説明

電子デバイスおよびその製造方法、並びに、電子機器

【課題】高い信頼性を有する電子デバイスを提供する。
【解決手段】本発明に係る電子デバイス100は、基体10と、基体10に載置されている蓋体20と、基体10および蓋体20に囲まれるキャビティー32に載置されている機能素子102と、を含み、基体10および蓋体20の少なくとも一方には、貫通孔40と、貫通孔40を塞ぐ封止部材60と、が設けられ、基部10および蓋体20の少なくとも一方のキャビティー32を規定する面15aに金属層70が設けられ、金属層70は、平面視において貫通孔40のキャビティー32側の第1開口41に重なって設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスおよびその製造方法、並びに、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばシリコンMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて物理量を検出する慣性センサーなどの電子デバイスが開発されてきている。このような慣性センサーのうち角速度を検出するジャイロセンサー(角速度センサー)は、デジタルスチルカメラ(DSC)の手ぶれ補正機能や、ゲーム機のモーションセンシング機能などに用いられる。
【0003】
一般に、構造体を振動させコリオリ力を検出する振動型ジャイロセンサーは、真空雰囲気にて封止されていることが望ましい。振動型ジャイロセンサーはコリオリ力を検知するために常に振動しており、振動型ジャイロセンサーを収容するパッケージ内(キャビティー)に空気(あるいは、その他のガス等)が存在した場合、空気粘性によって、その振動現象が減衰してしまうからである。
【0004】
パッケージ内を真空に封止する技術としては、特許文献1等のレーザーを用いた技術が挙げられる。より具体的には、特許文献1に記載の技術では、パッケージに形成された貫通孔内に、球状の封止部材を配置し、レーザーによって封止部材を溶融させることにより、貫通孔内部を埋めてパッケージ内を真空に封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−64024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば上記のような技術において封止部材を溶融させる際に、封止部材の一部がパッケージ内に飛散して、慣性センサーなどの機能素子に付着する場合がある。機能素子に封止部材の一部が付着すると、例えば、機能素子の周波数変化やQ値の低下が発生する場合がある。そのため、このような機能素子をパッケージ内に収容してなる電子デバイスの信頼性が低下する場合がある。
【0007】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い信頼性を有する電子デバイスおよびその製造方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記電子デバイスを含む電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[適用例1]
本発明に係る電子デバイスは、
基体と、
前記基体に載置されている蓋体と、
前記基体および前記蓋体に囲まれるキャビティーに載置されている機能素子と、
を含み、
前記基体および前記蓋体の少なくとも一方には、貫通孔と、前記貫通孔を塞ぐ封止部材と、が設けられ、
前記基部および前記蓋体の少なくとも一方の前記キャビティーを規定する面に金属層が設けられ、
前記金属層は、平面視において前記貫通孔の前記キャビティー側の第1開口に重なって設けられている。
【0009】
このような電子デバイスによれば、例えば封止部材をレーザー照射によって溶融させて、貫通孔を塞ぐ際に、封止部材の一部がキャビティーに飛散したとしても、飛散した封止部材を、金属層に付着させることができる。これにより、飛散した封止部材が機能素子に付着することを抑制できる。その結果、このような電子デバイスは、高い信頼性を有することができる。
【0010】
[適用例2]
本発明に係る電子デバイスにおいて、
前記貫通孔は、前記第1開口の面積よりも、前記第1開口と反対側の第2開口の面積の方が大きくてもよい。
【0011】
このような電子デバイスによれば、例えば、第1開口の面積が第2開口の面積と同じ場合に比べて、飛散する封止部材の範囲を小さくすることができる。そのため、金属層の面積を小さくすることができ、電子デバイスの小型化を図ることができる。
【0012】
[適用例3]
本発明に係る電子デバイスにおいて、
前記機能素子は、平面視において前記第1開口に重ならない位置に配置されていてもよい。
【0013】
このような電子デバイスによれば、キャビティーに封止部材が飛散したとしても、より確実に、飛散した封止部材が機能素子に付着することを抑制できる。
【0014】
[適用例4]
本発明に係る電子デバイスにおいて、
前記金属層は、前記封止部材に含まれる元素を含んでいてもよい。
【0015】
このような電子デバイスによれば、金属層を封止部材の金属と金属層の金属との共晶温度以上に加熱しながら、封止部材を溶融させることにより、キャビティーに封止部材が飛散したとしても、金属層上に飛散した封止部材と、金属層と、を合金化させることができる。これにより、たとえ振動などが加えられたとしても、飛散した封止部材は、金属層から離れることがなく、より確実に、封止部材が機能素子に付着することを抑制できる。
【0016】
[適用例5]
本発明に係る電子デバイスにおいて、
前記蓋体には、シリコンが用いられてもよい。
【0017】
このような電子デバイスによれば、貫通孔を形成する際には、シリコン半導体デバイスの作製に用いられる加工技術の適用が可能となる。その結果、微細かつ高い精度で貫通孔を形成することができる。
【0018】
[適用例6]
本発明に係る電子デバイスにおいて、
前記基体は、ガラスであり、
前記機能素子は、シリコンを用いたジャイロセンサーであってもよい。
【0019】
このような電子デバイスによれば、基体と機能素子、および、基体と蓋体とを陽極接合を用いて容易に接合することができる。また、ジャイロセンサーをシリコンのMEMS加工で形成する場合に、基体をシリコンとすると、例えばジャイロセンサーと基体間の絶縁性を保つために絶縁膜を介在させる必要があるが、基体をガラスにすることにより絶縁膜を介在させる必要が無く、容易に絶縁分離をすることができる。
【0020】
[適用例7]
本発明に係る電子デバイスの製造方法は、
基体に機能素子を載置する工程と、
蓋体を用意する工程と、
前記基体および前記蓋体の少なくとも一方に貫通孔を形成する工程と、
前記基体および前記蓋体の少なくとも一方に金属層を形成する工程と、
前記基体に前記蓋体を載置して、前記基体および前記蓋体に囲まれるキャビティーに前記機能素子を収容する工程と、
前記貫通孔に封止部材を配置する工程と、
前記封止部材をエネルギービームで溶融して前記貫通孔を塞ぐ工程と、
を含み、
前記金属層は、
前記基部および前記蓋体の少なくとも一方の前記キャビティーを規定する面であって、平面視において前記貫通孔の前記キャビティー側の第1開口に重なる位置に形成される。
【0021】
このような電子デバイスの製造方法によれば、例えば封止部材をレーザー照射によって溶融させて、貫通孔を塞ぐ際に、封止部材の一部がキャビティーに飛散したとしても、飛散した封止部材を、金属層に付着させることができる。これにより、飛散した封止部材が機能素子に付着することを抑制できる。その結果、高い信頼性を有する電子デバイスを形成することができる。
【0022】
[適用例8]
本発明に係る電子デバイスの製造方法において、
前記貫通孔を塞ぐ工程では、
前記金属層を、前記封止部材の金属および前記金属層の金属の共晶温度以上に加熱してもよい。
【0023】
このような電子デバイスの製造方法によれば、キャビティーに封止部材が飛散したとしても、金属層上に飛散した封止部材と、金属層と、を合金化させることができる。そのため、たとえ振動などが加えられたとしても、飛散した封止部材は、金属層から離れることがなく、より確実に、封止部材が機能素子に付着することを抑制できる。
【0024】
[適用例9]
本発明に係る電子デバイスの製造方法において、
前記貫通孔を塞ぐ工程では、
前記貫通孔を通して前記キャビティーを減圧した後に、前記封止部材を溶融してもよい。
【0025】
このような電子デバイスの製造方法によれば、キャビティーを減圧状態として密閉することができ、空気粘性によって、機能素子(より具体的には、ジャイロセンサー)の振動が減衰することを抑制できる。
【0026】
[適用例10]
本発明に係る電子機器は、
本発明に係る電子デバイスを含む。
【0027】
このような電子機器によれば、本発明に係る電子デバイスを含むので、高い信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る電子デバイスを模式的に示す断面図。
【図2】本実施形態に係る電子デバイスを模式的に示す平面図。
【図3】本実施形態に係る電子デバイスを模式的に示す断面斜視図。
【図4】本実施形態に係る電子デバイスの機能素子を模式的に示す平面図。
【図5】本実施形態に係る電子デバイスの機能素子の動作を説明するための図。
【図6】本実施形態に係る電子デバイスの機能素子の動作を説明するための図。
【図7】本実施形態に係る電子デバイスの機能素子の動作を説明するための図。
【図8】本実施形態に係る電子デバイスの機能素子の動作を説明するための図。
【図9】本実施形態に係る電子デバイスの製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態に係る電子デバイスの製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】本実施形態に係る電子デバイスの製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】本実施形態に係る電子デバイスの製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】本実施形態に係る電子デバイスの製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】本実施形態に係る電子デバイスの製造工程を模式的に示す断面図および平面図。
【図15】本実施形態の変形例に係る電子デバイスを模式的に示す断面図。
【図16】本実施形態に係る電子機器を模式的に示す斜視図。
【図17】本実施形態に係る電子機器を模式的に示す斜視図。
【図18】本実施形態に係る電子機器を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
1. 電子デバイス
まず、本実施形態に係る電子デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電子デバイス100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係る電子デバイス100を模式的に示す平面図である。図3は、本実施形態に係る電子デバイス100を模式的に示す断面斜視図である。なお、図1は図2のA−A線断面図であり、図3は図2のA−A線断面斜視図である。また、便宜上、図1〜図3では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、Z軸を図示している。
【0031】
電子デバイス100は、図1〜図3に示すように、基体10および蓋体20を有するパッケージ30と、封止部材60と、金属層70と、機能素子102と、を含む。電子デバイス100は、さらに、導電層50を含むことができる。なお、便宜上、図1および図2では機能素子102を簡略化し、図3では機能素子102を省略して図示している。また、図2および図3では、封止部材60を省略して図示している。
【0032】
基体10としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、水晶基板を用いることができる。基体10は、機能素子102を支持している。より具体的には、基体10の第1面12には、凹部14が形成されており、凹部14の上方に機能素子102が配置されている。凹部14によって、機能素子102は、基体10に妨害されることなく、所望の方向にのみ可動することができる。第1面12は、キャビティー32を規定する面である。
【0033】
図1および図3の例では、基体10の第1面12には、凹部15が形成されている。凹部15の底面15aには、金属層70が設けられている。底面15aは、キャビティー32を規定する面である。凹部15の深さは、凹部14の深さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
蓋体20は、基体10上に載置されている。蓋体20は、基体10に接合されていてもよい。場合によっては、機能素子102の一部に接合されていてもよい。蓋体20としては、シリコン基板を用いる。基体10としてガラス基板を用いた場合、基体10と蓋体20とは、陽極接合によって接合されていてもよい。
【0035】
なお、基体10と蓋体20との接合方法は、特に限定されず、例えば、低融点ガラス(ガラスペースト)などの接着剤による接合でもよいし、半田による接合でもよい。または、基体10および蓋体20の各々の接合部分に金属薄膜(図示せず)を形成し、該金属薄膜同士を共晶接合させることにより、基体10と蓋体20とを接合させてもよい。
【0036】
基体10および蓋体20は、機能素子102を収容するキャビティー32を形成している。図示の例では、蓋体20に凹部が形成されており、該凹部は、基体10によって封止されてキャビティー32となる。基体10および蓋体20の平面形状(Z軸方向から見た形状)は、キャビティー32に機能素子102を収容できれば特に限定されないが、図2に示す例では、矩形(より具体的には長方形)である。
【0037】
キャビティー32は、減圧状態や不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気で密閉されている。特に、機能素子102として振動型ジャイロセンサーを用いる場合、キャビティー32は、減圧状態(より好ましくは真空状態)であることが望ましい。これにより、ジャイロセンサーの振動現象が空気粘性によって減衰することを抑制できる。
【0038】
なお、図示の例では、キャビティー32となる凹部は、蓋体20に形成されているが、基体10に形成されていてもよく、基体10に形成された凹部14に機能素子102を収容し、凹部14を蓋体20によって封止することによって、キャビティー32を形成してもよい。
【0039】
蓋体20には、貫通孔40が形成されている。貫通孔40は、キャビティー32と連通している。図示の例では、貫通孔40は、蓋体20をZ軸方向に貫通している。第1開口41は、キャビティー32を規定する蓋体20の第2面22に設けられた開口である。第2開口42は、蓋体20の第2面22と反対側の面であって、パッケージ30の外形を形成する第3面24に設けられた開口である。貫通孔40は、キャビティー32側の第1開口41の面積よりも、第1開口41と反対側の第2開口42の面積の方が大きい形状を有している。図2に示すように平面視において(Z軸方向から見て)、第1開口41は、第2開口42の外周の内側に配置されている。貫通孔40は、第1開口41から第2開口42に向けて、徐々に開口の面積が大きくなる形状を有している。
【0040】
第1開口41の形状は、図2に示すように、多角形である。図示の例では、第1開口41の形状は、矩形(より具体的には正方形)である。第2開口42の形状は、特に限定されず、例えば円形でもよいが、図示の例では、第1開口41と同様に矩形(より具体的には正方形)である。第1開口41は、図2に示すように平面視において、機能素子102と重ならない位置に配置されている。すなわち、第1開口41は、機能素子102の外縁の外側に配置されている。
【0041】
貫通孔40の側面(貫通孔40を区画する蓋体20の面)は、例えば、4つの平坦面43,44,45,46によって構成されている。(100)シリコン基板からなる蓋体20をウェットエッチングすることによって貫通孔40を形成する場合、平坦面43,44,45,46は、(111)面の結晶面を有する。この場合、平坦面43,44,45,46は、蓋体20の第1面22に対して、所定の角度(54.7°程度)傾いて形成されている。
【0042】
図3に示すように、第1開口41の開口径L1は、例えば、100μm程度である。第2開口42の開口径L2は、例えば、426μm程度である。蓋体20の第1面22と第2面24との間の距離Dは、例えば、230μm程度である。キャビティー32の深さ(第1面12と第2面22との間の距離)Hは、例えば、50μm程度である。なお、開口径L1とは、例えば、平坦面43および第1面22の接合部となる辺と、平坦面45および第1面22の接合部となる辺と、の間の距離である。また、開口径L2とは、例えば、平坦面43および第2面24の接合部となる辺と、平坦面45および第2面24の接合部となる辺と、の間の距離である。
【0043】
導電層50は、図1〜図3に示すように、貫通孔40の側面に形成されている。導電層50としては、例えば、貫通孔40の側面側から、クロム層および金層をこの順で積層されたものを用いることができる。導電層50によって、貫通孔40の側面と封止部材60との密着性を向上させることができる。導電層50の厚みは、特に限定されないが、例えば、30nm〜200nm程度である。
【0044】
なお、導電層50の材質は、封止部材60の材質によって、適宜変更されることができる。また、図示はしないが、導電層50は、蓋体20の表面全面に形成されていてもよい。
【0045】
封止部材60は、貫通孔40に配置され、貫通孔40を塞いでいる。封止部材60によって、キャビティー32を密閉することができる。封止部材60の材質は、例えば、AuGe、AuSi、AuSn、SnPb、PbAg、SnAgCu、SnZnBiなどの合金である。
【0046】
金属層70は、キャビティー32に収容されている。図示の例では、金属層70は、基体10の第1面12に形成された凹部15の底面15aに、機能素子102と離間して設けられている。平面視において、金属層70は、貫通孔40の第1開口41に重なって設けられている。より具体的には、図2に示すように、貫通孔40の第1開口41は、金属層70の外縁の内側に配置されている。すなわち、第1開口41は、金属層70と完全に重なっている。つまり、金属層70の面積(Z軸方向から見たときの面積)は、第1開口41の面積よりも大きい。金属層70は、貫通孔40と重なっていれば、その平面形状は特に限定されないが、図示の例では、矩形(より具体的には正方形)である。
【0047】
金属層70は、封止部材60を構成する材料と、合金化が可能な材料から構成されている。金属層70は、封止部材60に含まれる元素を含んでいてもよい。例えば、封止部材60の材質がAuGeである場合、金属層70は、AuGeと合金化可能なAuを含んで構成されていてもよい。また、封止部材60の材質がAuGeである場合、AuGeと合金化可能なTiおよびAlの少なくとも1つを含んで構成されていてもよい。或いは、基体10がガラス基板や水晶基板であった場合、金属層70はガラス基板や水晶基板と密着性が良いクロム層を含んだ多層膜であってもよい。金属層70の厚みは、特に限定されないが、例えば、100nm程度である。
【0048】
機能素子102は、基体10上に搭載され、基体10および蓋体20によって形成される(基体10および蓋体20に囲まれる)キャビティー32に載置(収容)されている。機能素子102は、例えば、陽極接合や直接接合によって、基体10に接合されていてもよいし、接着剤によって接合されていてもよい。機能素子102の形態としては、減圧状態や不活性ガス雰囲気で密閉されたキャビティー32内で動作するものであれば、特に限定されず、例えば、ジャイロセンサー、加速度センサー、振動子、SAW(弾性表面波)素子、マイクロアクチュエーターなどの各種の機能素子を挙げることができる。
【0049】
以下では、機能素子102として、ジャイロセンサーを用いた例について、説明する。図4は、本実施形態に係る電子デバイス100の機能素子102を模式的に示す平面図である。なお、便宜上、図4では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、Z軸を図示している。このことは、後述する図5〜図8でも同様である。
【0050】
機能素子102は、図4に示すように、振動系構造体104と、駆動用固定電極130と、検出用固定電極140と、固定部150と、を有することができる。
【0051】
振動系構造体104は、例えば、基体10に接合されたシリコン基板を加工することにより、一体的に形成されている。これにより、シリコン半導体デバイスの製造に用いられる微細な加工技術の適用が可能となり、振動系構造体104の小型化を図ることができる。
【0052】
振動系構造体104は、基体10(図1参照)に固定された固定部150によって、支持されており、基体10と離間して配置されている。振動系構造体104は、第1振動体106と、第2振動体108と、を有することができる。第1振動体106および第2振動体108は、X軸に沿って互いに連結されている。
【0053】
第1振動体106および第2振動体108は、両者の境界線B(Y軸に沿った直線)に対して、対称となる形状を有することができる。したがって、以下では、第1振動体106の構成について説明し、第2振動体108の構成の説明については、省略する。
【0054】
第1振動体106は、駆動部110と、検出部120と、を有する。駆動部110は、駆動用支持部112と、駆動用バネ部114と、駆動用可動電極116と、を有することができる。
【0055】
駆動用支持部112は、例えば、フレーム状の形状を有し、駆動用支持部112の内側には、検出部120が配置されている。図示の例では、駆動用支持部112は、X軸に沿って延在する第1延在部112aと、Y軸に沿って延在する第2延在部112bと、によって構成されている。
【0056】
駆動用バネ部114は、駆動用支持部112の外側に配置されている。図示の例では、駆動用バネ部114の一端は、駆動用支持部112の角部(第1延在部112aと第2延在部112bとの接続部)近傍に接続されている。駆動用バネ部114の他端は、固定部150に接続されている。
【0057】
図示の例では、駆動用バネ部114は、第1振動体106において、4つ設けられている。そのため、第1振動体106は、4つの固定部150によって、支持されている。なお、第1振動体106と第2振動体108との境界線B上の固定部150は、設けられていなくてもよい。
【0058】
駆動用バネ部114は、Y軸に沿って往復しながらX軸に沿って延在する形状を有している。複数の駆動用バネ部114は、駆動用支持部112の中心を通るX軸に沿った仮想線(図示せず)、および駆動用支持部112の中心を通るY軸に沿った仮想線(図示せず)に対して、対称に設けられている。駆動用バネ部114を上記のような形状とすることにより、駆動用バネ部114が、Y軸方向およびZ軸方向に変形することを抑制し、駆動用バネ部114を、駆動部110の振動方向であるX軸方向にスムーズに伸縮させることができる。そして、駆動用バネ部114の伸縮に伴い、駆動用支持部112を(駆動部110を)、X軸に沿って振動させることができる。なお、駆動用バネ部114は、駆動用支持部112をX軸に沿って振動させることができれば、その数は特に限定されない。
【0059】
駆動用可動電極116は、駆動用支持部112の外側に、駆動用支持部112に接続されて配置されている。より具体的には、駆動用可動電極116は、駆動用支持部112の第1延在部112aに接続されている。
【0060】
駆動用固定電極130は、駆動用支持部112の外側に配置されている。駆動用固定電極130は、基体10(図1参照)上に固定されている。図示の例では、駆動用固定電極130は、複数設けられ、駆動用可動電極116を介して、対向配置されている。図示の例では、駆動用固定電極130は、櫛歯状の形状を有しており、駆動用可動電極116は、駆動用固定電極130の櫛歯の間に挿入可能な突出部116aを有している。駆動用固定電極130と突出部116aとの間の距離(ギャップ)を小さくすることにより、駆動用固定電極130と駆動用可動電極116との間に作用する静電力を、大きくすることができる。
【0061】
駆動用固定電極130および駆動用可動電極116に、電圧を印加すると、駆動用固定電極130と駆動用可動電極116との間に静電力を発生させることができる。これにより、駆動用バネ部114をX軸に沿って伸縮させつつ、駆動用支持部112(駆動部110)を、X軸に沿って振動させることができる。
【0062】
なお、図示の例では、駆動用可動電極116は、第1振動体106において、4つ設けられているが、駆動用支持部116をX軸に沿って振動させることができれば、その数は特に限定されない。また、図示の例では、駆動用固定電極130は、駆動用可動電極116を介して、対向配置されているが、駆動用支持部112をX軸に沿って振動させることができれば、駆動用固定電極130は、駆動用可動電極116の一方側にのみ配置されていてもよい。
【0063】
検出部120は、駆動部110に連結されている。図示の例では、検出部120は、駆動用支持部112の内側に配置されている。検出部120は、検出用支持部122と、検出用バネ部124と、検出用可動電極126と、を有することができる。なお、図示はしないが、検出部120は、駆動部110に連結されていれば、駆動用支持部112の外側に配置されていてもよい。
【0064】
検出用支持部122は、例えば、フレーム状の形状を有している。図示の例では、検出用支持部122は、X軸に沿って延在する第3延在部122aと、Y軸に沿って延在する第4延在部122bと、によって構成されている。
【0065】
検出用バネ部124は、検出用支持部122の外側に配置されている。検出用バネ部124は、検出用支持部122と駆動用支持部112とを接続している。より具体的には、検出用バネ部124の一端は、検出用支持部122の角部(第3延在部122aと第4延在部122bとの接続部)近傍に接続されている。検出用バネ部124の他端は、駆動用支持部112の第1延在部112aに接続されている。
【0066】
検出用バネ部124は、X軸に沿って往復しながらY軸に沿って延在する形状を有している。図示の例では、検出用バネ部124は、第1振動体106において、4つ設けられている。複数の検出用バネ部124は、検出用支持部122の中心を通るX軸に沿った仮想線(図示せず)、および検出用支持部122の中心を通るY軸に沿った仮想線(図示せず)に対して、対称に設けられている。検出用バネ部124を上記のような形状とすることにより、検出用バネ部124が、X軸方向およびZ軸方向に変形することを抑制し、検出用バネ部124を、検出部120の振動方向であるY軸方向にスムーズに伸縮させることができる。そして、検出用バネ部124の伸縮に伴い、検出用支持部122を(検出部120を)、Y軸に沿って変位させることができる。なお、検出用バネ部124は、検出用支持部122をY軸に沿って変位させることができれば、その数は特に限定されない。
【0067】
検出用可動電極126は、検出用支持部122の内側に、検出用支持部122に接続されて配置されている。図示の例では、検出用可動電極126は、X軸に沿って延在しており、検出用支持部122の2つの第4延在部122bに、接続されている。
【0068】
検出用固定電極140は、検出用支持部122の内側に配置されている。検出用固定電極140は、基体10(図1参照)上に固定されている。図示の例では、検出用固定電極140は、複数設けられ、検出用可動電極126を介して、対向配置されている。
【0069】
検出用可動電極126および検出用固定電極140の数および形状は、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の静電容量の変化を検出することができれば、特に限定されない。
【0070】
次に、機能素子102の動作について説明する。図5〜図8は、本実施形態に係る電子デバイス100の機能素子102の動作を説明するための図である。なお、便宜上、図5〜図8では、機能素子102の各部分を、簡略化して図示している。
【0071】
駆動用固定電極130および駆動用可動電極116に、図示しない電源によって、電圧を印加すると、駆動用固定電極130と駆動用可動電極116との間に静電力を発生させることができる。これにより、図5および図6に示すように、駆動用バネ部114をX軸に沿って伸縮させることができ、駆動部110をX軸に沿って振動させることができる。
【0072】
より具体的には、第1振動体106の駆動用可動電極116と固定電極130との間に第1交番電圧を印加し、第2振動体108の駆動用可動電極116と固定電極130との間に第1交番電圧と位相が180度ずれた第2交番電圧を印加する。これにより、第1振動体106の第1駆動部110a、および第2振動体108の第2駆動部110bを、互いに逆位相でかつ所定の周波数で、X軸に沿って振動させることができる。すなわち、X軸に沿って互いに連結された第1駆動部110aおよび第2駆動部110bは、X軸に沿って、互いに逆位相で振動する。図5に示す例では、第1駆動部110aは、α1方向に変位し、第2駆動部110bは、α1方向と反対方向のα2方向に変位している。図6に示す例では、第1駆動部110aは、α2方向に変位し、第2駆動部110bは、α1方向に変位している。
【0073】
なお、検出部120は、駆動部110に連結されているため、検出部120も駆動部110の振動に伴い、X軸に沿って振動する。すなわち、第1振動体106および第2振動体108は、X軸に沿って、互いに反対方向に変位する。
【0074】
図7および図8に示すように、駆動部110a,110bが第1振動を行っている状態で、機能素子102にZ軸回りの角速度ωが加わると、コリオリの力が働き、検出部120は、Y軸に沿って変位する。すなわち、第1駆動部110aに連結された第1検出部120a、および第2駆動部110bに連結された第2検出部120bは、第1振動およびコリオリ力によって、Y軸に沿って、互いに反対方向に変位する。図7に示す例では、第1検出部120aは、β1方向に変位し、第2検出部120bは、β1方向と反対方向のβ2方向に変位している。図8に示す例では、第1検出120aは、β2方向に変位し、第2検出部120bは、β1方向に変位している。
【0075】
検出部120a,120bがY軸に沿って変位することにより、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の距離Lは、変化する。そのため、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の静電容量は、変化する。機能素子102では、検出用可動電極126および検出用固定電極140に電圧を印加することにより、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の静電容量の変化量を検出し、Z軸回りの角速度ωを求めることができる。
【0076】
なお、上記では、静電力によって、駆動部110を駆動させる形態(静電駆動方式)について説明したが、駆動部110を駆動させる方法は、特に限定されず、圧電駆動方式や、磁場のローレンツ力を利用した電磁駆動方式等を適用することができる。
【0077】
本実施形態に係る電子デバイス100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0078】
電子デバイス100によれば、キャビティー32に収容され、平面視において貫通孔40の第1開口41と重なる金属層70を有する。そのため、例えば封止部材をレーザー照射によって溶融させて、貫通孔40を塞ぐ際に、封止部材の一部がキャビティー32に飛散したとしても、飛散した封止部材を、金属層70に付着させることができる。これにより、飛散した封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。その結果、電子デバイス100は、高い信頼性を有することができる。
【0079】
電子デバイス100によれば、貫通孔40は、第2開口42の面積よりもキャビティー32側の第1開口41の面積の方が小さい形状を有しているので、例えば、第1開口の面積が第2開口の面積と同じ場合に比べて、飛散する封止部材の範囲を小さくすることができる。そのため、金属層70の面積(Z軸方向から見たときの面積)を小さくすることができ、電子デバイス100の小型化を図ることができる。
【0080】
電子デバイス100によれば、第1開口41と機能素子102とは、平面視において、重なる位置に配置されていない。これにより、キャビティー32に封止部材が飛散したとしても、より確実に、飛散した封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。
【0081】
電子デバイス100によれば、金属層70は、封止部材60に含まれる元素を含むことができる。これにより、金属層70を封止部材の金属と金属層70の金属との共晶温度以上に加熱しながら、封止部材を溶融させることにより、キャビティー32に封止部材が飛散したとしても、金属層70上に飛散した封止部材と、金属層70と、を合金化させることができる。例えば、金属層70についてAuSnを用いて形成し、その共晶温度280℃以上に加熱しておきながら、AuGeから成る封止部材60をレーザーで溶融させる。飛散した封止部材は金属層70の表面層に到着するとAuSnと共晶を作り、金属層70表面に固着する。そのため、たとえ電子デバイス100に振動などが加えられたとしても、飛散した封止部材は、金属層70から離れることがなく、より確実に、封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。
【0082】
電子デバイス100によれば、貫通孔40が形成されている蓋体20は、シリコンが用いられる。これにより、貫通孔40を形成する際には、シリコン半導体デバイスの作製に用いられる加工技術の適用が可能となる。その結果、微細かつ高い精度で貫通孔40を形成することができる。
【0083】
電子デバイス100によれば、基体10の材質は、ガラスであり、機能素子102は、シリコンを用いたジャイロセンサーである。そのため、基体10と機能素子102、および、基体10と蓋体20とを陽極接合を用いて容易に接合することができる。また、ジャイロセンサーをシリコンのMEMS加工で形成する場合に、基体をシリコンとすると、例えばジャイロセンサーと基体間の絶縁性を保つために絶縁膜を介在させる必要があるが、基体10をガラスにすることにより絶縁膜を介在させる必要が無く、容易に絶縁分離をすることができる。
【0084】
電子デバイス100によれば、金属層70は、基体10の凹部15の底面15aに設けられている。そのため、仮にキャビティー32に飛散した封止部材が金属層70に付着しなかったとしても、飛散した封止部材を、凹部15内に止めることができ、封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。
【0085】
電子デバイス100によれば、第1開口41の形状を多角形(より具体的には矩形)とすることができる。そのため、例えば球状の封止部材60aを貫通孔40内に配置した状態で、貫通孔40の側面と封止部材60aとの間に(封止部材60aと金属層50との間に)、間隙48を設けることができる(図14参照)。これにより、キャビティー32を減圧状態にする際に、封止部材60aが飛び出すことを抑制できる。例えば、球状の封止部材を貫通孔内に配置した状態で、間隙が設けられていないと、パッケージ内外の圧力差によって、封止部材がパッケージ外部に飛び出してしまう場合がある。
【0086】
2. 電子デバイスの製造方法
次に、本実施形態に係る電子デバイスの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図9〜図14は、本実施形態に係る電子デバイス100の製造工程を模式的に示す断面図である。なお、図14では、断面図(図14(a))の他に、電子デバイス100の製造工程を模式的に示す平面図(図14(b))も示している。また、便宜上、図11,13,14では、機能素子102を簡略化して図示している。
【0087】
図9に示すように、例えばガラス基板をパターニングして、第1面12側に凹部14,15を形成し、基体10を得る。このとき、凹部14の深さと凹部15の深さは、同じであってもよいし、異なってもよい。次に、基体10の凹部15の底面15aに金属層70を形成する。金属層70は、導電層(図示せず)を成膜した後、該導電性をパターニングすることにより形成される。導電層の成膜は、例えば、スパッタ法によって行われる。パターニングは、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われる。なお、まず金属層70を形成し、次に凹部14を形成してもよい。
【0088】
なお、金属層70を形成する工程は、基体10上に蓋体20を載置して機能素子102を収容する工程の前であれば、いつ行われてもよく、例えば、後述する貫通孔40の側面に導電層50を形成した後に、行われてもよい。
【0089】
図10に示すように、基体10に、機能素子102となるシリコン基板102aを接合させる。基体10とシリコン基板102aとの接合は、例えば、陽極接合や直接接合、または接着剤を用いて行われる。なお、陽極接合によって基体10とシリコン基板102aとを接合する場合は、金属層70を、基体10と同電位にしながら行うことが好ましい。これにより、金属層70上にシリコン基板102aが付着することを抑制できる。
【0090】
図11に示すように、シリコン基板102aを、例えば研削機によって研削して薄膜化させた後、所望の形状にパターニングして機能素子102を形成する。これにより、基体10上に機能素子102を載置(搭載)することができる。パターニングは、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われ、より具体的なエッチング技術として、ボッシュ(Bosch)法を用いることができる。これにより、微細な加工が可能となり、機能素子102の小型化を図ることができる。
【0091】
図12に示すように、蓋体20として例えばシリコン基板を用意し、シリコン基板をパターニングして、貫通孔40およびキャビティー32となる凹部32aが形成された蓋体20を得る。パターニングは、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われ、より具体的なエッチング技術としては、ウェットエッチングを用いることができる。貫通孔40は、第3面24側からウェットエッチングされることにより形成される。凹部32aは、第2面22側からウェットエッチングされることにより形成される。該ウェットエッチングにより、貫通孔40の側面を、(111)面の結晶面を有する平坦面とすることができ、第1開口41の形状を、多角形(より具体的には矩形)とすることができる。また、貫通孔40を、第1開口41の面積よりも、第2開口42の面積の方が大きくなるように形成することができる。なお、貫通孔40と凹部32aとは、同時に形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。
【0092】
次に、貫通孔40の側面に導電層50を形成する。導電層50は、例えば、スパッタ法によって導電層(図示せず)を成膜し、該導電層をパターニングすることによって形成される。
【0093】
図13に示すように、基体10上に蓋体20を載置して、基体10および蓋体20によって形成されるキャビティー32に機能素子102および金属層70を収容する。蓋体20は、基体10に接合されていてもよい。基体10と蓋体20との接合は、例えば、陽極接合や接着剤等を用いて行われる。基体10と蓋体20との接合は、平面視において、第1開口41と機能素子102とが重ならず、第1開口41の少なくとも一部と金属層70の少なくとも一部とが重なるように行われる。
【0094】
図14に示すように、貫通孔40に、封止部材60aを配置する。図示の例では、封止部材60aは、球状であり、いわゆる半田ボールである。封止部材60aとしては、その直径が第1開口41の開口径L1よりも大きいものを用いる。これにより、封止部材60aがキャビティー32に落下することを抑制できる。また、上述のように、第1開口41の形状は、多角形である。そのため、図14(b)に示すように平面視において、封止部材60aを貫通孔40内に配置した状態で、貫通孔40の側面と封止部材60aとの間に(封止部材60aと金属層50との間に)、間隙48を設けることができる。
【0095】
次に、封止部材60aを、エネルギービーム(例えばレーザー)照射によって溶融させ、貫通孔40を塞ぐ(図1参照)。これにより、キャビティー32を密閉することができる。レーザーの種類としては、特に限定されず、例えばYAGレーザーやCOレーザーを用いることができる。
【0096】
封止部材60aの溶融は、例えば、金属層70を、封止部材60aの金属(封止部材60aを構成する金属)と金属層70の金属(金属層70を構成する金属)との共晶温度以上に加熱しながら行われる。例えば、AuGeから構成される封止部材60a、およびAuSnから構成される金属層70を用いた場合は、金属層70を280℃以上に加熱する。
【0097】
さらに、封止部材60aの溶融は、例えば、貫通孔40を通してキャビティー32を減圧した後に(真空引きした後に)行われる。例えば、真空チャンバー内で、レーザーを照射して封止部材60aを溶融させ、貫通孔40を塞いでもよい。
【0098】
なお、上記では、基体10に機能素子102を搭載した後に(図11参照)、貫通孔40およびキャビティー32となる凹部32aを形成して蓋体20を得る例(図12参照)について説明したが、まず、貫通孔40等を形成して蓋体20を得て、次に基体10に機能素子102を搭載してもよい。
【0099】
以上の工程により、電子デバイス100を製造することができる。
【0100】
本実施形態に係る電子デバイス100の製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0101】
電子デバイス100の製造方法によれば、金属層70の少なくとも一部と、貫通孔40の第1開口41の少なくとも一部とは、重なっている。そのため、例えば球状の封止部材60aをレーザー照射によって溶融させて、貫通孔40を塞ぐ際に、封止部材の一部がキャビティー32に飛散したとしても、飛散した封止部材を、金属層70に付着させることができる。これにより、飛散した封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。その結果、高い信頼性を有する電子デバイス100を形成することができる。
【0102】
電子デバイス100の製造方法によれば、金属層70を、封止部材60aの金属と金属層70の金属との共晶温度以上に加熱しがら、封止部材60aを溶融させることができる。これにより、キャビティー32に封止部材が飛散したとしても、飛散した封止部材を、金属層70の表面上に固着させることができる。そのため、たとえ電子デバイス100に振動などが加えられたとしても、飛散した封止部材は、金属層70から離れることがなく、より確実に、封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。
【0103】
電子デバイス100の製造方法によれば、貫通孔40を通してキャビティー32を減圧した後に、封止部材60aを溶融することができる。これにより、キャビティー32を減圧状態として密閉することができ、空気粘性によって、機能素子102(より具体的には、ジャイロセンサー)の振動が減衰することを抑制できる。
【0104】
電子デバイス100の製造方法によれば、平面視において、第1開口41と機能素子102とが、重ならないようにすることができる。これにより、例えば球状の封止部材60aをレーザー照射によって溶融させる際に、封止部材60aの一部がキャビティー32に飛散したとしても、より額実に、飛散した封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。
【0105】
電子デバイス100の製造方法によれば、第1開口41の形状を、多角形(より具体的には矩形)とすることができる。そのため、球状の封止部材60aを貫通孔40内に配置した状態で、貫通孔40の側面と封止部材60aとの間に、間隙48を設けることができる。これにより、キャビティー32を減圧状態にする際に、封止部材60aが飛び出すことを抑制できる。例えば、球状の封止部材を貫通孔内に配置した状態で、間隙が設けられていないと、パッケージ内外の圧力差によって、封止部材がパッケージ外部に飛び出してしまう場合がある。
【0106】
3. 電子デバイスの変形例
次に、本実施形態の変形例に係る電子デバイスについて、図面を参照しながら説明する。図15は、本実施形態の変形例に係る電子デバイス200を模式的に示す断面図であって、図1に対応するものである。以下、本実施形態の変形例に係る電子デバイス200において、本実施形態に係る電子デバイス100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0107】
電子デバイス100の例では、図1に示すように、金属層70は、基体10の第1面12に形成され、貫通孔40は、蓋体20に形成されていた。これに対し、電子デバイス200の例では、図15に示すように、金属層70は、蓋体20の第2面22に形成された凹部23の底面23aに設けられ、貫通孔40は、基体10に形成されている。
【0108】
電子デバイス200では、基体10として、シリコン基板を用いることができる。基体10としてシリコン基板を用いることにより、基体10に貫通孔40を形成する際には、シリコン半導体デバイスの作製に用いられる加工技術の適用が可能となる。その結果、微細かつ高い精度で貫通孔40を形成することができる。蓋体20としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、水晶基板を用いることができる。
【0109】
電子デバイス200では、貫通孔40の第1開口41は、キャビティー32を規定する基体10の第1面12に設けられた開口である。貫通孔40の第2開口42は、基体10の第1面12と反対側の面であって、パッケージ30の外形を形成する第4面16に設けられた開口である。
【0110】
電子デバイス200の製造方法としては、上述した電子デバイス100の製造方法を、基本的に適用することができる。よって、その詳細な説明を省略する。
【0111】
電子デバイス200によれば、電子デバイス100と同様に、キャビティー32に収容され、平面視において貫通孔40の第1開口41の少なくとも一部と重なる金属層70を有する。そのため、例えば封止部材をレーザー照射によって溶融させて、貫通孔40を塞ぐ際に、封止部材の一部がキャビティー32に飛散したとしても、飛散した封止部材を、金属層70に付着させることができる。これにより、飛散した封止部材が機能素子102に付着することを抑制できる。その結果、電子デバイス200は、高い信頼性を有することができる。
【0112】
なお、図示はしないが、貫通孔40は、基部10および蓋体20の両方に形成されていてもよい。このような形態の場合、金属層70は、2つの貫通孔40の各々の重なるように、基部10および蓋体20のキャビティー32を規定する面に設けられていてもよい。
【0113】
4. 電子機器
次に、本実施形態に係る電子機器について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る電子機器は、本発明に係る電子デバイスを含む。以下では、本発明に係る電子デバイスとして、電子デバイス100を含む電子機器について、説明する。
【0114】
図16は、本実施形態に係る電子機器として、モバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューター1100を模式的に示す斜視図である。
【0115】
図16に示すように、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を有する表示ユニット1106と、により構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
【0116】
このようなパーソナルコンピューター1100には、電子デバイス100が内蔵されている。
【0117】
図17は、本実施形態に係る電子機器として、携帯電話機(PHSも含む)1200を模式的に示す斜視図である。
【0118】
図17に示すように、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部1208が配置されている。
【0119】
このような携帯電話機1200には、電子デバイス100が内蔵されている。
【0120】
図18は、本実施形態に係る電子機器として、デジタルスチルカメラ1300を模式的に示す斜視図である。なお、図18には、外部機器との接続についても簡易的に示している。
【0121】
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、デジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0122】
デジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。
【0123】
また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
【0124】
撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。
【0125】
また、このデジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、ビデオ信号出力端子1312には、テレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314には、パーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。
【0126】
このようなデジタルスチルカメラ1300には、電子デバイス100が内蔵されている。
【0127】
以上のような電気機器1100,1200,1300は、信頼性の高い電子デバイス100を含む。そのため、電気機器1100,1200,1300は、高い信頼性を有することができる。
【0128】
なお、上記電子デバイス100を備えた電子機器は、図16に示すパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、図17に示す携帯電話機、図18に示すデジタルスチルカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、各種ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーターなどに適用することができる。
【0129】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0130】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0131】
10 基体、12 第1面、14 凹部、15 凹部、15a 底面、16 第4面、
20 蓋体、22 第1面、23 凹部、23a 底面、24 第2面、
30 パッケージ、32 キャビティー、32a 凹部、40 貫通孔、
41 第1開口、42 第2開口、43〜46 平坦面、48 間隙、50 導電層、
60 封止部材、60a 封止部材、70 金属層、100 電子デバイス、
102 機能素子、102a シリコン基板、104 振動系構造体、
106 第1振動体、108 第2振動体、110 駆動部、112 駆動用支持部、
112a 第1延在部、112b 第2延在部、114 駆動用バネ部、
116 駆動用可動電極、116a 突出部、120 検出部、122 検出用支持部、
122a 第3延在部、122b 第4延在部、124 検出用バネ部、
126 検出用可動電極、130 駆動用固定電極、140 検出用固定電極、
150 固定部、200 電子デバイス、1100 パーソナルコンピューター、
1102 キーボード、1104 本体部、1106 表示ユニット、
1108 表示部、1200 携帯電話機、1202 操作ボタン、1204 受話口、
1206 送話口、1208 表示部、1300 デジタルスチルカメラ、
1302 ケース、1304 受光ユニット、1306 シャッターボタン、
1308 メモリー、1310 表示部、1312 ビデオ信号出力端子、
1314 入出力端子、1430 テレビモニター、
1440 パーソナルコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体に載置されている蓋体と、
前記基体および前記蓋体に囲まれるキャビティーに載置されている機能素子と、
を含み、
前記基体および前記蓋体の少なくとも一方には、貫通孔と、前記貫通孔を塞ぐ封止部材と、が設けられ、
前記基部および前記蓋体の少なくとも一方の前記キャビティーを規定する面に金属層が設けられ、
前記金属層は、平面視において前記貫通孔の前記キャビティー側の第1開口に重なって設けられている、電子デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記貫通孔は、前記第1開口の面積よりも、前記第1開口と反対側の第2開口の面積の方が大きい、電子デバイス。
【請求項3】
請求項2において、
前記機能素子は、平面視において前記第1開口に重ならない位置に配置されている、電子デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記金属層は、前記封止部材に含まれる元素を含んでいる、電子デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記蓋体には、シリコンが用いられる、電子デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記基体は、ガラスであり、
前記機能素子は、シリコンを用いたジャイロセンサーである、電子デバイス。
【請求項7】
基体に機能素子を載置する工程と、
蓋体を用意する工程と、
前記基体および前記蓋体の少なくとも一方に貫通孔を形成する工程と、
前記基体および前記蓋体の少なくとも一方に金属層を形成する工程と、
前記基体に前記蓋体を載置して、前記基体および前記蓋体に囲まれるキャビティーに前記機能素子を収容する工程と、
前記貫通孔に封止部材を配置する工程と、
前記封止部材をエネルギービームで溶融して前記貫通孔を塞ぐ工程と、
を含み、
前記金属層は、
前記基部および前記蓋体の少なくとも一方の前記キャビティーを規定する面であって、平面視において前記貫通孔の前記キャビティー側の第1開口に重なる位置に形成される、電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記貫通孔を塞ぐ工程では、
前記金属層を、前記封止部材の金属および前記金属層の金属の共晶温度以上に加熱する、電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項7または8において、
前記貫通孔を塞ぐ工程では、
前記貫通孔を通して前記キャビティーを減圧した後に、前記封止部材を溶融する、電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電子デバイスを含む、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79868(P2013−79868A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220087(P2011−220087)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】