説明

電子レンジ用断熱性容器及び電子レンジ用断熱性容器の製造方法

【課題】内容物を入れて電子レンジで加熱した場合にも高い断熱効果が得られる断熱性容器を提供する。
【解決手段】胴部材1及び底部材2を備える電子レンジ用断熱性容器であって、
胴部材1が、筒状の紙層10と、紙層10の外周面上の発泡断熱層12と、紙層10の内周面上の発泡断熱層12よりも高融点の熱可塑性樹脂層11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性容器(紙カップ)に関し、特に電子レンジにより加熱される電子レンジ用断熱性容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱性容器は、コーヒー等のホット飲料用やラーメン、スープ、味噌汁等の即席食品用等に使用される。今日では、飲料や惣菜等の内容物が入った断熱性容器を電子レンジを利用し、加熱調理することも行われている。断熱性容器は、手で持ちやすいように、内容物の温度を遮断する断熱構造を有する。断熱性容器として、例えば紙層の両面に熱可塑性樹脂層を積層し、外周面の熱可塑性樹脂層を発泡させたものがある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
しかしながら、従来の電子レンジ用断熱性容器の断熱性は必ずしも十分ではなく、特に内容物が油脂を含む場合には非常に高温となるため、十分な断熱効果が得られないという問題がある。
【特許文献1】特開2002−193348号公報
【特許文献2】特開2003−128161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、内容物を入れて電子レンジで加熱した場合にも高い断熱効果が得られる電子レンジ用断熱性容器及び電子レンジ用断熱性容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の一態様によれば、胴部材及び底部材を備える電子レンジ用断熱性容器であって、胴部材が、(イ)筒状の紙層と、(ロ)紙層の外周面上の発泡断熱層と、(ハ)紙層の内周面上の発泡断熱層よりも高融点の熱可塑性樹脂層とを備える電子レンジ用断熱性容器が提供される。
【0006】
本願発明の他の態様によれば、(イ)水分を含む紙層の表面に第1の熱可塑性樹脂層を積層するステップと、(ロ)紙層の裏面に第1の熱可塑性樹脂層より高融点の第2の熱可塑性樹脂層を積層するステップと、(ハ)紙層、第1及び第2の熱可塑性樹脂層を含む胴部材を筒状に成形するステップと、(ニ)胴部材を底部材と接合するステップと、(ホ)加熱により水分を用いて第1の熱可塑性樹脂層を発泡させるステップとを含む電子レンジ用断熱性容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内容物を入れて電子レンジで加熱した場合にも高い断熱効果が得られる電子レンジ用断熱性容器及び電子レンジ用断熱性容器の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】

(電子レンジ用断熱性容器)
本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器は、図1に示すように、筒状の胴部材1と、胴部材1と接合された底部材2を備える。胴部材1の上端は外側に巻かれ、胴部材1の下端は内側に折り返されている。底部材2の周縁は外側に屈曲している。胴部材1の下端の折り返し部分と、底部材2の周縁の屈曲部分とが接合されている。
【0011】
胴部材1は、図1及び図2に示すように、筒状の紙層10と、紙層10の内周面上に配置された第2の熱可塑性樹脂層11と、紙層10の外周面上に配置された発泡断熱層(第2の熱可塑性樹脂層)12と、発泡断熱層12の外周面上の一部に配置された印刷層13を備える。
【0012】
紙層10の厚さは200μm〜450μm程度である。紙層10としては、坪量150g/cm2〜350g/cm2程度の紙が使用可能である。
【0013】
発泡断熱層12の厚さは40μm〜100μm程度である。発泡断熱層12は、製造時に加熱処理により紙層10に含有された水分の蒸発を利用して熱可塑性樹脂を発泡、膨張させたものであり、内容物の熱が外部に伝わらないよう断熱性を有する。発泡断熱層12の材料としては、第2の熱可塑性樹脂層11より低融点の材料が使用可能であり、例えば低融点(115℃〜130℃程度)の無延伸ポリプロピレン(CPP)又は低融点(100℃〜115℃程度)の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が好適である。
【0014】
第2の熱可塑性樹脂層11の厚さは10μm〜40μm程度である。第2の熱可塑性樹脂層11は、内容物である液体が紙層10へ浸透することを防止するとともに、容器の製造における加熱処理時に紙層10に含まれる水分が内周面側から直接大気へ蒸発することを防止し、第2の熱可塑性樹脂層11を発泡させずに、発泡断熱層12だけを発泡させることができる。又、内容物が油脂分を含む場合、電子レンジ調理では非常に高温になる可能性があるが、内側には高融点の第2の熱可塑性樹脂層11を有するので高い断熱効果が得られる。
【0015】
第2の熱可塑性樹脂層11の材料としては、発泡断熱層12よりも高融点の熱可塑性樹脂であれば良く、例えば高融点(150℃〜170℃程度)のCPPや、低融点(220℃〜260℃程度)のポリエチレンテレフタレート(PET)が使用可能である。高融点のCPPであれば、1回の押し出しコーティングにより塗布できるためPETをラミネートする場合よりもコストが安価であるという点で好適である。
【0016】
印刷層13の厚さは1μm〜2μm程度である。印刷層13は、透明であっても良く、白色又は種々のカラーを表示しても良い。印刷層13は、発泡断熱層12の全面を覆う場合を示しているが、部分的に設けられていても良い。印刷層13により、文字、記号、図形、模様等を構成する。印刷層13により構成される文字、記号、図形、模様等の位置、大きさ、範囲等は適宜設定可能である。又、印刷層13は、発泡断熱層12を発泡させるための加熱処理時に発泡断熱層12の破れを抑え、且つ印刷層13自身に割れが発生しない程度の柔軟性を有する。
【0017】
印刷層13の材料としては、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アルキッド・硝化綿との共重合体、ポリアミド、アクリル、アクリルとロジンの共重合体、塩素化ポリオレフィン等の樹脂成分を含む溶剤の他、有色の場合には顔料又は着色染料等を更に含有するインキが使用可能である。
【0018】
底部材2は、紙層20と、紙層20の内側に配置されたバリア層21を備える。バリア層21の厚さは30〜50μm程度であり、バリア層21の材料としてはCPP又はシーラブルPET等が使用可能である。紙層20の材料としては、胴部材1の紙層10と同様に、坪量150g/cm2〜350g/cm2程度の紙が使用可能である。なお、図1に示した底部材2の積層構造や形状は一例であり、特に限定されない。
【0019】
本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器によれば、紙層10の内周面に、発泡断熱層12よりも高融点の第2の熱可塑性樹脂層11を備えるので、内容物を入れて電子レンジで加熱し、内容物が非常に高温になった場合にも高い断熱効果が得られる。
【0020】
(電子レンジ用断熱性容器の製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器の製造方法の一例を、図1〜図5を参照して説明する。
【0021】
(イ)まず、坪量100g/cm2〜400g/cm2程度、150μm〜450μm程度の厚さの水分を含む紙層(原紙)10を用意する。紙層10の含水率は、3%〜10%程度が好ましく、更に5%〜8%程度がより好ましい。含水率が3%未満であると後の工程で積層する発泡断熱層が発泡不足となり十分な断熱効果が得られない場合がある。含水率が10%を越えると発泡断熱層の外周面が破裂する場合がある。
【0022】
(ロ)次に、押し出しコーティング法又はラミネート法等により、押し出しコーティング法又はラミネート法等により、紙層10の表面に15μm〜50μm程度の第1の熱可塑性樹脂層12を積層する。更に、押し出しコーティング法又はラミネート法等により、紙層10の裏面に10μm〜40μm程度の第1の熱可塑性樹脂層12よりも高融点の第2の熱可塑性樹脂層11を積層する。第1の熱可塑性樹脂層12の厚さは15μm未満又は100μmを越えると、加熱処理の際に第1の熱可塑性樹脂層12が発泡しにくくなる。なお、いわゆるノーコート紙の紙層10に第2の熱可塑性樹脂層11及び第1の熱可塑性樹脂層12を積層する場合を説明したが、紙層10の裏面に第2の熱可塑性樹脂層11を予め積層したり、或いは紙層10の表面に第1の熱可塑性樹脂層12を予め積層した積層体(片コート紙)や、紙層10の裏面及び表面にそれぞれ第2の熱可塑性樹脂層11及び第1の熱可塑性樹脂層12を予め積層した積層体(両コート紙)を用意しても良い。
【0023】
(ハ)次に、図3に示すように、グラビア印刷等により、第1の熱可塑性樹脂層12の表面に1μm〜2μm程度の印刷層13を形成する。なお、印刷層13の位置、大きさ、範囲等は特に限定されない。
【0024】
(ニ)次に、紙層10の裏面に第2の熱可塑性樹脂層11が積層され、紙層10の表面に第1の熱可塑性樹脂層12、印刷層13が積層された積層体から、図4に示すように扇状又は帯状の胴部材(ブランク)1を打ち抜く。
【0025】
(ホ)別途、紙層20を用意し、押し出しコーティング法又はラミネート法等により、紙層20の表面にバリア層21を積層する。なお、紙層20の表面にバリア層21を予め積層した積層体(片コート紙)を用意しても良い。そして、紙層10とバリア層21の積層体から、図5に示すように、円形の底部材2(ブランク)を打ち抜く。
【0026】
(ヘ)次に、カップ成形機を用いて、胴部材(ブランク)1を筒状に成形し、胴部材1の上端を外側に屈曲させ、胴部材1の下端を内側に折り返す。又、底部材(ブランク)2の周縁を屈曲させる。そして、胴部材1の下端の折り返し部と底部材2の屈曲した周縁とを熱圧着により接合することにより、電子レンジ用断熱性容器を成形する。
【0027】
(ト)次に、熱風、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、高周波等の加熱手段を用いて、成形された電子レンジ用断熱性容器を静置或いはコンベアーにより送りながら、100〜200°C程度、10秒〜5分程度で加熱する。これにより、紙層10に含まれる水分が第1の熱可塑性樹脂層12側へ蒸発し、この水分により第1の熱可塑性樹脂層12を発泡させる。第1の熱可塑性樹脂層12は、加熱前の厚さと比して8〜20倍程度の厚さに膨張し、発泡断熱層12となる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器の製造方法によれば、内容物を入れて電子レンジで加熱した場合にも高い断熱効果が得られる電子レンジ用断熱性容器を実現可能となる。
【0029】
なお、上述した製造方法では、電子レンジ用断熱性容器に成形した状態で加熱する例を説明したが、胴部材(ブランク)1を打ち抜く前に、平板状のまま胴部材1を加熱し第1の熱可塑性樹脂層12を発泡させてから、胴部材(ブランク)1を打ち抜き、胴部材1と底部材2とを接合して成形しても良い。
【0030】
又、胴部材(ブランク)1を筒状にする前に、胴部材(ブランク)1を加熱し第1の熱可塑性樹脂層12を発泡させてから、胴部材1と底部材2とを接合して成形しても良い。
【0031】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0032】
例えば、図6に示すように、第2の熱可塑性樹脂層11と紙層10との間に、紙層10側に設けられたドライラミネート(DL)法による接着剤層14及び第2の熱可塑性樹脂層11側に設けられたDL法による接着剤層16を介してバリア層15を更に備えていても良い。バリア層15は、内容物である液体が紙層10へ浸透することを防止するとともに、加熱処理時に紙層10に含まれる水分が内周面側から直接大気へ蒸発することを防止するといったバリア性を向上させる。バリア層15としては、PETやアルミニウム箔等が使用可能である。
【0033】
又、電子レンジ用断熱性容器本体の形状は、いわゆるカップ状のほか、どんぶり型や弁当箱状とすることもできる。又、印刷層13を示したが、印刷層13と同じレベルの外周面を有する他の印刷層13を複数種更に備えていても良い。
【0034】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器の要部断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器の製造方法を説明するための電子レンジ用断熱性容器の発泡前の要部断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器の製造方法を説明するための電子レンジ用断熱性容器の打ち抜いた胴部を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器の製造方法を説明するための電子レンジ用断熱性容器の打ち抜いた底部を示す概略図である。
【図6】本発明のその他の実施の形態に係る電子レンジ用断熱性容器の要部断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…胴部材
2…底部材
10…紙層
11…第2の熱可塑性樹脂層
12…第1の熱可塑性樹脂層(発泡断熱層)
13…印刷層
14,16…接着剤層
15,21…バリア層
20…紙層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部材及び底部材を備える電子レンジ用断熱性容器であって、
前記胴部材が、
筒状の紙層と、
前記紙層の外周面上の発泡断熱層と、
前記紙層の内周面上の前記発泡断熱層よりも高融点の熱可塑性樹脂層
とを備えることを特徴とする電子レンジ用断熱性容器。
【請求項2】
前記紙層と前記熱可塑性樹脂層との間に配置された接着層と、
前記接着層と前記熱可塑性樹脂層との間に配置されたバリア層
とを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用断熱性容器。
【請求項3】
水分を含む紙層の表面に第1の熱可塑性樹脂層を積層するステップと、
前記紙層の裏面に前記第1の熱可塑性樹脂層より高融点の第2の熱可塑性樹脂層を積層するステップと、
前記紙層、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂層を含む胴部材を筒状に成形するステップと、
前記胴部材を底部材と接合するステップと、
加熱により前記水分を用いて前記第1の熱可塑性樹脂層を発泡させるステップ
とを含むことを特徴とする電子レンジ用断熱性容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220863(P2009−220863A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68368(P2008−68368)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】