説明

電子キーシステム、電子キー登録システム、及び電子キー登録方法

【課題】本発明は、電子キーシステム、電子キー登録システム、及び電子キー登録方法に係り、新たな電子キーの情報を車載機に登録するうえでの手間を省きかつコストの上昇を抑えることにある。
【解決手段】電子キーと車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器の駆動を制御するうえで、電子キーは、上記情報通信時に車載機に向けて所定の送信周波数で情報送信を行うと共に、上記情報通信において車載機が電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を有し、車載機は、所定車載機器の駆動を許可する電子キーの登録時、該電子キーの有する周波数変更可否情報に応じて、上記情報通信において該車載機が電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、上記情報通信において電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる所定の送信周波数に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーシステム、電子キー登録システム、及び電子キー登録方法に係り、特に、電子キーと車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器を駆動制御する電子キーシステムにおいて新たな電子キーの情報を車載機に登録するうえで好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機である電子キーと車両に搭載された車載機との間で送受信される無線電波を利用して車両のロック/アンロックなどを行う電子キーシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電子キーシステムにおいては、電子キーと車載機との間の情報通信が、予め定められた帯域(例えば、300MHz帯や2.45GHz帯など)の電波を送受信することにより実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−93485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した電子キーシステムでは、使用可能な電子キーの情報が車載機に初回登録されて電子キーと車載機との間の無線電波に用いる使用周波数が決定された後は、その使用周波数を変更することは許容されていない。このため、例えば、電子キーと車載機との間の無線電波に用いることが許される周波数の異なる地域や国へ車両が転売される場合や、電子キーの紛失や故障による交換などにより電子キーと車載機との間の無線電波に用いる使用周波数が変更される場合などには、電子キーシステムを成立させるために車載機自体を交換する必要があり、その結果として、コストの上昇や作業効率の悪化を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、新たな電子キーの情報を車載機に登録するうえでの手間を省きかつコストの上昇を抑えることが可能な電子キーシステム、電子キー登録システム、及び電子キー登録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、電子キーと車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器の駆動を制御する電子キーシステムであって、前記電子キーは、前記情報通信時に前記車載機に向けて所定の送信周波数で情報送信を行うと共に、前記情報通信において前記車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を有し、前記車載機は、前記所定車載機器の駆動を許可する前記電子キーの登録時、該電子キーの有する前記周波数変更可否情報に応じて、前記情報通信において該車載機が該電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更する周波数変更手段を有する電子キーシステムにより達成される。
【0007】
上記の目的は、車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器の駆動制御を行う電子キーの情報を該車載機に登録する電子キー登録システムであって、情報登録すべき前記電子キーが前記情報通信において前記車載機に向けて情報送信を行う際に用いる所定の送信周波数と、前記車載機が前記情報通信において前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いるべきとして現に設定されている使用周波数と、を比較する周波数比較手段と、前記周波数比較手段による比較の結果として両周波数が互いに異なる場合に、前記情報通信において前記車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更する周波数変更手段と、前記周波数変更手段により使用周波数の変更が行われた後に、前記電子キーの情報の前記車載機への登録を実行する登録実行手段と、を備える電子キー登録システムにより達成される。
【0008】
また、上記の目的は、車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器の駆動制御を行う電子キーの情報を該車載機に登録する電子キー登録方法であって、前記車載機が、情報登録すべき前記電子キーが前記情報通信において前記車載機に向けて情報送信を行う際に用いる所定の送信周波数と、該車載機が前記情報通信において前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いるべきとして現に設定されている使用周波数と、を比較する周波数比較ステップと、前記車載機が、前記周波数比較ステップにおける比較の結果として両周波数が互いに異なる場合に、前記情報通信において該車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更する周波数変更ステップと、前記車載機が、前記周波数変更ステップにおいて使用周波数の変更が行われた後に、前記電子キーの情報の該車載機への登録を実行する登録実行ステップと、を備える電子キー登録方法により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな電子キーの情報を車載機に登録するうえでの手間を省きかつコストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例である電子キーシステムの構成図である。
【図2】本発明の一実施例である電子キーシステム、電子キー登録システム、及び電子キー登録方法において、電子キーと車載機との間のスマート通信において電子キーから車載機へのレスポンス信号の送信の際に用いる使用周波数を変更すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明に係る電子キーシステム、電子キー登録システム、及び電子キー登録方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例である電子キーシステム10の構成図を示す。本実施例の電子キーシステム10は、車両使用者に携帯される車両に対応した車両キーとしての電子キー12と、車両に搭載される車載機14と、からなる。電子キーシステム10は、電子キー12と車載機14との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器(例えば、車両ドアの施解錠やステアリングのロック/アンロック,エンジン始動停止などに必要な車両操作機器,車内に電子キー12が無い旨を警報により運転者に知らせる警報機)の駆動を制御するシステムである。
【0013】
図1に示す如く、電子キー12は、マイクロコンピュータを主体に構成された電子制御ユニット(以下、キーECUと称す)20を有している。キーECU20は、車載機14との間の無線通信によるIDコードの照合結果に基づいて所定車載機器を駆動させるためのスマート機能を有している。このスマート機能は、例えば、車両ドアのロック/アンロックやステアリングのロック/アンロック,車両エンジンの始動などを、車両使用者が電子キー12を手に持つことなく電子キー12と車載機14との間の無線通信(以下、適宜、スマート通信と称す)により実現させる機能であって、車載機14側との無線通信を制御するものである。
【0014】
尚、電子キー12は、対応する車両の車両ドアのキーシリンダに対応するメカニカルキーを着脱可能に内蔵しているものであってもよい。かかる構造によれば、非常時(例えば、電子キー12の充電量が不足している時やスマート機能16における無線通信が困難である時)に、メカニカルキーを電子キー12から離して、車両ドアのアンロック或いはロックを切り替えるべく車両ドアのキーシリンダに挿入して回転操作することが可能となる。
【0015】
キーECU20は、メモリ22を内蔵している。メモリ22は、不揮発性の記憶媒体であってかつ書換え不可のROMである。メモリ22は、少なくとも、スマート通信により駆動される所定車載機器ごとに異なるIDコードを格納していると共に、車載機14が電子キー12との間のスマート通信において電子キー12から送信される情報を受信する際に用いる使用周波数の変更を許容するか否かを示すビット(以下、周波数変更可否情報と称す)、及び、自己の電子キー12が車載機14との間のスマート通信において車載機14に向けて情報送信を行う際に用いる送信(使用)周波数の数値情報を格納している。尚、これらの周波数変更可否情報及び送信周波数の数値情報は、車両の正規販売店や正規工場などにおいて特別な手法でメモリ22に格納されるのが好適であり、また、メモリ22に一旦格納された後は書換え不可である。
【0016】
キーECU20には、2つのアンテナ24,26が接続されている。アンテナ24は、スマート通信において使用されるアンテナであって、スマート通信時に車載機14から送信される信号を受信することが可能である。また、アンテナ26は、スマート通信において使用されるアンテナであって、スマート通信時に車載機14に向けて信号を送信することが可能である。
【0017】
アンテナ24は、所定周波数f1(例えば、125kHz帯や134kHz帯などのLF帯)の電波を送受信することが可能である。アンテナ26は、所定周波数f2(例えば、300MHz帯や400MHz帯などのRF帯)の電波を送信することが可能である。アンテナ24,26の信号送受信範囲は、電子キー12が車内にある場合に車内全域の範囲となるように設定されている。以下、アンテナ24をキー受信アンテナ24と、また、アンテナ26をキー送信アンテナ26と、それぞれ称す。
【0018】
また、車載機14は、マイクロコンピュータを主体に構成された電子制御ユニット(以下、車載ECUと称す)30を有している。車載ECU30は、電子キー12との間の無線通信によるIDコードの照合結果に基づいて所定車載機器を駆動させるためのスマート機能を有している。
【0019】
車載ECU30には、2つのアンテナ32,34が接続されている。アンテナ32は、例えば車両ドアの外部取っ手や車内のインストルメントパネル近傍に設けられている。アンテナ32は、スマート通信において使用されるアンテナであって、スマート通信時に電子キー12との間で信号を送信することが可能である。また、アンテナ34は、例えば車室内フロア面あるいは車室内天井などに設けられている。アンテナ34は、スマート通信において使用されるアンテナであって、スマート通信時に電子キー12から送信される信号を受信することが可能である。
【0020】
アンテナ32は、所定周波数f1(例えば、125kHz帯や134kHz帯などのLF帯)の電波を送受信することが可能である。アンテナ32の信号送信範囲は、例えば、アンテナ32がドア取っ手に配設されている場合はその配設位置から所定距離(例えば1m程度)内の範囲となるように、また、アンテナ32がインストルメントパネル近傍に配設されている場合は車内全域の範囲となるように設定されている。アンテナ34は、所定周波数f2(例えば、300MHz帯や400MHz帯などのRF帯)の電波を受信することが可能である。以下、アンテナ32を車載送信アンテナ32と、また、アンテナ34を車載受信アンテナ34と、それぞれ称す。
【0021】
車載ECU30は、メモリ40を内蔵している。メモリ40は、不揮発性の記憶媒体であってかつ書換え可能の例えばEEPROMなどである。メモリ40は、少なくとも、スマート通信により駆動される所定車載機器ごとに異なるIDコードを格納していると共に、自己の車載機14が電子キー12との間のスマート通信において電子キー12から送信される情報を受信する際に用いるべきとして現に設定されている受信(使用)周波数の数値情報を格納している。
【0022】
車載ECU30には、スマート通信による駆動対象の機器である所定車載機器を駆動制御する制御部42が接続されている。制御部42は、車両ドアのロック/アンロックを制御するためのドアロック制御部や、車両エンジンの駆動/停止を制御するためのエンジン制御部,車両運転者によるステアリング操作を許可/禁止するためのステアリングロック制御部などである。車載ECU30は、電子キー12との間のスマート通信により所定車載機器を駆動すべきと判定されたときに制御部42に対して駆動指令を行う。制御部42は、車載ECU30からの駆動指令に従って所定車載機器を駆動する。
【0023】
次に、本実施例の電子キーシステム10における基本的な動作について説明する。
【0024】
本実施例の電子キーシステム10において、車載機14の車載ECU30は、スマート通信により所定車載機器の駆動制御を行ううえで、車載送信アンテナ32から、電子キー12の返答を要求するリクエスト信号を周波数f1の電波に変調して送信させる。この場合、車載送信アンテナ32の周辺には、かかるリクエスト信号に係る周波数f1の電波による検知領域が形成される。尚、車載送信アンテナ32からの周波数f1のリクエスト信号の送信は、定期的(例えば250ms毎)或いはエンジンスタートスイッチが押下されたときなどに行われるものとすればよい。
【0025】
上記の検知領域内に使用者が進入しておらずその使用者が携帯する電子キー12が存在しない場合は、その電子キー12は、車載機14からの周波数f1のリクエスト信号を受信しない。このため、この場合、電子キー12は、車載機14からのリクエスト信号に応答するレスポンス信号を送信することはない。一方、上記の検知領域内に使用者が進入しておりその使用者が携帯する電子キー12が存在する場合は、電子キー12は、周波数f1のリクエスト信号をキー受信アンテナ24で受信することが可能である。電子キー12のキーECU20は、車載機14からの周波数f1のリクエスト信号をキー受信アンテナ24で受信すると、そのリクエスト信号に応答して、メモリ22からIDコードを読み出し、キー送信アンテナ26から、そのIDコードを含むレスポンス信号を周波数f2の電波に変調して送信させる。
【0026】
車載ECU30は、車載送信アンテナ32からの周波数f1のリクエスト信号の送信後、電子キー12からの周波数f2のレスポンス信号を車載受信アンテナ34で受信すると、そのレスポンス信号を復調して得たコードを、メモリ40に格納されているIDコードと照合する。その照合の結果、両コードが互いに一致した場合は、車外や車内の所定領域内に電子キー12が存在すると判定して、制御部42に対して駆動指令を行う。
【0027】
このように、本実施例の電子キーシステム10においては、車両の車内や車外の所定領域内に電子キー12が存在しているときに自動的に、その電子キー12と車載機14とが無線電波によるスマート通信を行ってIDコードの照合を行うことができる。そして、照合によりコードが一致するときは、制御部42により所定車載機器を駆動することができる。
【0028】
例えば、車両ドアがロックされている状況で電子キー12を携帯する車両使用者が車両に接近したときに、その電子キー12と車載機14とのスマート通信によりコード照合を行うことで、車両ドアをアンロックすることができる。また、車両ドアのアンロック後、電子キー12を携帯する車両使用者が車内に乗車したときに、その電子キー12と車載機14とのスマート通信によりコード照合を行うことで、各種(例えばステアリング)のロック状態を解除してエンジンの始動を許可することができる。そして、その後、その車両使用者がエンジンスタートスイッチを押下したときに、エンジンを始動させることができる。
【0029】
従って、本実施例の電子キーシステム10によれば、所定車載機器の駆動(例えば、車両ドアのアンロックやエンジンの始動など)を、車両使用者に電子キー12への操作を行わせることなくかつ車両使用者の手にその電子キー12を持たせることなく実現させることが可能である。
【0030】
ところで、本実施例の電子キーシステム10において、車載機14から電子キー12へのリクエスト信号の送信は、周波数f1の電波を用いて行われると共に、電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信は、周波数f2の電波を用いて行われる。この電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信に用いられる使用周波数f2として設定可能な周波数は、電子キー12と車載機14との間のスマート通信が実施される地域や国などに応じて異なるものであるので、上記の使用周波数f2は、そのスマート通信が実施される前に使用地域や使用国などに応じて予め定めておくことが必要である。
【0031】
一方、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信に用いられる上記の使用周波数f2が一旦定められた後、車両転売や車両移動などに起因して車両の使用地域がスマート通信での使用が許可される周波数の異なる地域へ変更されたとき、或いは、当初の電子キー12の紛失や故障に起因して電子キー12が交換されたとき、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信の際に用いる使用周波数f2を、その一旦定められたものからその地域などに適したものへ変更することが必要である。
【0032】
この使用周波数f2の変更手法としては、レスポンス信号を送信する電子キー12を交換したうえで、更に電子キー12からのレスポンス信号を受信する車載機14自体を交換すること、すなわち、電子キー12と車載機14とを同時に交換することが考えられる。しかし、かかる変更手法では、電子キー12と車載機14との間のスマート通信に用いる上記の使用周波数f2を変更するうえで、コストの上昇を招き作業効率の悪化を招いてしまう。
【0033】
図2は、本実施例の電子キーシステム10、電子キー登録システム、及び電子キー登録方法において、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信の際に用いる使用周波数f2を変更すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。
【0034】
本実施例の電子キーシステム10において、電子キー12は、対応する車両の車載機14との間のスマート通信においてレスポンス信号を送信する際に用いる送信周波数(使用周波数)f2が予め定められており、キー送信アンテナ26についてその使用周波数f2に対応したアンテナ設定が予めなされている。また、電子キー12は、上記の如く、自電子キー12と車載機14との間のスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信(使用)周波数f2の変更を許容するか否か(すなわち、自電子キー12が車載機14に対してレスポンス信号の受信に用いる受信周波数f2の変更を指示できる電子キーであるか否か)を示す周波数変更可否情報、及び、そのスマート通信において自電子キー12が車載機14に向けてレスポンス信号を送信する際に用いる送信周波数f2の数値情報をメモリ22に格納している。尚、このメモリ22への情報格納は、予め電子キー12が電子キーシステム10において使用される前(例えば、その製造時など)に行われるものとすればよい。
【0035】
また、車載機14は、電子キー12との間のスマート通信において電子キー12から送信されるレスポンス信号を車載受信アンテナ34で受信する際に用いる受信周波数f2を変更することが可能な構成を有しており、対応の電子キー12との間のスマート通信におけるレスポンス信号の受信に用いる受信周波数f2を適宜特定の帯域に限定することが可能である。車載機14は、上記の如く、自車載機14と対応の電子キー12との間のスマート通信におけるレスポンス信号の受信に用いるべき受信周波数f2の数値情報をメモリ40に格納している。車載機14は、電子キー12との間のスマート通信において、メモリ40に格納されている受信周波数f2の数値情報に従った周波数の電波を受信することが可能である。
【0036】
更に、電子キー12と車載機14とは、電子キー12のコードなどの各種情報を車載機14に登録すべきときにその情報を電子キー12から車載機14へ送信することが可能である。尚、この際、電子キー12から車載機14への情報送信は、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において通常用いられる電子キー12のキー受信アンテナ24を送信アンテナとして用いかつ同様にそのスマート通信において通常用いられる車載機14の車載送信アンテナ32を受信アンテナとして用いることとしてもよく、また、他の通信手段(例えば、トランスポンダ通信やブルートゥースなどの短距離無線通信)を用いることとしてもよい。
【0037】
本実施例において、車載機14とのスマート通信を行うことで所定車載機器の駆動を許可する電子キー12の各種情報が車載機14に登録される場合、その登録に先立って、まず、その登録用に準備された電子キー12は、車載機14へ向けてコードなどの情報を例えばキー受信アンテナ24を用いて送信する(ステップ100)。この際、電子キー12から車載機14へ送信される情報には、少なくとも、電子キー12のメモリ22に格納されている周波数変更可否情報及びスマート通信でのレスポンス信号の送信の際に用いる送信周波数f2の数値情報が含まれる。
【0038】
車載機14は、電子キー12の車載機14への登録に先立ってその電子キー12から送信される情報を受信した場合、車載ECU30にて、その受信情報からその電子キー12が車載機14とのスマート通信においてレスポンス信号を送信する際に用いる送信周波数f2の数値情報を抽出したうえで、その電子キー12の送信周波数f2を、自車載機14のメモリ40に情報格納されている自車載機14が電子キー12とのスマート通信においてその電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いるべきとして設定されている受信周波数f2と比較する(ステップ102)。
【0039】
車載ECU30は、上記した比較の結果、両周波数f2とf2とが互いに一致する場合は、以後、その電子キー12の各種情報の車載機14への登録を許可し、その電子キー12から送られる情報を車載機14のメモリ40に登録する(ステップ104)。かかる登録が行われた場合は、以後、その情報登録がなされた電子キー12と車載機14との間のスマート通信における電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信が、その登録に至るまでと同じ周波数f2を用いて行われることとなる。
【0040】
一方、車載ECU30は、上記した比較の結果、両周波数f2とf2とが互いに異なる場合は、次に、電子キー12からの受信情報から電子キー12の周波数変更可否情報を抽出したうえで、その周波数変更可否情報がスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2の変更を許容するものであるか否かを判別する(ステップ106)。その判別の結果、周波数変更可否情報がその受信周波数f2の変更を許容するものでないときは、その電子キー12の各種情報の車載機14への登録を拒否する(ステップ108)。
【0041】
一方、車載ECU30は、上記の判別の結果、周波数変更可否情報が上記の受信周波数f2の変更を許容するものであるときは、電子キー12と車載機14との間の今後のスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2を、メモリ40に現に情報格納しているものから、その電子キー12からの受信情報から抽出したその電子キー12が車載機14との間のスマート通信においてレスポンス信号を送信する際に用いる送信周波数f2へ変更する処理を行う(ステップ110)。かかる変更処理が行われると、メモリ40に格納する受信周波数f2の数値情報が新たなものに切り替わることとなる。
【0042】
そして、車載ECU30は、上記の受信周波数f2の変更処理を行った後、その電子キー12の各種情報の車載機14への登録を許可し、その電子キー12から送られる情報を車載機14のメモリ40に登録する(ステップ104)。かかる登録が行われた場合は、以後、その情報登録がなされた電子キー12と車載機14との間のスマート通信における電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信が、変更後の周波数f2を用いて行われることとなる。
【0043】
このように、本実施例の電子キーシステム10においては、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を電子キー12に持たせたうえで、スマート通信により所定車載機器の駆動を許可する電子キー12の車載機14への登録時に、その電子キー12の周波数変更可否情報を車載機14に確認させて、その周波数変更可否情報が変更可を示すものである場合に車載機14に電子キー12との間のスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2を変更させることができる。
【0044】
かかるシステムによれば、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2を変更するのに、車載機14とのスマート通信におけるレスポンス信号の送信に用いる送信周波数f2について新たな車両使用地域などに合致したものがメモリ22に格納された新たな電子キー12を用意すると共に、その新たな電子キー12(具体的には、そのメモリ22)に車載機14がレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2の変更を許容する周波数変更可否情報を格納する必要はあるが、新たな車載機14を用意する必要はなく、車載機14自体を交換することは不要であって、車載機14の車載ECU30内部での受信周波数f2の変更を施すこととすれば十分である。
【0045】
この点、本実施例のシステムによれば、例えば、車両転売や車両移動などに起因してスマート通信(詳細には、電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信)での使用が許可される周波数f2が異なる地域へ車両の使用地域が変更され、又は、電子キー12の紛失や故障による交換などに起因してスマート通信(詳細には、電子キー12から車載機14へのレスポンス信号の送信)での使用が許可される周波数f2が変更されるとき、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2の変更を、車載機14自体の交換によるコスト上昇を招くことなくかつ作業効率を悪化させることなく実現することができるので、新たな電子キー12の情報を車載機14に登録するうえで手間を省きかつコスト上昇を抑えることが可能である。
【0046】
また、本実施例のシステムにおいては、新たな電子キー12に車載機14がレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2の変更を許容する周波数変更可否情報が格納されていない場合(すなわち新たな電子キー12が格納する周波数変更可否情報がその受信周波数f2の変更を許容するものでない場合)は、車載機14が電子キー12との間のスマート通信においてその電子キー12からのレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2の変更を行わない。このため、正規の電子キー12以外の電子キーを用いて車載機14側の受信周波数f2が変更されるのを防止することが可能であって、車載機14における受信周波数f2の不正な変更を防止してセキュリティ性を確保することが可能である。
【0047】
尚、上記の実施例においては、車載機14の車載ECU30が図2に示すルーチン中ステップ110の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「周波数変更手段」及び「周波数変更ステップ」に、電子キー12のキーECU20がステップ100の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「情報送信手段」に、車載機14が電子キー12の登録時にその電子キー12から送られる情報を受信することが特許請求の範囲に記載した「情報受信手段」に、車載ECU30がステップ102の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「周波数比較手段」及び「周波数比較ステップ」に、車載ECU30がステップ106の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「変更可否判別手段」に、車載ECU30がステップ110の処理後にステップ104の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「登録実行手段」及び「登録実行ステップ」に、それぞれ相当している。
【0048】
尚、上記の実施例においては、スマート通信で車載機14が電子キー12からのレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を、電子キー12に持たせたうえで電子キー12から車載機14へ送信し、その電子キー12の周波数変更可否情報に応じて、車載機14のメモリ40に情報格納する、電子キー12と車載機14との間のスマート通信において車載機14が電子キー12から送信されるレスポンス信号を受信する際に用いる受信周波数f2を、電子キー12がレスポンス信号を送信する際に用いる送信周波数f2へ変更することとしているが、逆に、スマート通信で電子キー12が車載機14からのリクエスト信号を受信する際に用いる受信周波数f1の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を、車載機14に持たせたうえで車載機14から電子キー12へ送信し、その周波数変更可否情報に応じて、電子キー12のメモリ22に情報格納する、上記のスマート通信において電子キー12が車載機14から送信されるリクエスト信号を受信する際に用いる受信周波数f1を、車載機14がリクエスト信号を送信する際に用いる送信周波数f1へ変更するものに適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 電子キーシステム
12 電子キー
14 車載機
20 キーECU
22,40 メモリ
30 車載ECU
42 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーと車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器の駆動を制御する電子キーシステムであって、
前記電子キーは、前記情報通信時に前記車載機に向けて所定の送信周波数で情報送信を行うと共に、前記情報通信において前記車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を有し、
前記車載機は、前記所定車載機器の駆動を許可する前記電子キーの登録時、該電子キーの有する前記周波数変更可否情報に応じて、前記情報通信において該車載機が該電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更する周波数変更手段を有することを特徴とする電子キーシステム。
【請求項2】
前記電子キーは、該電子キーの前記車載機への登録時、前記周波数変更可否情報、及び、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数の情報を前記車載機に向けて送信する情報送信手段を有し、
前記車載機は、前記電子キーの前記情報送信手段から送信される情報を受信する情報受信手段と、前記情報受信手段に受信された情報に含まれる前記情報通信において前記電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数を、前記情報通信において該車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いるべきとして現に設定されている使用周波数と比較する周波数比較手段と、前記情報受信手段に受信された情報に含まれる前記電子キーの有する前記周波数変更可否情報が使用周波数の変更を許容するものであるか否かを判別する変更可否判別手段と、を有し、
前記周波数変更手段は、前記所定車載機器の駆動を許可する前記電子キーの登録時、前記周波数比較手段による比較の結果として両周波数が互いに異なる場合において、前記変更可否判別手段により前記周波数変更可否情報が使用周波数の変更を許容するものであると判別されるときに、前記情報通信において該車載機が該電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更することを特徴とする請求項1記載の電子キーシステム。
【請求項3】
車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器の駆動制御を行う電子キーの情報を該車載機に登録する電子キー登録システムであって、
情報登録すべき前記電子キーが前記情報通信において前記車載機に向けて情報送信を行う際に用いる所定の送信周波数と、前記車載機が前記情報通信において前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いるべきとして現に設定されている使用周波数と、を比較する周波数比較手段と、
前記周波数比較手段による比較の結果として両周波数が互いに異なる場合に、前記情報通信において前記車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更する周波数変更手段と、
前記周波数変更手段により使用周波数の変更が行われた後に、前記電子キーの情報の前記車載機への登録を実行する登録実行手段と、
を備えることを特徴とする電子キー登録システム。
【請求項4】
前記電子キーは、前記情報通信において前記車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を有し、
前記周波数変更手段は、前記周波数比較手段による比較の結果として両周波数が互いに異なる場合において、前記電子キーの有する前記周波数変更可否情報が使用周波数の変更を許容するものであるときに、前記情報通信において前記車載機が該電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更することを特徴とする請求項3記載の電子キー登録システム。
【請求項5】
車載機との間で無線電波による情報通信を行うことで所定車載機器の駆動制御を行う電子キーの情報を該車載機に登録する電子キー登録方法であって、
前記車載機が、情報登録すべき前記電子キーが前記情報通信において前記車載機に向けて情報送信を行う際に用いる所定の送信周波数と、該車載機が前記情報通信において前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いるべきとして現に設定されている使用周波数と、を比較する周波数比較ステップと、
前記車載機が、前記周波数比較ステップにおける比較の結果として両周波数が互いに異なる場合に、前記情報通信において該車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更する周波数変更ステップと、
前記車載機が、前記周波数変更ステップにおいて使用周波数の変更が行われた後に、前記電子キーの情報の該車載機への登録を実行する登録実行ステップと、
を備えることを特徴とする電子キー登録方法。
【請求項6】
前記電子キーは、前記情報通信において前記車載機が前記電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数の変更を許容するか否かを示す周波数変更可否情報を有し、
前記周波数変更ステップは、前記車載機が、前記周波数比較ステップにおける比較の結果として両周波数が互いに異なる場合において、前記電子キーの有する前記周波数変更可否情報が使用周波数の変更を許容するものであると判別するときに、前記情報通信において該車載機が該電子キーから送信される情報を受信する際に用いる使用周波数を、前記情報通信において該電子キーが該車載機に向けて情報送信を行う際に用いる前記所定の送信周波数に変更するステップであることを特徴とする請求項5記載の電子キー登録方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−79554(P2013−79554A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221324(P2011−221324)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】