説明

電動弁の診断方法

【課題】簡易且つ迅速に高精度で信頼性の高い診断結果を得ることができる電動弁の診断方法を提案する。
【解決手段】基準時の電流に対応する電気信号を直交座標のX軸又はY軸に、出力トルクをY軸又はX軸に表示して該電気信号と出力トルクとの相関を図表化した曲線であって、電気信号に対応するX軸又はY軸に平行に延びる線分L1と該線分L1の先端位置からX軸又はY軸に対して所定の傾きをもって延びる線分L2からなる基準状態における入出力曲線と、次回以降の測定における電流に対応する電気信号を直交座標のX軸又はY軸に、出力トルクをY軸又はX軸に表示して該電気信号と出力トルクとの相関を図表化した曲線であって、電気信号に対応するX軸又はY軸に平行に延びる線分L1と該線分L1の先端位置からX軸又はY軸に対して所定の傾きをもって延びる線分L2からなる次回以降の入出力曲線を対比することで電動弁の診断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電動弁の作動に関する各種の診断を行うための診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動弁の作動に関する診断を行う場合、この電動弁に入力される電流を正確に知ることが重要であり、その手法として、例えば、特許文献1に示されるように、電動弁の電源ケーブルに電流を検出するクランプ式の電流センサを取付けて電流値を計測する手法等が知られている。
【0003】
また、電動弁に入力される電流に基づいて電動弁の診断を行う方法としては、例えば特許文献2に示されるように、予め電動弁の全開から全閉に至るトルク特性と、電動駆動部に通電される電流の電流特性を求めておき、電動弁の診断時には、予め求めたトルク特性と電流特性と、診断時に求めたトルク特性と電流特性に基づいて診断を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−130531号公報。
【特許文献2】特開2003−194671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、クランプ式の電流センサを用いる手法では、電力ケーブルが収容された電線管の外側から電流センサを取付けて計測を行うことができず、例えば、電気箱を開放して電力ケーブルの電線に直接電流センサを取付ける必要があり、計測作業が煩雑になるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に示される診断方法では、予め求めた全開から全閉に至る間におけるトルク特性及び電流特性と、診断時に求めたトルク特性及び電流特性を、共に時系列的に表示し、これら両者を対比することで電動弁の診断を行うように構成されているが、時系列的な表示であるためトルク特性と電流特性との対応関係を一目で判断することが難しく、簡易且つ迅速な診断という点において改善の余地がある。
【0007】
そこで本願発明は、電動弁の作動に関する診断を簡易且つ迅速に精度良く行うことができるようにした電動弁の診断方法を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として以下のような特有の構成を採用している。
【0009】
本願の第1の発明では、基準時において電動弁に入力される電流に対応する電気信号を直交座標のX軸又はY軸に、上記電動弁の出力トルクをY軸又はX軸に表示して該電気信号と出力トルクとの相関を図表化した曲線であって、電気信号に対応するX軸又はY軸に平行に延びる線分L1と該線分L1の先端位置からX軸又はY軸に対して所定の傾きをもって延びる線分L2からなる基準状態における入出力曲線と、次回以降の測定において電動弁に入力される電流に対応する電気信号を直交座標のX軸又はY軸に、上記電動弁の出力トルクをY軸又はX軸に表示して該電気信号と出力トルクとの相関を図表化した曲線であって、電気信号に対応するX軸又はY軸に平行に延びる線分L1と該線分L1の先端位置からX軸又はY軸に対して所定の傾きをもって延びる線分L2からなる次回以降の入出力曲線を対比することで電動弁の診断を行うことを特徴としている。
【0010】
ここで、電動弁の出力トルクは、ヨークに発生するヨーク応力とか、弁棒に発生する弁棒応力等に基づいて演算により取得される。
【0011】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る電動弁の診断方法において、次回以降の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置と基準状態の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置が略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の傾きと基準状態の入出力曲線における上記線分L2の傾きが略一致した状態において、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクよりも高トルク側へ変化しているときには電動弁の設定トルクが上昇していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置と基準状態の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置が略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の傾きと基準状態の入出力曲線における上記線分L2の傾きが略一致した状態において、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクよりも低トルク側へ変化しているときには電動弁の設定トルクが低下していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも高電流側へ変化しているときには電動弁の入力側において駆動損失が増大していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流が基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流と略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクよりも低トルク側へ変化しているときには電動弁の出力側において駆動損失が増大していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L1が基準状態の入出力曲線における上記線分L1よりも高トルク側へ変化するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも高電流側へ変化しているときには弁棒摺動抵抗の増大と診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L1が基準状態の入出力曲線における上記線分L1よりも低トルク側へ変化するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも低電流側へ変化しているときには弁棒摺動抵抗の減少と診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流が基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流と略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される電流が基準状態の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される電流と略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L1及び線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L1及び線分L2よりも低トルク側へ変化しているときには出力トルクを検出するセンサの感度が劣化していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される最少出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される最少出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも低電流側へ変化しているときには電流を検出するセンサの感度が劣化していると診断することを特徴としている。
【0012】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る電動弁の診断方法において、上記電気信号を、上記電動弁に通電する電力線を収納した電線管における上記電力線との幾何学的な相対位置が変化しない部位に配置された複数の磁場センサにより取得される基準磁気信号と該基準磁気信号に対応する基準電気信号の相関データベースを参照して、測定により取得される磁気信号に対応する電気信号として取得することを特徴としている。
【0013】
ここで、電源が三相交流であれば、電力線は三本の電線(U相電線、V相電線、W相電線)を備え、これら各電線のそれぞれによって磁場が形成され、この磁場の大きさが上記磁場センサで感知され、その大きさに対応した信号が出力される。この場合、上記磁場センサで感知される磁場の大きさは、各電線からの距離が長くなるほど小さくなることから、例えば、単一の磁場センサでの測定では、該磁場センサの電線管に対する取付位置(換言すれば、電力線の各電線UVWに対する磁場センサの取付位置)によっては、各電線を流れる電気量に対応した磁気信号の取得が困難となる場合もある。
【0014】
一方、電力線(各電線UVW)の電線管内における配置位置(電線管の管軸に直交する面内位置における配置位置)が不明であり、しかも各電線に対する上記磁場センサの感度が異なる場合でも、この電線管と電力線との幾何学的な相対位置が変化しない部位に複数の磁場センサを配置し、これら各磁場センサによって得られる磁気信号の総和を磁気信号として採用することで、確実に磁気信号が得られることも知られている(後述する)。
【0015】
上記「磁場センサ」としては、例えば、上記電線管内の電力線から発せられる磁力線を感知して磁場の大きさに対応した信号(磁気信号)を出力するホール素子とかアモルファス素子を用いた磁場センサが採用される。
【0016】
また、上記磁場センサにより取得される「磁気信号」は、磁気信号そのものは勿論、これに限らず、これを積算した積算磁気信号等の磁気信号に基づく信号をも含む概念である。
【0017】
なお、上記「基準磁気信号」とは、電動機に基準電流を流したときに上記磁場センサによって取得される磁気信号である。また、この際の基準電流に対応する電気量が「基準電気信号」であり、この「電気信号」は、電流及びこれを積算した積算電流のみならず、これらに基づく電気信号を含む概念である。
【0018】
さらに、磁場の大きさ「H」は、電力線を流れる電流「I」に比例し、電力線からの距離(r)に反比例することが知られている(H∝I/2πr)。従って、磁場の大きさに対応して出力される磁気信号「G」と電力線を流れる電流「I」は比例関係にあり、このため磁気信号「G」と電流「I」の相関をデータベースとして取得しておけば、このデータベースに基づいて、測定により取得される磁気信号「G」に対応する現時点の電流「I」を取得することができる。また、このような磁気信号「G」と電流「I」の比例関係から、磁気信号の積算値「ΣG」と電流値の積算値「ΣI」も比例関係「ΣG∝ΣI」にあるといえる。
【0019】
以上のことから、電線管における電力線との幾何学的な相対位置が変化しない部位に配置した複数の磁場センサにより取得される基準磁気信号と該基準磁気信号に対応する基準電気信号の相関データベースを取得しておけば、次回以降は上記相関データベースを参照して、測定により取得される磁気信号に対応する電気信号を取得することができる。
【発明の効果】
【0020】
(1) 本願の第1及び第2の発明に係る電動弁の診断方法によれば、基準状態における入出力曲線と次回以降の入出力曲線をそれぞれ図表化して対比することで電動弁の診断を行うものであって、これら両者の変化状態のみから各種の項目についての診断を簡易且つ迅速に精度良く行うことができるものである。
【0021】
(2) 本願の第3の発明に係る電動弁の診断方法によれば、上記(1)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記複数の磁場センサを電線管に配置するという簡単な手段によって、基準磁気信号とこれに対応する基準電気信号の相関データベースを取得でき、次回以降はこの相関データベースに基づいて、測定により取得される磁気信号に対応する電気信号を取得するものであることから、以下のような効果が得られる。
【0022】
(3−1) 例えば、電気箱内の電線に電気量測定器を取付けて電流値等を計測する従来の方法のように、電気箱の改造を必要とするとか、作業中の感電、地絡あるいは短絡等の危険性を伴うこともなく、簡易・迅速に且つ安全に電気信号を取得することができる。
【0023】
(3−2) 上記複数の磁場センサを、電線管における電力線との幾何学的な相対位置が変化しない部位に配置しているので、該磁場センサと電力線の位置関係が一定に維持され、安定した信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0024】
(3−3) 上記磁場センサでの測定に基づく電気信号の取得と、電動弁側における出力トルクの取得が該電動弁の近傍で共に行え、且つこれら両者の対比及び確認が容易であることから、例えば、電気信号は電気盤部分で、出力トルクは電動弁部分で、それぞれ個別に行う構成の場合に比して、上記電気信号と出力トルクの収集、及びこれらの対比確認が容易であり、延いては、上記電気信号と出力トルクとの相関に基づく診断、例えば、電動弁における駆動力の伝達効率の適否と等の診断を容易且つ迅速に、しかも高い信頼性をもって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願発明に係る診断方法を適用して電動弁の診断を行う場合の全体システム図である。
【図2】磁場センサを用いた磁気信号測定手法の説明図である。
【図3】磁気(電流)信号とヨーク応力の第1の相関図である。
【図4】磁気(電流)信号とヨーク応力の第2の相関図である。
【図5】磁気(電流)信号とヨーク応力の第3の相関図である。
【図6】磁気(電流)信号とヨーク応力の第4の相関図である。
【図7】磁気(電流)信号とヨーク応力の第5の相関図である。
【図8】磁場センサによる出力パターンの取得方法の説明図である。
【図9】磁場センサ信号の電線位置との関係における出力パターン図である。
【図10】磁場センサ信号の実出力パターン図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0027】
図1には、本願発明に係る診断方法を、電動弁10の診断に適用した場合の全体システムを示している。
【0028】
上記電動弁10は、弁本体部11と弁駆動部16を、ヨーク15を介して連結一体化して構成される。上記弁本体部11内には、弁座部12を開閉する弁体13が収容されている。上記弁体13には、上記ヨーク15を上下方向に貫通して上記弁駆動部16の上部に至る弁棒14が連結されており、該弁棒14を上記弁駆動部16によって上下方向へ昇降駆動することで上記弁体13が上記弁座部12に着座あるいは離座し、上記電動弁10が開閉される。
【0029】
上記弁駆動部16は、ウォーム22を備え電動機5によって回転駆動されるウォーム軸21と、上記ウォーム22と噛合し該ウォーム22側から回転力が伝達されるウォームホイール23と、上記弁棒14のネジ部に噛合するステムナット(図示省略)を内蔵し上記ウォームホイール23からの回転力を受けて上記ステムナットを回転駆動するドライブスリーブ26を備える。また、上記ウォーム軸21の軸端側には、上記弁棒14のトルク調整を行うスプリングカートリッジ24が配置されている。
【0030】
そして、この実施形態においては、究極的には上記電動弁10の電流に関する各種の診断を行うものであるが、その前作業として、該電動弁10に入力される電気量を、簡単な構成で安全且つ容易に、しかも高精度で取得するとともに、該電気量に関連する各種データベースを作成するようにしている。そして、上記電動弁10の診断を行うに際して、予め取得された電気量及び各種データベースを活用することで、信頼性の高い診断を実現するものである。
【0031】
従って、以下においては、先ず、上記電動弁10に入力される電気量の取得手法等について説明し、しかる後、その電気量を用いた上記電動弁10の診断手法について説明する。
【0032】
A:電気量の取得手法
この実施形態では、上記電動弁10に入力される電気量(特に、この実施形態では電流)を、磁場センサにより検出される磁気信号に基づいて取得するとともに、この磁気信号と電気信号の相関をデータベースとして取得することで、次回以降の電気信号の取得の容易化及び迅速化を図っている。
【0033】
A−1:磁場センサ8による磁気信号の取得
この実施形態では、より簡易に且つ安全に、しかも高精度で磁気信号を取得するために、三個の磁場センサ8を組み合わせて磁気信号を取得するようにしている。
【0034】
具体的には、上記電動機5に接続されたフレキシブル管部4の上流端に接続される鋼管製の電線管1の外周面で且つ該電線管1の軸方向の同一位置に、その周方向に略同一ピッチで三個の磁場センサ8A,8B,8Cを配置し、これら三個の磁場センサ8A,8B,8Cによって、上記電線管1内に配置された電力線2の各電線U,V,Wのそれぞれから発せられる磁力線を感知して磁場の大きさに対応した信号を出力するようになっている。
【0035】
上記磁場センサ8としては、例えば、ホール素子とかアモルファス素子を用いた磁場センサが採用される。また、上記電線管1の上記各磁場センサ8A,8B,8Cが配置された部位は、該電線管1と電力線2(即ち、各電線U,V,W)との幾何学的な相対位置が変化しない部位として選定されたものである。係る部位での測定であれば、原則として、何度測定しても上記各磁場センサ8A,8B,8Cのそれぞれからの出力信号の相対関係が一定に保持されると考えられ、安定した信頼性のより高い信号データが取得される。しかし、突発的な何らかの理由によって、上記部位においても電線管1と電力線2との相対位置が変化することも有り得ることから、係る場合の対応についても考慮している(後述する)。
【0036】
A−2:磁気信号の演算手法
ここで、図2を参照して、上記各磁場センサ8A,8B,8Cを用いた磁気信号の演算手法について説明する。
【0037】
この磁気信号の演算手法は、本件出願人が開発し既に特許出願(特願2003−419062、特開2005−180989)を行っているところであるが、これを簡単に説明すると以下の通りである。
【0038】
図2において、上記電線管1内に電力線2が収容されている。この電力線2は三相ケーブルであって、三本の電線U,V,Wを有しており、上述のように、該電力線2の上記電線管1内における幾何学的な相対位置が変化しないものとされる。また、上記電線管1の外周には、上記各磁場センサ8A,8B,8Cが周方向にそれぞれ120度の位相をもって配置されている。
【0039】
ここで、上記各磁場センサ8A,8B,8Cは、各電線U,V,Wのそれぞれから発せられる磁力線を感知して磁場の大きさに対応した信号を出力する特性をもつものであるが、感知される磁場の大きさは、各電線U,V,Wの中心から各磁場センサ8A,8B,8Cまでの距離に反比例することが知られている。従って、上記各各磁場センサ8A,8B,8Cのそれぞれにおいて、上記各電線U,V,Wからの距離が異なることから、各電線U,V,Wからの磁力線から感知される信号は異なる。例えば、磁場センサ8Aにおいては、距離Aru,Arwが小さい電線U,Wから感知される信号は大きいが、距離Arvが大きい電線Vから感知される信号は小さいものとなる。
【0040】
従って、例えば、上記電線管1に1個の磁場センサを配置し、この磁場センサによって磁気信号を検出する構成とした場合には、上記電線管1内での上記電力線2の配置位置と、該電線管1に対する上記磁場センサの配置位置によっては、上記電力線2から感知される信号が小さく、精度の高い磁気信号を取得できない場合も有り得る。
【0041】
一方、上記電線管1内における上記電力線2の配置位置は不明であっても、上記電線管1に複数の磁場センサを配置すれば、磁力線から感知される信号が大きいものと小さいものとが存在することになるため、例えば、感知される信号が大きい磁場センサの出力を磁気信号として採用するとか、感知される信号が大きい磁場センサの出力と感知される信号が小さい磁場センサの出力の総和を演算にて求め、これを磁気信号として採用することが考えられ、上掲の先行技術では後者の手法を採用し、その具体的な演算方法を開示している。具体的には、各磁場センサ8A,8B,8Cの検知信号を、絶対値で加算、減算等することで、判別し易い大きな信号値として取得し、これを上記電力線2の磁場に対応する磁気信号として採用するものである。
【0042】
以上のことから、この実施形態においては、上掲の先行技術で示された磁気信号取得手法を採用し、上記磁場センサ8A,8B,8Cで検出された信号値をそれぞれ磁気信号演算手段31に取り込み、これを該磁気信号演算手段31で演算処理をし、磁気信号として後述の各種の処理あるいは診断に用いるようにしている。
【0043】
B:診断装置30
次に、上述の磁気信号の取得手法を踏まえた上で、図1を参照して、診断装置30の構成及びこれによる診断方法について説明する。
【0044】
B−1:診断装置30の構成
上記診断装置30は、上述の上記電線管1に配置された三個の磁場センサ8A,8B,8Cのほかに、磁気信号演算手段31、電気信号演算手段32、磁気−電気信号データベース33、磁気信号−物理量データベース34、出力パターンデータベース35、診断手段36、出力手段37及び物理量信号演算手段40を備えて構成される。
【0045】
上記磁気信号演算手段31は、上記各磁場センサ8A,8B,8Cの検出値に基づいて磁気信号を演算にて取得し、これを磁気信号Saとして、磁気−電気信号データベース33と磁気信号−物理量データベース34と出力パターンデータベース35と診断手段36へそれぞれ出力する。なお、この磁気信号Saは、磁気信号そのもののみならず、これを積算等の所要の演算処理をして得られる信号も含まれる。
【0046】
上記電気信号演算手段32は、例えば、電気制御盤29において電流センサ(図示省略)により検出される検出値に基づいて電気信号を演算にて取得し、これを電気信号Sbとして、磁気−電気信号データベース33と磁気信号−物理量データベース34及び診断手段36へそれぞれ出力する。なお、この電気信号Sbは、電流信号のほか、これを積算等の演算処理をして得られる信号も含まれる。
【0047】
B−1−2:磁気−電気信号データベース33
上記磁気−電気信号データベース33では、基準状態(例えば、初回の測定時)において、上記磁気信号演算手段31から入力される磁気信号(基準磁気信号)と上記電気信号演算手段32から入力される電気信号(基準電気信号)との相関を求め、これをデータベースとして保有する。従って、次回以降の測定においては、上記磁気信号演算手段31から入力される磁気信号Saに対応する電気信号を上記磁気−電気信号データベース33から読み出し、これを電気信号Scとして診断手段36へ出力する。
【0048】
なお、上記診断手段36には、上記電気信号演算手段32からの電気信号Sbと上記磁気−電気信号データベース33からの電気信号Scとが入力されるようになっているが、これは計測によって電気信号を得ることができるときには、この計測に基づく上記電気信号演算手段32からの電気信号Sbを診断に用い、計測をしない場合、あるいは計測できない場合には、上記磁気−電気信号データベース33からの電気信号Scを診断に用いるためである。
【0049】
B−1−3:磁気信号−物理量データベース34
上記磁気信号−物理量データベース34は、上記磁気信号演算手段31から入力される基準状態における磁気信号Saと、後述する物理量信号演算手段40から入力される物理量信号Seとを受けてこれらの相関を求め、これをデータベースとして保有する。従って、次回以降の測定では、上記磁気信号演算手段31から入力される磁気信号Saに対応する物理量信号を上記磁気信号−物理量データベース34から読み出してこれを上記診断手段36における診断に用いることができる。
【0050】
なお、ここでは、上記磁気信号−物理量データベース34に上記磁気信号演算手段31からの磁気信号Saを入力するようにしているが、これに代えて、上記電気信号演算手段32からの電気信号Sbを入力するように構成することもできる。
【0051】
B−1−4:出力パターンデータベース35
上記出力パターンデータベース35は、上記電線管1内で上記電力線2の位置を変化させた場合における上記各磁場センサ8A,8B,8Cの出力パターン(基準出力パターン)をデータベースとして保有し、この基準出力パターンと、実際の測定における上記各磁場センサ8A,8B,8Cの出力パターンである実出力パターンとを対比し、その対比結果を出力パターン信号Sfとして上記診断手段36に出力し、該診断手段36での診断に反映させるものである。
【0052】
ここで、上記電線管1内で上記電力線2の位置が変化する場合としては、二つのケースは考えられる。その一つは、電線管1内において上記電力線2が該電線管1との回転方向の相対関係を維持したまま平行移動する場合(以下「第1の場合」という)であり、他の一つは上記電線管1内において上記電力線2が捩れて、又は上記第1の場合のような平行移動と同時に捩れて、該電線管1との相対関係が変化する場合(以下「第2の場合」という)である。
【0053】
上記第1の場合について、これを具体的に説明すると、図8に示すように、上記電線管1内において上記電力線2の位置を順次変化させた場合(例えば、電力線2A→2B→2C→2D→・・・の順で位置を変化させた場合)における各位置での各磁場センサ8A,8B,8Cの出力パターンを、図9に示すような「位置1→位置2→位置3→位置4→・・・」についての基準出力パターンとして保有する。そして、この基準出力パターンと、図10に示すような測定で得られた上記各磁場センサ8A,8B,8Cの実出力パターンとを対比し、この実出力パターンが最も近似する基準出力パターンを抽出し、この抽出された基準出力パターンに対応する位置を、現在の上記電線管1内における上記電力線2の配置位置であるとして、これを後述の診断手段36へ出力し、該診断手段36における診断に反映させるものである。
【0054】
また、第2の場合で、特に平行移動に加えて捩れが生じた場合は、上記電線管1内において上記電力線2を平行移動とともに回転させて、各回転位置における各磁場センサ8A,8B,8Cの出力パターンを基準出力パターンとして保有する(図9参照)。そして、この基準出力パターンと、測定で得られた上記各磁場センサ8A,8B,8Cの実出力パターン(図10参照)とを対比し、この実出力パターンが最も近似する基準出力パターンを抽出し、この抽出された基準出力パターンに対応する位置を、現在の上記電線管1内における上記電力線2の回転位置であるとして、これを後述の診断手段36へ出力し、該診断手段36における診断に反映させるものである。
【0055】
B−1−5:物理量信号演算手段40
上記物理量信号演算手段40には、上記ヨーク応力センサ25によって検出されるヨーク応力信号が入力される。この物理量信号演算手段40には、図示しないが、ヨーク応力と該ヨーク応力と対応関係にある弁軸力の基準状態における相関データベースが備えられている。そして、上記物理量信号演算手段40は、上記ヨーク応力センサ25からヨーク応力信号が入力されると、これを受けて、例えば、該ヨーク応力信号そのものを物理量信号Seとして、又は入力されたヨーク応力信号に対応する弁軸力を上記相関データベースから読み出してこれを物理量信号Seとして、上記磁気信号−物理量データベース34と上記診断手段36へ出力する。
【0056】
B−1−6:診断手段36
上記診断手段36は、上記磁気信号演算手段31から入力される磁気信号Saと、上記電気信号演算手段32から入力される電気信号Sbと、上記磁気−電気信号データベース33から入力される電気信号Scと、上記磁気信号−物理量データベース34から入力される物理量信号Sdと、上記物理量信号演算手段40から入力される物理量信号Seと、上記出力パターンデータベース35から入力される出力パターン信号Sfとを受けて、上記電動弁10の各種の診断を行う。この診断手段36における具体的な診断については、後述する。
【0057】
B−1−7:出力手段37
上記出力手段37は、上記診断手段36から出力される診断結果を受けて、表示手段38にその診断結果を表示させるとともに、警報手段39において所要の警報を発生させる。
【0058】
B−2:診断手段36における診断内容等
ここで、上記診断手段36におけるいくつかの診断例を、図3〜図7を参照して説明する。
【0059】
B−2−1:電動弁10の設定トルクに関する診断
図3には、電流とヨーク応力との相関図を示している。ここで、電動弁10においては、ヨーク応力は出力トルクに対応し、また電流はその積算値が入力に対応することから、上記相関図は上記電動弁10の入出力曲線に相当する。そして、基準時における入出力曲線は、ヨーク応力(即ち、出力トルク)が変化せずに電流(積算値)のみが上昇変化する状態を示す線分L1と、ヨーク応力と電流の双方が所定の上昇率で上昇変化する状態を示す線分L2で規定される。
【0060】
また、基準状態における最大出力トルクaは、電動弁10の設定トルクスイッチ動作時の出力トルクに対応するものであり、基準状態では上記電動弁10はスプリングカートリッジ24の設定トルクに基づいて弁開閉時のトルク制御がなされる。
【0061】
ここで、次回以降の測定によれば、基準状態における入出力曲線を略維持しているものの、上記最大出力トルクが、上記線分L2上で基準状態時の最大出力トルク「a」よりも高トルク側の「c」へ変化していた場合(第1の場合)と、上記線分L2上で基準状態時の最大出力トルク「a」よりも低トルク側の「b」へ変化していた場合(第2の場合)を想定する。
【0062】
これらの変化のうち、上記第1の場合は、設定トルク値が基準状態時よりも上昇している状態であって、このような状態の発生原因としては、上記電動弁10のスプリングカートリッジ24に充填されたグリスの硬化に伴う皿バネの圧縮抵抗の増加とか、上記ウォーム22のスライド抵抗の増加とか、トルクスイッチの高トルク側への位置ズレ等が考えられる。
【0063】
上記第2の場合は、設定トルク値が基準状態時よりも低下している状態であって、このような状態の発生原因としては、上記スプリングカートリッジ24の皿バネの劣化とか、トルクスイッチの低トルク側への位置ズレ等が考えられる。
【0064】
なお、上記のような設定トルクの変化状態は、上記磁場センサ8A,8B,8Cで測定された磁気信号に対応して上記磁気−電気信号データベース33から読み出される電気信号Scと、上記ヨーク応力センサ25からのヨーク応力信号Seを図表化することで、即座に且つ明確に判断することができる。
【0065】
係る診断結果が上記表示手段38において表示され、また上記警報手段39によって警報が発せられることで、適切な対応を迅速にとることができ、電動弁10の運転上における信頼性が向上する。また、上記設定トルクの変化状態から部品交換等のメンテナンス時期を予測することもできる。
【0066】
B−2−2:電動弁10の上下流間における駆動損失に関する診断
図4には、実線で示す基準状態における入出力曲線に対して、次回以降の測定においては基準状態における線分L2が破線で示す線分L21,L22のように変化した例を示している。第1の場合は、線分L21で示すように、最大出力トルク(設定トルクスイッチの動作時の出力トルク)は変化することなく、基準状態における線分L2がそのまま高電流側へ変化した場合である。第2の場合は、線分L22で示すように、最高出力トルク(設定トルクスイッチの動作時の出力トルク)が低トルク側へ変化するとともに、基準状態における線分L2が高電流側へ変化した場合である。
【0067】
ここで、上記第1の場合も第2の場合も、共に電流が基準状態時よりも増加しており、駆動力伝達系において駆動損失が発生したと判断できる。
【0068】
そして、上記第1の場合は、設定トルクスイッチの動作時の出力トルクに変化がないが、同じ出力トルクを得るためには基準状態よりも大きな電流を必要としていることから、上記電動弁10の上流側(入力側)における駆動力の伝達効率が低下し駆動損失が発生していると判断することができる。係る上流側における駆動損失の発生原因としては、例えば、上記電動機5とウォーム軸21の間での噛合状態の悪化が考えられる。
【0069】
これに対して、上記第2の場合は、設定トルクスイッチの動作時の電流は同じであるが、低トルク側へ変化していることから、上記電動弁10の下流側(出力側)における駆動力の伝達効率が低下して駆動損失が発生したものと判断することができる。係る下流側における駆動損失の発生原因としては、例えば、上記弁棒14と上記ドライブスリーブ26に内蔵されて該弁棒14と噛合するステムナットの間の潤滑不良が考えられる。
【0070】
このような診断結果が上記表示手段38において表示され、また上記警報手段39によって警報が発せられることで、適切な対応を迅速にとることができ、電動弁10の運転上における信頼性が向上する。また、上記出力トルクの変化状態から部品交換等のメンテナンス時期を予測することもできる。
【0071】
B−2−3:電動弁10の弁棒摺動抵抗に関する診断
図5には、実線で示す基準状態における入出力曲線が、次回以降の測定では破線で示すように変化した例を示している。第1の場合は、基準状態における線分L1が線分L11で示すように高トルク側へ変化するとともに、基準状態における線分L2が線分L21で示すように高電流側へ変化し、しかも設定トルクスイッチの動作時の出力トルクには変化が無い場合である。第2の場合は、基準状態における線分L1が線分L12で示すように低トルク側へ変化するとともに、基準状態における線分L2が線分L22で示すように低電流側へ変化し、しかも設定トルクには変化が無い場合である。
【0072】
ここで、上記第1の場合は、上記弁棒14部分に装着されたグランドパッキンの摩擦抵抗が高くなり過ぎたことが発生原因として挙げられ、また、第2の場合は、逆に、上記グランドパッキンの摩擦抵抗が低くなり過ぎたことが発生原因として挙げられる。
【0073】
このような診断結果が上記表示手段38において表示され、また上記警報手段39によって警報が発せられることで、適切な対応を迅速にとることができ、電動弁10の運転上における信頼性が向上する。
【0074】
B−2−4:ヨーク応力センサ25の感度に関する診断
図6には、実線で示す基準状態における入出力曲線が、次回以降の測定では、破線で示すように、設定トルクスイッチの動作時の出力トルクに対応する電流「G1」、及び弁タッチ時の電流「G2」を維持したまま、全体として低トルク側へ所定量だけ平行移動するように変化した場合を示している。
【0075】
このような変化状態は、上記ヨーク応力センサ25の感度の劣化が原因と考えられる。従って、係る場合の対応措置としては、上記ヨーク応力センサ25を交換する他に、例えば、上記ヨーク応力センサ25の出力値を、基準状態における最低トルク値「t1」と変化後の最低トルク値「t2」の比率によって補正し、補正後のヨーク応力を以降の診断に用いることが考えられる。
【0076】
係る診断結果が上記表示手段38において表示され、また上記警報手段39によって警報が発せられることで、適切な対応を迅速にとることができ、電動弁10の運転上における信頼性が向上する。
【0077】
B−2−5:磁場センサ8の感度に関する診断
図7には、実線で示す基準状態における入出力曲線の線分L2が、次回以降の測定では、破線で示す線分L21のように、最小出力トルク及び最大出力トルク(設定トルクスイッチの動作時の出力トルク)を維持したまま、低電流側へ変化した場合を示している。
【0078】
このような変化状態は、上記磁場センサ8A,8B,8Cの感度の劣化が原因と考えられる。従って、係る場合の対応措置としては、上記磁場センサ8A,8B,8Cのうち劣化している磁場センサを交換する他に、例えば、上記磁場センサ8A,8B,8Cでの測定に基づいて得られた電流を、基準状態時の最大電流「1a」と変化後の最大電流「1b」の比率によって補正、補正後の電流を以降の診断に用いることが考えられる。
【0079】
ここで、上記磁場センサ8A,8B,8Cのうち、劣化している磁場センサを特定する必要があるが、この特定の手法としては、例えば、基準状態において上記各磁場センサ8A,8B,8Cのそれぞれから得られる磁気信号を上記磁気信号演算手段31に保有しておき、次回以降において上記各磁場センサ8A,8B,8Cのそれぞれから得られる磁気信号を、基準状態時の各磁気信号と対比することで容易に特定することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ・・電線管
1A〜1C・・電線管
2 ・・電力線
4 ・・フレキシブル管部
5 ・・電動機
6 ・・電気箱
7 ・・電源線
8 ・・磁場センサ
10 ・・電動弁
11 ・・弁本体部
12 ・・弁座部
13 ・・弁体
14 ・・弁棒
15 ・・ヨーク
16 ・・弁駆動部
21 ・・ウォーム軸
22 ・・ウォーム
23 ・・ウォームホイール
24 ・・スプリングカートリッジ
25 ・・ヨーク応力センサ
26 ・・ドライブスリーブ
29 ・・電気制御盤
30 ・・診断装置
31 ・・磁気信号演算手段
32 ・・電気信号演算手段
33 ・・磁気−電気信号データベース
34 ・・磁気信号−物理量データベース
35 ・・出力パターンデータベース
36 ・・診断手段
37 ・・出力手段
38 ・・表示手段
39 ・・警報手段
40 ・・物理量信号演算手段
41 ・・診断装置
42 ・・第1診断部
43 ・・第2診断部
44 ・・第1演算部
45 ・・第2演算部
46 ・・表示部
47 ・・第1出力部
48 ・・第3演算部
49 ・・第2出力部
U,V,W ・・電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準時において電動弁に入力される電流に対応する電気信号を直交座標のX軸又はY軸に、上記電動弁の出力トルクをY軸又はX軸に表示して該電気信号と出力トルクとの相関を図表化した曲線であって、電気信号に対応するX軸又はY軸に平行に延びる線分L1と該線分L1の先端位置からX軸又はY軸に対して所定の傾きをもって延びる線分L2からなる基準状態における入出力曲線と、
次回以降の測定において電動弁に入力される電流に対応する電気信号を直交座標のX軸又はY軸に、上記電動弁の出力トルクをY軸又はX軸に表示して該電気信号と出力トルクとの相関を図表化した曲線であって、電気信号に対応するX軸又はY軸に平行に延びる線分L1と該線分L1の先端位置からX軸又はY軸に対して所定の傾きをもって延びる線分L2からなる次回以降の入出力曲線を対比することで電動弁の診断を行うことを特徴とする電動弁の診断方法。
【請求項2】
請求項1において、
次回以降の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置と基準状態の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置が略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の傾きと基準状態の入出力曲線における上記線分L2の傾きが略一致した状態において、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクよりも高トルク側へ変化しているときには電動弁の設定トルクが上昇していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置と基準状態の入出力曲線における上記線分L1と線分L2の交点位置が略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の傾きと基準状態の入出力曲線における上記線分L2の傾きが略一致した状態において、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクよりも低トルク側へ変化しているときには電動弁の設定トルクが低下していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも高電流側へ変化しているときには電動弁の入力側において駆動損失が増大していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流が基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流と略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクよりも低トルク側へ変化しているときには電動弁の出力側において駆動損失が増大していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L1が基準状態の入出力曲線における上記線分L1よりも高トルク側へ変化するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも高電流側へ変化しているときには弁棒摺動抵抗の増大と診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L1が基準状態の入出力曲線における上記線分L1よりも低トルク側へ変化するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも低電流側へ変化しているときには弁棒摺動抵抗の減少と診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流が基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクに対応する電流と略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される電流が基準状態の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される電流と略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L1及び線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L1及び線分L2よりも低トルク側へ変化しているときには出力トルクを検出するセンサの感度が劣化していると診断し、
次回以降の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L2の先端位置で規定される最大出力トルクと略一致するとともに、次回以降の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される最少出力トルクが基準状態の入出力曲線における上記線分L1と上記線分L2の交点位置で規定される最少出力トルクと略一致した状態で、次回以降の入出力曲線における上記線分L2が基準状態の入出力曲線における上記線分L2よりも低電流側へ変化しているときには電流を検出するセンサの感度が劣化していると診断する、
ことを特徴とする電動弁の診断方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記電気信号を、上記電動弁に通電する電力線を収納した電線管における上記電力線との幾何学的な相対位置が変化しない部位に配置された複数の磁場センサにより取得される基準磁気信号と該基準磁気信号に対応する基準電気信号の相関データベースを参照して、測定により取得される磁気信号に対応する電気信号として取得することを特徴とする電動弁の診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−103271(P2012−103271A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28854(P2012−28854)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2009−537881(P2009−537881)の分割
【原出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】