説明

電動工具

【課題】ブラシレスモータの冷却効果に優れた冷却構造を有する電動工具を提供する。
【解決手段】
胴体ハウジング部50aの内周部からステータ12の外周部へ突出してステータの外周部を保持する突出部23であって、第1の幅を有する第1の突出部と、第1の幅より小さい第2の幅を有する複数の第2の突出部と、第2の突出部間に形成され、冷却ファン15によって吸気口17から胴体ハウジング部内に取り込まれた気体を流通させる空気流路19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータを使用する電動工具に関し、特に、モータハウジング部に収容されるブラシレスモータに対する冷却効果および防塵効果を向上させた電動工具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ブラシレスモータ(DCモータ)は、小形化が可能であり、回転軸に取り付けられるロータに対しブラシおよび整流子を用いた電気的接続が不要となるので、高寿命が可能である。このため、コードレス電動工具の駆動源としてブラシレスモータを採用することが考えられる。
【0003】
しかし、ブラシレスモータを駆動すると、比較的大きな電力損失が熱となって発生し、熱の影響によりモータの高出力化や正常な動作が阻害される場合がある。電力損失の大部分は、ステータコイルに電流が流れることにより生じる銅損と、磁束密度の変化によってステータコア材に生じる鉄損であり、特に、ステータ部の鉄損が大きな発熱源となり、コードレス電動工具への適用が困難となる。
【0004】
このため、従来のブラシレスモータにおいて、種々のステータに対する冷却構造が提案されている。例えば、従来のステータの冷却構造としては、下記特許文献1に開示されているように、モータハウジング内に外気を吸入する開口部と、ハウジング内の冷却風をハウジングの外へ排気する開口部とを、ステータを挟んで回転軸方向に互いに離間してハウジングに設け、ロータに一体的に取付けたファンによってハウジング内に空気を導入し、特に、ステータコイル間に冷却風を流動させることにより、ステータコイル部を直接冷却する構造が提案されている。
【0005】
さらに、ブラシレスモータにおいて、インバータ回路基板(モータ駆動回路基板)のスイッチング素子を構成する出力トランジスタは、ステータコイルに大電流の駆動信号を供給することから発熱量が多くなり、冷却対策が要求される。インバータ回路基板の冷却構造としては、従来、下記特許文献2に開示されているように、モータハウジング内の冷却気体の流路上にモータのステータ部と共にインバータ回路基板を配置した構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−274800号公報
【特許文献2】特開2005−102370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブラシレスモータは、モータのロータに対しブラシおよび整流子を用いた電気的接続が不要となるので、高寿命化が可能であると共に、モータ内部への塵埃の侵入を防止することが可能な防塵構造を達成し易い。このため、ブラシレスモータは、直流電源を用いる携帯用電動工具(コードレス電動工具)の駆動源として好適であると考えられる。
【0008】
本願発明者等は、ブラシレスモータをインパクトドライバ等の携帯用電動工具の駆動源への適用を検討したところ、木粉や金属粉等の粉塵が混在した空気の作業環境下で使用される電動工具にあっては、モータのステータとロータ間のエアギャップ等に鉄粉や木粉が詰まり、モータにロック現象が起きてしまい、その結果、コイルに過大な電流が流れることによるモータの駆動トランジスタやコイル焼損等による電動工具の故障の原因となり、防塵対策が要求された。
【0009】
モータ内への粉塵の侵入を防止する簡単な防塵構造としては、モータのハウジング全体を密閉構造とすることが考えられる。しかし、単にモータ全体を密閉構造にするだけでは、必然的に冷却風が流れない構造になるので、冷却効果が損なわれてしまい、通常運転時でも巻線の温度が異常に上昇し、コイル焼損等の故障の原因となる問題が生ずる。
【0010】
従って、本発明の目的は、モータ部の冷却効果に優れた冷却構造を有する電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的を達成するために、本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明の一つの特徴によれば、吸気口が設けられた胴体ハウジング部と、前記胴体ハウジング部に収容された略円筒状のステータと、前記ステータの内部に配置されたロータとを有するブラシレスモータと、前記胴体ハウジング部内に収容され、前記ブラシレスモータの回転軸に装着された冷却ファンと、前記ブラシレスモータにより駆動される先端工具取付部材と、前記胴体ハウジング部の内周部から前記ステータの外周部へ突出して前記ステータの外周部を保持する突出部であって、第1の幅を有する第1の突出部と、前記第1の幅より小さい第2の幅を有する複数の第2の突出部と、前記第2の突出部間に形成され、前記冷却ファンによって前記吸気口から前記胴体ハウジング部内に取り込まれた気体を流通させる空気流路と、を備える。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記空気流路は更に前記第1の突出部と前記第2の突出部間に形成される。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記ステータを挟んで、前記冷却ファンと反対側の位置に、前記回転軸と略直角方向に延びるように配置されると共に、中心に設けた穴部を前記回転軸が貫通するように配置された基板と、を備えた。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記冷却ファンの外方に位置する前記胴体ハウジングに前記気体を排出する排気口を備えた。
【0016】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記突出部を前記胴体ハウジング部と一体に形成した。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブラシレスモータの冷却効果に優れた冷却構造を有する電動工具を提供することができる。
【0018】
本発明の上記および他の目的、ならびに本発明の上記および他の新規な特徴は、本明細書の以下の記述および添付図面から更に明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る電動工具の全体断面図。
【図2】図1に示した電動工具のモータハウジング部の断面図。
【図3】図1に示した電動工具のA−A線に沿う断面図。
【図4】図1に示した電動工具に使用されたステータ保持部材の平面図。
【図5】図4に示したステータ保持部材の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態を説明する全図において、同一の機能を有する部材については同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0021】
図1は本発明の電動工具をコードレスタイプのインパクトドライバに適用した部分断面図、図2は図1に示した電動工具のモータハウジング部の断面図、図3は図1に示したモータ部のA−A線に沿う断面図である。最初に、これらの図面を参照して工具全体の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、インパクトドライバ50は、後述するブラシレスモータ3の回転軸11と同一方向に沿って、一端部(図面の左端部)から他端部(図面の右端部)に延在し、モータ3を収納する合成樹脂材料のモータハウジング部50aと、モータハウジング部50aの他端部に連続して形成された、減速機構部4aおよびインパクト機構部4bを含む動力伝達機構部4を収容する動力伝達ハウジング部50bと、モータハウジング部50aおよび動力伝達ハウジング部50bから垂下するハンドルハウジング部50cとから構成された工具本体を含み、動力伝達ハウジング部50bの先端部はアンビル10の端部が突出し、アンビル角穴部10aには先端工具、例えばドライバビット(図示なし)を着脱自在に差し込んで取付部材10bによって固定できるように構成されている。アンビル角穴部10aには、他の先端工具としてボルト締付用ビットも装着することができる。
【0023】
モータハウジング部50aは、図3に示されるような筒状の形状を有し、その内周部内には、駆動源となるブラシレスモータ3が収容もしくは装着される。
【0024】
ブラシレスモータ3の回転軸11は、モータハウジング部50aの端壁部50e(図1参照)に設けられた軸受部材11aと、モータハウジング部50aの減速機構部4a側に設けられた軸受部材11bによって支承されている。
【0025】
ブラシレスモータ3は、3相ブラシレスDCモータから成り、図3に示すように、円筒状の外形をもつステータ12と、ステータ12の内周部12b内に同心軸状に設けられ、回転軸方向に延びるN極およびS極の永久磁石部材13cが埋め込まれたマグネット型ロータ13とを有する。ステータ12の内周部12bとその外周部12cとの間には回転軸方向に延びるスロット12fを有し、そのスロット12f内のステータコアにはステータコイル12aが巻回されている。ステータコイル12aは、例えばスター結線に電気的接続された3相コイルを構成している。
【0026】
インバータ回路22は、ブラシレスモータ3のステータコイル12aに3相の大駆動電流を通電するために、ブリッジ形式に電気的接続された6個の、例えばIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)のような大電流容量の出力トランジスタ(スイッチング素子)21を実装する円形状の回路基板から構成されている。このインバータ回路22の円形状回路基板は、ロータ13に対する粉塵の侵入を防ぐ防塵構造の一部を形成する。
【0027】
すなわち、本発明によれば、インバータ回路の円形状回路基板(22)は、ステータ12の一端部12d側を全面的に覆い、その中央部において回転軸11およびスリーブ24が貫通する穴部が形成されている。一方、ステータ12の他端部12e側には、防塵カバー25が設けられ、インバータ回路基板22と同様に、ステータ12の他端部12e側の側面を覆っている。これらインバータ回路基板22および防塵カバー25の両者は、ステータ12と共に、ロータ13を閉塞または密封する防塵構造(密閉構造)を形成し、モータ部3のロータ13への粉塵の侵入を防止する。
【0028】
モータ駆動回路装置2は、CPU等を含むマイコンから構成され、ロータ13と磁気的に結合されたホールIC等を有する回転位置検出回路(図示なし)より入力される回転位置検出信号等に基づいて、インバータ回路22を制御し、インバータ回路22の出力トランジスタ21によってステータコイル12aへ3相駆動電流を供給する。
【0029】
図2および図3に示すように、モータハウジング部50aは、動力伝達ハウジング部50bおよびハンドルハウジング部50cと共に一体に形成された合成樹脂材料からなり、図3に示されるような、モータ3の回転軸中心に沿った垂直面で2分される断面形状が半円状のハウジング部材50aの一対(図3に示す左側部材50aと右側部材50a)を準備し、予め、図2の部分断面図で示すような一方のハウジング部材50aに、モータ3のロータ回転軸11やステータ12等の組込みを行い、しかる後、図1に示すように一対のハウジング部材50aの他方を重ねて、ねじ締め等で一対のハウジング部材50aを締結させる方法が取られる。したがって、一対のモータハウジング部材50aの締結体(完成体)において、ステータ12は、ハウジング部材50aと一体形成された複数のステータ保持部材23によって把持または挟持される。
【0030】
減速機構部4aは、ピニオンギア(サンギア)11cと、そのピニオンギア11cおよびリングギア7に噛み合う二つの遊星ギア6を有し、これらは動力伝達ハウジング部50b内のインナカバー(図示なし)内に組み込まれている。スピンドル8には、この減速機構部4aによって、ブラシレスモータ3の回転に対し減速された回転力が与えられる。
【0031】
インパクト機構部4bは、減速機構部4aを介して回転力が与えられるスピンドル8と、スピンドル8に取付けられてスピンドル8の回転軸方向に移動可能に係合し、回転打撃力を与えるハンマ9と、ハンマ9による回転打撃力で回転するアンビル10とを備える。ハンマ9およびアンビル10は、回転平面上の2箇所に互いに対称的に配置された2つのハンマ凸部(打撃部)9aおよび2つのアンビル凸部10cをそれぞれ有し、該ハンマ凸部9aおよびアンビル凸部10cは互いに回転方向に噛み合う位置に設置されている。
【0032】
ハンマ凸部9aとアンビル凸部10cの噛み合いにより、回転打撃力が先端工具に伝えられる。このとき、上記ハンマ9は、スピンドル8を囲むリング域で、スピンドル8に対して軸方向に摺動自在にされていると共に、スプリング(弾性体部材)5によって軸方向前方へと付勢されている。ハンマ9の内周面には、逆V字型(略三角形)のカム溝9bが設けられ、一方、スピンドル8の外周面には軸方向にV字型のカム溝8aが設けられている。スピンドル8の回転力は、スピンドルカム溝8aとハンマカム溝9bとの間に挿入されたボール(鋼球)8bを介して、次のようにハンマ9に伝達される。
【0033】
すなわち、インパクト機構部4bにおいて、被加工物へネジ等の締付具を回転させるための負荷トルクよりもハンマ9の回転トルクの方が小さいと、モータ3から与えられるスピンドル8の回転力は、ボール8bを挟持するスピンドルカム溝8aおよびハンマカム溝9bを介してハンマ9に伝達され、スピンドル8およびハンマ9を一緒に回転させ始める。スピンドル8およびハンマ9は相対的にねじられることになり、ハンマ9は、スピンドルカム溝8aに沿って、スプリング5をねじりながら、図面左方向へ、圧縮しつつ後退し、ハンマ凸部9aがアンビル凸部10cとの結合から離れた時点から、ハンマ9はアンビル凸部10cの高さを乗り越えると、アンビル10との噛み合いが解ける。
【0034】
さらにハンマ9は、スプリング5による付勢とスピンドルカム溝8aによるガイドを受けて、回転しつつ、図面右方向へ前進し、ハンマ凸部(打撃部)9aで回転前方のアンビル10のアンビル凸部10cに衝撃トルクを与える。この衝撃トルクは、アンビル10のアンビル角穴部(先端工具保持部)10aに取付けられた、先端工具(例えば、ドライバビット)へ伝わり、さらにドライバビットから締付具ネジに回転衝撃トルクを伝えて、被加工部材へのネジ込みもしくは締付けを行う。再びハンマ凸部9aおよびアンビル凸部10cが互いに係合することになるので、その後、再びハンマ9の後退が始まり、上記の打撃動作を繰返すことになる。
【0035】
ハンドルハウジング部50cには、モータ3の駆動電源となる電池パックケース1がハンドルハウジング部50cの下端部に着脱可能に装着されている。電池パックケース1は、図示されないリチウムイオン二次電池、ニッケル・カドミウム二次電池等から成る電池パック本体を収容し、該電池パック本体の一部はハンドルハウジング部50c内に挿入され、収容される。電池パックケース1は、ハンドルハウジング部50cの一部に設けられたトリガスイッチ50dを介してモータ駆動回路装置2に電気的接続され、電力を供給する。
【0036】
以上のように構成されたインパクトドライバ50によれば、作業者がハンドルハウジング部50cを把持しながら、トリガスイッチ50dを引けば、トリガスイッチ50dがオン状態となり、インパクトドライバ50の動作を開始できる。
【0037】
モータ3の回転力は、回転軸11のピニオンギア11cを介して遊星ギア6とリングギア7で減速し、その回転力をスピンドル8に伝達すると共に、ネジ締め中にアンビル10(先端工具)に所定以上の負荷トルクがかかるとスプリング5の作用によりハンマ9は回転力を打撃力へと変換する。これによりハンマ9はアンビル10に装着されている先端工具に回転打撃力を与えてネジを締め付けることができる。
【0038】
以上の構成において、本発明に従うブラシレスモータ3のモータハウジング部50aへの装着構造は次の特徴を有する。
【0039】
図2および図3に示すように、モータハウジング部50aは、その内周部からステータ12の外周部へ突出する突出部(リブ)23a、23bを有し、かつ該突出部23a、23bがモータ回転軸方向に沿って延在し、互いに空間部19で隔離された複数のステータ保持部材23を有する。ステータ12を把持または保持するための複数のステータ保持部材23は、突出部23aの突出上面が広い幅W1(図3参照)を持つ面状ステータ保持部材(23a)と、突出部23bの突出上面が狭い幅W2(W2<W1)(図3参照)を持つ棒状ステータ保持部材(23b)とから成る。図2および図4の(a)に示すように、隣接する一対の棒状ステータ保持部材23bは、回転軸方向に沿う長さが、長さL1と長さL2(L2<L1)をもつ、長さが異なる棒状ステータ保持部材(リブ構造)23bによって構成されている。複数のステータ保持部材23を互いに隔離する空間部19は、冷却風(気体)20の流通路(19)として作用する。
【0040】
図1に示すように、ロータ13の回転軸11には、スリーブ24と冷却ファン15が設けられているので、ロータ13の回転時には、冷却ファン15も同時に回転する。
【0041】
冷却ファン15の作用によって、冷却風20は、まず、発熱量の多いインバータ回路22の出力トランジスタ21を冷却することができる。特に、インバータ回路22を構成する出力トランジスタ21は、IGBTのような大電流容量のスイッチングトランジスタから成り、ステータコイル12aを大電流で駆動する。このため出力トランジスタ21の電力損失が大きくなり、多くの発熱量が問題となる。したがって、インバータ回路22の出力トランジスタ21の冷却効果を向上させることが重要である。さらに、冷却風20は、ステータ12のステータコアに生ずる鉄損またはステータコイル12aに生ずる銅損等に基づくステータ12部における発熱を冷却することができる。本発明に従う冷却風20の流れの様子は、次のとおりである。
【0042】
図1に示すように、冷却ファン15により吸引された冷却風20は吸気口17よりモータハウジング50a内部へ流入し、インバータ回路22に設けられた出力トランジスタ21を冷却する。その後、冷却風20はモータハウジング部50aの内壁とステータ12の間隙に設けられた空気通路(空間部)19を通る際にステータ12の外周部を冷却し、冷却ファン15へ導かれる。その後、排気口18より排出される。
【0043】
冷却の際、図3に示すように、ステータ12の外周部には、互いに冷却風流通路19によって隔離された複数のステータ保持部材23がフィン状に接触するので、冷却風によるステータ12の冷却面積を広く確保できると共に、ステータ保持部材23によるステータ12の保持力(把持力)を強くすることができる。
【0044】
また、上記の好ましい実施形態では、図2および図4の(a)に示すように、隣接する一対の棒状ステータ保持部材23bを、回転軸方向に沿う長さにおいて、特に、長さL1と長さL2を持つように形成する。これによって、冷却風20がステータ12の外周部の空気流通路19へ流入する際の損失を、図4の(b)に示すように、長さを一様にL1にした場合に比較して、より低減するためである。もちろん、本発明において、ステータ12おける電力損失が少なく発熱量が少ない場合は、図4の(b)に示すように、隣接する一対の棒状ステータ保持部材23bの長さを一様にL1に形成してもよい。この場合、全部の棒状ステータ保持部材23bの長さがL1と長くなるので、ステータ12の保持力をより強くすることができる。
【0045】
図4の(a)と図4の(b)の装着構造の違いに基づく冷却効果の違いが表れる理由は、次のとおりである。図4の(b)に示すように複数のステータ保持部材23bの長さ(大きさ)L1が同一である場合、冷却風20がステータ12の外周部の空気流通路19へ流入する冷却風の流れが、流れ20aとして示すように、急激に狭い流通路へ入り込むために、ステータ12を保持するステータ保持部材23bの入口部での損失が大きくなる。
【0046】
それに対し、好ましい実施形態では、図4の(a)に示すように、隣接する棒状ステータ保持部材23bの長さ(大きさ)がL1およびL2と異なっているので、冷却風20が空気流通路19へ流入する際、冷却風の流れが流れ20aおよび流れ20bのように除々に狭い箇所へ入り込む形態となるために、入口部での損失が図4の(b)に示す場合と比較して低減することができる。
【0047】
一方、上述したように、ステータ12の一端側12dにはインバータ回路を構成する円形状回路基板22が設けられ、またステータ12の他端側12eには防塵カバー25が設けられている。これら円形状回路基板22および防塵カバー25は、ロータ13の両端部を封止するように配置されて、ステータ12と協働してロータ13を取り囲む密閉構造を形成するので、上述したような冷却風20によって、例え、好ましくない粉塵がモータハウジング部50a内に運搬されたとしても、ロータ13内への侵入を抑制することができる。以上の実施形態による装着構造によれば、モータ部の冷却効果を向上させると共に、モータ部の防塵構造を具備する電動工具を提供できる。
【0048】
以上の実施形態において、全ステータ保持部材23を全て棒状ステータ保持部材23bに構成する必要はないが、図2に示すように、面状ステータ保持部材23aと共に、棒状ステータ保持部材23bを採用することで空気流通路19の損失をより低減し、ステータ12を強固に保持することができる。
【0049】
また、棒状ステータ保持部材23bの大きさを異なるように設定するにあたっては、隣接する一対のものの長さを異ならせる場合について述べたが、図5に示すように、ステータ12を保持する棒状ステータ保持部材23bの幅(回転軸方向と直交する方向の幅)を、部分的に寸法W3と広くすることで、空気流通路19の損失を低減することが可能となる。すなわち、図5に示すように、隣接する棒状ステータ保持部材23b間の間隔を広目に設定して、長さが同じ棒状ステータ保持部材23bについて、その中央部を寸法W3と幅広く形成してもよい。
【0050】
また、空気流通路19へ冷却風20が流入する際の損失をさらに低減するために、図2に示すように、ステータ保持部材23bの回転軸方向の両端部23c、23dを面取り形状(角Rの形状を含む)または流線形状に形成してもよい。
【0051】
上記した防塵カバー25は、モータハウジング部50aの内周部との間に空気流通路19を形成している。防塵カバー25の角部25aにて、冷却風20の流れを折り曲げる必要があり、流れの曲がり損失が発生する恐れがある。この損失を低減させるために、防塵カバー角部25aを面取り形状(角Rの形状を含む)または流線形状に加工することが好ましい。これにより冷却風20の風量の低減を防止することが可能となる。
【0052】
以上の実施形態の説明より明らかにされるように、本発明によれば、モータハウジング部の内周部に形成されるフィン状のステータ保持部材によって、ブラシレスモータのステータに優れた冷却効果を与える冷却構造を提供することができる。また、ブラシレスモータの使用により粉塵を吸い込まないモータ部の防塵構造を提供することができる。これによって、冷却効果の優れた冷却構造および防塵構造を具備するブラシレスモータを駆動源とする電動工具を提供することが可能である。
【0053】
なお、以上の実施形態では、3相ブラシレス直流モータを使用した電動工具について説明したが、3相以外のブラシレス直流モータを使用した電動工具についても適用することができる。また、本発明は、インパクトドライバに限らず、電動ドリル等の電動回転工具に適用することもできる。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:電池パックケース 2:モータ駆動回路装置 3:ブラシレスモータ
4:動力伝達機構部 4a:減速機構部 4b:インパクト機構部
5:スプリング 6:遊星ギア 7:リングギア
8:スピンドル 8a:スピンドル外周面のカム溝 8b:ボール(鋼球)
9:ハンマ 9a:ハンマ凸部 9b:ハンマ内周面のカム溝
10:アンビル 10a:アンビル角穴部 10b:先端工具取付部材
10c:アンビル凸部 11:回転軸 11a、11b:軸受部材
11c:ピニオンギア 12:ステータ 12a:ステータコイル
12b:ステータの内周部 12c:ステータの外周部
12d:ステータの一端部 12e:ステータの他端部
12f:ステータのスロット 13:ロータ 13c:永久磁石部材
15:冷却ファン 17:吸気口 18:排気口 19:空気通路(空間部)
20:冷却風(冷却気体) 20a、20b:ステータ保持部材間の冷却風
21:出力トランジスタ 22:インバータ回路(回路基板)
23:ステータ保持部材 23a:面状ステータ保持部材
23b:棒状ステータ保持部材 24:スリーブ 25:防塵カバー
25a:防塵カバーの角部 50:電動工具(インパクトドライバ)
50a:モータハウジング部 50b:動力伝達ハウジング部
50c:ハンドルハウジング部 50d:トリガスイッチ
50e:モータハウジングの端壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口が設けられた胴体ハウジング部と、
前記胴体ハウジング部に収容された略円筒状のステータと、前記ステータの内部に配置されたロータとを有するブラシレスモータと、
前記胴体ハウジング部内に収容され、前記ブラシレスモータの回転軸に装着された冷却ファンと、
前記ブラシレスモータにより駆動される先端工具取付部材と、
前記胴体ハウジング部の内周部から前記ステータの外周部へ突出して前記ステータの外周部を保持する突出部であって、第1の幅を有する第1の突出部と、前記第1の幅より小さい第2の幅を有する複数の第2の突出部と、
前記第2の突出部間に形成され、前記冷却ファンによって前記吸気口から前記胴体ハウジング部内に取り込まれた気体を流通させる空気流路と、を備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記空気流路は、更に前記第1の突出部と前記第2の突出部間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記ステータを挟んで、前記冷却ファンと反対側の位置に、前記回転軸と略直角方向に延びるように配置されると共に、中心に設けた穴部を前記回転軸が貫通するように配置された基板と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記冷却ファンの外方に位置する前記胴体ハウジングに前記気体を排出する排気口を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記突出部を前記胴体ハウジング部と一体に形成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載された電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−213326(P2012−213326A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178176(P2012−178176)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【分割の表示】特願2007−140152(P2007−140152)の分割
【原出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】