説明

電子レンジ調理用包材

【課題】電子レンジでの加熱調理に当たって、形状の不均一な食材に用いても、接触むらによる食材の部分的な温度バラツキが起こりにくく、食材表面全体にカリット感や焦げ目を与え、巻きつけたサセプター間から余分な油が下の皿等に落ちることで、余分な油によるベトベト感がなくなり、食材の食感を向上させることが出来る電子レンジ調理用包材の提供。
【解決手段】マイクロ波吸収により発熱する金属層と、この金属層を覆う耐熱プラスチック層とからなる発熱体を、紙などからなる基材に設けた、前記発熱体と基材が一体となった連続巻き取りシートで長手方向の両端部には金属層が設けられていない電子レンジ調理用包材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ調理用包材に関し、特に調理品表面に適度な焦げ目を付けるようにした軟包装材からなる電子レンジ調理用包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子レンジ加熱では、マイクロ波による食品内部の加熱であることから、食品の内部から発生する蒸気やドリップのために食感が損ねられたりすることも多く、また、そのままでは食品の表面に焦げ目を付けることができない。そこで、電子レンジで発熱させるサセプター(発熱体)を用いることにより、食品にクリスピー性を付与したり、ピザや餃子などの食品の表面に焦げ目を付けたりすることが可能である。
【0003】
マイクロ波によりサセプターが発熱する原理は、金属層に発生する渦電流のジュール熱で加熱するものである。アルミ箔のような金属箔では、マイクロ波を照射すると反射してしまうが、金属箔を薄くしていくとマイクロ波の一部を透過するようになる。このときに一部は薄い金属層で渦電流になり、この渦電流が電気抵抗を持つ薄い金属層を流れることによりジュール熱が発生し、それに接触する食品を表面から加熱する。
【0004】
サセプターに利用できる金属とその酸化物は、アルミニウム、ステンレス、酸化インジュウム等いろいろあるが、コストと安全性の点でアルミニウムが一般的である。薄い金属層は、蒸着方式、スパッタリング方式、コーティング方式、練込み方式等によって作ることができるが、コストと効果から蒸着方式が一般的である。
【0005】
ポリエステルフィルムにアルミニウムを真空蒸着して薄膜を形成し、蒸着面を紙と貼り合わせたシートが一般的に用いられている(特許文献1)。また、焦げ目付け効果を上げるために、加熱時に発生する蒸気を逃がすためのスリットを設けてあるシートも開発されている(特許文献2)。
【0006】
サセプターを紙トレーや紙皿の底部、カートンの内面に貼り合せたり、筒状にして直接食品を包装する等の形態で使用されている。ピザ、餃子、ポップコーン、ハンバーガー、ホットドッグ、焼き魚、フライドポテト、フライドチキン等の電子レンジ加熱時の焦げ目付けに利用されている。
【0007】
現在、紙台紙にサセプターを貼り付け、サセプターと接触したピザの生地にクリスピー感を付与したり、サセプターの貼った台紙を上下から食材(例えば魚)に接触させ食材に焦げ目をつける方法で商品化がされている(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、片面あるいは両面に焦げ目やカリット感を付与するにはサセプターに接触させる必要があるため、食材の面が平滑であることが望ましいが、しかし食材によっては平面のサセプターでは面での接触がさせにくい、不定形な凹凸のある食材が少なくない。また、片面あるいは上下だけでなく、側面も焦げ目やカリット感を付与した方が食感が向上する食材も多い。
【0009】
大きさや長さが不定形な食材、細長い食材、薄い食材などを、台紙に貼り付けた従来のサセプターを用いて電子レンジで加熱した場合、どうしても接触しない部分が生じ、焦げ目やクリスピー感のむらが生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭60−15548号公報
【特許文献2】実公平4−42117号公報
【特許文献3】特開2001−19062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、電子レンジでの加熱調理に当たって、形状の不均一な食材に用いても、接触むらによる食材の部分的な温度バラツキが起こりにくく、食材表面全体にカリット感や焦げ目を与え、巻きつけたサセプター間から余分な油が下の皿等に落ちることで、余分な油によるベトベト感がなくなり、食材の食感を向上させることが出来る電子レンジ調理用包材の提供を課題とする。
また、食材の形状、大きさが異なっていても、必要最小限度のサセプター包装体を巻きつけることで、サセプターの無駄がなくなる電子レンジ調理用包材の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に対して本発明者は、不定形な食材、細長い食材、薄い食材、平滑性でない食材などを対象に、サセプター材料を食材に巻き付けやすくし、かつ食材とサセプターが接触しやすくなるために強制的に内側に凹となるカールを付与させた上で細い幅にスリット加工することが有効であることを見出した。
【0013】
また、食材の大きさにより巻き付ける長さ(巻き付け量)を調整すればサセプターの無駄がなく、効率的に食材表面全体を均一加熱することが出来ること、さらにサセプターのスリット幅両端部分または全面にキズ加工を施せば、好きな場所でサセプターを簡単にカットすることも可能になる。
【0014】
これらの包装体全体に連続的な細かい凹凸加工でデッドホールド性(変形後の保形性)を付与すれば、巻きつけた後、サセプター上から軽く押さえることでより食材との接触を良くする事が出来る。
以上のことを考慮して本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明の請求項1の発明は、金属を蒸着してなりマイクロ波吸収により発熱する金属層と、この金属層を覆う耐熱プラスチック層とからなる発熱体を、紙基材に設けた、前記発熱体と基材が一体となった連続巻き取りシートであることを特徴とする電子レンジ調理用包材である。
【0016】
発熱体と基材が一体となった連続巻き取りシートであることによって、電子レンジによる加熱時に食品の形状や大きさに制限されることなく必要長さだけ使用することが出来るので、あらかじめ個別の大きさに合わせなくても任意の位置でシートを切断して効率的に使用出来る。
【0017】
本発明の請求項2の発明は、前記連続巻き取りシートの長手方向の両端部の幅5mmから10mmには金属層が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用包材である。
【0018】
シートの長手方向の両端部には金属層が設けられていないことによって、食材に電子レンジ調理用包材を隙間なく巻き付けても、発熱部分が重なり合って周囲よりも異常に高温になるということがなく、食品の全面に同じような焦げ目をつけることが出来る。
【0019】
本発明の請求項3の発明は、前記連続巻き取りシートの耐熱プラスチック層面側に、50mm×50mmで切断放置時に内面20mm以上の凹カールを生じる性質を付与したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ調理用包材である。
【0020】
シートを食材の外側に巻きつける際に、電子レンジ調理用包材の食品に接する側(内側)が食材の外側に沿って密着しやすいように内側に向かって凹状にカールさせることによって食材の全面に均一な焦げ目を作ることが出来る。
【0021】
本発明の請求項4の発明は、前記連続巻き取りシートの耐熱プラスチック層がポリエチレンテレフタレートフィルムであり、基材が坪量30g/mから80g/mの中性紙であり、シートの全面もしくは長手方向の両端面に、キズ加工を連続的に施したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用包材である。
【0022】
連続巻き取りシートの耐熱プラスチック層は、加工性と食品への接触に対する安全性からポリエチレンテレフタレートフィルムが一般的であり、坪量30g/mから80g/mの中性紙基材と貼り合せて、シートの全面もしくは長手方向の両端面に、細かいミシン目等のキズ加工を連続的に施すことによりシートの長さ方向の任意の場所で横方向に容易にカットできるようになる。
【0023】
本発明の請求項5の発明は、前記連続巻き取りシートに高さ0.5mmから2mmでピッチ2mmから6mmの連続的な波状の凹凸エンボス加工を施したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用包材である。
【0024】
前記連続巻き取りシートに連続的な波状の凹凸エンボス加工を施したことによって、使用時に食材の表面に合わせて巻きつけた場合に自身の弾性によってほどけてしまうことを防止できる。
【0025】
本発明の請求項6の発明は、前記連続巻き取りシートの巻き取りの長さが1mから50mであり幅が20mmから100mmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用包材である。
【0026】
巻き取りシートの長さは1回の使用量と取り扱い易い重さを考えると1mから50m程度が適当であり幅は20mmから100mmが適当である。
【発明の効果】
【0027】
このように本発明の電子レンジ調理用包材によれば、調理時に上述のような固形状の食材をサセプターを使用して電子レンジ加熱する場合、たとえばPETのような食材接触面基材に内側に凹となる強いカールを付与し、かつ食材の表面凹凸に追従できるような細い幅にスリット加工した電子レンジ調理用包材を使用して食材に巻きつけることで、従来のサセプターでは表面全体への接触が困難な食材の場合でも表面全体に接触させて焦げ目を付けることが可能になる。
【0028】
また、食材の大きさと長さにより、巻きつける電子レンジ調理用包材の長さを必要な長さに調整することができ、サセプターを有効に活用しながら食材表面全体を均一に加熱し、カリット感や焦げ目を付与することが出来る。食材の形状や大きさが異なっても、必要最小限度のサセプター包装体を巻きつけることが可能なので電子レンジ調理用包材も無駄をなくすことが出来る。
【0029】
本発明の電子レンジ調理用包材はさらに、シートの両端部分にアルミニウムの非蒸着部を形成することによって、食材に巻きつける際に金属蒸着部が重なった部分から過度の加
熱を生じないようにすることが容易になる。またこうすることによって巻きつけた電子レンジ調理用包材同士の隙間から電子レンジ加熱時に食材から出る余分な油が下の皿等に落ちることにより、加熱後の食材から出た油等によるベトベト感を少なくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の電子レンジ調理用包材(スリット後)概略図。(A)は外観模式図を(B)は断面模式図を示す。
【図2】本発明の電子レンジ調理用包材(スリット前)概略図。(A)は外観模式図を(B)は断面模式図を示す。
【図3】本発明の電子レンジ調理用包材のカールを示す断面模式図。(A)はカールのない場合の断面を(B)はカールを与えた場合の断面を示す。
【図4】本発明の電子レンジ調理用包材のミシン目加工を示す概略図。(A)は両端ミシン目加工の場合を(B)は全面ミシン目加工の場合を示す。
【図5】本発明の電子レンジ調理用包材のデッドホールド性付与の概略図。(A)は外観模式図を(B)は断面模式図を示す。
【図6】本発明の電子レンジ調理用包材の使用例の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
図1には本発明の電子レンジ調理用包材の概略図を、図2にはそのスリット前の概略図を示した。
【0032】
本発明の電子レンジ調理用包材はたとえば図1に示すように、アルミニウムなどの金属を蒸着してなりマイクロ波吸収により発熱する金属層(4)と、この金属層(4)を覆うたとえばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような耐熱プラスチック層(3)とからなる発熱体を、紙などからなる基材(2)に設けて、前記発熱体と基材が一体となった連続巻き取りシート(1)であることを特徴とする電子レンジ調理用包材である。
【0033】
さらに、本発明の電子レンジ調理用包材は、前記連続巻き取りシート(1)の長手方向の両端部(b)の幅5mmから10mmにはアルミニウムなどの金属が蒸着されていない非蒸着層(5)が設けられている電子レンジ調理用包材である。
【0034】
この連続巻き取りシート(1)は図1(A)に概略を示したように耐熱プラスチック層(3)を内面に、紙などからなる基材(2)を内面にして巻き込まれており、使用時に外側から巻き戻して必要な長さにカットして用いられる。
【0035】
図1(B)には上記連続巻き取りシート(1)の横断面の模式図を示した。耐熱プラスチック層(3)を巻き取りの内側にしてその外側に幅(a)のアルミニウム蒸着層(4)を、図で下側になる最外側に紙基材(2)を積層した構成となっており、両端部にはそれぞれ幅(b)の非蒸着部(5)が設けられている。
【0036】
通常、図1に示したような連続巻き取りシートは、生産効率を考慮して、幅広の巻き取りシートを複数行にスリットして適切な長さにカットすることによって製造される。
【0037】
図2には3行取りの場合の例を示した。図2(A)の連続巻き取りシート(10)から、非蒸着部(5)の幅の中心でスリットして3本の連続巻き取りシート(1)とする工程である。
【0038】
図2(B)に断面模式図を示したように、連続巻き取りシート(10)の非蒸着部(5)の幅中心のスリット位置(S)でスリットして、幅(a)のアルミニウム蒸着部(4)と幅(b)の両端非蒸着部(5)を有する幅(a+2b)の連続巻き取りシート(1)とする。
【0039】
連続巻き取りシート(1)の幅方向両端部に設けられた非蒸着部(5)の幅(b)は5mmから10mmの範囲であることが好ましい。幅(b)が5mm未満であると使用時にさんま等の加熱対象物に巻き付ける時にアルミニウム蒸着部(4)の端部が重なりやすく、過加熱による焦げすぎを起こしやすい。また、幅(b)が10mm超であると、重ならない部分の加熱不足を起こしやすいだけでなく滲出した油等の滴下を妨害することにもなる。
【0040】
連続巻き取りシート(1)の幅(a+2b)は20mmから100mmであることが好ましい。幅(a+2b)が20mm未満であると使用時に大きな加熱対象物に巻きつけるのが大変であり、加熱中にほどけたりして使いにくい。幅(a+2b)が100mm超であると逆に小さな加熱対象物には巻き付け難いだけでなく必要量以上の量を使うことになり無駄である。
【0041】
連続巻き取りシート(1)の長さは1mから50mであることが好ましい。長さが1m未満であると使用時に大きな加熱対象物に巻きつけることが出来ず、いくつかの加熱対象物に巻きつけていくことが面倒である。
幅(a+2b)が100mm超であると逆に小さな加熱対象物には巻き付け難いだけでなく必要量以上の量を使うことになり無駄である。
【0042】
連続巻き取りシート(1)の長さが50m超であると、通常の家庭用ラップ等と比べて巻き取りの径や重量が著しく大きくなってしまい、台所で主婦が扱う調理器具としては扱い難いものになってしまう。
【0043】
本発明の電子レンジ調理用包材を構成する材料について説明する。
本発明の電子レンジ調理用包材に用いる耐熱プラスチック層としては、金属蒸着加工適性を有していれば、特に種類を限定する必要はなく、発熱させようとする熱量に応じて選択すればよいが、代表的な例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン2・6ナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、6ナイロン、12ナイロンなどのポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどや、これらの重合体と他の有機重合体との共重合体などから成るフィルムやシートが挙げられる。
【0044】
前記重合体、共重合体には各種添加剤、例えば帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤などが添加されていても問題ない。これらフィルムの厚みは特に限定されないが、蒸着加工等機械加工適性を考慮した場合6〜100μmが望ましい。
【0045】
本発明の電子レンジ調理用包材に用いるマイクロ波吸収により発熱する金属層としては、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅、などの蒸着薄膜およびアルミニウムと酸化アルミニウム混合層が考えられるが、発熱量及び加熱時スパークの問題からアルミニウムの使用が望ましい。金属蒸着層の厚さは、発熱量および加熱時スパークが発生しないように適宜設定される。
【0046】
本発明の電子レンジ調理用包材に用いる紙などからなる基材としては、特に加工適性の面からは、坪量30〜80g/m2程度で、比較的耐熱性を有する、例えば、未晒中性紙の使用が望ましい。
【0047】
上記の紙基材を支持体として、上記の金属蒸着面にドライラミネーション等の周知の方法で貼合するが、これには通常接着剤を用いる。接着剤としては、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の食品包材用途として、一般的に用いられるものであれば、特に制限はないが、耐熱性を考慮した場合はウレタン樹脂またはポリエステル・ポリウレタン樹脂の使用が望ましい。
【0048】
次に、本発明の電子レンジ調理用包材の作成方法の一例について説明する。
耐熱プラスチック層(3)として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、連続式真空蒸着機を用いて金属蒸着層(4)としてアルミニウム蒸着層を設けて薄膜アルミニウム蒸着を施したフィルムを作成し、この蒸着面にシリコン系接着剤を介して、紙基材として中性紙を貼合して電子レンジ調理用包材の連続巻き取りシート(10)を作成する。
【0049】
この時に、連続式真空蒸着機での蒸着加工時に二軸延伸PETフィルムの非蒸着部(5)をマスキングして図2に示すような連続巻き取りシート(10)に用いる薄膜アルミニウム蒸着を施したフィルムを作成することが出来る。
【0050】
また、図2に示すような連続巻き取りシートを作成するためには、アルミニウム蒸着層の蒸着後に、蒸着面に所定幅のニス印刷を行い印刷部以外の蒸着層をエッチング加工で溶解して非蒸着部分を形成するパスター加工法によっても非蒸着部を有する、図2に示すような連続巻き取りシート(10)に用いる薄膜アルミニウム蒸着を施したフィルムを作成することが出来る。
【0051】
または、蒸着前に水溶性ニスで非蒸着部分のパターンを二軸延伸PETフィルムの片面に印刷してその上から全面にアルミニウム蒸着層を蒸着した後に水洗して非蒸着部分を形成するシーライト加工法によっても、図2に示すような連続巻き取りシート(10)に用いる薄膜アルミニウム蒸着を施したフィルムを作成することが出来る。
【0052】
このようにして作成した薄膜アルミニウム蒸着を施したフィルムに紙基材を貼り合わせる前に、上記フィルムと紙基材として中性紙(30〜80g/m)をドライラミネートする。この時に第一給紙部から巻き出された上記のPETフィルムに接着剤を塗布して乾燥後第二給紙から巻き出された紙基材と貼り合せる工程でPETフィルムにかかる流れ方向の張力を通常より大きくして延伸した状態で貼り合せることによって、巻き戻した時にPETフィルム側(巻き取り内面)に凹状にカールする性質をシートに付与することが出来る。
【0053】
図3(B)に示したように、たとえば、PETフィルムにかかるインフィードテンションを通常の約20%から40%強めにすることによって、50mm角に切り出した連続巻き取りシートを平面上に放置した場合に高さCが20mm以上になる程度、PETフィルム(3)側の内面側にカールする性質を電子レンジ調理用包材に付与することが可能となる。
【0054】
また、作成した薄膜アルミニウム蒸着を施したフィルムに紙基材を貼り合わせた後に、貼り合せた連続巻き取りシート(10)の全面あるいは連続巻き取りシート(1)の両端部に位置する部分に細かいミシン目加工等のキズ加工を施して、任意の位置で横方向に容易にカットできる機能を付与することが出来る。
【0055】
図4には、本発明の電子レンジ調理用包材のミシン目加工を示す概略図を示した。図4(A)は連続巻き取りシート(1)の両端部にミシン目加工(6)を施した場合の概略図
、図4(B)は全面にミシン目加工(6)を施した場合の概略図である。
これらのキズ加工は連続巻き取りシート(10)のスリッタ後でも可能であるが、効率の点からはスリッタと同時に行うことが望ましい。
【0056】
また、作成した薄膜アルミニウム蒸着を施したフィルムに紙基材を貼り合わせた後に、貼り合せた連続巻き取りシート(10)の全面に横方向のデッドホールド性(形状保持性)を付与するための連続的な細かい凹凸加工をエンボスによって与えることが出来る。
【0057】
図5には本発明の電子レンジ調理用包材のデッドホールド性付与の概略図を示した。図5(A)は概観図、図5(B)は断面模式図である。
図5において凹凸エンボス加工(7)の高さ(H)は0.5mmから2mmの範囲であり、凹凸エンボス加工のピッチ(P)は2mmから6mmの範囲である。このような凹凸はエンボス型と加圧により連続的に容易に形成することができる。
連続的な波状の凹凸エンボス加工を施したことにより、電子レンジ調理用包材を加熱対象物に巻き付けた時にシートの変形状態を保持することによって簡単には外れにくくなるという効果を奏する。
【0058】
このようにして作成した連続巻き取りシート(10)をスリットして本発明の電子レンジ調理用包材(1)とすることが出来る。
スリットの位置は図2(B)に3行取りの場合を示したように、幅(2b)の非蒸着部(5)の中心である。連続巻き取りシート(10)の幅両端はあらかじめ幅(b)に耳取りをしておいてもよいが、幅方向のスリットの位置精度を考慮すると図示していないが両端も同時にスリットするのが通常である。スリット工程として3行取りの場合を図示したが、取り行数が3行に限られないのは当然である。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の電子レンジ調理用包装材料の実施形態の一例を説明する。
<実施例1>
<電子レンジ調理用包装材料の作成>
【0060】
連続巻き取り式真空蒸着機を用いて、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(E5100:東洋紡)の片面にアルミニウムの薄膜(膜厚60Å)蒸着を行った。
この時にフィルムの幅方向の所定位置に非蒸着部を形成するためのストライプ蒸着を行い、蒸着部と幅10mmの非蒸着部がストライプ状に幅方向に50mmのピッチで交互に存在する蒸着フィルムとした。
【0061】
ドライラミネーターを用いて、上記の蒸着フィルムを第一給紙から、坪量50g/m2の中性紙(M中性紙:天満特殊製紙)を第二給紙から繰り出して接着剤としてウレタン系接着剤(A525:武田薬品工業)を用いて乾燥および加圧を経てドライラミネートを行い本発明の電子レンジ調理用包装材料の中間製品であるサセプターの連続巻取りシートを作成した。
【0062】
上記ドライラミネート工程において、ラミネート時に第一給紙の蒸着フィルムに対して流れ方向の張力を通常よりもの30%大きい状態で第二給紙の中性紙と貼り合せ、さらに、蒸着フィルムの非蒸着部分に対応する貼り合せ後のシートの位置に、幅方向の細かいミシン目加工を施した。
【0063】
貼り合せ後の巻取りシートを巻戻して、指定寸法(50mm×50mm)にカットして水平面に置いたところ、蒸着フィルム側が凹部となるようにカールしてその高さが23mmであった。
【0064】
つぎに、上記の連続巻取りシートを非蒸着部の幅方向の中心位置および両端部の5mmの位置でスリットして蒸着フィルム側が内面となるように巻取り、幅50mmで巻き長さ50mの電子レンジ調理用包装材料とした。
<電子レンジ調理用包装材料の使用>
【0065】
図6には本発明の電子レンジ調理用包装材料の使用例として電子レンジで焼きさんまを作る場合の巻き付け状態を模式的に示した。電子レンジは通常の600Wのものを用いた。
【0066】
調理対象としては、サイズの異なる3種類の大きさの生さんまを用いた。Mサイズ(重量130〜150g、長さ28〜32cm)、Lサイズ(重量140〜160g、長さ30〜34cm)、LLサイズ(重量150〜170g、長さ32〜35cm)のうちから適宜選択した3種類である。
【0067】
図6のようにさんま(10)に電子レンジ調理用包装材料(1)を蒸着フィルム側を内側に巻付け適当な長さ(約0.5m)で切断して巻き付けを完了したら電子レンジ内部に入れた。
この時に、本発明の電子レンジ調理用包装材料は連続巻取りシートから巻き戻した際に内側にカールするので、さんまのような凹凸のある対象にも密着して巻き付けることが簡単に可能であった。
【0068】
またMサイズからLLサイズまでの大きさの異なる対象であっても、巻き付ける電子レンジ調理用包装材料の長さが若干異なるだけで同じような操作で対象に密着した巻き付けが出来た。この時に電子レンジ調理用包装材料に細かいミシン目が入っているので、巻き終わりの任意の長さの位置で容易にカットすることが出来たので材料の無駄も最小限に抑えられた。
【0069】
長い電子レンジ調理用包装材料を必要な分だけ任意の位置で容易にカットして使うことが出来る長尺(50m)の巻取りであり、かつ細い幅(50mm)の1本づつの巻取りになっているので、複雑な切断等を要しない簡単な手作業で効率的に使用することが出来た。
【0070】
つぎに、電子レンジ調理用包装材料を巻き付けたさんまを電子レンジで600W4分間〜5分間加熱した。これによって、さんま全体に焼き目がつき、さんまから出た余分な油が下の皿に落ち、さんまの皮全体がカリッとした食感に仕上がった。
特に、巻き付けた部分全体が同じように焦げ目が付いていながら、電子レンジ調理用包装材料の巻き付けが重なった部分でも異常に過熱することなく自然な仕上がりを得ることが出来た。
【0071】
このように本発明の電子レンジ調理用包装材料を用いることによって、食材に合わせてサセプターを任意の長さで巻き付け、電子レンジで加熱することによって、食材表面への均一な加熱を行うことと同時に食材表面にカリット感を付与して食感を向上させることが可能である。調理の対象は表面に凹凸のあるものも含めて多岐に渡る。
【0072】
たとえば、から揚げ、焼き鳥等の肉系食品、フライドポテト、野菜(レンコン、にんじん、たまねぎ等)等の穀類、おにぎり等の米飯類、太刀魚、うなぎ、あなご、めざし、ししゃも等の魚類、その他ホットサンドイッチ、玉子焼き等が挙げられる。
【符号の説明】
【0073】
1…電子レンジ調理用包材(巻取)
2…基材(紙)
3…耐熱性プラスチック層(PETフィルム)
4…金属層(アルミ蒸着部)
5…非アルミ蒸着部
6…ミシン目加工
7…凹凸エンボス加工
10…Mサイズのさんま
a…蒸着幅
b…非蒸着幅
C…カール量
S…スリット位置
P…凹凸ピッチ
H…凹凸高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を蒸着してなりマイクロ波吸収により発熱する金属層と、この金属層を覆う耐熱プラスチック層とからなる発熱体を紙基材に設けた、前記発熱体と基材が一体となった連続巻き取りシートであることを特徴とする電子レンジ調理用包材。
【請求項2】
前記連続巻き取りシートの長手方向の両端部の幅5mmから10mmには金属層が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項3】
前記連続巻き取りシートの耐熱プラスチック層面側に、50mm×50mmで切断放置時に内面20mm以上の凹カールを生じる性質を付与したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項4】
前記連続巻き取りシートの耐熱プラスチック層がポリエチレンテレフタレートフィルムであり、基材が坪量30g/mから80g/mの中性紙であり、シートの全面もしくは長手方向の両端面に、キズ加工を連続的に施したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項5】
前記連続巻き取りシートに高さ0.5mmから2mmでピッチ2mmから6mmの連続的な波状の凹凸エンボス加工を施したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項6】
前記連続巻き取りシートの巻き取りの長さが1mから50mであり幅が20mmから100mmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子レンジ調理用包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84293(P2011−84293A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236982(P2009−236982)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】