説明

電子レンジ調理用冷凍食品

【課題】電子レンジにおける加熱調理により短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することができる電子レンジ調理用冷凍食品を提供することを目的とする。
【解決手段】ペースト状のソース12を麺塊11の上面に掛けた状態で冷凍され、麺塊11の上面の中心部付近にソース12が掛けられずに麺塊11が上方に向かって露出する露出部13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジ調理用冷凍食品にかかり、特に、ペースト状のソースを麺塊の上面にかけた状態で冷凍され、電子レンジで調理される冷凍食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子レンジの普及に伴って、電子レンジで加熱調理するだけで喫食できる冷凍食品の流通量が増大している。
このような冷凍食品の一例として、特許文献1には、茹でパスタをソテーした後、その上にソースをかけて冷凍したソース入り冷凍パスタが開示されている。例えば、ミートスパゲッティやカルボナーラに代表される茹でパスタとソースを混合して喫食するタイプの冷凍食品は、図9に示すように、蒸す、茹でる等の処理を行ったパスタからなる麺塊1の上面の中心部付近に、ペースト状のソース2をかけた状態でパッケージに収容され、冷凍されているのが一般的である。
したがって、このパッケージを電子レンジで解凍するだけで、調理済みのミートスパゲッティやカルボナーラを喫食することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−186852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような冷凍食品を実際に電子レンジで加熱して解凍する場合、ソース2と麺塊1の周縁部が解凍されて喫食に適した温度にまで加熱された時点においても、ソース2に覆われた麺塊1の中心部付近はまだ低温で解凍されない、いわゆる解凍ムラが生じ、ソースと麺とをうまく混合することができないおそれがある。ソース2に覆われた麺塊1の中心部付近をも適温になるまで電子レンジで加熱調理しようとすれば、長時間を要することになる。
【0005】
電子レンジは、一般に、調理空間を囲む周壁部から調理空間内に電磁波を放射する構造を有するため、電子レンジの調理空間内に冷凍食品を載置して調理した場合、冷凍食品の中心部よりも周縁部にエネルギー密度の高い電磁波が照射されやすく、周縁部に比べて中心部の温度の上昇が遅れる傾向がある。さらに、図9に示したような冷凍食品では、麺塊1の中心部の上面がソース2で覆われているため、麺塊1の中心部への電磁波の照射がソース2によって遮断されている。このため、ソース2及び麺塊1の周縁部と麺塊1の中心部との間に大きな温度差が生じるものと推測される。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消し、電子レンジにおける加熱調理により短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することができる電子レンジ調理用冷凍食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電子レンジ調理用冷凍食品は、ペースト状のソースを麺塊の上面にかけた状態で冷凍された冷凍食品であって、麺塊の上面の中心部付近にソースが掛けられずに前記麺塊が上方に向かって露出する露出部を有するものである。
【0008】
ここで、ソースが、麺塊の上面の周縁部に環状のパターン形状を形成するように配置され、露出部を、ソースの環状のパターンの内側に位置させることができる。
また、ソースが、麺塊の上面において複数列のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた複数の部分に分割して配置され、露出部は、ソースの複数の部分の間にそれぞれ位置させることもできる。
さらに、ソースが、麺塊の上面において格子状のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた複数の部分に分割して配置され、露出部は、ソースの複数の部分の間にそれぞれ位置させてもよい。
【0009】
また、麺塊を、パスタから形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、電子レンジにおける加熱調理により短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態1に係る電子レンジ調理用冷凍食品の構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】この発明の実施形態2に係る電子レンジ調理用冷凍食品の構成を示す平面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】この発明の実施形態2の変形例に係る電子レンジ調理用冷凍食品の構成を示す平面図である。
【図6】この発明の実施形態3に係る電子レンジ調理用冷凍食品の構成を示す平面図である。
【図7】この発明の実施形態3の変形例に係る電子レンジ調理用冷凍食品の構成を示す平面図である。
【図8】この発明の実施形態3の他の変形例に係る電子レンジ調理用冷凍食品の構成を示す平面図である。
【図9】従来例における電子レンジ調理用冷凍食品の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適な実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。
【0013】
実施形態1
図1および図2に、この発明の実施形態1に係る電子レンジ調理用冷凍食品を示す。この冷凍食品は、パスタからなる麺塊11の上面にペースト状のソース12がかけられた状態で冷凍されたものである。ソース12は、麺塊11の上面の中心部付近にかからないように、麺塊11の上面の周縁部のみにかけられている。すなわち、麺塊11の上面の中心部付近には、パスタが上方に向かって露出する露出部13が形成されている。
さらに具体的にいえば、ソース12が、麺塊11の上面の周縁部に環状のパターンを形成するようにかけられ、麺塊11の露出部13が、ソース12の環状のパターンの内側に位置するように形成されている。
【0014】
実施形態1の冷凍食品は、このように形成されているので、電子レンジにおける加熱調理により短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することができる。
上述したように、電子レンジは、一般に、調理空間を囲む周壁部から調理空間内に電磁波を放射する構造を有するため、電子レンジの調理空間内に冷凍食品を載置して調理した場合、冷凍食品の中心部よりも周縁部にエネルギー密度の高い電磁波が照射されやすく、周縁部に比べて中心部の温度の上昇が遅れる傾向がある。
ところが、実施形態1の冷凍食品は、図1に示したように、麺塊11の上面の中心部付近がソース12で覆われずに上方に向かって露出しているため、麺塊11の上面の中心部へも電磁波が直接照射される。このため、麺塊11の周縁部と中心部付近との間に大きな温度差が生じることがなく、短時間で全体がほぼ均一に加熱される。
なお、ソース12は、水分を多く含んでおり、麺塊11に比べて熱容量が大きいので、図6に示した従来の冷凍食品のように、麺塊の上面の中心部付近がソースで覆われていると、ソースに電磁波を照射しても、ソースで覆われた部分の麺塊の温度は上昇しにくいことが推測される。
しかしながら、図1に示した実施形態1の冷凍食品では、ソース12で麺塊11の上面の中心部付近が覆われていないため、ソース12が有する熱容量の影響を受けることが回避され、麺塊11の中心部も含めた全体を喫食に適した温度にすることが可能となる。
【0015】
この実施形態1の冷凍食品は、パスタ及びソースを別々に調整した後、図1に示すようなパターン形状を形成するように、ソース12をパスタからなる麺塊11の上にかけ、この状態で冷凍することで製造することができる。
冷凍方法は、パスタ及びソースを完全に凍結することができる方法であれば、特に限定されない。
また、このようにして得られた冷凍食品は、電子レンジにおける調理により、短時間で全体が解凍され、喫食に適した温度に加熱された食品となる。
【0016】
この発明に用いるパスタは、特に限定はなく、茹でパスタでも生パスタでもよい。さらに、茹でパスタの原料となる乾燥パスタの種類に特に限定されず、例えば、スパゲッティ、マカロニ、バーミセリ、ヌードル等が挙げられる。
また、乾燥パスタの茹で上げ方法、例えば、乾燥パスタに対する水の添加量、茹で時間、茹で歩度まり、冷却温度等に特に制限はなく、パスタの種類に応じて常法に従って茹で上げることができる。
【0017】
この発明に用いるソースは、パスタの種類に応じて一般に用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、ミートソース、カルボナーラ、ナポリタンソース、ベジャメルソース、モルネーソース、オランデーソース、ドミグラスソース等が挙げられる。このようなペースト状のソースは、常法に従って製造することができる。
【0018】
実施形態2
上記の実施形態1においては、ソース12が麺塊11の上面の周縁部に環状のパターンを形成するようにかけられているが、この発明は、このパターン形状に限定されない。例えば、図3及び図4に示すようなパターン形状を有する電子レンジ調理用冷凍食品であってもよい。すなわち、ソース12が、パスタからなる麺塊11の上面において複数列、例えば2列のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた2つの部分に分割して配置されてもよい。すなわち、麺塊11の上面の中心部付近の領域Rにおいて、ソース12に覆われずにパスタが露出する露出部13が、ソース12の2つの部分の間に位置している。
【0019】
このように形成された実施形態2の冷凍食品も、実施形態1の冷凍食品と同様に、電子レンジによる加熱調理の際に、麺塊11の上面の中心部付近の領域Rにおける露出部13を通して電磁波が麺塊11に直接照射される。このため、麺塊11の周縁部と中心部付近との間に大きな温度差が生じることがなく、また、露出部13ではソース12が有する熱容量の影響を受けないので、短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することができる。
【0020】
また、ソース12は、2列のパターン形状に限らず、図5に示すように、3列のパターン形状を形成してもよい。
すなわち、ソース12が、パスタからなる麺塊11の上面において3列のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた3つの部分に分割して配置され、麺塊11の上面の中心部付近の領域Rにおいて、ソース12の3つの部分の間にそれぞれ露出部13が位置している。
【0021】
このようにしても、同様に、電子レンジにおける加熱調理により短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することができる。
さらに、ソース12を、4列以上のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てて配置することもできる。
【0022】
実施形態3
実施形態3に係る電子レンジ調理用冷凍食品を図6に示す。この実施形態3の冷凍食品では、ソース12が、パスタからなる麺塊11の上面において格子状、例えば、4×4の格子状のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた計16の部分に分割して配置され、麺塊11の中心部付近の領域Rにおいて、ソース12に覆われずにパスタが露出する露出部13が、ソース12のそれぞれの部分の間に位置している。
【0023】
このように形成された実施形態3の冷凍食品も、実施形態1および2の冷凍食品と同様に、電子レンジによる加熱調理の際に、麺塊11の上面の中心部付近の領域Rにおける露出部13を通して電磁波が麺塊11に直接照射される。このため、麺塊11の周縁部と中心部付近との間に大きな温度差が生じることがなく、また、露出部13ではソース12が有する熱容量の影響を受けないので、短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することができる。
【0024】
なお、図6に示す電子レンジ調理用冷凍食品は、ソース12が、麺塊11の上面において4×4の格子状のパターンを形成するように、互いに間隔を隔てた16個の部分に分割して配置されているが、これに限定されず、図7に示すように、3×3の格子状のパターンを形成するようにソース12が配置された電子レンジ調理用冷凍食品であってもよい。さらに、図8に示すように、2×2の格子状のパターンを形成するようにソース12が配置された電子レンジ調理用冷凍食品であってもよい。
【0025】
図7に示す冷凍食品では、ソース12が、パスタからなる麺塊11の上面において3×3の格子状のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた9つの部分に分割して配置され、麺塊11の中心部付近の領域Rにおいて、ソース12に覆われずにパスタが露出する露出部13が、ソース12のそれぞれの部分の間に位置している。
同様に、図8に示す冷凍食品では、ソース12が、パスタからなる麺塊11の上面において2×2の格子状のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた4つの部分に分割して配置され、麺塊11の中心部付近の領域Rにおいて、ソース12に覆われずにパスタが露出する露出部13が、ソース12の4つの部分の間にそれぞれ位置している。
【0026】
図7あるいは図8のようなパターン形状にソース12を配置しても、同様に、電子レンジにおける加熱調理により短時間でも全体を解凍して喫食に適した温度に加熱することができる。
なお、ソース12を配置する格子の数は、4×4、3×3、2×2に限定されるものではなく、5×5以上としてもよく、また、4×3等、縦横の個数が異なる格子状に配置することもできる。
【0027】
なお、上記の実施形態1〜3においては、一例としてパスタからなる麺塊11を取り上げて説明したが、ペースト状のソースを麺塊の上面にかけた状態で冷凍され、電子レンジで調理される冷凍食品であれば、パスタに限定されない。従って、例えば、カレーうどん(カレーがソースであり、うどんが麺塊である)、あんかけ焼きそば(あんかけがソースであり、焼きそばが麺塊である)等の冷凍食品であってもよい。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を示し、この発明をさらに詳細に説明するが、この発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
茹でパスタは、(日清フーズ(株)製「製品名 マ・マー スパゲティ ブルー 1.7mm」)500gを5.0Lの水に入れ、8分間茹で上げて調整した。また、これとは別に、ミートソース(日清フーズ(株)「製品名 マ・マー ミートソース」)を用意した。
次いで、茹でパスタ180gを、縦140mm、横180mm、深さ40mmの容器に上面にできるだけ凹凸ができないように入れ、図1及び2に示すパターン形状(実施形態1)を形成するように、ソース100gをパスタからなる麺塊の上面にのせた後、−40℃の雰囲気下で急速凍結して冷凍麺を得た。
【0030】
実施例2
茹でパスタを、図3及び4に示すパターン形状(実施形態2)を形成するように、ソースをパスタからなる麺塊の上面にのせた以外は、全て実施例1と同様にして、冷凍麺を得た。
【0031】
実施例3
茹でパスタを、図5に示すパターン形状(実施形態2)を形成するように、ソースをパスタからなる麺塊の上面にのせた以外は、全て実施例1と同様にして、冷凍麺を得た。
【0032】
実施例4
茹でパスタを、図6に示すパターン形状(実施形態3)を形成するように、ソースをパスタからなる麺塊の上面にのせた以外は、全て実施例1と同様にして、冷凍麺を得た。
【0033】
比較例1
茹でパスタを、図9に示すパターン形状(従来例)を形成するように、ソースをパスタからなる麺塊の上面にのせた以外は、全て実施例1と同様にして、冷凍麺を得た。
【0034】
上述するように得られた実施例1〜4及び比較例1の電子レンジ調理用冷凍食品は、それぞれ、−12℃程度に調節して保存された後、電子レンジ((株)東芝製ER−V7、600W)で、加熱時間を3分に設定して加熱調理し、麺塊の周縁部と中心部の温度を測定した。
その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示されるように、麺塊の上面の中心部付近にソースがかけられた比較例1では、電子レンジによる加熱調理後においても、中心部の温度が0度にも達しておらず、部分的に解凍されていない部分があることがわかる。
一方、麺塊の上面の中心部付近にパスタが上方に向かって露出する露出部を有する実施例1〜実施例4では、麺塊の周縁部と中心部との間に多少の温度差はあるものの、比較例1のように中心部が氷点下を示すようなものはなく、全体が解凍されており、パスタとソースを撹拌することにより、適温のミートスパゲッティを喫食することができた。
【符号の説明】
【0037】
11 麺塊、12 ソース、13 露出部、R 中心部付近の領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状のソースを麺塊の上面に掛けた状態で冷凍された冷凍食品であって、
前記麺塊の上面の中心部付近に前記ソースが掛けられずに前記麺塊が上方に向かって露出する露出部を有することを特徴とする電子レンジ調理用冷凍食品。
【請求項2】
前記ソースは、前記麺塊の上面の周縁部に環状のパターン形状を形成するように配置され、前記露出部は、前記ソースの環状のパターンの内側に位置する請求項1に記載の電子レンジ調理用冷凍食品。
【請求項3】
前記ソースは、前記麺塊の上面において複数列のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた複数の部分に分割して配置され、前記露出部は、前記ソースの複数の部分の間にそれぞれ位置する請求項1に記載の電子レンジ調理用冷凍食品。
【請求項4】
前記ソースは、前記麺塊の上面において格子状のパターン形状を形成するように互いに間隔を隔てた複数の部分に分割して配置され、前記露出部は、前記ソースの複数の部分の間にそれぞれ位置する請求項1に記載の電子レンジ調理用冷凍食品。
【請求項5】
前記麺塊は、パスタからなる請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ調理用冷凍食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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