説明

電子内視鏡システム

【課題】小型で、かつ効率的な洗浄が容易な電子内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】スコープ部100aと、生体の外部に設置される生体外装置200と、スコープ部100aと生体外装置200とを接続する接続コード部100bと、を有する電子内視鏡システム10であって、生体外装置200と、接続コード部100bとは、それぞれ気密かつ水密に構成されているパッド109、110、201、214と、それぞれのパッドを対向して近接させるための接続部151、250と、を有し、さらに、対向している一対のパッド間において信号の通信を行うために、一方のパッドに信号を変調して電圧印加する第1の変調ユニット106と、他方のパッドの電位変化から信号復調する第1の復調ユニット202と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に導入した装置と生体外に設置した装置との間で、生体内の情報や電力を通信する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡を用いて、生体、特に人間の体内を検査、治療する分野においては、生体内に関する情報を、生体外へ通信している。また、生体外に配置されている装置、例えば電源装置から電力等を電子内視鏡(スコープ部)へ伝達することも行なわれている。なお、人体へ挿入するタイプの電子内視鏡システムにおいて、挿入部と、挿入部を操作する操作部とを含む構成を、適宜「スコープ部」と言う。また、「スコープ部」とユニバーサルコードとを含んだ構成を、適宜「電子内視鏡」と言う。さらにた、「電子内視鏡」と、生体外に配置されている電源装置、ビデオプロセッサ装置等の装置とを含んだ構成を、適宜「電子内視鏡システム」と言う。
【0003】
例えば、生体外装置からスコープ部への電力供給を、生体外装置とスコープ部との間に設けた巻線により電磁誘導で行う構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された構成では、生体外装置とスコープ部との間における映像信号及び制御信号の伝達は、これらの信号を無線周波数に変調した後、有線または無線(電波)で伝達し、復調することで行っている。
【0004】
また、スコープ部と生体外装置との間の信号伝送を光学インターフェースで行う構成も提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、さらに生体外装置からスコープ部への電力供給は電磁結合(電磁誘導)で行っている。
【0005】
また、スコープ部の挿入部先端のセンサユニットからの出力をRFIDによって外部に送信する構成も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−159833号公報
【特許文献2】特許第3615890号公報
【特許文献3】特開2002−336192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子内視鏡システムは、体内へ挿入したスコープ部を、他の患者に対して再使用している。このため、電子内視鏡や処置具を介して患者間感染が発生することを防止することが必要となる。従って、検査・処置終了後に電子内視鏡、特にスコープ部の洗浄消毒を行なっている。
【0008】
電子内視鏡の洗浄消毒には、洗浄用のガス(気体)や薬液(液体)を用いる。このため、電子内視鏡は、気密かつ水密(防水)な構成であることが望ましい。
【0009】
さらに、電子内視鏡の洗浄消毒を容易かつ効率的に行なうためには、電子内視鏡と生体外装置との接続部、スコープ部とユニバーサルコードとの接続部が、小型で、洗浄容易な形状であることが望ましい。
【0010】
特許文献1に開示されているような、電力供給を電磁誘導で行い、映像信号及び制御信号を電波で送受信し送信する構成では、接点数を最小にし、接続ピンの接続不良や破損を防止することができる。
【0011】
しかしながら、電磁誘導による電力供給のための巻線により接続部が大型化してしまう。このため、電子内視鏡の洗浄が容易ではない。さらに、巻線は電磁ノイズの発生源ともなってしまうため好ましくない。このように、映像信号及び制御信号の電波による送受信は、送受信のためのアンテナ等によりスコープ部などが大掛かりとなってしまい、洗浄が容易な構造が得られにくい。さらに、電気メス等の他の医療機器が発生するノイズに弱いうえに、電波法による規制や、病院内の他の医療機器への悪影響防止のための制限も多いという制約を受けてしまう。
【0012】
また、特許文献2に開示されているような、電力供給を電磁誘導で行い、信号伝送を光インターフェースで行う構成では、洗浄を容易するための気密な構造を得ることができる。
【0013】
しかしながら、電磁誘導による電力供給のための巻線が必要となる。このため、スコープ部と生体外装置との接続部が大型化してしまう。この結果、洗浄が容易な構造が得られにくい。また、光インターフェースによる信号伝送では、洗浄の本来の目的である消毒・滅菌に加えて、光インターフェース部を光学的なロスが生じないように洗浄する必要がある。このためにも、洗浄が容易な構造が得られにくい。
【0014】
また、特許文献3に開示されているような、スコープ部の挿入部先端のセンサユニット、例えば温度センサや圧力センサの出力をRFIDによって外部に送信する構成では、センサユニットに関して洗浄を容易するための気密な構造を得ることができる。
【0015】
しかしながら、特許文献3には、スコープ部から生体外装置へ画像情報を送信する構成、及び生体外装置からスコープ部へ電源を供給する構成に関する具体的な記述が全くない。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電子内視鏡(スコープ部)や生体外装置に関して、電磁誘導のための巻線や電波送受信のためのアンテナの設置等で大掛かりにする必要がなく、小型で、かつ効率的な洗浄が容易な電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも一部が生体の内部に挿入される生体内装置と、生体の外部に設置される生体外装置と、生体内装置と生体外装置とを接続する接続コード部と、を有する電子内視鏡システムであって、生体内装置と生体外装置との少なくともいずれか一方の装置と、接続コード部とは、それぞれ気密かつ水密に構成されているパッドと、それぞれのパッドを対向して近接させるための接続部と、を有し、さらに、対向している一対のパッド間において信号の通信を行うために、一方のパッドに信号を変調して電圧印加する変調手段と、他方のパッドの電位変化から信号復調する復調手段と、を有することを特徴とする電子内視鏡システムを提供できる。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、パッドと接続部とは、それぞれ接続コード部と生体外装置とに設けられていることが望ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい態様によれば、パッドと接続部とは、それぞれ接続コード部と生体内装置とに設けられていることが望ましい。
【0020】
また、本発明の好ましい態様によれば、パッドと接続部とは、それぞれ接続コード部と生体内装置、及び接続コード部と生体外装置に設けられていることが望ましい。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、少なくとも一対のパッドが通信する信号は、電力の伝達のための信号であることが望ましい。
【0022】
また、本発明の好ましい態様によれば、少なくとも一対のパッドが通信する信号は、映像信号であることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電子内視鏡システムによれば、一対のパッドとの間で、一方の装置、接続コード部ではパッドに信号を変調して電圧印加する。また、他方の装置、接続コード部では、パッドの電位変化から信号を復調する。これにより、例えば、スコープ部等の生体内装置と接続コード部との間、接続コード部と生体外装置との間においては、電波や電流を用いずに情報の通信を行うことができる。このため、例えば、生体内装置から生体外装置へ情報を通信するとき、生体内装置に関しては、アンテナや送信回路が不要となる、従って、生体内装置を小型化できる。また、生体外装置に関しても、被検体、例えば患者の体の周辺に多数の受信用のアンテナを配置する構成や微弱電流の検出、復調回路が必要ない。従って、生体内外の装置をアンテナの設置などで大掛かりにする必要がない。この結果、小型な電子内視鏡システムを提供することができる。また、一対のパッドは、それぞれ気密かつ水密な構成を有している。このため、洗浄用のガス(気体)や薬液(液体)を用いて、生体内装置や接続コード部を洗浄消毒するとき、わざわざ防水キャップ等で接続部分を封止する必要がない。さらに、上述のように小型な構成であるため、生体内装置、接続コード部の洗浄消毒を容易かつ高効率に行なうことができる。このように、本発明によれば、電子内視鏡(スコープ部)や生体外装置に関して、電磁誘導のための巻線や電波送受信のためのアンテナの設置等で大掛かりにする必要がなく、小型で、かつ効率的な洗浄が容易な電子内視鏡システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明に係る電子内視鏡システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係る電子内視鏡システム10の概略構成を示す図である。電子内視鏡システム10は、電子内視鏡100と生体外装置200とから構成されている。電子内視鏡100は、スコープ部100aと接続コード部100bとを備えている。また、生体外装置200は、電源装置と、電子内視鏡100からの映像信号を処理するビデオプロセッサ(不図示)と、ビデオプロセッサからの映像信号をモニタ表示する表示ユニット204とを備えている。なお、スコープ部100aは、生体内装置に対応する。
【0026】
スコープ部100aは、操作部140と挿入部141に大別される。挿入部141は、細長で患者の体腔内へ挿入可能な可撓性を有する部材で構成されている。使用者(不図示)は、操作部140に設けられているアングルノブ等により、諸操作を行うことができる。
【0027】
また、操作部140からは、接続コード部100bが延設されている。接続コード部100bは、ユニバーサルコード150とコネクタ151とを備えている。なお、接続コード部100bのスコープ部100a側の端部は、操作部140に対して一体的に形成されている。これに対して、接続コード部100bの生体外装置200側の端部には、コネクタ151が形成されている。
【0028】
ユニバーサルコード150は、コネクタ151、250を介して生体外装置200に接続されている。コネクタ151、250の詳細については、後述する。
【0029】
また、ユニバーサルコード150は、電源装置やビデオプロセッサからの電源電圧信号及びCCD駆動信号等をスコープ部100aに通信すると共に、スコープ部100aからの映像信号をビデオプロセッサに通信する。なお、生体外装置200内のビデオプロセッサには、図示しないVTRデッキ、ビデオプリンタ等の周辺機器を接続可能である。ビデオプロセッサは、スコープ部100aからの映像信号に対して所定の信号処理を施して、表示ユニット204の表示画面上に内視鏡画像を表示できる。
【0030】
図2は、電子内視鏡100の機能ブロックを示している。また、図3は、生体外装置200の機能ブロックを示している。本実施例では、電子内視鏡100と生体外装置200との間で双方向の信号通信が可能である。まず、電子内視鏡100から生体外装置200への信号通信について説明し、次に、生体外装置200から電子内視鏡100への信号通信について説明する。
【0031】
電子内視鏡100は、生体の内部を撮影する際に撮像領域を照射するためのLED101と、LED101の駆動状態を制御するLED駆動回路102と、LED101によって照射された生体の領域の撮像を行なうCCD103とを備えている。また、電子内視鏡100は、CCD103の駆動状態を制御するCCD駆動回路104と、CCD103によって撮像された画像データ(映像信号)等を処理する第1の信号処理ユニット105と、第1の信号処理ユニット105からの生体内情報信号を変調する第1の変調ユニット106と、第1の変調ユニット106からの変調された電圧が印加される第1のパッド109と、LED駆動回路102、CCD駆動回路104、第1の信号処理ユニット105及び第1の変調ユニット106の動作を制御するシステムコントロール回路107とを備えている。また、電源ユニット108は、後述する生体外装置200からの電源電圧信号に応じて、電子内視鏡100内の各ユニット、回路等に対して電力を供給する。
【0032】
CCD103は、生体内の画像情報などの生体内情報を取得する。CCD103は、撮像部に対応し、生体内情報センサとしての機能を有する。撮像部としては、CCD103の他にCMOS等を用いることができる。撮像部の近傍には、透明な材質で形成された窓が設けられている。撮像部は、窓を通して生体内画像を撮像する。
【0033】
CCD103は、CCD駆動回路104に接続されている。CCD駆動回路104は、CCD103が生体内情報を取得するための動作信号をCCD103へ出力する。CCD103は、第1の信号処理ユニット105に接続されている。第1の信号処理ユニット105は、生体内情報処理装置としての機能を有する。第1の信号処理ユニット105は、例えばCCD103からの出力の画像化回路やデータ圧縮回路などで構成されている。そして、第1の信号処理ユニット105は、CCD103の出力信号から生体内情報信号を生成し出力する。
【0034】
システムコントロール回路107を介してCCD駆動回路104と、第1の信号処理ユニット105とは、第1の変調ユニット106へ接続されている。第1の変調ユニット106は、第1の信号処理ユニット105の出力信号を変調して第1のパッド109に電圧印加する。変調方式は、AM変調、FM変調、PM変調などの一般的な変調方式であれば何でも良い。ここで、第1のパッド109は、気密かつ水密な構成となっている。
【0035】
次に、生体外装置200について説明する。生体外装置200は、第1の復調ユニット202と、第2の信号処理ユニット203と、記録ユニット205と、電源ユニット207とを備えている。第1の復調ユニット202は、第3のパッド201の表面の電位変化から、第1の信号処理ユニット105の出力信号を復調する。
【0036】
第1のパッド109に対して第1の信号処理ユニット105の出力信号を変調した電圧印加することによって、第3のパッド201の表面の電位に変化が生ずる。第1の復調ユニット202は、第1の信号処理ユニット105の出力信号を復調する。これにより、電子内視鏡100側から生体外装置200側への通信を実現できる。
【0037】
第1の復調ユニット202は、第2の信号処理ユニット203に接続されている。第2の信号処理ユニット203は、例えば画像情報の補正/強調回路や圧縮データの復元回路などである。第2の信号処理ユニット203は、第1の復調ユニット202により復調された第1の信号処理ユニット105の出力信号に基づいて、必要な生体内情報、例えば映像情報を得るための信号処理を行う。
【0038】
また、第2の信号処理ユニット203は、表示ユニット204に接続されている。表示ユニット204は、例えば液晶ディスプレイなどのモニタである。表示ユニット204は、第2の信号処理ユニット203で処理された生体内情報を表示する。なお、図1では、表示ユニット204を生体外装置200とは別体に設けている。しかしながら、これに限られず、表示ユニット204を生体外装置200に設ける構成でも良い。
【0039】
第1の復調ユニット202または第2の信号処理ユニット203には、記録ユニット205が接続されている。記録ユニット205は、例えば半導体メモリなどで構成されている。記録ユニット205は、第1の復調ユニット202により復調された第1の信号処理ユニット105の出力信号または第2の信号処理ユニット203で処理された生体内情報を記録、保管する。
【0040】
また、電源ユニット207は、第1の復調ユニット202と、第2の信号処理ユニット203と、記録ユニット205とに電力を供給する。
【0041】
本実施例によれば、電子内視鏡100と生体外装置200とは、電波や電流によらずに、生体内情報を体外へ通信できる。本願の発明者らは、静電誘導等により、情報を通信できるものと考えている。そして、発明者らは、実際の装置を作成し、上述したような通信が可能であることを実験的に確認、検証している。
【0042】
このように、本実施例では、電子内視鏡100及び生体外装置200において、それぞれアンテナや送信回路の設置などで大型化する必要がない。このため、生体、例えば患者の負担を軽減した小型な電子内視鏡システムを提供できる。
【0043】
さらに、本実施例では、電子内視鏡100側に形成された第1のパッド109と、生体外装置200側に形成された第3のパッド201とは、静電結合するように対向する位置に配置されている。同様に、後述する電子内視鏡100側に形成された第2のパッド110と、生体外装置200側に形成された第4のパッド214とは、静電結合するように対向する位置に配置されている。
【0044】
そして、コネクタ151とコネクタ250とは、例えば、ねじによる螺合機構、磁石による脱着機構、ラッチ機構などにより、脱着可能に構成されている。なお、コネクタ151、250は、接続部に対応する。
【0045】
また、本実施例では、図4に示すように、第1のパッド109、第2のパッド110は、それぞれ板状の導電体の表面を絶縁体152で覆った構造となっている。そして、電子内視鏡100はコネクタ151を含め密封構造となっている。絶縁体152の厚さは例えば1mm以下程度である。
【0046】
図5は、コネクタ151を正面から見た構成を示している。図5に示すように、円形の第1のパッド109を構成する導電体の外周に環状の第2のパッド110を構成する導電体が形成されている。しかしながら、これに限られず、第1のパッド109と第2のパッド110とを横に並べて配置する等の他の配置構成をとることもできる。
【0047】
さらに、電子内視鏡100側の第1の変調ユニット106と、生体外装置200側の後述する第2の変調ユニット213とで、それぞれ異なる変調周波数を用いることで、第1のパッド109と第2のパッド110とを一つのパッドで兼用すること、即ち一つの導電体で済む構成とすることもできる。
【0048】
次に、生体外装置200から電子内視鏡100への信号の通信について説明する。図3において、生体外装置200は、さらに電源信号発生器210と、CCD制御ユニット212と、信号多重ユニット211とを備えている。電源信号発生器210は、所定の周波数の電源電圧信号を出力する。CCD制御ユニット212は、CCD103への制御信号、例えば、CCD感度の制御信号等を出力する。
【0049】
信号多重ユニット211は、電源信号発生器210が出力した電源電圧信号に対して、CCD制御ユニット212が出力したCCD103への制御信号を重畳し出力する。信号多重ユニット211は、第2の変調ユニット213に接続されている。また、第2の変調ユニット213は、第4のパッド214に接続されている。第2の変調ユニット213は、信号多重ユニット211の出力信号を変調して第4のパッド214に電圧印加する。
【0050】
次に、図2に戻って説明を続ける。第2のパッド110は、電子内視鏡100内に設けられている共振ユニット111に接続されている。共振ユニット111は、電気的共振により第2のパッド110の電位変化から第2の変調ユニット213が変調した周波数成分を抽出し出力する。
【0051】
共振ユニット111は、信号分離ユニット112に接続されている。信号分離ユニット112は、第2の復調ユニット113と第3の復調ユニット114とに接続されている。
【0052】
信号分離ユニット112は、共振ユニット111により抽出し出力した第2のパッド110の電位変化を、電源電圧信号成分と、CCD103への制御信号成分とに分離する。そして、信号分離ユニット112は、電源電圧信号成分を第2の復調ユニット113へ出力する。また、信号分離ユニット112は、CCD103への制御信号成分を第3の復調ユニット114に出力する。
【0053】
第2の復調ユニット113は、信号分離ユニット112が出力した第2のパッド110の電位変化電圧の信号成分に基づいて、電源信号発生器210が出力した電源電圧信号を復調する。
【0054】
第2の復調ユニット113は、電源ユニット108に接続されている。電源ユニット108は、第2の復調ユニット113が復調した電源電圧信号から、システムコントロール回路107を介して、電子内視鏡100内の各ユニット、回路等を動作させるための電源を供給する。
【0055】
このように、第4のパッド214に電源信号発生器210が出力した電源電圧信号に、CCD制御ユニット212が出力したCCD103へ制御信号を重畳した信号を変調した電圧を印加する。そして、電子内視鏡100側では、これにより生じた第2のパッド110の表面の電位変化から、電源信号発生器210が出力した電源電圧信号を分離、復調する。これにより、生体外装置200から電子内視鏡100へ電力を供給できる。この結果、本実施例の電子内視鏡システムでは、例えば、電磁誘導による電力供給と比較しても巻線等でシステムを大型化することがない。
【0056】
さらに、第3の復調ユニット114は、信号分離ユニット112が出力した第2のパッド110の電位電圧変化の信号成分から、CCD制御ユニット212が出力したCCD103の制御信号を復調する。
【0057】
第3の復調ユニット114は、CCD駆動回路104に接続されている。復調されたCCD制御ユニット212からのCCD103への制御信号、例えば、感度制御の指示信号等に基づき、CCD103を駆動する。
【0058】
このように、第4のパッド214に、電源信号発生器210が出力した電源電圧信号に、CCD制御ユニット212が出力したCCD103への制御信号を重畳した信号を変調した電圧を印加する。そして、電子内視鏡100側では、これにより生じた第2のパッド110の表面の電位変化から、CCD制御ユニット212が出力したCCD103への制御信号を分離、復調する。これにより、生体外装置200から電子内視鏡100への信号通信を実現できる。この結果、本実施例の電子内視鏡システムでは、電波送受信のためのアンテナの設置等でシステムを大型化することがない。
【0059】
また、パッド109、110により電子内視鏡100に必要な気密かつ水密な構成を実現できる。従って、本実施例では、洗浄時にコネクタ151に、別途、防水キャップを被せることも必要ない。さらに、コネクタ151は、小型で凹凸の少ない簡素な形状を有している。この結果、電子内視鏡100の洗浄を容易かつ効率良く行うことができる。
【0060】
次に、本実施例における上述の信号の流れをフローチャートに基づいて、さらに詳細に説明する。図6、図7は、それぞれ本実施例における信号の流れを示すフローチャートである。
【0061】
ステップS601において、電源信号発生器210は、信号多重ユニット211へ所定の周波数の電源電圧信号を出力する。ステップS602において、CCD制御ユニット212は、信号多重ユニット211に対してCCD103への制御信号を出力する。
【0062】
ステップS603において、信号多重ユニット211は、電源信号発生器210が出力した電源電圧信号に、CCD制御ユニット212が出力したCCD103への制御信号を重畳し、第2の変調ユニット213へ出力する。
【0063】
ステップS604において、第2の変調ユニット213は、信号多重ユニット211の出力信号を変調して第4のパッド214へ電圧印加する。
【0064】
ステップS605において、第4のパッド214に印加された信号多重ユニット211の出力信号を変調した電圧により、第2のパッド110の表面の電位が変化する。
【0065】
ステップS606において、共振ユニット111は、電気的共振により第2のパッド110の電位変化から第2の変調ユニット213が変調出力した周波数成分を抽出し、信号分離ユニット112に出力する。
【0066】
ステップS607において、信号分離ユニット112は、共振ユニット111により抽出した第2のパッド110の電位変化を、電源電圧信号成分とCCD103への制御信号成分とに分離する。
【0067】
ステップS608において、信号分離ユニット112は、信号分離ユニット112で分離した電源電圧信号成分を第2の復調ユニット113に出力する。
【0068】
ステップS609において、第2の復調ユニット113は、第2のパッド110の電位変化から、電源信号発生器210が出力した電源電圧信号を復調する。そして、復調された電源電圧信号(電力)は、電源ユニット108を介して、電子内視鏡100内の各ユニット、各回路等に供給される。
【0069】
また、ステップS610において、信号分離ユニット112は、CCD103への制御信号成分を第3の復調ユニット114へ出力する。ステップS611において、第3の復調ユニット114は、第2のパッド110の電位変化から、CCD制御ユニット212が出力したCCD103への制御信号を復調する。そして、第3の復調ユニット114は、CCD駆動回路104に対して復調した制御信号を出力する。
【0070】
次に、図7のステップS612において、CCD駆動回路104がCCD103へ駆動信号を出力する。ステップS613において、CCD103は、生体内情報を取得(撮像)する。そして、CCD103は、取得した生体内情報を第1の信号処理ユニット105へ出力する。
【0071】
ステップS614において、第1の信号処理ユニット105は、CCD103の出力信号から生体内情報信号を生成する。そして、第1の信号処理ユニット105は、生成した生体内情報信号を第1の変調ユニット106へ出力する。
【0072】
ステップS615において、第1の変調ユニット106は、第1の信号処理ユニット105の出力信号を変調する。そして、第1の変調ユニット106は、変調した出力信号に応じて第1のパッド109に電圧印加する。
【0073】
ステップS616において、第1のパッド109に印加された第1の信号処理ユニット105の出力信号を変調した電圧により、第3のパッド201の表面の電位が変化する。
【0074】
ステップS617において、第1の復調ユニット202は、第3のパッド201の表面の電位変化に基づいて、第1の信号処理ユニット105の出力信号を復調する。そして、第1の復調ユニット202は、復調された出力信号を第2の信号処理ユニット203に出力する。
【0075】
ステップS618において、第2の信号処理ユニット203は、第1の復調ユニット202により復調された第1の信号処理ユニット105の出力信号から、必要な生体内情報を得るための信号処理を行なう。
【0076】
ステップS619において、第2の信号処理ユニット203は、信号処理で得られた生体内情報を表示ユニット204へ出力する。ステップS620において、表示ユニット204は、生体内情報を表示する。
【0077】
ステップS621において、第2の信号処理ユニット203は、信号処理で得られた生体内情報を記録ユニット205へ出力する。ステップS622において、記録ユニット205は、生体内情報を記録、保管する。
【実施例2】
【0078】
次に、本発明の実施例2に係る電子内視鏡システム20について説明する。図8は、電子内視鏡システム20の概略構成を示している。実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
本実施例では、スコープ部300aの操作部140から延設した部分にコネクタ142が形成されている。また、接続コード部300bのスコープ部300a側の端部に、コネクタ154が形成されている。
【0080】
図9は、コネクタ142、154の近傍の構成を拡大して示している。コネクタ142、154の構成は、コネクタ151、250の構成と同一である。そして、コネクタどうしを接続した状態において、第1のパッド109と第3のパッド201とは、静電結合できるように対向して近接している。同様に、第2のパッド110と第4のパッド214とも、静電結合できるように対向して近接している。
【0081】
第1のパッド109と第3のパッド201が通信する信号は、映像信号である。また、第2のパッド110と第4のパッド214が通信する信号は、電力の伝達のための電源電圧信号である。これらのパッド109、110、142、154は、それぞれ気密かつ水密に構成されている。
【0082】
従って、本実施例では、洗浄時にコネクタ142、154に、別途、防水キャップを被せる必要はない。さらに、コネクタ142、154は、小型で凹凸の少ない簡素な形状を有している。この結果、スコープ部300aの洗浄を容易かつ効率良く行うことができる。
【0083】
なお、接続コード部300bの他の端部には、従来どおりのコネクタ153が形成されている。また、生体外装置200には、従来型のコネクタ153を接続するための従来型の他のコネクタ251が設けられている。
【実施例3】
【0084】
次に、本発明の実施例3に係る電子内視鏡システム30について説明する。図10は、電子内視鏡システム30の概略構成を示している。実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0085】
本実施例では、実施例1と同様に、ユニバーサルコード150の端部にコネクタ151が形成されている。また、生体外装置200には、コネクタ250が形成されている。
【0086】
さらに、実施例2と同様に、スコープ部300aの操作部140から延設した部分にコネクタ142が形成されている。また、接続コード部300bのスコープ部300a側の端部に、コネクタ154が形成されている。
【0087】
これにより、本実施例では、スコープ部300aと、接続コード部400bと、生体外装置200と、をそれぞれ容易に接続、分離が可能である。そして、コネクタ142、151、154、250内に設けられているパッドは、それぞれ気密かつ水密に構成されている。
【0088】
このため、スコープ部300aと、接続コード部400bとをそれぞれ分離した状態で洗浄できる。この結果、殺菌度合いや洗浄するレベルに応じて、スコープ部300aと接続コード部400bとを別々に、容易かつ効率よく洗浄できる。
【0089】
なお、上記各実施例の電子内視鏡システムは、CCD等を備えることによって、生体の内部の画像を撮像する構成としている。しかしながら、電子内視鏡は、かかる構成に限定されるものではなく、例えば生体内の温度情報やpH情報などの他の生体情報を取得するものとしても良い。
【0090】
また、本発明は、電子内視鏡システムに限られるものではなく、防水仕様のデジタルカメラ、ICレコーダ、PDA等の情報端末、コードレス電話機、携帯電話などの各種機器における情報の伝達機構、充電機構等に応用することができる。
【0091】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形例をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明に係る電子内視鏡システムは、小型で洗浄が容易な電子内視鏡システムに適している。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施例1に係る電子顕微鏡システムの全体構成を示す図である。
【図2】実施例1の電子内視鏡の機能ブロックを示す図である。
【図3】実施例1の生体外装置の機能ブロックを示す図である。
【図4】実施例1のコネクタ近傍の断面構成を示す図である。
【図5】実施例1のパッドの正面構成を示す図である。
【図6】実施例1における信号の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1における信号の流れを示す他のフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係る電子顕微鏡システムの全体構成を示す図である。
【図9】実施例2のコネクタ近傍の断面構成を示す図である。
【図10】本発明の実施例3に係る電子顕微鏡システムの全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
10、20、30 電子内視鏡システム
100a スコープ部
100b 接続コード部
100 電子内視鏡
101 LED
102 LED駆動回路
103 CCD
104 CCD駆動回路
105 第1の信号処理ユニット
106 第1の変調ユニット
107 システムコントロール回路
108 電源ユニット
109 第1のパッド
110 第2のパッド
111 共振ユニット
112 信号分離ユニット
113 第2の復調ユニット
114 第3の復調ユニット
140 操作部
141 挿入部
142 コネクタ
150 ユニバーサルコード
151 コネクタ
152 絶縁部
153 従来型のコネクタ
154 コネクタ
200 生体外装置
201 第3のパッド
202 第1の復調ユニット
203 第2の信号処理ユニット
204 表示ユニット
205 記録ユニット
207 電源ユニット
210 電源信号発生器
211 信号多重ユニット
212 CCD制御ユニット
213 第2の変調ユニット
214 第4のパッド
250 コネクタ
251 従来型のコネクタ
300a スコープ部
300b 接続コード部
400b 接続コード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が生体の内部に挿入される生体内装置と、
前記生体の外部に設置される生体外装置と、
前記生体内装置と前記生体外装置とを接続する接続コード部と、を有する電子内視鏡システムであって、
前記生体内装置と前記生体外装置との少なくともいずれか一方の装置と、前記接続コード部とは、
それぞれ気密かつ水密に構成されているパッドと、
それぞれの前記パッドを対向して近接させるための接続部と、を有し、
さらに、対向している一対の前記パッド間において信号の通信を行うために、一方の前記パッドに信号を変調して電圧印加する変調手段と、他方の前記パッドの電位変化から信号復調する復調手段と、を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記パッドと前記接続部とは、それぞれ前記接続コード部と前記生体外装置とに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記パッドと前記接続部とは、それぞれ前記接続コード部と前記生体内装置とに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記パッドと前記接続部とは、それぞれ前記接続コード部と前記生体内装置、及び前記接続コード部と前記生体外装置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
少なくとも一対の前記パッドが通信する信号は、電力の伝達のための信号であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
少なくとも一対の前記パッドが通信する信号は、映像信号であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−97767(P2007−97767A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290047(P2005−290047)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】