説明

電子カセッテ用メモリデバイス及び電子カセッテシステム

【課題】画像検出エラーやデータ保存エラーの有無を確認することができる電子カセッテ用メモリデバイス及び電子カセッテシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】USBメモリデバイス14は、USBコネクタ29、インジケータ30、フラッシュメモリ52、メモリ制御部53を備える。電子カセッテ11は、装着部33、USBインターフェース35、画像メモリ44、カセッテ制御部45、USBコントローラ50を備える。電子カセッテ11で検出され、画像メモリ44に一時的に記憶されたX線画像のデータは、USBコネクタ29、USBインターフェースを通じてUSBメモリデバイス14のフラッシュメモリ52に書き込まれる。メモリ制御部53は、フラッシュメモリ52へのX線画像のデータ保存及び、画像検出についてエラーの有無を判定し、エラーがある場合、インジケータ30を制御して報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を透過した放射線の照射を受けて放射線画像を検出する電子カセッテで取得した画像データを保存する電子カセッテ用メモリデバイス及びこれを用いた電子カセッテシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、画像診断を行うために、放射線、例えば、X線を利用したX線撮影装置が知られている。X線撮影装置は、X線を発生するX線源と、X線源が発生し被検体を透過したX線の照射を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置とからなる。X線画像検出装置としては、TFT(Thin film transistor)アクティブマトリクス基板上にX線感応層を配置し、X線検査を受ける被検者(患者など)の画像情報を表す、照射されたX線の強度分布をデジタルな画像データに変換するFPD(flat panel detector)を利用したものが実用化されている。X線画像検出装置には、立位姿勢の被検者を撮影するための立位撮影台や臥位姿勢の被検者を撮影するための臥位撮影台にFPDが内蔵された据え置き型のものの他、偏平な略直方体形状のカセッテタイプの筐体にFPDが内蔵された可搬型のX線画像検出装置(以下「電子カセッテ」ともいう)も開発されている。
【0003】
電子カセッテは、肘や膝の撮影など据え置き型の装置では撮影が困難な部位の撮影に用いられる他、撮影室までの移動が困難な患者を病室の寝台に寝かせた状態で撮影するなど撮影室以外で使用する場合に用いられる。撮影室以外で撮影を行う場合には、X線源を台車に搭載した移動型X線発生装置である回診車と組み合わせて使用される。回診車を使用した撮影は、例えば、撮影室において、回診先で撮影する撮影枚数に応じた数の電子カセッテを回診車に搭載し、回診車で病室を巡回して撮影を行い、撮影終了後、撮影室に戻るというワークフローで行われる。
【0004】
電子カセッテは、フイルムカセッテやIPカセッテと異なり、X線源によるX線の照射タイミングと、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積してX線画像を検出する画像検出タイミングとを同期させる必要があることに加えて、フイルムカセッテやIPカセッテと異なり、撮影した画像のデータを保存するためのメモリデバイスが必要になる。
【0005】
現在のところ、フイルムカセッテやIP(イメージングプレート)カセッテ用の回診車のように、電子カセッテとX線源の動作タイミングを同期させるための通信機能、ストレージデバイスなどのデータを保存する保存機能、画像を確認するためのモニタなどを備えていない、電子カセッテに非対応の古いタイプの回診車も多く存在する。
【0006】
特許文献1、2に記載されている電子カセッテは、X線を検知するX線センサからなる照射検出部により、X線源によるX線の照射開始を電子カセッテ側で自己検出し、照射タイミングに合わせて画像検出タイミングを同期させる機能や、メモリ装着部に着脱自在に装着するメモリデバイスに画像のデータを保存するデータ保存機能を備えている。こうした電子カセッテによれば、通信機能やデータ保存機能を備えていない古いタイプの回診車と組み合わせても撮影を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−181942号公報
【特許文献2】特開2007−143595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の電子カセッテと古いタイプの回診車の組み合せでは、画像を撮影し、画像のデータを保存することはできるものの、回診車にモニタが設けられていないため、撮影した画像の確認については、別途モニタを有するコンソールが必要になる。古いタイプの回診車では、コンソールを搭載する場所がなく、コンソールを持ち運びにくいため、回診撮影の場合には、コンソールを撮影室に置いたまま、病室を巡回する場合も多い。
【0009】
この場合には、撮影した画像の確認は、予定したすべての撮影の終了後、コンソールがある撮影室に戻ってから行わざるを得ない。そのため、X線の照射タイミングと画像検出タイミングの同期ミスなどにより撮影が失敗していたり、メモリデバイスへの画像のデータ保存エラーが発生した場合は、再び撮影場所(病室)に戻って再撮影を行わなければならないため、非常に面倒であった。
【0010】
特許文献1、2に記載のように、X線の照射開始を自己検出する機能や着脱可能なメモリデバイスへのデータ保存機能を有する電子カセッテでは、照射検出部の誤検出により適切に同期が取れずに画像検出エラーが発生する懸念や、メモリデバイスと電子カセッテとの接続ミスなどによるデータ保存エラーが発生する懸念もあり、再撮影が必要になる事態が発生する確率も比較的大きいため、適切に撮影が行われたか、画像のデータが適切に保存されたかといった確認を、撮影場所において行いたいという要望が大きかった。特許文献1、2には、上記対策については何ら開示も示唆もされていない。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、コンソールが無くても、画像検出エラーやデータ保存エラーの有無を確認することができる電子カセッテ用メモリデバイス及び電子カセッテシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電子カセッテ用メモリデバイスは、放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて放射線画像を検出する画像検出部を有する電子カセッテに着脱可能に装着され、前記画像検出部で検出した前記放射線画像のデータを保存可能な電子カセッテ用メモリデバイスであり、前記電子カセッテと電気的に接続するための接続部と、前記接続部を通じて前記電子カセッテから送られる前記データが書き込まれるメモリと、前記画像検出部による画像検出エラー及び前記メモリへのデータ保存エラーのうち少なくとも1つの有無を判定するエラー判定手段と、前記エラー判定手段によってエラー有りと判定されたときに、その旨を報知する報知手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
前記画像検出エラーは、前記放射線源の照射タイミングと前記画像検出部の検出タイミングが一致しないことによって生じる同期エラーと、前記画像検出部の画像読み出しエラーの少なくとも1つを含み、前記エラー判定手段は、前記メモリに書き込まれるデータを調べて、前記同期エラー及び前記画像読み出しエラーの有無を判定することが好ましい。
【0014】
前記メモリには、前記放射線撮影を行う際の撮影条件に関するデータが書き込まれることが好ましい。また、USBメモリデバイスであることが好ましい。
【0015】
本発明の電子カセッテシステムは、放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて放射線画像を検出する画像検出部を有する電子カセッテと、前記電子カセッテに着脱可能に装着され、前記画像検出部で検出した前記放射線画像のデータを保存可能な電子カセッテ用メモリデバイスとからなる電子カセッテシステムであり、前記電子カセッテ用メモリデバイスは、前記電子カセッテと電気的に接続するための接続部と、前記接続部を通じて前記電子カセッテから送られる前記データが書き込まれるメモリと、前記画像検出部による画像検出エラー及び前記メモリへのデータ保存エラーのうち少なくとも1つの有無を判定するエラー判定手段と、前記エラー判定手段によってエラー有りと判定されたときに、その旨を報知する報知手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子カセッテと電気的に接続される接続部を通じて、電子カセッテ用メモリデバイスのメモリに放射線画像のデータが書き込まれ、画像検出部による画像検出エラー及びメモリへのデータ保存エラーのうち少なくとも1つの有無を判定してエラー有りと判定されたときに、その旨を報知するので、コンソールが無くても、画像検出エラーやデータ保存エラーの有無をユーザーが確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の電子カセッテ用メモリデバイス及び電子カセッテを示す斜視図である。
【図3】FPDの構成を示すブロック図である。
【図4】電子カセッテ用メモリデバイス及び電子カセッテの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】電子カセッテシステムによる撮影処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、X線撮影システム10は、電子カセッテ11(可搬型放射線画像検出装置)と、回診車12(移動型X線発生装置)と、コンソール13と、本発明の電子カセッテ用メモリデバイスであるUSBメモリデバイス14とを備える。被検者Hが寝台15上に寝ている状態で撮影する場合を例示しており、電子カセッテ11は、寝台15と被検者Hとの間に置かれている。
【0019】
回診車12は、X線源16と、筐体17と、筐体17及びX線源16を連結する自在アーム18とを備えている。この回診車12は、電子カセッテ11と通信する通信機能、X線画像を保存する保存機能、X線画像を表示する表示機能などを備えていない古いタイプの回診車であるため、撮影した画像の確認には、コンソール13を用いる。本実施形態では、回診撮影の際、コンソール13は撮影室R1においたままであり、電子カセッテ11、回診車12、及びUSBメモリデバイス14は、病室R2内へ持ち込まれる。筐体17は、上面に撮影条件などを入力する操作パネル(図示せず)が、底面付近には、移動用のキャスター19が設けられている。また、筐体17には、ケーブル20を介して照射開始信号を入力する照射スイッチ21が連結されている。
【0020】
X線源16は、自在アーム18によって被検者Hの検査部位に応じた位置に移動自在とされ、医師や撮影技師などの診察時は、邪魔にならないように退避可能とされている。このX線源16は、X線を発するX線管16aと、X線の照射範囲(照射野)を限定する照射野限定器であるコリメータ16bとを備える。回診車12の筐体17には、高電圧発生器22と、X線源制御部23とが内蔵されている。X線源制御部23には、操作パネルから管電圧、管電流、照射時間といった撮影条件が入力される。X線源制御部23は、入力された撮影条件を高電圧発生器22に送る。また、X線源制御部23には、照射スイッチ21が接続されており、X線源制御部23は、照射スイッチ21から入力された照射開始信号を、高電圧発生器22を介してX線管16aに送る。
【0021】
高電圧発生器22は、X線源制御部23から入力された撮影条件に応じた管電圧や管電流を発生し、発生した管電圧や管電流をX線管16aに印加する。X線管16aは、照射開始信号を受けたとき、印加された管電圧や管電流に応じたX線の照射を開始し、照射時間が経過した時点で照射を停止する。
【0022】
電子カセッテ11は、被検者Hを透過したX線の照射を受けて、被検者Hの画像情報を表すX線画像を検出し、X線画像のデータを、後述するようにUSBメモリデバイス14のフラッシュメモリ52に記憶する。
【0023】
コンソール13は、例えばキーボード24a、マウス24bなどからなる入力操作部24、X線画像を表示する表示部25などを一体に設けたノートパソコンの形態をしている。表示部25は、液晶ディスプレイなどのモニタにより構成されている。コンソール13の筐体26には、USBメモリデバイス14を装着する装着部27が設けられている。装着部27は、USBメモリデバイス14の外形に合わせたスロット、及びスロットの奥に設けられたUSBインターフェース(図示せず)とからなる。また、コンソール13には、USBメモリデバイス14を介して電子カセッテ11から受け取ったX線画像に対して各種画像処理を施す画像処理部などを備えている。
【0024】
図2に示すように、USBメモリデバイス14は、略直方体状のメモリ筐体28と、メモリ筐体28の1つの端面から突出するように設けられた凸型のUSBコネクタ29とを備えている。また、USBメモリデバイス14には、USBコネクタ29とは反対側の端面に、報知部としてのインジケータ30が設けられている。インジケータ30は、USBメモリデバイス14の電源オン/オフ状態、X線画像のデータ書き込み完了などを表示する。インジケータ30は、複数個のLEDからなるインジケータランプや液晶パネルなどで構成される。
【0025】
電子カセッテ11は、FPD31(検出部)と、FPD31を収容するカセッテ筐体32とを備えている。FPD31の背面側には、X線のバック散乱線を吸収する鉛板、鉛板の背面側には回路基板(ともに図示せず)が配置されている。
【0026】
カセッテ筐体32は、偏平な略直方体形状をしており、放射線の照射を受ける略矩形状の照射面32aとその反対側の背面32bと、照射面32a及び背面32bの4つの辺に沿った4つの側面32c〜32fを有する。カセッテ筐体32は、FPD31の検出面(X線が入射する面)に対応する領域が開口したステンレスやアルミニウム製のケース本体と、X線を透過可能な材質(カーボンなど)で形成され、ケース本体の開口部に嵌め込まれて照射面32aを構成する平板とからなる。
【0027】
カセッテ筐体32には、USBメモリデバイス14が着脱自在に装着される装着部33が設けられている。カセッテ筐体32の短辺方向に沿って配置される1つの側面32dに沿って装着部33が設けられている。
【0028】
装着部33は、USBメモリデバイス14を収納する収納室34と、収納室34に配置され、USBコネクタ29と接続されるUSBインターフェース35からなる。USBインターフェース35はUSBメモリデバイス14と電気的に接続するための端子を有する接続部であり、凸型のUSBコネクタ29と嵌合するように凹型をしている。USBメモリデバイス14は、USBコネクタ29により、USBインターフェース35に接続して用いることができる。
【0029】
収納室34は、カセッテ筐体32の2つの側面32c,32d及び照射面32aを切り欠いて、USBメモリデバイス14を受け入れるための切り欠き36を有している。また、装着部33からUSBメモリデバイス14を取り外すとき、メモリ筐体28の端部を把持しやすいように、切り欠き36の周縁には指先の一部を挿入可能な凹部36aが形成されている。なお、収納室34の形状はこれに限らず、USBメモリデバイス14の外形に合わせたスロット形状でもよい。
【0030】
USBインターフェース35は、カセッテ筐体32の側面32dに対して収納室34の奥側に設けられている。収納室34は、USBコネクタ29とUSBインターフェース35とが電気的に接続された装着状態のときに、USBメモリデバイス14の外面がカセッテ筐体32の外面から突出しない状態でUSBメモリデバイス14を収容可能な大きさを有する。
【0031】
図3に示すように、FPD31は、TFTアクティブマトリクス基板38上に、X線を吸収して電荷に変換する電荷発生層が積層されて構成されている。電荷発生層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)から成り、X線が照射されると、照射されたX線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射されたX線を電荷へ変換する。もちろん、FPD31としては、X線をシンチレータによって可視光に変換した後電荷に変換する間接変換型でもよい。
【0032】
TFTアクティブマトリクス基板38上には、電荷発生層で発生された電荷を蓄積する蓄積容量と、蓄積容量に蓄積された電荷を読み出すためのTFTを備えた画素39がマトリクス状に多数個配置されており、これらの画素39によって入射するX線を検出する検出面が構成される。検出面に入射するX線の入射量に応じて電荷発生層で発生された電荷は、個々の画素39の蓄積容量に蓄積される。これにより、照射面32aから入射したX線に担持された、被検者Hの画像情報は、電荷情報へ変換されてTFTアクティブマトリクス基板38に保持される。
【0033】
TFTアクティブマトリクス基板38には、一定方向(行方向)に延設され個々の画素39のTFTのゲートをオンオフさせるための複数本のゲート配線40と、ゲート配線40と直交する方向(列方向)に延設されオンされたTFTを介して蓄積容量から蓄積電荷を読み出すための複数本のデータ配線41が設けられている。個々のゲート配線40はゲートドライバ42に接続されており、個々のデータ配線41は信号処理部43に接続されている。個々の画素39の蓄積容量に電荷が蓄積されると、個々の画素39のTFTは、ゲートドライバ42からゲート配線40を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFTがオンされた画素39の蓄積容量に蓄積されている電荷は、電荷信号としてデータ配線41を伝送されて信号処理部43に入力される。
【0034】
信号処理部43は、個々のデータ配線毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線を伝送された電荷信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電荷信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。信号処理部43のA/D変換器から出力された画像データは、図5に示す画像メモリ44に順に記憶される。画像メモリ44は、複数枚分のX線画像記憶可能な記憶容量を有する。
【0035】
図4に示すように、電子カセッテ11のカセッテ筐体32内には、FPD31の他、カセッテ制御部45、操作部46、X線照射検出部47、バッテリ49、USBコントローラ50が設けられている。カセッテ制御部45は、電子カセッテ11全体の制御を司るCPU45a、CPU45aが実行するプログラムが格納されたROM45b、ROM45bからロードされたプログラムを展開し、CPU45aが処理を実行するために使用するワークメモリであるRAM45c、各種設定情報が記憶されるEEPROM45dなどを含んだマイクロコンピュータで構成されている。操作部46は、電源スイッチ46a(図2参照)などを備える。
【0036】
USBコントローラ50は、カセッテ制御部45及びUSBインターフェース35に接続されており、USBインターフェース35にUSBコネクタ29が接続され、USBメモリデバイス14が装着状態となったとき、USBメモリデバイス14に対するデータの書き込み及び読み取りを制御する。バッテリ49は、電子カセッテ11内の各種回路・素子に電力を供給するとともに、 USBインターフェース35及びUSBコネクタ29を介してUSBメモリデバイス14にも電力を供給する。
【0037】
本実施形態では、EEPROM45dの所定の領域は、撮影条件記憶部51として使用される。このEEPROM45dの撮影条件記憶部51には、電子カセッテ11を用いてX線撮影を行う際に必要とする撮影条件が記憶される。
【0038】
X線照射検出部47は、X線を検知するX線センサからなり、カセッテ筐体32の照射面32aの付近に設けられている。このX線照射検出部47は、照射面32aへのX線の照射を検出して、検出信号をカセッテ制御部45へ送信する。X線照射検出部47により照射面32aへのX線の照射が検出されたとき、カセッテ制御部45は、EEPROM45dの撮影条件記憶部51に記憶された撮影条件に基づき、FPD31に対して画像検出動作を実行させる。FPD31は、検出したX線画像のデータを画像メモリ44に一時的に記憶する。さらに、カセッテ制御部45は、USBコントローラ50を制御し、画像メモリ44から読み出したX線画像のデータを、USBメモリデバイス14に書き込ませる。
【0039】
USBメモリデバイス14の筐体28内には、不揮発性メモリであるフラッシュメモリ52、USBメモリデバイス14の各部を制御するメモリ制御部53が設けられている。フラッシュメモリ52は、USBコネクタ29がUSBインターフェース35と電気的に接続されたとき、USBコネクタ29及びUSBインターフェース35を通じて電子カセッテ11から送られるX線画像のデータが書き込まれる。メモリ制御部53は、電子カセッテ11のFPD31による画像検出エラー及びフラッシュメモリ52へのデータ保存エラーの有無を判定するエラー判定部として機能する。
【0040】
また、フラッシュメモリ52には、電子カセッテ11でX線撮影を行うときに用いる撮影条件が書き込まれる。本実施形態では、X線撮影前、コンソール13の装着部27にUSBメモリデバイス14が装着されたとき、コンソール13によってフラッシュメモリ52に撮影条件が書き込まれる。USBメモリデバイス14に書き込まれる撮影条件としては、上述した回診車12の操作パネルでX線源制御部23に入力する電圧、管電流、照射時間などと同じ撮影条件が入力される。電子カセッテ11の装着部33にUSBメモリデバイス14が装着されたとき、カセッテ制御部45は、USBコントローラ50を制御して、コンソール13でUSBメモリデバイス14に書き込まれた撮影条件を読み取り、読み取った撮影条件を撮影条件記憶部51に記憶させる。
【0041】
エラー判定部としてのメモリ制御部53は、先ず、フラッシュメモリ52へのX線画像のデータ書き込みを監視し、データ保存が完了したか否かを判定する。X線画像のデータ書き込みの途中で書き込みエラーなどが生じてデータ保存が完了しなかった場合、メモリ制御部53は、インジケータ30を制御してデータ保存エラーを報知する。一方、データ保存が完了した場合、メモリ制御部53は、フラッシュメモリ52に保存されたX線画像のデータを調べて、FPD31による画像検出エラーの有無を判定する。
【0042】
本実施形態では、FPD31による画像検出エラーとして、X線の照射タイミングとFPD31の検出タイミングとが一致しないことによって生じる同期エラー、及びFPD31による画像読み出しエラーについて判定する。メモリ制御部53は、FPD31による画像検出エラー有無の判定として、同期エラー有無の判定を先に行う。この同期エラー有無の判定では、X線画像の画素値と所定のしきい値とを比較し、X線画像の画素値が所定のしきい値未満の場合、同期エラーがあると判定し、X線画像の画素値が所定のしきい値以上の場合、同期エラーがない、すなわちX線の照射タイミングとFPD31の検出タイミングとが正常に同期したと判定する。なお、この判定の際、所定のしきい値と比較する画像値としては、X線画像を構成する全ての画素、あるいは予め決められた一部の画素に対応する画素値が用いられる。
【0043】
メモリ制御部53が同期エラーの有無を判定する際に使用する所定のしきい値は、以下のように設定される。上述したように、電子カセッテ11では、USBメモリデバイス14に入力された撮影条件を読み取り、読み取った撮影条件を撮影条件記憶部51に記憶させ、この撮影条件に基づいてX線撮影を行っているが、例えば、X線照射検出部47の誤検出が生じた場合や、X線源16に入力された撮影条件と異なる撮影条件が撮影条件記憶部51に記憶された場合などに、X線源16からのX線照射と異なったタイミングでFPD31の画像検出動作が実行される。
【0044】
X線源16からのX線照射と異なったタイミングでFPD31の画像検出動作が実行された場合、FPD31の各画素39には、照射されたX線量に応じた電荷は発生せず、各画素39に蓄積される微量な電荷、いわゆる暗電流と称される現象により蓄積された電荷が読み出され、X線画像のデータが出力される。暗電流現象で蓄積される電荷は微量であるため、X線画像のデータにおける各画素値も小さい。よって、このような暗電流現象で蓄積される電荷に応じた画素値を超える値を、同期エラーの有無を判定する際に使用する所定のしきい値として設定する。
【0045】
同期エラーの有無を判定した後、メモリ制御部53は、さらに画像読み出しエラーの有無を判定する。この画像読み出しエラー有無の判定では、X線画像のデータサイズを所定のデータサイズと比較し、X線画像のデータサイズが所定のデータサイズ未満の場合、FPD31による画像読み出しエラーがあると判定し、所定のデータサイズに等しい場合、FPD31による画像読み出しが正常に行われたと判定する。
【0046】
メモリ制御部53が画像読み出しエラーの有無を判定する際に使用する所定のデータサイズは、FPD31の各画素39に蓄積された電荷が全て正常に読み出されてX線画像のデータが出力された場合のデータサイズである。FPD31による画像読み出しエラーがあり、例えば1つの画素に対応する画素値でも出力されなかった場合、所定のデータサイズにはならないため、画像読み出しエラーの有無を判定することができる。なお、画像読み出しエラーの有無を判定する際、X線画像のデータサイズは、所定のデータサイズを超えることはないため、所定のデータサイズに等しいか、所定のデータサイズ未満かのいずれかになる。
【0047】
上記構成の作用について図5に示すフローチャートに沿って説明する。病室R2内において、電子カセッテ11、回診車12及びUSBメモリデバイス14を用いてX線撮影を行う際、先ず電源スイッチ46aを操作して電子カセッテ11の電源をオンする。USBメモリデバイス14が装着部33に正常に装着され、USBコネクタ29がUSBインターフェース35に接続されている場合、電子カセッテ11の電源がオンされると、USBインターフェース35、USBコネクタ29を通じて電力が供給され、USBメモリデバイス14の電源がオンされる(S101のY)。USBメモリデバイス14の電源がオンになるとメモリ制御部53が起動する。起動状態となったメモリ制御部53は、インジケータ30を制御してUSBメモリデバイス14が電源オンであることを報知する(S102)。これにより、医師や撮影技師などのユーザーは、USBメモリデバイス14が電源オンであるとともに、USBメモリデバイス14が装着部33に対して正常な装着状態であることを認識する。
【0048】
一方、USBメモリデバイス14が装着部33に未装着、もしくは不完全な装着状態の場合は、電子カセッテ11からUSBメモリデバイス14に電力が供給されない。よって、USBメモリデバイス14は、電源がオンされず(S101のN)、インジケータ30による報知が行われない。ユーザーは、インジケータ30を見て、USBメモリデバイス14が未装着、もしくは装着が不完全であることを認識し、USBメモリデバイス14を装着部33に装着、または正常な装着状態に付け直す。
【0049】
インジケータ30によってUSBメモリデバイス14が電源オンであることを報知した後、カセッテ制御部45に制御されたUSBコントローラ50により、フラッシュメモリ52から撮影条件が読み出される(S103)。読み出された撮影条件は撮影条件記憶部51に記憶される。
【0050】
フラッシュメモリ52から撮影条件が読み出された後、電子カセッテ11によってX線撮影が行われる(S104)。このとき、回診車12のX線源16からX線が照射され、X線照射検出部47によって照射面32aへのX線照射が検出されると、カセッテ制御部45は、撮影条件記憶部51に記憶された撮影条件に基づきFPD31に画像検出動作を実行させてX線撮影を行い、X線画像のデータを画像メモリ44に一時的に記憶させる。
【0051】
X線撮影が行われた後、画像メモリ44に一時的に記憶されたX線画像のデータは、USBインターフェース35、USBコネクタ29を通じてUSBメモリデバイス14のフラッシュメモリ52に書き込まれる。このとき、メモリ制御部53は、エラー判定部として機能し、フラッシュメモリ52へのX線画像のデータ書き込みを監視し(S105)、データ保存が完了したか否かを判定する(S106)。データ保存が完了しなかった場合(S106のN)、メモリ制御部53は、インジケータ30を制御してデータ保存エラーを報知する(S107)。
【0052】
X線画像のデータ保存が完了した場合(S106のY)、メモリ制御部53は、フラッシュメモリ52に保存されたX線画像のデータに対して、先ず同期エラー有無の判定として、X線画像の画素値と、所定のしきい値との比較を行う(S108)。X線画像の画素値が所定のしきい値未満の場合(S108のN)、メモリ制御部53は、インジケータ30を制御して同期エラーがあることを報知する(S109)。一方、画素値が所定のしきい値以上の場合(S108のY)、メモリ制御部53は、同期エラーがないと判定し、次の画像読み出しエラー有無の判定に進む。
【0053】
メモリ制御部53は、画像読み出しエラー有無の判定として、フラッシュメモリ52に保存されたX線画像のデータサイズを所定のデータサイズと比較する(S110)。X線画像のデータサイズが所定のデータサイズ未満の場合(S110のN)、メモリ制御部53は、画像読み出しエラーがあると判定し、インジケータ30を制御して、画像読み出しエラーがあることを報知する(S111)。一方、X線画像のデータサイズが所定のデータサイズに等しい場合(S110のY)、メモリ制御部53は、画像読み出しエラーがないと判定し、インジケータ30を制御して、画像検出及びデータ保存が正常であることを報知する(S112)。
【0054】
インジケータ30による報知で、FPD31による画像検出及びX線画像のデータ保存が正常であることがユーザーに確認されると、USBメモリデバイス14は電子カセッテ11の装着部33から取り外され、電源がオフされる(S113)。電子カセッテ11から取り外されたUSBメモリデバイス14は、撮影室R1にあるコンソール13の装着部27に装着され、USBコネクタ29がコンソール13のUSBインターフェースに接続される。コンソール13では、USBメモリデバイス14のフラッシュメモリ52からUSBコントローラによって画像データを読み出し、画像データに画像処理を施して表示部25に表示することができる。
【0055】
また、インジケータ30による報知で、データ保存エラー、同期エラー、及び画像読み出しエラーのいずれかが有ったことがユーザーに確認された場合、USBメモリデバイス14は、電子カセッテ11の装着部33から取り外され、あるいは電子カセッテ11の電源スイッチ46aが操作され、電源がオフされる(S113)。データ保存エラーが確認された場合は、例えば、別のUSBメモリデバイス14に交換され、再撮影が行われる。画像検出エラーが確認された場合は、例えば、電子カセッテ11の各部調整を行ったり、別の電子カセッテ11に交換、あるいは、撮影条件が再入力された後、再撮影が行われる。
【0056】
以上のように、USBメモリデバイス14では、データ保存エラー、同期エラー、及び画像読み出しエラーの有無をインジケータ30で報知しているので、ユーザーは、コンソール13が無くてもデータ保存エラー、同期エラー、及び画像読み出しエラーの有無を確認することができる。これらのエラーを確認したユーザーは、USBメモリデバイス14を取り外してコンソール13のある撮影室R1まで移動したり、画像確認のためにUSBメモリデバイス14をコンソール13に接続することがなく、病室R2で即時に再撮影をすることができるので、ユーザーの手間を軽減させることができる。
【0057】
また、USBメモリデバイス14にエラー判定部を備える構成であることから、電子カセッテ11は、従来の構成から変更する必要がなく、古いタイプの電子カセッテを使用することができるので、システム全体の追加コストを抑えることができる。
【0058】
上記実施形態では、報知手段としてインジケータ30を設けているが、これに限るものではなく、例えば、ブザー音を出力するスピーカから構成してもよい。この場合、USBメモリデバイス14の状態に応じてブザー音のリズムを変えて出力するなどして、X線画像のデータ書き込み完了など種々のメッセージを報知する。
【0059】
また、上記実施形態では、メモリ制御部53は、フラッシュメモリ52へのデータ保存エラーの有無、及びFPD31による画像検出エラーの有無をともに判定しているが、いずれか一方のみを判定する構成でもよく、画像検出エラーについても同期エラーと画像読み出しエラーとを判定の対象にしているが、一方のみでもよい。さらにまた、上記実施形態では、同期エラー、画像検出エラーの順番で判定しているが、逆の順番でもよい。
【0060】
上記実施形態では、メモリデバイスとして、USBメモリデバイスを使用しているが、本発明は、これに限るものではなく、USB規格以外のSDカードなど他のメモリデバイスでも使用することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、放射線としてX線を例に説明したが、本発明は、γ線など、X線以外の放射線を使用するものでもよい。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 X線撮影システム
11 電子カセッテ
12 回診車
13 コンソール
14 USBメモリデバイス
30 インジケータ
31 FPD
33 装着部
45 カセッテ制御部
52 フラッシュメモリ
53 メモリ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて放射線画像を検出する画像検出部を有する電子カセッテに着脱可能に装着され、前記画像検出部で検出した前記放射線画像のデータを保存可能な電子カセッテ用メモリデバイスであり、
前記電子カセッテと電気的に接続するための接続部と、
前記接続部を通じて前記電子カセッテから送られる前記データが書き込まれるメモリと、
前記画像検出部による画像検出エラー及び前記メモリへのデータ保存エラーのうち少なくとも1つの有無を判定するエラー判定手段と、
前記エラー判定手段によってエラー有りと判定されたときに、その旨を報知する報知手段とを備えていることを特徴とする電子カセッテ用メモリデバイス。
【請求項2】
前記画像検出エラーは、前記放射線源の照射タイミングと前記画像検出部の検出タイミングが一致しないことによって生じる同期エラーと、前記画像検出部の画像読み出しエラーの少なくとも1つを含み、
前記エラー判定手段は、前記メモリに書き込まれるデータを調べて、前記同期エラー及び前記画像読み出しエラーの有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の電子カセッテ用メモリデバイス。
【請求項3】
前記メモリには、前記放射線撮影を行う際の撮影条件に関するデータが書き込まれることを特徴とする請求項1又は2記載の電子カセッテ。
【請求項4】
USBメモリデバイスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子カセッテ用メモリデバイス。
【請求項5】
放射線源から照射され被検体を透過した放射線を受けて放射線画像を検出する画像検出部を有する電子カセッテと、前記電子カセッテに着脱可能に装着され、前記画像検出部で検出した前記放射線画像のデータを保存可能な電子カセッテ用メモリデバイスとからなる電子カセッテシステムであり、
前記電子カセッテ用メモリデバイスは、
前記電子カセッテと電気的に接続するための接続部と、
前記接続部を通じて前記電子カセッテから送られる前記データが書き込まれるメモリと、
前記画像検出部による画像検出エラー及び前記メモリへのデータ保存エラーのうち少なくとも1つの有無を判定するエラー判定手段と、
前記エラー判定手段によってエラー有りと判定されたときに、その旨を報知する報知手段とを備えていることを特徴とする電子カセッテシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−95717(P2012−95717A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243861(P2010−243861)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】