説明

電子レンジ加熱用加工食品の製造方法

【課題】冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料で製造され、電子レンジ加熱の際に馬鈴薯や豆類が破裂しにくい加工食品の提供。
【解決手段】50mm角以下の大きさの冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を、カルシウム濃度19〜162mM、80℃以下のカルシウム水溶液中に浸漬し、該冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類、あるいは冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を80℃を超える温度で加熱処理することを特徴とする、電子レンジ加熱用加工食品の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料で製造され、電子レンジでの加熱時に馬鈴薯や豆類が破裂しにくい電子レンジ加熱用加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品やチルド食品などの加工食品は、常温・チルド・冷凍などで一定期間の保存を可能とするため、通常、加熱処理することにより調理・殺菌(減菌)して製造される。このような加工食品の原料として、冷凍した野菜類、豆類等を用いることも一般に行われている。
本発明者らは、上記加工食品の製造技術について研究を重ねる中で、次のような特異な現象、問題点があることの知見を得るに至った。即ち、冷凍原料のうち、特に冷凍馬鈴薯や冷凍豆類を含む原料で製造した加工食品であって、さらに調理・殺菌(減菌)等のために行う加熱処理の温度が一定温度より高くなった場合に、冷凍されていない馬鈴薯や豆類を含む原料で製造した加工食品や、冷凍された馬鈴薯や豆類を含み前記した一定の温度より低い温度で加熱処理して製造した加工食品に比べて、明らかに電子レンジで加熱する際に馬鈴薯や豆類が破裂しやすいという問題点があった。
このような問題に対して、電子レンジ加熱時の製品形態、例えば、食材が破裂しても電子レンジ内で飛び散らないような製品形態とすること、高温での加熱処理を用いずに殺菌すること、無菌条件下での製造などが考えられるが、これらの対処策は技術面およびコスト面において対応が困難であった。
一方、生の食用きのこを含有する加工食品を電子レンジで加熱する際にもきのこが破裂しやすいという問題があったが、これに対しては、電子レンジでの加熱時に破裂しにくいきのこを含有する電子レンジ加熱用加工食品およびその製造方法が開示されている(特許文献1)。その製造方法では、きのこを凍結処理し、所定の吸水率を付与することによって、電子レンジ加熱時に破裂しにくくするというものである。きのこの場合は、電子レンジ加熱時に凍結障害で細胞組織にできた亀裂より、内部の蒸気を逃がすことで破裂しにくくすることができると考えられる。
しかしながら、馬鈴薯や豆類は、冷凍処理されたことのない馬鈴薯や豆類では破裂しにくく、冷凍(凍結)された馬鈴薯や豆類は破裂しやすいという、きのこの場合と異なる現象を呈するため、きのこと同様の対処策を用いることはできない。凍結処理した馬鈴薯や豆類が電子レンジ加熱時に破裂しやすくなるのは、凍結障害で細胞内の澱粉質が細胞間に流出し、この状態でレトルト等の加熱処理を施すと糊化した澱粉質が細胞間に満ちて組織が密になるため、電子レンジ加熱時に蒸気が逃がせず充満して破裂に繋がると考えられ、きのこの場合とは全く異なる現象であると考えられる。
このように、冷凍馬鈴薯や冷凍豆類を含む原料を使用して製造され、電子レンジで加熱する際に馬鈴薯や豆類が破裂しにくい加工食品が望まれるが、そのような加工食品を製造する技術はこれまで開発されていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2006−223225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料で製造され、電子レンジ加熱の際に馬鈴薯や豆類が破裂しにくい加工食品を提供することを目的とする。
本発明は、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を使用する加工食品を電子レンジで加熱する際に発生する、馬鈴薯や豆類の破裂を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、冷凍馬鈴薯や冷凍豆類を特定の方法でカルシウム処理して加工食品を製造すると、その加工食品は電子レンジで加熱した際に馬鈴薯や豆類が破裂しにくくなることを見出し、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を使用し且つ電子レンジ加熱の際に馬鈴薯や豆類が破裂しにくい、電子レンジ加熱用加工食品およびその製造方法を発明するに至った。
そのような電子レンジ加熱用加工食品を製造する方法は、具体的には以下のとおりである。
【0006】
本発明の電子レンジ加熱用加工食品の製造方法は、50mm角以下の大きさの冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を、カルシウム濃度19〜162mM、80℃以下のカルシウム水溶液中に浸漬し、該冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類、あるいは冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を80℃を超える温度で加熱処理することを特徴とする。
また、カルシウム水溶液中に浸漬する前に、馬鈴薯および/または冷凍豆類を全部または部分的に解凍することができる。
好ましくは、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類が、中心品温が70〜95℃で1分間以上保持される条件にてブランチングされた後、冷凍されたものである。
より好ましくは、ブランチングが、中心品温が70〜95℃で2〜30分間以上保持される条件にて行われたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料で製造され、電子レンジ加熱時に馬鈴薯や豆類が破裂しにくい加工食品を提供することができる。
また本発明によれば、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を用いた加工食品に認められる電子レンジ加熱時の馬鈴薯や豆類を含む具材の破裂を、大幅に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の電子レンジ加熱用加工食品は、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類、あるいはこれらを含む原料を使用する加工食品であって、製造工程中に該馬鈴薯および/または該豆類またはこれらを含む原料に80℃を越える加熱処理を施したものをさす。例えば、常温流通可能な高温加熱を行ったレトルト食品(カレー、シチューなど)、缶詰、アセプティック(無菌充填)食品、その他容器詰め食品、一定期間の保存を可能とするため軽度の加熱処理を行った冷蔵流通条件下で流通するチルド食品、加熱した後に冷凍されて流通する冷凍食品などを挙げることができる。
本発明の電子レンジ加熱用加工食品は、容器または包装の形態のまま、あるいは容器または包装から取り出して、電子レンジで加熱して食することが可能なものである。また、ボイルなど電子レンジ以外の加熱手段でも加熱することが可能なものであっても、場合により、加熱の必要なく食することができるものであってもよい。要は、他の用法で喫食することができる形態でも、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を使用し、80℃を越える加熱処理を施して調製された加工食品は全て本発明に含まれる。
【0009】
本発明の加工食品は、冷凍された馬鈴薯および/または冷凍された豆類を含む。本明細書において「冷凍」とは、通常用いられる冷凍技術や冷凍手段、例えばバッチ式の冷凍装置、連続式のIQFフリーザーなどを用いて全体または部分的に凍結した状態をいう。
商業的に生産されている冷凍馬鈴薯または冷凍豆類は、通常、貯蔵中の品質の低下や変色を防ぐため、野菜に含まれる酵素を不活性化するブランチングを行ってから冷凍されているのが一般的である。そのようなブランチングは、具体的には、熱湯や水蒸気などにより、中心品温が70〜95℃で1分間以上、好ましくは2〜30分間保持される条件で加熱することによって行われる。本発明の冷凍馬鈴薯や冷凍豆類としては、ブランチングを行わずに冷凍されたものでも用いることができるが、ブランチングを行ってから冷凍されたものであるのが好ましい。
【0010】
冷凍馬鈴薯や冷凍豆類は、馬鈴薯や豆類を、生の状態から冷凍されたものであっても、水煮(前記のブランチングを含む広範囲の条件により水で煮る)してから冷凍されたものであってもよい。また豆類は、一旦乾燥させた豆を水で戻したものや、それを水煮したものを用いてもよい。
また、冷凍馬鈴薯や冷凍豆類は、その大きさが50mm角以下のもので、さらに9mm角以上50mm角以下であるのが好ましく、丸のまま、あるいはカットされたものを使用することができる。
冷凍馬鈴薯は、通常食用とされているものであれば、どのような品種の馬鈴薯を冷凍したものであってもよい。例えば、一般的に加工食品に用いられる馬鈴薯の品種としては、豊白、さやか、男爵、メークイン、農林一号などが挙げられる。
冷凍豆類の豆は、通常食用とされている豆であれば、種類・品種を問わず用いることができる。一般的に加工食品に用いられる豆の種類としては、例えば、枝豆、大豆、赤インゲン豆(レッドキドニー)、ひよこ豆(ガルバンゾー)、小豆、えんどう豆(グリーンピース)、そら豆などが挙げられる。
【0011】
本発明でカルシウム水溶液とするカルシウムは、食品に使用可能な水溶性塩の形態のものであれば、特に性状・種類を問わず使用することができる。そのような水溶性カルシウム塩を単独で使用してもよく、または複数組み合わせて使用してもよい。一般に流通している食品に使用可能な水溶性塩の例としては、乳酸カルシウム、塩化カルシウムなどが挙げられるが、原料への風味の影響を考慮に入れると乳酸カルシウムの使用が好ましい。
カルシウム水溶液は、カルシウム濃度19〜162mMとなるように水に水溶性カルシウム塩を溶解したものを用いることができ、好ましくはカルシウム濃度32〜97mMのものを用いることができる。また、カルシウム浸漬の効果を阻害しないものであれば、カルシウム水溶液中に該水溶性カルシウム塩以外の物質、例えばグルタミン酸ナトリウムなどの調味料などが存在してもいてもよい。調味液などの前処理液であってもよい。
冷凍馬鈴薯や冷凍豆類は、1〜80℃、好ましくは20〜70℃の温度のカルシウム水溶液中に例えば1〜120分間、好ましくは5〜60分間浸漬される。
カルシウム水溶液への浸漬は、通常用いられる装置や設備によって行うことができる。
【0012】
冷凍馬鈴薯や冷凍豆類は、カルシウム水溶液に浸漬することによって全部または部分的に解凍されるが、全部または部分的に解凍してからカルシウム水溶液に浸漬させることもできる。
本明細書において「解凍」とは、凍結状態の冷凍馬鈴薯や冷凍豆類が全体的または部分的に未凍結の状態となることを指す。
解凍は、解凍方法や加熱熱源については、特に限定されず、通常用いられる方法によって行うことができる。例えば、冷凍馬鈴薯や冷凍豆類を1〜80℃、好ましくは20〜70℃の温度の水中で解凍することによって行うことができる。また、解凍装置の種類についても、特に限定されず、解凍槽を用いたバッチ式解凍、連続式解凍などを利用することが出来る。
【0013】
本発明の加工食品は、上述するようにカルシウム水溶液に浸漬した冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を、単独で、またはソース、スープ、調味料、香辛料などのその他原料と共に、必要に応じて調理し、製品容器(レトルトパウチ、成形容器などを含む)に詰めて、80℃を超える温度、好ましくは90℃〜130℃、さらに好ましくは100℃〜130℃の温度にて、5分間以上、好ましくは20〜100分間、加熱処理して製造することができる。あるいは、冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を、単独で、またはソース、スープ、調味料、香辛料などのその他原料と共に、必要に応じて調理し、製品容器に詰める前に上述の加熱処理を施した後、無菌条件下で製品容器に詰めて製造することもできる。また、加工食品は製造過程で80℃を超える温度による加熱処理を施して、チルド食品、冷凍食品として調製することもできる。前記加熱処理による加熱のみによって目的とする調理が実質的になされる場合には、火が通り過ぎて具材やソース等の食感が悪くなるのを防ぐために、加熱処理に先立つ調理を行わなくてもよい。
上述の加熱処理に用いる製造装置などは、品質劣化につながらないものであれば、その如何を問わず、通常用いられているものを使用することができる。
このようにして製造される本発明の電子レンジ加熱用加工食品は、調理済みの状態または半調理済みの状態であり、温め直しや仕上げ調理などのために電子レンジを用いて加熱することが可能であり、食品に含まれる馬鈴薯や豆類が電子レンジ加熱の際に破裂しにくいという利点を有する。
さらに、以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
[実施例1〜11]
85℃で2分間のブランチングを行ってから冷凍したカット馬鈴薯(品種:さやか、大きさ:19mm×19mm×16mmダイス)を、40℃の流水中で全部または部分的に解凍した後、カルシウム濃度65mMの乳酸カルシウム水溶液中に種々の温度で30分間または60分間浸漬した(馬鈴薯と乳酸カルシウム水溶液の質量比は1:10)。浸漬後、水を切った。
続いて、乳酸カルシウム水溶液に浸漬した馬鈴薯50gとカレーソース160gの合計210gをレトルトパウチに充填し、122℃24分の加熱処理を行った。加熱処理終了後、内容物を皿に出し、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行い、加熱中における馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
実験は3連(N=3)で行い、破裂の規模および頻度は以下の評価基準に従って判定した。
[比較例1]
乳酸カルシウム水溶液に浸漬していないこと以外は、実施例1〜11と同様の実験を行った。つまり、解凍した馬鈴薯をそのままカレーソースと共にレトルトパウチに充填した。
【0015】
(破裂の規模の判定基準)
大:やや怖いと感じる程度の大きな破裂音がして、馬鈴薯または豆類の断片が激しく飛び散る破裂が1回以上あった。
中:やや大きな破裂音がするが、驚くほどではない。馬鈴薯または豆類の断片が飛び散る程度は軽度。上記の破裂が1回以上あった。
小:小さな破裂音がするが、馬鈴薯または豆類がソース中で少し上下運動する程度。
なし:破裂が起きない。
(破裂の頻度)
破裂規模とは無関係に電子レンジ加熱中に聞こえた破裂音の平均回数(N=3)








【0016】
表1

カルシウム水溶液に浸漬しない比較例1と比べ、実施例1〜11では、25〜70℃の65mMカルシウム水溶液に30〜60分間浸漬することで、電子レンジ加熱の際の破裂の規模と頻度の両方を抑制することができた。
【0017】
[実施例12および13]
乳酸カルシウム水溶液のカルシウム濃度を32mMまたは49mMとした以外は、実施例6と同様の方法に従って実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
[比較例2]
乳酸カルシウム水溶液のカルシウム濃度を10mMとした以外は、実施例6と同様の方法に従って実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
表2

カルシウム水溶液に浸漬しない比較例1や10mMカルシウム水溶液に浸漬した比較例2と比べ、実施例12および13では、32mM〜49mMカルシウム水溶液に30分間浸漬することにより、電子レンジ加熱の際の破裂の規模と頻度の両方を抑制することができた。
【0018】
[実施例14]
馬鈴薯の品種を豊白にした以外は、実施例6と同様の方法で実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。





表3

カルシウム水溶液に浸漬しない比較例1と比べ、実施例14においても、馬鈴薯の品種に関わらず、カルシウム水溶液に浸漬することにより、電子レンジ加熱の際の破裂の規模と頻度の両方を抑制することができた。
【0019】
[実施例15〜17]
馬鈴薯の大きさが異なる以外は、実施例1と同様の方法で実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
乱切りの大きさは、16mm角以上、50mm角以下であった。
[比較例3〜5]
馬鈴薯の大きさが異なる以外は、比較例1と同様の方法で実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
乱切りの大きさは、16mm角以上、50mm角以下であった。
表4

カルシウム水溶液に浸漬しない比較例3〜5と比べ、実施例15〜17では、9mm角以上〜50mm角以下の大きさの馬鈴薯をカルシウム水溶液に浸漬することにより、電子レンジ加熱の際の破裂の規模と頻度の両方を抑制することができた。
【0020】
[実施例18および19]
冷凍カット馬鈴薯を、流水中で全部または部分的な解凍を行わずに、カルシウム濃度65mMの乳酸カルシウム水溶液中に65℃で20分間または40分間浸漬した以外は、実施例1〜11と同様の方法に従って実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
表5

馬鈴薯をカルシウム水溶液へ浸漬する前に流水中で全部または部分的に解凍しなくても、カルシウム水溶液に浸漬することにより、電子レンジ加熱の際の破裂の規模と頻度の両方を抑制することができた。
【0021】
[実施例20〜22、比較例10および12]
加熱処理の温度および時間を変えた以外は、実施例1と同様の方法で実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
[比較例6〜9および11]
加熱処理の温度および時間を変えた以外は、比較例1と同様の方法で実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の馬鈴薯の破裂の規模および頻度を観察した。
表6

レトルト処理(122℃、24分間)よりも低い温度条件(90℃以上)の加熱処理を行った実施例20〜22においても、カルシウム水溶液に浸漬することにより、電子レンジ加熱の際の破裂の規模と頻度の両方を抑制することができた。
尚、80℃以下の加熱処理を行った比較例9〜12では、カルシウム水溶液浸漬の有無に関わらず、電子レンジ加熱の際に馬鈴薯の破裂は起こらなかった。90℃以上の加熱処理を行った比較例6〜8では、電子レンジ加熱の際に馬鈴薯の破裂が起こった。
【0022】
[実施例23〜25]
82℃で5分間のブランチングを行ってから冷凍した種々の豆類を、カルシウム濃度65mMの乳酸カルシウム水溶液中に25℃で30分間浸漬した(豆と乳酸カルシウム水溶液の質量比は1:10)。浸漬後、水を切った。
続いて、乳酸カルシウム水溶液に浸漬した豆類50gとカレーソース160gの合計210gをレトルトパウチに充填し、122℃24分の加熱処理を行った。加熱処理終了後、内容物を皿に出し、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行い、豆類の破裂の規模および頻度を観察した。
実験は3連(N=3)で行い、破裂の規模および頻度は、上述する馬鈴薯の場合と同様の評価基準に従って判定した。
[比較例13〜15]
乳酸カルシウム水溶液に浸漬していないこと以外は、実施例23〜25と同様に実験を行い、電子レンジ(1600W70秒)で加熱を行った際の豆類の破裂の規模および頻度を観察した。
表7

各種冷凍豆類(レッドキドニー、ガルバンゾー、さやを除いた枝豆)を用いても、冷凍馬鈴薯の場合と同様、カルシウム水溶液に浸漬することにより、電子レンジ加熱の際の破裂の規模と頻度の両方を抑制することができた。
以上の実施例の結果から、本発明の方法によって製造される電子レンジ加熱用加工食品は、冷凍馬鈴薯や冷凍豆類を含む原料を用いていても、電子レンジ加熱の際に馬鈴薯や豆類が破裂しにくいという利点を有することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50mm角以下の大きさの冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を、カルシウム濃度19〜162mM、80℃以下のカルシウム水溶液中に浸漬し、該冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類、あるいは冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類を含む原料を80℃を超える温度で加熱処理することを特徴とする、電子レンジ加熱用加工食品の製造方法。
【請求項2】
カルシウム水溶液中に浸漬する前に、馬鈴薯および/または冷凍豆類を全部または部分的に解凍する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
冷凍馬鈴薯および/または冷凍豆類が、中心品温が70〜95℃で1分間以上保持される条件にてブランチングされた後、冷凍されたものである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
ブランチングが、中心品温が70〜95℃で2〜30分間以上保持される条件にて行われたものである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる、電子レンジ加熱用加工食品。

【公開番号】特開2009−33994(P2009−33994A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198893(P2007−198893)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】