説明

電子ロック装置

【課題】既設の器具における機械式施錠手段を電子的に補強する電子ロック装置を提供すること。
【解決手段】電子鍵によりデッドボルト212を出入させて施錠、解錠する電子錠200と、施錠を要する器具の機械鍵であって、前記電子錠のデッドボルトが出入する空間123および前記機械鍵を操作するためのつまみを持った本体126に組み込まれた鍵100と、前記電子錠および前記鍵を相互に係合した形で前記器具に取り付ける係合手段121と、をそなえた電子ロック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象器具に取り付けて電子的に施錠、解錠を行う電子ロック装置に係わり、とくに対象器具の機械錠を電子的にロックする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロッカとかキャビネット等の収納器具または什器に電子的に施錠する装置が提供されている(特許文献1,2参照)。一方、既設の収納器具であって機械式の錠が設けられたもののセキュリティ性能を向上しようとすると、更に機械式錠前とか、電子式錠前を増設して二重化することとなる。
【特許文献1】特開2004-250954号公報
【特許文献2】特開2007-239176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような増設は、ときには大掛かりな工事を必要とし、簡便に設置することができない。
【0004】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、既設の器具における機械式施錠手段に電子錠と同程度のセキュリティ性を持たせた電子ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的達成のため、本発明では、
電子鍵によりデッドボルトを出入させて施錠、解錠する電子錠と、
施錠を要する器具の機械鍵であって、前記電子錠のデッドボルトが出入する空間および前記機械鍵を操作するためのつまみを持った本体に組み込まれた鍵装置と、
前記電子錠および前記鍵装置を相互に係合した形で前記器具に取り付ける係合手段と、
をそなえた電子ロック装置、
を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上述のように、既設器具に備わる機械錠を電子錠で拘束する電子ロック装置として構成されているため、いわゆる外付けで簡便に高度のセキュリティを有する施錠装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0008】
図1(a),(b),(c)は、本発明の第1の実施例の構成を示す平面図、左側面図および底面図である。
【0009】
図1は、例えばキャビネットのような、機械式施錠機構を持った開閉扉を有する収納庫10における、収納庫本体11と扉12との施錠機構に、本発明を適用した状態を示している。
【0010】
図1(a)は収納庫を正面から見た状態を、図1(b)はその下方から見た状態を、また図1(c)は左側面から見た状態をそれぞれ示している。
【0011】
この実施例1は、機械錠100の機械鍵110を電子錠200のデッドボルトによってロックしたりアンロックしたりするため、機械鍵110に、電子錠200と関連付けるための、フランジ121、つまみを持った本体122、およびデッドボルト受け部123が設けられている。
【0012】
フランジ121は、電子錠200の筐体と一部が重なり合っており、電子錠200を取り外さない限り、機械錠100は収納庫10から外れることがないように係合関係を形成している。
【0013】
つまみ部122は、図示では施錠状態の角度位置であり、このときデッドボルト受け部123は図示右側にあり、このデッドボルト受け部123にデッドボルト212の先端が入り込んだ状態になっている。
【0014】
ここで、電子錠200は、筐体の正面中央部の下方に起動ボタン211が、左上隅部から外に向かって突出したデッドボルト212が、そして右上に動作状態を表示するLEDが設けられており、起動ボタン211に電子鍵220を当接させると施錠、解錠を交番的に繰り返す。施錠時はデッドボルト212を突出させて鍵装置100を回動操作できないようにし、解錠時はデッドボルト212を引き込ませて機械錠100を回動操作できるようにする。
【0015】
したがって、機械錠100は、図示しない錠機構部分は既設のものをそのまま利用するが、機械錠100を施錠、解錠する鍵装置は、電子錠200と協働させるための改造がなされている。すなわち、第1点は、電子錠の筐体を利用した取り外し防止構造とするためにフランジ121を設けることであり、第2点は、機械錠100の回動を拘束するために電子錠200のデッドボルト212を受け入れるデッドボルト受け部123を設けることである。
【0016】
一方、機械錠100と協働する電子錠200は、電子鍵220を起動ボタン211に当接させてデッドボルト212を筐体から出入させる点は、一般的な構造および機能であるが、本発明では、さらに収納庫10への取り付け構造で機械錠100との関連性を持たせた構成とする。
【0017】
すなわち、図1(b)に示すように、台座231を介在させて留めねじ232により電子錠200を扉12から若干浮かせて固定することにより、電子錠200と扉12との間にフランジ121が入り込む隙間を形成し、かつデッドボルト212の露出部分が極力少なくなるように機械錠100と電子錠200との間の隙間を少なくする。台座231は、重ね枚数を調節してフランジ121が入り込む隙間の大きさを調節してもよい。
【0018】
なお、電子錠200は、電池駆動方式であるため、電池カバー214が設けられ、また開閉データを通信するためのコネクタ215を有する。
【0019】
このような構成により、図示の状態では、電子錠200のデッドボルト212が筐体から突出して機械錠100の機械鍵110を回動できないように拘束している。このため、高度のセキュリティ性を持った施錠状態となっている。
【0020】
次に、解錠するには、まず電子鍵220を電子錠200の起動ボタン211に当接させてデッドボルト212を筐体内に引き込ませる。この結果、機械錠100は解錠のための回動操作を行うことができるようになる。
【0021】
したがって、実施例1によれば、既設の機械錠式収納庫を電子錠式のセキュリティレベルで開閉を行う収納庫として利用することができる。このため、機械錠では得られない高度のセキュリティ機能を持った電子ロック装置を提供でき、しかも施錠、解錠の記録データを得ることもできる。
【実施例2】
【0022】
図2(a),(b),(c)は、本発明の第2の実施例の構成を示す平面図、左側面図および底面図である。この実施例2は、実施例1におけるフランジ121に換えて、台座231から延び出した抜け止めリング部231Aにより機械錠100の抜け止めとする。これに対応させて、機械錠100には、抜け止めリング部231Aを係合させるための係合溝124を設ける。
【0023】
図3(a),(b)は、この抜け止めリング部231Aの部分を拡大図示したものである。抜け止めリング部231Aは、台座231の一隅から突出しており、小判型(長円形)の孔が開けられている。
【0024】
この孔は、機械錠100の係合溝124に係合させるために、係合溝124の底面が形成する弧に適合するような短径で、長径は係合溝124の寸法に対して余裕を持たせてある。
【0025】
その理由は、機械錠100の取り付け作業の都合による。つまり、機械錠100を抜け止めリング部231Aに係合させる際、台座231は固定しないでおき、電子錠200の筐体端部から少々引き出した状態にして機械錠100を差し込む。次いで、台座231を電子錠200に向けて引き戻し、機械錠100と電子錠200との間に余分な隙間がないような位置にしてから、台座231をねじ留めする。
【0026】
再び図2に戻って説明すると、台座231の抜け止めリング部231Aに機械錠100を組み合わせるために、抜け止めリング部231Aは台座231から外方に突出しているのみならず、厚み方向に屈曲した部分を持ったものでもある。係合溝124の位置に、抜け止めリング部231Aの厚み方向の位置を合わせるためである。
【実施例3】
【0027】
図4(a),(b),(c)は、本発明の第3の実施例の構成を示す正面図、底面図および左側面図である。この実施例3は、機械錠100に対して任意の角度からデッドボルト212を出入させ得るように、機械錠100に対する機械鍵110の差込み溝を複数設けたものである。図示の場合、機械錠100の本体126には、45度間隔で4つの方向の差込み溝125が設けられている。そして、この差込み溝125への機械鍵110の差込み後に、図示しない固定ピンによって機械鍵110をつまみ部122に固定する。
【0028】
このため、図示の状態を機械鍵110と電子錠200との角度が0度であるとすると、45度、90度、135度および180度の4種類の角度関係から一つを選ぶことができる。
【0029】
このため、機械錠100が収納庫の隅に設けられていて電子錠200を取り付けるための広さを持った面が得難い状況でも、機械鍵110の差込む溝125を選んで機械鍵110と電子錠200との角度関係を選べば、機械錠100と電子錠200との角度関係をかなり自由に設定することができる。また、この実施例3では、本体126を機械鍵110が貫通するのみの単純化された構造にしているため、機械錠100の外形が小型にできる。
【0030】
図5(a),(b),(c)は、本発明の第4の実施例を示した縦断面図、横断面図および平面図である。この実施例4は、実施例3の変形例であり、機械錠100の本体126を、機械鍵110の基部をすっぽりと覆うように被せるキャップ状に形成している。
【0031】
そして、本体126は、2段構成とし、フランジ121側が大径部であり、頂部側が小径部である。この2段構成は、電子錠200の電池カバーがスライド式であり、電池カバーを開けるための逃げを設ける必要により採用されたものである。
【変形例】
【0032】
上記実施例1ないし3では、本発明を実施するための代表的な例だけを示したが、これらを適宜組み合わせて実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1(a),(b),(c)は、本発明の第1の実施例の構成を示す平面図、左側面図および底面図。
【図2】図2(a),(b)および(c)は、本発明の第2の実施例の構成を示す平面図、左側面図および底面図。
【図3】図3(a),(b)は、この抜け止めリング部231Aの部分の拡大平面図。
【図4】図4(a),(b)および(c)は、本発明の第3の実施例の構成を示す正面図、底面図および左側面図。
【図5】図5(a),(b)および(c)は、本発明の第4の実施例を示した縦断面図、横断面図および平面図。
【符号の説明】
【0034】
10 収納庫
11 収納庫本体
12 扉
100 機械錠
110 機械鍵
121 フランジ
122 つまみ部
123 受け部
124 係合溝
125 差込み溝
126 本体
200 電子錠
211 起動ボタン
212 デッドボルト
213 LED
214 電池カバー
215 通信コネクタ
231 台座
231A 抜け止めリング部
232 留めねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子鍵によりデッドボルトを出入させて施錠、解錠する電子錠と、
施錠を要する器具の機械鍵であって、前記電子錠のデッドボルトが出入する空間および前記機械鍵を操作するためのつまみを持った本体に組み込まれた鍵装置と、
前記電子錠および前記鍵を相互に係合した形で前記器具に取り付ける係合手段と、
をそなえた電子ロック装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子ロック装置において、
前記係合手段は、前記本体の周縁に設けられたフランジとして形成されたことを特徴とする電子ロック装置。
【請求項3】
請求項1記載の電子ロック装置において、
前記係合手段は、前記電子錠に固定される台座部および前記鍵装置に係合する延び出し部を有することを特徴とする電子ロック装置。
【請求項4】
請求項1記載の電子ロック装置において、
前記本体は、前記鍵装置を前記電子錠に対して任意の角度をなすように取り付け得る複数の溝を持ったことを特徴とする電子ロック装置。
【請求項5】
請求項1記載の電子ロック装置において、
前記本体は、前記鍵装置に被せるキャップ形であることを特徴とする電子ロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−37720(P2010−37720A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198048(P2008−198048)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000120076)URO電子工業株式会社 (19)