電子デバイスの製造方法、及び容器の加熱装置
【課題】容器内の導電性接着剤からのアウトガスの生成を促進しつつ封印孔から容器外へ排出させるために、減圧下で容器下部を加熱する工程において、容器上部に設けた封止孔に配置した封止部材の直上位置に配置したカバー部材によって容器の温度が低下して残ガス量が増大したり、生産性が低下するという不具合を解消する。
【解決手段】封止孔37を有した容器2と、封止部材38と、電子部品30と、を有した電子デバイスの製造方法であって、容器を下部加熱手段81上にセットする工程と、封止部材配置工程と、封止部材との間に封止部材の直径よりも小さな隙間を空けて封止部材の直上を覆うようにカバー部材を配置させる工程と、減圧開始と同時、或いは減圧開始後に開始される容器加熱工程と、封止部材溶融工程と、を有し、加熱工程では下部加熱手段による下方からの加熱と、カバー部材を介した上方からの加熱を実施する。
【解決手段】封止孔37を有した容器2と、封止部材38と、電子部品30と、を有した電子デバイスの製造方法であって、容器を下部加熱手段81上にセットする工程と、封止部材配置工程と、封止部材との間に封止部材の直径よりも小さな隙間を空けて封止部材の直上を覆うようにカバー部材を配置させる工程と、減圧開始と同時、或いは減圧開始後に開始される容器加熱工程と、封止部材溶融工程と、を有し、加熱工程では下部加熱手段による下方からの加熱と、カバー部材を介した上方からの加熱を実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、その他の電子部品を容器内に収容した電子デバイスの製造方法、及び容器の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、近年、装置の小型薄型化がめざましく、それらに用いられる圧電デバイスも小型薄型化が要求されている。また、それとともに、装置の回路基板に表面実装が可能な表面実装タイプの圧電デバイスが求められている。
圧電振動子のように容器内に圧電振動素子を気密封止した構造の電子デバイスの製造工程にあっては、封止孔を有した容器内に圧電振動素子を収容した後で、この容器を真空チャンバー内に配置して真空吸引しつつ加熱することにより封止孔から内部ガスを排出し、排出が完了した時点で封止部材を用いて封止孔を封止している。減圧下で加熱する目的は、圧電振動素子を容器内の電極部と接合するのに使用する銀ペーストなどの導電性接着剤などが硬化する過程で発生する有害なガス(アウトガス)等の生成を促進するためである。
【0003】
封止工程では、真空チャンバー内において封止孔が上向きとなるように容器をセットし、封止孔を塞ぐように球状の金属製封止部材を載置してから封止部材にレーザー光を照射して溶融させることにより封止孔を封止する(特許文献1)。
電子デバイスの小型化に伴って封止部材も小型化し、例えば直径0.3mm程度の金属球が使用される。このような小型、軽量の金属球は、真空吸引する際に容器内部から封止孔を経て排出されてくるガスによって押し出されて飛散し易く、飛散すると封止工程を実施できなくなり、これが圧電デバイスの生産性を低下させる原因となっている。
真空引きによって封印部材が飛散することを防止するために、真空引きの速度を低下させることが行われているが、生産性の低下を招くばかりでなく、電子デバイス内の真空度の低下、バラツキによって完成品の特性を低下させる原因となっている。
このような不具合を解決するための手法として、特許文献2には、容器内に圧電振動素子を気密封止することが可能な小型の圧電デバイスの製造方法が開示されている。この製造方法では、真空チャンバー内に配置した容器の封止孔に球状の封止部材を配置してから、真空チャンバー内を減圧することにより容器内部を減圧し、封止孔の内周と封止部材との隙間を介して容器内部のガスを外部に排出させる。このとき、封止孔を形成した容器の外底面とカバー板との隙間が、封止部材の直径よりも小さくなるようにカバー板を配置する。内部空間から排出される気体の圧力により封止孔から球状の封止部材が飛び出そうとした場合に、カバー板によりその封止部材を受け止めるようにしている。
【0004】
ところで、容器を加熱する工程はヒーター上に載置したトレイ上に容器をセットした状態で行われるのが一般であり、容器の下面(封止孔を形成していない面)からのみの加熱が一般である。
しかし、特許文献2に開示された製造方法においては、減圧下で容器を加熱する際にカバー板を容器の直上位置に近接配置するため、下方からの加熱のみで容器を加熱するとすれば、下方からの加熱により昇温した容器の熱の多くが容器上部から低温状態にあるカバー板側に吸収されて容器を低温化させる原因となる。このため、カバー板によって冷却された分だけ容器の加熱が不十分となり、容器内部の導電性接着剤から発生するガス量が減少して残留ガス量が増大することにより、完成した圧電デバイスの特性が低下したり、或いはガス除去工程に要する時間が長期化して生産性を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−158439公報
【特許文献2】特開2011−129735公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、容器内の導電性接着剤からのアウトガスの生成を促進しつつ封印孔から容器外へ排出させるために、減圧下で容器下部を加熱する工程において、容器上部に設けた封止孔に配置した封止部材の直上位置にカバー板を近接配置する場合に、カバー板によって容器の温度が低下して残ガス量が増大したり、生産性が低下するという不具合を解消することができる電子デバイスの製造方法、及び圧電デバイスの加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を備えている容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記空所内に固定している電子部品と、を備えている電子デバイスの製造方法であって、前記容器を加熱するための加熱手段に、該容器をセットする工程と、前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する工程と、前記容器との距離が該封止部材の外形よりも小さくして、前記封止部材を覆うようにカバー部材を配置させる工程と、前記カバー部材を配置させる工程の後で前記空所を減圧する工程と、前記加熱手段と前記カバー部材とで前記容器を加熱する工程、とを含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、容器内の導電性接着剤からのアウトガスの生成を促進しつつ封印孔から容器外へ排出させるために減圧下で容器下部を加熱する工程において、容器上部に設けた封止孔に配置した封止部材の直上位置に封止部材飛散防止用のカバー部材を近接配置する場合に、カバー部材側からも容器上部を加熱するようにしたので、カバー部材によって容器の温度が低下して残ガス量が増大したり、生産性が低下するという不具合を解消することができる。
【0010】
[適用例2]本適用例にかかる電子デバイスの加熱装置は、適用例1において、前記カバー部材は前記封止部材の一部を収容するための凹所を備えていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、カバー部材の下面を容器上面に接触させることが可能となるので、上部加熱手段としてのカバー部材から容器上面に対する熱伝導効率を高めることができる。
【0012】
[適用例3]本適用例にかかる電子デバイスの加熱装置は、減圧した環境で容器を加熱するための加熱装置であって、接触して前記容器を加熱するための加熱手段と、前記容器との間に隙間を空けて間接的に前記容器を加熱するためのカバー部材と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この適用例では、加熱手段からの加熱に加えて、カバー部材を用いて容器を加熱するために、加熱効率を高めることができる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る容器の加熱装置は、適用例3において、前記加熱手段が前記カバー部材を加熱することを特徴とする。
【0015】
これによれば加熱手段からの熱を利用してカバー部材を加熱するので構成をシンプル化することができる。
【0016】
[適用例5]本適用例に係る容器の加熱装置によれば、適用例3又は4において、前記カバー部材は熱源を備えていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、加熱手段とは別の部位からの加熱により加熱温度を任意に制御して容器内のガス発生効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示した概略平面図である。
【図2】図1のX−X線概略断面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】(a)は容器本体内に圧電振動素子を搭載する手順を説明する縦断面図であり、(b)は容器本体に蓋体を固定する手順を説明する図である。
【図5】(a)は真空チャンバー内で減圧した状態で封止部材を溶融している状態を示した説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
【図6】本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
【図7】真空チャンバー内で減圧を実施している状態を示す説明図である。
【図8】減圧工程における温度プロファイルの一例を示した図である。
【図9】トレイ上に配列した容器上にカバー部材を取り付けている状態を示す説明図である。
【図10】(a)及び(b)はカバー部材を用いて減圧を行っている状態を示す要部縦断面図、及び封止部材により封止を行った後の状態を示す縦断面図である。
【図11】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。
【図12】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。
【図13】(a)(b)は本発明の電子デバイスの加熱装置の他の構成例を示す要部断面図である。
【図14】(a)は本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図であり、(b)は(a)のX−X線概略断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1乃至図3は、本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のX−X線概略断面図、図3は図1の底面図である。
これらの図において、圧電デバイス1は、圧電振動子を構成した例を示しており、圧電デバイス1は、容器2内に圧電振動素子(電子部品)30を気密封止した構成を有している。
容器2は、容器本体3と、容器本体3上に搭載された圧電振動素子30を気密封止するために組み付けられる蓋体20と、から構成されている。
【0020】
容器本体3は、例えば、セラミックグリーンシートを積層して焼結した酸化アルミニウム質焼結体等の基板で形成されている。複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成するようにされている。すなわち、図2に示すように、本実施形態の容器本体3は、例えば、平板状の第1の積層基板11と、その上に重ねられる一部に穴を有した第2の積層基板12と、その上に重ねられる環状の第3の積層基板13と、から形成されている。
容器本体3の内部空間S内の左端部付近において、内部空間Sに露出して底部を構成するベースとなる第2の積層基板12には、Au及びNiメッキが施された電極部15、15が設けられている。この電極部15、15は、外部と接続されて駆動電圧を供給するものである。この各電極部15、15の上に導電性接着剤16、16が塗布され、この導電性接着剤16、16の上に圧電振動素子30の基部31が載置されて、導電性接着剤16、16が硬化されるようになっている。
【0021】
圧電振動素子30の基部31の導電性接着剤16、16と触れる部分には、駆動電圧を伝えるための引出電極(図示せず)が形成されており、これにより、圧電振動素子30は、駆動用電極が容器本体3側の電極部15、15と導電性接着剤16、16を介して電気的に接続されている。
圧電振動素子30を構成する圧電基板は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。本実施形態の場合、圧電振動素子30は、容器本体3側と固定される基部31と、この基部31から、図において右方に向けて二股に別れて平行に延びる一対の振動腕34、35を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型圧電振動素子が利用されている。
容器本体3の開放された上面には、低融点ガラス等のロウ材33を介して、金属製の蓋体20が接合されることにより封止されている。
【0022】
また、容器本体3の底面のほぼ中央付近には、容器本体3の底板を構成する2枚の積層基板11、12に夫々第1及び第2の貫通孔37a、37bを連続形成することにより貫通孔としての封止孔37が設けられている。この封止孔37を構成する2つの貫通孔のうち、容器本体内部に開口する第1の貫通孔37aに対して、外側の第2の貫通孔37bは、より大きな内径を備えた同心円状に構成されている。これにより、封止孔37は段部40を有する開口とされており、好ましくは、貫通孔37bの段部と、貫通孔37aの孔内周面には後述する封止部材38である金属ボール(例えば、金ゲルマニウム合金(Au/Ge))に対して、濡れ性のよい金属、例えば、金メッキ等が、所定の下地層の上に形成されることにより被覆されている。
すなわち、容器本体3内に圧電振動素子30を固定した後で、封止孔37には封止部材(金属製封止部材)38が溶融充填されることにより、容器本体3内を気密状態に封止する。
【0023】
本例では、封止孔37に充填される封止部材38として、後述する封止工程で詳しく説明するように、特に金ゲルマニウム合金(Au/Ge)が用いられている。なお、封止部材としては任意の金属材料を使用することができる。
さらに、この実施形態では、容器本体3を構成する第2の積層基板12には、図において右端部付近に孔を形成することにより、この積層基板12の厚みに対応した凹部42が形成されている。この凹部42は、圧電振動素子30の下方に位置している。これにより、本実施形態では、容器本体3に外部から衝撃が加わった場合に、圧電振動素子30の自由端が矢印D方向に変位して振れた場合においても、容器本体3の内側底面と接触することを防止している。
本実施形態に係る圧電デバイス1は以上のように構成されており、圧電デバイス1の容器本体3が金ゲルマニウム合金(Au/Ge)からなる封止部材38により封止されている。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークされることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0024】
次に、本発明の電子デバイスの製造方法は、次の如き特徴的な構成を有する。
即ち、本発明は、内部に空所Sを有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔37を外壁(積層基板11、12、或いは蓋体20)に有した容器2と、溶融した後で固化することにより封止孔37を封止する封止部材38と、封止部材により封止孔を本封止された容器内に気密封止された電子部品30と、を有した電子デバイスの製造方法に関するものである。
本発明に係る製造方法の特徴的な構成は、封止孔37が上向きとなるように容器2を下部加熱手段(加熱手段)上にセットする容器セット工程と、封止部材38を該封止孔上に配置する封止部材配置工程と、封止部材との間に該封止部材の直径よりも小さな隙間を空けて封止部材の直上を覆うようにカバー部材を配置させるカバー部材配置工程と、容器、及びカバー部材をチャンバー内に配置し、該チャンバー内を減圧することにより容器の空所を減圧する減圧工程と、減圧開始と同時、或いは減圧開始後に開始される容器を加熱する加熱工程と、空所が減圧された状態で封止部材を溶融させる溶融工程と、溶融工程の後で、チャンバーを大気開放する工程と、を有し、加熱工程では、下部加熱手段による容器下方からの加熱と、カバー部材を介した容器上方からの加熱を実施するようにした点にある。
【0025】
次に、図6は本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
図6において、容器、及び圧電振動素子の製造工程は図示を省略し、容器本体準備工程(ステップS1)、圧電振動素子の準備工程(ステップS2)としてそれぞれ簡略化して示した。
ステップS1に示す容器本体3準備工程では、容器本体3を製造して準備する。容器本体3は、例えば、セラミック、ガラスなどの絶縁材料を用いて形成し、さらに具体的には、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートなどを成形して用いることができる。そのセラミックグリーンシートなどの材料を成形して、直径の異なる同心の貫通孔37a、37bをそれぞれ設けた2枚の積層基板11、12を積層し、さらに第2の積層基板12上に矩形環状の第3の積層基板13を積層させ、その後焼成することによって段差を有する凹部が形成された容器本体3の外形を得る。
なお、各貫通孔37a、37bは円形の穴であってもよいし、非円形(多角形、その他の不規則形状)の穴であってもよい。
【0026】
絶縁材料からなる容器本体3の外面適所に、例えば、タングステンメタライズを施した上に、ニッケルめっきおよび金めっきを行ない、さらにフォトリソグラフィーを併用するなどの方法により、第1の積層基板11の外底面に設けられた外部実装端子(図示せず)、第2の積層基板12の上面に設けられた電極部15等を形成する。これと同時に、封止孔37内周面及び外部周縁に封止部材とのなじみのよい金属膜を形成する。なお、容器本体3に設けられた上記の各種端子は、対応する端子同士を、引き回し配線や、各積層基板に予め形成されたスルーホールなどの層内配線により接続する。
ステップS2に示す圧電振動素子の準備工程では、圧電振動素子30を製造して準備する。圧電振動素子30の製造においては、まず、結晶軸に対して所定のカット角で切り出された大判の圧電基板、例えば水晶基板(水晶ウェハー)を準備し、フォトリソグラフィーを用いたウエットエッチング、またはドライエッチングすることにより、水晶基板の外形を形成する。
【0027】
次に、スパッタリングや蒸着などにより、励振電極や外部接続端子などの電極形成を行う。電極形成は、圧電振動素子の外形が形成された水晶基板の表面に、スパッタリングや蒸着により、クロム層を下地として形成し、その上に金層を積層させて形成することができる。
そして、複数の圧電振動素子30が形成されたウェハーをダイシングすることにより、個片の圧電振動素子を複数得る。
【0028】
次に、圧電振動素子接合工程について説明する。
ステップS3に示した圧電振動素子接合工程では、容器本体3の凹部内に設けた電極部15上に導電性接着剤16を用いて圧電振動素子30を配置して電気的、機械的な接続を伴う接合を行う。
具体的には、図4(a)において、容器本体3の外周壁上面に予め封止ガラス等のロウ材33を塗布すると共に、凹部内の電極部15上に導電性接着剤16を塗布し、圧電振動素子30の基部31に設けられている引出し電極(図示せず)の箇所を載せ、軽く荷重をかけて位置決めし、導電性接着剤16を硬化させることにより、圧電振動素子30を容器本体3内にマウントする。
【0029】
次に、ステップS4の圧電振動素子30の周波数調整工程を行う。
周波数調整工程では、まず、圧電振動素子30の初期周波数を測定し、その初期周波数と目標周波数との差を許容範囲まで小さく調整することにより行う。圧電振動素子30の周波数調整は、例えば、レーザーやイオンビームを圧電振動素子30に照射してその一部を所定量エッチングすることにより行う。圧電振動素子30は、その振動部の質量を軽くすることにより振動周波数が高くなることが知られており、例えば、圧電振動素子30に形成された励起電極以外の電極パターンの一部をエッチングすることによって、励起電極の形状を変化させることなく圧電振動素子30の周波数を高く調整することができる。この質量削減方式による周波数調整方法を用いる場合には、圧電振動素子30の初期の周波数を目標周波数に対して低めの周波数となるように作り込みを行っておく。また、上記の質量削減方式とは逆に、圧電振動素子30の振動部に質量を付加して周波数を低下させることにより周波数調整を行うこともできる(質量付加方式)。質量付加の方法としては、スパッタリング法や蒸着法などにより圧電振動素子30の振動部に金属膜を堆積させる方法などを利用することができる。この質量付加方式により周波数調整を行う場合には、圧電振動素子30の初期の周波数は目標周波数に対して高めの周波数となるようにつくり込みを行う。
【0030】
次に、ステップS5に示すように、容器本体3の外周壁の開放された上端に蓋体20を接合する。容器本体3と蓋体20との接合は、容器本体3の上端面上に、例えば、コバール(Fe−Ni−Co)合金などからなるロウ材としてのシールリングを設け、そのシールリングを介して、蓋体20をシーム溶接することにより行うことができる。
具体的には、図4(b)に示すように、例えば、窒素雰囲気を形成するためのチャンバー51内において、支持台53上のトレイ54に、蓋体20を載置し、その上に上述したロウ材33が蓋体20と接触するように容器本体3を逆さにして載置し、上から錘52により荷重をかけながら、チャンバー51内を加熱する。これにより、ロウ材33を溶融して硬化させることにより蓋体20を接合する。尚、この工程は、チャンバー51に代えて、窒素雰囲気が管理されたベルト炉に圧電デバイス1を通して行うようにしてもよい。
【0031】
以上の工程により、容器内に圧電振動素子を未封止状態で収容するプロセスを完了する。
次に、内部空間Sに圧電振動素子30を収容、接合した容器2を、封止工程(S6〜S10)に移して封止を行う。
封止工程は、例えば、図5(a)に示すように真空チャンバー51aなどの内部に圧電振動素子を収容した容器2(容器本体3、蓋体20)を収容して行う。この際、封止孔37が上向きとなるように、容器2の上下を逆にしてセットする。
まず、ステップS6に示すように、容器2の底面に設けた封止孔37内に、金とゲルマニウムとの合金、あるいは、金と錫との合金などからなる球状の封止部材38を配置する。この球状の封止部材38の配置は、封止孔37が有する内周の形状を利用して行うことができる。すなわち、内部空所S側の貫通孔37aと、その貫通孔37aよりも大きな同心の(外部側の)貫通孔37bとが連通してなる封止孔37の段差形状を利用して、容器2を内部空所S側が下側となるように載置することにより、封止孔37の外部側から入れ込んだ球状の封止部材38が封止孔37内の段部に保持されて配置される(図5(c))を参照)。
【0032】
図5(c)の工程をさらに詳しく説明する。図5(c)の一部を拡大して示す図5(b)に表されているように、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38が配置される封止孔37は、所定の内径n1を備える内側の第1の貫通孔37aと、この第1の貫通孔37aと連通して設けられると共に、第1の貫通孔37aよりも大きな内径n2を備えて外側に開口した第2の貫通孔37bとを備えている。球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38の直径n3は、第1の貫通孔37aの内径n1よりも大きく、第2の貫通孔37bの内径n2よりも僅かに小さく形成されている。
このため、球形の金ゲルマニウム合金の封止部材(Au/Ge)38は、図示されているように、第1の貫通孔37aの内周縁のエッジe(段部40)の稜線上に接触して保持されている。
【0033】
次に、ステップS7において減圧工程を実施する。
ステップS7の減圧工程において、真空チャンバー51a内を減圧することにより容器2の内部空所Sを減圧しながら容器を上下両方から加熱し、封止孔37の内周と封止部材38との隙間を介して、加熱により生成された容器2内部のガスを容器2の外部に排出させる。すなわち、ステップS3で説明した圧電振動素子30と電極部15とを接合に供する銀ペーストなどの導電性接着剤16などの硬化の過程で発生する有害なガス(アウトガス)や、容器2内部(内部空所S)の水分が蒸発した気体を、この減圧ステップで外部に排出させる。
即ち、ステップS7の減圧工程では、図7に示すように、封止部材38を封止孔37上に配置した状態にある容器2を真空チャンバー51a内に配置し、真空チャンバー51a内を図示しない真空排気手段により真空引きし、好ましくは、高真空状態とする。
【0034】
また、減圧開始と同時、或いは減圧開始後に開始される容器を加熱する加熱工程では、下部加熱手段(加熱手段)による容器下方からの加熱と、カバー部材を介した容器上方からの加熱を実施する。
なお、図8は、減圧工程における温度プロファイルの一例を示している。すなわち、真空チャンバー51a内を例えば、10-3Pa(パスカル)程度の高真空とする。そして、T1時間(例えば、20分)の間、250度ないし300度、好ましくは、260度以上にまで加熱する。この温度をT2時間(例えば、30分)維持して、容器2内の例えば導電性接着剤16等から生成される気体成分を容器2外に排出する。
【0035】
続いて、真空チャンバー51a内の温度と気圧を保持したまま、真空孔封止工程(溶融工程)をT3時間(例えば、20分)行う。この時、周囲の温度が高くても、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38の融点は高いので、溶融されることなく、従来260度程度であった加熱温度を280度程度まで上げて、効果的に上記気体成分の追い出しを行うことができる。そして、レーザー照射手段55から、封止部材38に向けてレーザー光Lを照射して、仮固定された封止部材38を溶融、固化することにより、貫通孔37を完全に塞ぐ(S8、S9)。
即ち、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38に、図5(a)のように、レーザー光Lを照射する。このレーザー光Lは、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の融点が360度程度であるにもかかわらず、本実施形態の封止部材38は光を吸収しやすい性質をもつため、金すずの場合とほぼ同じ条件で照射することで、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金38を適切に溶融することができる。
【0036】
本発明では、少なくとも上記ステップS7の減圧工程の際に、図7、図9に示すように、容器2の封止孔37が形成された外底面と平行な隙間を空けてカバー部材70を配置する。また、図7、図9では、製造効率を上げるために、複数の容器2を封止孔37を上側に向けた状態でセットできる凹部54aが設けられたパッケージ載置台54を用いた例を示している。
さらに詳細には、図10(a)に示すように、容器2の外底面を形成する積層基板11の外部側の面とカバー部材70との隙間tが、封止部材38の外形(例えば、球形の封止部材であればその直径)Dよりも小さくなるようにカバー部材70を配置する(t≦D)。これにより、容器2内部の脱ガスの過程で、内部空所Sから外部に排出される気体の圧力により封止孔37から球状の封止部材38が飛び出そうとした場合に、その球状の封止部材38をカバー部材70で受け止めて飛散を防止することができる。
封止部材は球形あるとは限らないため、非球形である場合にはその外形寸法をDとする。
なお、また、図10(a)では、減圧していない状態において封止孔37に配置された球状の封止部材38とカバー部材70とが接触しないように、隙間t≦外形Dとなる範囲にて所定の隙間を設けた例を示しているが、これは、後述する球状の封止部材38を溶融させる工程(ステップS8)にて、カバー部材70を容器2の外底面側に配置させたままの状態で球状の封止部材38を溶融させた場合に、溶融した封止部材38がカバー部材70に付着するのを防ぐためである。ここで、容器2の外底面とカバー部材70との隙間tは、球状の封止部材38とカバー部材70とが接触しない範囲でなるべく小さい方が、封止孔37から飛び出そうとする挙動を呈した封止部材38を、カバー部材70により封止孔37内の所定の位置に、より短時間で復帰させることができるので、減圧時間を短縮でき、作業効率の向上が図れるので好ましい。
【0037】
ここで、容器2の外底面とカバー部材70との隙間tを、t≦Dの関係を満たす範囲で所望の隙間に管理して配置させるには、図示はしないが、パッケージ載置台54の凹部54aが設けられた領域とは異なる領域に、容器2の外底面とカバー部材70との隙間tと同じ厚みのスペーサーを設ければよい。
また、封止部材38を溶融させるステップにて、カバー部材70を容器2から離間、離脱させる場合には、減圧ステップにおいて、封止部材38とカバー部材70とが接触していてもよい。
【0038】
本発明の特徴的な構成は、下部加熱手段による容器下方からの加熱の他に、カバー部材を介した容器上方からの加熱を併用したことにより、アウトガスの排出を促進して生産性を向上し、完成した製品の特性を高めた点にある。なお、加熱装置の構成例については後述する。
下部加熱手段による容器下部への加熱温度と、カバー部材を介した容器上部への加熱温度とは、同程度であってもよいが、カバー部材が容器から離間している場合にはカバー部材からの加熱温度の方を高く設定する方が好ましい。
ステップS7の減圧ステップにて、封止孔37の内周と封止部材38との隙間を介して容器2内部の脱ガスを行った後で、カバー部材70を除去してから、封止孔37に配置させた球状の封止部材38に例えばレーザー光を照射して、球状の封止部材38を溶融させる。すると、溶融した封止部材38が金属膜45に濡れ広がり、封止部材38による封止孔37の封止を強固なものとすることができる(ステップS8)。
なお、カバー部材としては、熱伝導率が100W/m・K以上の金属を使用するのが好ましい。たとえば、マグネシウム、アルミニウム、銅を用いる。
【0039】
次に、図10(b)に示すように、溶融した封止部材38を封止孔37内に十分に充填させてから、レーザー光の照射をやめて溶融した封止部材38を冷却して硬化(固化)させる(ステップS9)。そして、真空チャンバー内を大気開放して(ステップS10)、ステップS6からの封止工程を終了し、真空チャンバー内から複数の圧電デバイス1(容器2)が載置されたパッケージ載置台54を取り出し、一連の製造工程を終了する。
【0040】
上記実施形態の圧電デバイス1の製造方法によれば、容器2の内部空所Sから脱ガスを行う減圧ステップ(ステップS7)において、内部空所Sから外部に排出される気体の圧力により封止孔37から容器外へ飛び出そうとする球状の封止部材38をカバー部材70で受け止めることができるので、球状の封止部材38が封止孔37から飛び出すことによる圧電デバイス1の封止不良を防止することができる。したがって、圧電振動素子が接合された容器2の内部空所Sが確実に気密封止された圧電振動デバイス1を高歩留まりにて製造することができる。
【0041】
また、本実施形態の方法では、容器本体3の底部に形成された貫通孔37に対して、球形に形成した金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38を配置して、溶融工程において溶融(本封止)するようにしている。
この金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38は、融点が高いが、酸化されやすく、表面に酸化膜が形成されやすく、酸化膜が存在すると、加熱により流れにくくなり、封止作業がその分困難になる。ところが、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)を球形にして、レーザー光を照射すると、酸化膜のために、光を吸収しやすく、容易に溶融され、酸化膜が貫通孔37の外側に向かって表面に押し出される。これにより、封止部材38の合金成分を貫通孔37内に適切に流すことで、貫通孔37を完全に塞ぐことができる。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金の封止部材38は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークすることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0042】
次に、図11(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。なお、電子デバイスの構成については、上記実施形態中の部材名、符号等を流用して説明する。
本発明の第1の実施形態に係る加熱装置80は、内部に空所Sを有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔37を有した容器2、封止孔上に配置された封止部材38、及び容器内に気密封止された電子部品30を有した電子デバイス1(図面上現れていない)を加熱する手段である。
この電子デバイスの加熱装置80は、封止孔37を上向きとした容器2の下部(封止孔の存在しない部分)を加熱する下部加熱手段(ベースヒーター)81と、封止孔が形成された容器の上部を加熱する上部加熱手段85(カバー部材70)と、を備え、下部加熱手段81からの熱をカバー部材70に熱伝導させて容器上部を加熱するように構成されている。
【0043】
本例では、上部加熱手段85としてカバー部材70、及び熱伝導部材82を利用しており、下部加熱手段81上に立設したスペーサーを兼ねた熱伝導部材82上にカバー部材70を配置し、下部加熱手段81からの熱を熱伝導部材82を介してカバー部材70に伝導することによりカバー部材を加熱している。この場合、熱伝導部材82も上部加熱手段85の一部を構成している。
熱伝導部材82としては、例えば銅等の熱伝導の良好な金属を用い、上部加熱手段85としてのカバー部材70としては熱伝導の良好なマグネシウム、アルミニウム等の金属を用いる。
この実施形態によれば、上方からの加熱を行うための構成をシンプル化することができる。
【0044】
次に、図12(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。
本例に係る上部加熱手段85は、カバー部材70と、カバー部材に配線したヒーター線86とから構成されており、ヒーター線86に通電させることによりカバー部材70を発熱させている。本例では、カバー部材自体が熱源を備えている点において図11の実施形態と異なっている。
なお、図示のように下部加熱手段81上に設置した熱伝導部材82を介して下部加熱手段からの熱がカバー部材70に伝導されるように構成してもよい。
前述のように、減圧下で容器を加熱する際にカバー部材を容器の直上位置に近接配置する場合に容器を下方からのみ加熱するとすれば、下方からの加熱により昇温した容器の熱の多くが容器上部から低温状態にあるカバー部材側に吸収されて容器を低温化させる原因となる。この場合、カバー部材よって冷却された分だけ容器の加熱が不十分となり、容器内部の導電性接着剤から発生するガス量が低下して残留ガス量が増大することにより完成した圧電デバイスの特性が低下したり、或いはガス除去工程に要する時間が長期化して生産性を低下させるという問題がある。
【0045】
これに対して本発明では、容器下部を加熱する際に、カバー部材70を同時に加熱して十分に昇温させるので、容器の熱がカバー部材によって吸収されて容器の温度が低下することがなくなる。このため、容器内部の導電性接着剤からのガス量の発生を促進して効率的に残留ガス量を減少させることができる。このため、完成した圧電デバイスの特性の低下を防止し、ガス除去工程に要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
図12の実施形態では、上部からの加熱温度を下部加熱手段からの加熱とは独立して任意に制御できるので、容器内のガス発生効率を高めることができる。
【0046】
次に、図13(a)(b)は、本発明の電子デバイスの加熱装置の他の構成例を示す図である。
この加熱装置80では、上部加熱手段85としてのカバー部材70は、封止部材38と対向する下面に、封止部材38との間に封止部材の外形(例えば、直径)Dよりも小さな隙間tを空けるための凹所71を備えている。このカバー部材70を電子デバイス上にセットした場合には、凹所71の天井面が封止部材38の上端部との間に隙間tを隔てて対向配置されると共に、カバー部材の底面は電子デバイスの容器上面(封止孔を形成した側の面)に接触するため、カバー部材からの熱を容器上面に直接伝導することができ、加熱効率を向上させることができる。
凹所71の天井面と封止部材38との間に隙間tを形成する本構成は、図13(a)のように封止部材38の一部が封止孔37から外側に突出している場合のみならず、(b)のように封止部材38が封止孔から突出しない場合にも適用することができる。
なお、図13(a)(b)の何れにおいても、t=0、即ち、封止部材と凹所71の天井面とが接触することも有り得る。この場合においても、加熱によって封止部材が溶融する訳ではないため、問題はない。
なお、カバー部材70の下面を容器上面と接触させたとしても、両者の隙間から負圧が入り込んで封止孔内を減圧することができる。ただ、万が一、カバー部材70の下面が封止孔37を閉塞することがないように、凹所71に対応するカバー部材部分には通気孔72を形成してもよい。
この構成によれば、カバー部材70から容器上部に対する加熱効率を大幅に高めることができる一方で、減圧時に容器内部から排出されるガスによって封止部材が飛散することも効果的に防止できる。
【0047】
次に、図14(a)は、本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図である。図において、圧電デバイス60は、圧電振動素子30を用いて、圧電発振器を形成した例を示しており、第1の実施の形態と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図14(b)は、図14(a)のX−X線概略断面図であり、容器本体61は、その製造の際に、第1の実施形態の容器本体3よりも多くのセラミックシートの積層基板を用いて製造されている。これにより、容器本体61には、増えた分の積層基板を利用して中央付近に凹部62が形成されており、その内側底部には、図示しない電極が設けられている。この電極上には、集積回路63が実装されている。集積回路63は、所定の分周回路等を構成していて、圧電振動素子30の駆動電極と電気的に接続され、集積回路63から出力された駆動電圧が圧電振動素子30に与えられるようになっている。
容器本体61の貫通孔37に充填されている封止部材38は、第1の実施形態で説明したものと同じであり、同一の封止工程で封止されたものである。したがって、本実施形態も第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。このように、本発明は、圧電振動子に限らず、図14のような圧電発振器やフィルタ等、その名称にかかわらず、容器本体内に圧電振動素子を収容して、蓋体により封止する構成のあらゆる圧電デバイスに適用できる。
【0048】
図15は、本発明の上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。図15において、送信者の音声を受信するマイクロフォン108及び受信内容を音声出力とするためのスピーカ109を備えており、さらに、送受信信号の変調及び復調部に接続された制御部としての集積回路等でなるコントローラ101を備えている。コントローラ101は、送受信信号の変調及び復調の他に画像表示部としてのLCDや情報入力のための操作キー等でなる情報の入出力部102や、RAM、ROM等でなる情報記憶手段103の制御を行うようになっている。このため、コントローラ101には、圧電デバイス1が取り付けられて、その出力周波数をコントローラ101に内蔵された所定の分周回路(図示せず)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。このコントローラ101に取付けられる圧電デバイス1は、圧電デバイス1単体でなくても、圧電デバイス1と、所定の分周回路等とを組み合わせた発振器である図14のような圧電デバイス60であってもよい。
コントローラ101は、さらに、温度補償水晶発振器(TCXO)105と接続され、温度補償水晶発振器105は、送信部107と受信部106に接続されている。これにより、コントローラ101からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償水晶発振器105により修正されて、送信部107及び受信部106に与えられるようになっている。
このように、制御部を備えた携帯電話装置110のような電子機器に、上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用することにより、製造工程において、容器本体内に正しく位置決めされた圧電振動素子を備える圧電デバイスを使用していることによって、正確なクロック信号を生成することができる。
【0049】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、上記実施形態では封止孔を容器本体側に形成したが、蓋体側に封止孔を備えた電子デバイスに対しても本発明による封止方法を適用することができる。要するに、本発明は容器の外面の何れかの部位に封止孔を有した電子デバイス一般に対して適用することができる。
また、上記実施形態に係る容器本体3は上面に凹部を有した絶縁基板としたが、凹部を有しない平板状の絶縁基板上に電子部品を搭載し、電子部品を含む絶縁基板上の空間をバスタブ形(逆椀形)の蓋体により封止するようにした電子デバイスに対しても本発明の封止方法を適用することができる。この場合、封止孔は絶縁基板側に設けても良いし、蓋体側に設けても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…圧電デバイス、2…容器、3…容器本体、11、12、13…積層基板、15…電極部、16…導電性接着剤、20…蓋体、30…圧電振動素子、31…基部、33…ロウ材、34、35…振動腕、37…封止孔、37a、37b…貫通孔、38…封止部材、40…段部、42…凹部、45…金属膜、51…チャンバー、51a…真空チャンバー、52…錘、53…支持台、54…トレイ(パッケージ載置台)、54a…凹部、55…レーザー照射手段、60…圧電デバイス、61…容器本体、62…凹部、63…集積回路、70…カバー部材、71…凹所、72…通気孔、80…加熱装置、81…下部加熱手段(加熱手段)、82…熱伝導部材、85…上部加熱手段、86…ヒーター線、101…コントローラ、102…入出力部、103…情報記憶手段、105…温度補償水晶発振器、106…受信部、107…送信部、108…マイクロフォン、109…スピーカ、110…携帯電話装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、その他の電子部品を容器内に収容した電子デバイスの製造方法、及び容器の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、近年、装置の小型薄型化がめざましく、それらに用いられる圧電デバイスも小型薄型化が要求されている。また、それとともに、装置の回路基板に表面実装が可能な表面実装タイプの圧電デバイスが求められている。
圧電振動子のように容器内に圧電振動素子を気密封止した構造の電子デバイスの製造工程にあっては、封止孔を有した容器内に圧電振動素子を収容した後で、この容器を真空チャンバー内に配置して真空吸引しつつ加熱することにより封止孔から内部ガスを排出し、排出が完了した時点で封止部材を用いて封止孔を封止している。減圧下で加熱する目的は、圧電振動素子を容器内の電極部と接合するのに使用する銀ペーストなどの導電性接着剤などが硬化する過程で発生する有害なガス(アウトガス)等の生成を促進するためである。
【0003】
封止工程では、真空チャンバー内において封止孔が上向きとなるように容器をセットし、封止孔を塞ぐように球状の金属製封止部材を載置してから封止部材にレーザー光を照射して溶融させることにより封止孔を封止する(特許文献1)。
電子デバイスの小型化に伴って封止部材も小型化し、例えば直径0.3mm程度の金属球が使用される。このような小型、軽量の金属球は、真空吸引する際に容器内部から封止孔を経て排出されてくるガスによって押し出されて飛散し易く、飛散すると封止工程を実施できなくなり、これが圧電デバイスの生産性を低下させる原因となっている。
真空引きによって封印部材が飛散することを防止するために、真空引きの速度を低下させることが行われているが、生産性の低下を招くばかりでなく、電子デバイス内の真空度の低下、バラツキによって完成品の特性を低下させる原因となっている。
このような不具合を解決するための手法として、特許文献2には、容器内に圧電振動素子を気密封止することが可能な小型の圧電デバイスの製造方法が開示されている。この製造方法では、真空チャンバー内に配置した容器の封止孔に球状の封止部材を配置してから、真空チャンバー内を減圧することにより容器内部を減圧し、封止孔の内周と封止部材との隙間を介して容器内部のガスを外部に排出させる。このとき、封止孔を形成した容器の外底面とカバー板との隙間が、封止部材の直径よりも小さくなるようにカバー板を配置する。内部空間から排出される気体の圧力により封止孔から球状の封止部材が飛び出そうとした場合に、カバー板によりその封止部材を受け止めるようにしている。
【0004】
ところで、容器を加熱する工程はヒーター上に載置したトレイ上に容器をセットした状態で行われるのが一般であり、容器の下面(封止孔を形成していない面)からのみの加熱が一般である。
しかし、特許文献2に開示された製造方法においては、減圧下で容器を加熱する際にカバー板を容器の直上位置に近接配置するため、下方からの加熱のみで容器を加熱するとすれば、下方からの加熱により昇温した容器の熱の多くが容器上部から低温状態にあるカバー板側に吸収されて容器を低温化させる原因となる。このため、カバー板によって冷却された分だけ容器の加熱が不十分となり、容器内部の導電性接着剤から発生するガス量が減少して残留ガス量が増大することにより、完成した圧電デバイスの特性が低下したり、或いはガス除去工程に要する時間が長期化して生産性を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−158439公報
【特許文献2】特開2011−129735公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、容器内の導電性接着剤からのアウトガスの生成を促進しつつ封印孔から容器外へ排出させるために、減圧下で容器下部を加熱する工程において、容器上部に設けた封止孔に配置した封止部材の直上位置にカバー板を近接配置する場合に、カバー板によって容器の温度が低下して残ガス量が増大したり、生産性が低下するという不具合を解消することができる電子デバイスの製造方法、及び圧電デバイスの加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる圧電デバイスの製造方法は、内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を備えている容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記空所内に固定している電子部品と、を備えている電子デバイスの製造方法であって、前記容器を加熱するための加熱手段に、該容器をセットする工程と、前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する工程と、前記容器との距離が該封止部材の外形よりも小さくして、前記封止部材を覆うようにカバー部材を配置させる工程と、前記カバー部材を配置させる工程の後で前記空所を減圧する工程と、前記加熱手段と前記カバー部材とで前記容器を加熱する工程、とを含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、容器内の導電性接着剤からのアウトガスの生成を促進しつつ封印孔から容器外へ排出させるために減圧下で容器下部を加熱する工程において、容器上部に設けた封止孔に配置した封止部材の直上位置に封止部材飛散防止用のカバー部材を近接配置する場合に、カバー部材側からも容器上部を加熱するようにしたので、カバー部材によって容器の温度が低下して残ガス量が増大したり、生産性が低下するという不具合を解消することができる。
【0010】
[適用例2]本適用例にかかる電子デバイスの加熱装置は、適用例1において、前記カバー部材は前記封止部材の一部を収容するための凹所を備えていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、カバー部材の下面を容器上面に接触させることが可能となるので、上部加熱手段としてのカバー部材から容器上面に対する熱伝導効率を高めることができる。
【0012】
[適用例3]本適用例にかかる電子デバイスの加熱装置は、減圧した環境で容器を加熱するための加熱装置であって、接触して前記容器を加熱するための加熱手段と、前記容器との間に隙間を空けて間接的に前記容器を加熱するためのカバー部材と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この適用例では、加熱手段からの加熱に加えて、カバー部材を用いて容器を加熱するために、加熱効率を高めることができる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る容器の加熱装置は、適用例3において、前記加熱手段が前記カバー部材を加熱することを特徴とする。
【0015】
これによれば加熱手段からの熱を利用してカバー部材を加熱するので構成をシンプル化することができる。
【0016】
[適用例5]本適用例に係る容器の加熱装置によれば、適用例3又は4において、前記カバー部材は熱源を備えていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、加熱手段とは別の部位からの加熱により加熱温度を任意に制御して容器内のガス発生効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示した概略平面図である。
【図2】図1のX−X線概略断面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】(a)は容器本体内に圧電振動素子を搭載する手順を説明する縦断面図であり、(b)は容器本体に蓋体を固定する手順を説明する図である。
【図5】(a)は真空チャンバー内で減圧した状態で封止部材を溶融している状態を示した説明図であり、(b)はその要部拡大図である。
【図6】本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
【図7】真空チャンバー内で減圧を実施している状態を示す説明図である。
【図8】減圧工程における温度プロファイルの一例を示した図である。
【図9】トレイ上に配列した容器上にカバー部材を取り付けている状態を示す説明図である。
【図10】(a)及び(b)はカバー部材を用いて減圧を行っている状態を示す要部縦断面図、及び封止部材により封止を行った後の状態を示す縦断面図である。
【図11】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。
【図12】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。
【図13】(a)(b)は本発明の電子デバイスの加熱装置の他の構成例を示す要部断面図である。
【図14】(a)は本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図であり、(b)は(a)のX−X線概略断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1乃至図3は、本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のX−X線概略断面図、図3は図1の底面図である。
これらの図において、圧電デバイス1は、圧電振動子を構成した例を示しており、圧電デバイス1は、容器2内に圧電振動素子(電子部品)30を気密封止した構成を有している。
容器2は、容器本体3と、容器本体3上に搭載された圧電振動素子30を気密封止するために組み付けられる蓋体20と、から構成されている。
【0020】
容器本体3は、例えば、セラミックグリーンシートを積層して焼結した酸化アルミニウム質焼結体等の基板で形成されている。複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成するようにされている。すなわち、図2に示すように、本実施形態の容器本体3は、例えば、平板状の第1の積層基板11と、その上に重ねられる一部に穴を有した第2の積層基板12と、その上に重ねられる環状の第3の積層基板13と、から形成されている。
容器本体3の内部空間S内の左端部付近において、内部空間Sに露出して底部を構成するベースとなる第2の積層基板12には、Au及びNiメッキが施された電極部15、15が設けられている。この電極部15、15は、外部と接続されて駆動電圧を供給するものである。この各電極部15、15の上に導電性接着剤16、16が塗布され、この導電性接着剤16、16の上に圧電振動素子30の基部31が載置されて、導電性接着剤16、16が硬化されるようになっている。
【0021】
圧電振動素子30の基部31の導電性接着剤16、16と触れる部分には、駆動電圧を伝えるための引出電極(図示せず)が形成されており、これにより、圧電振動素子30は、駆動用電極が容器本体3側の電極部15、15と導電性接着剤16、16を介して電気的に接続されている。
圧電振動素子30を構成する圧電基板は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。本実施形態の場合、圧電振動素子30は、容器本体3側と固定される基部31と、この基部31から、図において右方に向けて二股に別れて平行に延びる一対の振動腕34、35を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型圧電振動素子が利用されている。
容器本体3の開放された上面には、低融点ガラス等のロウ材33を介して、金属製の蓋体20が接合されることにより封止されている。
【0022】
また、容器本体3の底面のほぼ中央付近には、容器本体3の底板を構成する2枚の積層基板11、12に夫々第1及び第2の貫通孔37a、37bを連続形成することにより貫通孔としての封止孔37が設けられている。この封止孔37を構成する2つの貫通孔のうち、容器本体内部に開口する第1の貫通孔37aに対して、外側の第2の貫通孔37bは、より大きな内径を備えた同心円状に構成されている。これにより、封止孔37は段部40を有する開口とされており、好ましくは、貫通孔37bの段部と、貫通孔37aの孔内周面には後述する封止部材38である金属ボール(例えば、金ゲルマニウム合金(Au/Ge))に対して、濡れ性のよい金属、例えば、金メッキ等が、所定の下地層の上に形成されることにより被覆されている。
すなわち、容器本体3内に圧電振動素子30を固定した後で、封止孔37には封止部材(金属製封止部材)38が溶融充填されることにより、容器本体3内を気密状態に封止する。
【0023】
本例では、封止孔37に充填される封止部材38として、後述する封止工程で詳しく説明するように、特に金ゲルマニウム合金(Au/Ge)が用いられている。なお、封止部材としては任意の金属材料を使用することができる。
さらに、この実施形態では、容器本体3を構成する第2の積層基板12には、図において右端部付近に孔を形成することにより、この積層基板12の厚みに対応した凹部42が形成されている。この凹部42は、圧電振動素子30の下方に位置している。これにより、本実施形態では、容器本体3に外部から衝撃が加わった場合に、圧電振動素子30の自由端が矢印D方向に変位して振れた場合においても、容器本体3の内側底面と接触することを防止している。
本実施形態に係る圧電デバイス1は以上のように構成されており、圧電デバイス1の容器本体3が金ゲルマニウム合金(Au/Ge)からなる封止部材38により封止されている。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークされることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0024】
次に、本発明の電子デバイスの製造方法は、次の如き特徴的な構成を有する。
即ち、本発明は、内部に空所Sを有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔37を外壁(積層基板11、12、或いは蓋体20)に有した容器2と、溶融した後で固化することにより封止孔37を封止する封止部材38と、封止部材により封止孔を本封止された容器内に気密封止された電子部品30と、を有した電子デバイスの製造方法に関するものである。
本発明に係る製造方法の特徴的な構成は、封止孔37が上向きとなるように容器2を下部加熱手段(加熱手段)上にセットする容器セット工程と、封止部材38を該封止孔上に配置する封止部材配置工程と、封止部材との間に該封止部材の直径よりも小さな隙間を空けて封止部材の直上を覆うようにカバー部材を配置させるカバー部材配置工程と、容器、及びカバー部材をチャンバー内に配置し、該チャンバー内を減圧することにより容器の空所を減圧する減圧工程と、減圧開始と同時、或いは減圧開始後に開始される容器を加熱する加熱工程と、空所が減圧された状態で封止部材を溶融させる溶融工程と、溶融工程の後で、チャンバーを大気開放する工程と、を有し、加熱工程では、下部加熱手段による容器下方からの加熱と、カバー部材を介した容器上方からの加熱を実施するようにした点にある。
【0025】
次に、図6は本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
図6において、容器、及び圧電振動素子の製造工程は図示を省略し、容器本体準備工程(ステップS1)、圧電振動素子の準備工程(ステップS2)としてそれぞれ簡略化して示した。
ステップS1に示す容器本体3準備工程では、容器本体3を製造して準備する。容器本体3は、例えば、セラミック、ガラスなどの絶縁材料を用いて形成し、さらに具体的には、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートなどを成形して用いることができる。そのセラミックグリーンシートなどの材料を成形して、直径の異なる同心の貫通孔37a、37bをそれぞれ設けた2枚の積層基板11、12を積層し、さらに第2の積層基板12上に矩形環状の第3の積層基板13を積層させ、その後焼成することによって段差を有する凹部が形成された容器本体3の外形を得る。
なお、各貫通孔37a、37bは円形の穴であってもよいし、非円形(多角形、その他の不規則形状)の穴であってもよい。
【0026】
絶縁材料からなる容器本体3の外面適所に、例えば、タングステンメタライズを施した上に、ニッケルめっきおよび金めっきを行ない、さらにフォトリソグラフィーを併用するなどの方法により、第1の積層基板11の外底面に設けられた外部実装端子(図示せず)、第2の積層基板12の上面に設けられた電極部15等を形成する。これと同時に、封止孔37内周面及び外部周縁に封止部材とのなじみのよい金属膜を形成する。なお、容器本体3に設けられた上記の各種端子は、対応する端子同士を、引き回し配線や、各積層基板に予め形成されたスルーホールなどの層内配線により接続する。
ステップS2に示す圧電振動素子の準備工程では、圧電振動素子30を製造して準備する。圧電振動素子30の製造においては、まず、結晶軸に対して所定のカット角で切り出された大判の圧電基板、例えば水晶基板(水晶ウェハー)を準備し、フォトリソグラフィーを用いたウエットエッチング、またはドライエッチングすることにより、水晶基板の外形を形成する。
【0027】
次に、スパッタリングや蒸着などにより、励振電極や外部接続端子などの電極形成を行う。電極形成は、圧電振動素子の外形が形成された水晶基板の表面に、スパッタリングや蒸着により、クロム層を下地として形成し、その上に金層を積層させて形成することができる。
そして、複数の圧電振動素子30が形成されたウェハーをダイシングすることにより、個片の圧電振動素子を複数得る。
【0028】
次に、圧電振動素子接合工程について説明する。
ステップS3に示した圧電振動素子接合工程では、容器本体3の凹部内に設けた電極部15上に導電性接着剤16を用いて圧電振動素子30を配置して電気的、機械的な接続を伴う接合を行う。
具体的には、図4(a)において、容器本体3の外周壁上面に予め封止ガラス等のロウ材33を塗布すると共に、凹部内の電極部15上に導電性接着剤16を塗布し、圧電振動素子30の基部31に設けられている引出し電極(図示せず)の箇所を載せ、軽く荷重をかけて位置決めし、導電性接着剤16を硬化させることにより、圧電振動素子30を容器本体3内にマウントする。
【0029】
次に、ステップS4の圧電振動素子30の周波数調整工程を行う。
周波数調整工程では、まず、圧電振動素子30の初期周波数を測定し、その初期周波数と目標周波数との差を許容範囲まで小さく調整することにより行う。圧電振動素子30の周波数調整は、例えば、レーザーやイオンビームを圧電振動素子30に照射してその一部を所定量エッチングすることにより行う。圧電振動素子30は、その振動部の質量を軽くすることにより振動周波数が高くなることが知られており、例えば、圧電振動素子30に形成された励起電極以外の電極パターンの一部をエッチングすることによって、励起電極の形状を変化させることなく圧電振動素子30の周波数を高く調整することができる。この質量削減方式による周波数調整方法を用いる場合には、圧電振動素子30の初期の周波数を目標周波数に対して低めの周波数となるように作り込みを行っておく。また、上記の質量削減方式とは逆に、圧電振動素子30の振動部に質量を付加して周波数を低下させることにより周波数調整を行うこともできる(質量付加方式)。質量付加の方法としては、スパッタリング法や蒸着法などにより圧電振動素子30の振動部に金属膜を堆積させる方法などを利用することができる。この質量付加方式により周波数調整を行う場合には、圧電振動素子30の初期の周波数は目標周波数に対して高めの周波数となるようにつくり込みを行う。
【0030】
次に、ステップS5に示すように、容器本体3の外周壁の開放された上端に蓋体20を接合する。容器本体3と蓋体20との接合は、容器本体3の上端面上に、例えば、コバール(Fe−Ni−Co)合金などからなるロウ材としてのシールリングを設け、そのシールリングを介して、蓋体20をシーム溶接することにより行うことができる。
具体的には、図4(b)に示すように、例えば、窒素雰囲気を形成するためのチャンバー51内において、支持台53上のトレイ54に、蓋体20を載置し、その上に上述したロウ材33が蓋体20と接触するように容器本体3を逆さにして載置し、上から錘52により荷重をかけながら、チャンバー51内を加熱する。これにより、ロウ材33を溶融して硬化させることにより蓋体20を接合する。尚、この工程は、チャンバー51に代えて、窒素雰囲気が管理されたベルト炉に圧電デバイス1を通して行うようにしてもよい。
【0031】
以上の工程により、容器内に圧電振動素子を未封止状態で収容するプロセスを完了する。
次に、内部空間Sに圧電振動素子30を収容、接合した容器2を、封止工程(S6〜S10)に移して封止を行う。
封止工程は、例えば、図5(a)に示すように真空チャンバー51aなどの内部に圧電振動素子を収容した容器2(容器本体3、蓋体20)を収容して行う。この際、封止孔37が上向きとなるように、容器2の上下を逆にしてセットする。
まず、ステップS6に示すように、容器2の底面に設けた封止孔37内に、金とゲルマニウムとの合金、あるいは、金と錫との合金などからなる球状の封止部材38を配置する。この球状の封止部材38の配置は、封止孔37が有する内周の形状を利用して行うことができる。すなわち、内部空所S側の貫通孔37aと、その貫通孔37aよりも大きな同心の(外部側の)貫通孔37bとが連通してなる封止孔37の段差形状を利用して、容器2を内部空所S側が下側となるように載置することにより、封止孔37の外部側から入れ込んだ球状の封止部材38が封止孔37内の段部に保持されて配置される(図5(c))を参照)。
【0032】
図5(c)の工程をさらに詳しく説明する。図5(c)の一部を拡大して示す図5(b)に表されているように、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38が配置される封止孔37は、所定の内径n1を備える内側の第1の貫通孔37aと、この第1の貫通孔37aと連通して設けられると共に、第1の貫通孔37aよりも大きな内径n2を備えて外側に開口した第2の貫通孔37bとを備えている。球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38の直径n3は、第1の貫通孔37aの内径n1よりも大きく、第2の貫通孔37bの内径n2よりも僅かに小さく形成されている。
このため、球形の金ゲルマニウム合金の封止部材(Au/Ge)38は、図示されているように、第1の貫通孔37aの内周縁のエッジe(段部40)の稜線上に接触して保持されている。
【0033】
次に、ステップS7において減圧工程を実施する。
ステップS7の減圧工程において、真空チャンバー51a内を減圧することにより容器2の内部空所Sを減圧しながら容器を上下両方から加熱し、封止孔37の内周と封止部材38との隙間を介して、加熱により生成された容器2内部のガスを容器2の外部に排出させる。すなわち、ステップS3で説明した圧電振動素子30と電極部15とを接合に供する銀ペーストなどの導電性接着剤16などの硬化の過程で発生する有害なガス(アウトガス)や、容器2内部(内部空所S)の水分が蒸発した気体を、この減圧ステップで外部に排出させる。
即ち、ステップS7の減圧工程では、図7に示すように、封止部材38を封止孔37上に配置した状態にある容器2を真空チャンバー51a内に配置し、真空チャンバー51a内を図示しない真空排気手段により真空引きし、好ましくは、高真空状態とする。
【0034】
また、減圧開始と同時、或いは減圧開始後に開始される容器を加熱する加熱工程では、下部加熱手段(加熱手段)による容器下方からの加熱と、カバー部材を介した容器上方からの加熱を実施する。
なお、図8は、減圧工程における温度プロファイルの一例を示している。すなわち、真空チャンバー51a内を例えば、10-3Pa(パスカル)程度の高真空とする。そして、T1時間(例えば、20分)の間、250度ないし300度、好ましくは、260度以上にまで加熱する。この温度をT2時間(例えば、30分)維持して、容器2内の例えば導電性接着剤16等から生成される気体成分を容器2外に排出する。
【0035】
続いて、真空チャンバー51a内の温度と気圧を保持したまま、真空孔封止工程(溶融工程)をT3時間(例えば、20分)行う。この時、周囲の温度が高くても、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38の融点は高いので、溶融されることなく、従来260度程度であった加熱温度を280度程度まで上げて、効果的に上記気体成分の追い出しを行うことができる。そして、レーザー照射手段55から、封止部材38に向けてレーザー光Lを照射して、仮固定された封止部材38を溶融、固化することにより、貫通孔37を完全に塞ぐ(S8、S9)。
即ち、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38に、図5(a)のように、レーザー光Lを照射する。このレーザー光Lは、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の融点が360度程度であるにもかかわらず、本実施形態の封止部材38は光を吸収しやすい性質をもつため、金すずの場合とほぼ同じ条件で照射することで、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金38を適切に溶融することができる。
【0036】
本発明では、少なくとも上記ステップS7の減圧工程の際に、図7、図9に示すように、容器2の封止孔37が形成された外底面と平行な隙間を空けてカバー部材70を配置する。また、図7、図9では、製造効率を上げるために、複数の容器2を封止孔37を上側に向けた状態でセットできる凹部54aが設けられたパッケージ載置台54を用いた例を示している。
さらに詳細には、図10(a)に示すように、容器2の外底面を形成する積層基板11の外部側の面とカバー部材70との隙間tが、封止部材38の外形(例えば、球形の封止部材であればその直径)Dよりも小さくなるようにカバー部材70を配置する(t≦D)。これにより、容器2内部の脱ガスの過程で、内部空所Sから外部に排出される気体の圧力により封止孔37から球状の封止部材38が飛び出そうとした場合に、その球状の封止部材38をカバー部材70で受け止めて飛散を防止することができる。
封止部材は球形あるとは限らないため、非球形である場合にはその外形寸法をDとする。
なお、また、図10(a)では、減圧していない状態において封止孔37に配置された球状の封止部材38とカバー部材70とが接触しないように、隙間t≦外形Dとなる範囲にて所定の隙間を設けた例を示しているが、これは、後述する球状の封止部材38を溶融させる工程(ステップS8)にて、カバー部材70を容器2の外底面側に配置させたままの状態で球状の封止部材38を溶融させた場合に、溶融した封止部材38がカバー部材70に付着するのを防ぐためである。ここで、容器2の外底面とカバー部材70との隙間tは、球状の封止部材38とカバー部材70とが接触しない範囲でなるべく小さい方が、封止孔37から飛び出そうとする挙動を呈した封止部材38を、カバー部材70により封止孔37内の所定の位置に、より短時間で復帰させることができるので、減圧時間を短縮でき、作業効率の向上が図れるので好ましい。
【0037】
ここで、容器2の外底面とカバー部材70との隙間tを、t≦Dの関係を満たす範囲で所望の隙間に管理して配置させるには、図示はしないが、パッケージ載置台54の凹部54aが設けられた領域とは異なる領域に、容器2の外底面とカバー部材70との隙間tと同じ厚みのスペーサーを設ければよい。
また、封止部材38を溶融させるステップにて、カバー部材70を容器2から離間、離脱させる場合には、減圧ステップにおいて、封止部材38とカバー部材70とが接触していてもよい。
【0038】
本発明の特徴的な構成は、下部加熱手段による容器下方からの加熱の他に、カバー部材を介した容器上方からの加熱を併用したことにより、アウトガスの排出を促進して生産性を向上し、完成した製品の特性を高めた点にある。なお、加熱装置の構成例については後述する。
下部加熱手段による容器下部への加熱温度と、カバー部材を介した容器上部への加熱温度とは、同程度であってもよいが、カバー部材が容器から離間している場合にはカバー部材からの加熱温度の方を高く設定する方が好ましい。
ステップS7の減圧ステップにて、封止孔37の内周と封止部材38との隙間を介して容器2内部の脱ガスを行った後で、カバー部材70を除去してから、封止孔37に配置させた球状の封止部材38に例えばレーザー光を照射して、球状の封止部材38を溶融させる。すると、溶融した封止部材38が金属膜45に濡れ広がり、封止部材38による封止孔37の封止を強固なものとすることができる(ステップS8)。
なお、カバー部材としては、熱伝導率が100W/m・K以上の金属を使用するのが好ましい。たとえば、マグネシウム、アルミニウム、銅を用いる。
【0039】
次に、図10(b)に示すように、溶融した封止部材38を封止孔37内に十分に充填させてから、レーザー光の照射をやめて溶融した封止部材38を冷却して硬化(固化)させる(ステップS9)。そして、真空チャンバー内を大気開放して(ステップS10)、ステップS6からの封止工程を終了し、真空チャンバー内から複数の圧電デバイス1(容器2)が載置されたパッケージ載置台54を取り出し、一連の製造工程を終了する。
【0040】
上記実施形態の圧電デバイス1の製造方法によれば、容器2の内部空所Sから脱ガスを行う減圧ステップ(ステップS7)において、内部空所Sから外部に排出される気体の圧力により封止孔37から容器外へ飛び出そうとする球状の封止部材38をカバー部材70で受け止めることができるので、球状の封止部材38が封止孔37から飛び出すことによる圧電デバイス1の封止不良を防止することができる。したがって、圧電振動素子が接合された容器2の内部空所Sが確実に気密封止された圧電振動デバイス1を高歩留まりにて製造することができる。
【0041】
また、本実施形態の方法では、容器本体3の底部に形成された貫通孔37に対して、球形に形成した金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38を配置して、溶融工程において溶融(本封止)するようにしている。
この金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38は、融点が高いが、酸化されやすく、表面に酸化膜が形成されやすく、酸化膜が存在すると、加熱により流れにくくなり、封止作業がその分困難になる。ところが、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)を球形にして、レーザー光を照射すると、酸化膜のために、光を吸収しやすく、容易に溶融され、酸化膜が貫通孔37の外側に向かって表面に押し出される。これにより、封止部材38の合金成分を貫通孔37内に適切に流すことで、貫通孔37を完全に塞ぐことができる。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金の封止部材38は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークすることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0042】
次に、図11(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。なお、電子デバイスの構成については、上記実施形態中の部材名、符号等を流用して説明する。
本発明の第1の実施形態に係る加熱装置80は、内部に空所Sを有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔37を有した容器2、封止孔上に配置された封止部材38、及び容器内に気密封止された電子部品30を有した電子デバイス1(図面上現れていない)を加熱する手段である。
この電子デバイスの加熱装置80は、封止孔37を上向きとした容器2の下部(封止孔の存在しない部分)を加熱する下部加熱手段(ベースヒーター)81と、封止孔が形成された容器の上部を加熱する上部加熱手段85(カバー部材70)と、を備え、下部加熱手段81からの熱をカバー部材70に熱伝導させて容器上部を加熱するように構成されている。
【0043】
本例では、上部加熱手段85としてカバー部材70、及び熱伝導部材82を利用しており、下部加熱手段81上に立設したスペーサーを兼ねた熱伝導部材82上にカバー部材70を配置し、下部加熱手段81からの熱を熱伝導部材82を介してカバー部材70に伝導することによりカバー部材を加熱している。この場合、熱伝導部材82も上部加熱手段85の一部を構成している。
熱伝導部材82としては、例えば銅等の熱伝導の良好な金属を用い、上部加熱手段85としてのカバー部材70としては熱伝導の良好なマグネシウム、アルミニウム等の金属を用いる。
この実施形態によれば、上方からの加熱を行うための構成をシンプル化することができる。
【0044】
次に、図12(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係る電子デバイスの加熱装置の構成を示す正面縦断面図、及び平面図である。
本例に係る上部加熱手段85は、カバー部材70と、カバー部材に配線したヒーター線86とから構成されており、ヒーター線86に通電させることによりカバー部材70を発熱させている。本例では、カバー部材自体が熱源を備えている点において図11の実施形態と異なっている。
なお、図示のように下部加熱手段81上に設置した熱伝導部材82を介して下部加熱手段からの熱がカバー部材70に伝導されるように構成してもよい。
前述のように、減圧下で容器を加熱する際にカバー部材を容器の直上位置に近接配置する場合に容器を下方からのみ加熱するとすれば、下方からの加熱により昇温した容器の熱の多くが容器上部から低温状態にあるカバー部材側に吸収されて容器を低温化させる原因となる。この場合、カバー部材よって冷却された分だけ容器の加熱が不十分となり、容器内部の導電性接着剤から発生するガス量が低下して残留ガス量が増大することにより完成した圧電デバイスの特性が低下したり、或いはガス除去工程に要する時間が長期化して生産性を低下させるという問題がある。
【0045】
これに対して本発明では、容器下部を加熱する際に、カバー部材70を同時に加熱して十分に昇温させるので、容器の熱がカバー部材によって吸収されて容器の温度が低下することがなくなる。このため、容器内部の導電性接着剤からのガス量の発生を促進して効率的に残留ガス量を減少させることができる。このため、完成した圧電デバイスの特性の低下を防止し、ガス除去工程に要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
図12の実施形態では、上部からの加熱温度を下部加熱手段からの加熱とは独立して任意に制御できるので、容器内のガス発生効率を高めることができる。
【0046】
次に、図13(a)(b)は、本発明の電子デバイスの加熱装置の他の構成例を示す図である。
この加熱装置80では、上部加熱手段85としてのカバー部材70は、封止部材38と対向する下面に、封止部材38との間に封止部材の外形(例えば、直径)Dよりも小さな隙間tを空けるための凹所71を備えている。このカバー部材70を電子デバイス上にセットした場合には、凹所71の天井面が封止部材38の上端部との間に隙間tを隔てて対向配置されると共に、カバー部材の底面は電子デバイスの容器上面(封止孔を形成した側の面)に接触するため、カバー部材からの熱を容器上面に直接伝導することができ、加熱効率を向上させることができる。
凹所71の天井面と封止部材38との間に隙間tを形成する本構成は、図13(a)のように封止部材38の一部が封止孔37から外側に突出している場合のみならず、(b)のように封止部材38が封止孔から突出しない場合にも適用することができる。
なお、図13(a)(b)の何れにおいても、t=0、即ち、封止部材と凹所71の天井面とが接触することも有り得る。この場合においても、加熱によって封止部材が溶融する訳ではないため、問題はない。
なお、カバー部材70の下面を容器上面と接触させたとしても、両者の隙間から負圧が入り込んで封止孔内を減圧することができる。ただ、万が一、カバー部材70の下面が封止孔37を閉塞することがないように、凹所71に対応するカバー部材部分には通気孔72を形成してもよい。
この構成によれば、カバー部材70から容器上部に対する加熱効率を大幅に高めることができる一方で、減圧時に容器内部から排出されるガスによって封止部材が飛散することも効果的に防止できる。
【0047】
次に、図14(a)は、本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図である。図において、圧電デバイス60は、圧電振動素子30を用いて、圧電発振器を形成した例を示しており、第1の実施の形態と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図14(b)は、図14(a)のX−X線概略断面図であり、容器本体61は、その製造の際に、第1の実施形態の容器本体3よりも多くのセラミックシートの積層基板を用いて製造されている。これにより、容器本体61には、増えた分の積層基板を利用して中央付近に凹部62が形成されており、その内側底部には、図示しない電極が設けられている。この電極上には、集積回路63が実装されている。集積回路63は、所定の分周回路等を構成していて、圧電振動素子30の駆動電極と電気的に接続され、集積回路63から出力された駆動電圧が圧電振動素子30に与えられるようになっている。
容器本体61の貫通孔37に充填されている封止部材38は、第1の実施形態で説明したものと同じであり、同一の封止工程で封止されたものである。したがって、本実施形態も第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。このように、本発明は、圧電振動子に限らず、図14のような圧電発振器やフィルタ等、その名称にかかわらず、容器本体内に圧電振動素子を収容して、蓋体により封止する構成のあらゆる圧電デバイスに適用できる。
【0048】
図15は、本発明の上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。図15において、送信者の音声を受信するマイクロフォン108及び受信内容を音声出力とするためのスピーカ109を備えており、さらに、送受信信号の変調及び復調部に接続された制御部としての集積回路等でなるコントローラ101を備えている。コントローラ101は、送受信信号の変調及び復調の他に画像表示部としてのLCDや情報入力のための操作キー等でなる情報の入出力部102や、RAM、ROM等でなる情報記憶手段103の制御を行うようになっている。このため、コントローラ101には、圧電デバイス1が取り付けられて、その出力周波数をコントローラ101に内蔵された所定の分周回路(図示せず)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。このコントローラ101に取付けられる圧電デバイス1は、圧電デバイス1単体でなくても、圧電デバイス1と、所定の分周回路等とを組み合わせた発振器である図14のような圧電デバイス60であってもよい。
コントローラ101は、さらに、温度補償水晶発振器(TCXO)105と接続され、温度補償水晶発振器105は、送信部107と受信部106に接続されている。これにより、コントローラ101からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償水晶発振器105により修正されて、送信部107及び受信部106に与えられるようになっている。
このように、制御部を備えた携帯電話装置110のような電子機器に、上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用することにより、製造工程において、容器本体内に正しく位置決めされた圧電振動素子を備える圧電デバイスを使用していることによって、正確なクロック信号を生成することができる。
【0049】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
また、上記実施形態では封止孔を容器本体側に形成したが、蓋体側に封止孔を備えた電子デバイスに対しても本発明による封止方法を適用することができる。要するに、本発明は容器の外面の何れかの部位に封止孔を有した電子デバイス一般に対して適用することができる。
また、上記実施形態に係る容器本体3は上面に凹部を有した絶縁基板としたが、凹部を有しない平板状の絶縁基板上に電子部品を搭載し、電子部品を含む絶縁基板上の空間をバスタブ形(逆椀形)の蓋体により封止するようにした電子デバイスに対しても本発明の封止方法を適用することができる。この場合、封止孔は絶縁基板側に設けても良いし、蓋体側に設けても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…圧電デバイス、2…容器、3…容器本体、11、12、13…積層基板、15…電極部、16…導電性接着剤、20…蓋体、30…圧電振動素子、31…基部、33…ロウ材、34、35…振動腕、37…封止孔、37a、37b…貫通孔、38…封止部材、40…段部、42…凹部、45…金属膜、51…チャンバー、51a…真空チャンバー、52…錘、53…支持台、54…トレイ(パッケージ載置台)、54a…凹部、55…レーザー照射手段、60…圧電デバイス、61…容器本体、62…凹部、63…集積回路、70…カバー部材、71…凹所、72…通気孔、80…加熱装置、81…下部加熱手段(加熱手段)、82…熱伝導部材、85…上部加熱手段、86…ヒーター線、101…コントローラ、102…入出力部、103…情報記憶手段、105…温度補償水晶発振器、106…受信部、107…送信部、108…マイクロフォン、109…スピーカ、110…携帯電話装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を備えている容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記空所内に固定している電子部品と、を備えている電子デバイスの製造方法であって、
前記容器を加熱するための加熱手段に、該容器をセットする工程と、
前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する工程と、
前記容器との距離が該封止部材の外形よりも小さくして、前記封止部材を覆うようにカバー部材を配置させる工程と、
前記カバー部材を配置させる工程の後で前記空所を減圧する工程と、前記加熱手段と前記カバー部材とで前記容器を加熱する工程、とを含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記カバー部材は前記封止部材の一部を収容するための凹所を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
減圧した環境で容器を加熱するための加熱装置であって、
接触して前記容器を加熱するための加熱手段と、
前記容器との間に隙間を空けて間接的に前記容器を加熱するためのカバー部材と、を備えていることを特徴とする容器の加熱装置。
【請求項4】
前記加熱手段が前記カバー部材を加熱することを特徴とする請求項3に記載の容器の加熱装置。
【請求項5】
前記カバー部材は熱源を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の容器の加熱装置。
【請求項1】
内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を備えている容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記空所内に固定している電子部品と、を備えている電子デバイスの製造方法であって、
前記容器を加熱するための加熱手段に、該容器をセットする工程と、
前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する工程と、
前記容器との距離が該封止部材の外形よりも小さくして、前記封止部材を覆うようにカバー部材を配置させる工程と、
前記カバー部材を配置させる工程の後で前記空所を減圧する工程と、前記加熱手段と前記カバー部材とで前記容器を加熱する工程、とを含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記カバー部材は前記封止部材の一部を収容するための凹所を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
減圧した環境で容器を加熱するための加熱装置であって、
接触して前記容器を加熱するための加熱手段と、
前記容器との間に隙間を空けて間接的に前記容器を加熱するためのカバー部材と、を備えていることを特徴とする容器の加熱装置。
【請求項4】
前記加熱手段が前記カバー部材を加熱することを特徴とする請求項3に記載の容器の加熱装置。
【請求項5】
前記カバー部材は熱源を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の容器の加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−98686(P2013−98686A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238433(P2011−238433)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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