説明

電動式パワーステアリングのフレキシブルカップリング

【課題】チルトベアリングを構成する内輪がウォームシャフトの軸方向に移動できない構造を有するように改善して騒音発生を予防することができ、さらに商品に対する消費者の信頼を高められる電動式パワーステアリングのフレキシブルカップリングを提供する。
【解決手段】モータ軸の先端に嵌合すると同時に、カップリングケースの中に挿入されて前記カップリングケースと一体に結合され回転するボディー部と、前記ボディー部の両側面から一体に突出形成され、各々の先端が前記カップリングケースとウォームシャフトのフランジに支持される複数の弾性突起とを含んでなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式パワーステアリングに関し、より詳細には、チルトベアリングを構成する内輪がウォームシャフトの軸方向に移動することを防ぐことにより、ステアリングホイールの操舵時に発生する騒音およびラットルノイズの発生を予防できる電動式パワーステアリングに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
一般的に、パワーステアリングはオイルの油圧を用いる方式と電気モータの動力を用いる方式がある。
前記油圧式は、油圧ポンプがエンジンの力で流体をポンピングして油圧を形成し、運転者がハンドルを回す時に操向する方向に油圧を送ってハンドリングが軽くなるようにするものであり、電動式パワーステアリング(motor driven power steering;以下、MDPSという)は、電気モータを用いて操舵力を向上させるものである。
【0003】
前記MDPSは走行条件に応じて電気モータが自動的に制御機能を発揮するようになり、これにより、前記油圧式パワーステアリングに比べ、より向上した操舵性能および操舵感を有する。
一方、前記MDPSはステアリングシャフトが貫通して結合するウォームホイールおよび前記ウォームホイールと噛合するウォームシャフトを備え、また、前記ウォームホイールと前記ウォームシャフトの噛合を最適化するようにチルトベアリングを含んでなっている構成である。
【0004】
しかし、上記のような従来のMDPSは、停車状態でステアリングホイールの操舵後リリース時に鈍い騒音が発生し、また、車両が険しい道や凹凸路を走行するに伴い、路面からの大きい反力がステアリングシャフトに伝えられる時に、前記ウォームホイールと前記ウォームシャフトとの間の離隔発生によりラットルノイズ(rattle noise)が発生する問題点がある。
上記のような騒音は上記のチルトベアリングを構成する内輪が前記ウォームシャフトの軸方向に移動することによって発生するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の電動式パワーステアリングにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、チルトベアリングを構成する内輪がウォームシャフトの軸方向に移動できない構造を有するように改善して騒音発生を予防することができ、さらに、商品に対する消費者の信頼を高められる電動式パワーステアリングのフレキシブルカップリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明による電動式パワーステアリングのフレキシブルカップリングは、モータ軸の先端に嵌合すると同時に、カップリングケースの中に挿入されて前記カップリングケースと一体に結合され回転するボディー部と、前記ボディー部の両側面から一体に突出形成され、各々の先端が前記カップリングケースとウォームシャフトのフランジに支持される複数の弾性突起とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
チルトベアリングを構成する内輪が前記ウォームシャフトの軸方向に移動することによって騒音が発生する従来の方式にかわって、フレキシブルカップリングに備えられた弾性突起により、ウォームシャフトおよびチルトベアリングの内輪が軸の長さ方向に移動することを防ぐことにより、ステアリングホイールの操舵後リリースするときや路面からの大きい反力がステアリングシャフトに伝えられる時に発生する激しい騒音を予防できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明に係る電動式パワーステアリングを実施するための最良の形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態に係る電動式パワーステアリング(MDPS)は、図1に示すように、ステアリングシャフト1を貫通して一体に結合されたウォームホイール11と、前記ウォームホイール11に噛合して結合されたウォームシャフト12と、前記ウォームシャフト12の両端に一体に結合されたチルトベアリング13およびウォームシャフトベアリング14と、前記チルトベアリング13を貫通した前記ウォームシャフト12の一端に結合され、電子制御ユニット(ECU)の制御によって駆動し前記ウォームシャフト12に動力を伝達するモータ15と、一端は前記ウォームホイール11を囲む部位のハウジング16にボルト17によって固定結合され、L字形に折り曲げられた他端は前記ハウジング16を貫通し、その端部が前記ウォームシャフトベアリング14を加圧するように設けられたリーフスプリング18とを含んでなっている。
【0009】
ここで、前記リーフスプリング18は自らの弾性力で前記ウォームシャフトベアリング14を前記ウォームホイール11側に加圧し、それにより、前記ウォームホイール11に対する前記ウォームシャフト12の上下方向の離隔を無くすようになっており、そのために、前記ウォームシャフト12は前記リーフスプリング18の加圧力により、軸方向の中心線C1から上下方向にチルト動作(C2、C3)が可能であるべきであり、前記ウォームシャフト12のチルト動作を可能にするものが前記チルトベアリング13である。
【0010】
要するに、前記チルトベアリング13は、図2に示すように、前記ウォームシャフト12の外周面に圧入結合される内輪13aと、前記ハウジング16に固定結合される外輪13b、および前記内/外輪(13a、13b)のベアリング溝(13c、13d)の中に設けられ、前記内/外輪(13a、13b)の相対回転を可能にする複数のボールベアリング13eからなっている。
ここで、前記内/外輪(13a、13b)に形成されたベアリング溝(13c、13d)が前記ボールベアリング13eより大きい楕円形に形成されることにより、前記チルトベアリング13が前記ウォームシャフト12のチルト動作を可能にする。
【0011】
一方、前記MDPSにおいて、前記ウォームシャフト12と前記チルトベアリング13および前記モータ15の結合構造については図3の拡大断面図を参照してより詳細に説明する。
前記モータ15はモータ軸15aとモータケース15bとを含んで構成され、前記モータ軸15aにはカップリングケース21がセレーション(serration)を介して結合され、前記モータ軸15aと一体に回転する。
前記モータケース15bは前記MDPSのハウジング16に結合された構造である。
【0012】
前記カップリングケース21の前記ウォームシャフト12に向かう面にはケース溝21aが形成され、前記ケース溝21aにはフレキシブルカップリング22が設けられる。
【0013】
前記フレキシブルカップリング22は、前記モータ軸15aの先端に嵌合されると同時に、前記カップリングケース21および前記ウォームシャフト12と雄雌結合し、前記カップリングケース21の回転動力を前記ウォームシャフト12に伝達する役割をする。
【0014】
前記フレキシブルカップリング22の形状は、図4により詳細に示したように、前記モータ軸15aとの結合のために中心部にモータ軸孔22aが形成されたボディー部22bと、前記ボディー部22bから放射状に形成された複数の突出部22cを備えた構成であり、また、突出部22cごとに両側面に弾性突起22dが一体に突出形成された構造である。
【0015】
一例として、前記突出部22cは図示したように8個であり、前記突出部22cの間の溝も8個であって、前記カップリングケース21には前記突出部22cの間の溝に一間ずつ飛ばして挿入される4個のケース突起(図示せず)が備えられ、前記ウォームシャフト12には前記ケース突起が挿入されていない残りの4個の溝に挿入される4個のシャフト突起(図示せず)が備えられている。
【0016】
よって、前記カップリングケース21と前記ウォームシャフト12は前記フレキシブルカップリング22を介して結合され、前記モータ軸15aの回転動力は前記カップリングケース21と前記フレキシブルカップリング22を介して前記ウォームシャフト12に伝達可能となる。
【0017】
前記モータ軸15aに前記フレキシブルカップリング22が嵌合した後、前記フレキシブルカップリング22を貫通した前記モータ軸15aの先端には前記ウォームシャフト12が嵌合する。
【0018】
前記ウォームシャフト12には軸の長さ方向にシャフト溝12aが形成され、前記シャフト溝12aに前記モータ軸15aが挿入され、前記モータ軸15aが挿入される一端には半径方向に拡張されたフランジ12bが備えられる。
よって、前記ウォームシャフト12に前記モータ軸15aが挿入されると、前記フレキシブルカップリング22の弾性突起22dは前記カップリングケース21のケース溝21aおよび前記ウォームシャフト12のフランジ12bに各々支持されるように設けられる。
【0019】
前記ウォームシャフト12のシャフト溝12aには複数の操作によって切開されたブッシュ23が前記モータ軸15aに嵌められ設けられ、前記ブッシュ23はスプリング部材24によって前記モータ軸15a方向に弾性力の加圧を受けるように設けられる。
【0020】
前記ブッシュ23は前記スプリング部材24の弾性力によって前記ウォームシャフト12のフランジ12bに支持される構造であり、前記ブッシュ23が前記スプリング部材24の弾性力によって前記ウォームシャフト12のフランジ12bに支持されると、前記ウォームシャフト12も前記フレキシブルカップリング22側に移動した状態となり、これにより、前記ウォームシャフト12は軸の長さ方向に前記ウォームホイール11との係合に離隔が生じなくなる。
【0021】
前記ウォームシャフト12の外側周縁面には前記チルトベアリング13の内輪13aが結合され、前記内輪13aの一側面は前記ウォームシャフト12のフランジ12bに支持されるように設けられる。
よって、本発明の実施形態はフレキシブルカップリング22に形成された弾性突起22dが前記ウォームシャフト12のフランジ12bを加圧する構造であり、これにより、前記フランジ12bは前記チルトベアリング13の内輪13aを前記ウォームシャフト12の軸の長さ方向に加圧する構造となり、前記内輪13aは前記ウォームシャフト12の軸の長さ方向に移動できない状態となる。
【0022】
このように、前記チルトベアリング13を構成する内輪13aが前記ウォームシャフト12の軸の長さ方向に移動できなくなると、ステアリングホイールの操舵後リリース時における鈍い騒音の発生を予防することができる。
つまり、ステアリングホイールの操舵後リリース時にウォームシャフト12はウォームホイール11の回転によって軸の長さ方向に動こうとする力を有し、この時、フレキシブルカップリング22の弾性突起22dがウォームシャフト12を軸の長さ方向に支持することによって前記ウォームシャフト12は軸の長さ方向に移動することができず、その結果前記ウォームシャフト12に結合された前記チルトベアリング13の内輪13aも前記ウォームシャフト12の軸の長さ方向に移動することができず、ステアリングホイールの操舵後リリース時における鈍い騒音の発生を予防することができる。
【0023】
また、本発明の実施形態はラットルノイズ(rattle noise)の発生も予防することができる。
すなわち、車両が険しい道や凹凸路を走行すると、路面からの大きい反力がステアリングシャフトに伝えられ、これにより、ウォームホイールが回転し、且つウォームシャフトは軸の長さ方向に動こうとする力を有する。
【0024】
この時にも、フレキシブルカップリング22の弾性突起22dがウォームシャフト12を軸の長さ方向に支持することにより、チルトベアリング13の内輪13aは前記ウォームシャフト12の軸の長さ方向に移動することができず、その結果ラットルノイズ(rattle noise)の発生も効果的に予防することができる。
【0025】
本発明の実施形態のような弾性突起22dがフレキシブルカップリング22に備えられていなければ、ウォームシャフト12を軸の長さ方向に支持することができず、それにより、ステアリングホイールの操舵後リリース時や路面からの大きい反力がステアリングシャフトに伝えられる時に、チルトベアリング13の内輪13aがウォームシャフト12の軸の長さ方向に移動しつつ激しい騒音を発生する。
よって、本発明の実施形態は、MDPSの構成において騒音発生を予防できることによって室内をより静かにすることができ、さらに商品に対する消費者の信頼を一層高められる長所がある。
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】一般的な電動式パワーステアリングの構成を説明するための図である。
【図2】電動式パワーステアリングを構成するチルトベアリングの断面図である。
【図3】本発明に係るフレキシブルカップリングを介してウォームシャフトが設けられた状態を示すための断面図である。
【図4】本発明に係るフレキシブルカップリングの斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
11:ウォームホイール
12:ウォームシャフト
12a:シャフト溝
12b:フランジ
13:チルトベアリング
14:ウォームシャフトベアリング
15:モータ
15a:モータ軸
15b:モータケース
16:ハウジング
17:ボルト
18:リーフスプリング
21:カップリングケース
22:フレキシブルカップリング
22a:モータ軸孔
22b:ボディー部
22c:突出部
22d:弾性突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸の先端に嵌合すると同時に、カップリングケースの中に挿入されて前記カップリングケースと一体に結合され回転するボディー部と、
前記ボディー部の両側面から一体に突出形成され、各々の先端が前記カップリングケースとウォームシャフトのフランジに支持される複数の弾性突起と、
を有することを特徴とする電動式パワーステアリングのフレキシブルカップリング。
【請求項2】
前記弾性突起は、前記ボディー部から放射状に形成された複数の突出部ごとに両側面に一体に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電動式パワーステアリングのフレキシブルカップリング。
【請求項3】
前記弾性突起は、ポリウレタン(polyurethane)からなることを特徴とする、請求項1に記載の電動式パワーステアリングのフレキシブルカップリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−280191(P2009−280191A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296280(P2008−296280)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】