電動車椅子のバッテリー接続構造
【課題】 車椅子の充電中での走行を防止し、バッテリーの破損防止を図る。また、バッテリーの内部構造を簡単化し、コストダウンできるバッテリーとする。
【解決手段】 電動車椅子1の後方に設けられ、電動車椅子1を駆動する電源を供給する電源コネクタ30が差し込まれる電源用差込口11と、商用電源から電気が供給され充電が成される充電コネクタ24が差し込まれる充電用差込口12とを有するバッテリー10を備えた電動車椅子1のバッテリー接続構造において、
電源コネクタ30が電源用差込口11に差し込まれている状態で、充電用差込口12が電源コネクタ30と一体となった遮蔽部31,32にて少なくとも一部が覆われる構成とした。
【解決手段】 電動車椅子1の後方に設けられ、電動車椅子1を駆動する電源を供給する電源コネクタ30が差し込まれる電源用差込口11と、商用電源から電気が供給され充電が成される充電コネクタ24が差し込まれる充電用差込口12とを有するバッテリー10を備えた電動車椅子1のバッテリー接続構造において、
電源コネクタ30が電源用差込口11に差し込まれている状態で、充電用差込口12が電源コネクタ30と一体となった遮蔽部31,32にて少なくとも一部が覆われる構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子のバッテリー接続構造に関するものであり、特に、電動車椅子にバッテリーを搭載した状態で充電が可能な車椅子のバッテリー接続構造に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、足の不自由な高齢者等が使用する従来の電動車椅子は、電動車椅子にバッテリーを接続した状態で充電コネクタの接続が可能という構成が知られている(非特許文献1、特許文献1)。この様な構成のものは、電動車椅子にバッテリーが搭載されており、数時間以上の外出で移動する前には必ず充電が必要となる。
【0003】
通常、バッテリーは、着座面に対して後ろに設けられているため、充電作業において、体の不自由な着座者が車椅子から一旦降りて、近くにある椅子やベッド等に座り、電動車椅子を近くに近づけてシートバックの後ろに設けられたバッテリー接続を充電に切り替える動作を行わなければならず、体の不自由な着座者にとっては不便な操作となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−291111号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DP-45/60 デイリーパル(株式会社 今仙技術研究所)のカタログ http://www.imasengiken.co.jp/EMC/dailypal.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電動車椅子ではバッテリーに備わっている電源コネクタと充電コネクタの同時挿しができてしまうと、充電時にも電動車椅子は走行できる状態が作れてしまう。
【0007】
一方、充電を着座者本人が自分で行う場合には、電動車椅子に座ったままの状態で後ろを振り返ってバッテリーの充電用差込口を手探りで捜し、充電用コネクタを手でもってバッテリーの充電用差込口に接続する動作が必要となる。バッテリーを充電する場合にはしばらく時間を要するので、通常では夜就寝する前に行うものであるが、充電中の状態で寝る前に別の用事を思い出し、電動車椅子に座った状態の着座者はバッテリーを充電中であるのを忘れ、電動車椅子を動作させてしまうことが起こりうる。
【0008】
これとは別に、着座者は座ったままの状態で第三者に充電を依頼するとき、あるいは、車椅子で外出をして帰宅した際に第三者が決まってバッテリーへの充電を行う場合には、第三者が充電コードを充電コネクタに接続した状態になり、第三者がその場所を離れてしまうと、着座者にとっては通常の電動車椅子の操作が可能となり、充電時にも後ろの接続をまったく気にせずに走行できてしまう。着座者が充電中であることに気づかず操作を行いながら走行すると充電用コードが引っ張られ、充電コードが延びきった状態になる。更に充電コードが引っ張られると充電コードが接続されたバッテリーの充電コネクタに力が作用し、充電コネクタが差込口より容易に抜ける方向とは異なる方向の力が作用すると、充電コネクタの充電用差込口のあたりに損傷を受けてしまう恐れがある。
【0009】
例えば、バッテリーに対して電源コネクタと充電コネクタが接続される場所が同じ差込口で接続可能な構成にすると、バッテリー内部にバッテリーに接続される信号の状態から、走行可能状態であるのか充電状態であるのかを判別して電気回路を切り替える電気回路が必要となり、その結果、内部構造が複雑になり、コストアップしてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、電動車椅子の電源の供給を行う電源コネクタとバッテリーの充電を行う充電コネクタのバッテリーへの同時挿しが簡単な構成で行えないバッテリー接続構造とすること、低コスト化が可能なバッテリー接続構造とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために講じた手段は、
電動車椅子に設けられ、異なるコネクタがそれぞれ差し込まれる差込口を有するバッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記コネクタの一方が前記差込口の一方に差し込まれている状態で、前記差込口の他方が前記一方のコネクタと一体となった遮蔽部にて覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造とした。
【0012】
この場合、前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子の後方に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態で、前記充電用差込口が前記電源コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造とした。
【0013】
また、前記遮蔽部は、前記バッテリーから前記電動車椅子に対して電源を供給するケーブルを支持する部位であると良い。
【0014】
また、前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態では、前記電源コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記充電用差込口が設けられていると良い。
【0015】
また、前記遮蔽部は、前記充電用差込口を塞ぐ突起となっていると良い。
【0016】
更に、
前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子の後方に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態で、前記電源用差込口が前記充電コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造とした。
【0017】
また、前記遮蔽部は、商用電源から前記バッテリーに電気が供給されるケーブルを支持する部位であると良い。
【0018】
また、前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態では、前記充電コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記電源用差込口が設けられていると良い。
【0019】
また、前記遮蔽部は、前記電源用差込口を塞ぐ突起となっていると良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電動車椅子の後方に電源コネクタが電源用差込口に差し込まれている状態では、バッテリーに充電を行う充電用差込口が電動車椅子に電源を供給する電源コネクタと一体となった遮蔽部(例えば、電源コネクタと一体に設けられた突起部、電源コネクタに接続され電動車椅子に電源を供給するケーブル)にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、電源コネクタと一体となった遮蔽部にて充電用差込口への充電コネクタの接続を塞ぐ構成となり、また、充電コネクタが充電用差込口に差し込まれている状態では、電動車椅子に電源を供給する電源用差込口がバッテリーに充電を行う充電コネクタと一体となった遮蔽部(例えば、充電コネクタと一体に設けられた突起部、充電コネクタに接続され商用電源からバッテリーに電気を供給するケーブル)にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、充電コネクタと一体となった遮蔽部にて電源用差込口への電源コネクタの接続を塞ぐ構成となり、電源コネクタと充電コネクタのバッテリーへの同時挿しができない。
【0021】
この構成により、本発明の電動車椅子では、充電中の走行ができないため充電コードによって、充電コードが接続される充電コネクタとバッテリーの接続部位の破損が防止できる。
【0022】
また、電源コネクタと充電コネクタの同時挿しができない構造を電源コネクタまたは充電コネクタに接続されるケーブルにて部品点数を増加させることなく簡単な構成で実現できる。このため、バッテリー内部には走行可能状態と充電状態との判別を切り替える電気回路は必要がなく、低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態における電動車椅子の側面図である。
【図2】図1に示す電動車椅子の背面図である。
【図3】図1に示す電動車椅子のバッテリーに対して充電器で充電を行う場合の説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるバッテリーの内部を示す電気回路図である。
【図5】本発明の実施形態における電源コネクタの端子側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施形態におけるバッテリーの差込口に対して電源コネクタを接続する場合の電源コネクタの接続前および接続後の状態を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態におけるバッテリーの差込口側から見た側面図であり、(A)は電源コネクタが電源用差込口に接続されていない状態を示し、(B)は電源コネクタが電源用差込口に接続されている状態を示した側面図である。
【図8】本発明の実施形態におけるバッテリーポケット内に配設されるバッテリーの接続状態を説明するために接続構造の部位を抜き出した説明図であり、(A)は電源コネクタが接続された状態を示し、(B)は充電コネクタが接続された状態を示した正面図である。
【図9】図8に示す接続状態の斜視図を示し、(A)は電源コネクタが接続された状態を示し、(B)は充電コネクタが接続された状態を示した斜視図である。
【図10】本発明の別の実施形態におけるバッテリーポケット内に配設されるバッテリーの充電コネクタが接続された状態を示した斜視図である。
【図11】本発明の別の実施形態におけるバッテリーポケット内に配設されるバッテリーの電源コネクタが接続された状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について、以下に図面を参照して説明する。
【0025】
電動車椅子(以下、単に車椅子と称す)1は、体の自由がきかない人が乗るものであり、図1および図2に示すように、骨格となる金属製のフレーム2に対して着座者が着座できるよう布またはナイロン製のシート3が設けられ、着座者が着座する着座面4の前方の左右には転舵可能な小さな車輪5が設けられている。また、車椅子1には、着座面4の後方の左右に2つのモータ8,9が設けられており、モータ8,9により駆動可能な車輪6が左右両側に設けられている。
【0026】
車椅子使用時にはシート3の着座面4に座り、足をフットレスト7において右手のアームレスト18の前方にある操作部19となるジョイステック(操作レバー)を操作することにより、モータ8,9の駆動力によって移動が可能となっている。また、操作部19が設けられる前方の操作面25には、車椅子1の電動駆動を行う電源スイッチや車椅子1の走行速度(例えば、6Km/h以下)を段階的に調整することができる操作ボタン類)26およびバッテリー10の充電パワーの残存を示すイジケータ等が設けられている。
【0027】
着座者は電動で車椅子1を動作させた場合には、着座面4の横に設けられている先端が球状を成す切替レバーを操作することによりモータ8,9と一体で設けられているクラッチ機構をつなげて電動モードとした状態とする。そして、この状態で操作部19を右手の指先(例えば、親指、人指し指、中指等)で二次元的に操作すると、操作部19の下のハウジング内に設けられる図示しないコントローラが操作部19からの入力信号を受けて、左右のモータ8,9の回転を独立に制御することにより、車椅子1は前後左右自由に走行することができる。
【0028】
一方、第三者により介護等を行うには、着座面4の横に設けられたレバーを操作することにより上記したクラッチ機構を切り離して手動で動作させることが可能な手動モードにする。そして、第三者はシートバック40の後ろに設けられた左右一対のグリップ部50をつかみ、車椅子1を第三者の手動により動作させることにより移動させることが可能である。また、着座者本人が車椅子1を移動させたい場合には、上記と同様に着座面4の横のレバーを操作して手動モードにした状態で、車輪6の外側に設けられているリム61を回転操作することにより、車椅子1を自力で移動させることができ、車椅子1の移動にブレーキを作用させたい場合には操作部19の下方に設けられたブレーキレバー41を操作することにより、ブレーキレバー41を右手で回動させる(例えば、手前に引く)ことにより、車輪6に対してブレーキを作用させ、それとは反対側に操作することによりブレーキを解除することができる。
【0029】
また、車椅子1の車輪6の後方には後方に突出し後方にローラーの付いた転倒防止バー45がフレーム2の下方より一体で、左右一対となって設けられている。この転倒防止バー45により、車椅子1は走行中、路面にある段差を乗り越える場合であっても、車椅子1が後方に転倒しない構成となっている。
【0030】
車椅子1には着座面4の後方には着座者がもたれかかることが可能なシートバック40が設けられている。このシートバック40の背面には車椅子1に電源を供給するバッテリー10が設けられている。バッテリー10は、図2に示すシートバック40の右側にバッテリーポケット46を有し、バッテリーポケット46の中に収納され、バッテリーポケット46の下側に開口16を有し、その開口16から後述する電源コネクタ30および充電コネクタ24が容易に抜き差しできる構成となっている。上方にカバーのついたバッテリーポケット46は袋状となっており、上方にカバーの一端をめくり上げ、収納後に布製のバッテリーカバー47をバッテリーポケット46の表面に貼付部材(例えば、貼り付けおよび貼り付け後に剥がすことが可能なテープ部材)により貼り付けることによりバッテリー10は保護される。また、本実施形態においては、図3に示すシートバック40の右側にバッテリーポケット46を有しているが、例えば、左側にもう一つの右側と同様なバッテリーポケット46およびバッテリーカバー47を設けることが可能である。このようにシートバック40の後方の面にバッテリーポケット46を設けることにより、一方のバッテリーポケット46には、通常使用するバッテリー10を収納し、他方のバッテリーポケットにはバッテリー容量がなくなったときに使用する予備用の充電されたバッテリー10を収納したり、移動時に必要となる小物等を収納することができる。この際、バッテリー10は電源用差込口11が下方になるようバッテリーポケット内に収容されるが、これに限定されるものではなく、例えば、防水性を確保できるようなバッテリーカバー47にすれば、バッテリー10の差込口側が上方になるよう収納されても良い。
【0031】
車椅子1は図3に示すように、バッテリー10による電力によって駆動可能となっており、バッテリー10は充電器20により充電可能となっている。車椅子1に充電を行う場合、充電器20の充電コード23の先に設けられた充電コネクタ24を、車椅子1にバッテリー10が搭載されたままの状態で、走行を行う電源コネクタ30を電源用差込口11より外して、バッテリー10の充電用差込口12に差し込んだ状態で、一方の充電コード21の先に設けられた充電プラグ22を家庭用コンセント(AC100V)29に差し込んで、充電器20でACからDC変換して直流電圧30Vで充電が成されるようになっている。この場合、バッテリー10のフル充電には、数時間(例えば、4〜5時間)を要する。充電作業において、本実施形態では電源コネクタ30を電源用差込口11から外さない限り、充電コネクタ24を充電用差込口12に差し込むことはできない構成となっている。
【0032】
バッテリー10は樹脂(例えば、ポリカ)による筐体から成り、内部構造は、図4に示すようにNiMH(ニッケル メタル ハイドライド)電池が直列で配設されており、車両側につながる+端子、−端子に接続されている。また、バッテリー10は直接接続された電池51,52の途中に温度ヒューズ54が設けられ、この温度ヒューズ54は80度程の異常を示す温度になると自動的に切断される。また、電源コネクタ側の+端子には直列で電流ヒューズ53が電池51との間に設けられており、このラインに所定電流(例えば、40A)以上の異常を示す電流が瞬時でも流れると電流ヒューズ53が自動的に切断され、このラインの電流が流れなくなる。また、充電中の異常を検出するために充電コネクタと電流ヒューズ53との間に温度ブレーカー55が設けられている。更には、バッテリー10の内部の温度を検出できるようにサーミスタ56が設けられており、サーミスタ56からの信号は電源コネクタ側のTh端子に接続されるようになっており、Th端子ではバッテリー内部の温度が上昇すると抵抗値がそれに伴い減少する。図4に示す上3つの端子は充電コネクタ24に接続されて、バッテリー10に電気を供給する充電用に使用され、一方、下3つの端子は電源コネクタ30に接続されて、車椅子1を駆動する電源用に使用される。
【0033】
次に、電源コネクタ30について、図5を参照して説明する。電源コネクタ30はポリカ樹脂に形成されており、一面に少なくとも2つの端子(+端子、−端子)を有し、一方の側(図1に示す上方)にリリースレバー33を備え、リリースレバー33とは反対の面(図5の下方の面)にはバッテリー10への嵌着時に電源コネクタ30をリリースレバー33の有する爪部と両側でバッテリー10に対して係止する係止部を備える。また、端子の横方向には、操作部19の下方のボックス内に設けられる図示しないコントローラおよびコントローラからの出力により駆動されるモータ8,9に接続され、車椅子1に電源を供給するケーブル32が電源コネクタ30から外れないようにケーブル32の動きを規制し支持する突起部31が、電源コネクタ30の側面に一体で形成されている。この突起部31とケーブル32とが後述する充電用差込口12を覆う遮蔽部となる。このリリースレバー33はバッテリー10の電源用差込口11に嵌着した場合、電源コネクタ30が外れないようにすることができ、接続部の防水性を確保できるようになっている。電源コネクタ30を外す場合にはリリースレバー33の自由端を指で押して操作することにより爪部の係合を解除し、バッテリー30の電源用差込口11から電源コネクタ30を外すことが可能である。そのため、体の自由がきかない人にも片手の指の操作で取り外しが容易な構造になっている。図6は電源コネクタ30をバッテリー10の電源用差込口11に差し込む前の状態から差し込んで嵌合させた状態を示した説明図である。この場合、突起部31およびケーブル32の一部(突起部31との接続される周囲部分)がバッテリー10に設けられた充電用差込口12を投影面で塞ぐ状態にある。このような構成にすることにより、バッテリー10に対して電源コネクタ30と充電コネクタ24との同時接続を、接続に関与しない部品を追加することなく安価で簡単な構成により防止することができる。
【0034】
一方、バッテリー10の側面(図1では下側)15には2つの差込口11,12が設けられており、1つは電源コネクタ30が接続される電源用差込口11となっており、ここには4つの端子(図7(A)において左側から−端子、Th端子、空き端子、+端子)13が形成されていると共に、各端子間にはショートを防止する3つの隔壁14が立設され、電源コネクタ30を電源用差込口11に差し込むことによりバッテリー10との電気的接続が成され、車椅子1のコントローラおよびモータ8,9に電力が供給される。図7の(A)が電源コネクタ30を差し込む前の状態を示し、(B)が電源コネクタ30を差し込んだ後の状態を示す。この(B)の状態では、充電用差込口12の開口が突起部31およびケーブル32の一部により塞がれるようにしている。つまり、電源コネクタ30が電源用差込口11に差し込まれている状態では、電源コネクタ30とケーブル32の少なくとも一方の投影面に充電用差込口12が設けられている。
【0035】
図8の(A)はバッテリー10との接続関係を示す説明図であり、バッテリー10に電源コネクタ30が接続された状態、(B)は電源コネクタ30を取り外し充電コネクタ24がバッテリー10に接続された状態を示す。本実施形態では電源コネクタ30と充電コネクタ24の同時接続は行えず、そのいずれかのコネクタ30,24のみ接続できる構成となっている。図9は、図8の(A)、(B)の斜視図である。
【0036】
本実施形態の車椅子1のバッテリー接続構造によれば、電源コネクタ30が電源用差込口11に差し込まれている状態で、充電用差込口12が電源コネクタ30に設けられた遮蔽部31,32にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、充電中には電源コネクタ30は外されるので、車椅子1は走行することができない。このため、従来のように充電中に走行が可能となって、着座者が充電中であることに気が付かない状態で走行した場合に、充電ケーブルが引っ張られ、充電コネクタとバッテリーとが接続される充電用差込口のあたりが損傷を受けることが確実に防止することができる。
【0037】
遮蔽部は、バッテリー10から車椅子1に対して電源を供給するケーブル32を支持する部位で行うので、部品点数を増加させることなく低コストで走行可能状態と充電状態とを同時につくらない構成とすることが可能である。
【0038】
この場合、差込口を2つに分離しているので、バッテリー内部で現在走行状態であるのか充電状態であるのかといった判別回路または切替回路は必要なく安価で簡単な構成とすることができる。
【0039】
次に、別の実施形態を示す。
【0040】
車椅子1に充電を行う場合、車椅子1にバッテリー10が搭載された状態で、電源コネクタ230が電源用差込口11より外され、充電コネクタ224がバッテリー10の充電用差込口12に差し込まれる。
【0041】
図10は、充電コネクタ224をバッテリー10の充電用差込口12に差し込んで嵌合させた状態を示した説明図である。この場合、充電コネクタ224と一体のケーブル242を支持する突起部241およびケーブル242の一部(突起部241との接続される周囲部分)がバッテリー10に設けられた電源用差込口11を投影面で塞ぐ状態にある。このような構成にすることにより、バッテリー10に対して電源コネクタ230と充電コネクタ224との同時接続を、接続に関与しない部品を追加することなく安価で簡単な構成により防止することができる。
【0042】
図11は、充電コネクタ224を取り外し電源コネクタ230がバッテリー10に接続された状態を示す。本実施形態では電源コネクタ230と充電コネクタ224の同時接続は行えず、いずれかのみ接続できる構成となっている。
【0043】
本実施形態の車椅子1のバッテリー接続構造によれば、充電コネクタ224が充電用差込口12に差し込まれている状態で、電源用差込口11が充電コネクタ224に設けられた遮蔽部241,242にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、充電中には電源コネクタ230は外されるので、車椅子1は走行することができない。このため、従来のように充電中に走行が可能となって、着座者が充電中であることに気が付かない状態で走行した場合に、充電ケーブルが引っ張られ、充電コネクタとバッテリーとが接続される充電用差込口のあたりが損傷を受けることが確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電動車椅子(車椅子)
10 バッテリー
11 電源用差込口(差込口)
12 充電用差込口(差込口)
15 側面
20 充電器
24 充電コネクタ(コネクタ)
29 家庭用コンセント(商用電源)
30 電源コネクタ(コネクタ)
31 突起部(遮蔽部)
32 ケーブル(遮蔽部)
224 充電コネクタ(コネクタ)
230 電源コネクタ(コネクタ)
241 突起部(遮蔽部)
242 ケーブル(遮蔽部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子のバッテリー接続構造に関するものであり、特に、電動車椅子にバッテリーを搭載した状態で充電が可能な車椅子のバッテリー接続構造に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、足の不自由な高齢者等が使用する従来の電動車椅子は、電動車椅子にバッテリーを接続した状態で充電コネクタの接続が可能という構成が知られている(非特許文献1、特許文献1)。この様な構成のものは、電動車椅子にバッテリーが搭載されており、数時間以上の外出で移動する前には必ず充電が必要となる。
【0003】
通常、バッテリーは、着座面に対して後ろに設けられているため、充電作業において、体の不自由な着座者が車椅子から一旦降りて、近くにある椅子やベッド等に座り、電動車椅子を近くに近づけてシートバックの後ろに設けられたバッテリー接続を充電に切り替える動作を行わなければならず、体の不自由な着座者にとっては不便な操作となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−291111号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DP-45/60 デイリーパル(株式会社 今仙技術研究所)のカタログ http://www.imasengiken.co.jp/EMC/dailypal.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電動車椅子ではバッテリーに備わっている電源コネクタと充電コネクタの同時挿しができてしまうと、充電時にも電動車椅子は走行できる状態が作れてしまう。
【0007】
一方、充電を着座者本人が自分で行う場合には、電動車椅子に座ったままの状態で後ろを振り返ってバッテリーの充電用差込口を手探りで捜し、充電用コネクタを手でもってバッテリーの充電用差込口に接続する動作が必要となる。バッテリーを充電する場合にはしばらく時間を要するので、通常では夜就寝する前に行うものであるが、充電中の状態で寝る前に別の用事を思い出し、電動車椅子に座った状態の着座者はバッテリーを充電中であるのを忘れ、電動車椅子を動作させてしまうことが起こりうる。
【0008】
これとは別に、着座者は座ったままの状態で第三者に充電を依頼するとき、あるいは、車椅子で外出をして帰宅した際に第三者が決まってバッテリーへの充電を行う場合には、第三者が充電コードを充電コネクタに接続した状態になり、第三者がその場所を離れてしまうと、着座者にとっては通常の電動車椅子の操作が可能となり、充電時にも後ろの接続をまったく気にせずに走行できてしまう。着座者が充電中であることに気づかず操作を行いながら走行すると充電用コードが引っ張られ、充電コードが延びきった状態になる。更に充電コードが引っ張られると充電コードが接続されたバッテリーの充電コネクタに力が作用し、充電コネクタが差込口より容易に抜ける方向とは異なる方向の力が作用すると、充電コネクタの充電用差込口のあたりに損傷を受けてしまう恐れがある。
【0009】
例えば、バッテリーに対して電源コネクタと充電コネクタが接続される場所が同じ差込口で接続可能な構成にすると、バッテリー内部にバッテリーに接続される信号の状態から、走行可能状態であるのか充電状態であるのかを判別して電気回路を切り替える電気回路が必要となり、その結果、内部構造が複雑になり、コストアップしてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、電動車椅子の電源の供給を行う電源コネクタとバッテリーの充電を行う充電コネクタのバッテリーへの同時挿しが簡単な構成で行えないバッテリー接続構造とすること、低コスト化が可能なバッテリー接続構造とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために講じた手段は、
電動車椅子に設けられ、異なるコネクタがそれぞれ差し込まれる差込口を有するバッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記コネクタの一方が前記差込口の一方に差し込まれている状態で、前記差込口の他方が前記一方のコネクタと一体となった遮蔽部にて覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造とした。
【0012】
この場合、前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子の後方に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態で、前記充電用差込口が前記電源コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造とした。
【0013】
また、前記遮蔽部は、前記バッテリーから前記電動車椅子に対して電源を供給するケーブルを支持する部位であると良い。
【0014】
また、前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態では、前記電源コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記充電用差込口が設けられていると良い。
【0015】
また、前記遮蔽部は、前記充電用差込口を塞ぐ突起となっていると良い。
【0016】
更に、
前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子の後方に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態で、前記電源用差込口が前記充電コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造とした。
【0017】
また、前記遮蔽部は、商用電源から前記バッテリーに電気が供給されるケーブルを支持する部位であると良い。
【0018】
また、前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態では、前記充電コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記電源用差込口が設けられていると良い。
【0019】
また、前記遮蔽部は、前記電源用差込口を塞ぐ突起となっていると良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電動車椅子の後方に電源コネクタが電源用差込口に差し込まれている状態では、バッテリーに充電を行う充電用差込口が電動車椅子に電源を供給する電源コネクタと一体となった遮蔽部(例えば、電源コネクタと一体に設けられた突起部、電源コネクタに接続され電動車椅子に電源を供給するケーブル)にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、電源コネクタと一体となった遮蔽部にて充電用差込口への充電コネクタの接続を塞ぐ構成となり、また、充電コネクタが充電用差込口に差し込まれている状態では、電動車椅子に電源を供給する電源用差込口がバッテリーに充電を行う充電コネクタと一体となった遮蔽部(例えば、充電コネクタと一体に設けられた突起部、充電コネクタに接続され商用電源からバッテリーに電気を供給するケーブル)にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、充電コネクタと一体となった遮蔽部にて電源用差込口への電源コネクタの接続を塞ぐ構成となり、電源コネクタと充電コネクタのバッテリーへの同時挿しができない。
【0021】
この構成により、本発明の電動車椅子では、充電中の走行ができないため充電コードによって、充電コードが接続される充電コネクタとバッテリーの接続部位の破損が防止できる。
【0022】
また、電源コネクタと充電コネクタの同時挿しができない構造を電源コネクタまたは充電コネクタに接続されるケーブルにて部品点数を増加させることなく簡単な構成で実現できる。このため、バッテリー内部には走行可能状態と充電状態との判別を切り替える電気回路は必要がなく、低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態における電動車椅子の側面図である。
【図2】図1に示す電動車椅子の背面図である。
【図3】図1に示す電動車椅子のバッテリーに対して充電器で充電を行う場合の説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるバッテリーの内部を示す電気回路図である。
【図5】本発明の実施形態における電源コネクタの端子側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施形態におけるバッテリーの差込口に対して電源コネクタを接続する場合の電源コネクタの接続前および接続後の状態を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態におけるバッテリーの差込口側から見た側面図であり、(A)は電源コネクタが電源用差込口に接続されていない状態を示し、(B)は電源コネクタが電源用差込口に接続されている状態を示した側面図である。
【図8】本発明の実施形態におけるバッテリーポケット内に配設されるバッテリーの接続状態を説明するために接続構造の部位を抜き出した説明図であり、(A)は電源コネクタが接続された状態を示し、(B)は充電コネクタが接続された状態を示した正面図である。
【図9】図8に示す接続状態の斜視図を示し、(A)は電源コネクタが接続された状態を示し、(B)は充電コネクタが接続された状態を示した斜視図である。
【図10】本発明の別の実施形態におけるバッテリーポケット内に配設されるバッテリーの充電コネクタが接続された状態を示した斜視図である。
【図11】本発明の別の実施形態におけるバッテリーポケット内に配設されるバッテリーの電源コネクタが接続された状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について、以下に図面を参照して説明する。
【0025】
電動車椅子(以下、単に車椅子と称す)1は、体の自由がきかない人が乗るものであり、図1および図2に示すように、骨格となる金属製のフレーム2に対して着座者が着座できるよう布またはナイロン製のシート3が設けられ、着座者が着座する着座面4の前方の左右には転舵可能な小さな車輪5が設けられている。また、車椅子1には、着座面4の後方の左右に2つのモータ8,9が設けられており、モータ8,9により駆動可能な車輪6が左右両側に設けられている。
【0026】
車椅子使用時にはシート3の着座面4に座り、足をフットレスト7において右手のアームレスト18の前方にある操作部19となるジョイステック(操作レバー)を操作することにより、モータ8,9の駆動力によって移動が可能となっている。また、操作部19が設けられる前方の操作面25には、車椅子1の電動駆動を行う電源スイッチや車椅子1の走行速度(例えば、6Km/h以下)を段階的に調整することができる操作ボタン類)26およびバッテリー10の充電パワーの残存を示すイジケータ等が設けられている。
【0027】
着座者は電動で車椅子1を動作させた場合には、着座面4の横に設けられている先端が球状を成す切替レバーを操作することによりモータ8,9と一体で設けられているクラッチ機構をつなげて電動モードとした状態とする。そして、この状態で操作部19を右手の指先(例えば、親指、人指し指、中指等)で二次元的に操作すると、操作部19の下のハウジング内に設けられる図示しないコントローラが操作部19からの入力信号を受けて、左右のモータ8,9の回転を独立に制御することにより、車椅子1は前後左右自由に走行することができる。
【0028】
一方、第三者により介護等を行うには、着座面4の横に設けられたレバーを操作することにより上記したクラッチ機構を切り離して手動で動作させることが可能な手動モードにする。そして、第三者はシートバック40の後ろに設けられた左右一対のグリップ部50をつかみ、車椅子1を第三者の手動により動作させることにより移動させることが可能である。また、着座者本人が車椅子1を移動させたい場合には、上記と同様に着座面4の横のレバーを操作して手動モードにした状態で、車輪6の外側に設けられているリム61を回転操作することにより、車椅子1を自力で移動させることができ、車椅子1の移動にブレーキを作用させたい場合には操作部19の下方に設けられたブレーキレバー41を操作することにより、ブレーキレバー41を右手で回動させる(例えば、手前に引く)ことにより、車輪6に対してブレーキを作用させ、それとは反対側に操作することによりブレーキを解除することができる。
【0029】
また、車椅子1の車輪6の後方には後方に突出し後方にローラーの付いた転倒防止バー45がフレーム2の下方より一体で、左右一対となって設けられている。この転倒防止バー45により、車椅子1は走行中、路面にある段差を乗り越える場合であっても、車椅子1が後方に転倒しない構成となっている。
【0030】
車椅子1には着座面4の後方には着座者がもたれかかることが可能なシートバック40が設けられている。このシートバック40の背面には車椅子1に電源を供給するバッテリー10が設けられている。バッテリー10は、図2に示すシートバック40の右側にバッテリーポケット46を有し、バッテリーポケット46の中に収納され、バッテリーポケット46の下側に開口16を有し、その開口16から後述する電源コネクタ30および充電コネクタ24が容易に抜き差しできる構成となっている。上方にカバーのついたバッテリーポケット46は袋状となっており、上方にカバーの一端をめくり上げ、収納後に布製のバッテリーカバー47をバッテリーポケット46の表面に貼付部材(例えば、貼り付けおよび貼り付け後に剥がすことが可能なテープ部材)により貼り付けることによりバッテリー10は保護される。また、本実施形態においては、図3に示すシートバック40の右側にバッテリーポケット46を有しているが、例えば、左側にもう一つの右側と同様なバッテリーポケット46およびバッテリーカバー47を設けることが可能である。このようにシートバック40の後方の面にバッテリーポケット46を設けることにより、一方のバッテリーポケット46には、通常使用するバッテリー10を収納し、他方のバッテリーポケットにはバッテリー容量がなくなったときに使用する予備用の充電されたバッテリー10を収納したり、移動時に必要となる小物等を収納することができる。この際、バッテリー10は電源用差込口11が下方になるようバッテリーポケット内に収容されるが、これに限定されるものではなく、例えば、防水性を確保できるようなバッテリーカバー47にすれば、バッテリー10の差込口側が上方になるよう収納されても良い。
【0031】
車椅子1は図3に示すように、バッテリー10による電力によって駆動可能となっており、バッテリー10は充電器20により充電可能となっている。車椅子1に充電を行う場合、充電器20の充電コード23の先に設けられた充電コネクタ24を、車椅子1にバッテリー10が搭載されたままの状態で、走行を行う電源コネクタ30を電源用差込口11より外して、バッテリー10の充電用差込口12に差し込んだ状態で、一方の充電コード21の先に設けられた充電プラグ22を家庭用コンセント(AC100V)29に差し込んで、充電器20でACからDC変換して直流電圧30Vで充電が成されるようになっている。この場合、バッテリー10のフル充電には、数時間(例えば、4〜5時間)を要する。充電作業において、本実施形態では電源コネクタ30を電源用差込口11から外さない限り、充電コネクタ24を充電用差込口12に差し込むことはできない構成となっている。
【0032】
バッテリー10は樹脂(例えば、ポリカ)による筐体から成り、内部構造は、図4に示すようにNiMH(ニッケル メタル ハイドライド)電池が直列で配設されており、車両側につながる+端子、−端子に接続されている。また、バッテリー10は直接接続された電池51,52の途中に温度ヒューズ54が設けられ、この温度ヒューズ54は80度程の異常を示す温度になると自動的に切断される。また、電源コネクタ側の+端子には直列で電流ヒューズ53が電池51との間に設けられており、このラインに所定電流(例えば、40A)以上の異常を示す電流が瞬時でも流れると電流ヒューズ53が自動的に切断され、このラインの電流が流れなくなる。また、充電中の異常を検出するために充電コネクタと電流ヒューズ53との間に温度ブレーカー55が設けられている。更には、バッテリー10の内部の温度を検出できるようにサーミスタ56が設けられており、サーミスタ56からの信号は電源コネクタ側のTh端子に接続されるようになっており、Th端子ではバッテリー内部の温度が上昇すると抵抗値がそれに伴い減少する。図4に示す上3つの端子は充電コネクタ24に接続されて、バッテリー10に電気を供給する充電用に使用され、一方、下3つの端子は電源コネクタ30に接続されて、車椅子1を駆動する電源用に使用される。
【0033】
次に、電源コネクタ30について、図5を参照して説明する。電源コネクタ30はポリカ樹脂に形成されており、一面に少なくとも2つの端子(+端子、−端子)を有し、一方の側(図1に示す上方)にリリースレバー33を備え、リリースレバー33とは反対の面(図5の下方の面)にはバッテリー10への嵌着時に電源コネクタ30をリリースレバー33の有する爪部と両側でバッテリー10に対して係止する係止部を備える。また、端子の横方向には、操作部19の下方のボックス内に設けられる図示しないコントローラおよびコントローラからの出力により駆動されるモータ8,9に接続され、車椅子1に電源を供給するケーブル32が電源コネクタ30から外れないようにケーブル32の動きを規制し支持する突起部31が、電源コネクタ30の側面に一体で形成されている。この突起部31とケーブル32とが後述する充電用差込口12を覆う遮蔽部となる。このリリースレバー33はバッテリー10の電源用差込口11に嵌着した場合、電源コネクタ30が外れないようにすることができ、接続部の防水性を確保できるようになっている。電源コネクタ30を外す場合にはリリースレバー33の自由端を指で押して操作することにより爪部の係合を解除し、バッテリー30の電源用差込口11から電源コネクタ30を外すことが可能である。そのため、体の自由がきかない人にも片手の指の操作で取り外しが容易な構造になっている。図6は電源コネクタ30をバッテリー10の電源用差込口11に差し込む前の状態から差し込んで嵌合させた状態を示した説明図である。この場合、突起部31およびケーブル32の一部(突起部31との接続される周囲部分)がバッテリー10に設けられた充電用差込口12を投影面で塞ぐ状態にある。このような構成にすることにより、バッテリー10に対して電源コネクタ30と充電コネクタ24との同時接続を、接続に関与しない部品を追加することなく安価で簡単な構成により防止することができる。
【0034】
一方、バッテリー10の側面(図1では下側)15には2つの差込口11,12が設けられており、1つは電源コネクタ30が接続される電源用差込口11となっており、ここには4つの端子(図7(A)において左側から−端子、Th端子、空き端子、+端子)13が形成されていると共に、各端子間にはショートを防止する3つの隔壁14が立設され、電源コネクタ30を電源用差込口11に差し込むことによりバッテリー10との電気的接続が成され、車椅子1のコントローラおよびモータ8,9に電力が供給される。図7の(A)が電源コネクタ30を差し込む前の状態を示し、(B)が電源コネクタ30を差し込んだ後の状態を示す。この(B)の状態では、充電用差込口12の開口が突起部31およびケーブル32の一部により塞がれるようにしている。つまり、電源コネクタ30が電源用差込口11に差し込まれている状態では、電源コネクタ30とケーブル32の少なくとも一方の投影面に充電用差込口12が設けられている。
【0035】
図8の(A)はバッテリー10との接続関係を示す説明図であり、バッテリー10に電源コネクタ30が接続された状態、(B)は電源コネクタ30を取り外し充電コネクタ24がバッテリー10に接続された状態を示す。本実施形態では電源コネクタ30と充電コネクタ24の同時接続は行えず、そのいずれかのコネクタ30,24のみ接続できる構成となっている。図9は、図8の(A)、(B)の斜視図である。
【0036】
本実施形態の車椅子1のバッテリー接続構造によれば、電源コネクタ30が電源用差込口11に差し込まれている状態で、充電用差込口12が電源コネクタ30に設けられた遮蔽部31,32にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、充電中には電源コネクタ30は外されるので、車椅子1は走行することができない。このため、従来のように充電中に走行が可能となって、着座者が充電中であることに気が付かない状態で走行した場合に、充電ケーブルが引っ張られ、充電コネクタとバッテリーとが接続される充電用差込口のあたりが損傷を受けることが確実に防止することができる。
【0037】
遮蔽部は、バッテリー10から車椅子1に対して電源を供給するケーブル32を支持する部位で行うので、部品点数を増加させることなく低コストで走行可能状態と充電状態とを同時につくらない構成とすることが可能である。
【0038】
この場合、差込口を2つに分離しているので、バッテリー内部で現在走行状態であるのか充電状態であるのかといった判別回路または切替回路は必要なく安価で簡単な構成とすることができる。
【0039】
次に、別の実施形態を示す。
【0040】
車椅子1に充電を行う場合、車椅子1にバッテリー10が搭載された状態で、電源コネクタ230が電源用差込口11より外され、充電コネクタ224がバッテリー10の充電用差込口12に差し込まれる。
【0041】
図10は、充電コネクタ224をバッテリー10の充電用差込口12に差し込んで嵌合させた状態を示した説明図である。この場合、充電コネクタ224と一体のケーブル242を支持する突起部241およびケーブル242の一部(突起部241との接続される周囲部分)がバッテリー10に設けられた電源用差込口11を投影面で塞ぐ状態にある。このような構成にすることにより、バッテリー10に対して電源コネクタ230と充電コネクタ224との同時接続を、接続に関与しない部品を追加することなく安価で簡単な構成により防止することができる。
【0042】
図11は、充電コネクタ224を取り外し電源コネクタ230がバッテリー10に接続された状態を示す。本実施形態では電源コネクタ230と充電コネクタ224の同時接続は行えず、いずれかのみ接続できる構成となっている。
【0043】
本実施形態の車椅子1のバッテリー接続構造によれば、充電コネクタ224が充電用差込口12に差し込まれている状態で、電源用差込口11が充電コネクタ224に設けられた遮蔽部241,242にて少なくとも一部が覆われる構成としたので、充電中には電源コネクタ230は外されるので、車椅子1は走行することができない。このため、従来のように充電中に走行が可能となって、着座者が充電中であることに気が付かない状態で走行した場合に、充電ケーブルが引っ張られ、充電コネクタとバッテリーとが接続される充電用差込口のあたりが損傷を受けることが確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 電動車椅子(車椅子)
10 バッテリー
11 電源用差込口(差込口)
12 充電用差込口(差込口)
15 側面
20 充電器
24 充電コネクタ(コネクタ)
29 家庭用コンセント(商用電源)
30 電源コネクタ(コネクタ)
31 突起部(遮蔽部)
32 ケーブル(遮蔽部)
224 充電コネクタ(コネクタ)
230 電源コネクタ(コネクタ)
241 突起部(遮蔽部)
242 ケーブル(遮蔽部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車椅子に設けられ、異なるコネクタがそれぞれ差し込まれる差込口を有するバッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記コネクタの一方が前記差込口の一方に差し込まれている状態で、前記差込口の他方が前記一方のコネクタと一体となった遮蔽部にて覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態で、前記充電用差込口が前記電源コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記遮蔽部は、前記バッテリーから前記電動車椅子に対して電源を供給するケーブルを支持する部位であることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態では、前記電源コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記充電用差込口が設けられていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4いずれか一項において、
前記遮蔽部は、前記充電用差込口を塞ぐ突起となっていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項6】
請求項1において、
前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態で、前記電源用差込口が前記充電コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記遮蔽部は、商用電源から前記バッテリーに電気が供給されるケーブルを支持する部位であることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項8】
請求項7において、
前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態では、前記充電コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記電源用差込口が設けられていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8いずれか一項において、
前記遮蔽部は、前記電源用差込口を塞ぐ突起となっていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項1】
電動車椅子に設けられ、異なるコネクタがそれぞれ差し込まれる差込口を有するバッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記コネクタの一方が前記差込口の一方に差し込まれている状態で、前記差込口の他方が前記一方のコネクタと一体となった遮蔽部にて覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態で、前記充電用差込口が前記電源コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記遮蔽部は、前記バッテリーから前記電動車椅子に対して電源を供給するケーブルを支持する部位であることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記電源コネクタが前記電源用差込口に差し込まれている状態では、前記電源コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記充電用差込口が設けられていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4いずれか一項において、
前記遮蔽部は、前記充電用差込口を塞ぐ突起となっていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項6】
請求項1において、
前記差込口は、電源用差込口と充電用差込口であり、前記コネクタは、電源コネクタと充電コネクタであって、
前記電動車椅子に設けられ、前記電動車椅子を駆動する電源を供給する前記電源コネクタが差し込まれる前記電源用差込口と、商用電源から電気が供給され充電が成される前記充電コネクタが差し込まれる前記充電用差込口とを有する前記バッテリーを備えた電動車椅子のバッテリー接続構造において、
前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態で、前記電源用差込口が前記充電コネクタと一体となった遮蔽部にて少なくとも一部が覆われることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記遮蔽部は、商用電源から前記バッテリーに電気が供給されるケーブルを支持する部位であることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項8】
請求項7において、
前記充電コネクタが前記充電用差込口に差し込まれている状態では、前記充電コネクタと前記ケーブルの少なくとも一方の投影面に前記電源用差込口が設けられていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8いずれか一項において、
前記遮蔽部は、前記電源用差込口を塞ぐ突起となっていることを特徴とする電動車椅子のバッテリー接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−87908(P2011−87908A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71694(P2010−71694)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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