説明

電子内視鏡及び電子内視鏡システム

【課題】動作不良や故障を引き起こし得る電子内視鏡の劣化を未然に検出することが可能になる。
【解決手段】本発明の実施形態に係る電子内視鏡は、電子内視鏡に設けられた第一基板および定形部材と、定形部材の変形を検出するひずみセンサと、第一基板上に設けられ、ひずみセンサの検出値に基づき、定形部材の変形量が所定範囲を超えたときに、警報信号を発生する警報信号発生部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作不良や故障の原因となる、内部の部材の劣化を検出することが可能な電子内視鏡及び電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内を観察するために電子内視鏡が広く使用されている。電子内視鏡は繰り返し使用されるものであるため、電子内視鏡の構成部材の劣化を検出する必要がある。
【0003】
構成部材、特に内部部材の劣化の例として、滅菌処理に伴うものがある。電子内視鏡を介した感染を防止するために、オートクレーブ滅菌に対応した電子内視鏡が知られている。しかし、オートクレーブ滅菌においては、電子内視鏡が高温、高圧且つ高湿度の環境に曝されるため、内視鏡の内部部材が劣化(変質や変形・内部ひずみの発生等)しやすい。
【0004】
特許文献1には、オートクレーブ滅菌による劣化を受けやすい回路基板を、気密性の高い封止構造で封止する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−144375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような気密性の高い封止構造を採用しても、オートクレーブ滅菌処理において電子内視鏡が曝される高温・高圧の蒸気から回路基板を完全に遮蔽することができず、回路基板や内部部品の劣化を完全に防ぐことはできなかった。また、オートクレーブ滅菌以外の要因(例えば機械的衝撃)による部品の劣化についても、有効な対策が講じられていなかった。電子内視鏡の正常な動作を確保するため、このような劣化による変形やひずみが一定の範囲を超えた場合には、その電子内視鏡の使用を止めることが好ましい。そこで、本発明は電子内視鏡の内部部品の劣化の検出が可能な電子内視鏡及び電子内視鏡システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る電子内視鏡は、電子内視鏡に設けられた第一基板および定形部材と、定形部材の変形を検出するひずみセンサと、第一基板上に設けられ、ひずみセンサの検出値に基づき、定形部材の変形量が所定範囲を超えたときに、警報信号を発生する警報信号発生部とを備えている。
【0008】
上記の構成によれば、動作不良や故障を引き起こし得る電子内視鏡の劣化を未然に検出して、ユーザに使用の中止を警告することが可能になる。これにより、常に良好な状態で電子内視鏡を使用することが可能になる。
【0009】
ひずみセンサの信号を処理するセンサ信号処理回路が第一基板上に設けられていてもよい。また、警報信号を外部機器に出力する警報信号出力部を更に備えていてもよい。
【0010】
報知器として使用可能な表示装置やブザーはプロセッサ等の外部機器に設けられていることが多いため、上記構成により電子内視鏡に報知器を設ける必要がなくなり、コンパクトな電子内視鏡が実現可能となる。
【0011】
また、警報信号に基づいて警報を視覚的、聴覚的又は触覚的に報知する報知部を更に備えていてもよい。この構成により、警報の報知機能を備えていない既存のプロセッサを使用する場合にも、警報の報知が可能となる。
【0012】
少なくとも第一基板は、水蒸気が通過しないように密閉する気密パッケージにより被覆されていることが望ましい。このように警報出力部を備える第一基板を気密に封止することにより、第一基板の劣化により警報出力に失敗する可能性が減り、電子内視鏡の劣化をより確実に検出することが可能になる。
【0013】
また、上記の場合、第一基板のみが気密パッケージにより被覆されていることが望ましい。典型的には、気密パッケージは、気密パッケージ内の空間を満たす充填剤を有する。
【0014】
この構成により、他の部材を気密パッケージにより被覆するために必要なスペースを削減することができ、オートクレーブ滅菌に対応した小型の電子内視鏡が実現される。また、第一基板のみを気密に封止することにより、第一基板の劣化の進行を定形部材よりも格段に遅くすることができるため、第一基板が先に劣化して定形部材の劣化検出に失敗することが防止され、劣化検出がより確実となる。
【0015】
定形部材は少なくとも電子内視鏡先端に配設された撮像素子を制御する制御回路が設けられた第二基板であることが望ましい。
【0016】
電子内視鏡を高温高湿の蒸気に曝すオートクレーブ滅菌処理においては、樹脂を含む回路基板等の部材が最も劣化し易い。特に、回路基板の劣化は電子内視鏡の動作不良の直接的な原因となり得るため、回路基板の劣化をモニタすることが動作不良を防止する上で特に有効である。また、板状の回路基板は、高温高湿度環境下で劣化すると、大きく反る変形を起こすため、回路基板のひずみを検出することにより、電子内視鏡の劣化を確実に検出することができる。
【0017】
また、第一基板及び第二基板を水密に収容する基板収容部を更に備えることが望ましい。各基板を基板収容部内に水密に収容する構成により、オートクレーブ滅菌処理による各基板の劣化を緩和することができ、また基板間の配線も容易となる。
【0018】
また、少なくとも電子内視鏡先端に配設された撮像素子を制御する制御回路が設けられた第二基板を更に備え、定形部材は第二基板を支持する基板支持部であってもよい。
【0019】
基板支持部の大きな変形は、これに支持される第二基板にひずみを与えて劣化を促進する。そのため、基板支持部の大きな変形を検出する構成は、第二基板の劣化による電子内視鏡の動作不良や故障を未然に防ぐのに有効である。
【0020】
典型的には、定型部材は、操作部に配置されたアングルノブである。この場合、ひずみセンサは、アングルノブにトルクゲージとして取り付けられてもよい。
【0021】
アングルノブに過剰なトルクが加わると、アングルノブが操作するワイヤが劣化して、断線や弛みにより電子内視鏡の挿入部を適切に操作できなくなる可能性が高くなる。上記構成によりアングルノブに過剰なトルクが加わったことが検出可能になり、未然に電子内視鏡の使用を中止することが可能になる。
【0022】
定形部材は、電子内視鏡の挿入部を操作するための機構を支持する支持プレートであってもよい。この場合、典型的には、ひずみセンサは支持プレートに取り付けられる。
【0023】
支持プレートの変形は挿入部の滑らかな操作に影響を与える。上記構成によれば、挿入部の操作性が低下して必要な操作が不能になる前に、電子内視鏡の使用を中止することが可能になる。
【0024】
定形部材の変形量が所定範囲を超えたときに電子内視鏡を使用不能にする使用不能化手段を更に備えていてもよい。
【0025】
本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムは、電子内視鏡及びこれと接続可能な外部機器を備えている。電子内視鏡は、定形部材と、定形部材の変形を検出するひずみセンサと、ひずみセンサを外部機器と接続する第一接続部とを備え、外部機器は、第一接続部と接続可能な第二接続部と、ひずみセンサが検出した変形が所定範囲を超えたときに警報信号を発生する警報信号発生部とを備えている。
【0026】
定形部材の一つは次に掲げる定形部材(A)から(D)、(A)少なくとも電子内視鏡先端に配設された撮像素子を制御する制御回路が実装された基板、(B)制御回路が実装された基板を支持する基板支持部、(C)電子内視鏡の操作部に設けられた、電子内視鏡の挿入部を操作するためのアングルノブ、(D)電子内視鏡の操作部に設けられた電子内視鏡の挿入部を操作するための機構を支持する支持プレート、の何れかであることが望ましい。
【0027】
電子内視鏡は、電子内視鏡の使用可否を示すフラグを記憶するメモリを更に備え、警報発生部は、ひずみセンサが検出した変形が所定範囲を超えたときに、フラグの設定を使用可能から使用不可に書き換えるフラグ書換部を備えている。
【0028】
この構成により、オートクレーブ滅菌処理時に所定範囲を超える変形が検出された内視鏡を自動的に使用不可の状態に設定し、誤って使用されてしまうことを回避することができる。
【0029】
典型的には、外部機器は、電子内視鏡をオートクレーブ滅菌するオートクレーブ装置、あるいは電子内視鏡が撮像した画像データを処理するプロセッサである。また、典型的には、警報信号に基づいて警報を視覚的、聴覚的又は触覚的に報知する報知部を更に備える。
【発明の効果】
【0030】
本発明の実施形態によれば、動作不良や故障を引き起こし得る電子内視鏡の劣化を未然に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子内視鏡装置の外観図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電子内視鏡の接続部の概略内部構造を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電子内視鏡オートクレーブシステムの外観図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電子内視鏡オートクレーブシステムの概略構成を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電子内視鏡の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子内視鏡装置1の外観図である。電子内視鏡装置1は、電子内視鏡100、プロセッサ200及びモニタ(不図示)を備えている。
【0034】
本発明の実施形態に係る電子内視鏡100は、挿入部110、操作部120及び接続部130を備えている。電子内視鏡100は、可撓性を有するケーブル状の挿入部110を被検者の体腔内に挿入して、挿入部110の先端112に内蔵されたCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ(不図示)により体腔内の観察部位を撮影するユニットである。電子内視鏡100は接続部130を介してプロセッサ200と着脱自在に接続される。
【0035】
図2は、接続部130の内部構造の概略を示す図である。接続部130には各種の回路基板を収容する基板収容部131が設けられている。基板収容部131は、ステンレス鋼から形成されており、リブ131a及び131bを有している。リブ131aの上面には、回路基板132が螺子で固定されている。回路基板132は、プリント基板上にCCD駆動回路や、CCDイメージセンサから出力される画像信号を処理する信号処理回路及び制御回路が実装されたものであり、通信線134を介して先端部112に内蔵されたCCDイメージセンサと接続されている。なお、プリント基板は、基材にエポキシ等の樹脂を含むため、高温・高湿度環境において劣化しやすい。また、プリント基板が高温・高湿度環境で劣化すると、劣化の程度に応じた反りが生じる。このため、回路基板132には、プリント基板の変形(反り)を検出するひずみゲージ133が取り付けられている。ユーザは、ひずみゲージ133によってプリント基板の反りを検出することで、プリント基板の劣化の程度を知ることができる。
【0036】
また、基板収容部131には、リブ131bによって囲まれた凹部135が形成されている。凹部135は、センサ信号処理回路136aが実装されたプリント基板(センサ信号処理基板136)を収容し、封止板137により塞がれている。封止板137は、リブ131bの上面に螺子で固定されている。また、凹部135の内部(センサ信号処理基板136の周囲)の空間は、水蒸気透過性の低い充填剤で充填されている。充填剤はオートクレーブ滅菌の蒸気を遮断してセンサ信号処理基板136の劣化を効果的に防ぐ。
【0037】
センサ信号処理回路136aには、ひずみゲージ133のリード線133aが接続されている。センサ信号処理回路136aは、ひずみゲージ133の抵抗値の変化を検出して、回路基板132の変形量を示す信号(変形信号)に変換する。また、センサ信号処理回路136aは、警報発生部としての機能を持つ。詳しくは、センサ信号処理回路136aは、回路基板132の変形量が、異常動作や故障が発生する可能性の低い所定範囲内であるか否かを判定し、回路基板132の変形量が所定範囲を超える場合は電子内視鏡100の使用を中止すべき状態にあることを警報する警報信号を生成する。警報信号は信号線接続プラグ139を介して、プロセッサ200へ出力される。警報信号には、警報内容に関する情報(例えば所定範囲を超える変形が検出された回路基板を特定する情報)が含まれている。また、センサ信号処理回路136aは、回路基板132に実装される回路とは電気的に独立しており、内蔵電池136bにより駆動する。そのため、センサ信号処理回路136aは、他の回路が正常に動作しない場合でも、回路基板132の変形を示す信号を出力可能であるため、故障解析に使用することができる。
【0038】
図1に示すプロセッサ200は、電子内視鏡100のセンサ信号処理回路136aから受信した警報信号を処理する警報信号処理部210を備えている。警報信号処理部210は、プロセッサ200がセンサ信号処理回路136aから警報信号を受信すると、警報信号に含まれる情報を、警報信号の取得時刻と共に、ハードディスクドライブ(不図示)に記録する。次に、警報信号処理部210は、プロセッサ200に設けられた報知器212により、警報を報知する。例えば、ランプやブザー等の各種報知器を使用して、視覚的又は聴覚的に警報を報知することができる。また、各種出力装置は、単独で用いても良いし、例えば警報メッセージをプロセッサ200に設けられたスピーカーから音声出力すると共にモニタに表示するといった、出力態様を複数種組み合わせた構成でもよい。
【0039】
上記に説明した第1実施形態の構成によれば、例えば電子内視鏡100のオートクレーブ滅菌処理中に回路基板132の変形が所定範囲を超えた場合、滅菌処理後に電子内視鏡100をプロセッサ200に接続してプロセッサ200を起動すると、直ちに警報が報知される。そのため、動作不良や故障が発生する可能性が低くない程度にまで劣化した電子内視鏡100の使用が有効に防止される。
【0040】
また、第1実施形態では、回路基板132の変形を確実に検出できるようにするために、センサ信号処理基板136の周囲の空間を水蒸気透過性の低い充填剤により充填して、センサ信号処理基板136を気密に被覆(気密パッケージ)している。一方、他の基板(回路基板132)については、基板収容部131により水密に覆われているが、気密パッケージは施されていない。
【0041】
各回路基板に同じ基板材料を使用している場合、気密パッケージで被覆されたセンサ信号処理基板136は、気密パッケージで被覆されていない回路基板132よりも格段に劣化が遅いため、気密パッケージが施されていない回路基板132の劣化を、確実に検出することができる。なお、気密パッケージを施すと回路基板の収容に必要なスペースが大幅に増大するため、第1実施形態においては、気密パッケージを施す回路基板を、上述のように、他に比べて動作不良や故障を防ぐ必要性の高い一部のものに限定している。この構成により、全ての基板に気密パッケージを施す構成よりも、基板の収容に必要なスペースを削減することができ、オートクレーブ滅菌に対応した小型の電子内視鏡が実現する。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、第1実施形態と同一又は対応する構成要素に対して同一又は類似の参照符号を使用し、詳細な説明は省略する。図3は本発明の第2実施形態に係る電子内視鏡オートクレーブシステム2の外観図である。電子内視鏡オートクレーブシステム2は、電子内視鏡100A及びオートクレーブ装置300が連携動作するシステムである。図4は電子内視鏡オートクレーブシステム2の概略構成を示す図である。なお、第2実施形態の電子内視鏡100Aは、第1実施形態の電子内視鏡100とは基板収容部131内に収容される回路基板の構成が異なる。
【0043】
オートクレーブ滅菌処理は、滅菌する電子内視鏡100Aをオートクレーブ室310内に配置して、オートクレーブ室310内の温度、湿度及び気圧を所定の条件に制御した状態を一定時間維持することで行われる。
【0044】
図4に示されるように、オートクレーブ装置300の下部には、密閉扉306によって開閉自在に密閉されたオートクレーブ室310が設けられ、上部には制御基板330が配置された制御室320が設けられている。また、オートクレーブ装置300の正面上部には、制御基板330と接続された操作盤302及び表示器304が設けられている(図3)。制御基板330には、オートクレーブ装置300の各部を制御して滅菌処理を実行する制御回路(不図示)の他、センサ信号処理回路332及び警報発生部334が実装されている。すなわち、第2実施形態においては、第1実施形態のセンサ信号処理基板136に相当する機能が実装された制御基板330は、電子内視鏡100Aではなく、オートクレーブ装置300に設けられている。
【0045】
センサ信号処理回路332及び警報発生部334は、連通口308を介して、ケーブル360により、電子内視鏡100Aと接続される。すなわち、ケーブル360の先端に設けられたソケット361が電子内視鏡100Aの接続部130に設けられた信号線接続プラグ139に接続される。
【0046】
第2実施形態の電子内視鏡100Aにおいても、接続部130には各種の回路基板を収容する基板収容部131が設けられている。また、基板収容部131の内部にはリブ131aが形成されている。リブ131aの上面には、回路基板132が螺子で固定されている。回路基板132は、プリント基板上にCCD駆動回路や、CCDイメージセンサから出力される画像信号を処理する信号処理回路及び制御回路が実装されたものであり、通信線134を介してCCDイメージセンサと接続されている。また、回路基板132には、プリント基板の変形(反り)を検出するひずみゲージ133が取り付けられている。ひずみゲージ133から延びるリード線133aは、信号線接続プラグ139の端子139aに接続されている。また、回路基板132の制御回路は各種設定情報を記録するメモリ138を備えている。制御回路のデータバスは通信線138aを介して信号線接続プラグ139の端子139bと接続されている。信号線接続プラグ139にソケット361を接続すると、ひずみゲージ133のリード線133aはセンサ信号処理回路332に接続され、回路基板132上の制御回路のデータバスは、通信線138aを介して警報発生部334に接続される。
【0047】
センサ信号処理回路332は、ひずみゲージ133の抵抗値の変化を検出し、回路基板132の変形量を示す変形信号に変換して警報発生部334へ渡す。警報発生部334は、センサ信号処理回路332から変形信号を受け取ると、回路基板132の変形量が、異常動作や故障が発生する可能性の低い所定範囲内であるか否かを判定する。回路基板132の変形量が所定範囲を超える場合は、警報発生部334は警報信号を発生する。次いで、発生した警報信号に基づいて、例えば「この内視鏡は使用不可」という警報メッセージを表示器304に表示させることで、警報を報知する。音声や光により警告を報知してもよい。この警報により、ユーザは電子内視鏡100Aを使用する前に検査や修理が必要であることが分かる。
【0048】
更に、警報発生部334は通信線138aを介して電子内視鏡100Aの回路基板132上のメモリ138にアクセスして、メモリ138が保持する電子内視鏡100Aの使用可否を設定するフラグ(デフォルトで「使用可」の設定)を「使用不可」の設定に書き換える。なお、オートクレーブ滅菌処理後に電子内視鏡100Aをプロセッサ200に接続すると、プロセッサ200は起動時にこのフラグを読み取る。フラグが「使用不可」に設定されている場合は、プロセッサ200は内視鏡操作や内視鏡画像表示を無効にして、プロセッサ200の表示部に「使用不可」と表示する。従って、フラグを「使用不可」に設定にすると、電子内視鏡100Aを使用することができなくなる。これにより、使用に適さない電子内視鏡100Aをユーザが誤って使用してしまうことが確実に防止される。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図5は本発明の第3実施形態に係る電子内視鏡100Bの概略構成を示す図である。電子内視鏡100Bは、第1実施形態の電子内視鏡100にひずみゲージ151、152及び153を追加したものである。ひずみゲージ151、152及び153は、図示しないもののひずみゲージ133と同様にそれぞれセンサ信号処理回路136aに接続されている。従って本実施形態のセンサ信号処理回路136aは各ひずみゲージ133、151、152、153が検出した変形量が所定範囲を超えた場合に警報を発生する。なお、この所定範囲は、各ひずみゲージが取り付けられる内部部材や位置に応じて設定されている。
【0050】
ひずみゲージ151は、回路基板132を支持する基板収容部131のリブ131aの上面に取り付けられている。基板収容部131は、ステンレス鋼から形成されているため、オートクレーブ滅菌により変形を起こす可能性は少ないが、例えば電子内視鏡100Bを誤って落下させたときに変形が生じやすい箇所である。基板収容部131が所定の範囲を超えて変形した場合には、回路基板132や他の各部も損傷を受けて正常に動作しなくなっている可能性があり、そのまま継続して電子内視鏡100Bを使用すべきではない。従って、リブ131aの所定範囲を超える変形が検出された場合には、回路基板132の変形が検出された場合と同様にセンサ信号処理回路136aの警報発生部が警報信号を生成する。なお、本実施形態では、ひずみゲージ151はリブ131aにおいて最も変形しやすい2つの互いに平行に形成された部分に取り付けられているが、ひずみゲージ151を取り付ける位置や数量は任意である。また、互いに直交する3方向(あるいは回路基板と平行な互いに直交する2方向)のひずみをそれぞれ検出する複数のひずみゲージ151を取り付けてもよい。この場合、どの方向に生じた歪みも確実に検出することができる。更に、この場合には、各ひずみゲージ151により検出した変形量をベクトル合成して、合成変形量が所定範囲を超えているか否かに応じて警報信号を生成する構成にしてもよい。
【0051】
ひずみゲージ152は、挿入部110を湾曲させる操作を行うための操作部120の内部機構を支持する支持プレート(親板)123に取り付けられている。支持プレート123の変形は、操作部120による挿入部110のスムーズな操作に影響を与える。支持プレート123の変形が所定範囲を超えた場合は、挿入部110を正常に操作することができない可能性があるため、そのまま継続して電子内視鏡100Bを使用すべきではない。従って、支持プレート123が所定範囲を超えて変形した場合には、回路基板132が変形した場合と同様にセンサ信号処理回路136aの警報発生部が警報信号を生成する。
【0052】
ひずみゲージ153は、アングルノブ121に加わるトルクを検出するトルクゲージとして機能するように取り付けられている。アングルノブ121は、ワイヤ122を介して挿入部110を湾曲させる操作に使用される。アングルノブ121に所定範囲を超えるトルクが加えられた場合は、ワイヤ122が劣化して断線や弛みが生じ、挿入部110を正常に操作できなくなる可能性があるため、そのまま継続して電子内視鏡100Bを使用すべきではない。従って、アングルノブ121に所定範囲を超えるトルク(一時的な弾性変形)が加わった場合には、回路基板132が変形した場合と同様にセンサ信号処理回路136aの警報発生部が警報信号を生成する。
【0053】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態の構成は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0054】
上記の第1及び第3実施形態では、センサ信号処理回路136aが電子内視鏡内に設けられているが、別の実施形態ではセンサ信号処理回路(又は警報発生部のみ)をプロセッサ内に設けた構成としてもよい。また、上記の第2実施形態では、センサ信号処理回路332及び警報発生部334がオートクレーブ装置300内に設けられているが、別の実施形態ではセンサ信号処理回路及び警報発生部を電子内視鏡内に設けてもよい。この場合、電子内視鏡が警報信号をオートクレーブ装置へ出力し、警報信号の受信に応じて警報を報知する報知器をオートクレーブ装置に設けた構成としても良い。また、電子内視鏡に報知器を設けてもよい。この場合、報知器は、上記の実施形態と同様に視覚的又は聴覚的に警報を報知するものであってもよく、また振動モータにより電子内視鏡を振動させることで触覚的に警報を報知するものであってもよい。
【0055】
上記の第2実施形態では、電子内視鏡100Aの使用可否を設定するフラグを記憶するメモリ138が実装された基板は気密パッケージを施されていないが、フラグ情報を確実に保護するためにメモリ138が実装された基板に気密パッケージを施してもよい。
【0056】
また、別の実施形態においては、警報発生部に替えて又は加えて、電子内視鏡を使用不能にする使用不能化手段を設けてもよい。使用不能化手段としては、例えば画像信号の出力を停止する手段、操作部120をロックして操作不能にする手段、電源ラインを遮断する手段、制御回路に異常電圧を印加して回路を破壊する手段などを使用することができる。また、この場合には、電子内視鏡が使用中か否かを判断する手段を更に設けて、電子内視鏡が使用中であると判断された場合には使用不能化手段を機能させない構成とすることが望ましい。例えば、電子内視鏡がプロセッサとの接続を検出(又は電子内視鏡装置が起動)してから所定時間(例えば1分間)が経過した場合や、プロセッサの接続検出後にユーザ操作を検出した場合に、電子内視鏡が使用中と判断することができる。
【0057】
上記の各実施形態のひずみゲージは、プリント基板等の各部材の表面に専用の接着剤により貼り付けられたものであるが、プリント基板等の樹脂成型品の部材の中に埋め込むことによりひずみゲージを各部材に取り付けてもよい。また、上記実施形態では、最も広く使用されている抵抗型のひずみゲージが使用されているが、圧電式や光学式等の別の方式のひずみゲージや変位センサを使用してもよい。
【0058】
また、上記の第1及び第3実施形態ではセンサ信号処理基板136が凹部135内に直接収容されて凹部135全体が蒸気透過性の低い充填剤で充填されているが、別の実施形態では充填剤のモールド型を兼ねる例えば樹脂製のケースを使用し、ケース内にセンサ信号処理基板136を収容して充填剤でケース内を充填させたものを凹部135内に配置してもよい。また、例えばモールド型を使用して充填剤を被覆したセンサ信号処理基板136のみを基板収容部131に収容してもよい。
【0059】
また、本発明は、オートクレーブ対応の電子内視鏡への適用が特に有効であるが、オートクレーブ非対応の一般的な電子内視鏡に適用しても例えば経時劣化に起因する電子内視鏡の不具合検出のように上記実施形態と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0060】
1 電子内視鏡装置
100,100A,100B 電子内視鏡
110 挿入部
120 操作部
121 アングルノブ
130 接続部
131 基板収容部
131a,131b リブ
132 回路基板
133 ひずみゲージ
136 センサ信号処理基板
133,151,152,153 ひずみゲージ
200 プロセッサ
210 警報信号処理部
212 報知器
300 オートクレーブ装置
332 センサ信号処理回路
334 警報発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子内視鏡に設けられた第一基板および定形部材と、
前記定形部材の変形を検出するひずみセンサと、
前記第一基板上に設けられ、前記ひずみセンサの検出値に基づき、前記定形部材の変形量が所定範囲を超えたときに、警報信号を発生する警報信号発生部と、を備えた電子内視鏡。
【請求項2】
前記ひずみセンサの信号を処理するセンサ信号処理回路が前記第一基板上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡。
【請求項3】
前記警報信号を外部機器に出力する警報信号出力部を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項4】
前記警報信号に基づいて警報を視覚的、聴覚的又は触覚的に報知する報知部を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項5】
少なくとも前記第一基板は、水蒸気が通過しないように密閉する気密パッケージにより被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項6】
前記第一基板のみが前記気密パッケージにより被覆されていることを特徴とする請求項5記載の電子内視鏡。
【請求項7】
前記気密パッケージは、該気密パッケージ内の空間を満たす充填剤を有する
ことを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項8】
前記定形部材は少なくとも前記電子内視鏡先端に配設された撮像素子を制御する制御回路が設けられた第二基板である
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項9】
前記第一基板及び前記第二基板を水密に収容する基板収容部を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の電子内視鏡。
【請求項10】
少なくとも前記電子内視鏡先端に配設された撮像素子を制御する制御回路が設けられた第二基板を更に備え、
前記定形部材は前記第二基板を支持する基板支持部である
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項11】
前記定型部材は、操作部に配置されたアングルノブであり、
前記ひずみセンサは、前記アングルノブにトルクゲージとして取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項12】
前記定形部材は、前記電子内視鏡の挿入部を操作するための機構を支持する支持プレートであり、
前記ひずみセンサは、前記支持プレートに取り付けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項13】
前記定形部材の変形量が所定範囲を超えたときに前記電子内視鏡を使用不能にする使用不能化手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の電子内視鏡。
【請求項14】
電子内視鏡及びこれと接続可能な外部機器を備えた電子内視鏡システムであって、
前記電子内視鏡は、
定形部材と、
前記定形部材の変形を検出するひずみセンサと、
前記ひずみセンサを前記外部機器と接続する第一接続部と、を備え、
前記外部機器は、
前記第一接続部と接続可能な第二接続部と、
前記ひずみセンサが検出した変形が所定範囲を超えたときに警報信号を発生する警報信号発生部と、を備えた電子内視鏡システム。
【請求項15】
前記定形部材の一つは次に掲げる定形部材(A)から(D)、
(A)少なくとも前記電子内視鏡先端に配設された撮像素子を制御する制御回路が実装された基板
(B)前記制御回路が実装された基板を支持する基板支持部
(C)前記電子内視鏡の操作部に設けられた、前記電子内視鏡の挿入部を操作するためのアングルノブ
(D)前記電子内視鏡の操作部に設けられた、前記電子内視鏡の挿入部を操作するための機構を支持する支持プレート
の何れかであることを特徴とする請求項14に記載の電子内視鏡システム。
【請求項16】
前記外部機器は、前記電子内視鏡をオートクレーブ滅菌するオートクレーブ装置である
ことを特徴とする請求項14又は請求項15のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項17】
前記電子内視鏡は、該電子内視鏡の使用可否を示すフラグを記憶するメモリを更に備え、
前記警報発生部は、前記ひずみセンサが検出した変形が前記所定範囲を超えたときに、前記フラグの設定を使用可能から使用不可に書き換えるフラグ書換部を備える
ことを特徴とする請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項18】
前記外部機器は、前記電子内視鏡が撮像した画像データを処理するプロセッサである
ことを特徴とする請求項14又は請求項15のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項19】
前記警報信号に基づいて前記警報を視覚的、聴覚的又は触覚的に報知する報知部を更に備える
ことを特徴とする請求項14から請求項18のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−139408(P2012−139408A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294453(P2010−294453)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】