説明

電子ペン及びそれに用いる交換用ペンユニット

【課題】 ユーザーが用紙に筆記することで筆記内容が直接電子データ化され通信端末で利用できる前記システムを用いた場合であっても、印刷面のドットパターンを損傷することなく筆跡を容易に消去することが可能で、専用用紙を確実に再利用できる利便性、経済性に優れた電子ペンとそれに用いる交換用ペンユニットを提供する。
【解決手段】 ドットパターンが印刷された専用用紙に筆記するためのインキ24を収容するペンユニット2及び前記ドットパターンを光学的に読み取る読取ユニットを備えた電子ペン1であって、前記ペンユニット2に収容されるインキ24による筆跡が、消しカスを生じ難い摩擦体と用紙との摩擦で発生する摩擦熱により消色する。前記電子ペン1に収容するための交換用ペンユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ペンとそれに用いる交換用ペンユニットに関する。詳細には、筆跡を加熱することにより消去できる電子ペンとそれに用いる交換用ペンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に官公庁や金融機関では、筆記された情報を再入力する手間を省くことや誤入力を防止することを目的として、紙製の帳票に代えて、帳票を電子化した電子フォームが利用されている。
前記電子フォームは、紙製帳票の記入項目等を複数のフィールドとして含む電子データである。利用者が前記書類(帳票)を作成する場合、パーソナルコンピュータ等に電子フォームを読み込んで表示装置上に表示し、キーボードやマウス等の入力装置を操作して電子フォームに必要事項を入力すると、入力された事項は電子データとして取得され、ネットワーク等を通じて当該帳票の提出先機関等の通信端末に送信することができる。
しかし、前記書類は、キーボード入力やパーソナルコンピュータの操作に不慣れな利用者にとって利用し難いものであるため、従来用いられる紙製帳票にペン入力する方法が確実である。
【0003】
そこで、紙への筆記により、筆跡が電子データ化される有用な入力デバイスとして、「電子ペン」や「デジタルペン」と呼ばれるペン型入力デバイスが登場しており(以下、本明細書では「電子ペン」と呼ぶ)、例えばAnoto社が開発した「アノトペン(Anoto:登録商標)」が知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記アノトペンは、所定のドットパターンが印刷された専用用紙と合わせて使用されるものであり、用紙に筆記するためのインキを収容するペンユニットに加えて、専用用紙上のドットパターンを読み取るためのデジタルカメラを備えた撮像部と、Bluetooth(登録商標)やUSBに対応する通信部からなる読取ユニットを搭載している。
ユーザーが専用用紙上にアノトペンで文字等を筆記した際、筆圧によるペンユニットの移動に伴ってデジタルカメラが専用用紙上のドットパターンを検出し、ユーザーが書き込んだ文字が電子データとして取得される。この電子データが、通信部によりアノトペンから近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。尚、専用用紙上に形成されるインキによる筆跡は、利用者が自分の書いた文字を視認するために形成されるものであり、電子データには関連しない。
前記アノトペンを利用したシステムは、キーボードやマウスに代わる入力デバイスとして利用することが可能であり、上述のパーソナルコンピュータやキーボードの使用に抵抗があるユーザーにとっては非常に使い易くなる。また、官公庁等の書類提出先においても、ユーザーの記入内容をそのまま電子データとして取得できるので、再入力する手間を省くことや誤入力を防止できるというメリットがある。
【特許文献1】特表2003−528387号公報
【0004】
しかしながら、前記専用用紙は、精密ドットパターン印刷がなされた特殊なものであるため、汎用の用紙と比べてコストが高いものである。また、電子ペンに収容される通常インキによる筆記線は消去できないため、一度使用した用紙は再利用できずに処分されている。そのため、前記システムを普及させる障害となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ユーザーが用紙に筆記することで筆記内容が直接電子データ化され通信端末で利用できる前記システムを用いた場合であっても、印刷面のドットパターンを損傷することなく筆跡を容易に消去することが可能で、専用用紙を確実に再利用できる利便性、経済性に優れた電子ペンとそれに用いる交換用ペンユニットを提供できる。そのため、専用用紙の用途を帳票以外の使用領域に広げることができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ドットパターンが印刷された専用用紙に筆記するためのインキを収容するペンユニット及び前記ドットパターンを光学的に読み取る読取ユニットを備えた電子ペンであって、前記ペンユニットに収容されるインキが加熱により消色することを要件とする。
更に、前記インキが、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した、加熱により有色から無色に色変化するマイクロカプセル顔料を含むこと、前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、常温域においては有色状態或いは無色状態を維持するものであり、更に、有色状態から温度が上昇する過程では、温度Tに達すると消色し始め、温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、前記温度Tより低い温度Tに達すると着色し始め、温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に有色状態となり、前記温度Tと温度Tの間の温度域で有色状態或いは無色状態が維持できるヒステリシス特性を示し、温度Tは−30〜10℃の範囲にあり、温度Tが30〜80℃の範囲にあること、摩擦体を備えてなること、前記摩擦体が電子ペンに設けられると共に、摩擦体近傍にドットパターンを光学的に読み取る第二読取ユニットを備えること、前記摩擦体がペンユニット部に着脱可能に取付けられると共に、取付時に読取ユニットのプログラムが切り替えられること、前記ペンユニットが着脱可能であることを要件とする。
更には、前記電子ペンに収容するための交換用ペンユニットを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ユーザーが専用用紙に筆記することで筆記内容が直接電子データ化され通信端末で利用できる前記システムを用いた際、用紙上に形成された筆跡を加熱により消去することができるので、印刷面のドットパターンを損傷することなく筆跡を消去して、専用用紙を容易に再利用できる利便性、経済性に優れ、更に広い分野への応用が可能となる電子ペンとそれに用いられる交換用ペンユニットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
前記電子ペンは、ドットパターンが印刷された専用用紙と共に用いられるものであり、該専用用紙に筆記するためのインキを収容するペンユニットと、前記ドットパターンを光学的に読み取る読取ユニットを備えている。
【0009】
前記ペンユニットは、マーキングペンチップやボールペンチップを筆記先端部に装着したレフィル形態のマーキングペンやボールペンが使用される。
前記ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、更にインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
【0010】
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.2〜3.0mm、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mm径程度のものが適用できる。
【0011】
前記インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体や、ステンレスパイプ等の金属加工体が用いられる。
更に、前記インキ収容管として透明、着色透明、或いは半透明の樹脂成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
【0012】
また、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、収容管内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるペン先を直接或いは中継部材を介して収容管に装着してなり、前記インキ吸蔵体とペン先が連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、ペン先の押圧により開放する弁体を介してペン先とインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
【0013】
前記ペン先は、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来汎用の気孔率が概ね30〜70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。前記チゼル形状のペン体にあっては、筆記面への当接位置を変えることにより細書き用、或いは太書き用として、更には一定線幅のマークを形成できる多用途性を有し、多様な筆跡を形成できる利便性に優れた筆記具を構成できる。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0014】
前記ペンユニットに収容されるインキは、加熱により消色可能なインキである。
前記インキ中に配合される着色剤としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた顔料が有効である。
前記可逆熱変色性組成物のうち、加熱により消色する組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する組成物を例示できる。
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(T)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(T)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔T〜Tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
【0015】
前記可逆熱変色性材料(組成物)の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する(図1参照)。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記TとT間の温度域であり、着色状態或いは消色状態を維持でき、色濃度の差の大きい領域であるTとTの間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さ(TとTの温度差)がヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0016】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度Tを冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−30〜0℃、好ましくは−30〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度Tを摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち45〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜60℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0017】
以下に前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げることができ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
また、前記(イ)成分として、特開昭63−145388号公報、特開平10−237436号公報で例示される、ビス−3,3−[1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル]−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、2,4−ジメチル−6−[(4−ジメチルアミノ)アニリノ]−フルオラン、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−[ビス−1,1−(p−ジメチルアミノフェニル)−エチレノ−2]フタリド等の電子供与性近赤外吸収有機化合物を用いることもできる。
前記近赤外吸収有機化合物を用いた場合、筆跡が発色状態(着色時)でのみ近赤外を吸収するものとなるため、電子ペンの読取ユニットに近赤外領域読取機能を付加することで、より多用な使用用途に適用できるものとなる。
【0018】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0019】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0020】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0021】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0022】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0023】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0024】
更に、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報に記載されている下記一般式(1)で示される化合物、或いは、特開2006−188660号公報に記載されている下記一般式(2)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
【化2】

〔式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。〕
【0025】
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
また、前記式(2)中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物としては、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチル等を挙げることができる。
【0026】
本発明に適用されるマイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態のものの適用を拒まないが、非円形断面の形態が効果的である。
筆記により形成される可逆熱変色性筆跡は、前記マイクロカプセル顔料が被筆記面に対して長径側(最大外径側)を密接させて濃密に配向、固着されており、高濃度の発色性を示すと共に、前記筆跡をゴム等の摩擦体による擦過等による外力に対して、前記マイクロカプセル顔料は外力を緩和する形状に微妙に弾性変形し、マイクロカプセルの壁膜の破壊が抑制され、熱変色機能を損なうことなく有効に発現させることができる。
ここで、前記非円形断面形状のマイクロカプセル顔料は、最大外径の平均値が0.5〜5.0μmの範囲にあり、且つ、可逆熱変色性組成物/壁膜=7/1〜1/1(重量比)の範囲を満たしていることが好ましい。
前記マイクロカプセル顔料(円形断面形状のものを含む)は、最大外径の平均値が、5.0μmを越える系では、毛細間隙からの流出性の低下を来し、一方、最大外径の平均値が、0.5μm以下の系では高濃度の発色性を示し難く、好ましくは、最大外径の平均値が、1〜4μmの範囲、当該マイクロカプセルの平均粒子径〔(最大外径+中央部の最小外径)/2〕が1〜3μmの範囲が好適である。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を起こし、逆に、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、可逆熱変色性組成物/壁膜=6/1〜1/1(重量比)である。
【0027】
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法等の公知の手段が適用できるが、本発明の前記した要件を満たす粒子径範囲の、非円形断面形状のマイクロカプセル顔料を得るためには、凝集、合一化が生じ難い界面重合法又は界面重縮合法の適用が効果的である。
【0028】
前記マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、2〜50重量%(好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、4〜30重量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害されることがある。
【0029】
本発明に適用される可逆熱変色性インキは、有色状態を示すマイクロカプセル顔料をビヒクル中に分散させたインキが有効であり、前記ビヒクルとしては水性ビヒクルが好ましいが、油性ビヒクルであってもよい。
具体的には、剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキや、水溶性高分子凝集剤により可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキが挙げられる。更には、可逆熱変色性顔料とビヒクルと比重差を0.05以下になるよう調節したインキが挙げられる。
【0030】
前記剪断減粘性付与剤を添加することによって、マイクロカプセル顔料の凝集・沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制して良好な筆跡を形成できる。
更に、前記インキを充填するペンユニットがボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
尚、前記剪断減粘性付与剤を添加したインキの粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84S−1の剪断速度におけるインキ粘度が20〜300mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.9を示すことが好ましい。
前記した粘度範囲及び剪断減粘指数を示すことによって、更にインキ漏れだし、インキの逆流を防止することができる。
なお、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kj(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
【0031】
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0032】
前記水溶性高分子凝集剤としては、非イオン性水溶性高分子化合物が好適に用いられる。
具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類、非イオン性水溶性セルロース誘導体等が挙げられる。このうち水溶性多糖類の具体例としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリンが挙げられ、また非イオン性水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
本発明の可逆熱変色性インキ中において顔料粒子間の緩い橋架け作用を示す水溶性高分子であればすべて適用することができるが、なかでも前記の非イオン性水溶性セルロース誘導体が最も有効に作用する。
前記高分子凝集剤は、インキ組成物全量に対し、0.05〜20重量%配合することができる。
【0033】
インキ中に水と共に添加される水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0034】
また、ボールペン形態のペンユニットを用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
【0035】
その他、必要に応じてアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルローズ誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の樹脂を添加して紙面への固着性や粘性を付与することもできる。
また、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0036】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体を充填することができる。前記インキ逆流防止体は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0037】
更に、前記不揮発性液体や難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
尚、前記液状のインキ逆流防止体と共に、固体のインキ逆流防止体(所謂固体栓)を併用することもできる。
【0038】
前記読取ユニットは、専用用紙に印刷されたドットパターンを読み取るためのデジタルカメラを備えた撮像部と、BluetoothやUSBに対応する通信部を備えている。前記読取ユニットは、筆記時のペン先の動きに合わせて、専用用紙に印刷されたドットパターン情報を撮像部で読み取って記憶部に記憶した後、筆記の順番や時間等の識別情報と共に通信部からパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信するものである。
更に、前記読取ユニットの構成部を起動するためのバッテリーや圧力センサ、筆記時にドットパターンを照射するLED、操作状態を感応的に知らせる振動部等を設けることもできる。
【0039】
前記電子ペンを使用する際に適用される専用用紙は、前記撮像部で読み取られるドットパターンが紙の表面に特殊なインキで印刷されるものであり、更に必要に応じて、文字や罫線や図形等が印刷される。その場合、図形内に特定情報を表すドットパターンを印刷することで、該図形にタッチした際に電子データ化される内容(例えば、筆跡の色調や太さ、入力完了指示等)やデータ送信開始指示等を指定できるような構成(所謂、専用ボックス)とすることも可能である。
また、前記専用用紙には、筆跡が加熱により消去可能であることを説明した表示部を設けることができる。そのため、表示部を確認したユーザーが書き込んだ筆跡を加熱することで消色(消去)させて、該用紙を再利用できるものとなる。
前記専用用紙は1枚の用紙として使用される他、複数枚を冊子形態として構成することもできる。また、ドットパターンのみを印刷したメモやノートとしての使用や、種々の書式を用いた帳票形態での使用により実用に供される。
前記ドットパターンは所定の位置に印刷されており、電子ペンの撮像部で読み取られた際、インキ(ペンユニット)で筆記した文字や図形がドットパターンのストローク座標情報として電子データ化され、記憶部に記憶されるようになっている。
【0040】
前記専用用紙に形成されたインキ(ペンユニット)による筆跡は、指による擦過や加熱具等の加熱手段の適用により有色状態から無色状態に色調を変化させることができる。
前記加熱手段としては、広面積を一括消去するのに適したコピー機等の感熱機、電球等の照明具、ヘアドライヤー等が用いられ、更には、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具等の適用が挙げられる。また、簡便な方法で変色可能な手段であることから、摩擦体(擦過部材)が好適に用いられる。
前記摩擦体としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適であるが、プラスチック成形体、石材、木材、金属、布帛であってもよい。尚、消しゴムを使用して筆跡を擦過することもできるが、擦過時に消しカスが発生するため、好ましくは前述のような摩擦体が用いられる。
前記摩擦体の材質としては、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)等が好適に用いられ、特に、擦過面への再筆記性に優れたSBS樹脂やSEBS樹脂がより好適に用いられる。
前記摩擦体は電子ペンと別体の任意形状の部材であってもよいが、電子ペンに固着させることで携帯性に優れたものとなる。
【0041】
特に、前記摩擦体により用紙上の筆跡を消去するのと同時に、筆記により入力された筆跡データが消去できるように、摩擦体の擦過位置を認識するための機構を電子ペンと一体又は別体で設けることもできる。
前記機構としては、読取ユニット(電子ペンに内蔵される撮像部とは別の撮像部を有する第二読取ユニット)を備えた摩擦体を別体で、又は、電子ペンと一体に設けたものや、摩擦体を備えたユニットの取付けにより電子ペンの読取ユニットが筆跡データ消去用に切り替えられる構成のもの等が挙げられる。
【0042】
前記第二読取ユニットを備えるものとしては、例えば電子ペンと別体(単体)で、摩擦体近傍(即ち、摩擦時に専用用紙に接触する部分を認識できる位置)にドットパターンを光学的に読み取る第二読取ユニットを備えたもの(即ち、筆跡を消去する摩擦体と該摩擦体近傍に前記第二読取ユニットを備える消去具)が適用できる。
また、電子ペンと一体化したものとしては、例えば、摩擦体が電子ペンの後端や側面に設けられると共に、摩擦体近傍(即ち、摩擦時に専用用紙に接触する部分を認識できる位置)にドットパターンを光学的に読み取る第二読取ユニットを備えたものが適用できる。
いずれの場合にも適用される第二読取ユニットは、専用用紙に印刷されたドットパターンを読み取るためのデジタルカメラを有する撮像部と、Bluetooth(登録商標)やUSBに対応する通信部を備えており、更に、状況に応じたプログラムに対応する制御部や読み取りデータを記憶する記憶部等が必要に応じて設けられる。
【0043】
前記第二読取ユニットを備えたものは、摩擦時の摩擦体の位置に応じて、専用用紙に印刷されたドットパターン情報を撮像部で読み取って記憶部に記憶した後、通信部からパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。更に、前記第二読取ユニットの各構成部を起動するためのバッテリーや圧力センサ、摩擦時にドットパターンを照射するLED、操作状態を感応的に知らせる振動部等を設けることもできる。
尚、前記摩擦体を電子ペンと一体に形成する場合、前記各構成部は電子ペンに使用されるものと共有することもできる。その場合、ペンユニットによる筆記と摩擦体による消去は、筆記(消去)動作により自動的に、又は手動操作でプログラムの切り替えが行われる構成が用いられる。
【0044】
また、摩擦体を備えたユニット(摩擦体ユニット)の取付けにより電子ペンの読取ユニットが筆跡データ消去用に切り替えられるタイプにおいては、前記摩擦体(摩擦体ユニット)がペンユニット部の先端に着脱可能に取付けられる、またはペンユニットと交換することで取り付けられる構成を有し、取付時に読取ユニットのプログラムが切り替えられることによって、紙面上のドットパターンの読取方法(認識方法)が筆記用と消去用のいずれかに変更されるものである。そのため、摩擦体ユニット取り付け時にプログラムを切り替えるための切替部等を適時設けることが好ましい。
前記切替部は、摩擦体ユニット取り付け時に接触する位置に設ける他、ペンユニットと交換するタイプでは押圧センサを併用することもできる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の部は重量部である。
実施例1
ペンユニットAの作製
(イ)成分として1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン1.0部、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)2−エチルヘキサン8.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸−4−メチルベンジル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−2℃、T:10℃、T:35℃、T:48℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、赤色から無色に色変化する)12.5部、サクシノグリカン0.33部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、水66.37部からなる可逆熱変色性インキを調製した。
その後、前記インキ24(予め−2℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を赤色に発色させた後、室温下で放置したもの)を外径2.2mmのポリプロピレン製パイプ(インキ収容筒22)に充填し、樹脂製ホルダーを介してボールペンチップ21と連結させた。次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後部よりポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体25を充填して遠心処理による脱気を行なった後、インキ収容筒22の後端に尾栓25を取り付けることでペンユニットA(2)を得た。
尚、前記ボールペンチップ21は、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0046】
ペンユニットBの作製
(イ)成分として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2.0部、(ロ)成分としてビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド8.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:−6℃、T:48℃、T:60℃、ΔH:64℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物/壁膜=2.6/1.0、青色から無色に色変化する)25.7部、サクシノグリカン0.2部、尿素5.5部、グリセリン7.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.03部、変性シリコーン系消泡剤0.15部、防黴剤0.1部、潤滑剤0.5部、トリエタノールアミン0.5部、水59.82部からなる可逆熱変色性インキを調製した。
その後、前記インキ(予め−14℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を青色に発色させた後、室温下で放置したもの)を外径2.2mmのステンレス製パイプ(インキ収容筒)に充填し、ボールペンチップと連結させた。次いで、前記ステンレス製パイプの後部より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体を充填して遠心処理により脱気処理を行なうことでペンユニットB(交換用)を得た。
尚、前記ボールペンチップは、金属塊を切削したチップの先端部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0047】
電子ペンの作製(図2参照)
電子ペン1としては、ドットパターンが印刷された電子ペン専用用紙を使用する「Anoto社」のシステムを用いるものが適用される。
前記電子ペン1は、先に作製したペンユニット2(図においてはペンユニットAを収容している)を収容し、該ペンユニット2後端に圧力センサ3が搭載される。更に、読取ユニットとして、ドットパターンを読み取るデジタルカメラを備える撮像部4、デジタルカメラで読み取られた筆跡情報(ドットパターンの座標情報)を記憶する記憶部5、通信端末に座標情報(電子データ)を送信する通信部6、これらの機能を制御する制御部7、各要素に電源供給する電源部8で構成され、これらすべてを電子ペン外装9の内部に搭載している。また、前記外装9の後端には、SEBS樹脂からなる摩擦体91が配設されている。
更に、非使用時にペン先(ボールペンチップ21)を被覆するキャップ(図示せず)が設けられ、キャップ被覆時には電子ペン1の電源がオフ状態になると共に、キャップを外すことで電子ペン1の電源がオン状態となるように構成される。
【0048】
前記ペンユニット2は外装9内に交換可能に収容されており、収容時に尾栓23後端が、圧力センサ3に接触するように設定されている。前記圧力センサ3は、筆記が開始されたことを制御部7に伝達する機能と、筆圧の強弱を認識する機能とを備えている。
また、収容状態のペンユニット2は、筆記時にインキ24による筆跡を可視状態で専用用紙に残す役割の他に、撮像部4(デジタルカメラ)とドットパターン印刷面との距離を一定に保つ役割を担っている。
前記撮像部4により専用用紙に印刷されたドットパターン情報を読み取った後、該情報(電子データ)を記憶部5に記憶する。その際、読み取った情報に加えて、他の識別情報(筆記された順番、速度、日時等)を付加することもできる。尚、前記記憶部5に記憶された電子データが不要になった際に消去するためのリセットボタンが外装9の表面に埋没する位置に設けられ、ピン等で押圧することでデータが消去される。
【0049】
前記通信部6は、USBとBluetoothに対応するものである。専用用紙への筆記により得られたデータを記憶部5に記憶した後、送信指示を行うことで前記データが通信部6から通信端末に送信される。
前記送信指示は、専用用紙上の所定位置に設けられた専用ボックス(ドットパターンによる送信指示が示された図形)を電子ペン1でチェックすることや、電子ペン1をクレイドル(充電機能を付したスタンド型拡張機)に接続することで行われ、BluetoothやUSB経由で通信端末に前記データが送信される。
【0050】
更に、前記電子ペン1には、電源の通電情報やデータの送信完了や専用ボックス内の情報読取完了等を電子ペン1の振動により示すための振動部が配設され、より利便性の高い構成となっている。また、暗所での筆記時に撮像部4で読み取る箇所を照射するLEDを設けることもできる。
【0051】
電子ペン1により筆記される専用用紙は、所定のドットパターン(通称「アノトパターン」と呼ばれ、各ドットが0.3mm間隔で形成された直角に交わる縦横の仮想線の交点近傍に、それぞれ異なる4方向の何れかに配置され、36個のドットを1単位情報としている)が印刷されるものであり、例えば、特表2003−528387号公報に開示されるものが用いられる。その際、紙面に文字、罫線、図形等を一緒に印刷することもでき、1枚の用紙形態や複数を綴じた冊子形態等で構成される。
また、前記筆記用の専用用紙上又はカード状の別紙に、図形内にドットパターンによる各種指示(電子化された際に得られる筆跡の太さ、形状、色調や、記憶部6に記憶されたデータの消去等)が示された専用ボックスを印刷して、該専用ボックスをチェックした際に多用な情報を付与することができる構成としている。
【0052】
前記電子ペン1から電子データが送られる通信端末は、例えば、キーボード等の入力手段、インターネットに接続され入力情報を送受信する送受信手段、ディスプレイ等の表示手段、入力情報や読み込んだ情報を保存する保存手段を有する携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)、パーソナルコンピュータ等の装置である。前記通信端末では、電子ペン1から送信された電子データを、ソフトやシステム管理サーバ等を介して、テキストデータ等に変換して利用することができる。
【0053】
電子ペンの使用方法
電子ペン1を使用する際、キャップを外すことで電源部8が通電して電源が入る。前記電子ペン1を用いて専用用紙に文字等を筆記した際、筆圧によるペンユニット2の移動に伴って圧力センサ3が筆記状態を検知する。その際、デジタルカメラ(撮像部4)が筆跡に対応する位置のドットパターン(座標情報)を検出し、ユーザーが書き込んだ文字をデータとして取得し記憶部5に電子データが記憶される。
尚、専用用紙に筆記する前に、専用ボックス(電子化された際に得られる筆跡の太さ、形状、色調等の情報がドットパターンで印刷される図形)が印刷されたカードに、チップ21を接触させることで撮像部4が印字情報を認識し、電子化された際に得られる筆跡の状態を選択できる。
前記記憶部5に記憶された電子データは、前記専用ボックス(Bluetoothによりデータを転送する旨の情報がドットパターンで印刷される)へのチップ21の接触又はクレイドルへの接続(USB経由での通信)により、通信部6を介して近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。
電子ペン1の使用が終了した後には、再びキャップを被せることで電源部8の通電が解除され電源が切れる。
尚、前記専用ボックスへのチップ接触時、キャップの着脱時(電源オンオフ時)等には、所望の指示を認識したことを知らせるために振動部が作動し、ユーザーに振動で合図を送るように制御される。
【0054】
前記専用用紙に筆記された熱変色性インキ24による筆跡は、電子ペン1後端の摩擦体91での擦過や、ドライヤーや照明等での加熱により容易に消去することが可能である。尚、消去後の専用用紙上に再び筆跡を形成した際、筆記前と同様に筆跡を電子データ化することができるものであった。
即ち、電子ペン1では、ドットパターン印刷部を有する専用用紙に筆記することで、内蔵する熱変色性インキ24による筆跡を形成し、不要な筆跡を摩擦体91で擦過して消去するという電子ペンの使用方法が得られる。更に、前記消去箇所に再筆記し、該筆跡を電子データとして取り込むという電子ペンの使用方法が得られる。
また、第二読取ユニットを備えた別体の摩擦体を用いても筆跡の消去を容易に行うことができる。その場合、筆跡の消去と共に筆跡データも消去できるため、後作業によるデータ処理を省くことが可能となる。
【0055】
また、前記電子ペン1は、収容するペンユニットAのインキが無くなった場合や、筆跡の色調を変更したい場合に、ペンユニットAを先に作製したペンユニットB(交換用ペンユニット)と交換することができる。尚、ペンユニットBによる筆跡も摩擦体91での擦過や、ドライヤーや照明等での加熱により容易に消去することが可能であると共に、消去後の専用用紙上に筆記した筆跡を、筆記前と同様に電子データ化することができるものであった。
【0056】
実施例2(図3参照)
第二形態の電子ペン1には、実施例1で用いた内部構造の電子ペンの後端に、筆跡を擦過するための摩擦体91が交換可能に設けられると共に、該摩擦体91近傍には専用用紙上のドットパターンを光学的に読み取る第二読取ユニットが摩擦時の接触部分(摩擦体の用紙上存在位置)を認識できる位置に設けられている。
尚、前記第二読取ユニットは、前記ドットパターンを読み取るためのデジタルカメラを有する撮像部4′と、摩擦体91押圧時(摩擦時)に作動する押圧センサ3′と、デジタルカメラで読み取られた摩擦部情報(ドットパターンの座標情報)を記憶する記憶部5、通信端末に座標情報(電子データ)を送信する通信部6、これらの機能を制御する制御部7、各要素に電源供給する電源部8から構成されている。尚、前記構成部のうち撮像部4′と押圧センサ3′以外は、電子ペン(筆跡形成用)で用いられるものと共通化されており、押圧センサ3、3′によって筆跡読取用(撮像部4)と摩擦部読取用(4′)が切り替えられるようなプログラムとなっている。
【0057】
前記電子ペン1の使用時(筆記時)には、チップ21下向きで専用用紙への筆記による筆圧で、ペンユニット2が後方に移動することにより圧力センサ3が筆記状態を検知する。その際、デジタルカメラ(撮像部4)が筆跡に対応する位置のドットパターン(座標情報)を検出し、ユーザーが書き込んだ文字をデータとして取得し記憶部5に電子データが記憶される。尚、専用用紙に筆記する前に、実施例1で示した専用ボックス(入力情報選択用)を用いることで、電子化された際に得られる筆跡の状態を選択することができる。
前記筆記時に書き間違えた場合には、摩擦体91を下向きにして消去したい箇所に接触させて擦過することで、インキによる筆跡が消去できる。その際、摩擦体91の押圧により圧力センサ3′が消去状態を検知する。その際、デジタルカメラ(撮像部4′)が擦過部(消去箇所)に対応する位置のドットパターンを検出し、ユーザーが消去した文字をデータとして取得し記憶部5に電子データが記憶される。
前記記憶部5に記憶された電子データ(形成された筆跡や消去部分)は、前記専用ボックス(Bluetoothによりデータを転送する旨の情報がドットパターンで印刷される)へのチップ21又は摩擦体91の接触、又は、クレイドルへの接続(USB経由での通信)により、通信部6を介して近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。そのため、専用用紙上に残った筆跡と、電子データとして表示される筆跡とが同一になるため、より有用性の高いものとなる。
【0058】
実施例3(図4参照)
第三形態の電子ペン1には、実施例1で用いた内部構造の電子ペンに対して、摩擦体91を備えたユニット(摩擦体ユニット)がペンユニット2の先端に着脱可能に取り付けられると共に、該着脱によって電子ペン1の読取ユニットが筆跡データ読取用、消去データ読取用に切り替えられる切替部71が設けられている。
前記切替部71は、摩擦体91(摩擦体ユニット)をペン先21に被覆状態で取り付けた際に、摩擦体ユニット後端に押圧されて読取ユニットのプログラムを消去用に切り替えると共に、摩擦体ユニットを取り外すことでプログラムを筆跡用に戻すことができるものである。
【0059】
前記電子ペン1の使用時(筆記時)には、チップ21下向きでの専用用紙への筆記による筆圧で、ペンユニット2が後方に移動することによって圧力センサ3が筆記状態を検知する。その際、デジタルカメラ(撮像部4)が筆跡に対応する位置のドットパターン(座標情報)を検出し、ユーザーが書き込んだ文字をデータとして取得し記憶部5に電子データが記憶される。尚、専用用紙に筆記する前に、実施例1で示した専用ボックス(入力情報選択用)を用いることで、電子化された際に得られる筆跡の状態を選択することができる。
前記筆記時に書き間違いを生じた場合には、摩擦体91を備えた摩擦体ユニットをペン先21被覆状態に取り付けた後、消去したい箇所に接触させて擦過することで、インキによる筆跡が消去できる。その際、摩擦体91(摩擦体ユニット)と切替部71の接触によりプログラムが消去データ読取用に切り替えられているため、デジタルカメラ(撮像部4)が擦過部(消去箇所)に対応する位置のドットパターンを検出し、ユーザーが消去した文字をデータとして取得し記憶部5に電子データが記憶される。
前記記憶部5に記憶された電子データ(形成された筆跡や消去部分)は、前記専用ボックス(Bluetoothによりデータを転送する旨の情報がドットパターンで印刷される)へのチップ21又は摩擦体91の接触、又は、クレイドルへの接続(USB経由での通信)により、通信部6を介して近くのパーソナルコンピュータや携帯電話等の通信端末に送信される。そのため、専用用紙上に残った筆跡と、電子データとして表示される筆跡とが同一になるため、より有用性の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に用いられるインキ中の可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図2】本発明の電子ペンの一例を示す縦断面説明図である。
【図3】本発明の電子ペンの一例を示す縦断面説明図である。
【図4】本発明の電子ペンの一例を示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0061】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 電子ペン
2 ペンユニット
21 ボールペンチップ
22 インキ収容筒
23 尾栓
24 熱変色性インキ
25 インキ逆流防止体
3、3′ 圧力センサ
4、4′ 撮像部
5 記憶部
6 通信部
7 制御部
71 切替部
8 電源部
9 外装
91 摩擦体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットパターンが印刷された専用用紙に筆記するためのインキを収容するペンユニット及び前記ドットパターンを光学的に読み取る読取ユニットを備えた電子ペンであって、前記ペンユニットに収容されるインキによる筆跡が、消しカスを生じ難い摩擦体と用紙との摩擦で発生する摩擦熱により消色することを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記インキが、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した、加熱により有色から無色に色変化するマイクロカプセル顔料を含むことを特徴とする請求項1記載の電子ペン。
【請求項3】
前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、常温域においては有色状態或いは無色状態を維持するものであり、更に、有色状態から温度が上昇する過程では、温度Tに達すると消色し始め、温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、前記温度Tより低い温度Tに達すると着色し始め、温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に有色状態となり、前記温度Tと温度Tの間の温度域で有色状態或いは無色状態が維持できるヒステリシス特性を示し、温度Tは−30〜10℃の範囲にあり、温度Tが30〜80℃の範囲にある請求項2記載の電子ペン。
【請求項4】
摩擦体を備えてなる請求項1乃至3のいずれかに記載の電子ペン。
【請求項5】
前記摩擦体が電子ペンに設けられると共に、摩擦体近傍にドットパターンを光学的に読み取る第二読取ユニットを備えることを特徴とする請求項4記載の電子ペン。
【請求項6】
前記摩擦体がペンユニット部に着脱可能に取付けられると共に、取付時に読取ユニットのプログラムが切り替えられることを特徴とする請求項4記載の電子ペン。
【請求項7】
前記ペンユニットが着脱可能である請求項1乃至3のいずれかに記載の電子ペン。
【請求項8】
前記請求項7記載の電子ペンに収容するための交換用ペンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52684(P2013−52684A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236705(P2012−236705)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【分割の表示】特願2008−159289(P2008−159289)の分割
【原出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】