構成され、第3のダイオードDは負端子Nから正端子Pの方向に電流を流すように接続され、第3のトランジスタTr3は、ONすると逆方向に電流を流すように、第3のダイオードDと並列に接続されている。また、第4のスイッチ回路SWは、第4のダイオードDと第4のトランジスタTr4とから構成され、第4のダイオードDは負端子Nから正端子Pの方向に電流を流すように接続され、第4のトランジスタTr4は、ONすると逆方向に電流を流すように、第4のダイオードDと並列に接続されている。
【0038】
第5の実施の形態に係る電力貯蔵回路4eにおいては、第3のトランジスタTr3をONすると正負端子P、Nから電流がコイルL’とコンデンサC’に流れて、コイルL’に磁気エネルギが貯えられ、第3のトランジスタTr3をOFFすると磁気エネルギによって第4のダイオードDを経由して引き続きコイルL’とコンデンサC’に電流が流れる。従って、第3のトランジスタTr3のON/OFFを繰り返すと効率よく電荷をコンデンサC’に貯えることができ、電力貯蔵回路4eに電力を貯蔵することができる。第5の実施の形態に係る電力貯蔵回路4eにおいてはコンデンサC’の貯蔵電圧は正負端子P、N間の端子間電圧を超えることはないので、コンデンサC’に過大な耐圧性能は求められないという利点がある。貯蔵された電力は、第4のトランジスタTr4をON/OFFすることによって正負端子P、N間、すなわち直流回路に供給することができる。すなわち、第4のトランジスタTr4をONすると、コンデンサC’、コイルL’、第4のトランジスタTr4の方向に電流が流れ、コイルL’に磁気エネルギが蓄積される。このとき第4のトランジスタTr4をOFFするとコイルL’を流れる電流は流れ続けようとするので、第3のダイオードDを経由して正負端子P、Nに流れることになる。
【0039】
第3、4のトランジスタTr3、Tr4をON/OFFすると電力貯蔵回路3eに電力を貯蔵したり直流回路に供給することができるので、第5の実施の形態に係る電力貯蔵回路3eにおいても、第1の実施の形態に係る電力貯蔵回路3aにおいて説明した第1〜3の制御方法を実施することができる。そうすると、交流直流変換器2や射出サーボモータのサーボアンプと連動して電力貯蔵回路3eを制御することができ、確実に射出時の最大電力を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
1 電力供給装置
2 交流直流変換器
3、3a、3b、3c、3d、3e 電力貯蔵回路
4 コントローラ
C コンデンサ L コイル
P 正端子 P 負端子
SW、SW スイッチ回路
、D ダイオード
r1、Tr2 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュ、型開閉装置、成形品突出装置等の電動射出成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプに、直流回路を介して直流電圧の電力を供給する電力供給装置であって、以下の要件A101〜A106を備えている電力供給装置において、要件B101〜B103に従って制御することを特徴とする、電動射出成形機の電力供給方法、
要件A101:前記電力供給装置は、PWMコンバータからなり三相交流電圧を変換して前記直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路に接続されている第1の電力貯蔵回路とから構成されている、
要件A102:前記第1の電力貯蔵回路は、少なくとも第1、2のループ回路から構成されている、
要件A103:前記第1のループ回路は、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子と、コイルと、第1のスイッチ回路と、コンデンサとが直列に接続された回路である、
要件A104:前記第2のループ回路は、前記正端子と、前記負端子と、前記コイルと、第2のスイッチ回路とが直列に接続された回路である、
要件A105:前記第1のスイッチ回路は、並列に接続された第1のダイオードと第1のトランジスタとからなり、前記第1のダイオードは前記正端子から前記負端子の方向に、前記第1のトランジスタは駆動されると前記負端子から前記正端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件A106:前記第2のスイッチ回路は、並列に接続された第2のダイオードと第2のトランジスタとからなり、前記第2のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第2のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件B101:射出工程以外の成形サイクルの工程において、前記第2のトランジスタの開閉を制御して、前記コンデンサに所定の電荷を貯蔵して前記第1の電力貯蔵回路に電力を貯蔵する、
要件B102:射出工程における前記交流直流変換器の制御は、前記直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から前記交流直流変換器の直流電流についての仮の目標値である仮目標電流を得、該仮目標電流から所定のしきい値の周波数を越える高周波成分を除去して目標電流を得、そして前記交流直流変換器から供給する直流電流が前記目標電流になるように制御する、
要件B103:射出工程において、前記第1のトランジスタの開閉を制御して、前記第1の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、前記コイルを流れる電流を制御するための目標コイル電流は、前記仮目標電流の前記高周波成分とする。
【請求項2】
スクリュ、型開閉装置、成形品突出装置等の電動射出成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプに、直流回路を介して直流電圧の電力を供給する電力供給装置であって、以下の要件A201〜A206を備えている電力供給装置において、要件B201、B202に従って制御することを特徴とする、電動射出成形機の電力供給方法、
要件A201:前記電力供給装置は、PWMコンバータまたはダイオード整流回路からなり三相交流電圧を変換して前記直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路に接続されている第1の電力貯蔵回路とから構成されている、
要件A202:前記第1の電力貯蔵回路は、少なくとも第1、2のループ回路から構成されている、
要件A203:前記第1のループ回路は、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子と、コイルと、第1のスイッチ回路と、コンデンサとが直列に接続された回路である、
要件A204:前記第2のループ回路は、前記正端子と、前記負端子と、前記コイルと、第2のスイッチ回路とが直列に接続された回路である、
要件A205:前記第1のスイッチ回路は、並列に接続された第1のダイオードと第1のトランジスタとからなり、前記第1のダイオードは前記正端子から前記負端子の方向に、前記第1のトランジスタは駆動されると前記負端子から前記正端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件A206:前記第2のスイッチ回路は、並列に接続された第2のダイオードと第2のトランジスタとからなり、前記第2のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第2のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件B201:射出工程以外の成形サイクルの工程において、前記第2のトランジスタの開閉を制御して、前記コンデンサに所定の電荷を貯蔵して前記第1の電力貯蔵回路に電力を貯蔵する、
要件B202:射出工程において、前記第1のトランジスタの開閉を制御して、前記第1の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、前記スクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータの駆動電力の情報から、前記コイルにおける目標コイル電流を得、前記コイルにおけるコイル電流は前記目標コイル電流に基づいて制御する。
【請求項3】
スクリュ、型開閉装置、成形品突出装置等の電動射出成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプに、直流回路を介して直流電圧の電力を供給する電力供給装置であって、以下の要件A301〜A306を備えている電力供給装置において、要件B301、B302に従って制御することを特徴とする、電動射出成形機の電力供給方法、
要件A301:前記電力供給装置は、PWMコンバータまたはダイオード整流回路からなり三相交流電圧を変換して前記直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路に接続されている第1の電力貯蔵回路とから構成されている、
要件A302:前記第1の電力貯蔵回路は、少なくとも第1、2のループ回路から構成されている、
要件A303:前記第1のループ回路は、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子と、コイルと、第1のスイッチ回路と、コンデンサとが直列に接続された回路である、
要件A304:前記第2のループ回路は、前記正端子と、前記負端子と、前記コイルと、第2のスイッチ回路とが直列に接続された回路である、
要件A305:前記第1のスイッチ回路は、並列に接続された第1のダイオードと第1のトランジスタとからなり、前記第1のダイオードは前記正端子から前記負端子の方向に、前記第1のトランジスタは駆動されると前記負端子から前記正端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件A306:前記第2のスイッチ回路は、並列に接続された第2のダイオードと第2のトランジスタとからなり、前記第2のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第2のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件B301:射出工程以外の成形サイクルの工程において、前記第2のトランジスタの開閉を制御して、前記コンデンサに所定の電荷を貯蔵して前記第1の電力貯蔵回路に電力を貯蔵する、
要件B302:射出工程において、前記第1のトランジスタの開閉を制御して、前記第1の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、前記直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から前記交流直流変換器から供給する電流の仮の目標値である仮目標電流を得、前記スクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータの駆動電力に基づいて算出した電流を前記仮目標電流に加算して前記コイルにおける目標コイル電流を得、前記コイルにおける電流を前記目標コイル電流に基づいて制御する。
【請求項4】
スクリュ、型開閉装置、成形品突出装置等の電動射出成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプに、直流回路を介して直流電圧の電力を供給する電力供給装置であって、以下の要件A401〜A406を備えている電力供給装置において、要件B401〜B403に従って制御することを特徴とする、電動射出成形機の電力供給方法、
要件A401:前記電力供給装置は、PWMコンバータからなり三相交流電圧を変換して前記直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路に接続されている第2の電力貯蔵回路とから構成されている、
要件A402:前記第2の電力貯蔵回路は、少なくとも第3、4のループ回路から構成されている、
要件A403:前記第3のループ回路は、コンデンサと、コイルと、第3のスイッチ回路と、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子とが直列に接続された回路である、
要件A404:前記第4のループ回路は、第4のスイッチ回路と、前記第3のスイッチ回路と、前記正端子と、前記負端子とが直列に接続された回路である、
要件A405:前記第3のスイッチ回路は、並列に接続された第3のダイオードと第3のトランジスタとからなり、前記第3のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第3のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件A406:前記第4のスイッチ回路は、並列に接続された第4のダイオードと第4のトランジスタとからなり、前記第4のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第4のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件B401:射出工程以外の成形サイクルの工程において、前記第3のトランジスタの開閉を制御して、前記コンデンサに所定の電荷を貯蔵して前記第2の電力貯蔵回路に電力を貯蔵する、
要件B402:射出工程における前記交流直流変換器の制御は、前記直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から前記交流直流変換器の直流電流についての仮の目標値である仮目標電流を得、該仮目標電流から所定のしきい値の周波数を越える高周波成分を除去して目標電流を得、そして前記交流直流変換器から供給する直流電流が前記目標電流になるように制御する、
要件B403:射出工程において、前記第4のトランジスタの開閉を制御して、前記第2の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、前記コイルを流れる電流を制御するための目標コイル電流は、前記仮目標電流の前記高周波成分とする。
【請求項5】
スクリュ、型開閉装置、成形品突出装置等の電動射出成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプに、直流回路を介して直流電圧の電力を供給する電力供給装置であって、以下の要件A501〜A506を備えている電力供給装置において、要件B501、B502に従って制御することを特徴とする、電動射出成形機の電力供給方法、
要件A501:前記電力供給装置は、PWMコンバータまたはダイオード整流回路からなり三相交流電圧を変換して前記直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路に接続されている第2の電力貯蔵回路とから構成されている、
要件A502:前記第2の電力貯蔵回路は、少なくとも第3、4のループ回路から構成されている、
要件A503:前記第3のループ回路は、コンデンサと、コイルと、第3のスイッチ回路と、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子とが直列に接続された回路である、
要件A504:前記第4のループ回路は、第4のスイッチ回路と、前記第3のスイッチ回路と、前記正端子と、前記負端子とが直列に接続された回路である、
要件A505:前記第3のスイッチ回路は、並列に接続された第3のダイオードと第3のトランジスタとからなり、前記第3のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第3のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件A506:前記第4のスイッチ回路は、並列に接続された第4のダイオードと第4のトランジスタとからなり、前記第4のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第4のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件B501:射出工程以外の成形サイクルの工程において、前記第3のトランジスタの開閉を制御して、前記コンデンサに所定の電荷を貯蔵して前記第2の電力貯蔵回路に電力を貯蔵する、
要件B502:射出工程において、前記第4のトランジスタの開閉を制御して、前記第2の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、前記スクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータの駆動電力情報から、前記コイルにおける目標コイル電流を得、前記コイルにおけるコイル電流は前記目標コイル電流に基づいて制御する。
【請求項6】
スクリュ、型開閉装置、成形品突出装置等の電動射出成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプに、直流回路を介して直流電圧の電力を供給する電力供給装置であって、以下の要件A601〜A606を備えている電力供給装置において、要件B601、B602に従って制御することを特徴とする、電動射出成形機の電力供給方法、
要件A601:前記電力供給装置は、PWMコンバータまたはダイオード整流回路からなり三相交流電圧を変換して前記直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路に接続されている第2の電力貯蔵回路とから構成されている、
要件A602:前記第2の電力貯蔵回路は、少なくとも第3、4のループ回路から構成されている、
要件A603:前記第3のループ回路は、コンデンサと、コイルと、第3のスイッチ回路と、前記直流回路に接続されている正端子と、負端子とが直列に接続された回路である、
要件A604:前記第4のループ回路は、第4のスイッチ回路と、前記第3のスイッチ回路と、前記正端子と、前記負端子とが直列に接続された回路である、
要件A605:前記第3のスイッチ回路は、並列に接続された第3のダイオードと第3のトランジスタとからなり、前記第3のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第3のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件A606:前記第4のスイッチ回路は、並列に接続された第4のダイオードと第4のトランジスタとからなり、前記第4のダイオードは前記負端子から前記正端子の方向に、前記第4のトランジスタは駆動されると前記正端子から前記負端子の方向に、それぞれ電流を流す向きに設けられている、
要件B601:射出工程以外の成形サイクルの工程において、前記第3のトランジスタの開閉を制御して、前記コンデンサに所定の電荷を貯蔵して前記第2の電力貯蔵回路に電力を貯蔵する、
要件B602:射出工程において、前記第4のトランジスタの開閉を制御して、前記第2の電力貯蔵回路に貯蔵された電力を前記直流回路に供給するとき、前記直流電圧の目標電圧と実測電圧との偏差電圧から前記交流直流変換器から供給する電流の仮の目標値である仮目標電流を得、前記スクリュを軸方向に駆動する射出サーボモータの駆動電力に基づいて算出した電流を前記仮目標電流に加算して前記コイルにおける目標コイル電流を得、前記コイルにおける電流を前記目標コイル電流に基づいて制御する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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