説明

電場応答性高分子膜を用いた風力発電装置

【課題】上空に繋留した浮体を利用した風力発電装置において、発電機を軽量化し設置の自由度を高めるとともに、エネルギー変換効率を向上させた風力発電装置を提供する。
【解決手段】繋留ロープ140で上空に回転自在に繋留されると共に外周面にスクープパドル112が一体に形成された浮体110を気流を利用して回転させることによって発電機120を回転させて発電する風力発電装置100において、発電機120が浮体110に連結された回転軸と、回転軸に固設されたカムと、カムと当接することによって伸張するように張設された第1の電場応答性高分子膜とからなることによって上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力エネルギーを利用して発電を行う風力発電装置に関し、特に、電場応答性高分子(Electro Active Polymer)膜を用いて、風力エネルギーを電気エネルギーとして取り出す風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油などの化石燃料の枯渇と地球温暖化に象徴されるような環境対策が、深刻な問題として認識されるようになり、石油に替わる風力や太陽エネルギーなどの環境に優しい再生可能エネルギー(自然エネルギー)を利用した発電が注目を集めている。再生可能エネルギーの一つである風力エネルギーは、地球環境の保全、エネルギーセキュリティーの確保、経済成長の維持を同時に実現可能なエネルギー源として、世界各地で普及が進んでいる(図10参照)。
【0003】
特に、風車が発生するエネルギーは風速の3乗に比例するので、地表に比べて風速が大きい上空に繋留した浮体に風車を搭載し、上空の高速風を利用して発電しケーブルを介して地上に送電する風力発電装置は、発電電力が大幅に増幅される点できわめて有利である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、本発明者らは、発電機などの既存の発電手法では実現が難しい低周波数帯(例えば、0.3Hz)や非定周波振動(周期が定まっていない振動)、高負荷、高ストロークなどの条件下においても利用可能な発電装置として電場応答性高分子膜を用いた発電装置の開発に成功し、各方面から注目を集めている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−25554号公報
【特許文献2】特開2008−141840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の風力発電装置では、風車型が主流であり、周辺環境への悪影響の問題があり、設置場所の選定に注意を要すると共に、建設コストが高いなどの課題があった。また、風車設置による風切り音による人体及び動物への健康被害の問題があった。また、野鳥が風車のブレードに衝突し死んでしまうなどの被害も多い。
また、従来の上空に繋留した浮体を利用した風力発電装置は、発電機が重いため浮体を大型化する必要があり、設置の自由度が制約されるという課題があった。
【0007】
さらに、従来の上空に繋留した浮体を利用した風力発電装置は、浮体が受ける風力エネルギーを回転エネルギーに変換して発電するだけであるので、発電効率が低いという課題があった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、上空に繋留した浮体を利用した風力発電装置において、発電機を軽量化し設置の自由度を高めるとともに、発電効率を向上させた風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エネルギー変換手段に電場応答性高分子膜を用い、これを風力エネルギーにより伸張収縮させることが、前記課題の解決にきわめて効果的であることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成するに到った。
【0010】
まず、本請求項1に係る発明は、繋留ロープで上空に回転自在に繋留されると共に外周面にスクープパドルが一体に形成された浮体を気流を利用して回転させることによって発電機を回転させて発電する風力発電装置において、前記発電機が、浮体に連結された回転軸と該回転軸に固設されたカムと該カムと当接することによって伸張するように張設された第1の電場応答性高分子膜とからなることによって、前記課題を解決するものである。
【0011】
また、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る風力発電装置において、前記浮体が、気流によって変形することにより伸縮し発電する第2の電場応答性高分子膜によって形成されていることによって、前記課題をさらに解決するものである。
【0012】
また、本請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る風力発電装置において、前記繋留ロープが、浮体の移動により伸縮し発電する第3の電場応答性高分子膜によって形成されていることによって、前記課題をさらに解決するものである。
【0013】
また、本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る風力発電装置において、前記スクープパドルが浮体の外周面に螺旋状に形成されていることによって、前記課題をさらに解決するものである。
【0014】
また、本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに係る風力発電装置において、前記浮体に凧が結合されていることによって、前記課題をさらに解決するものである。
【0015】
なお、本発明における電場応答性高分子膜とは、誘電エラストマーを主たる構成要素としてクーロン力によって機械的変形から起電力を得たり、逆に電位差を与えることにより機械的な駆動力が得られる、いわゆる、エレクトロアクティブポリマー(EAP)の総称を意味しており、例えば、米国のカリフォルニア州に本拠を構えるSRIインターナショナルで開発されたアクリル系樹脂やシリコーン系樹脂などからなるゴム状の薄い高分子(誘電体)を伸び縮み可能な柔軟な電極で挟んだ構造をしたEPAM(イーパム:Electroactive Polymer Artificial Muscle)という商品名で提供されているものなどがある。
【発明の効果】
【0016】
本請求項1に係る発明によれば、繋留ロープで上空に回転自在に繋留されると共に外周面にスクープパドルが一体に形成された浮体を気流を利用して回転させることによって発電機を回転させて発電する風力発電装置において、発電機が浮体に連結された回転軸と、回転軸に固設されたカムと、カムと当接することによって伸張するように張設された第1の電場応答性高分子膜とからなることによって、発電機の重量が軽量化されるので、浮体を小型化でき設置の自由度が向上する。
【0017】
また、電場応答性高分子膜は、低周波数帯(例えば、0.3Hz)や非定周波振動(周期が定まっていない振動)でも発電可能であるので、平均風力エネルギーが小さい地域においても、高い発電効率を実現することができる。さらに、従来の風力発電装置のように増速歯車を必要としないので、装置の小型軽量化が図られる。
【0018】
また、本請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る風力発電装置において、浮体が、気流によって変形することにより伸縮し発電する第2の電場応答性高分子膜によって形成されていることによって、浮体の回転運動のみならず、浮体の変形から電気エネルギーを取り出すことができるので、発電効率の高い風力発電が実現できる。また、浮体が電場応答性高分子膜で形成されることによって、浮体がクッション性をもつので、野鳥が衝突した場合でも、衝突死することがない。さらに、第2の電場応答性高分子膜の静電容量を検知することにより、浮体内部の気圧をモニタリングすることが可能である。
【0019】
また、本請求項3に係る発明によれば、請求項1又は請求項2に係る風力発電装置において、繋留ロープが、浮体の移動により伸縮し発電する第3の電場応答性高分子膜によって形成されていることによって、気圧の変化による浮体の上昇下降運動から電気エネルギーを取り出すことができる。さらに繋留ロープを風が切ることによってカルマン渦が発生し渦励振が発生し、この振動からも電気エネルギーを取り出すことができる。その結果、より発電効率の高い風力発電装置が実現できる。
【0020】
また、本請求項4の風力発電装置によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに係る風力発電装置において、スクープパドルが浮体の外周面に螺旋状に形成されていることによって、風速が小さい場合でも回転トルクを支軸にかけることができるので、より一層発電効率が高い風力発電装置が実現できる。
【0021】
また、本請求項5に風力発電装置によれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに係る風力発電装置において、浮体に凧が結合されていることによって、浮体にヘリウムを充填しなくても浮力を得ることができるので、ヘリウム圧を適切に保つためのメンテナンス作業負担が軽減されるとともにランニングコストが削減できる。浮体に結合した凧が発生する浮力によって浮体を上空に維持することができるのは、本発明の風力発電装置が重量の重い発電機や増速歯車などを必要しないことによるからであり、従来の風力発電装置では実現困難なきわめて特異な効果である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電場応答性高分子膜を用いた風力発電装置の概念図。
【図2】図1の矢視II方向から見たときの断面図。
【図3】本発明の発電機を説明する概念図。
【図4】本発明の発電機を構成する発電ユニット部の垂直断面図。
【図5】本発明の発電機を構成するEPAMカートリッジの垂直断面図。
【図6】本発明の発電機の別の実施態様を示す正面図。
【図7】本発明の浮体の構造を示した斜視図。
【図8】本発明のスクープパドルの別の実施態様を示す斜視図。
【図9】本発明の別の実施形態を示す概念図。
【図10】各種エネルギーの関係図。
【図11】電場応答性高分子膜の発電原理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の風力発電装置は、繋留ロープで上空に回転自在に繋留されると共に外周面にスクープパドルが一体に形成された浮体を気流を利用して回転させることによって発電機を回転させて発電するものであって、発電機が浮体に連結された回転軸と、回転軸に固設されたカムと、カムと当接することによって伸張するように張設された第1の電場応答性高分子膜とからなることによって、発電機を軽量化し設置の自由度を高めるとともに、エネルギー変換効率を向上させた風力発電装置を提供するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0024】
例えば、本発明の風力発電装置は、上空の気流を利用して発電することを主たる目的としているが、浮体に広告媒体や監視カメラなどを装着して浮体を多目的に利用しても何ら支障はない。
【0025】
ここで、本発明の風力発電装置のエネルギー変換手段となる電場応答性高分子膜(以下、EPAMと称す)が、発電する原理の概要について、図11に基づき説明する。
【0026】
EPAM1は、2つの柔軟な電極1b、1cに挟まれたアクリル系樹脂やシリコーン系樹脂等の高分子膜1aで構成されている。従来、多用されていたアクチュエーション(駆動)モードでは、図11(a)に示すように電極間に電位差を与えると、静電力により高分子膜1aが厚さ方向に収縮し、その結果として、EPAM1が面方向に伸張し、アクチュエータとして機能する。
【0027】
一方、発電モードでは、図11(b)に示すようにアクチュエーション(駆動)モードと逆の動き、すなわち、EPAM1に風力に由来する圧力変化を与えて、EPAM1を伸張させることにより発電する。
【0028】
これらモードでは、EPAM1は、可変容量コンデンサーのように機能していると考えられる。EPAM1が伸張された際に発電の元となる微量の電荷をEPAM1に与える。この電荷は、EPAM1の高分子膜1aの表面上に現れる。そして、この膜が弛緩する際、EPAM1の弾性力が電場圧力に対抗して働き、その結果、電気エネルギーが増加する。ミクロ的には、高分子膜1aの弾性力により電荷を各電極1b、1cに向けて押し出し(収縮状態で高分子膜1aの厚さが増加)、また電極1b、1c上において各電荷間の距離が短くなる(収縮状態で高分子膜1aの平面領域が減少)。
【0029】
このような電荷の変化が電圧差を増加させ、その結果、静電エネルギー量が増加し、電気エネルギーとして外部の負荷に供給可能になり、EPAM1が発電要素として機能する。
【0030】
なお、EPAMから電気エネルギーを取り出す具体的回路構成については、前述した特許文献2において開示しているので、ここでは、説明を割愛する。
【0031】
以下、本発明のEPAMを用いた風力発電装置について、図1乃至図8に基づいて説明する。
【0032】
本発明の風力発電装置100は、図1に示すように、外周面にスクープパドル112が一体に形成された浮体110を上空(90〜300m)にある気流を利用して回転させることによって発電機120を回転させて発電する。
【0033】
図2は、図1の矢視II方向から見たときの側面図である。図2に示すように、浮体110の形状が円筒状であるため、回転しながら、気流中に置かれた場合、浮体110に接する気流Wが粘性によって回転運動に引きずられ、回転速度及び粘性に相応することで気流Wに対して垂直の力Fを発生するという、いわゆるマグヌス効果が作用することによって、浮体110を一定の位置に保持することができる。
【0034】
(第1のEPAMを用いた発電機)
次に本発明の第1の特徴である発電機について説明する。
本発明の風力発電装置100に搭載される発電機は、浮体に連結された回転軸と、回転軸に固設されたカムと、カムと当接することによって伸張するように張設された第1のEPAMとからなっている。
【0035】
発電機の構造について、図3乃至図6に基づいて説明する。
本発明の発電機は、図3及び図4に示すようにピストン軸11の軸方向の運動をEPAM12を伸張させたり、弛緩させたりする力に変換すると共に、EPAM12の変形状態に応じてEPAM12への初期電気エネルギーの供給とEPAM12からの出力電気エネルギーの出力との切換を行う機能を兼ね備えた発電ユニット部10を有している。
【0036】
そして、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの蓄電池や大容量コンデンサなどからなる蓄電部30から出力される初期電気エネルギーが、電圧変換部20の昇圧回路22によって昇圧され、発電ユニット部10の底板10aに固着された銅板などからなる充電端子13とEPAMプラス端子16aとが接触することにより、伸張状態にあるEPAM12に供給される。
【0037】
一方、ピストン軸11に加わる力が解消し、EPAM12が弛緩状態になるとEPAM12は、弾性力により、面積が小さい状態となる。その結果、発電ユニット部10の天板10bに固着された放電端子14とEPAMプラス端子16aとが接触することにより、EPAM12により発生した出力電気エネルギーは、電圧変換部20の降圧回路24によって降圧され蓄電部30に蓄電され、必要に応じて外部負荷に放電される。
【0038】
ピストン軸11には、図4に示すように、押し板15が垂直に接合されており、このピストン軸11が、気流によって回転する浮体に固設された回転軸17の近傍に設置されると共に、回転軸17に固設されたカム18と当接することにより軸方向に運動し、EPAM12を伸張させたり、弛緩させたりする。
【0039】
ここで、図4及び図5に基づき発電ユニット部10の構造について、さらに詳しく説明する。発電ユニット部10は、略円形形状をしたEPAM12の高分子膜12aと、それに接合した柔軟なEPAMプラス電極膜12bとEPAMマイナス電極膜12cとが一体となって周辺サポート部材16cによって支持されているEPAMカートリッジ16を有している。この時、EPAMプラス電極膜12bとEPAMマイナス電極膜12cとは、偏心して高分子膜12aに接合されている。そして、周辺サポート部材16cの中心を挟んで対向する位置、すなわち1つの直径上の位置にEPAMプラス電極膜12bと導通するEPAMプラス電極16dとEPAMマイナス電極膜12cと導通するEPAMマイナス電極16eが設けられている。
【0040】
そして、EPAM12は、その中央において樹脂などの絶縁材料からなる中央サポート部材16bにより挟持され、その両外側に銅などの導電材料からなるEPAMプラス端子16aにより挟持され、導電材料からなる貫通ボルト16fにより、EPAMプラス端子16aと中央サポート部材16bとEPAM12とが共締めされている。さらに、EPAMプラス電極16dとEPAMプラス端子16aとは、導線16gで接続されており、さらにEPAM12を挟持するように設けられた2つのEPAMプラス端子16aは、前述したように導電材料からなる貫通ボルト16fによって導通しているため、EPAMカートリッジ16の中央両面にEPAMプラス電極膜12bと導通しているEPAMプラス端子16aが配設される。このEPAMプラス端子16aが、発電ユニット部10の充電端子13あるいは放電端子14と接触することにより、EPAM12の変形状態に応じたEPAM12への初期電気エネルギーの供給とEPAM12からの出力電気エネルギーの出力との切換が行われる。
【0041】
なお、図6に示すようにカム180を固設した回転軸170の回りに、複数の発電ユニット部100a、100b、100c、100dを配設して、回転軸170が回転することによって、カム180が、ピストン軸110a、110b、110c、110dに順次当接するようにして発電出力を上げることができる。
【0042】
図3に示した昇圧回路22及び降圧回路24は、市販されている汎用の昇圧回路及び降圧回路を用いることができる。
【0043】
以上のように、本発明の風力発電装置に搭載される発電機は、きわめて軽量なEPAMを主たる構成部材としており、従来の電磁気学に基づいた発電機のように、重くて嵩張る回転子や磁石などを必要としないため、軽量化することができる。しかも、低速回転であっても発電することができる。
【0044】
(第2のEPAMを用いた浮体)
次に本発明の第2の特徴である浮体の構造について、図7に基づいて、説明する。
浮体110は、複数のスポーク116により離間配置されたフレーム115の外周面にEPAMを包む構造をしている。両端のフレーム115には、固定部材114によって、支軸113が固設されている。そして、浮体110は、内部にヘリウムガスを充填することにより上空へ上昇する。上空で、浮体110に気流が当たって、浮体110の形が変形することにより、EPAMが伸縮し発電することができる。また、EPAMの静電容量の変化をセンシングすることにより、浮体内のヘリウム圧の増減などの情報を取得することができる。
【0045】
(第3のEPAMを用いた繋留ロープ)
次に本発明の第3の特徴である繋留ロープについて説明する。
図1において、繋留ロープ140をEPAMで形成する。浮体110が、気圧の変化により上昇したり下降したりすると繋留ロープ140が伸縮する。これにより、EPAMが伸縮し発電することができる。なお、繋留ロープ140に過大な張力が加わって破損することを防止するため、図1に示すように、繋留ロープ140に制限ロープ150を併設する。
【0046】
(螺旋状のスクープパドル)
次に本発明の第4の特徴であるスクープパドルについて説明する。
本発明の風力発電装置の浮体に設けるスクープパドルは、図1及び図2に示すように、回転軸方向に延びるパドル形状のものが多用される。これを、図8に示すように、浮体210の外周面に螺旋状に形成することにより、風量が少ない場合であっても、大きな回転トルクを得ることができる。
【0047】
(浮体に結合した凧)
次に本発明の別の実施例について、図9に基づいて説明する。本実施例は、浮体に凧を結合させる以外は、図1に示した実施例と同じであるので、共通する部材の符号を100番台から200番台に変えることによって、その説明は省略する。
【0048】
本実施例の風力発電装置200は、浮体210に凧260が結合されている。上空では定常的に風が吹いているので、この風を凧260が受けて浮体210を上空に維持する浮力が発生する。本実施例の風力発電装置200は、従来の風力発電装置のように重量の重い発電機や増速歯車などを必要としないので、凧260が受ける風により発生する浮力で浮体210を安定的に浮上させることができる。したがって、浮体210の中には、ヘリウムを注入する必要がないため、ヘリウム圧を適切に保つためのメンテナンス作業負担が軽減されるとともに、ランニングコストが削減される。
【0049】
以上のように、本発明の風力発電装置によれば、上空の気流を利用する風力発電装置に電場応答性高分子膜を適用することにより、設置場所の制約並びに建設コストの問題を解消することができ、従来型風力発電装置の欠点の一つであった発電コストの軽減にも貢献できる。また、上昇下降、回転、変形など浮体が受ける様々な風力エネルギーを電気エネルギーに変換することができるので、発電効率の高い風力発電装置が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の風力発電装置は、簡単な構成で、メンテナンスもほとんど必要なく、さまざまな地域及びさまざまな気象条件で利用可能である発電装置を提供するものであるのみならず、既存の太陽光発電装置の発電効率の落ちる悪天候のときには、風が強いことが多いため太陽光発電装置と併用したときの補完性にも優れており、地球温暖化の原因である二酸化炭素などの温室効果ガスの発生が皆無であるため、その産業上の利用可能性は、きわめて高い。
【符号の説明】
【0051】
1 ・・・ 電場応答性高分子膜(EPAM)
1a ・・・ 高分子膜
1b、1c ・・・ 電極
10 ・・・ 発電ユニット部
10a ・・・ 底板
11 ・・・ ピストン軸
12 ・・・ EPAM
13 ・・・ 充電端子
14 ・・・ 放電端子
15 ・・・ 押し板
16 ・・・ EPAMカートリッジ
16a ・・・ EPAMプラス端子
16b ・・・ 中央サポート部材
16c ・・・ 周辺サポート部材
16d ・・・ EPAMプラス電極
16e ・・・ EPAMマイナス電極
16f ・・・ 貫通ボルト
16g ・・・ 導線
17、170 ・・・ 回転軸
18、180 ・・・ カム
22 ・・・ 昇圧回路
24 ・・・ 降圧回路
100、200 ・・・ 風力発電装置
100a、100b、100c、100d ・・・ 発電ユニット部
110、210 ・・・ 浮体
110a、110b、110c、110d ・・・ ピストン軸
112、212 ・・・ スクープパドル
113 ・・・ 支軸
114 ・・・ 固定部材
115 ・・・ フレーム
120、220 ・・・ 発電機
140、240 ・・・ 繋留ロープ
150、250 ・・・ 制限ロープ
260 ・・・ 凧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繋留ロープで上空に回転自在に繋留されると共に外周面にスクープパドルが一体に形成された浮体を気流を利用して回転させることによって発電機を回転させて発電する風力発電装置において、
前記発電機が、浮体に連結された回転軸と該回転軸に固設されたカムと該カムと当接することによって伸張するように張設された第1の電場応答性高分子膜とからなることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記浮体が、気流によって変形することにより伸縮し発電する第2の電場応答性高分子膜によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記繋留ロープが、浮体の移動により伸縮し発電する第3の電場応答性高分子膜によって形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記スクープパドルが浮体の外周面に螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記浮体に凧が結合されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−1883(P2011−1883A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145622(P2009−145622)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(506399169)株式会社HYPER DRIVE (13)
【Fターム(参考)】