説明

電子マネー交換機

【課題】第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機を提供する。
【解決手段】第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機3は、ICカードを挿入可能な2つのICカード挿入部19、23と、挿入部のそれぞれに設けられ、挿入部に挿入された記憶媒体に記憶されたデータの読取りおよび記憶媒体への書込みが可能なリーダ/ライタ29と、電子マネー残高の移行額を入力可能なテンキー27と、電子マネー残高の移行に係る電子マネー交換機3の処理を制御する制御部とを備え、挿入部に挿入された記憶媒体に記憶された電子マネー残高の間で、テンキー27で入力された額の移行を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、交通系の電子マネーや流通系の電子マネーなど様々な電子マネーが用いられている。これらの電子マネーは発行主体が異なるため、使用可能な交通手段や店舗は電子マネーの種類によって異なる。
そのため、第1の電子マネーに少額のチャージしか行っていないユーザが、第1の電子マネーが必要な交通機関や店舗で多額の支払いをする場合は、所持する現金等を用いて新たに第1の電子マネーのチャージを行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、金融機関のカードと電子財布として機能するICチップを用いて、金融機関のカードに対応する口座からICチップに記憶されている電子マネーのチャージを行うことができる電子マネー入金機が示されている。
【特許文献1】特開2005−128675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常使用する交通手段や店舗に応じて複数の電子マネーを保有し、これを使い分けるユーザは多い。
上記のユーザについても、多額のチャージを行っている別の第2の電子マネーを保有していれば、所持金あるいは金融機関の口座から第1の電子マネーにチャージするのではなく、第2の電子マネーから第1の電子マネーに残高を移行させることができれば、所持金や口座残高が少ないときでもこれを減らすことがないため便利である。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は第1の電子マネーと第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために第1の発明は、第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機であって、記憶媒体を挿入可能な2つの挿入部と、前記挿入部のそれぞれに設けられ、挿入部に挿入された記憶媒体に記憶されたデータの読取り及び記憶媒体へのデータの書込みが可能なリーダ/ライタと、電子マネー残高の移行額を入力可能な入力部と、電子マネー残高の移行に係る電子マネー交換機の処理を制御する制御部と、を備えることを特徴とする電子マネー交換機である。
【0007】
記憶媒体とは、例えば電子マネー残高を記憶させたICチップを備えたICカードなどである。
上記の構成により、第1の電子マネーの残高を記憶した記憶媒体と、第1の電子マネー交換機と異なる第2の電子マネーの残高を記憶した記憶媒体を用いて、第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーの間で電子マネー残高の移行を行うことができる電子マネー交換機を提供することができる。
【0008】
第1の発明の電子マネー交換機は、記憶媒体を収納可能な2つの収納部をさらに備え、前記リーダ/ライタ部は、さらに前記収納部のそれぞれに設けられ、収納部に収納された記憶媒体に記憶されたデータの読取り及び記憶媒体へのデータの書込みが可能であることが望ましい。
【0009】
上記の構成によれば、携帯端末のようなカード型以外の記憶媒体を用いて電子マネー残高の移行を行うことができる。
【0010】
前記収納部は、電子マネー残高の移行処理を行う間、記憶媒体が取出されることを防ぐため閉じた状態でロックされることが望ましい。
【0011】
上記の構成によれば、電子マネー交換機による電子マネー残高の移行処理を行う間、収納部に収納した記憶媒体が取り出されることにより読取りや書込みが失敗することがなくなる。
【0012】
また、第1の発明の電子マネー交換機は、電子マネー残高を表示可能な表示部を備えることが望ましい。
【0013】
上記の構成によれば、電子マネー残高を電子マネー交換機で表示させるので、ユーザが残高を確認することが可能になる。
【0014】
第1の発明の電子マネー交換機は、第1の記憶媒体に記憶された第1の電子マネー残高を読取る第1の残高読取手段と、第2の記憶媒体に記憶された第2の電子マネー残高を読取る第2の残高読取手段と、第1の電子マネー残高から第2の電子マネー残高へ電子マネー残高の移行を行う移行額を入力する移行額入力手段と、前記第1の残高読取手段で読取った第1の電子マネー残高より前記移行額入力手段で入力された移行額を減じた残高で、前記第1の記憶媒体に記憶された第1の電子マネー残高を更新する第1の残高更新手段と、前記第2の残高読取手段で読取った第2の電子マネー残高に前記移行額入力手段で入力された移行額を加えた残高で、前記第2の記憶媒体に記憶された第2の電子マネー残高を更新する第2の残高更新手段と、を有することが望ましい。
【0015】
上記の構成により、第1の発明の電子マネー交換機によって第1の電子マネーと第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うことが可能である。
【0016】
前記第1の残高読取手段と、前記第2の残高読取手段と、前記第1の残高更新手段と、前記第2の残高更新手段は、第1の記憶媒体あるいは第2の記憶媒体との間でデータ送受信を行う場合に、暗号技術を用いた相互認証と暗号通信と電子署名を行うセキュリティ通信機能を有することが望ましい。
【0017】
相互認証とは、例えば、暗号鍵によって記憶媒体とこれを読取る読取端末との真正性を相互に認証するものである。
また、データ通信の際には、暗号鍵を用いた通信データの暗号化や電子署名等を行うことで、情報の漏洩や成りすましなど防ぎ、通信のセキュリティを確保する。
用いる暗号鍵の性質に応じて、公開鍵方式や共通鍵方式などの暗号技術がある。これらは既知の技術であるので、ここでは詳細を省略する。
上記の構成により、第1の電子マネーと第2の電子マネーとの間で電子マネー残高を移行する処理の安全性が保たれる。
【0018】
第1の発明の電子マネー交換機は、前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理がいずれも成功した場合、前記第1の残高更新手段による処理と前記第2の残高更新手段による処理を確定させる処理確定手段と、前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理のいずれかが成功しなかった場合、前記第1の記憶媒体に記憶される第1の電子マネー残高と、前記第2の記憶媒体に記憶される第2の電子マネー残高を、電子マネー残高を移行する前の状態とするロールバック手段と、を有することが望ましい。
【0019】
上記の構成により、電子マネー残高処理の結果は、第1の記憶媒体や第2の記憶媒体に記憶される電子マネーの残高が全て更新されるか、全く更新されないかのいずれかとなり、電子マネー残高の移行が一つの処理として行われることになる。よって、システム障害などによる更新処理の失敗により、移行結果が第1の電子マネー残高には反映されているが、第2の電子マネー残高に反映されないといった矛盾がなくなる。このため、電子マネー残高同士の整合性を保つことができる。
【0020】
第1の発明の電子マネー交換機は、前記第1の記憶媒体の識別情報と第1の電子マネー残高とを紐付けて管理する第1の電子マネー管理サーバと、前記第2の記憶媒体の識別情報と第2の電子マネー残高とを紐付けて管理する第2の電子マネー管理サーバと通信するための通信部を備え、前記第1の電子マネー管理サーバに、前記第1の残高読取手段で読取った第1の電子マネー残高より前記移行額入力手段で入力された移行額を減じた残高で、前記第1の電子マネー管理サーバに記憶された前記第1の記憶媒体に紐づく第1の電子マネー残高を更新させる第3の残高更新手段と、前記第2の電子マネー管理サーバに、前記第2の残高読取手段で読取った第2の電子マネー残高に前記移行額入力手段で入力された移行額を加えた残高で、前記第2の電子マネー管理サーバに記憶された前記第2の記憶媒体に紐づく第2の電子マネー残高を更新させる第4の残高更新手段と、を有することが望ましい。
【0021】
上記の構成により、電子マネー管理サーバに電子マネー残高記録を保存しておくことができる。例えば、カード紛失等の問題が発生した際にはサーバ側の情報を正とすることなどができる。
【0022】
ここで、前記第1の残高読取手段と、前記第2の残高読取手段と、前記第1の残高更新手段と、前記第2の残高更新手段は、第1の記憶媒体あるいは第2の記憶媒体との間でデータ送受信を行う場合に、暗号技術を用いた相互認証と暗号通信と電子署名を行うセキュリティ通信機能を有し、前記第3の残高更新手段と、前記第4の残高更新手段は、前記第1の電子マネー管理サーバあるいは前記第2の電子マネー管理サーバとの間でデータ送受信を行う場合に、暗号技術を用いた相互認証と暗号通信と電子署名を行うセキュリティ通信機能を有することが望ましい。
【0023】
上記の構成により、電子マネー交換機とサーバとの間でデータ送受信する際の安全性が保たれる。
【0024】
また、第1の発明の電子マネー交換機は、前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理と、前記第3の残高更新手段による処理と、前記第4の残高更新手段による処理がいずれも成功した場合、前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理と、前記第3の残高更新手段による処理と、前記第4の残高更新手段による処理を確定させる処理確定手段と、前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理と、前記第3の残高更新手段による処理と、前記第4の残高更新手段による処理のいずれかが成功しなかった場合、前記第1の記憶媒体と第1の電子マネー管理サーバに記憶される第1の電子マネー残高と、前記第2の記憶媒体と前記第2の電子マネー管理サーバに記憶される第2の電子マネー残高を、電子マネー残高を移行する前の状態とするロールバック手段を有することが望ましい。
【0025】
上記の構成により、電子マネー残高移行処理の結果は、第1の記憶媒体、第2の記憶媒体、第1の電子マネー管理サーバ、第2の電子マネー管理サーバに記憶される電子マネー残高が全て更新されるか、全く更新されないかのいずれかとなり、電子マネー残高の移行および移行結果の電子マネー管理サーバへの送信が一つの処理として行われることになる。よって、システム障害等による更新の失敗により、第1の記憶媒体には更新結果が反映されているが、第1の電子マネー管理サーバには更新結果が反映されず、電子マネー残高が矛盾するといったことがなくなる。このため、電子マネー残高同士の整合性を保つことができる。
【0026】
第1の発明の電子マネー交換機は、第1の電子マネー残高から第2の電子マネー残高に電子マネー残高を移行する際の手数料を求める手数料算出手段を有することが望ましい。
【0027】
上記の構成により、電子マネー交換機が電子マネー残高の移行時の手数料を求めることができる。
【0028】
第1の発明の電子マネー交換機は、第1の電子マネーと第2の電子マネーの種類に応じて、第1の電子マネー残高から第2の電子マネー残高に電子マネー残高を移行する際の交換レートを求める交換レート算出手段を有することが望ましい。
【0029】
上記の構成によれば、第1の電子マネーと第2の電子マネーの価値が異なる場合でも、その違いに応じた交換レートを求めることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
まず、図1を参照しながら、本発明の電子マネー交換機3を用いた電子マネー交換システム1について説明する。
【0032】
本発明の電子マネー交換機3を用いた電子マネー交換システム1は、第1の電子マネーと、これと異なる第2の電子マネーとの間で、電子マネー残高の移行を行うためのものである。
電子マネー交換システム1は、電子マネー交換機3、第1の電子マネー管理サーバ5、第2の電子マネー管理サーバ7、第1の電子マネー残高記憶媒体9、第2の電子マネー残高記憶媒体11により構成される。
電子マネー交換機3と第1の電子マネー管理サーバ5、電子マネー交換機3と第2の電子マネー管理サーバ7は、それぞれネットワーク13を介して通信可能に接続する。
【0033】
電子マネー交換機3は、ICチップを備えたICカードや携帯端末等の記憶媒体に記憶された電子マネー残高の読取り、電子マネー残高の記憶媒体への書込み等の電子マネーの移行に関する後述の処理を行う。また、電子マネー残高記憶媒体や電子マネー管理サーバとの間で相互認証や暗号通信、電子署名を行う実行プログラムや鍵情報等を記憶する。
【0034】
第1の電子マネー管理サーバ5は、第1の電子マネーの残高を管理するサーバであり、ネットワーク13を介して電子マネー交換機3と通信可能に接続する。また、電子マネー交換機3との間で相互認証や暗号通信、電子署名を行う実行プログラムや鍵情報等を記憶する。さらに、記憶媒体の識別情報と電子マネーの残高情報を関連付けて記憶するデータベースを有する。
第2の電子マネー管理サーバ7も同様に、第2の電子マネーの残高を管理するサーバであり、ネットワーク13を介して電子マネー交換機3と通信可能に接続する。また、電子マネー交換機3との間で相互認証や暗号通信、電子署名を行う実行プログラムや鍵情報等を記憶する。さらに、記憶媒体の識別情報と電子マネーの残高情報を関連付けて記憶するデータベースを有する。
第1の電子マネー管理サーバ5や第2の電子マネー管理サーバ7に電子マネー残高の記録を保存しておくことで、トレーサビリティを確保することができる。
【0035】
第1の電子マネー残高記憶媒体9は、例えばICチップを備えたICカードや携帯端末であり、第1の電子マネー残高、自身を識別する識別情報、その他電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDや電子マネー交換機3との間で相互認証や暗号通信、電子署名を行う実行プログラムや鍵情報等を記憶する。
第2の電子マネー残高記憶媒体11も同様に、例えばICチップを備えたICカードや携帯端末であり、第2の電子マネー残高、自身を識別する識別情報、その他電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDや電子マネー交換機3との間で相互認証や暗号通信、電子署名を行う実行プログラムや鍵情報等を記憶する。
アプリケーションIDにより、電子マネーの種類を判別することが可能である。
【0036】
ここで、電子マネー残高の移行に関して、第1の電子マネーは移行元の電子マネー、第2の電子マネーは移行先の電子マネーであるとする。
【0037】
次に、図2、図3を参照しながら、本発明の電子マネー交換機3について説明する。
図2は、本発明の電子マネー交換機3の一例を示す外観図である。
【0038】
本発明の電子マネー交換機3は、外観上、主にディスプレイ15と、明細書発行部17と、第1のICカード挿入部19と、第1の携帯端末収納部21と、第2のICカード挿入部23と、第2の携帯端末収納部25と、テンキー27とを有する。
【0039】
ディスプレイ15は、例えば液晶ディスプレイであり、第1の電子マネーの残高を表示することができる。他にも、第2の電子マネー残高、電子マネー残高の移行額やユーザに通知するメッセージ等、後述する電子マネー交換機3の処理に併せて、様々な情報を表示させることが可能である。
また、ディスプレイ15はタッチパネル機能を備え、ユーザのタッチ操作により電子マネー交換機3に対する指示を行うことができる。
【0040】
明細書発行部17は、明細書発行口、明細書発行ボタン、プリンタを備える。電子マネー残高移行処理後、ユーザが明細書発行ボタンを押すと、残高移行に関する明細がプリンタにより印字され、明細書発行口より明細書として発行される。
【0041】
第1のICカード挿入部19は、カード挿入口を備え、第1の電子マネー残高が記憶された第1のICカード(第1の電子マネー残高記憶媒体9)を挿入し、第1の電子マネー残高を電子マネー交換機3に読み取らせるために使用される。
カード挿入口に挿入されたカードは、電子マネー交換機3の電子マネー残高移行処理が終了するまでは取り出すことができないようになっている。
【0042】
第1の携帯端末収納部21は、第1の電子マネー残高が記憶された第1の携帯端末(第1の電子マネー残高記憶媒体9)を収納し、第1の電子マネー残高を電子マネー交換機3に読み取らせるために使用される。
さらに、第1の携帯端末収納部21は、収納部を開閉するためのシャッタを備える。
ユーザは、第1の携帯端末収納部21に携帯端末を収納し、シャッタを閉じる。電子マネー交換機3による電子マネー残高移行処理が開始されると、シャッタにはロックがかかる。処理中は、シャッタが収納部を閉じた状態で固定され、携帯端末を取り出すことができないようになっている。残高移行処理の終了後、シャッタのロックが解除され、ユーザが携帯端末を取り出せるようになる。ここで、ロックを解除した後、自動でシャッタが開くようにしてもよい。
このようなシャッタの開閉構造、あるいはロック機構については既知のものを利用可能である。
【0043】
第2のICカード挿入部23は、第1のICカード挿入部19と同様、カード挿入口を備え、第2の電子マネー残高が記憶された第2のICカード(第2の電子マネー残高記憶媒体11)を挿入し、電子マネー残高移行後の第2の電子マネー残高を第2のICカードに書込むために使用される。
第1のICカード挿入部19と同じく、カード挿入口に挿入されたカードは、電子マネー交換機3の電子マネー残高移行処理が終了するまでは取り出すことができないようになっている。
【0044】
第2の携帯端末収納部25は、第2の電子マネー残高が記憶された第2の携帯端末(第2の電子マネー残高記憶媒体11)を収納し、電子マネー残高移行後の第2の電子マネー残高を第2の携帯端末に書込むために使用される。
第1の携帯端末収納部21と同じく、第2の携帯端末収納部25は収納部を開閉するためのシャッタを備える。
ユーザは、第2の携帯端末収納部25に携帯端末を収納し、シャッタを閉じる。電子マネー交換機3による電子マネー残高移行処理が開始されると、シャッタにはロックがかかる。処理中は、シャッタが収納部を閉じた状態で固定され、携帯端末を取り出すことができないようになっている。残高移行処理の終了後、シャッタのロックが解除され、ユーザが携帯端末を取り出せるようになる。ここで、ロックを解除した後、自動でシャッタが開くようにしてもよい。
このようなシャッタの開閉構造、あるいはロック機構については既知のものを利用可能である。
【0045】
また、第1のICカード挿入部19、第1の携帯端末収納部21、第2のICカード挿入部23、第2の携帯端末収納部25には、これらに挿入あるいは収納されたICカードや携帯端末等の記憶媒体に対して読取りおよび書込みが可能なリーダ/ライタ29が備えられる。
リーダ/ライタ29は、様々な種類の電子マネーの読取り、書込みに対応する、いわゆるマルチリーダ/ライタに相当する既知の機能を備える。
【0046】
本実施形態では、電子マネー残高の移行を行うユーザは、移行元の電子マネーである第1の電子マネーの残高を記憶する第1の電子マネー残高記憶媒体9として、第1のICカードを第1のICカード挿入部19に挿入するか、第1の携帯端末を第1の携帯端末収納部21に収納しシャッタを閉じる。
さらに、移行先の電子マネーである第2の電子マネーの残高を記憶する第2の電子マネー残高記憶媒体11として、第2のICカードを第2のICカード挿入部23に挿入するか、第2の携帯端末を第2の携帯端末収納部25に収納しシャッタを閉じる。
後述する、電子マネー交換機3による電子マネー残高移行の処理を終えたのち、ICカードがICカードの挿入口より送出される、もしくは携帯端末を収容した携帯端末収容部のシャッタのロックが解除されることにより、これらが取り出し可能になる。
【0047】
テンキー27は、ユーザが電子マネー残高移行額等の入力を行うための入力部である。
【0048】
他にも、本実施形態の電子マネー交換機3は、ユーザ操作を補助するための音声ガイダンスを行うためのスピーカーや、それまでの操作を中止するための取消ボタン、あるいは現金によるチャージを可能とする紙幣挿入部などを備えてもよい。
【0049】
図3は、本発明の電子マネー交換機3の一例を示すブロック図である。
本発明の電子マネー交換機3は、CPU31、メモリ33、リーダ/ライタ部35、表示部37、通信部39、記憶部41、入力部45、出力部47等を有し、これらがバス49により通信可能に接続される構成となっている。
【0050】
CPU31は、記憶部41やデータベース43等に保存されたデータやプログラム等をメモリ33に読み出して、各種の演算および制御を行う。これにより、後述の電子マネー交換機3が行う処理を実現する。
メモリ33はRAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)からなり、各種のデータやプログラム等を一時的に、あるいは恒久的に保存する。また、後述するセキュリティ通信を行うために必要な実行プログラムや鍵情報、さらに電子マネー交換機3の処理の履歴情報等を保存する。
CPU31とメモリ33は、電子マネー残高の移行に係る電子マネー交換機3の処理を制御する制御部である。
【0051】
リーダ/ライタ部35は、CPU31の制御により、ICチップを備えるICカードや携帯端末等の記憶媒体の情報の読取りを行ったり、情報を書込んだりする。
【0052】
表示部37は例えば液晶パネルなどのディスプレイ装置であり、電子マネー残高や電子マネー移行額等を表示する。また、タッチパネル機能によってユーザ操作を行うための画面を表示する。
【0053】
通信部39は通信制御装置、通信ポート等を有する。ネットワーク13に接続し、各種情報の送受信を行う。
本実施形態では、電子マネー交換機3をネットワーク13に接続する構成となっているが、これをスタンドアローンとする構成も可能であり、この場合通信部39は不要である。
【0054】
記憶部41はハードディスク等からなり、各種のデータやプログラムを保存する。また、記憶部41はデータベース43を保持している。
データベース43は、後述の電子マネー交換機3の行う処理に用いる各種のデータや電子マネー移行処理の履歴情報等を保存しておくためのものである。
本実施形態では電子マネー交換機3が記憶部41を内蔵し、記憶部41がデータベース43を保持する構成となっている。しかし、電子マネー交換機3と記憶部41とデータベース43の構成は様々な形態をとり得る。例えば、記憶部41が電子マネー交換機3とネットワークを介して接続する構成や、データベース43が記憶部41と独立し、電子マネー交換機3と接続する構成などが可能である。
【0055】
入力部45は例えばテンキーやタッチパネルなどであり、電子マネー交換機3へ入力を行うための装置である。
出力部47は例えばプリンタなど、電子マネー交換機3からの出力を行うための装置である。
バス49は各装置間の制御信号やデータ信号等の授受を媒介する経路である。
【0056】
続いて、図4、図5を参照しながら、本発明の電子マネー交換機3の処理の一例について説明する。
図4は、本発明の電子マネー交換機3の実施形態に係る処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【0057】
なお、本実施形態において、ユーザは、電子マネー残高を記憶する記憶媒体として、ICチップを有するICカードを使用する。
【0058】
まず、ステップS401において、電子マネー残高を移行させたいユーザが、ユーザ操作により電子マネー残高の移行を電子マネー交換機3に対して指示した後、残高移行元の電子マネー(第1の電子マネー)の残高が記憶された第1のICカード(第1の電子マネー残高記憶媒体9)を電子マネー交換機3の第1のICカード挿入部19のカード挿入口に挿入する。
なお、電子マネー残高の移行の指示は、タッチパネル操作により残高移行を指示するための指示画面を電子マネー交換機3のディスプレイ15に表示させ、ユーザのタッチ操作により残高移行の指示を電子マネー交換機3に対して行うようにしておく。
また、残高移行の指示が行われた後、残高移行元の電子マネーの残高が記憶されたICカードや携帯端末をセットさせるためのメッセージをディスプレイ15に表示させる。例えば「残高移行元の電子マネーが記憶されたICカードまたは携帯端末をセットしてください」などである。
【0059】
第1のICカード挿入部19のカード挿入口に第1のICカードが挿入されると、ステップS402において、電子マネー交換機3のCPU31は、リーダ/ライタ部35を制御して、挿入された第1のICカードのICチップに記憶された第1の電子マネー(移行元の電子マネー)の残高とカードID(記憶媒体の識別情報)をメモリ33に読出す。
【0060】
続いて、CPU31は、ステップS403において、読み出した残高移行元の電子マネーの残高をディスプレイ15に表示する。
加えて、ディスプレイ15には、電子マネー残高を移行させる可能な移行先の電子マネーの種類を、タッチ選択可能にディスプレイ15に表示させる。
ここで、移行先の電子マネーをユーザに選択させるためのメッセージを電子マネーの種類ともに表示してよい。例えば、「移行先の電子マネーの種類を選択してください」などである。
【0061】
また、ステップS402においてCPU31が残高移行元の電子マネー残高を読出す際に、さらに記憶媒体に記憶された電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDを読み取って電子マネーの種類を判別し、ステップS403においてディスプレイ15に移行元の電子マネーの残高とともに電子マネーの種類を表示させ、ユーザが確認できるようにしてもよい。
【0062】
次に、ステップS404において、ユーザはディスプレイ15に表示された電子マネーの種類のうち、移行先の電子マネーをタッチ操作により選択する。ここでは、ユーザは移行先の電子マネーとして第2の電子マネーを選択する。
【0063】
ステップS404で移行先の電子マネーが選択された後、ディスプレイ15にはタッチ選択された電子マネーの残高を記憶するICカード(もしくは携帯端末)をセットするように通知するメッセージを表示するようにしてよい。例えば、ディスプレイ15に「選択した電子マネーのICカード(携帯端末)をセットしてください」などである。
【0064】
ユーザは、ステップS405で、第2の電子マネーの残高が記憶された第2のICカード(第2の電子マネー残高記憶媒体11)を電子マネー交換機3の第2のICカード挿入部23のカード挿入口に挿入する。
【0065】
すると、CPU31は、ステップS406において、リーダ/ライタ部35を制御して、挿入されたICカードのICチップに記憶された残高移行元の電子マネーの種類をアプリケーションIDにより確認した後、電子マネーの残高とカードID(記憶媒体の識別情報)をメモリ33に読み出す。
また、読み出した残高移行元の電子マネーの残高をディスプレイ15に表示させる。
【0066】
なお、ステップS403で選択された電子マネーの種類と、ステップS406で挿入されたICカードのアプリケーションIDが一致しない場合は、選択された電子マネーと挿入されたICカードが対応しないことをディスプレイ15にて通知し、挿入された第2のICカードを第2のICカード挿入部の挿入口23より送出し、ステップS404の状態に処理を戻す。
【0067】
続いて、CPU31は、ステップS407において、移行の際の手数料を求める。
手数料を定める方法については、様々なものが考えられる。
【0068】
例えば、残高移行元の電子マネーの種類と、残高移行先の電子マネーの種類に応じた手数料を求める場合は、移行元と移行先の電子マネーの種類の組合せに応じた手数料の一覧をデータベース43に保持しておき、CPU31が、移行元の電子マネーの種類と移行先の電子マネーの種類の組合せから、これに対応する手数料を取得するなどが可能である。
このとき、ステップS402でCPU31が第1の電子マネー残高を読取る際は、同時に第1の電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDも読取り、メモリ33に保存しておく。さらに、ステップS406でCPU31が第2の電子マネー残高を読取る際も、同時に第2の電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDも読取り、メモリ33に保存しておく。これらアプリケーションIDの組合せから、手数料を取得する。
【0069】
また、残高移行元の電子マネーに応じて手数料を求める場合は、移行元の電子マネーに応じた手数料の一覧をデータベース43に記憶させておき、CPU31が、移行元の電子マネーの種類から、これに対応する手数料を取得するなどが可能である。
このとき、ステップS402でCPU31が第1の電子マネー残高を読取る際は、同時に第1の電子マネーのアプリケーションIDも読取り、メモリ33に保存しておく。読取ったアプリケーションIDから、手数料を取得する。
【0070】
残高移行先の電子マネーに応じて手数料を求める場合も同様に、移行先の電子マネーに応じた手数料の一覧をデータベース43に記憶させておき、CPU31が、移行先の電子マネーの種類から、これに対応する手数料を取得するなどが可能である。
このとき、ステップS406でCPU31が第2の電子マネー残高を読取る際も、同時に第2の電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDも読取り、メモリ33に保存しておく。読取ったアプリケーションIDから、手数料を取得する。
また、電子マネーの種類に関わらず、一定の手数料とすることもできる。
他にも手数料を求める方法は様々なものが考えられ、例えば移行額の5%など、残高移行額に応じた手数料を計算などによって求めることも考えられる。
【0071】
さて、CPU31は、ステップS408において、ステップS402でICカードより読出し、メモリ33に保存した第1の電子マネー残高よりステップS407で求めた手数料を減じた額を、残高移行可能額として、手数料とともにディスプレイ15に表示する。
また、ユーザに電子マネーを移行する移行額を入力するようディスプレイ15にて通知を行う。例えば、ディスプレイ15に「電子マネーを移行する額を入力してください」などと表示する。
【0072】
ディスプレイ15の通知に応じて、ユーザは、ステップS409において、電子マネー残高移行額をテンキー27により入力し、入力額を確定する。
なお、ステップS409の操作は、ディスプレイ15にテンキーを表示させるなどして、タッチパネル操作によって行うようにしてもよい。
入力された移行額は、メモリ33に保存する。
この後、処理はステップS410へ移る(I501)。
ステップS410以降の処理を、図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の電子マネー交換機3の実施形態に係る処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【0073】
ステップS410において、CPU31は、第1のICカードに記憶された第1の電子マネー残高を、移行後の第1の電子マネー残高で更新するように、リーダ/ライタ部35に要求を行う。
【0074】
具体的には、CPU31は、メモリ33に保存した移行額を含む残高更新要求をリーダ/ライタ部35に送信する。リーダ/ライタ部35は、受取った残高更新要求に応じて、第1のICカード挿入部19のカード挿入口に挿入されている第1のICカードと通信し、ICカードのICチップに記憶されている第1の電子マネーの残高を、移行額分減額して更新する。
その後、リーダ/ライタ部35は、更新処理が成功したか否かの結果をCPU31に通知する。
【0075】
ただし、この時点では上記の更新は確定しない。電子マネー残高の減額は後述するステップS418においてはじめて確定する。また、減額前の第1の電子マネー残高は第1のICカードのメモリ(不図示)に保存しておく。
【0076】
ステップS411において、CPU31は、リーダ/ライタ部35より更新結果を受取り、更新成功であればステップS412に処理を進める。
一方、更新失敗の場合は、後述するステップS421に処理を進める。
【0077】
ステップS412において、CPU31は、第1の電子マネー管理サーバ5に、第1の電子マネー管理サーバ5に第1のICカードの識別情報と紐付けて記憶された第1の電子マネー残高を、移行後の第1の電子マネー残高で更新するよう要求を行う。
具体的には、CPU31は、メモリ33に保存した移行額と、第1のICカードの識別情報を含む残高更新要求を第1の電子マネー管理サーバ5に送信する。
【0078】
第1の電子マネー管理サーバ5のCPU(不図示)は、受取った残高更新要求に応じて、第1の電子マネー管理サーバ5のデータベース(不図示)から第1のICカード識別情報をキーとして第1の電子マネー残高を検索し、第1の電子マネー残高を移行額分減額して更新する。その後、更新処理が成功したか否かの結果を電子マネー交換機3に送信する。
【0079】
ただし、この時点では上記の更新は確定しない。電子マネー残高の更新は後述するステップS418においてはじめて確定する。また、減額前の第1の電子マネー残高は第1の電子マネー管理サーバ5のメモリ(不図示)に保存しておく。
【0080】
ステップS413において、CPU31は、第1の電子マネー管理サーバ5より更新結果を受取り、更新成功であればステップS414に処理を進める。
一方、更新失敗の場合は、後述するステップS421に処理を進める。
【0081】
つづいて、ステップS414において、CPU31は、第2のICカードに記憶された第2の電子マネー残高を、移行後の第2の電子マネー残高で更新するように、リーダ/ライタ部35に要求を行う。
具体的には、CPU31は、メモリ33に保存した移行額を含む残高更新要求をリーダ/ライタ部35に送信する。リーダ/ライタ部35は、受取った残高更新要求に応じて、第2のICカード挿入部23のカード挿入口に挿入されている第2のICカードと通信し、ICカードのICチップに記憶されている第2の電子マネーの残高を、移行額分増額して更新する。
リーダ/ライタ部35は、更新処理が成功したか否かをCPU31に通知する。
ただし、この時点では上記の更新は確定しない。電子マネー残高の増額は後述するステップS418においてはじめて確定する。また、増額前の第2の電子マネー残高は第2のICカードのメモリ(不図示)に保存しておく。
【0082】
ステップS415において、CPU31は、リーダ/ライタ部35より更新結果を受取り、更新成功であればステップS416に処理を進める。
一方、更新失敗の場合は、後述するステップS421に処理を進める。
【0083】
ステップS416において、CPU31は、第2の電子マネー管理サーバ7に第2のICカードの識別情報と紐付けて記憶された第2の電子マネー残高を、移行後の第2の電子マネー残高で更新するように、第2の電子マネー管理サーバ7に要求を行う。
具体的には、CPU31は、メモリ33に保存した移行額と、第2のICカードの識別情報を含む残高更新要求を第2の電子マネー管理サーバ7に送信する。
第2の電子マネー管理サーバ7のCPU(不図示)は、受取った残高更新要求に応じて、第2の電子マネー管理サーバ7のデータベース(不図示)から第2のICカード識別情報をキーとして第2の電子マネー残高を検索し、第2の電子マネー残高を移行額分増額して更新する。その後、第2の電子マネー管理サーバ7のCPUは、更新処理が成功したか否かをCPU31に通知する。
ただし、この時点では上記の更新は確定しない。電子マネー残高の更新は後述するステップS418においてはじめて確定する。また、増額前の第2の電子マネー残高を第2の電子マネー管理サーバ7のメモリ(不図示)に保存しておく。
【0084】
ステップS417において、CPU31は、第2の電子マネー管理サーバ7より更新結果を受取り、更新成功であればステップS418に処理を進める。
一方、更新失敗の場合は、後述するステップS421に処理を進める。
【0085】
電子マネー管理サーバは、電子マネーのトレーサビリティの確保に有効である。例えば、カード紛失等の問題が発生した際、サーバ側の情報を正とすることができる。
しかし、電子マネー残高を記憶媒体のみに持たせておくような場合も考えられる。この場合、電子マネー残高の情報を電子マネー管理サーバに送信することなく、ステップS412〜S413、ステップS416〜S417の処理は省略する。
【0086】
また、上記ステップS410〜ステップS417までの、電子マネー交換機3と第1および第2のICカード、電子マネー交換機3と第1および第2の電子マネー管理サーバ5、7との通信は、それぞれセキュリティ機能を有する通信手段により通信を行う。
【0087】
例えば、暗号鍵によって記憶媒体とこれを読取る読取端末との真正性を相互に認証する相互認証や、暗号鍵を用いた通信データの暗号化や電子署名等をデータ通信の際に行うことで、情報の漏洩や成りすましなど防ぎ、通信のセキュリティを確保する。
この際、用いる暗号鍵の性質に応じて、公開鍵方式や共通鍵方式などの暗号技術があるが、これらは既知の技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0088】
続いて、CPU31は、ステップS418において、リーダ/ライタ部35、第1の電子マネー管理サーバ5、第2の電子マネー管理サーバ7に第1、第2の電子マネー残高の更新結果を確定させる(コミット)。
【0089】
具体的には、電子マネー交換機3のCPU31は、リーダ/ライタ部35に確定要求を送信する。確定要求を受取ったリーダ/ライタ部35は、受取った確定要求に従って、第1のICカード、第2のICカードに書込んだ内容(残高更新後の新しい電子マネー残高)を確定させる。その後、更新の確定をCPU31に送信する。
また、第1の電子マネー管理サーバ5にも、第1のICカードの識別情報を含む確定要求を送信し、確定要求を受取った第1の電子マネー管理サーバ5は、受取った確定要求に従って、第1のICカードに紐づく電子マネー残高の更新処理を確定させる。その後、更新の確定をCPU31に送信する。
同様に、第2の電子マネー管理サーバ7にも、第2のICカードの識別情報を含む確定要求を送信し、確定要求を受取った第2の電子マネー管理サーバ7は、受取った確定要求に従って、第2のICカードに紐づく電子マネー残高の更新処理を確定させる。その後、更新の確定をCPU31に送信する。
【0090】
更新の確定を受取ったCPU31は、ステップS419において、ディスプレイ15に残高移行成功を表示する。また、第1のICカード挿入部19のカード挿入口に挿入された第1のICカードと、第2のICカード挿入部23のカード挿入口に挿入された第2のICカードを送出する。ステップS419では、ディスプレイ15に例えば、「電子マネーの移行に成功しました。カード(携帯端末)をお取りください」のようなメッセージを表示させ、残高移行が成功したこととICカードが取出し可能であることを通知する。
【0091】
続いて、CPU31は、ディスプレイ15に、明細書発行ボタンを押すことにより明細書が発行可能であることを示すメッセージを表示させる。例えば、「明細書発行ボタンを押すことにより、取引の明細書が発行されます。」などである。
【0092】
ステップS420において、ユーザ操作により、明細書発行ボタンが押され、明細書を発行することが選択された場合は、電子マネー交換機3のCPU31は、明細書発行部17に備えられたプリンタ(不図示)に、電子マネー残高の移行に係る明細書をプリントさせ、明細書発行部17の明細書発行口より明細書を発行する。
【0093】
最後にCPU31は、以上に述べた残高移行処理の履歴情報をデータベース43に保存して、メモリ33のデータを削除する。
【0094】
一方、ステップS411、ステップS413、ステップS415、ステップS417のいずれかにおいて、処理結果の判定がNOであった場合、すなわちいずれかの処理が失敗した場合は、電子マネー交換機3の処理はステップS421に移り、CPU31が、リーダ/ライタ部35、第1の電子マネー管理サーバ5、第2の電子マネー管理サーバ7に第1、第2の電子マネー残高の更新を破棄し、第1の電子マネー残高、第2の電子マネー残高を残高移行前の状態に戻す(ロールバック)。
【0095】
具体的には、リーダ/ライタ部35(第1のICカード、第2のICカード)、第1の電子マネー管理サーバ5、第2の電子マネー管理サーバ7のうち、残高更新要求したものについて、更新を破棄し、ICカードや電子マネー管理サーバのメモリに保存した移行前の電子マネー残高で電子マネー残高の書き込みを行わせるための更新破棄要求を送信する。
第1の電子マネー管理サーバ5、第2の電子マネー管理サーバ7に送信する更新破棄要求には、第1のICカードの識別情報あるいは第2のICカードの識別情報を含める。
【0096】
リーダ/ライタ部35、第1の電子マネー管理サーバ5、第2の電子マネー管理サーバ7で、更新破棄要求を受取ったものは、受取った更新破棄要求に従って該当する更新処理を破棄し、ICカードや電子マネー管理サーバのメモリに保存した電子マネー移行以前の状態の電子マネー残高で電子マネー残高の書込みをしなおす。その後、更新の破棄をCPU31に送信する。
【0097】
つづいて、ステップS422において、更新破棄を確認後、CPU31は、ディスプレイ15に残高移行に失敗した旨を表示する。例えば、「電子マネーの移行に失敗しました。」などと表示する。また、第1のICカード挿入部19のカード挿入口に挿入された第1のICカードと、第2のICカード挿入部23のカード挿入口に挿入された第2のICカードを送出する。
【0098】
最後にCPU31は、以上に述べた残高移行処理の履歴情報をデータベース43に保存して、メモリ33のデータを削除する。
【0099】
すなわち、電子マネー移行後の、第1のICカードの電子マネー残高更新(ステップS410)、第1の電子マネー管理サーバ5の電子マネー残高更新(ステップS412)、第2のICカードの電子マネー残高更新(ステップS414)、第2の電子マネー管理サーバ7の電子マネー残高更新(ステップS416)は、一つ処理として行われる。
つまり、これら一連の処理の結果は、全ての処理が実行された状態か、いずれの処理も行われなかった状態すなわち電子マネー移行前の状態となる。
【0100】
これはいわゆるトランザクション処理とよばれるものであり、処理結果は移行処理が全て完了するか、まったく行われないかのいずれかになる。処理がシステム障害等により失敗することによって、ICカードやサーバに記録した電子マネー残高の間で矛盾が生じることがなくなる。このような場合は、全く処理が行われなかった状態にもどるためである。
【0101】
また、ステップS410、S412、S414、S416の処理は、本実施形態のように直列処理として行ってもよいが、これを並列処理とすることも可能である。ただし、処理の確定要求は、ステップS418で一斉に送信される。
【0102】
また、ICカードのかわりに携帯端末を用いる場合でも、処理手順は基本的に同一であり、上記の処理で、記憶媒体についてICカードを携帯端末に適宜読み替えてよい。ただし、第1の携帯端末収納部21あるいは第2の携帯端末収納部25に携帯端末を収納し、電子マネー残高移行処理を開始すると、収納部シャッタがロックされるので、移行処理後、ロック解除する処理が新たに加わることになる。
【0103】
また、一つの記憶媒体に複数の種類の電子マネーを保有する場合も考えられる。移行元の電子マネー残高記憶媒体に複数の電子マネーを保有している場合では、ステップS402では異なる複数の電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDを読取り、これにより一つの記憶媒体で複数の電子マネーを保有していると判定される。この場合、読取ったアプリケーションIDに対応する電子マネーのうち、どの電子マネーを移行元の電子マネーとするかを選択させる画面に推移させる。
【0104】
次に、移行元の電子マネーをユーザに選択させたのち、選択された電子マネーの残高を読出した後、ステップ403の処理にもどり、移行先の電子マネーを選択させる。
ただし、移行先の電子マネーで、同じ記憶媒体に記憶された別の電子マネーが選択された場合は、同じ記憶媒体内で電子マネーを移行させるか、別の記憶媒体を挿入するかを選択させる画面に推移させる。
同じ記憶媒体内で移行させることを選択した場合は、ステップS405を省略し、ステップS406以降の処理に移る。
【0105】
また、第1の電子マネー残高記憶媒体9をICカード、第2の電子マネー残高記憶媒体11を携帯端末とするような構成、あるいは逆の構成も可能である。
【0106】
また、第1の電子マネーと第2の電子マネーで価値が異なることにより、等価でない交換を行う必要がある場合も考えられる。この場合も、手数料を求める場合と同様に処理を進める。すなわち、電子マネーの組合せに応じた交換レートをデータベース43に記憶しておき、ステップS406の後、第1の電子マネーの種類と第2の電子マネーの種類の組合せから交換レートを取得する。このとき、ステップS402では、CPU31は第1の電子マネーの残高と同時に第1の電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDも取得しておき、これをメモリ33に保存しておく。加えて、ステップS406でも、CPU31は第2の電子マネー残高と同時に第2の電子マネーのアプリケーションのアプリケーションIDも取得しておき、これをメモリ33に保存しておく。これらのアプリケーションIDの組合せから、交換レートを取得する。
【0107】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機を提供することができる。
【0108】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る電子マネー交換機等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の電子マネー交換機3を用いた電子マネー交換システム1の一例を示すシステム構成図
【図2】本発明の電子マネー交換機3の外観の一例を示す斜視図
【図3】本発明の電子マネー交換機3の一例を示すブロック図
【図4】本発明の電子マネー交換機3の処理の一例を示す第1のフローチャート
【図5】本発明の電子マネー交換機3の処理の一例を示す第2のフローチャート
【符号の説明】
【0110】
1………電子マネー交換システム
3………電子マネー交換機
5………第1の電子マネー管理サーバ
7………第2の電子マネー管理サーバ
9………第1の電子マネー残高記憶媒体
11………第2の電子マネー残高記憶媒体
13………ネットワーク
15………ディスプレイ
17………明細書発行部
19………第1のICカード挿入部
21………第1の携帯端末収納部
23………第2のICカード挿入部
25………第2の携帯端末収納部
27………テンキー
29………リーダ/ライタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子マネーと、第1の電子マネーと異なる第2の電子マネーとの間で電子マネー残高の移行を行うための電子マネー交換機であって、
記憶媒体を挿入可能な2つの挿入部と、
前記挿入部のそれぞれに設けられ、挿入部に挿入された記憶媒体に記憶されたデータの読取り及び記憶媒体へのデータの書込みが可能なリーダ/ライタと、
電子マネー残高の移行額を入力可能な入力部と、
電子マネー残高の移行に係る電子マネー交換機の処理を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電子マネー交換機。
【請求項2】
記憶媒体を収納可能な2つの収納部をさらに備え、
前記リーダ/ライタ部は、さらに前記収納部のそれぞれに設けられ、収納部に収納された記憶媒体に記憶されたデータの読取り及び記憶媒体へのデータの書込みが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の電子マネー交換機。
【請求項3】
前記収納部は、電子マネー残高の移行処理を行う間、記憶媒体が取出されることを防ぐため閉じた状態でロックされることを特徴とする請求項2に記載の電子マネー交換機。
【請求項4】
電子マネー残高を表示可能な表示部をさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子マネー交換機。
【請求項5】
前記電子マネー交換機は、
第1の記憶媒体に記憶された第1の電子マネー残高を読取る第1の残高読取手段と、
第2の記憶媒体に記憶された第2の電子マネー残高を読取る第2の残高読取手段と、
第1の電子マネー残高から第2の電子マネー残高へ電子マネー残高の移行を行う移行額を入力する移行額入力手段と、
前記第1の残高読取手段で読取った第1の電子マネー残高より前記移行額入力手段で入力された移行額を減じた残高で、前記第1の記憶媒体に記憶された第1の電子マネー残高を更新する第1の残高更新手段と、
前記第2の残高読取手段で読取った第2の電子マネー残高に前記移行額入力手段で入力された移行額を加えた残高で、前記第2の記憶媒体に記憶された第2の電子マネー残高を更新する第2の残高更新手段と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電子マネー交換機。
【請求項6】
前記第1の残高読取手段と、前記第2の残高読取手段と、前記第1の残高更新手段と、前記第2の残高更新手段は、第1の記憶媒体あるいは第2の記憶媒体との間でデータ送受信を行う場合に、暗号技術を用いた相互認証と暗号通信と電子署名を行うセキュリティ通信機能を有することを特徴とする請求項5に記載の電子マネー交換機。
【請求項7】
前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理がいずれも成功した場合、前記第1の残高更新手段による処理と前記第2の残高更新手段による処理を確定させる処理確定手段と、
前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理のいずれかが成功しなかった場合、前記第1の記憶媒体に記憶される第1の電子マネー残高と、前記第2の記憶媒体に記憶される第2の電子マネー残高を、電子マネー残高を移行する前の状態とするロールバック手段と、
を有することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の電子マネー交換機。
【請求項8】
前記電子マネー交換機は、
前記第1の記憶媒体の識別情報と第1の電子マネー残高とを紐付けて管理する第1の電子マネー管理サーバと、前記第2の記憶媒体の識別情報と第2の電子マネー残高とを紐付けて管理する第2の電子マネー管理サーバと通信するための通信部を備え、
前記第1の電子マネー管理サーバに、前記第1の残高読取手段で読取った第1の電子マネー残高より前記移行額入力手段で入力された移行額を減じた残高で、前記第1の電子マネー管理サーバに記憶された前記第1の記憶媒体に紐づく第1の電子マネー残高を更新させる第3の残高更新手段と、
前記第2の電子マネー管理サーバに、前記第2の残高読取手段で読取った第2の電子マネー残高に前記移行額入力手段で入力された移行額を加えた残高で、前記第2の電子マネー管理サーバに記憶された前記第2の記憶媒体に紐づく第2の電子マネー残高を更新させる第4の残高更新手段と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の電子マネー交換機。
【請求項9】
前記第1の残高読取手段と、前記第2の残高読取手段と、前記第1の残高更新手段と、前記第2の残高更新手段は、第1の記憶媒体あるいは第2の記憶媒体との間でデータ送受信を行う場合に、暗号技術を用いた相互認証と暗号通信と電子署名を行うセキュリティ通信機能を有し、
前記第3の残高更新手段と、前記第4の残高更新手段は、前記第1の電子マネー管理サーバあるいは前記第2の電子マネー管理サーバとの間でデータ送受信を行う場合に、暗号技術を用いた相互認証と暗号通信と電子署名を行うセキュリティ通信機能を有することを特徴とする請求項8に記載の電子マネー交換機。
【請求項10】
前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理と、前記第3の残高更新手段による処理と、前記第4の残高更新手段による処理がいずれも成功した場合、前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理と、前記第3の残高更新手段による処理と、前記第4の残高更新手段による処理を確定させる処理確定手段と、
前記第1の残高更新手段による処理と、前記第2の残高更新手段による処理と、前記第3の残高更新手段による処理と、前記第4の残高更新手段による処理のいずれかが成功しなかった場合、前記第1の記憶媒体と第1の電子マネー管理サーバに記憶される第1の電子マネー残高と、前記第2の記憶媒体と前記第2の電子マネー管理サーバに記憶される第2の電子マネー残高を、電子マネー残高を移行する前の状態とするロールバック手段を有することを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の電子マネー交換機。
【請求項11】
第1の電子マネー残高から第2の電子マネー残高に電子マネー残高を移行する際の手数料を求める手数料算出手段を有することを特徴とする、請求項5から請求項10のいずれかに記載の電子マネー交換機。
【請求項12】
第1の電子マネーと第2の電子マネーの種類に応じて、第1の電子マネー残高から第2の電子マネー残高に電子マネー残高を移行する際の交換レートを求める交換レート算出手段を有することを特徴とする、請求項5から請求項11のいずれかに記載の電子マネー交換機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−140332(P2010−140332A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317086(P2008−317086)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】