説明

電子スチルカメラ

【目的】 電子スチルカメラの制御プログラムを外部から容易に変更する。
【構成】 マイクロコンピュータ29とともに電子スチルカメラに内蔵されたプログラムメモリ34を書き替え可能な装置とし、また、電子スチルカメラ内に通信回路35を設ける。外部装置36からの書き込み信号によって通信回路からマイクロコンピュータ29に接続されたプログラムメモリ34の内容が容易に書き替え可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子スチルカメラ、特にデジタル画像信号を内蔵した記憶媒体に記録するメモリシステムの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】被写体の画像をデジタル電子信号として記録する電子スチルカメラが周知であり、光学系を用いて結像させた画像をCCD等の光電気変換素子を用いて電気信号に変換し、これをカメラ本体内に設けられた記憶媒体に記録する。通常の場合、電子画像信号はデジタル信号として処理され、所望の画像処理、あるいは圧縮処理が施され、固体記憶素子、あるいはハードディスク等の記憶媒体に記録される。
【0003】このようなデジタル電子スチルカメラは、画像信号のデジタル処理が可能であることから、通常の光学カメラと異なり、画像の特殊処理が可能であること、また、不要となった画像データを任意に消去し、記憶媒体を繰り返し利用できること、そして、他のコンピュータによって処理される文字等とのデータ結合が極めて容易になること等の利点があり、一般のカメラとしてばかりでなく、コンピュータの端末装置としても広い応用範囲を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述したデジタル電子スチルカメラは、携帯カメラとして用いるために、カメラ本体内に光学系、画像処理部及び記憶媒体が内蔵され、また、これらの各装置を制御するために、マイクロコンピュータが組み込まれている。周知のように、前述したマイクロコンピュータは、画像の撮影、画像データの記録、ホストコンピュータとの通信等、全体のシステムを制御し、このようなマイクロコンピュータは、前記各種の制御を行うためのプログラムに基づいて各部の動作を制御する。周知のように、前記制御用プログラムは、マイクロコンピュータに内蔵された、あるいは別個にコンピュータ外に設けられたプログラムメモリに書き込まれており、通常、電源オフ時にも、プログラムデータが失われないROMがプログラムメモリとして用いられている。
【0005】図5は、従来におけるデジタル電子スチルカメラ内に設けられているマイクロコンピュータ10の内部構造が示されており、マイクロコンピュータ10内には、制御ブロック11、演算ブロック12と共に、プログラムROM13が組み込まれている。このようなマイクロコンピュータ10は通常マイクロプロセッサとしてIC化されており、制御ブロック11はプログラムROM13内に書き込まれているプログラムに従って図示していない電子スチルカメラの各部に制御信号を供給し、所望の画像記録制御を行う。
【0006】従って、この種のプログラムROM内蔵マイクロコンピュータでは、電子スチルカメラの特性あるいは仕様を変更する際には、マイクロコンピュータ10を構成するマイクロプロセッサ自体を交換しなければならず、実際上このような交換はほとんど不可能であった。
【0007】前記プログラムの変更あるいは追加は、一般的にカメラ仕様の変更、バージョンアップ等のときに必要であり、更に、電子スチルカメラに表示装置、コンピュータあるいは外部記憶装置等を接続するときに、これらの外部装置に対応してその都度メモリ制御のプログラムを変更する必要があるとき等に行われ、電子スチルカメラが広範囲の仕様に供されるに従い、このような要求が強く出されるようになってきた。
【0008】しかしながら、前述したように、従来のマイクロコンピュータ10では、このようなプログラム変更が容易でないという問題があった。
【0009】図6は、マイクロコンピュータ10の外部にプログラムROM13が設けられている従来の他の回路構成を示し、マイクロコンピュータ10による制御そのものは、図5と同様である。
【0010】図6によれば、プログラムROM13がマイクロコンピュータ10から切り離されているので、メモリプログラムの仕様変更は、プログラムROM13の交換のみで可能となる利点がある。
【0011】しかしながら、このような従来装置でも、プログラムROM13の変更は、使用者にとってその作業が不便であり、またコストの点からも実行しにくい点があり、電子スチルカメラの利点を減殺してしまう問題があった。
【0012】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、電子スチルカメラの内蔵装置を交換すること無く、電気的にメモリ制御プログラムの変更、あるいは追加を極めて容易に行うことができるよう改良された電子スチルカメラを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、画像をデジタル電子データに変換してカメラ内の記憶媒体に画像データとして記録する電子スチルカメラにおいて、画像データの記録処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータのプログラムを書き替え可能に保持するプログラムメモリと、プログラムメモリへ外部装置からプログラムデータを書き込むための通信回路と、をカメラに内蔵したことを特徴とする。
【0014】
【作用】前述したように、本発明によれば、電子スチルカメラに内蔵されたプログラムメモリを書き替え可能とし、このプログラムの書き込みを外部装置から通信回路を介して実行するようにしたので、カメラ本体をそのままでプログラムのみの変更・追加が極めて容易に行えるという利点がある。
【0015】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例を説明する。
【0016】図1には、本発明に係る電子スチルカメラの好適な第1実施例が示されている。
【0017】レンズ21及びシャッタ22を含む光学系により被写体の画像が撮像素子23上に結像される。撮像素子23は通常CCD等からなり、画像情報をアナログ電子信号に変換する。
【0018】撮像素子23から出力された電子信号は、前処理装置24によってノイズ除去、ホワイトバランス、ガンマ補正処理その他の前処理が行われ、A/Dコンバータ25に送られ、デジタル電子信号に変換される。このデジタル電子信号は一旦バッファメモリ26に記憶され、次にデータ圧縮回路27を通り、データが圧縮処理され、記憶媒体28に記録される。
【0019】前記記憶媒体28は、電源供給が断たれた場合においても、記憶した画像データを消失しない、例えばフラッシュメモリ、データバックアップ機能の付いたRAM、あるいは磁気ディスク等が用いられる。
【0020】前記光学系及び電気処理回路、そして記憶媒体を制御するために、電子スチルカメラ内にはマイクロコンピュータ29が内蔵されており、このマイクロコンピュータ29は、実施例において前記データ圧縮回路27及び記憶媒体28を直接制御する。また、マイクロコンピュータ29は同期信号発生回路30を制御して、前記前処理回路24、A/Dコンバータ25そしてバッファメモリ26へ所望の同期信号を供給し、更にこの同期信号は前記撮像素子23の信号読み出しを行うドライブ回路31に供給される。電子スチルカメラには更に受光素子32が設けられ、被写体の照度を測光することができ、また、使用者によってオンオフ制御されるレリーズスイッチ33を含む。
【0021】本発明において特徴的なことは、電子スチルカメラ内に前記マイクロコンピュータ29のプログラムを書き替え可能に保持することのできるプログラムメモリ34が設けられていることであり、このプログラムメモリ34も電源供給が遮断された状態でプログラムデータを消失しない構成となっており、実施例においてはプログラマブルROM等が好適である。
【0022】更に、本発明においては、電子スチルカメラ内に通信回路35が設けられており、この通信回路35は前述したマイクロコンピュータ29と外部装置36との通信接続を行うことができる。外部装置36としては、通常の場合パーソナルコンピュータが用いられるが、必要に応じてこのようなパーソナルコンピュータ36とともに、前記記憶媒体28に記録された画像データを表示するディスプレイ、あるいはデータ保存するためのハードディスクドライブ等が用いられる。
【0023】本発明の第1実施例は以上の構成からなり、以下にその作用を説明する。
【0024】電子スチルカメラをアクティブ状態にするため、使用者はレリーズスイッチ33をオン作動させ、マイクロコンピュータ29はこのオン信号を検知し、撮影動作を開始する。
【0025】まず、マイクロコンピュータ29は、受光素子32の出力によって被写体の明るさを検出し、シャッタ22の開放時間及び絞り値を決定する。周知のように、レリーズスイッチ33はレンズ21のフード開閉と連動しており、使用者がレンズ21を開いたときに自動的に被写体の明るさに応じたシャッタ機構待機状態をつくることができる。
【0026】図示していないシャッタボタンの操作により、マイクロコンピュータ29はシャッタ22を開閉させ、この結果、撮像素子23に対して被写体の映像を露光する。
【0027】撮像素子23の電気的映像信号は、ドライブ回路31によってアナログシリアル信号として読み出され、前述した各種の画像前処理が前処理回路24によって行われた後、このアナログ信号はA/Dコンバータ25によりデジタル信号に変換され、バッファメモリ26に一旦記憶される。バッファメモリ26は通常1回の露光によって読み出された1コマ分のデータを記憶するが、このデータを記憶媒体28に記録するため、バッファメモリ26の出力はデータ圧縮回路27によって圧縮される。従って、バッファメモリ26の画像データは、記憶媒体28に転送された後、次の被写体露光に備えることができる。
【0028】以上のようにして、被写体の画像は電気信号として記憶媒体28に記録されるが、これらの全ての機能はマイクロコンピュータ29により制御されており、このメモリプログラムは本発明において特徴的な書き替え可能なプログラムメモリ34に保持されている。そして、このメモリプログラムの特性あるいは仕様を変更し、バージョンアップし、あるいは外部に接続される装置の特性に合わせてメモリプログラムを変更あるいは追加する場合、本発明において、電子スチルカメラに内蔵されたマイクロコンピュータ29及びプログラムメモリ34自体を何ら変更することなく、プログラムメモリ34内に記憶保持されているプログラムを通信回路35を介して外部装置36から極めて容易に書き替えることができる。
【0029】通信回路35は、ドライバ及びレシーバ等を含み、通常の場合、マイクロコンピュータ29の制御によって、前述した記憶媒体28の記憶保存している画像データを外部装置36へ送信したり、あるいは外部装置36からの遠隔操作信号によって電子スチルカメラを操作する。この遠隔操作は、電子スチルカメラを監視カメラ等として用いる際に有用であり、所定のタイミングで監視区域の映像を電子画像データとして取り込むことができる。
【0030】本発明における通信回路35は前述した通常の動作に加えて、前記プログラムメモリ34のプログラムを外部装置36から容易に変更あるいは追加するために用いられる。
【0031】実施例において、前記プログラム書き替えは、電子スチルカメラ使用者が予め決められた手順によって外部装置36からプログラムメモリ34に変更データあるいは追加データを書き込むことで実現可能である。前記予め定められた手順としては、外部装置36からマイクロコンピュータ29に書き込み信号を送ることが好適であるが、使用者が電子スチルカメラの各種操作スイッチを特定のモードによって操作することでもよい。このようにして、外部装置36は、電子スチルカメラに新たに設定されたプログラムデータを送信し、通信回路35がこのデータをマイクロコンピュータ29へ転送し、マイクロコンピュータ29がこれをプログラムメモリ34に書き込む。従って、このような書き込みが終了すると、電子スチルカメラは新たなプログラムに基づいて所望の動作を行うこととなる。
【0032】図2には、前記書き替え可能なプログラムメモリをフラッシュメモリで構成した一例が示されており、フラッシュメモリ34aは、マイクロコンピュータ29に対してアドレスバス41、データバス42、そして制御線43で接続されている。従って、フラッシュメモリ34aに記録されたプログラムは電源オフ時にもその内容を保持し、マイクロコンピュータ29に対して電子スチルカメラの機能に合わせたプログラムを常時供給することができる。
【0033】図3は書き替え可能なプログラムメモリ34としてRAM34bを用いた例であり、このRAM34bは常時バックアップ用電池44に接続されており、電子スチルカメラの主電源が切断された状態においても、RAM34bにはバックアップ用電池44から記憶保持電圧が供給され、常にプログラムデータを保持することが可能である。
【0034】図4は本発明に係る電子スチルカメラの好適な第2実施例を示し、第1実施例と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】第2実施例において特徴的なことは、本発明の特徴である書き替え可能なプログラムメモリ34が単なるRAM34cで構成されていることであり、このRAM34cは、電子スチルカメラ主電源がオフ状態となったときにはその記憶しているプログラムデータを消失する。しかしながら、第2実施例においては、マイクロコンピュータ29に必要なプログラムが画像データを記憶するための記憶媒体28内に常時記憶されていることを特徴とする。このために、記憶媒体28はその一部がプログラム領域28aとして用いられ、電子スチルカメラのアクティブ起動時にこのプログラムがRAM34cに転送される。
【0036】すなわち、使用者がレリーズスイッチ33をオン作動して、電子スチルカメラをアクティブ状態に起動すると、マイクロコンピュータ29は転送用ROM45の転送プログラムに従い、記憶媒体28のプログラム領域28aに書き込まれているプログラムデータを読み出し、これをRAM34cに転送する。このROM45はプログラム転送を行なうための小さなプログラムを格納してあるものであり、マイクロコンピュータ29の内部ROMをしようすることも可能である。この転送が終了すると、マイクロコンピュータ29は、RAM34cのプログラムに従って第1実施例で説明したのと同様の撮影動作を行うことが可能となる。もちろん、撮影が終了し、レリーズスイッチ33がオフ作動されると、RAM34cのプログラムデータは消失し、次の撮影のときには再び記憶媒体28からのプログラムデータの転送が必要となる。
【0037】また、この第2実施例において通常使用している外部機器(通常はコピュータ)以外の機器、例えば外部ハードディスク等を接続するときには、その機器専用のプログラムが必要となる。図4の例の場合この特別な機器用のプログラムはRAM34cに記憶されることが可能である。そして所望の動作が終了したときには、一度電源のオフ、オンの動作を行なう。こうすれば、もともとカメラ内部のプログラム領域28aに記憶されていたプログラムが自動的にRAM34cに再度ダウンロードされ通常の動作に容易に戻ることが可能である。
【0038】この第2実施例によれば、書き替え可能なRAM34cはバックアップ機能を必要とすることなく、単にデータ転送用の転送プログラムのみを保持した転送用ROM45を設けることのみによって記憶媒体28を有効に利用することが可能となる。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、電子スチルカメラに内蔵されたマイクロコンピュータ及びプログラムメモリを交換することなく、装置を制御しているマイクロコンピュータのプログラムを容易に変更又は追加することができ、カメラのバージョンアップ、仕様変更にも極めて容易に対処することが可能となる。また、電子スチルカメラが接続される外部装置、例えばディスプレイあるいはハードディスクドライブその他の仕様に応じて、カメラを動作するプログラムをその都度変更することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子スチルカメラの好適な第1実施例を示すブロック回路図である。
【図2】図1に示した実施例のマイクロコンピュータとプログラムメモリとの関係を示すブロック回路図である。
【図3】図2の若干異なる実施例を示すブロック回路図である。
【図4】本発明に係る電子スチルカメラの好適な第2実施例を示すブロック回路図である。
【図5】従来におけるマイクロコンピュータの構成を示す説明図である。
【図6】従来における電子スチルカメラに用いられるマイクロコンピュータとプログラムROMとの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
21 レンズ
22 シャッタ
23 撮像素子
25 A/Dコンバータ
26 バッファメモリ
27 データ圧縮回路
28 記憶媒体
28a プログラム領域
29 マイクロコンピュータ
34 プログラムメモリ
35 通信回路
36 外部装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像をデジタル電子データに変換してカメラ内の記憶媒体に画像データとして記録する電子スチルカメラにおいて、画像データの記録処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータのプログラムを書き替え可能に保持するプログラムメモリと、プログラムメモリへ外部装置からプログラムデータを書き込むための通信回路と、をカメラに内蔵したことを特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項2】 請求項1記載の電子スチルカメラにおいて、プログラムメモリは電源電圧遮断時にもプログラムデータの保存が可能なメモリからなることを特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項3】 請求項1記載の電子スチルカメラにおいて、画像データを記憶する記憶媒体は、マイクロコンピュータのプログラムを記憶するプログラム領域を含み、電子スチルカメラのアクティブ起動時にプログラムデータをプログラムメモリに転送することを特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項4】 請求項3記載の電子スチルカメラにおいて、電子スチルカメラのアクティブ起動時にプログラム領域に記憶されたプログラムをプログラムメモリに転送する転送プログラムを内蔵した転送用ROMを含むことを特徴とする電子スチルカメラ。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開平7−225687
【公開日】平成7年(1995)8月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−18225
【出願日】平成6年(1994)2月15日
【出願人】(000101891)イーストマン・コダックジャパン株式会社 (7)