電子デバイスの製造方法
【課題】生産性低下の原因となるカバー板を用いることなく、簡易な手法によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを確実に防止する。
【解決手段】封止孔37が上向きとなるように容器2をセットする工程と、封止部材38を封止孔上に配置する工程と、封止部材を溶融させる第1の溶融工程と、第1の溶融工程を経た容器をチャンバー内に配置し、該チャンバー内を減圧することにより容器の空所を減圧する減圧工程と、空所が減圧された状態で、封止部材を溶融させる第2の溶融工程と、チャンバーを大気開放する工程と、を有し、第1の溶融工程では、容器の空所と容器外部との連通を確保した状態で封止孔内に封止部材を固定する。
【解決手段】封止孔37が上向きとなるように容器2をセットする工程と、封止部材38を封止孔上に配置する工程と、封止部材を溶融させる第1の溶融工程と、第1の溶融工程を経た容器をチャンバー内に配置し、該チャンバー内を減圧することにより容器の空所を減圧する減圧工程と、空所が減圧された状態で、封止部材を溶融させる第2の溶融工程と、チャンバーを大気開放する工程と、を有し、第1の溶融工程では、容器の空所と容器外部との連通を確保した状態で封止孔内に封止部材を固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、その他の電子部品を容器内に収容した電子デバイスの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、近年、装置の小型薄型化がめざましく、それらに用いられる圧電デバイスも小型薄型化が要求されている。また、それとともに、装置の回路基板に表面実装が可能な表面実装タイプの圧電デバイスが求められている。
圧電振動子のように容器内に圧電振動素子を気密封止した構造の電子デバイスの製造工程にあっては、封止孔を有した容器内に圧電振動素子を収容した後で、この容器を真空チャンバー内に配置して真空吸引しつつ加熱することにより封止孔から容器の内部ガスを排出し、排出が完了した時点で封止部材を用いて封止孔を封止している。
封止工程では、真空チャンバー内において封止孔が上向きとなるように容器をセットし、封止孔を塞ぐように球状の金属製封止部材を載置してから封止部材にレーザー光を照射して溶融させることにより封止孔を封止する(特許文献1)。
電子デバイスの小型化に伴って封止部材も小型化し、例えば直径0.3mm程度の金属球が使用される。このような小型、軽量の金属球は、真空吸引する際に容器内部から封止孔を経て排出されてくるガスによって押し出されて容器外へ飛散し易く、飛散すると封止工程を実施できなくなり、これが圧電デバイスの生産性を低下させる原因となっている。
真空引きによって封印部材が飛散することを防止するために、真空引きの速度を低下させることが行われているが、真空チャンバーを改造するためのコスト増、生産性の低下を招くばかりでなく、電子デバイス内の真空度の低下、バラツキによって完成品の特性を低下させる原因となっている。
【0003】
これに対して、特許文献2には、容器内に圧電振動素子を気密封止することが可能な小型の圧電デバイスの製造方法が開示されている。この製造方法では、真空チャンバー内に配置した容器の封止孔に球状の封止部材を配置してから真空チャンバー内を減圧することにより容器内部を減圧し、封止孔の内周と封止部材との隙間を介して容器内部のガスを外部に排出させる。このとき、封止孔を形成した容器の外底面とカバー板との隙間が、封止部材の直径よりも小さくなるようにカバー板を配置する。内部空間から排出される気体の圧力により封止孔から球状の封止部材が飛び出そうとした場合に、カバー板によりその封止部材を受け止めるようにしている。
しかし、容器が数mm角程度に小型化した場合には、この容器に形成した封止孔を封止するための球状の封止部材は例えば直径1mm以下となるため、トレイ上に複数セットされた全ての容器とカバーとの隙間を適正に維持することが極めて困難である。また、カバー板を準備してセットしたり、取り外す作業が増える分だけ、生産性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−158439公報
【特許文献2】特開2011−129735公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、生産性低下の原因となるカバー板を用いることなく、簡易な手法によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを確実に防止することができる電子デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本発明に係る電子デバイスの製造方法は、内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を有した容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記容器内に収容された電子部品と、を含む電子デバイスの製造方法であって、前記電子部品を前記容器の空所内に収容する工程と、前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する封止部材配置工程と、前記容器の空所と前記容器外部との連通を確保した状態で前記容器に前記封止部材を固定する第1の溶融工程と、前記第1の溶融工程の後で、前記容器の空所を減圧する減圧工程と、前記減圧工程の後で、前記封止部材を溶融させて前記容器を封止する第2の溶融工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この適用例によれば、減圧工程、及び本封止工程前に、封止部材を封止孔に仮固定するための溶融工程を実施するため、生産性低下の原因となるカバー板を用いることなく、簡易な手法によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを確実に防止することができる。
【0009】
[適用例2]本発明に係る電子デバイスの製造方法では、レーザー光照射手段を準備し、該レーザーの光軸が前記封止部材の平面視中心部から外形側へ偏位した位置になるように該レーザー光を照射して、前記封止部材を溶融させることを特徴とする。
【0010】
この適用例によれば、封止部材の中心部から外れた位置にレーザー光を照射するので、レーザー光を当てた部分とその周辺が先行して溶融し、それ以外の離間した部分は遅れて溶融する。このため、封止孔と遅れて溶融した封止部材部分との間に通気用の隙間を形成しつつ、先行して溶融した部分により固定を行うことができる。
【0011】
[適用例3]本発明に係る電子デバイスの製造方法は、前記第1の溶融工程において前記封止部材に照射する前記レーザー光のエネルギー量は、前記封止部材全体を溶融、固化させて前記封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下であることを特徴とする。
【0012】
この適用例によれば、仮固定におけるレーザー照射により封止部材を溶融させるためのエネルギー量を調整し易くなり、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の圧電デバイスの第1の実施の形態の概略平面図である。
【図2】図1のX−X線概略断面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】(a)及び(b)は容器本体内に圧電振動素子を搭載する手順を示す縦断面図、及び蓋体を接合する手順を示す説明図である。
【図5】(a)及び(b)はレーザー光を用いた封止方法を説明する図、及びその要部拡大図である。
【図6】本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
【図7】(a)及び(b)は第1の溶融工程においてレーザー光を封止部材の中心部に向けて照射する場合を示す説明図、及び仮固定された封止部材を示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は第1の溶融工程においてレーザー光を封止部材の中心部からずれた位置に照射する場合を示す説明図、及び仮固定された封止部材を示す断面図である。
【図9】第1の溶融工程において封止部材を仮固定するのに要するエネルギー量(J)と、未溶融状態にある封止部材を溶融させて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量(J)を示した図である。
【図10】封止部材を仮固定した容器を真空チャンバー内に配置した状態を示す図である。
【図11】減圧工程における温度プロファイルの一例を示した図である。
【図12】(a)は本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図であり、(b)は(a)のX−X線概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1乃至図3は、本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のX−X線概略断面図、図3は図1の底面図である。
これらの図においては、圧電デバイス1として圧電振動子を例示しており、圧電デバイス1は、容器2内に圧電振動素子(電子部品)30を気密封止した構成を有している。
容器2は、容器本体3と、容器本体3上に搭載された圧電振動素子30を気密封止するために組み付けられる蓋体20と、から構成されている。
容器本体3は、例えば、セラミックグリーンシートを積層して焼結した酸化アルミニウム質焼結体等の基板で形成されている。複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成するようにされている。すなわち、図2に示すように、本実施形態の容器本体3は、例えば、平板状の第1の積層基板11と、その上に重ねられる環状の第2の積層基板12と、その上に重ねられる環状の第3の積層基板13と、から構成されている。
容器本体3の内部空間S内の左端部付近において、内部空間Sに露出して底部を構成するベースとなる第2の積層基板12には、Au及びNiメッキが施された電極部15、15が設けられている。この電極部15、15は外部と接続されて駆動電圧を供給するものである。この各電極部15、15の上に導電性接着剤16、16が塗布され、この導電性接着剤16、16上に圧電振動素子30の基部31が載置されて導電性接着剤16、16が硬化される。
【0015】
圧電振動素子30の基部31の導電性接着剤16、16と触れる部分には、駆動電圧を伝えるための引出電極(図示せず)が形成されており、これにより、圧電振動素子30は、駆動用電極が容器本体3側の電極部15、15と導電性接着剤16、16を介して電気的に接続されている。
圧電振動素子30を構成する圧電基板は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。本実施形態の場合、圧電振動素子30は、容器本体3側と固定される基部31と、この基部31から、図面右方に向けて二股に別れて平行に延びる一対の振動腕34、35を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型圧電振動素子が利用されている。
容器本体3の開放された上面には、低融点ガラス等のロウ材33を介して、金属製の蓋体20が接合されることにより封止されている。
【0016】
また、容器本体3の底面のほぼ中央付近には、容器本体3の底板を構成する2枚の積層基板11、12に夫々第1及び第2の貫通孔37a、37bを連続形成することにより、貫通孔としての封止孔37が設けられている。この封止孔37を構成する2つの貫通孔のうち、容器本体内部に開口する第1の貫通孔37aに対して、外側の第2の貫通孔37bは、より大きな内径を備えた同心円状に構成されている。これにより、封止孔37は段部40を有する開口とされており、好ましくは、貫通孔37bの段部と、貫通孔37aの孔内周面には後述する封止部材38である金属ボール(例えば、金ゲルマニウム合金(Au/Ge))に対して、濡れ性のよい金属、例えば、金メッキ等が、所定の下地層の上に形成されることにより被覆されている。
すなわち、容器本体3内に圧電振動素子30を固定した後で、封止孔37には、封止部材(金属製封止部材)38が溶融充填されることにより、容器本体3内を気密状態に封止する。
【0017】
本例では、封止孔37に充填される封止部材38として、後述する封止工程で詳しく説明するように、特に金ゲルマニウム合金(Au/Ge)が用いられている。なお、封止部材としては任意の金属材料を使用することができる。
さらに、この実施形態では、容器本体3を構成する第2の積層基板12には、図面右端部付近に孔を形成することにより、この積層基板12の厚みに対応した凹部42が形成されている。この凹部42は、圧電振動素子30の下方に位置している。これにより、本実施形態では、容器本体3に外部から衝撃が加わった場合に、圧電振動素子30の自由端が矢印D方向に変位して振れた場合においても、容器本体3の内側底面と接触することを防止している。
【0018】
本実施形態に係る圧電デバイス1は以上のように構成されており、容器本体3に設けた封止孔37が金ゲルマニウム合金(Au/Ge)でなる封止部材38により封止されている。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークされることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0019】
次に、本発明の電子デバイスの製造方法は、次の如き特徴的な構成を有する。
即ち、本発明は、内部に空所Sを有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔37を外壁(積層基板11、12、或いは蓋体20)に有した容器2と、溶融した後で固化することにより封止孔37を封止する封止部材38と、封止孔を本封止された容器内に気密封止された電子部品30と、を有した電子デバイスの製造方法に関するものである。
本発明に係る製造方法の第1の特徴的な構成は、容器内に電子部品を収容する工程と、封止孔37が上向きとなるように容器2をセットする容器セット工程と、封止部材38を該封止孔上に配置する封止部材配置工程と、封止部材38を溶融、固化させる第1の溶融工程(封止部材の仮固定工程)と、第1の溶融工程を経ることにより封止部材が仮固定された容器をチャンバー内に配置し、該チャンバー内を減圧することにより封止孔と封止部材との隙間を介して容器の内部空所Sを減圧する減圧工程と、内部空所が減圧された状態で、封止部材を溶融、固化させる第2の溶融工程(本封止工程)と、を有し、第1の溶融工程では、容器の内部空所と容器外部との連通を確保した状態で封止孔内、又は/及び、該封止孔の周縁部に封止部材を固定するようにした点にある。
【0020】
また、本発明に係る製造方法の第2の特徴的な構成は、第1の溶融工程が、レーザー光を略球状の封止部材に照射して溶融させる工程であって、レーザー光を封止部材に照射する際の光軸の位置を、封止部材の平面視中心部から外径方向へ偏位した位置とした点にある。
また、本発明に係る製造方法の第3の特徴的な構成は、第1の溶融工程において封止部材に照射するレーザー光のエネルギー量(J)が、次式:エネルギー量(J)=レーザー出力(kW)×照射時間(msec)×(レーザー光のスポット径(μm)/球状の封止部材の直径(μm))により算出され、第1の溶融工程におけるこのエネルギー量を、球状の封止部材(溶融前の封止部材)上の同一位置に同一出力、同一スポット径のレーザー光を照射して該封止部材全体を溶融、固化させて封止孔を封止するのに要する(本封止に最低限必要とされる)エネルギー量の80%以下とした点にある。
なお、第2の溶融工程は、第1の溶融工程が完了した後、十分な冷却固化のための時間が経過してから実施されるので、第1の溶融工程を経た封止部材を第2の溶融工程で溶融させて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量は、溶融前の球状封止部材を一回の溶融工程により溶融させて本封止するのに要するエネルギー量とほぼ同等である。
【0021】
次に、図6は本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
図6において、容器、及び圧電振動素子の製造工程は図示を省略し、容器本体準備工程(ステップS1)、圧電振動素子の準備工程(ステップS2)としてそれぞれ簡略化して示した。
ステップS1に示す容器本体3準備工程では、容器本体3を製造して準備する。容器本体3は、例えば、セラミック、ガラスなどの絶縁材料を用いて形成し、さらに具体的には、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートなどを成形して用いることができる。そのセラミックグリーンシートなどの材料を成形して、直径の異なる同心の貫通孔37a、37bをそれぞれ設けた2枚の積層基板11、12を積層し、さらに第2の積層基板12上に矩形環状の第3の積層基板13を積層させ、その後焼成することによって段差を有する凹部が形成された容器本体3の外形を得る。
なお、各貫通孔37a、37bは円形の穴であってもよいし、非円形の穴であってもよい。
絶縁材料からなる容器本体3の外面適所に、例えば、タングステンメタライズを施した上に、ニッケルめっきおよび金めっきを行ない、さらにフォトリソグラフィーを併用するなどの方法により、第1の積層基板11の外底面に設けられた外部実装端子(図示せず)、第2の積層基板12の上面に設けられた電極部15等を形成する。これと同時に、封止孔37内周面及び外部周縁に封止部材とのなじみのよい金属膜を形成する。なお、容器本体3に設けられた上記の各種端子は、対応する端子同士を、引き回し配線や、各積層基板に予め形成されたスルーホールなどの層内配線により接続する。
【0022】
ステップS2に示す圧電振動素子の準備工程では、圧電振動素子30を製造して準備する。圧電振動素子30の製造においては、まず、結晶軸に対して所定のカット角で切り出された大判の圧電基板、例えば水晶基板(水晶ウェハー)を準備し、フォトリソグラフィーを用いたウエットエッチング、またはドライエッチングすることにより、水晶基板の外形を形成する。
次に、スパッタリングや蒸着などにより、励振電極や外部接続端子などの電極形成を行う。電極形成は、圧電振動素子の外形が形成された水晶基板の表面に、スパッタリングや蒸着により、クロム層を下地として形成し、その上に金層を積層させて形成することができる。
そして、複数の圧電振動素子30が形成されたウェハーをダイシングすることにより、個片の圧電振動素子を複数得る。
【0023】
次に、圧電振動素子接合工程について説明する。
ステップS3に示した圧電振動素子接合工程では、容器本体3の凹部内に設けた電極部15上に導電性接着剤16を用いて圧電振動素子30を配置して電気的、機械的な接続を伴う接合を行う。
具体的には、図4(a)において、容器本体3の外周壁上面に予め封止ガラス等のロウ材33を塗布すると共に、凹部内の電極部15上に導電性接着剤16を塗布し、圧電振動素子30の基部31に設けられている引出し電極(図示せず)の箇所を載せ、軽く荷重をかけて位置決めし、導電性接着剤16を硬化させることにより、圧電振動素子30を容器本体3内にマウントする。
【0024】
次に、ステップS4の圧電振動素子30の周波数調整工程を行う。
周波数調整工程では、まず、圧電振動素子30の初期周波数を測定し、その初期周波数と目標周波数との差を許容範囲まで小さく調整することにより行う。圧電振動素子30の周波数調整は、例えば、レーザーやイオンビームを圧電振動素子30に照射してその一部を所定量エッチングすることにより行う。圧電振動素子30は、その振動部の質量を軽くすることにより振動周波数が高くなることが知られており、例えば、圧電振動素子30に形成された励起電極以外の電極パターンの一部をエッチングすることによって、励起電極の形状を変化させることなく圧電振動素子30の周波数を高く調整することができる。この質量削減方式による周波数調整方法を用いる場合には、圧電振動素子30の初期の周波数を目標周波数に対して低めの周波数となるようにつくり込みを行っておく。また、上記の質量削減方式とは逆に、圧電振動素子30の振動部に質量を付加して周波数を低下させることにより周波数調整を行うこともできる(質量付加方式)。質量付加の方法としては、スパッタリング法や蒸着法などにより圧電振動素子30の振動部に金属膜を堆積させる方法などを利用することができる。この質量付加方式により周波数調整を行う場合には、圧電振動素子30の初期の周波数は目標周波数に対して高めの周波数となるようにつくり込みを行う。
【0025】
次に、ステップS5に示すように、容器本体3の外周壁の開放された上端に蓋体20を接合する。容器本体3と蓋体20との接合は、容器本体3の上端面上に、例えば、コバール(Fe−Ni−Co)合金などからなるロウ材としてのシールリングを設け、そのシールリングを介して、蓋体20をシーム溶接することにより行うことができる。
具体的には、図4(b)に示すように、例えば、窒素雰囲気を形成するためのチャンバー51内において、支持台53上のトレイ54に蓋体20を載置し、その上に上述したロウ材33が蓋体20と接触するように容器本体3を逆さにして載置し、上から錘52により荷重をかけながらチャンバー51内を加熱する。これにより、ロウ材33を溶融して硬化させることにより蓋体20を接合する。尚、この工程は、チャンバー51に代えて、窒素雰囲気が管理されたベルト炉に圧電デバイス1を通して行うようにしてもよい。
ステップS3〜S5によって容器内に圧電振動素子30(電子部品)を収容する工程を終了する。
【0026】
容器本体3上に蓋体20が接合されることにより形成された内部空間S内に接合された圧電振動素子30を、封止工程(S6〜S11)に移して封止を行う。
封止工程は、例えば、図5(a)に示すように真空チャンバー51aなどの内部に圧電振動素子を収容した容器2(容器本体3、蓋体20)を収容して行う。この際、封止孔37が上向きとなるように、容器2の上下を逆にしてセットする。
まず、ステップS6に示すように、容器本体3の底面に設けた封止孔37内に、金とゲルマニウムとの合金、あるいは、金と錫との合金などからなる球状の封止部材38を配置する。この球状の封止部材38の配置は、封止孔37が有する内周の形状を利用して行うことができる。すなわち、内部空所S側の貫通孔37aと、その貫通孔37aよりも大きな同心の(外部側の)貫通孔37bとが連通してなる封止孔37の段差形状を利用して、容器2を内部空所S側が下側となるように載置することにより、封止孔37の外部側から入れ込んだ球状の封止部材38が封止孔37内の段部40に保持されて配置される(図5(a))を参照)。
【0027】
図5(a)の工程をさらに詳しく説明する。図5(a)の一部を拡大して示す図5(c)に表されているように、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38が配置される封止孔37は、所定の内径n1を備える内側の第1の貫通孔37aと、この第1の貫通孔37aと連通して設けられると共に、第1の貫通孔37aよりも大きな内径n2を備えて外側に開口した第2の貫通孔37bとを備えている。球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の直径n3は、第1の貫通孔37aの内径n1よりも大きく、第2の貫通孔37bの内径n2よりも僅かに小さく形成されている。
このため、球形の金ゲルマニウム合金の封止部材(Au/Ge)38は、図示されているように、第1の貫通孔37aの内周縁のエッジe(段部40)の稜線上に接触して保持されている。この球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38に、図示のように、レーザー光Lを照射する。このレーザー光Lは、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の融点が360度程度であるにもかかわらず、本実施形態の封止部材38は光を吸収しやすい性質をもつため、金すずの場合とほぼ同じ条件で照射することで、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金38を適切に溶融することができる。
【0028】
次に、ステップS7において本発明の特徴をなす第1の溶融工程(封止部材の仮固定工程)を実施する。
第1の溶融工程では、図7(a)に示すように球状の封止部材38の外面の平面視中心部C1にレーザー光を照射して全体的に均等に加熱、溶融させて非球状に変形させた後で固化させることによって、封止孔内周縁と封止部材との間に通気用の隙間Gを形成した状態で封止部材を封止孔内周面、或いはその周縁部に固定(仮固定)する。或いは、図8(a)に示すように球状の封止部材38の外面の平面視中心部C1から偏位した箇所にレーザー光を照射してその一部を溶融後固化させることによって、封止部材の溶融した一部を封止孔37の内周面、或いはその周縁部に固定させる仮固定状態を実現させる。この仮固定状態では、封止部材は内部空所Sと容器外部とを連通状態に保持しながら封止孔に一部を固定させた状態を維持している。
これを更に詳しく説明すると、図7(b)は封止部材の外面の平面視中心部C1にレーザー光の光軸を一致させて球内部の中心点C2に向けて照射した場合の封止部材の仮固定状態を示しており、図8(b)は図8(a)のように封止部材の外面の平面視中心部C1から外径方向へ偏位した部位に対してレーザー光の光軸を一致させつつ、球内面の中心点C2を外した方向に照射した場合の封止部材の仮固定状態を示している。
【0029】
図7の場合には、球状の封止部材が中心部C1を中心として全体として均等に溶融するため、封止部材は均等に非球状に潰れ変形しながら貫通孔37aの周辺に固着してゆき、貫通孔37a、37bの内周縁との間に内部空所内のガスを排出するに十分な隙間Gが形成される。この時点でレーザー光の照射を中止する。
図8の場合には、球状の封止部材の中心部C1から外れた部位を中心として溶融が進行するため、封止部材は溶融の進行が早い部分38Aと、溶融の進行が遅い(或いは、溶融しない部分)38Bとに分けられ、レーザー光が照射されることによって溶融が早く進行した部分38Aは外径方向に展開してゆき、第2の貫通孔37bの内壁に接合する一方で、溶融が進行していない部分38Bは溶融が進行している部分38Aの冷却時に部分38Aによって引っ張られて封止孔内周縁から浮き上がる。このため、溶融が進行していない部分38Bと封止孔内周縁との間(レーザー光を照射した部位と反対側の部位)に内部空所内のガスを排出するに十分な隙間Gが形成される。この時点でレーザー光の照射を中止する。
【0030】
第1の溶融工程において封止部材38が封止孔37を不完全に閉止した結果として、次段の減圧工程における加熱によって容器内のガスが封止部材と封止孔との隙間Gから効率的に排出される一方で、軽量の封止部材が排出されるガス圧力によって封止孔周辺から離脱して飛散することがなくなる。
なお、第1の溶融工程において封止部材に照射するレーザー光のエネルギー量(J)は、エネルギー量=レーザー出力(kW)×照射時間(msec)×(レーザー光のスポット径(μm)/球状の封止部材の直径(μm))により算出される。
そして、第1の溶融工程におけるこの照射エネルギー量を、球状の封止部材(溶融前の封止部材)上の同一位置に同一出力、同一スポット径のレーザー光を照射して該封止部材全体を溶融、固化させて封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下とすることにより、ガス抜きに供することができる程度の十分な開口量を備えた隙間Gを維持しつつ、他の部分で封止部材を封止孔周辺に固定することが可能となる。
【0031】
レーザー光が封止部材を溶融させるためのエネルギー量は、レーザー出力(kW)と照射時間(msec)との積によって得られるエネルギー量(J)に対して、(レーザー光のスポット径/球状の封止部材の直径)を乗ずることにより得られる。このため、これらのパラメータを種々選定することによってエネルギー量を、球状の封止部材上の同一位置に同一出力、同一スポット径のレーザー光を照射して該封止部材全体を溶融、固化させて封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下とすることで、封止孔と封止部材との間に必要十分な開口量を備えた隙間Gを形成することができる。
図7の場合は、レーザー光を封止部材の中心部に照射するため、レーザー光の照射によって封止部材に与えられる溶融のためのエネルギー量を正確に制御する必要があり、エネルギー量が過小であれば接合が不十分な仮固定不良状態となり、エネルギー量が過大であれば隙間形成が不十分な完全封止状態となる。
これに対して図8の場合は、レーザー光を封止部材の中心部からはずれた部位に照射するため、レーザー光の照射によって封止部材に与えられる溶融のためのエネルギー量が多少前記80%を越えていたとしても、溶融が進行していない部分38Bの浮き上がりによる隙間形成に大きな影響はない。従って、レーザー光照射によるエネルギー量の制御を低精度で行っても十分に仮固定することができる。
このように仮固定工程において、レーザー光から照射するエネルギー量を広い範囲内で選定することができるので、仮固定におけるレーザー照射による溶融のためのエネルギー量を調整し易くなり、生産性を向上することができる。
【0032】
図9は第1の溶融工程において封止部材を仮固定するのに要するエネルギー量(J)と、未溶融状態にある封止部材を溶融させて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量(J)を示しており、夫々レーザー光の照射エネルギー量を異ならせた場合の実験結果を示している。
第1の溶融工程において封止部材を仮固定する場合とは、図7に示したレーザー照射方法と、図8に示したレーザー照射方法の双方を含む。
なお、レーザー光が封止部材に与えるエネルギー量は、レーザー光のパワーWと照射時間(msec)との積により決定される。
図9中において本封止領域とは、仮固定のための第1の溶融工程において封止孔37が完全に封止されてしまう場合のエネルギー量の範囲を示している。例えば、仮固定に要するエネルギー量を、本封止に要するエネルギー量の100%とした場合には、ほぼ本封止(NG)となる。
また、不完全仮固定領域とは、仮固定のための第1の溶融工程において容器の内部空所Sと容器外部との間に十分な通気用の隙間Gを安定して確保できない状態となる場合におけるエネルギー量の範囲を示している。不完全仮固定領域においては、理想的な仮固定状態が実現できることもあるが、封止孔が完全に封止される本封止状態となることもあり、仮固定の精度がばらつくため、仮固定結果への信頼性が低くなる。このため、この範囲のエネルギー量を用いた仮固定により得られた製品は実使用に供し得なくなる。
【0033】
次に、仮固定領域とは、仮固定のための第1の溶融工程において容器の内部空所Sと容器外部との間に必要十分な通気用の隙間Gを確保しつつ封止孔周縁に封止部材38が固定される理想的な仮固定状態を実現できる場合におけるエネルギー量の範囲を示している。例えば、未溶融状態にある封止部材を用いて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量が3.2Jである場合に、仮固定時に照射するエネルギー量を2.56Jに留めることにより理想的な仮固定状態を100%の確率で得ることができた。この場合、仮固定のためのエネルギー量2.56は、本封止のためのエネルギー量3.2に対して、2.56/3.2=約0.80であり、80%以下に留まる。一方、仮固定のためのエネルギー量を2.6Jとした場合には仮固定状態となる精度が低下した。
【0034】
また、封止孔を本封止するためのエネルギー量が3.8Jである場合に仮固定時に照射するエネルギー量を3.2Jに留めることにより理想的な仮固定状態を100%の確率で得ることができた。この場合、仮固定のためのエネルギー量3.2Jは、本封止のためのエネルギー量3.8Jに対して、3.2/3.8=約0.84であり、80%を越えている。一方、仮固定のためのエネルギー量を3.6Jとした場合には仮固定状態となる精度が低下した。
また、封止孔を本封止するためのエネルギー量が4.4Jである場合に仮固定時に照射するエネルギー量を3.6Jに留めることにより理想的な仮固定状態を100%の確率で得ることができた。この場合、仮固定のためのエネルギー量3.6Jは、本封止のためのエネルギー量4.4Jに対して、3.6/4.4=約0.82であり、80%を越えている。一方、仮固定のためのエネルギー量を4.0Jとした場合には仮固定状態となる精度が低下した。
【0035】
以上の実験結果を踏まえると、理想的な仮固定状態が実現される確率が100%となるのは、仮固定のためのエネルギー量が、本封止のためのエネルギー量の80%以下に留まっている場合であることが判る。
次に、ステップS8の減圧工程において、真空チャンバー内を減圧することにより容器2の内部空所Sを減圧し、封止孔37の内周と非球状に変形した封止部材38との隙間Gを介して、加熱により生成された容器2内部のガスを容器2の外部に排出させる。すなわち、ステップS3で説明した圧電振動素子30と電極部15とを接合に供する銀ペーストなどの導電性接着剤16などの硬化の過程で発生する有害なガス(アウトガス)や、容器2内部(内部空所S)の水分が蒸発した気体を、この減圧ステップで外部に排出させる。
即ち、ステップS8の減圧工程では、図10に示すように、第1の溶融工程において封止部材38を封止孔37に仮固定した状態にある容器2を真空チャンバー51a内に配置し、真空チャンバー51a内を図示しない真空排気手段により真空引きし、好ましくは、高真空状態とする。
この際、第1の溶融工程を経た封止部材38は通気用の隙間を維持しつつ確実に封止孔周辺に固定されているため、真空引き時に封止部材が飛び出して脱落する虞が皆無となる。このため、真空引きの速度、強度を高めることができ、生産性を高めることができる。また、同時に容器内の真空度を高めて真空度のバラツキをなくすることができるので、デバイス特性の向上、特性バラツキの減少を図ることができる。
【0036】
図11は、減圧工程における温度プロファイルの一例を示している。すなわち、真空チャンバー51a内を例えば、10−3Pa(パスカル)程度の高真空とする。そして、T1時間(例えば、20分)の間、250度ないし300度、好ましくは、260度以上にまで加熱する。この温度をT2時間(例えば、30分)維持して、容器2内の例えば導電性接着剤16等から生成される気体成分を容器2外に排出する。
続いて、真空チャンバー51a内の温度と気圧を保持したまま、真空孔封止工程(第2の溶融工程)をT3時間(例えば、20分)行う。この時、周囲の温度が高くても、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38の融点は高いので、溶融されることなく、従来260度程度であった加熱温度を280度程度まで上げて、効果的に上記気体成分の追い出しを行うことができる。そして、レーザー照射手段55から、封止部材38に向けてレーザー光Lを照射して、仮固定された封止部材38を溶融、固化することにより、貫通孔37を完全に塞ぐ(S9、S10))。
その後大気開放して終了する(ステップS11)。
【0037】
このように、本実施形態に係る圧電デバイス(電子デバイス)の製造方法では、容器本体3の底部に形成された貫通孔37に対して、球形に形成した金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38を配置して第1の溶融工程によって仮固定(未封止)し、その後第2の溶融工程において本溶融(本封止)するようにしている。
このため、生産性低下の原因となるカバー板を用いることなく、簡易な手法によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを確実に防止することができる。
金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38は、融点が高いが、酸化されやすく、表面に酸化膜が形成されやすく、酸化膜が存在すると、加熱により流れにくくなり、封止作業がその分困難になる。ところが、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)を球形にして、レーザー光を照射すると、酸化膜のために、光を吸収しやすく、容易に溶融され、酸化膜が貫通孔37の外側に向かって表面に押し出される。これにより、封止部材38の合金成分を貫通孔37内に適切に流すことで、貫通孔37を完全に塞ぐことができる。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金の封止部材38は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークすることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0038】
図12(a)は、本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図である。図において、圧電デバイス60は、圧電振動素子30を用いて、圧電発振器を形成した例を示しており、第1の実施の形態と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図12(b)は、図12(a)のX−X線概略断面図であり、容器本体61は、その製造の際に、第1の実施形態の容器本体3よりも多くのセラミックシートの積層基板を用いて製造されている。これにより、容器本体61には、増えた分の積層基板を利用して中央付近に凹部62が形成されており、その内側底部には、図示しない電極が設けられている。この電極上には、集積回路63が実装されている。集積回路63は、所定の分周回路等を構成していて、圧電振動素子30の駆動電極と電気的に接続され、集積回路63から出力された駆動電圧が圧電振動素子30に与えられるようになっている。
容器本体61の貫通孔37に充填されている封止部材38は、第1の実施形態で説明したものと同じであり、同一の封止工程で封止されたものである。したがって、本実施形態も第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。このように、本発明は、圧電振動子に限らず、図11のような圧電発振器やフィルタ等、その名称にかかわらず、容器本体内に圧電振動素子を収容して、蓋体により封止する構成のあらゆる圧電デバイスに適用できる。
【0039】
図13は、本発明の上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。図において、送信者の音声を受信するマイクロフォン108及び受信内容を音声出力とするためのスピーカ109を備えており、さらに、送受信信号の変調及び復調部に接続された制御部としての集積回路等でなるコントローラ101を備えている。コントローラ101は、送受信信号の変調及び復調の他に画像表示部としてのLCDや情報入力のための操作キー等でなる情報の入出力部102や、RAM、ROM等でなる情報記憶手段103の制御を行うようになっている。このため、コントローラ101には、圧電デバイス1が取り付けられて、その出力周波数をコントローラ101に内蔵された所定の分周回路(図示せず)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。このコントローラ101に取付けられる圧電デバイス1は、圧電デバイス1単体でなくても、圧電デバイス1と、所定の分周回路等とを組み合わせた発振器である図12のような圧電デバイス60であってもよい。
コントローラ101は、さらに、温度補償水晶発振器(TCXO)105と接続され、温度補償水晶発振器105は、送信部107と受信部106に接続されている。これにより、コントローラ101からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償水晶発振器105により修正されて、送信部107及び受信部106に与えられるようになっている。
【0040】
このように、制御部を備えた携帯電話装置110のような電子機器に、上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用することにより、製造工程において、容器本体内に正しく位置決めされた圧電振動素子を備える圧電デバイスを使用していることによって、正確なクロック信号を生成することができる。
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
【0041】
上記実施形態では封止孔を容器本体側に形成したが、蓋体側に封止孔を備えた電子デバイスに対しても本発明による封止方法を適用することができる。要するに、本発明は容器の外面の何れかの部位に封止孔を有した電子デバイス一般に対して適用することができる。
また、上記実施形態に係る容器本体3は上面に凹部を有した絶縁基板としたが、凹部を有しない平板状の絶縁基板上に電子部品を搭載し、電子部品を含む絶縁基板上の空間をバスタブ形(逆椀形)の蓋体により封止するようにした電子デバイスに対しても本発明の封止方法を適用することができる。この場合、封止孔は絶縁基板側に設けても良いし、蓋体側に設けても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…圧電デバイス、2…容器、3…容器本体、11、12…積層基板、15…電極部、16…導電性接着剤、20…蓋体、30…圧電振動素子(電子部品)、31…基部、33…ロウ材、34、35…振動腕、37…封止孔、37a、37b…貫通孔、38…封止部材、38A…溶融の進行が早い部分、38B…溶融の進行が遅い部分、40…段部、42…凹部、51…チャンバー、51a…真空チャンバー、52…錘、53…支持台、54…トレイ、55…レーザー照射手段、60…圧電デバイス、61…容器本体、62…凹部、63…集積回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、その他の電子部品を容器内に収容した電子デバイスの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯電話、自動車電話、またはページングシステム等の移動体通信機器において、近年、装置の小型薄型化がめざましく、それらに用いられる圧電デバイスも小型薄型化が要求されている。また、それとともに、装置の回路基板に表面実装が可能な表面実装タイプの圧電デバイスが求められている。
圧電振動子のように容器内に圧電振動素子を気密封止した構造の電子デバイスの製造工程にあっては、封止孔を有した容器内に圧電振動素子を収容した後で、この容器を真空チャンバー内に配置して真空吸引しつつ加熱することにより封止孔から容器の内部ガスを排出し、排出が完了した時点で封止部材を用いて封止孔を封止している。
封止工程では、真空チャンバー内において封止孔が上向きとなるように容器をセットし、封止孔を塞ぐように球状の金属製封止部材を載置してから封止部材にレーザー光を照射して溶融させることにより封止孔を封止する(特許文献1)。
電子デバイスの小型化に伴って封止部材も小型化し、例えば直径0.3mm程度の金属球が使用される。このような小型、軽量の金属球は、真空吸引する際に容器内部から封止孔を経て排出されてくるガスによって押し出されて容器外へ飛散し易く、飛散すると封止工程を実施できなくなり、これが圧電デバイスの生産性を低下させる原因となっている。
真空引きによって封印部材が飛散することを防止するために、真空引きの速度を低下させることが行われているが、真空チャンバーを改造するためのコスト増、生産性の低下を招くばかりでなく、電子デバイス内の真空度の低下、バラツキによって完成品の特性を低下させる原因となっている。
【0003】
これに対して、特許文献2には、容器内に圧電振動素子を気密封止することが可能な小型の圧電デバイスの製造方法が開示されている。この製造方法では、真空チャンバー内に配置した容器の封止孔に球状の封止部材を配置してから真空チャンバー内を減圧することにより容器内部を減圧し、封止孔の内周と封止部材との隙間を介して容器内部のガスを外部に排出させる。このとき、封止孔を形成した容器の外底面とカバー板との隙間が、封止部材の直径よりも小さくなるようにカバー板を配置する。内部空間から排出される気体の圧力により封止孔から球状の封止部材が飛び出そうとした場合に、カバー板によりその封止部材を受け止めるようにしている。
しかし、容器が数mm角程度に小型化した場合には、この容器に形成した封止孔を封止するための球状の封止部材は例えば直径1mm以下となるため、トレイ上に複数セットされた全ての容器とカバーとの隙間を適正に維持することが極めて困難である。また、カバー板を準備してセットしたり、取り外す作業が増える分だけ、生産性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−158439公報
【特許文献2】特開2011−129735公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、生産性低下の原因となるカバー板を用いることなく、簡易な手法によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを確実に防止することができる電子デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本発明に係る電子デバイスの製造方法は、内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を有した容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記容器内に収容された電子部品と、を含む電子デバイスの製造方法であって、前記電子部品を前記容器の空所内に収容する工程と、前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する封止部材配置工程と、前記容器の空所と前記容器外部との連通を確保した状態で前記容器に前記封止部材を固定する第1の溶融工程と、前記第1の溶融工程の後で、前記容器の空所を減圧する減圧工程と、前記減圧工程の後で、前記封止部材を溶融させて前記容器を封止する第2の溶融工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この適用例によれば、減圧工程、及び本封止工程前に、封止部材を封止孔に仮固定するための溶融工程を実施するため、生産性低下の原因となるカバー板を用いることなく、簡易な手法によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを確実に防止することができる。
【0009】
[適用例2]本発明に係る電子デバイスの製造方法では、レーザー光照射手段を準備し、該レーザーの光軸が前記封止部材の平面視中心部から外形側へ偏位した位置になるように該レーザー光を照射して、前記封止部材を溶融させることを特徴とする。
【0010】
この適用例によれば、封止部材の中心部から外れた位置にレーザー光を照射するので、レーザー光を当てた部分とその周辺が先行して溶融し、それ以外の離間した部分は遅れて溶融する。このため、封止孔と遅れて溶融した封止部材部分との間に通気用の隙間を形成しつつ、先行して溶融した部分により固定を行うことができる。
【0011】
[適用例3]本発明に係る電子デバイスの製造方法は、前記第1の溶融工程において前記封止部材に照射する前記レーザー光のエネルギー量は、前記封止部材全体を溶融、固化させて前記封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下であることを特徴とする。
【0012】
この適用例によれば、仮固定におけるレーザー照射により封止部材を溶融させるためのエネルギー量を調整し易くなり、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の圧電デバイスの第1の実施の形態の概略平面図である。
【図2】図1のX−X線概略断面図である。
【図3】図1の底面図である。
【図4】(a)及び(b)は容器本体内に圧電振動素子を搭載する手順を示す縦断面図、及び蓋体を接合する手順を示す説明図である。
【図5】(a)及び(b)はレーザー光を用いた封止方法を説明する図、及びその要部拡大図である。
【図6】本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
【図7】(a)及び(b)は第1の溶融工程においてレーザー光を封止部材の中心部に向けて照射する場合を示す説明図、及び仮固定された封止部材を示す断面図である。
【図8】(a)及び(b)は第1の溶融工程においてレーザー光を封止部材の中心部からずれた位置に照射する場合を示す説明図、及び仮固定された封止部材を示す断面図である。
【図9】第1の溶融工程において封止部材を仮固定するのに要するエネルギー量(J)と、未溶融状態にある封止部材を溶融させて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量(J)を示した図である。
【図10】封止部材を仮固定した容器を真空チャンバー内に配置した状態を示す図である。
【図11】減圧工程における温度プロファイルの一例を示した図である。
【図12】(a)は本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図であり、(b)は(a)のX−X線概略断面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1乃至図3は、本発明の電子デバイスの一例としての圧電デバイスの第1の実施の形態を示しており、図1はその概略平面図、図2は図1のX−X線概略断面図、図3は図1の底面図である。
これらの図においては、圧電デバイス1として圧電振動子を例示しており、圧電デバイス1は、容器2内に圧電振動素子(電子部品)30を気密封止した構成を有している。
容器2は、容器本体3と、容器本体3上に搭載された圧電振動素子30を気密封止するために組み付けられる蓋体20と、から構成されている。
容器本体3は、例えば、セラミックグリーンシートを積層して焼結した酸化アルミニウム質焼結体等の基板で形成されている。複数の各基板は、その内側に所定の孔を形成することで、積層した場合に内側に所定の内部空間Sを形成するようにされている。すなわち、図2に示すように、本実施形態の容器本体3は、例えば、平板状の第1の積層基板11と、その上に重ねられる環状の第2の積層基板12と、その上に重ねられる環状の第3の積層基板13と、から構成されている。
容器本体3の内部空間S内の左端部付近において、内部空間Sに露出して底部を構成するベースとなる第2の積層基板12には、Au及びNiメッキが施された電極部15、15が設けられている。この電極部15、15は外部と接続されて駆動電圧を供給するものである。この各電極部15、15の上に導電性接着剤16、16が塗布され、この導電性接着剤16、16上に圧電振動素子30の基部31が載置されて導電性接着剤16、16が硬化される。
【0015】
圧電振動素子30の基部31の導電性接着剤16、16と触れる部分には、駆動電圧を伝えるための引出電極(図示せず)が形成されており、これにより、圧電振動素子30は、駆動用電極が容器本体3側の電極部15、15と導電性接着剤16、16を介して電気的に接続されている。
圧電振動素子30を構成する圧電基板は、例えば水晶で形成されており、水晶以外にもタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料を利用することができる。本実施形態の場合、圧電振動素子30は、容器本体3側と固定される基部31と、この基部31から、図面右方に向けて二股に別れて平行に延びる一対の振動腕34、35を備えており、全体が音叉のような形状とされた、所謂、音叉型圧電振動素子が利用されている。
容器本体3の開放された上面には、低融点ガラス等のロウ材33を介して、金属製の蓋体20が接合されることにより封止されている。
【0016】
また、容器本体3の底面のほぼ中央付近には、容器本体3の底板を構成する2枚の積層基板11、12に夫々第1及び第2の貫通孔37a、37bを連続形成することにより、貫通孔としての封止孔37が設けられている。この封止孔37を構成する2つの貫通孔のうち、容器本体内部に開口する第1の貫通孔37aに対して、外側の第2の貫通孔37bは、より大きな内径を備えた同心円状に構成されている。これにより、封止孔37は段部40を有する開口とされており、好ましくは、貫通孔37bの段部と、貫通孔37aの孔内周面には後述する封止部材38である金属ボール(例えば、金ゲルマニウム合金(Au/Ge))に対して、濡れ性のよい金属、例えば、金メッキ等が、所定の下地層の上に形成されることにより被覆されている。
すなわち、容器本体3内に圧電振動素子30を固定した後で、封止孔37には、封止部材(金属製封止部材)38が溶融充填されることにより、容器本体3内を気密状態に封止する。
【0017】
本例では、封止孔37に充填される封止部材38として、後述する封止工程で詳しく説明するように、特に金ゲルマニウム合金(Au/Ge)が用いられている。なお、封止部材としては任意の金属材料を使用することができる。
さらに、この実施形態では、容器本体3を構成する第2の積層基板12には、図面右端部付近に孔を形成することにより、この積層基板12の厚みに対応した凹部42が形成されている。この凹部42は、圧電振動素子30の下方に位置している。これにより、本実施形態では、容器本体3に外部から衝撃が加わった場合に、圧電振動素子30の自由端が矢印D方向に変位して振れた場合においても、容器本体3の内側底面と接触することを防止している。
【0018】
本実施形態に係る圧電デバイス1は以上のように構成されており、容器本体3に設けた封止孔37が金ゲルマニウム合金(Au/Ge)でなる封止部材38により封止されている。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークされることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0019】
次に、本発明の電子デバイスの製造方法は、次の如き特徴的な構成を有する。
即ち、本発明は、内部に空所Sを有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔37を外壁(積層基板11、12、或いは蓋体20)に有した容器2と、溶融した後で固化することにより封止孔37を封止する封止部材38と、封止孔を本封止された容器内に気密封止された電子部品30と、を有した電子デバイスの製造方法に関するものである。
本発明に係る製造方法の第1の特徴的な構成は、容器内に電子部品を収容する工程と、封止孔37が上向きとなるように容器2をセットする容器セット工程と、封止部材38を該封止孔上に配置する封止部材配置工程と、封止部材38を溶融、固化させる第1の溶融工程(封止部材の仮固定工程)と、第1の溶融工程を経ることにより封止部材が仮固定された容器をチャンバー内に配置し、該チャンバー内を減圧することにより封止孔と封止部材との隙間を介して容器の内部空所Sを減圧する減圧工程と、内部空所が減圧された状態で、封止部材を溶融、固化させる第2の溶融工程(本封止工程)と、を有し、第1の溶融工程では、容器の内部空所と容器外部との連通を確保した状態で封止孔内、又は/及び、該封止孔の周縁部に封止部材を固定するようにした点にある。
【0020】
また、本発明に係る製造方法の第2の特徴的な構成は、第1の溶融工程が、レーザー光を略球状の封止部材に照射して溶融させる工程であって、レーザー光を封止部材に照射する際の光軸の位置を、封止部材の平面視中心部から外径方向へ偏位した位置とした点にある。
また、本発明に係る製造方法の第3の特徴的な構成は、第1の溶融工程において封止部材に照射するレーザー光のエネルギー量(J)が、次式:エネルギー量(J)=レーザー出力(kW)×照射時間(msec)×(レーザー光のスポット径(μm)/球状の封止部材の直径(μm))により算出され、第1の溶融工程におけるこのエネルギー量を、球状の封止部材(溶融前の封止部材)上の同一位置に同一出力、同一スポット径のレーザー光を照射して該封止部材全体を溶融、固化させて封止孔を封止するのに要する(本封止に最低限必要とされる)エネルギー量の80%以下とした点にある。
なお、第2の溶融工程は、第1の溶融工程が完了した後、十分な冷却固化のための時間が経過してから実施されるので、第1の溶融工程を経た封止部材を第2の溶融工程で溶融させて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量は、溶融前の球状封止部材を一回の溶融工程により溶融させて本封止するのに要するエネルギー量とほぼ同等である。
【0021】
次に、図6は本発明に係る電子デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
図6において、容器、及び圧電振動素子の製造工程は図示を省略し、容器本体準備工程(ステップS1)、圧電振動素子の準備工程(ステップS2)としてそれぞれ簡略化して示した。
ステップS1に示す容器本体3準備工程では、容器本体3を製造して準備する。容器本体3は、例えば、セラミック、ガラスなどの絶縁材料を用いて形成し、さらに具体的には、酸化アルミニウム質のセラミックグリーンシートなどを成形して用いることができる。そのセラミックグリーンシートなどの材料を成形して、直径の異なる同心の貫通孔37a、37bをそれぞれ設けた2枚の積層基板11、12を積層し、さらに第2の積層基板12上に矩形環状の第3の積層基板13を積層させ、その後焼成することによって段差を有する凹部が形成された容器本体3の外形を得る。
なお、各貫通孔37a、37bは円形の穴であってもよいし、非円形の穴であってもよい。
絶縁材料からなる容器本体3の外面適所に、例えば、タングステンメタライズを施した上に、ニッケルめっきおよび金めっきを行ない、さらにフォトリソグラフィーを併用するなどの方法により、第1の積層基板11の外底面に設けられた外部実装端子(図示せず)、第2の積層基板12の上面に設けられた電極部15等を形成する。これと同時に、封止孔37内周面及び外部周縁に封止部材とのなじみのよい金属膜を形成する。なお、容器本体3に設けられた上記の各種端子は、対応する端子同士を、引き回し配線や、各積層基板に予め形成されたスルーホールなどの層内配線により接続する。
【0022】
ステップS2に示す圧電振動素子の準備工程では、圧電振動素子30を製造して準備する。圧電振動素子30の製造においては、まず、結晶軸に対して所定のカット角で切り出された大判の圧電基板、例えば水晶基板(水晶ウェハー)を準備し、フォトリソグラフィーを用いたウエットエッチング、またはドライエッチングすることにより、水晶基板の外形を形成する。
次に、スパッタリングや蒸着などにより、励振電極や外部接続端子などの電極形成を行う。電極形成は、圧電振動素子の外形が形成された水晶基板の表面に、スパッタリングや蒸着により、クロム層を下地として形成し、その上に金層を積層させて形成することができる。
そして、複数の圧電振動素子30が形成されたウェハーをダイシングすることにより、個片の圧電振動素子を複数得る。
【0023】
次に、圧電振動素子接合工程について説明する。
ステップS3に示した圧電振動素子接合工程では、容器本体3の凹部内に設けた電極部15上に導電性接着剤16を用いて圧電振動素子30を配置して電気的、機械的な接続を伴う接合を行う。
具体的には、図4(a)において、容器本体3の外周壁上面に予め封止ガラス等のロウ材33を塗布すると共に、凹部内の電極部15上に導電性接着剤16を塗布し、圧電振動素子30の基部31に設けられている引出し電極(図示せず)の箇所を載せ、軽く荷重をかけて位置決めし、導電性接着剤16を硬化させることにより、圧電振動素子30を容器本体3内にマウントする。
【0024】
次に、ステップS4の圧電振動素子30の周波数調整工程を行う。
周波数調整工程では、まず、圧電振動素子30の初期周波数を測定し、その初期周波数と目標周波数との差を許容範囲まで小さく調整することにより行う。圧電振動素子30の周波数調整は、例えば、レーザーやイオンビームを圧電振動素子30に照射してその一部を所定量エッチングすることにより行う。圧電振動素子30は、その振動部の質量を軽くすることにより振動周波数が高くなることが知られており、例えば、圧電振動素子30に形成された励起電極以外の電極パターンの一部をエッチングすることによって、励起電極の形状を変化させることなく圧電振動素子30の周波数を高く調整することができる。この質量削減方式による周波数調整方法を用いる場合には、圧電振動素子30の初期の周波数を目標周波数に対して低めの周波数となるようにつくり込みを行っておく。また、上記の質量削減方式とは逆に、圧電振動素子30の振動部に質量を付加して周波数を低下させることにより周波数調整を行うこともできる(質量付加方式)。質量付加の方法としては、スパッタリング法や蒸着法などにより圧電振動素子30の振動部に金属膜を堆積させる方法などを利用することができる。この質量付加方式により周波数調整を行う場合には、圧電振動素子30の初期の周波数は目標周波数に対して高めの周波数となるようにつくり込みを行う。
【0025】
次に、ステップS5に示すように、容器本体3の外周壁の開放された上端に蓋体20を接合する。容器本体3と蓋体20との接合は、容器本体3の上端面上に、例えば、コバール(Fe−Ni−Co)合金などからなるロウ材としてのシールリングを設け、そのシールリングを介して、蓋体20をシーム溶接することにより行うことができる。
具体的には、図4(b)に示すように、例えば、窒素雰囲気を形成するためのチャンバー51内において、支持台53上のトレイ54に蓋体20を載置し、その上に上述したロウ材33が蓋体20と接触するように容器本体3を逆さにして載置し、上から錘52により荷重をかけながらチャンバー51内を加熱する。これにより、ロウ材33を溶融して硬化させることにより蓋体20を接合する。尚、この工程は、チャンバー51に代えて、窒素雰囲気が管理されたベルト炉に圧電デバイス1を通して行うようにしてもよい。
ステップS3〜S5によって容器内に圧電振動素子30(電子部品)を収容する工程を終了する。
【0026】
容器本体3上に蓋体20が接合されることにより形成された内部空間S内に接合された圧電振動素子30を、封止工程(S6〜S11)に移して封止を行う。
封止工程は、例えば、図5(a)に示すように真空チャンバー51aなどの内部に圧電振動素子を収容した容器2(容器本体3、蓋体20)を収容して行う。この際、封止孔37が上向きとなるように、容器2の上下を逆にしてセットする。
まず、ステップS6に示すように、容器本体3の底面に設けた封止孔37内に、金とゲルマニウムとの合金、あるいは、金と錫との合金などからなる球状の封止部材38を配置する。この球状の封止部材38の配置は、封止孔37が有する内周の形状を利用して行うことができる。すなわち、内部空所S側の貫通孔37aと、その貫通孔37aよりも大きな同心の(外部側の)貫通孔37bとが連通してなる封止孔37の段差形状を利用して、容器2を内部空所S側が下側となるように載置することにより、封止孔37の外部側から入れ込んだ球状の封止部材38が封止孔37内の段部40に保持されて配置される(図5(a))を参照)。
【0027】
図5(a)の工程をさらに詳しく説明する。図5(a)の一部を拡大して示す図5(c)に表されているように、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38が配置される封止孔37は、所定の内径n1を備える内側の第1の貫通孔37aと、この第1の貫通孔37aと連通して設けられると共に、第1の貫通孔37aよりも大きな内径n2を備えて外側に開口した第2の貫通孔37bとを備えている。球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の直径n3は、第1の貫通孔37aの内径n1よりも大きく、第2の貫通孔37bの内径n2よりも僅かに小さく形成されている。
このため、球形の金ゲルマニウム合金の封止部材(Au/Ge)38は、図示されているように、第1の貫通孔37aの内周縁のエッジe(段部40)の稜線上に接触して保持されている。この球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38に、図示のように、レーザー光Lを照射する。このレーザー光Lは、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金の封止部材38の融点が360度程度であるにもかかわらず、本実施形態の封止部材38は光を吸収しやすい性質をもつため、金すずの場合とほぼ同じ条件で照射することで、球形の金ゲルマニウム合金(Au/Ge)合金38を適切に溶融することができる。
【0028】
次に、ステップS7において本発明の特徴をなす第1の溶融工程(封止部材の仮固定工程)を実施する。
第1の溶融工程では、図7(a)に示すように球状の封止部材38の外面の平面視中心部C1にレーザー光を照射して全体的に均等に加熱、溶融させて非球状に変形させた後で固化させることによって、封止孔内周縁と封止部材との間に通気用の隙間Gを形成した状態で封止部材を封止孔内周面、或いはその周縁部に固定(仮固定)する。或いは、図8(a)に示すように球状の封止部材38の外面の平面視中心部C1から偏位した箇所にレーザー光を照射してその一部を溶融後固化させることによって、封止部材の溶融した一部を封止孔37の内周面、或いはその周縁部に固定させる仮固定状態を実現させる。この仮固定状態では、封止部材は内部空所Sと容器外部とを連通状態に保持しながら封止孔に一部を固定させた状態を維持している。
これを更に詳しく説明すると、図7(b)は封止部材の外面の平面視中心部C1にレーザー光の光軸を一致させて球内部の中心点C2に向けて照射した場合の封止部材の仮固定状態を示しており、図8(b)は図8(a)のように封止部材の外面の平面視中心部C1から外径方向へ偏位した部位に対してレーザー光の光軸を一致させつつ、球内面の中心点C2を外した方向に照射した場合の封止部材の仮固定状態を示している。
【0029】
図7の場合には、球状の封止部材が中心部C1を中心として全体として均等に溶融するため、封止部材は均等に非球状に潰れ変形しながら貫通孔37aの周辺に固着してゆき、貫通孔37a、37bの内周縁との間に内部空所内のガスを排出するに十分な隙間Gが形成される。この時点でレーザー光の照射を中止する。
図8の場合には、球状の封止部材の中心部C1から外れた部位を中心として溶融が進行するため、封止部材は溶融の進行が早い部分38Aと、溶融の進行が遅い(或いは、溶融しない部分)38Bとに分けられ、レーザー光が照射されることによって溶融が早く進行した部分38Aは外径方向に展開してゆき、第2の貫通孔37bの内壁に接合する一方で、溶融が進行していない部分38Bは溶融が進行している部分38Aの冷却時に部分38Aによって引っ張られて封止孔内周縁から浮き上がる。このため、溶融が進行していない部分38Bと封止孔内周縁との間(レーザー光を照射した部位と反対側の部位)に内部空所内のガスを排出するに十分な隙間Gが形成される。この時点でレーザー光の照射を中止する。
【0030】
第1の溶融工程において封止部材38が封止孔37を不完全に閉止した結果として、次段の減圧工程における加熱によって容器内のガスが封止部材と封止孔との隙間Gから効率的に排出される一方で、軽量の封止部材が排出されるガス圧力によって封止孔周辺から離脱して飛散することがなくなる。
なお、第1の溶融工程において封止部材に照射するレーザー光のエネルギー量(J)は、エネルギー量=レーザー出力(kW)×照射時間(msec)×(レーザー光のスポット径(μm)/球状の封止部材の直径(μm))により算出される。
そして、第1の溶融工程におけるこの照射エネルギー量を、球状の封止部材(溶融前の封止部材)上の同一位置に同一出力、同一スポット径のレーザー光を照射して該封止部材全体を溶融、固化させて封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下とすることにより、ガス抜きに供することができる程度の十分な開口量を備えた隙間Gを維持しつつ、他の部分で封止部材を封止孔周辺に固定することが可能となる。
【0031】
レーザー光が封止部材を溶融させるためのエネルギー量は、レーザー出力(kW)と照射時間(msec)との積によって得られるエネルギー量(J)に対して、(レーザー光のスポット径/球状の封止部材の直径)を乗ずることにより得られる。このため、これらのパラメータを種々選定することによってエネルギー量を、球状の封止部材上の同一位置に同一出力、同一スポット径のレーザー光を照射して該封止部材全体を溶融、固化させて封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下とすることで、封止孔と封止部材との間に必要十分な開口量を備えた隙間Gを形成することができる。
図7の場合は、レーザー光を封止部材の中心部に照射するため、レーザー光の照射によって封止部材に与えられる溶融のためのエネルギー量を正確に制御する必要があり、エネルギー量が過小であれば接合が不十分な仮固定不良状態となり、エネルギー量が過大であれば隙間形成が不十分な完全封止状態となる。
これに対して図8の場合は、レーザー光を封止部材の中心部からはずれた部位に照射するため、レーザー光の照射によって封止部材に与えられる溶融のためのエネルギー量が多少前記80%を越えていたとしても、溶融が進行していない部分38Bの浮き上がりによる隙間形成に大きな影響はない。従って、レーザー光照射によるエネルギー量の制御を低精度で行っても十分に仮固定することができる。
このように仮固定工程において、レーザー光から照射するエネルギー量を広い範囲内で選定することができるので、仮固定におけるレーザー照射による溶融のためのエネルギー量を調整し易くなり、生産性を向上することができる。
【0032】
図9は第1の溶融工程において封止部材を仮固定するのに要するエネルギー量(J)と、未溶融状態にある封止部材を溶融させて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量(J)を示しており、夫々レーザー光の照射エネルギー量を異ならせた場合の実験結果を示している。
第1の溶融工程において封止部材を仮固定する場合とは、図7に示したレーザー照射方法と、図8に示したレーザー照射方法の双方を含む。
なお、レーザー光が封止部材に与えるエネルギー量は、レーザー光のパワーWと照射時間(msec)との積により決定される。
図9中において本封止領域とは、仮固定のための第1の溶融工程において封止孔37が完全に封止されてしまう場合のエネルギー量の範囲を示している。例えば、仮固定に要するエネルギー量を、本封止に要するエネルギー量の100%とした場合には、ほぼ本封止(NG)となる。
また、不完全仮固定領域とは、仮固定のための第1の溶融工程において容器の内部空所Sと容器外部との間に十分な通気用の隙間Gを安定して確保できない状態となる場合におけるエネルギー量の範囲を示している。不完全仮固定領域においては、理想的な仮固定状態が実現できることもあるが、封止孔が完全に封止される本封止状態となることもあり、仮固定の精度がばらつくため、仮固定結果への信頼性が低くなる。このため、この範囲のエネルギー量を用いた仮固定により得られた製品は実使用に供し得なくなる。
【0033】
次に、仮固定領域とは、仮固定のための第1の溶融工程において容器の内部空所Sと容器外部との間に必要十分な通気用の隙間Gを確保しつつ封止孔周縁に封止部材38が固定される理想的な仮固定状態を実現できる場合におけるエネルギー量の範囲を示している。例えば、未溶融状態にある封止部材を用いて封止孔を本封止するのに要するエネルギー量が3.2Jである場合に、仮固定時に照射するエネルギー量を2.56Jに留めることにより理想的な仮固定状態を100%の確率で得ることができた。この場合、仮固定のためのエネルギー量2.56は、本封止のためのエネルギー量3.2に対して、2.56/3.2=約0.80であり、80%以下に留まる。一方、仮固定のためのエネルギー量を2.6Jとした場合には仮固定状態となる精度が低下した。
【0034】
また、封止孔を本封止するためのエネルギー量が3.8Jである場合に仮固定時に照射するエネルギー量を3.2Jに留めることにより理想的な仮固定状態を100%の確率で得ることができた。この場合、仮固定のためのエネルギー量3.2Jは、本封止のためのエネルギー量3.8Jに対して、3.2/3.8=約0.84であり、80%を越えている。一方、仮固定のためのエネルギー量を3.6Jとした場合には仮固定状態となる精度が低下した。
また、封止孔を本封止するためのエネルギー量が4.4Jである場合に仮固定時に照射するエネルギー量を3.6Jに留めることにより理想的な仮固定状態を100%の確率で得ることができた。この場合、仮固定のためのエネルギー量3.6Jは、本封止のためのエネルギー量4.4Jに対して、3.6/4.4=約0.82であり、80%を越えている。一方、仮固定のためのエネルギー量を4.0Jとした場合には仮固定状態となる精度が低下した。
【0035】
以上の実験結果を踏まえると、理想的な仮固定状態が実現される確率が100%となるのは、仮固定のためのエネルギー量が、本封止のためのエネルギー量の80%以下に留まっている場合であることが判る。
次に、ステップS8の減圧工程において、真空チャンバー内を減圧することにより容器2の内部空所Sを減圧し、封止孔37の内周と非球状に変形した封止部材38との隙間Gを介して、加熱により生成された容器2内部のガスを容器2の外部に排出させる。すなわち、ステップS3で説明した圧電振動素子30と電極部15とを接合に供する銀ペーストなどの導電性接着剤16などの硬化の過程で発生する有害なガス(アウトガス)や、容器2内部(内部空所S)の水分が蒸発した気体を、この減圧ステップで外部に排出させる。
即ち、ステップS8の減圧工程では、図10に示すように、第1の溶融工程において封止部材38を封止孔37に仮固定した状態にある容器2を真空チャンバー51a内に配置し、真空チャンバー51a内を図示しない真空排気手段により真空引きし、好ましくは、高真空状態とする。
この際、第1の溶融工程を経た封止部材38は通気用の隙間を維持しつつ確実に封止孔周辺に固定されているため、真空引き時に封止部材が飛び出して脱落する虞が皆無となる。このため、真空引きの速度、強度を高めることができ、生産性を高めることができる。また、同時に容器内の真空度を高めて真空度のバラツキをなくすることができるので、デバイス特性の向上、特性バラツキの減少を図ることができる。
【0036】
図11は、減圧工程における温度プロファイルの一例を示している。すなわち、真空チャンバー51a内を例えば、10−3Pa(パスカル)程度の高真空とする。そして、T1時間(例えば、20分)の間、250度ないし300度、好ましくは、260度以上にまで加熱する。この温度をT2時間(例えば、30分)維持して、容器2内の例えば導電性接着剤16等から生成される気体成分を容器2外に排出する。
続いて、真空チャンバー51a内の温度と気圧を保持したまま、真空孔封止工程(第2の溶融工程)をT3時間(例えば、20分)行う。この時、周囲の温度が高くても、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38の融点は高いので、溶融されることなく、従来260度程度であった加熱温度を280度程度まで上げて、効果的に上記気体成分の追い出しを行うことができる。そして、レーザー照射手段55から、封止部材38に向けてレーザー光Lを照射して、仮固定された封止部材38を溶融、固化することにより、貫通孔37を完全に塞ぐ(S9、S10))。
その後大気開放して終了する(ステップS11)。
【0037】
このように、本実施形態に係る圧電デバイス(電子デバイス)の製造方法では、容器本体3の底部に形成された貫通孔37に対して、球形に形成した金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38を配置して第1の溶融工程によって仮固定(未封止)し、その後第2の溶融工程において本溶融(本封止)するようにしている。
このため、生産性低下の原因となるカバー板を用いることなく、簡易な手法によって封止部材が封止孔から排出されるガスによって飛散することを確実に防止することができる。
金ゲルマニウム合金(Au/Ge)の封止部材38は、融点が高いが、酸化されやすく、表面に酸化膜が形成されやすく、酸化膜が存在すると、加熱により流れにくくなり、封止作業がその分困難になる。ところが、金ゲルマニウム合金(Au/Ge)を球形にして、レーザー光を照射すると、酸化膜のために、光を吸収しやすく、容易に溶融され、酸化膜が貫通孔37の外側に向かって表面に押し出される。これにより、封止部材38の合金成分を貫通孔37内に適切に流すことで、貫通孔37を完全に塞ぐことができる。このため、封止後の圧電デバイス1を実装する工程において、熱が加えられた場合に、金ゲルマニウム合金の封止部材38は融点が高く、容易に溶融しないことから、容器2内部の真空状態が封止部材の一部溶融によりリークすることが有効に防止される。しかも、封止部材38に鉛を含有していないことから、鉛を原因とする環境汚染を回避することができる。
【0038】
図12(a)は、本発明の圧電デバイスの異なる実施の形態の構成を示す概略平面図である。図において、圧電デバイス60は、圧電振動素子30を用いて、圧電発振器を形成した例を示しており、第1の実施の形態と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図12(b)は、図12(a)のX−X線概略断面図であり、容器本体61は、その製造の際に、第1の実施形態の容器本体3よりも多くのセラミックシートの積層基板を用いて製造されている。これにより、容器本体61には、増えた分の積層基板を利用して中央付近に凹部62が形成されており、その内側底部には、図示しない電極が設けられている。この電極上には、集積回路63が実装されている。集積回路63は、所定の分周回路等を構成していて、圧電振動素子30の駆動電極と電気的に接続され、集積回路63から出力された駆動電圧が圧電振動素子30に与えられるようになっている。
容器本体61の貫通孔37に充填されている封止部材38は、第1の実施形態で説明したものと同じであり、同一の封止工程で封止されたものである。したがって、本実施形態も第1の実施形態と同様の作用効果を発揮することができる。このように、本発明は、圧電振動子に限らず、図11のような圧電発振器やフィルタ等、その名称にかかわらず、容器本体内に圧電振動素子を収容して、蓋体により封止する構成のあらゆる圧電デバイスに適用できる。
【0039】
図13は、本発明の上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用した電子機器の一例としてのデジタル式携帯電話装置の概略構成を示す図である。図において、送信者の音声を受信するマイクロフォン108及び受信内容を音声出力とするためのスピーカ109を備えており、さらに、送受信信号の変調及び復調部に接続された制御部としての集積回路等でなるコントローラ101を備えている。コントローラ101は、送受信信号の変調及び復調の他に画像表示部としてのLCDや情報入力のための操作キー等でなる情報の入出力部102や、RAM、ROM等でなる情報記憶手段103の制御を行うようになっている。このため、コントローラ101には、圧電デバイス1が取り付けられて、その出力周波数をコントローラ101に内蔵された所定の分周回路(図示せず)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにされている。このコントローラ101に取付けられる圧電デバイス1は、圧電デバイス1単体でなくても、圧電デバイス1と、所定の分周回路等とを組み合わせた発振器である図12のような圧電デバイス60であってもよい。
コントローラ101は、さらに、温度補償水晶発振器(TCXO)105と接続され、温度補償水晶発振器105は、送信部107と受信部106に接続されている。これにより、コントローラ101からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償水晶発振器105により修正されて、送信部107及び受信部106に与えられるようになっている。
【0040】
このように、制御部を備えた携帯電話装置110のような電子機器に、上述した実施形態に係る圧電デバイスを利用することにより、製造工程において、容器本体内に正しく位置決めされた圧電振動素子を備える圧電デバイスを使用していることによって、正確なクロック信号を生成することができる。
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
【0041】
上記実施形態では封止孔を容器本体側に形成したが、蓋体側に封止孔を備えた電子デバイスに対しても本発明による封止方法を適用することができる。要するに、本発明は容器の外面の何れかの部位に封止孔を有した電子デバイス一般に対して適用することができる。
また、上記実施形態に係る容器本体3は上面に凹部を有した絶縁基板としたが、凹部を有しない平板状の絶縁基板上に電子部品を搭載し、電子部品を含む絶縁基板上の空間をバスタブ形(逆椀形)の蓋体により封止するようにした電子デバイスに対しても本発明の封止方法を適用することができる。この場合、封止孔は絶縁基板側に設けても良いし、蓋体側に設けても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…圧電デバイス、2…容器、3…容器本体、11、12…積層基板、15…電極部、16…導電性接着剤、20…蓋体、30…圧電振動素子(電子部品)、31…基部、33…ロウ材、34、35…振動腕、37…封止孔、37a、37b…貫通孔、38…封止部材、38A…溶融の進行が早い部分、38B…溶融の進行が遅い部分、40…段部、42…凹部、51…チャンバー、51a…真空チャンバー、52…錘、53…支持台、54…トレイ、55…レーザー照射手段、60…圧電デバイス、61…容器本体、62…凹部、63…集積回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を有した容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記容器内に収容された電子部品と、を含む電子デバイスの製造方法であって、
前記電子部品を前記容器の空所内に収容する工程と、
前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する封止部材配置工程と、
前記容器の空所と前記容器外部との連通を確保した状態で前記容器に前記封止部材を固定する第1の溶融工程と、
前記第1の溶融工程の後で、前記容器の空所を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程の後で、前記封止部材を溶融させて前記容器を封止する第2の溶融工程と、
を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
レーザー光照射手段を準備し、該レーザーの光軸が前記封止部材の平面視中心部から外形側へ偏位した位置になるように該レーザー光を照射して、前記封止部材を溶融させることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1の溶融工程において前記封止部材に照射する前記レーザー光のエネルギー量は、前記封止部材全体を溶融、固化させて前記封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下であることを特徴とする請求項2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項1】
内部に空所を有すると共に該空所を容器外部と連通させる封止孔を有した容器と、前記封止孔を封止するための封止部材と、前記容器内に収容された電子部品と、を含む電子デバイスの製造方法であって、
前記電子部品を前記容器の空所内に収容する工程と、
前記封止部材の少なくとも一部を前記封止孔内に配置する封止部材配置工程と、
前記容器の空所と前記容器外部との連通を確保した状態で前記容器に前記封止部材を固定する第1の溶融工程と、
前記第1の溶融工程の後で、前記容器の空所を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程の後で、前記封止部材を溶融させて前記容器を封止する第2の溶融工程と、
を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
レーザー光照射手段を準備し、該レーザーの光軸が前記封止部材の平面視中心部から外形側へ偏位した位置になるように該レーザー光を照射して、前記封止部材を溶融させることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1の溶融工程において前記封止部材に照射する前記レーザー光のエネルギー量は、前記封止部材全体を溶融、固化させて前記封止孔を完全封止するのに要するエネルギー量の80%以下であることを特徴とする請求項2に記載の電子デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−98610(P2013−98610A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236937(P2011−236937)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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