説明

電動式ドアラッチ装置

【課題】正常時に不適当な操作によりドア開放許容状態に切り替わることを確実に防止する一方、電気駆動不能なときに手動で容易にドア開放許容状態に切り替えることが可能な電動式ドアラッチ装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の電動式ドアラッチ装置20は、手動回動部品40がドア10の内部に配置されると共に、その手動回動部品40のうちドアトリム19との対向面に、断面非円形のツール嵌合孔43Bが形成されている。そして、キープレート90をドアトリム19に貫通形成された第1操作孔15を介してツール嵌合孔43Bに嵌合することで、手動回動部品40が回動操作可能となる。これにより、電気駆動不能な時には手動で容易にドア開放許容状態に切り替えることが可能であり、正常時には、キープレート90を抜き取っておくことで、不適当な操作によりドア開放許容状態に切り替わることを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに取り付けられ、ドアを閉止位置に保持した状態と、ドアを開放可能とした状態とに電気駆動により切り替え可能な電動式ドアラッチ装置に関し、特に、電気駆動不能な時に、手動で回動操作されてドア閉止状態からドア開放許容状態に切り替えるための手動操作部を備えた電動式ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電動式ドアラッチ装置としては、ドアの車内側壁面(ドアトリム)に手動操作部を操作するための操作ノブを露出させて備えたものが知られている(例えば特許文献1)。この装置では、操作ノブが比較的手の届きやすい位置にありかつ、常に操作可能な状態にある為、電気駆動により切り替え可能な正常時にも関わらず、悪戯等の不適当な操作により意図せずドア開放許容状態に切り替えられてしまうことがあった。これに対し、他の電動式ドアラッチ装置として、手動操作部に連結した操作レバーをシートの下に配置し、さらに、乗車していないときは、操作レバーをカバー部材で覆うようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−311337号公報(段落[0026]、第1図、第2図)
【特許文献2】特開2006−45893号公報(段落[0023]、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した他の従来の電動式ドアラッチ装置であっても、乗車中は操作レバーがシート下で常に露出しているため、不適当な操作を確実に防止するには至らなかった。それどころか、電動ドアラッチ装置が電気駆動不能になって、本当に操作レバーを操作する必要がある場合には、シート下を覗き込んだり手探りで操作レバーを探さなければならない為、特許文献1に開示された従来の電動式ドアラッチ装置に比べて視認性の点で劣っていた。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、手動操作部の視認性を向上させると共に、正常時に悪戯等により意図せずドア開放許容状態に切り替わることを確実に防止可能な電動式ドアラッチ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る電動式ドアラッチ装置は、車両のドアに組み付けられ、ドアを閉止位置に保持したドア閉止保持状態と、ドアを開放可能としたドア開放許容状態とに電気駆動にて切り替え可能であると共に、電気駆動不能な時に、手動にて回動操作されてドア閉止保持状態からドア開放許容状態に切り替えるための手動操作部を備えた電動式ドアラッチ装置において、手動操作部は、ドアの内部に配置されると共に、手動操作部のうちドアにおける車内側壁部との対向面にツール嵌合孔が形成され、所定のツールを、ドアの車内側壁部に貫通形成された操作孔を介してツール嵌合孔に嵌合することで、手動操作部を回動操作可能としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電動式ドアラッチ装置において、車両本体に備えたストライカに係合可能に回動するラッチと、ストライカとの係合を解除する方向へのラッチの回動を禁止するラッチ係止位置と、ストライカとの係合を解除する方向へのラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動しかつラッチ係止位置に付勢されたラチェットとを備え、ドアの閉止位置でラチェットがラッチ係止位置に位置してドア閉止保持状態になりかつ、そのラチェットをラッチ係止解除位置に回動してドア開放許容状態になるように構成されると共に、電気駆動を行うためのモータと、そのモータの動力をラチェットに伝達するための複数のモータ動力伝達部品と、モータ動力伝達部品の1つとして回動可能に設けられ、ラチェットが有する回動突部を一方側から押圧して回動させ、ラチェットをラッチ係止位置からラッチ係止解除位置に回動させるためのラチェット駆動盤とを備え、手動操作部は、複数のモータ動力伝達部品の何れかに連結又は一体に設けられたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電動式ドアラッチ装置において、ラチェット駆動盤は、他のモータ動力伝達部品に噛合した扇形ギヤを有し、手動操作部は、扇形ギヤに対してその板厚方向で重ねて配置され、扇形ギヤの回動軸に対して平行かつずれた回動軸を中心に回転可能な手動回動部品で構成され、手動回動部品及びラチェット駆動盤の両部品の互いの対向面には、互いに凹凸係合した突部とガイド溝とからなる連結機構が形成され、ガイド溝は、一方の部品の対向面においてその部品の回動半径方向に延び、突部は、他方の部品の対向面に形成されて、その部品の回動中心から離れた位置に配置され、連結機構を介して手動回動部品と扇形ギヤとが連動して回動するように構成されたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2に記載の電動式ドアラッチ装置において、ラチェット駆動盤には、他のモータ動力伝達部品に噛合した扇形ギヤと、扇形ギヤのうち円弧状外縁部寄り位置に形成された円弧状段差部と、円弧状段差部に形成された円弧形内歯ギヤとが備えられ、手動操作部は、扇形ギヤに対してその板厚方向で重ねて配置され、扇形ギヤの回動軸に対して平行かつずれた回動軸を中心に回転可能であると共に、円弧形内歯ギヤに噛合した外歯ギヤを有する手動ギヤ部品で構成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の電動式ドアラッチ装置において、手動操作部は、車両の鍵を所定のツールとして挿入して回動操作可能であるところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5に記載の電動式ドアラッチ装置において、ドアの操作孔の縁部に固定された固定リングと、固定リングの内側に回転可能に組み付けられかつ車両の鍵を挿入可能な長方形の鍵挿入孔を有した可動円盤とを備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1の発明]
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、電動式ドアラッチ装置が電気駆動不能な時に、手動でドア開放許容状態に切り替えるには、所定のツールをドアの車内側壁部に形成された操作孔に挿通し、そのツールを手動操作部のツール嵌合孔に嵌合させた状態で回動操作する。すると、手動操作部がツールと一体に回動して、ドア閉止保持状態からドア開放許容状態に切り替わる。
【0012】
このように、操作孔からツールを挿入してツール嵌合孔に嵌合させなければ、手動操作部を回動操作することが不可能になるので、正常時には、所定のツールを抜き取っておくことで、悪戯等の不適当な操作によりドア開放許容状態に切り替わることを確実に防止することができる。また、手動操作部を操作するための所定のツールを、比較的手が届き易くかつ視認し易いドアの車内側壁部に取り付けることが可能なので、操作レバーをシート下に配置した従来のものに比較して、手動操作部の操作性が向上する。
【0013】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、手動操作部が複数のモータ動力伝達部品の何れかに連結又は一体に設けられているので、手動操作部の回動操作により、ラチェット駆動盤を、回動突部を押圧する方向だけでなくその逆方向(回動突部から離す方向)にも回動させることができる。
【0014】
ここで、例えば、手動操作部を複数のモータ動力伝達部品から切り離して設け、手動操作部とラチェット駆動盤とがそれぞれ個別にラチェットの回動突部を押圧可能な構成にした場合、以下の事態が生じ得る。即ち、ラチェット駆動盤がラチェットの回動突部を一方向から押圧した状態(ラチェットが係止解除位置にある状態、ドア開放許容状態)で、ラチェットがラッチ係止位置に復帰不能になった場合、手動操作部の操作ではラチェットをラッチ係止位置に戻すことができず、ドア閉止保持状態に切り替えることができなくなる虞がある。
【0015】
これに対し、請求項2の発明によれば、仮に、ラチェットが係止解除位置にある状態でラッチ係止位置に復帰不能になっても、手動操作部の回動操作によりラチェット駆動盤を回動突部から離す方向(押圧方向と逆向き)に回動させることができるから、ラチェットを確実にラッチ係止位置に戻すことができる。即ち、確実にドア閉止保持状態に切り替えることができる。
【0016】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、手動操作部としての手動回動部品を回動操作すると、その手動回動部品に対して連結機構を介して連結された扇形ギヤが連動して回動し、扇形ギヤを有するラチェット駆動盤が回動する。すると、ラチェット駆動盤がラチェットの回動突部を一方向から押圧して、ラチェットをラッチ係止位置からラッチ係止解除位置に向かって回動させる。ここで、手動回動部品の回動軸は、扇形ギヤの回動軸に対して平行かつずれた位置に配置されており、これら平行かつ互いにずれた回動軸を中心にして回動する手動回動部品と扇形ギヤとを連動して回動させるために、連結機構のうちガイド溝は、そのガイド溝が形成された部品の回動半径方向に延びている。これにより、手動回動部品の回動時にガイド溝内で突部が移動可能となり、手動回動部品と扇形ギヤ(ラチェット駆動盤)とを連動して回動させることが可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、手動回動部品が、ラチェット駆動盤に形成された扇形ギヤの板厚方向に重ねて配置されているので、ラチェット駆動盤の側方に手動回動部品を配置した場合に比較して、ラチェット駆動盤の回動軸と直交する方向への装置の大型化を抑えることができる。
【0018】
[請求項4の発明]
請求項4の構成によれば、手動操作部としての手動ギヤ部品を回動操作すると、その手動ギヤ部品の外歯ギヤに噛合した円弧形内歯ギヤを有する扇形ギヤが回動し、扇形ギヤを備えたラチェット駆動盤が回動する。すると、ラチェット駆動盤がラチェットの回動突部を押圧して、ラチェットをラッチ係止位置からラッチ係止解除位置に向かって回動させる。
【0019】
ここで、手動ギヤ部品は、ラチェット駆動盤に形成された扇形ギヤの板厚方向に重ねて配置されているので、ラチェット駆動盤の側方に手動操作部を配置した場合に比較して、ラチェット駆動盤の回動軸と直交する方向への装置の大型化を抑えることができる。
【0020】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、車両の鍵で手動操作部を回動操作することができるから、車両の鍵とは別に手動操作部を回動操作するためのツールを所持するという煩わしさが無くなる。
【0021】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、ドア内部の手動操作部に接触可能なツールは、車両の鍵等の長方形の鍵挿入孔を通過可能なもの限定されるから、不適正なツールによる手動操作部の操作をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図14に基づいて説明する。
図1に示した車両のドア10は、板金のプレス部品で外郭壁11が構成され、外郭壁11のうち車内面を構成する外郭側部壁11Bには、ドアトリム19(内張り)が取り付けられている。このドア10のうち、ドア10の回動中心と反対側には、本実施形態の電動式ドアラッチ装置20が取り付けられている。電動式ドアラッチ装置20は、ドア10に内蔵された本体ユニット21と、ドアトリム19に取り付けられた操作孔金具69とから構成される。本体ユニット21は、上方から見ると全体として略L字形をなし、その角部がドア10の端部車室側角部に宛がわれた状態で固定されている。
【0023】
車両におけるドア枠12の内面にはストライカ13が設けられている。ストライカ13は、例えば断面円形の線材を門形に屈曲させてなり、略水平方向に突出している。また、ストライカ13のうち門形の両脚部はドア10の開閉方向(図1の左右方向)に並べられ、それらのうち一方の脚部に相当する部分が電動式ドアラッチ装置20の本体ユニット21と係合する。図4及び図5には、ストライカ13のうち本体ユニット21と係合する部分のみの断面図が示されている。また、図示しないが、外郭壁11のうちドア10の端面を構成する外郭端部壁11Aと外郭側部壁11Bとが直交した角部には、ストライカ13を受容するためのストライカ受容部が切り欠き形成されている。
【0024】
本体ユニット21は、ドア10の外郭端部壁11Aに対向した部分に、前記ストライカ13と係合するためのストライカ係合機構部29を備えると共に、ドア10の外郭側部壁11Bに対向した部分に、ストライカ係合機構部29を電気駆動するための駆動機構部39を備えている。また、本体ユニット21は、略全体が樹脂ハウジング50によって覆われている。樹脂ハウジング50は、図1に示すように、外郭端部壁11Aに対向した機構カバー部51と、外郭側部壁11Bに対向したケース本体部55とからなる。機構カバー部51には機構ケース22が嵌め込まれ、ケース本体部55の側部開口はカバー体57によって塞がれている(図2及び図3参照)。
【0025】
ストライカ係合機構部29は、機構ケース22の内部にラッチ23及びラチェット24(図4参照)を収容してなる。機構ケース22は、略偏平容器状の樹脂部品22Aに板金部品22Bを宛がってなり、その板金部品22Bがドア10の外郭端部壁11Aに宛がわれ、後方と上方及び一側方とが、樹脂ハウジング50の機構カバー部51(図1参照)によって覆われている。
【0026】
また、機構ケース22は、図2に示すようにボルト固定部22Cを例えば3カ所に備えている。そして、外郭端部壁11Aの内面に機構ケース22を宛がい、外郭端部壁11Aを外側から貫通した複数のボルト(図示せず)をボルト固定部22Cに螺合することで、本体ユニット21がドア10に固定されている。さらに、機構ケース22には、外郭壁11に形成されたストライカ受容部(図示せず)に対応して、ストライカ進入溝22Mが形成されている(図2及び図3を参照)。そして、ドア10を開閉する動作に伴ってストライカ13が、ストライカ進入溝22Mに進退する(図4及び図5参照)。
【0027】
図4に示すように、ストライカ係合機構部29のうち、ストライカ進入溝22Mより下方には、ラチェット24が回動可能に備えられている。ラチェット24はラチェット支持シャフト24Jを一体に備え、そのラチェット支持シャフト24Jによって機構ケース22の板金部品22Bとサブベース22Dとに対して回動可能に軸支されている。ラチェット24は、ラチェット支持シャフト24Jから相反する方向にラッチ当接片24Aとストッパ当接片24Bとを突出して備えている。また、ラチェット24と機構ケース22との間にはトーションバネ25(図6及び図7を参照)が備えられ、このトーションバネ25によってラチェット24が図4における反時計回り方向に付勢されている。そして、ストッパ当接片24Bが機構ケース22に備えたゴム製のラチェットストッパ26に当接して位置決めされている。このときのラチェット24の位置が本発明に係る「ラッチ係止位置」である。
【0028】
ストライカ係合機構部29のうち、ストライカ進入溝22Mより上方にはラッチ支持シャフト23Jが備えられ、そのラッチ支持シャフト23Jにラッチ23が回動可能に軸支されている。ラッチ23は、金属板を樹脂で覆って防音を図った構造になっている。ラッチ23には、互いに略平行になった1対の係止爪23A,23Bが備えられ、それら係止爪23A,23Bの間がストライカ受容部23Gになっている。ラッチ23には、係止爪23Aの張り出し方向と反対側にストッパ当接部23Sが突出形成されている。そして、図4に示すラッチ位置からラッチ23が時計回り方向に回転した場合には、図5に示すように、ストッパ当接部23Sが機構ケース22に設けたラッチストッパ27に当接して、ラッチ23がアンラッチ位置に位置決めされる。
【0029】
ラッチ23は、機構ケース22との間に設けたトーションバネ28(図6参照)によりアンラッチ位置側に付勢されて、ドア10を開けた状態では図5に示したアンラッチ位置に位置決めされる。このアンラッチ位置では、一方の係止爪23A(以下、「前側係止爪23A」という)がストライカ進入溝22Mの上方に退避しかつ、他方の係止爪23B(以下、「後側係止爪23B」という)がストライカ進入溝22Mを横切った状態になり、ストライカ受容部23Gの開口端がストライカ進入溝22Mのストライカ進入口22S側を向く。
【0030】
この状態でドア10を閉める動作を行うと、ストライカ進入溝22Mに進入したストライカ13がストライカ受容部23G内に受容されると共に、ストライカ13が後側係止爪23Bを押してラッチ23が図5における反時計回り方向に回動する。このとき、ラチェット24のラッチ当接片24Aが前側係止爪23A及び後側係止爪23Bに押され、ラチェット24がトーションバネ25に抗して回転する。そして、ドア10が閉じられると、図4に示すようにストライカ進入溝22Mのうちストライカ13よりストライカ進入口22S側が前側係止爪23Aによって塞がれてラッチ23とストライカ13とが係合すると共に、ラチェット24のラッチ当接片24Aが、前側係止爪23Aの前面側に突き当てられて、ラッチ23のアンラッチ側(図4の時計回り方向)への回転が規制され、ドア10が閉止状態に保持される。この状態が、本発明に係る「ドア閉止保持状態」である。
【0031】
この状態でドア10を開くには、ラチェット24を回動して、ラッチ当接片24Aを前側係止爪23Aとの当接位置から退避させればよい。そのため、ドア10には、その車内側にインサイドドアレバー17が備えられると共に、車外側にアウトサイドドアレバー18が備えられている(図10参照)。各ドアレバー17,18は、それらの操作によってオンオフする図示しないスイッチに接続され、そのスイッチと駆動機構部39に備えたモータ36とが電気接続されている。
【0032】
図7に示すように、駆動機構部39は、モータ36を含む複数の部品から構成され、樹脂ハウジング50のうちケース本体部55に収容されている。そのケース本体部55のうち、カバー体57と対向した部品取付壁56の上端一角部には、コネクタ部38が設けられている。また、コネクタ部38の下方にはモータ36が組み付けられており、図示しない配線によってコネクタ部38とモータ36とが接続されている。
【0033】
部品取付壁56のうち、モータ36の下方位置からは、カバー体57に向かって起立したウォームホイール回動軸30Jが備えられ、そのウォームホイール回動軸30Jにウォームホイール30が回動可能に軸支されている。そのウォームホイール30とモータ36の出力回転部に備えたウォームギヤ37とが噛合している。
【0034】
ウォームホイール回動軸30Jには、ウォームホイール30の板厚方向に重ねた状態で平ギヤ31が軸支されている。平ギヤ31は、ウォームホイール30より小径でかつ、ウォームホイール30と常に一体回転するようになっている。
【0035】
部品取付壁56のうち、ウォームホイール30と機構ケース22との中間位置には、ウォームホイール回動軸30Jと平行に起立した駆動盤回動軸32Jが備えられ、その駆動盤回動軸32Jにラチェット駆動盤32が回動可能に軸支されている。
【0036】
ラチェット駆動盤32は、駆動盤回動軸32Jから相反する方向に扇形ギヤ板33とリリースレバー34とを突出して備えている。扇形ギヤ板33は、ラチェット駆動盤32の回動中心を頂点とした扇形をなしており、ウォームホイール30の一部に重なると共に周縁部が平ギヤ31に噛合している。一方、リリースレバー34は、機構ケース22の裏面側に設けられてラチェット24と常に一体回転するリフトレバー35(本発明の「回動突部」に相当する)の下方位置に配置されている。
【0037】
そして、ドア10を開放するためにインサイドドアレバー17又はアウトサイドドアレバー18が操作されると、モータ36によってウォームホイール30が図7における時計回り方向に回転駆動され、これに連動して、ラチェット駆動盤32が図7における反時計回り方向に回動して、図8に示すようにリリースレバー34がリフトレバー35を下方から上方へと押圧する(蹴り上げる)。すると、ラチェット24がラッチ23の前側係止爪23Aに摺接しながら、図4における時計回り方向に回動して、図5に示すようにラッチ23の移動領域から退避する。即ち、ラチェット24が本発明に係る「ラッチ係止解除位置」になり、ラッチ23がアンラッチ位置側に回動可能となる。これにより、ドア10を開放可能としたドア開放許容状態になる。この状態でドア10を開く動作を行う(車内から押す又は車外から引く)と、ストライカ13がストライカ進入溝22Mのストライカ進入口22S側へと移動すると共に、ラッチ23がトーションバネの弾発力によりアンラッチ位置側(図4における時計回り方向)へと回動する。
【0038】
ここで、ウォームホイール30と部品取付壁56との間には、ウォームホイール30を図7における反時計回り方向に付勢するリターンスプリング30S(図6参照)が備えられており、モータ36が通電していないときには、リターンスプリング30Sによってラチェット駆動盤32が図7に示す初期位置に復帰するように構成されている。
【0039】
より具体的には、インサイドドアレバー17又はアウトサイドドアレバー18の操作時は、モータ36への通電により、ラチェット24はラチェット駆動盤32によりラッチ係止解除位置に向かって回動させられるが、インサイドドアレバー17又はアウトサイドドアレバー18の操作を止めるか、操作開始から規定時間が経過した場合には、モータ36への通電が停止され、リターンスプリング30Sの付勢力によりラチェット駆動盤32が初期位置に復帰するようになっている。
【0040】
ところで、本実施形態の電動式ドアラッチ装置20には、ドア閉止保持状態(図4に示す状態)で、モータ36やその他電気系のトラブルが発生し、電気駆動が不可能になった場合に備えて、車内側からの手動操作により、ドア閉止保持状態からドア開放許容状態に切り替えることが可能な手動回動部品40が備えられている。
【0041】
手動回動部品40は、モータ36の動力をラチェット24に伝達するための複数のモータ動力伝達部品(ウォームホイール30、平ギヤ31、ラチェット駆動盤32)のうち、ラチェット駆動盤32に連結されている。
【0042】
図7に示すように、手動回動部品40は、ラチェット駆動盤32のうち扇形ギヤ板33の板厚方向に重ねて配置されている。手動回動部品40は、ウォームホイール回動軸30J及び駆動盤回動軸32Jと平行な円柱構造をなしている。図12に示すように、手動回動部品40は、カバー体57に形成された貫通孔57Aを内外に貫通すると共に、その基端部が貫通孔57A内に回動可能に嵌合している。
【0043】
手動回動部品40のうち、カバー体57の内側に位置する基端部には、連結盤41が備えられている。図11に示すように、連結盤41は、手動回動部品40の径方向外側に張り出しており、平面形状が半円形をなしている。この連結盤41により、手動回動部品40が貫通孔57Aに対して抜け止めされている。
【0044】
手動回動部品40と扇形ギヤ板33の互いの対向面には、互いに凹凸係合した突部33Aとガイド溝41Aとからなる連結機構が形成されている。詳細には、扇形ギヤ板33のうち、その周方向の中間位置に、手動回動部品40に向かって突出した扁平円柱状の突部33Aが設けられている。これに対し、手動回動部品40の連結盤41には、その回動半径方向(径方向)に延びかつ径方向外側に開放したガイド溝41Aが形成されている。
【0045】
ここで、図7に示すように、手動回動部品40の回動軸40Jは、駆動盤回動軸32Jと平行かつずれた位置に配置されている。詳細には、図8に示すようにウォームホイール回動軸30Jと駆動盤回動軸32Jと突部33Aとが一直線上に配置されたときに、駆動盤回動軸32Jと突部33Aとを結ぶ線分の中間位置に手動回動部品40の回動軸40Jが位置するように配置されている。
【0046】
図12に示すように、手動回動部品40は、前記連結盤41を一体に備えた基端側ピース42と、筒形構造をなした先端側ピース43とを連結固定した構造となっている。先端側ピース43の軸方向の中間部には奥壁43Aが設けられており、その奥壁43Aより基端側部分に基端側ピース42の先端部と嵌合する連結孔43Cが形成され、奥壁43Aより先端側に断面非円形のツール嵌合孔43Bが形成されている。図7に示すように、ツール嵌合孔43Bは、例えば、車両のエンジン始動用のキープレート90が嵌合可能な断面長方形をなしている。また、ツール嵌合孔43Bの開口縁の角部(ツール嵌合孔43Bの内側面と先端側ピース43の先端面とがなす角部)はテーパー状に面取りされている。そして、先端側ピース43のツール嵌合孔43B側から奥壁43Aを貫通したビスによって、先端側ピース43と基端側ピース42とが連結され、手動回動部品40が構成されている。ここで、先端側ピース43の連結孔43Cと基端側ピース42の先端部を共に、断面非円形にすれば、それらピース42,43間の相対回転を確実に禁止することができる。
【0047】
図12に示すように、ドア10の車内側の側面を構成するドアトリム19及び外郭側部壁11Bのうち、手動回動部品40と対向した部分(手動回動部品40の回動軸40Jの延長線上)には、それぞれ第1操作孔15及び第2操作孔16が貫通形成されている。カバー体57を貫通して樹脂ハウジング50から突出した手動回動部品40は、外郭側部壁11Bに形成された第2操作孔16を貫通しており、その先端部が外郭側部壁11Bとドアトリム19とで挟まれたドア10の内部空間に位置している。即ち、手動回動部品40の先端部は、ドアトリム19からは突出しておらず、第1操作孔15の奥に対向配置されている。
【0048】
ドアトリム19に設けられた第1操作孔15には、電動式ドアラッチ装置20の一部を構成する操作孔金具69が取り付けられている。操作孔金具69は、第1操作孔15の縁部に固定された固定リング60と、固定リング60の内側に回転可能に組み付けられた可動円盤63とを備えている。
【0049】
固定リング60は、直径に対して軸寸法が小さい略扁平円筒形をなしている。固定リング60のうち、第1操作孔15に挿入されるリング本体61の先端部は、フランジ形状をなしており、第1操作孔15の車内面側開口縁に係止可能となっている。また、リング本体61は円筒内面を有し、先端部の開口縁には、内径を段差状に拡径した係止段差部61Aが形成されている。固定リング60は、リング本体61を第1操作孔15に挿入した状態で、ドアトリム19の裏面側からリング本体61にビス止めされた抜け止め用リング62との間で、ドアトリム19(第1操作孔15の周縁部)を板厚方向で挟持して固定されている。なお、図示しないが、第1操作孔15と、リング本体61の第1操作孔15に嵌合する部分は、共に断面非円形となっており、第1操作孔15に対する固定リング60の回り止めがなされている。
【0050】
可動円盤63は、直径に対して軸寸法が小さい扁平円柱構造をなしている。可動円盤63のうち、固定リング60に挿入された円盤本体64の先端部にはフランジ64Aが一体形成されており、固定リング60の係止段差部61Aに係止されている。また、円盤本体64の基端部には、フランジ板65がビス止めされており(図13参照)、円盤本体64のフランジ64Aとフランジ板65とにより、可動円盤63が固定リング60に対して抜け止めされている。
【0051】
可動円盤63には、鍵挿入孔63Aが貫通形成されている。鍵挿入孔63Aは、可動円盤63(円盤本体64及びフランジ板65)を軸方向に貫通し、車両のエンジン始動用のキープレート90を挿入可能な断面長方形をなしている。鍵挿入孔63Aの形状と、手動回動部品40に形成されたツール嵌合孔43Bの断面形状は略同一であり、可動円盤63と手動回動部品40との並び方向において、それら鍵挿入孔63Aとツール嵌合孔43Bとが合致するようになっている(図3を参照)。以上が、電動式ドアラッチ装置20の構造に関する説明である。
【0052】
次に、ドア閉止保持状態(図4に示す状態)で電動式ドアラッチ装置20が電気駆動不能になった場合に、手動回動部品40を操作して手動でドア閉止保持状態からドア開放許容状態に切り替える際の動作について説明する。
【0053】
手動回動部品40を回動操作するためには、まず、キープレート90をドアトリム19の第1操作孔15に挿入し、その奥にある手動回動部品40のツール嵌合孔43Bに嵌合させる(図10に示す状態)。その状態で、キープレート90を車内側から見て反時計回り方向に回動操作すると、手動回動部品40が同方向に回動し、連結機構(突部33A及びガイド溝41A)によって連結されたラチェット駆動盤32が、図7における反時計回り方向に回動する。これにより、ラチェット駆動盤32のリリースレバー34がリフトレバー35の下面に当接し、さらに下方から上方へと押圧する。
【0054】
すると、ラチェット24がリフトレバー35と一体に回動し、ラッチ23の前側係止爪23Aに摺接しながら、図4における時計回り方向に回動して、ラッチ23の移動領域から退避する。これにより、ラッチ23がアンラッチ位置側に回動可能となり、ドア開放許容状態に切り替わる。この状態でドア10を車内から押せば、ドア10を開くことができる。即ち、電動式ドアラッチ装置20が、ドア閉止保持状態で電気駆動不能になった場合でも、手動でドア開放許容状態に切り替えて、車外に出ることができる。
【0055】
また、電動式ドアラッチ装置20がドア開放許容状態(図9に示す状態)でモータ36の回転が悪くなったり、リターンスプリングが機能しなくなる等の事態になった場合にはドア閉止保持状態にできなくなる虞がある為、車両自体は走行可能であっても実際には走行させることができない。これに対し、本実施形態の電動式ドアラッチ装置20では、モータ36の動力をラチェット24に伝達するための複数のモータ動力伝達部品の1つ(ラチェット駆動盤32)に、手動回動部品40が連結されているので、ドア開放許容状態(図9に示す状態)で、電気駆動不能になった場合に、手動でドア閉止保持状態へと切り替えることもできる。
【0056】
即ち、キープレート90を第1操作孔15に挿入し、その奥にある手動回動部品40のツール嵌合孔43Bに嵌合させる。その状態で、キープレート90を車内側から見て時計回り方向に回動操作すると、手動回動部品40が同方向に回動し、ラチェット駆動盤32が、図9における時計回り方向に回動する。これにより、ラチェット駆動盤32のリリースレバー34がリフトレバー35から離れる方向(即ち、下方)に移動する。
【0057】
すると、ラチェット24がトーションバネ25の付勢力によってラッチ係止位置に向かって回動し、ラッチ23の移動領域に進入することが可能となる。この状態でドア10を閉めると図4に示すように、ラッチ23の前側係止爪23Aの前面側に突き当てられる。これにより、ラッチ23のアンラッチ側(図4の時計回り方向)への回転が規制され、ドア10が閉止状態に保持される。
【0058】
このように、本実施形態の電動式ドアラッチ装置20によれば、第1操作孔15からキープレート90を挿入してツール嵌合孔43Bに嵌合させなければ、手動回動部品40を回動操作することが不可能なので、電動式ドアラッチ装置20の正常時には、キープレート90を抜き取っておくことで、不適当にドア開放許容状態に切り替わることを確実に防止することができる。また、手動回動部品40を回動操作するためのキープレート90を、比較的手が届き易くかつし視認し易いドア10のドアトリム19に取り付けることができるから、従来のものに比較して、手動回動部品40の視認性を向上させることもできる。
【0059】
また、手動回動部品40が、ラチェット駆動盤32に形成された扇形ギヤ板33の板厚方向に重ねて配置されているので、ラチェット駆動盤32の側方に手動回動部品40を配置した場合に比較して、ラチェット駆動盤32の回動軸と直交する方向への電動式ドアラッチ装置20の大型化を抑えることができる。
【0060】
また、本実施形態のように、手動回動部品40を複数のモータ動力伝達部品の1つの連結した場合には、手動回動部品40を回動操作する際に、モータ36が操作抵抗となり得る。これに対し、本実施形態によれば、手動回動部品40の回動軸40Jが、駆動盤回動軸32Jからずれており、扇形ギヤ板33の径方向において、駆動盤回動軸32Jより突部33Aに近い位置に配置されているので、手動回動部品40の回動軸40Jを、駆動盤回動軸32Jと同軸上に配置した場合に比較して、操作抵抗を軽減することが可能となる。
【0061】
さらに、車両のエンジン始動用のキープレート90で手動回動部品40を回動操作することができるから、キープレート90とは別に、手動回動部品40を回動操作するためのツールを所持するという煩わしさが無くなると共に、車両に乗り込むときに、手動回動部品40を回動操作するためのツールを所持し忘れることも防止できる。
【0062】
しかも、ドア10の内部に配置された手動回動部品40に接触可能なツールは、エンジン始動用のキープレート90等、可動円盤63に形成された長方形の鍵挿入孔63Aを通過可能なものに限定されるから、不適正なツールによる手動回動部品40の操作をより確実に防止することができる。
【0063】
さらに、電動ドアラッチ装置を手動操作するための操作レバーを、ドア又はドア枠から離れた位置(例えば、シートの下やインパネ)に配置した場合には、操作レバーと電動ドアラッチ装置との間を繋ぐワイヤーが必須となるため、組み付け時の作業性(ワイヤーの取り廻し)やワイヤーによる重量増加等が問題となり得るが、本実施形態によれば、キープレート90と電動ドアラッチ装置20とを直結することができるから、このような問題が生じない。
【0064】
ここで、本実施形態の変形例として、手動回動部品40に突部40Aを設け、扇形ギヤ板33にガイド溝33Bを設けてもよい。即ち、図14に示すように、手動回動部品40の径方向外側に張り出した略三角形の連結盤44の先端に扇形ギヤ板33に向かって突出した突部40Aを設けて、突部40Aを手動回動部品40の回動軸40Jからずらして配置すると共に、ガイド溝33Bを扇形ギヤ板33の周方向の中央位置でその回動半径方向(径方向)に延びた長孔形状とし、ガイド溝33Bと突部40Aとを凹凸係合させればよい。このような構成としても同等の効果を奏する。
【0065】
[第2実施形態]
図15には、本発明の第2実施形態が示されている。この第2実施形態は、手動操作部とラチェット駆動盤との連結構造を、上記第1実施形態とは異ならせたものである。その他の構成については上記第1実施形態と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0066】
手動ギヤ部品80は本発明の「手動操作部」に相当し、上記第1実施形態の手動回動部品40の連結盤41を、扇形ギヤ板81に置き換えた構造である。扇形ギヤ板81は、手動ギヤ部品80の径方向外側に張り出しており、平面形状が略半円形をなすと共に外周縁に外歯ギヤ81Gを備えている。この手動ギヤ部品80は、ラチェット駆動盤32の扇形ギヤ板33に重ねて配置されている。また、手動ギヤ部品80の回動軸80Jは、駆動盤回動軸32Jと平行かつずらされており、駆動盤回動軸32Jよりもウォームホイール回動軸30Jに近い位置に配置されている。
【0067】
ラチェット駆動盤32に備えた扇形ギヤ板33のうち、手動ギヤ部品80(詳細には、扇形ギヤ板81)との対向面には、径方向外側部分が手動ギヤ部品80側に段差状に突出した円弧状段差部33Cが形成されている。円弧状段差部33Cは、駆動盤回動軸32Jを中心とした円弧状をなしており、扇形ギヤ板33の円弧状外縁部寄り位置に配置されている。円弧状段差部33Cのうち、駆動盤回動軸32J側を向いた段差面には、円弧形内歯ギヤ33Gが形成されており、ここに、手動ギヤ部品80に備えた扇形ギヤ板81の外歯ギヤ81Gが噛合している。これにより、手動ギヤ部品80の回動操作に連動してラチェット駆動盤32が同方向に回動するようになっている。本実施形態の構成によっても、上記第1実施形態と同等の効果を奏する。
【0068】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0069】
(1)上記実施形態では、ドア10に内蔵される本体ユニット21と、ドアトリム19に取り付けられる操作孔金具69とで、電動式ドアラッチ装置20を構成していたが、本体ユニット21だけで電動式ドアラッチ装置20を構成してもよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、手動操作部(手動回動部品40、手動ギヤ部品80)は、ラチェット駆動盤32に連結されていたが、ウォームホイール30に連結してもよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、手動操作部(手動回動部品40、手動ギヤ部品80)と操作孔金具69の可動円盤63とが切り離されていたが、これらを一体部品で構成したり、一体回転可能に連結してもよい。
【0072】
(4)上記実施形態では、手動操作部(手動回動部品40、手動ギヤ部品80)が、複数のモータ駆動力伝達部品の1つ(ラチェット駆動盤32)に連結されていたが、手動操作部を、モータ動力伝達部品(ウォームホイール30、平ギヤ31、ラチェット駆動盤32)の何れにも連結せずに独立して設け、回動操作により、直接、リフトレバー35を押圧するようにしてもよい。このようにすれば、手動操作部の操作時にモータ36の操作抵抗がかからないので、軽い力で回動操作を行うことができる。
【0073】
(5)上記実施形態では、ツール嵌合孔43Bを車両のエンジン始動用のキープレート90と嵌合可能としたが、このキープレート90のみならず、他のキープレート(住宅用の鍵、オートバイ用の鍵等)と嵌合可能にしてもよいことは言うまでもない。また、エンジン始動用のキープレート90とは異なる特殊な断面形状の専用ツールとだけ嵌合可能としてもよい。
【0074】
(6)上記実施形態において、常には可動円盤63の鍵挿入孔63Aを閉塞するシャッターを設けてもよいし、鍵挿入孔63Aに挿抜可能な鍵孔キャップを備えていてもよい。
【0075】
(7)手動操作部(手動回動部品40、手動ギヤ部品80)の回動軸は、ラチェット駆動盤32と同軸上に配置してもよい。
【0076】
(8)ラチェット24とリフトレバー35は別部品で構成してもよいし、一体形成により一部品にしてもよい。また、ラチェット駆動盤32はリフトレバー35を押圧する構成であったが、ラチェット24を直接押圧する構成でもよい。
【0077】
(9)上記実施形態のように、電動式ドアラッチ装置20はヒンジ式のドアに取り付けてもよいし、スライド式のドアに取り付けてもよい。
【0078】
(10)振動等により、固定リング60に対して可動円盤63が意図せず相対的に回動することを防止するために、以下のような構成としてもよい。例えば、図16に示すようにリング本体61の後端面にノッチ(溝)16Bを設ける一方、可動円盤63のフランジ板65に可撓性を持たせると共にノッチ16Bに凹凸係合可能な突起部65Aを形成し、固定リング60に対して可動円盤63が回動する際には、フランジ板65が撓むことで突起部65Aがノッチ16Bの外側に外れるようにしてもよい。これにより、ツールを挿し込んで回動操作を行わない限り、可動円盤63が回動することが無くなり、振動等による鍵挿入孔63とツール嵌合孔43Bとの位置ずれを防止することができる。またツールを挿入した回動操作時に、クリック感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動ドアラッチ装置の平面図
【図2】電動ドアラッチ装置の斜視図
【図3】電動ドアラッチ装置の側面図
【図4】ドア閉止保持状態におけるストライカ係合機構部の正面図
【図5】ドア開放許容状態におけるストライカ係合機構部の正面図
【図6】図4におけるB−B断面図
【図7】ドア閉止保持状態における駆動機構部の正面図
【図8】ドア閉止保持状態とドア開放許容状態との間で切り替わる途中の駆動機構部の正面図
【図9】ドア開放許容状態における駆動機構部の正面図
【図10】図3におけるA−A断面図
【図11】手動回動部品及びラチェット駆動盤の平面図
【図12】手動回動部品及び操作孔金具の側断面図
【図13】操作孔金具を後面側から見た分解斜視図
【図14】変形例に係る手動回動部品及びラチェット駆動盤の平面図
【図15】第2実施形態に係る手動ギヤ部品及びラチェット駆動盤の平面図
【図16】変形例に係る操作孔金具を後面側から見た分解斜視図
【符号の説明】
【0080】
11B 外郭側部壁
13 ストライカ
15 第1操作孔(操作孔)
19 ドアトリム(車内側壁部)
20 電動ドアラッチ装置
21 本体ユニット
23 ラッチ
24 ラチェット
29 ストライカ係合機構部
30 ウォームホイール(モータ動力伝達部品)
31 平ギヤ(モータ動力伝達部品)
32 ラチェット駆動盤(モータ動力伝達部品)
32J 駆動盤回動軸(扇形ギヤの回動軸)
33 扇形ギヤ板
33A 突部
33B ガイド溝
33C 円弧状段差部
33G 円弧形内歯ギヤ
34 リリースレバー
35 リフトレバー(回動突部)
36 モータ
39 駆動機構部
40 手動回動部品(手動操作部)
40A 突部
41A ガイド溝
43B ツール嵌合孔
60 固定リング
63 可動円盤
63A 鍵挿入孔
69 操作孔金具
80 手動ギヤ部品(手動操作部)
81G 外歯ギヤ
90 キープレート(車両の鍵、所定のツール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに組み付けられ、前記ドアを閉止位置に保持したドア閉止保持状態と、前記ドアを開放可能としたドア開放許容状態とに電気駆動にて切り替え可能であると共に、電気駆動不能な時に、手動にて回動操作されて前記ドア閉止保持状態から前記ドア開放許容状態に切り替えるための手動操作部を備えた電動式ドアラッチ装置において、
前記手動操作部は、前記ドアの内部に配置されると共に、前記手動操作部のうち前記ドアにおける車内側壁部との対向面にツール嵌合孔が形成され、
所定のツールを、前記ドアの前記車内側壁部に貫通形成された操作孔を介して前記ツール嵌合孔に嵌合することで、前記手動操作部を回動操作可能としたことを特徴とする電動式ドアラッチ装置。
【請求項2】
車両本体に備えたストライカに係合可能に回動するラッチと、
前記ストライカとの係合を解除する方向への前記ラッチの回動を禁止するラッチ係止位置と、前記ストライカとの係合を解除する方向への前記ラッチの回動を許容するラッチ係止解除位置との間で回動しかつ前記ラッチ係止位置に付勢されたラチェットとを備え、
前記ドアの閉止位置で前記ラチェットが前記ラッチ係止位置に位置して前記ドア閉止保持状態になりかつ、そのラチェットを前記ラッチ係止解除位置に回動して前記ドア開放許容状態になるように構成されると共に、
前記電気駆動を行うためのモータと、
そのモータの動力を前記ラチェットに伝達するための複数のモータ動力伝達部品と、
前記モータ動力伝達部品の1つとして回動可能に設けられ、前記ラチェットが有する回動突部を一方側から押圧して回動させ、前記ラチェットを前記ラッチ係止位置から前記ラッチ係止解除位置に回動させるためのラチェット駆動盤とを備え、
前記手動操作部は、前記複数のモータ動力伝達部品の何れかに連結又は一体に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電動式ドアラッチ装置。
【請求項3】
前記ラチェット駆動盤は、他の前記モータ動力伝達部品に噛合した扇形ギヤを有し、
前記手動操作部は、前記扇形ギヤに対してその板厚方向で重ねて配置され、前記扇形ギヤの回動軸に対して平行かつずれた回動軸を中心に回転可能な手動回動部品で構成され、
前記手動回動部品及び前記ラチェット駆動盤の両部品の互いの対向面には、互いに凹凸係合した突部とガイド溝とからなる連結機構が形成され、
前記ガイド溝は、一方の部品の対向面においてその部品の回動半径方向に延び、前記突部は、他方の部品の対向面に形成されて、その部品の回動中心から離れた位置に配置され、
前記連結機構を介して前記手動回動部品と前記扇形ギヤとが連動して回動するように構成されたことを特徴とする請求項2に記載の電動式ドアラッチ装置。
【請求項4】
前記ラチェット駆動盤には、他の前記モータ動力伝達部品に噛合した扇形ギヤと、前記扇形ギヤのうち円弧状外縁部寄り位置に形成された円弧状段差部と、前記円弧状段差部に形成された円弧形内歯ギヤとが備えられ、
前記手動操作部は、前記扇形ギヤに対してその板厚方向で重ねて配置され、前記扇形ギヤの回動軸に対して平行かつずれた回動軸を中心に回転可能であると共に、前記円弧形内歯ギヤに噛合した外歯ギヤを有する手動ギヤ部品で構成されたことを特徴とする請求項2に記載の電動式ドアラッチ装置。
【請求項5】
前記手動操作部は、前記車両の鍵を前記所定のツールとして挿入して回動操作可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電動式ドアラッチ装置。
【請求項6】
前記ドアの前記操作孔の縁部に固定された固定リングと、前記固定リングの内側に回転可能に組み付けられかつ前記車両の鍵を挿入可能な長方形の鍵挿入孔を有した可動円盤とを備えたことを特徴とする請求項5に記載の電動式ドアラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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