説明

電動工具

【課題】切断作業時に発生する切屑が被加工材の切断位置やブレードの刃先に溜まることで切断作業の妨げになることを防止し、切屑を確実に吹き飛ばして作業性の向上を図る。
【解決手段】 ファン11によってハウジング2内に取り込まれた空気をブレード4の刃先近傍に吹き出すための風吹出機構18を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材、鋼材、パイプ、小枝等の被加工材を切断するのに使用される電動工具、特に携帯用電気ノコギリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材等を鋸刃によって加工する電動工具には種々のものがあるが、電動モータにより駆動される往復動形式の切断工具として携帯用電気ノコギリがある。携帯用電気ノコギリは、周知の如く、一般に、モータの回転を往復動に変換し、直線状の鋸刃(以下、ブレードと称す)を装着した往復動軸を往復駆動させブレードによって被加工材を切断するものである。
【0003】
図8に示すように、携帯用電気ノコギリ100は、ハウジング101内に不図示のモータ、往復変換機構部等を収納しており、モータの回転を往復変換機構部によって往復動に変換し、ブレード102を往復動する。
【0004】
携帯用電気ノコギリ100による切断作業においては、ハウジング101に取り付けられたベース103を被加工材104に接触させた状態でブレード102を図8中矢印Aの方向に往復動させて切断作業を行なうが、切断時には切屑105が発生する。このため、床面等の平らな面を切断する際にはブレード102や被加工材104の周辺には切屑が溜まってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1又は特許文献2に開示されているように、モータの回転軸上に取り付けられた冷却ファンによって外気をハウジング内に取り込み、ハウジング内に設けられた風路を介してハウジング外に風を吹き出す構造が提案されている。
【0006】
【特許文献1】実開昭62−117018
【特許文献2】実開平2−114424
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記した構造では、ハウジングの鋸刃が取り付けられている部分全体から風が吹き出されるため、切屑が溜まった箇所に効率良く風を吹き出すことができず、切屑を確実に吹き飛ばすことができなかった。また、特許文献1の構成では、ハウジングとギヤカバの間に風路を設けているため、工具本体が大きく(太く)なってしまう。特許文献2の構成では、プランジャの中に風を通しているため、プランジャ自体の強度が弱くなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、工具本体の大きさや構成部材の強度を維持しつつ、効率良く確実に切屑を吹き飛ばすことができる電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、ハウジングに収納されるモータと、該モータにより回転され前記ハウジング内に空気を取り込むためのファンと、前記モータの回転を往復動に変換する往復変換機構と、該往復変換機構によって往復駆動される鋸刃と、前記ハウジングに取り付けられる脚部と、該脚部に接続され被加工材に当接し前記鋸刃と交差する方向に延びる当接部とからなるベース部と、を有する電動工具において、前記ファンによって前記ハウジング内に取り込まれた空気を前記鋸刃の刃先近傍に吹き出すための風吹出機構を設けたことによって達成することができる。
【0010】
このような構成にすることによって、切断部分に確実に風を吹き出すことができるため、作業性を向上することができる。
【0011】
また、前記風吹出機構は、前記風が通るための通路部と、該通路部を通った風を前記鋸刃の刃先近傍に吹き出すために前記ハウジングの鋸刃側端部から突出して設けられた吹出部からなることが好ましい。
【0012】
このような構成にすることによって、ファンによってハウジング内に取り込まれた空気を鋸刃近傍まで確実に案内することができると共に、吹出部がハウジング端部より鋸刃側に突出しているため、鋸刃に近い位置で確実に切屑を吹き飛ばすことができる。
【0013】
また、前記鋸刃は前記ハウジングに対して取り付け向きを変更可能であり、 前記ノズルは、前記鋸刃の取り付け向きに応じて、前記刃先近傍に前記風を吹き出せるように吹き出し方向を調整可能であることが好ましい。
【0014】
このような構成にすることによって、鋸刃の取り付け向き関係なく常に風が鋸刃の刃先近傍に向かうようにできるため、鋸刃の取り付け向き関係なく確実に切屑を吹き出すことができる。
【0015】
また、前記通路部は前記ベース部の前記脚部に設けられており、前記吹出部は前記ベース部の前記当接部に設けられ、前記通路部と連通していることが好ましい。
【0016】
このような構成にすることによって、風の通路部及び吹出部を別途設ける必要がないため、構成部品を増加することなく確実に切屑を吹き飛ばすことができる。
【0017】
また、前記当接部は、少なくとも前記鋸刃の一部を囲むように構成されていると共に、前記被加工材に当接する当接面と、前記鋸刃に対向する対向面とを有し、前記吹出部は、少なくとも該対向面に設けられていることが好ましい。
【0018】
このような構成にすることによって、鋸刃と対向する位置に風の吹出し口があるため、切屑が溜まる場所すなわち切断位置に近い位置で確実に切屑を吹き飛ばすことができる。
【0019】
また、前記吹出部は、前記ハウジングの鋸刃側端部からの突出量を調整可能であることが好ましい。
【0020】
このような構成にすることによって、切断位置に応じて吹出部の位置を調整できるため、常に切屑が溜まる場所すなわち切断位置に近い位置で確実に切屑を吹き飛ばすことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、切断作業時に発生する切屑を確実に吹き飛ばすことができるため、鋸刃の刃先や切断位置を常に確認できるため、確実に切断作業を行なうことができ、作業性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明となる電動工具、特に携帯用電気ノコギリについて図1乃至図4を参照して説明する。
【0023】
まず、携帯用電気ノコギリ1(以下、単にノコギリと称す)の構成について図1を用いて説明する。図1において、ノコギリ1は、ハウジング2内に後述するモータ、往復変換機構部等を収納している。ハウジング2の一端側には、被加工材7と当接する当接部3bとハウジング2内に取り付けられ当接部3bに接続された脚部3aからなるベース部3がハウジング2に対する突出量を変更可能にボルト19(図2)によって取り付けられており、更に、ブレード4が矢印Aの方向に往復動可能に取り付けられている。更に、本発明の風吹出機構部を構成する吹出部となるノズル8がハウジング2からベース3の当接部3bに向かって突出して設けられている。また、ハウジンブ2の他端側には、モータ等の駆動源となる電池パック6が着脱可能に取り付けられている。なお、駆動源としては電池パックである必要はなく交流電源であっても良い。更に、後述するモータの駆動をオン又はオフするためのトリガ5が設けられている。
【0024】
次に、ノコギリ1の内部機構について図2を用いて説明する。図2において、ハウジング2内には電池パック6から電源供給を受けるモータ10が収納されている。モータ10の回転軸10aにはファン11が取り付けられており、ハウジング2に設けられた不図示の吸気口から外気を取り込むようになっている。また、回転軸10aにはギヤ12が取り付けられており、ギヤ12と嵌合するギヤ13が軸13aに回転可能に取り付けられており、更に、ギヤ13と係合して往復動するプランジャ14が設けられている。ギヤ12、13、軸13a及びプランジャ14を含む機構によって往復変換機構部15が構成されている。プランジャ14にはブレード4がボルト(ネジ)16によって取り付けられており、ブレード4の取り付け向きを変更可能になっている。
【0025】
一方、本発明となる風吹出機構部18は、一端がファン11を囲むように構成され、他端がハウジング2のブレード側端部からベース部3側に突出して構成された通路部17と、通路部17の他端側に接続されたノズル8から構成されており、ハウジング2内に設けられている。
【0026】
ノコギリ1は、ノコギリ1のハウジング2に電池パック6を装着しトリガ5を操作することで駆動することができる。トリガ5を操作すると電池パック6から電力供給を受けたモータ10が回転し、回転軸10aに取り付けられたファン11及びギヤ12が回転する。ギヤ12が回転することでギヤ13も回転し、ギヤ13と係合するプランジャ14が往復動することになる。すなわち、モータ10の回転を往復変換機構部15によってプランジャ14の往復運動に変換し、プランジャ14に取り付けられたブレード4を矢印Aの方向に往復駆動させることによって被加工材7の切断作業を行なうことができるようになっている。
【0027】
一方、ファン11が回転することによって、ハウジング2に設けた不図示の吸気口から外気をハウジング2内に取り込む。取り込まれた外気(空気)は、ファン11の回転によって通路部17の一端側に導かれ通路部17内に導入される。その空気は、通路部17内を通りノズル8から風9としてブレード4に向かって吹き出される
次に、本発明となる風吹出機構部18について、図3及び図4を用いて説明する。ファン11によってハウジング2内に取り込まれた空気は、通路部17のファン11側から通路部17内に導入される。空気は、通路部17に沿って反ファン側に導かれノズル8から風9となってブレード4に吹き付けられて切屑を吹き飛ばすことができる。ここで、ノズル8は、ブレード4の取り付け向きに応じて回転できるようになっている。ブレード4の刃先がベース部3の脚部3a側(図面の下側)に向いてボルト16によってプランジャ14に固定されている場合には、ノズル8を下方向に回転させてブレード4の刃先付近に風9を吹き付けるように風向きを変えるようにノズル8を調整する。逆に、ブレード4’の刃先が反脚部側(図面の上側)に向いている場合には、ノズル8を上方向に回転させて刃先付近に風9’を吹き付けるようにノズル8を調整する。このように、ブレード4の取り付け向きに応じてその都度、ノズル8の向きを調整して風9の吹き出し方向を調整することによって、刃先付近に常に風9がでるようにすれば、刃先付近や切断位置に切屑が溜まることを防止でき、作業効率を向上することができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、通路部17の長さを固定としたが、長さを可変としても良く、この場合には切断位置に応じてノズル8のハウジング2からの突出量を変更できるため、ブレード4の刃先にノズル8を近づけることができるため、切屑をより確実に吹き飛ばすことができる。
<第2の実施の形態>
次に第2の実施形態について図5乃至図7を用いて説明する。第1の実施形態では、風吹出機構部18をベース部3とは別に設けた構成であったが、本実施の形態では、ベース部3を風吹出機構部として用いる構成であり、以下詳細に説明する。なお、第1の実施の形態と同様の機構については説明を省略する。
【0029】
図5において、ベース部3の脚部3aには、ファン11によってハウジング2内に取り込まれた空気(風)が通る第1通路部21が設けられており、更に当接部3bには、第1通路部21を通ってきた風が当接部3b内部を通るための第2通路部22が設けられている。なお、第1通路部21のファン11側端部には、ファン11によって取り込まれた空気を第1通路部21に案内するためのファン風通路20が接続されている。すなわち、本実施の形態によれば、ベース部3によって風吹出機構部18が構成されており、該機構部を別途設ける必要がないため、ノコギリ1自体を大型化せずに通常の大きさを維持したまま切屑を効率良く吹き飛ばすことができる。
【0030】
次に、本実施の形態になるベース部3によって構成された風吹出機構部18について図6及び図7を用いて詳細に説明する。
【0031】
図6において、ファン風通路20(図5)と接続されるベース部3の脚部3aの内部にはファン風通路20と連結され風が通る第1通路部21が設けられている。脚部3aの反ファン風通路側には被加工材と当接する当接部3bが連結されており、第1通路部21と連結された第2通路部22が設けられている。当接部3b、特に当接部3bの当接面には、第2通路部22を通った空気(風9)をブレード4の刃先等の切断位置近傍に吹き付けるための穴23が複数個設けられている。すなわち、図7に示すように、当接部3bには、ブレード4が通るブレード穴部24と、脚部3aに設けられた第1通路部21に連結され風を吹き出すための穴部25が設けられている。ブレード穴部24の両側すなわちブレード4の両側面側には、第2通路部22を通った空気が風9として当接部3bの外部へ吹き出すための穴23がブレード穴部24の両側に、その長手方向に沿って複数個、実施形態では片側4個で計8個、設けられている。従って、切断作業時に発生する切屑は、第1通路部21を通って穴25から出る風と、第2通路部22を通って穴23から出る風とによって確実に吹き飛ばされるため、切断位置を確認することができ作業性を向上することができる。
【0032】
また、ブレード4の取り付け向きを変えた場合でも、いずれかの穴23からブレード4の刃先或いは切断位置近傍に風9を吹き付けることができるようになっているため、常に安定して切屑を吹き飛ばすことができ確実に切断作業を行なうことができる。また、ベース部3はボルト19によってハウジング2の端部からの突出量を変更できるようになっており、切断位置に応じて穴23の位置も調整できるようになっているため、常に安定して切屑を吹き飛ばすことができ確実に切断作業を行なうことができる。
【0033】
更に、平らな被加工材を切断する際にベース部3の当接部3bを被加工材に当接させてしまうと穴23及び穴25が塞がれてしまい風が出ないようになってしまうことも考えられる。この場合には、図8に示すように、穴23を当接部3aの当接面に設けるのではなく、ブレード穴部24側に開口するように穴23を設ければ良い。この場合、ファン11による風は、穴23からブレード4の方向に吹き出されるので、穴23が当接部3bの当接面にある場合より確実にブレード4の刃先近傍に風を出すことができる。更に、穴部25からブレード穴部24に開口する穴26を設けても良いし、穴部25をなくして穴26のみとしても良い。更に、穴23を当接面とブレード穴部24側の両方に設けても良い。すなわち、ブレード4の刃先や切断位置近傍にファン11による風を吹く出せるように構成すればよく、そのような構成にすることにより、切屑を風によって確実に吹き飛ばすことができるため切断位置が容易に確認でき作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施形態となる携帯用電気ノコギリを示す側面図。
【図2】図1の要部断面側面図。
【図3】図2の要部拡大図であり、ブレードの取り付け方向に応じた風の吹き出し方向を示す図。
【図4】図3の要部拡大図であり、ブレードを取り外した状態を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態となると携帯用電気ノコギリの要部断面図。
【図6】図5のベース部を示す側面図。
【図7】図6のベース部の当接部の当接面を示す図。
【図8】図7の変形例を示す図。
【図9】従来の携帯用電気ノコギリの切断作業の一例を示す側面図。
【符号の説明】
【0035】
1は携帯用電気ノコギリ、2はハウジング、3はベース部、4はブレード、8はノズル、11はファン、17は通路、18は風吹出機構部、21は第1通路部、22は第2通路部、23は穴である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに収納されるモータと、
該モータにより回転され前記ハウジング内に空気を取り込むためのファンと、
前記モータの回転を往復動に変換する往復変換機構と、
該往復変換機構によって往復駆動される鋸刃と、
前記ハウジングに取り付けられる脚部と、該脚部に接続され被加工材に当接し前記鋸刃と交差する方向に延びる当接部とからなるベース部と、を有する電動工具において、
前記ファンによって前記ハウジング内に取り込まれた空気を前記鋸刃の刃先近傍に吹き出すための風吹出機構を設けたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記風吹出機構は、前記風が通るための通路部と、該通路部を通った風を前記鋸刃の刃先近傍に吹き出すために前記ハウジングの鋸刃側端部から突出して設けられた吹出部からなることを特徴とする請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
前記鋸刃は前記ハウジングに対して取り付け向きを変更可能であり、
前記吹出部は、前記鋸刃の取り付け向きに応じて、前記刃先近傍に前記風を吹き出せるように吹き出し方向を調整可能であることを特徴とする請求項2記載の電動工具。
【請求項4】
前記通路部は前記ベース部の前記脚部に設けられ、前記吹出部は前記ベース部の前記当接部に設けられ、前記通路部と連通していることを特徴とする請求項2記載の電動工具。
【請求項5】
前記当接部は、少なくとも前記鋸刃の一部を囲むように構成されていると共に、前記被加工材に当接する当接面と、前記鋸刃に対向する対向面とを有し、
前記吹出部は、少なくとも該対向面に設けられていることを特徴とする請求項4記載の電動工具。
【請求項6】
前記吹出部は、前記ハウジングの鋸刃側端部からの突出量を調整可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電動工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−52117(P2010−52117A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222123(P2008−222123)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】