説明

電動工具のバッテリパック

【課題】 電動工具の重量や体積に対する出力の比を向上する。
【解決手段】 電動工具10のバッテリパック50は、十本のリチウムイオンセル70を有している。十本のリチウムイオンセル70は直列に接続されている。各々のリチウムイオンセル70は、18ミリメートル以下の直径と、65ミリメートル以下の長さと、30ミリオーム以下の内部抵抗を有している。このバッテリパック50は、作動電圧が高く、大電流を供給可能であることから、大電流に対応できない従来の電動工具110には使用不能に構成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具のバッテリパックに関し、特に、リチウムイオンセルを有するバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、バッテリパックを電源とする電動工具が開示されている。この電動工具のバッテリパックは、複数のリチウムイオンセルを有している。リチウムイオンセルは、高い出力電圧が得られ、エネルギー密度も高いという利点を持つ。特許文献1の技術では、バッテリパックにリチウムイオンセルを採用することで、電動工具(バッテリパックを含む、以下同じ)の重量に対する出力の比を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−518798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動工具の重量に対する出力の比や、電動工具の体積に対する出力の比は、高いほど好ましい。そのことから、バッテリパックにリチウムイオンセルを単に採用するだけなく、電動工具の重量や体積に対する出力の比を、さらに向上するための技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した必要性に応えるためには、使用するリチウムイオンセルのサイズや数を変更することなく、バッテリパックの出力電圧を向上させることが必要となる。そこで、本発明では、電動工具のバッテリパックに、内部抵抗の小さいリチウムイオンセルを採用する。リチウムイオンセルの内部抵抗が小さければ、リチウムイオンセルにおける内部電圧降下は小さくなる。なお、電動工具では比較的に大電流が通電されることから、リチウムイオンセルによる内部電圧降下も比較的に大きくなる。特に、複数のリチウムイオンセルが直列に接続されたバッテリパックでは、複数のリチウムイオンセルによる内部電圧降下が、一又は複数のリチウムイオンセルの出力電圧を上回ることもある。このような内部電圧降下を抑制することで、使用するリチウムイオンセルのサイズや数を変更することなく、バッテリパックの作動電圧(通電時における出力電圧)を向上させることができる。即ち、電動工具の重量や体積に対する出力の比を向上させることができる。
【0006】
本発明者が検証した結果、従来の電動工具のバッテリパックでは、30.3ミリオーム以上の内部抵抗を有するリチウムイオンセルが採用されていることが判明した。そのことから、30ミリオーム以下の内部抵抗を有するリチウムイオンセルを採用することで、従来の製品よりも、電動工具の重量及び体積に対する出力の比を向上させることができる。なお、上記した30.3ミリオームという値は、18ミリメートルの直径と65ミリメートルの長さを有する従来のリチウムイオンセルの内部抵抗を測定した値である。従って、本願発明においては、18ミリメートル以下の直径と65ミリメートル以下の長さを有するリチウムイオンセルであって、30ミリオーム以下の内部抵抗を有するリチウムイオンセルを採用することが好ましい。
【0007】
上記の知見に基づき、本明細書で開示される電動工具のバッテリパックは、少なくとも一つのリチウムイオンセルを有し、各々のリチウムイオンセルが、30ミリオーム以下の内部抵抗を有することが好ましい。この場合、そのリチウムイオンセルは、18ミリメートル以下の直径と、65ミリメートル以下の長さを有することが好ましい。この構成によると、従来の製品からリチウムイオンセルのサイズや数を変更することなく、バッテリパックの出力を向上することができる。その結果、電動工具の重量及び体積に対する出力の比を向上させることができる。
【0008】
上記した電動工具では、サイズの小さいリチウムイオンセルを採用することもできる。通常、リチウムイオンセルのサイズを小さくすると、リチウムイオンセルの内部抵抗は大きくなる。前述した従来のリチウムイオンセル(直径18ミリメートル、長さ65ミリメートル、内部抵抗30.3ミリオーム)の直径を14ミリメートルまで縮小した場合、その内部抵抗は49.2ミリオームとなる。あるいは、従来のリチウムイオンセルの長さを45ミリメートルまで縮小したとすると、その内部抵抗は43.6ミリオームとなる。そのことから、14ミリメートル以下の直径と65ミリメートル以下の長さを有するリチウムイオンセルを採用する場合、そのリチウムイオンセルは49ミリオーム以下の内部抵抗を有することが好ましい。また、18ミリメートル以下の直径と45ミリメートル以下の長さを有するリチウムイオンセルを採用する場合は、そのリチウムイオンセルが40ミリオーム以下の内部抵抗を有することが好ましい。それにより、従来の製品よりも、電動工具の重量及び体積に対する出力の比を向上させることができる。
【0009】
上記したそれぞれのバッテリパックは、直列に接続された複数のリチウムイオンセルを有することが好ましい。複数のリチウムイオンセルを直列に接続することで、バッテリパックの作動電圧を高めることができる。なお、複数のリチウムイオンセルを直列に接続した場合でも、各々のリチウムイオンセルの内部抵抗が比較的に小さいことから、バッテリパックの内部抵抗を比較的に小さく抑えることができる。
【0010】
一例ではあるが、バッテリパックは、直列に接続された十本のリチウムイオンセルを有することができる。この場合、バッテリパックの公称電圧を36ボルトとし、バッテリパックの公称容量を1アンペアアワー以上とすることができる。
【0011】
上記したように、内部抵抗の小さいリチウムイオンセルを採用すると、バッテリパックの作動電圧が高まり、電動工具の出力を向上させることができる。ただし、内部抵抗の小さいリチウムイオンセルを採用したバッテリパックを、従来の電動工具に電源として使用してしまうと、当該バッテリパックによって供給される大電流が、従来の電動工具の構成部品を故障させてしてしまうこともある。そのことから、本発明に係るバッテリパックは、専用に設計された電動工具のみに使用されるべきであって、従来の電動工具へ使用されることは禁止されることが好ましい。その一方で、本発明に係るバッテリパックを使用可能な電動工具は、従来の電動工具のバッテリパックについても、問題なく使用することができる。
【0012】
上記の見地に基づき、本発明は、下記する電動工具システムを提供する。この電動工具システムには、第1バッテリパックを電源とする第1電動工具と、第2バッテリパックを電源とする第2電動工具が含まれる。第1及び第2バッテリパックは、同数のリチウムイオンセルをそれぞれ有している。ただし、第1バッテリパックには、第2バッテリパックよりも、内部抵抗の低いリチウムイオンセルが収容されている。即ち、第1バッテリパックは、前述した本発明に係るバッテリパックに相当し、第2バッテリパックは、従来の電動工具のバッテリパックに相当する。この場合、第1バッテリパックは、第1電動工具の本体に着脱可能であるとともに、第2電動工具の本体には取付不能に構成されることが好ましい。一方、第2バッテリパックは、第2電動工具の本体に着脱可能であるとともに、第1電動工具の本体にも着脱可能に構成されていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例の電動工具の側面図である。
【図2】図2は、実施例の電動工具のバッテリ受入部を正面から(図1における左方から)見た図を示す。
【図3】図3は、実施例の電動工具のバッテリパックの斜視図である。
【図4】図4は、実施例の電動工具のバッテリパックの正面図である。
【図5】図5は、実施例の電動工具と従来の電動工具の間におけるバッテリパックの互換性を模式的に示している。
【図6】図6は、リチウムイオンセルの内部抵抗の測定結果を示すグラフである。
【図7】図7は、リチウムイオンセルの内部抵抗の測定条件を説明するための図である。
【図8】図8は、リチウムイオンセルの外形寸法と実行寸法を説明するための図である。図8(A)は、リチウムイオンセルの縦断面を模式的に示している。図8(B)は、図8(A)におけるB−B線断面図であって、リチウムイオンセルの横縦断を模式的に示している。
【図9】図9は、従来の電動工具のバッテリ受入部を正面から見た図を示す。
【図10】図10は、従来の電動工具のバッテリパックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施例の電動工具10について説明する。図1、図2に示すように、電動工具10は、本体12と、電動工具10の本体12へ電力を供給するバッテリパック50を備えている。本体12には、工具が着脱可能な工具ホルダ14と、ユーザによって操作されるメインスイッチ16と、ユーザによって保持されるグリップ18が設けられている。また、グリップ18の下端には、バッテリパック50を着脱可能に受け入れるバッテリ受入部20が設けられている。図示省略するが、本体12の内部には、工具ホルダ14を駆動するためのモータや回路基板が収容されている。本実施例の電動工具10は、一例ではあるが、電動ドライバであり、工具ホルダ14にはドライバビット(図示省略)が取り付けられる。
【0015】
バッテリパック50は、ハウジング52と、ハウジング52に収容された十本のリチウムイオンセル70を有している。十本のリチウムイオンセル70は、電気的に直列に接続されている。各々のリチウムイオンセル70の公称電圧は3.6ボルトである。従って、バッテリパック50の全体としての公称電圧は36ボルトであり、電動工具10の定格電圧も36ボルトである。ハウジング52の上面には、コネクタ部60が設けられている。コネクタ部60は、本体12のバッテリ受入部20に対して着脱可能に係合する。
【0016】
図2に示すように、本体12のバッテリ受入部20には、一対のレール22が形成されている。また、図3、図4に示すように、バッテリパック50のコネクタ部60にも、一対のレール62が形成されている。バッテリパック50の一対のレール62は、本体12の一対のレール62とスライド可能に係合する。それにより、バッテリパック50は、本体12へ物理的に接続される。
【0017】
図2に示すように、本体12のバッテリ受入部20には、正極入力端子26と負極入力端子28が設けられている。正極入力端子26と負極入力端子28は、本体12内の回路基板及びモータへ電気的に接続されている。一方、図3、図4に示すように、バッテリパック50のコネクタ部60には、正極出力端子66と負極出力端子68が設けられている。正極出力端子66と負極出力端子68は、直接に接続された十本のリチウムイオンセル70へ電気的に接続されている。バッテリパック50が本体12のバッテリ受入部20へ取り付けられると、バッテリパック50の正極入力端子26と負極入力端子28は、本体12の正極入力端子26と負極入力端子28へそれぞれ電気的に接続される。それにより、バッテリパック50は本体12へ電気的に接続され、十本のリチウムイオンセル70による放電電力が、本体12内の回路基板及びモータへ供給される。
【0018】
上記した本実施例の電動工具10におけるバッテリパック50の取付構造は、図9、図10に示す従来の電動工具110におけるバッテリパック150の取付構造と、基本的に共通している。即ち、従来の電動工具110においても、本体112のバッテリ受入部120には、一対のレール122と、正極入力端子126と、負極入力端子128が設けられており、バッテリパック150のハウジング52には、一対のレール162と正極出力端子166と負極出力端子168を有するコネクタ部160が設けられている。ここで、図10に示す従来のバッテリパック150は、本実施例のバッテリパック50と同様に、直列に接続された十本のリチウムイオンセルを有しており、その公称電圧は36ボルトである。即ち、従来の電動工具110の定格電圧も36ボルトである。
【0019】
ただし、図2、図3、図4に示すように、本実施例の電動工具10では、バッテリパック50のコネクタ部60にリブ64が形成されているとともに、本体12のバッテリ受入部20にはリブ64を受け入れる溝24が形成されている。それに対して、図9、図10に示すように、従来の電動工具10では、バッテリパック50のコネクタ部60に上記したリブ64に相当する部分が存在せず、本体12のバッテリ受入部20にも上記した溝24に相当する部位が存在しない。従って、図5に模式的に示すように、本実施例のバッテリパック50は、本実施例の本体12のみに取付可能であり、従来の電動工具110の本体112には取付不能に構成されている。それに対して、本実施例の本体12は、本実施例のバッテリパック50だけでなく、従来の電動工具110のバッテリパック150についても使用可能に構成されている。
【0020】
本実施例の電動工具10では、従来の電動工具110と比較して、内部抵抗の小さい新型リチウムイオンセル70が採用されている。この新型リチウムイオンセル70は、その内部抵抗が26.8ミリオームまで改善されている。なお、新型リチウムイオンセル70は、円筒形リチウムイオンセルであって、18ミリメートルの直径と、65ミリメートルの長さを有している。内部抵抗の小さい新型リチウムイオンセル70を採用することで、通電時におけるバッテリパック50の内部電圧降下を抑制することができる。その結果、バッテリパック50の作動電圧が高まり、電動工具10の出力性能が向上する。具体的には、バッテリパック50から本体12へ大電流が供給されることで、電動工具10の出力できる最大トルクが向上する。また、バッテリパック50における電力損失が減少することで、電動工具10の使用できる時間が長くなる。
【0021】
なお、本実施例のバッテリパック50の公称電圧は、従来のバッテリパック150の公称電圧と同じであるが、通電時における実際の出力電圧は、本実施例のバッテリパック50の方が、従来のバッテリパック150よりも高くなる。そのことから、本実施例のバッテリパック50を、従来の電動工具110に使用すると、バッテリパック50によって供給される電流が、従来の電動工具110の本体112の許容するレベルを超えてしまい、その構成部品を故障させてしまうことがある。そのことから、本実施例のバッテリパック50は、前述したように、従来の電動工具110の本体112へ取付不能に構成されており、従来の電動工具110への使用が禁止されるようになっている(図5参照)。
【0022】
本発明者は、電動工具用に開発された従来のリチウムイオンセルの三製品A、B、Cについて、その内部抵抗を測定した。なお、従来の三製品A、B、Cは全て、円筒形リチウムイオンセルであり、18ミリメートルの直径と、65ミリメートルの長さを有している。本発明者の測定結果によると、従来製品Aの内部抵抗は30.3ミリオームであり、従来製品Bの内部抵抗は40.0ミリオームであり、従来製品Cの内部抵抗は50.9ミリオームであった。この測定結果から、電動工具に採用されてきた従来の円筒形リチウムイオンセルのなかに、18ミリメートル以下の直径と、65ミリメートル以下と、30ミリオーム以下の内部抵抗を有するものは、存在しないことが確認された。なお、リチウムイオンセルの内部抵抗は、その測定方法によって少なからず変化する。本明細書における内部抵抗の測定方法ついては、後段において詳細に説明する。
【0023】
上記した実施例の電動工具10では、新型リチウムイオンセル70のサイズ(直径18ミリメートル、長さ65ミリメートル)を、小型化してもよい。一般に、リチウムイオンセルのサイズを小さくすると、リチウムイオンセルの内部抵抗は大きくなる。図6は、リチウムイオンセルの直径(横軸)と、リチウムイオンセルの内部抵抗(縦軸)の関係を示している。図6において、グラフXは新型リチウムイオンセル70の内部抵抗を示しており、グラフAは従来製品Aの内部抵抗を示しており、グラフBは従来製品Bの内部抵抗を示しており、グラフCは従来製品Cの内部抵抗を示している。なお、図6に示す内部抵抗値のうち、直径18ミリメートルにおける内部抵抗値は測定値であり、他の直径における内部抵抗値は当該測定値から計算によって求められた推定値である。この推定値の計算方法については後段において詳細に説明する。
【0024】
図6に示すように、リチウムイオンセルの直径が小さくなるほど、内部抵抗は大きくなる。しかしながら、本実施例で採用された新型リチウムイオンセル70の場合、その直径を14ミリメートルまで縮小しても、その内部抵抗は43.1ミリオーム以下に抑えられる。この値は、直径18ミリメートルの従来製品A、B、Cの内部抵抗に匹敵するものである。従って、本実施例で採用された新型リチウムイオンセル70によれば、従来の電動工具110と同じ出力性能を維持したままで、バッテリパック50を含む電動工具10のサイズや重量を小さくすることができる。なお、従来のリチウムイオンセルA、B、Cの場合では、その直径を14ミリメートルまで縮小すると、その内部抵抗は49.2ミリオーム以上となるまで増大してしまう。
【0025】
電動工具10の小型化や軽量化を図る場合、リチウムイオンセル70の直径に限られず、リチウムイオンセル70の長さを短くしてもよい。本実施例で採用された新型リチウムイオンセル70の場合、その長さを45ミリメートルまで縮小しても、その内部抵抗は38.3ミリオーム以下に抑えられる。この値は、長さ65mmの従来製品A、B、Cの内部抵抗に匹敵するものである。従って、本実施例で採用された新型リチウムイオンセル70によれば、従来の電動工具110と同じ出力性能を維持したままで、バッテリパック50を含む電動工具10のサイズや重量を小さくすることができる。なお、従来のリチウムイオンセルA、B、Cの場合では、その長さを45ミリメートルまで縮小すると、その内部抵抗は少なくとも43.6ミリオームまで増大してしまう。なお、これらの値も、後述する計算方法によって計算される推定値である。
【0026】
以上のように、本実施例の電動工具10では、内部抵抗の小さい新型リチウムイオンセル70を採用することで、電動工具10のサイズや重量を増大させることなく、電動工具10の出力性能が向上されている。あるいは、その新型リチウムイオンセル70のサイズを小さくすることで、従来の電動工具110と同じ出力性能を維持したままで、電動工具10のサイズや重量を小さくすることができる。また、バッテリパック50による電力損失が減少することで、電動工具10の使用時間が長くなっている。なお、バッテリパック50の充電時においても、電力損失が少なく、新型リチウムイオンセル70の温度上昇が抑制される。
【0027】
(内部抵抗の測定方法)
本実施例における内部抵抗の測定方法について説明する。この測定方法では、先ず、リチウムイオンセルの放電深度(充電レベル)を50パーセントとする。具体的には、リチウムイオンセルを適正に充電した後、公称容量の半分の電気量を放電させる。次に、リチウムイオンセルを放電させながら、リチウムイオンセルの端子電圧を測定する。このとき、環境温度は25±1℃に維持し、リチウムイオンセルの温度も25±1℃とする。図7に示すように、リチウムイオンセルを放電させる際は、放電電流を経時的に変化させる。具体的には、最初の1秒間は放電電流を10アンペアに調整し、その後の5秒間は放電電流を20アンペアに調整する。この測定方法は、電動工具による使用を考慮して、リチウムイオンセルを大電流で放電させることを特徴とする。このようにリチウムイオンセルを放電しながら、1秒経過時点における電流C1及び電圧V1と、6秒経過時点における電流C2及び電圧V2を測定する。そして、測定した二点間の電流−電圧の傾きから、リチウムイオンセルの内部抵抗が求められる。即ち、内部抵抗Rは、以下の式で表される。
R=(V1−V2)/(C2−C1)×1000 [mΩ]
【0028】
(内部抵抗の推定値の計算方法)
本実施例における内部抵抗の推定値の計算方法について説明する。図8に示すように、リチウムイオンセル70には、セパレータを介して巻かれた陽極板と陰極板を有する電極体72が収容されており、リチウムイオンセル70の内部抵抗は、平面上に展開した電極体72の面積に反比例する。ここで、平面上に展開した電極体72の面積は、リチウムイオンセル70に収容された電極体72の高さh1に比例し、かつ、リチウムイオンセル70に収容された電極体72の横断面積Sに比例する。ここで、リチウムイオンセル70の長さHと電極体72の高さh1との差h2は7ミリメートルであり、電極体72の中心に形成される空洞の直径d1は5ミリメートルである。さらに、リチウムイオンセル70の内部抵抗のうち、集電体等による構造的な抵抗分は5ミリオームである。
【0029】
従って、18ミリメートルの直径と65ミリメートルの長さで26.8ミリオームの内部抵抗を有する新型リチウムイオンセル70を、14ミリメートルの直径となるまで縮小した場合、その内部抵抗は43.1ミリオームとなることが計算される。あるいは、新型リチウムイオンセル70を45ミリメートルの長さとなるまで縮小した場合、その内部抵抗は38.3ミリオームとなることが計算される。同様に、18ミリメートルの直径と65ミリメートルの長さで30.3ミリオームの内部抵抗を有する従来製品Aのリチウムイオンセルを、14ミリメートルの直径となるまで縮小した場合、その内部抵抗は49.2ミリオームとなることが計算される。あるいは、従来製品Aのリチウムイオンセルを45ミリメートルの長さとなるまで縮小した場合、その内部抵抗は43.6ミリオームとなることが計算される。
【0030】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。特に、バッテリセルの実際の直径や長さは、本明細書で説明した寸法(18mmの直径や65ミリメートルの長さ)と厳密に一致する必要はなく、ある程度(数ミリメートル)の寸法差が存在してもよい。
【0031】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0032】
10:電動工具
12:電動工具の本体
14:工具ホルダ
16:メインスイッチ
18:グリップ
20:バッテリ受入部
22:バッテリ受入部のレール
24:バッテリ受入部の溝
26:バッテリ受入部の正極入力端子
28:バッテリ受入部の負極入力端子
50:バッテリパック
60:バッテリパックのコネクタ部
62:コネクタ部のレール
64:コネクタ部のリブ
66:コネクタ部の正極出力端子
68:コネクタ部の負極出力端子
70:リチウムイオンセル
72:電極体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具のバッテリパックであって、
少なくとも一つのリチウムイオンセルを有し、
各々のリチウムイオンセルが、30ミリオーム以下の内部抵抗を有することを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
前記リチウムイオンセルが、18ミリメートル以下の直径と、65ミリメートル以下の長さを有することを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
電動工具のバッテリパックであって、
少なくとも一つのリチウムイオンセルを有し、
各々のリチウムイオンセルが、14ミリメートル以下の直径と、65ミリメートル以下の長さと、49ミリオーム以下の内部抵抗を有することを特徴とするバッテリパック。
【請求項4】
電動工具のバッテリパックであって、
少なくとも一つのリチウムイオンセルを有し、
各々のリチウムイオンセルが、18ミリメートル以下の直径と、45ミリメートル以下の長さと、40ミリオーム以下の内部抵抗を有することを特徴とするバッテリパック。
【請求項5】
直列に接続された複数のリチウムイオンセルを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリパック。
【請求項6】
直列に接続された十本のリチウムイオンセルを有し、
公称電圧が36ボルトであるとともに公称容量が1アンペアアワー以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載バッテリパック。
【請求項7】
第1バッテリパックを電源とする第1電動工具と、
第2バッテリパックを電源とする第2電動工具を備え、
第1及び第2バッテリパックは同数のリチウムイオンセルをそれぞれ有するとともに、第1バッテリパックのリチウムイオンセルの内部抵抗は、第2バッテリパックのリチウムイオンセルの内部抵抗よりも低く、
第1バッテリパックは、第1電動工具の本体に着脱可能であるとともに、第2電動工具の本体には取付不能に構成されており、
第2バッテリパックは、第2電動工具の本体に着脱可能であるとともに、第1電動工具の本体にも着脱可能に構成されている、
ことを特徴とする電動工具システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−49074(P2012−49074A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192239(P2010−192239)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】