説明

電子内視鏡装置

【課題】タイミングジェネレータを搭載するスコープ、搭載しないスコープの両方を単一のプロセッサ装置に接続して使用することができるようにする。
【解決手段】タイミングジェネレータ(TG)を搭載しないAタイプスコープ1Aと、TGを搭載するBタイプスコープ1Bとを接続するプロセッサ装置23に、Aタイプスコープ1Aに対応したTG30及び第1信号処理部31と、Bタイプスコープ1Bに対応した第2信号処理部32とを設け、Aタイプスコープ1Aがプロセッサ装置23に接続されたとき、TG30及び第1信号処理部31をオンし、Bタイプスコープ1Bが接続されたときは、第2信号処理部32をオンする。また、DタイプDSP33とDタイプDSP34を設け、各スコープの画像処理形式の相違に対応してDタイプDSP33とDタイプDSP34のいずれかを選択してオンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子内視鏡装置、特にタイミングジェネレータを搭載しないスコープ、タイミングジェネレータを搭載するスコープを、画像処理装置であるプロセッサ装置に接続可能にする電子内視鏡装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置は、光照明された被観察体を、例えばスコープ(電子内視鏡)に搭載された固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)により撮像し、このCCDからの撮像信号をプロセッサ装置(本体装置)へ供給し、このプロセッサ装置内の画像処理回路にて所定の信号処理を施すことにより、被観察体画像をモニタに表示することができる。そして、この種の電子内視鏡装置では、上記CCDの種類や撮像方式(信号処理方式)の異なる複数のスコープがプロセッサ装置に接続できるように構成される。
【0003】
図4には、従来の電子内視鏡装置の構成が示されており、図4に示されるように、例えばEタイプのスコープ1Eは、先端部にCCD2eを搭載し、角形の電気コネクタ3eがプロセッサ装置4の角形のコネクタ受け5eに接続される。また、Fタイプのスコープ1Fは、先端部にCCD2fを搭載し、丸形の電気コネクタ3fがプロセッサ装置4の丸形のコネクタ受け5fに接続される。この電気コネクタ3e,3fは、上記CCD2e,2f等で得られた映像信号を伝送する信号線等をプロセッサ装置4へ接続するためのものであり、図示していないが、光源光を照明光としてスコープ1E,1F内へ供給するためのライトガイドは、光学コネクタにてプロセッサ装置4等へ接続される。
【0004】
また、プロセッサ装置4内には、タイミングジェネレータ7、A/D変換器8、DSP(デジタル信号プロセッサ)9等を有する患者回路10と、信号処理回路12、電源回路13等を有する2次回路14とが設けられ、この患者回路10と2次回路14との間には、パルストランスやフォトカプラからなる電気的なアイソレータ15が配置される。
【0005】
このような電子内視鏡装置によれば、EタイプとFタイプとで電気コネクタ3e,3f及びコネクタ受け5e,5fの形状を変えることより、間違ったコネクタ接続をなくしながら、各タイプのスコープ1E,1Fに適合した画像処理等ができるようになっている。また、商用電源に直接接続される電源回路13が配置された2次回路14から患者回路10をアイソレータ15にて電気的に分離することにより、患者回路10の電気的安全性が確保される。
【特許文献1】特開平11−289530号公報
【特許文献2】特開2003−93341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の電子内視鏡装置では、例えば図4の2次回路14内にタイミングジェネレータ16を配置することも行われており(例えば上記特許文献1)、この場合は、タイミングジェネレータ16から出力されたCCD駆動信号(クロック信号等)がアイソレータ15及び患者回路10を介してスコープ1E,1FのCCD2e,2fへ供給され、その他のタイミング信号も、アイソレータ15を介して患者回路10へ供給される。しかし、CCD駆動信号をアイソレータ15を介してCCD2e,2fへ与える場合には、CCD駆動信号に位相ズレ等が生じ、画質を低下させるという問題があり、この問題の影響は、CCD2e,2fが高画素化され、CCD駆動信号(クロック信号)が高速化される程、大きくなる。
【0007】
そこで、図4の場合は、患者回路10内にタイミングジェネレータ7を配置し、このタイミングジェネレータ7からのCCD駆動信号(クロック信号等)によって、CCD2e,2fを駆動し、良好な画質の被観察体画像が得られるようにしている。また、近年の更なる高画素化に対応し、特許文献2に示されるように、タイミングジェネレータをスコープ内へ搭載することも行われている。
【0008】
しかしながら、従来では、スコープ(1E,1F等)内に、CCD駆動信号を出力するタイミングジェネレータ7を搭載しない場合と、搭載する場合とが存在しており、それらのスコープの構成に合わせてプロセッサ装置(4)を製作しなければならない。従って、この場合は、単一のプロセッサ装置に種類の異なるスコープを接続することができず、コスト高にもなるという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイミングジェネレータを搭載するスコープ、搭載しないスコープの両方を単一のプロセッサ装置に接続して使用することができ、高画素化された撮像素子に対応した高速の駆動信号で良好な画像が形成可能となる電子内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、タイミングジェネレータを搭載しないAタイプスコープと、タイミングジェネレータを搭載するBタイプスコープと、をプロセッサ装置にコネクタ接続するように構成された電子内視鏡装置において、上記プロセッサ装置には、上記Aタイプスコープに対応した患者回路内タイミングジェネレータ及び第1画像信号処理部と、上記Bタイプスコープに対応した第2画像信号処理部とを設け、上記Aタイプスコープが上記プロセッサ装置に接続されたとき、上記患者回路内タイミングジェネレータ及び第1画像信号処理部を作動させ、上記Bタイプスコープが上記プロセッサ装置に接続されたとき、上記第2画像信号処理部を作動させるように制御したことを特徴とする。
請求項2の発明は、上記第1画像信号処理部及び第2画像信号処理部の両方に接続可能となるDタイプデジタル信号プロセッサとDタイプデジタル信号プロセッサとを含み、スコープ画像処理形式の相違に対応して、上記Dタイプデジタル信号プロセッサと上記Dタイプデジタル信号プロセッサのいずれかを選択して作動させることを特徴とする。なお、上記A,B,D1,は、タイプを区別するためのものである。
【0011】
上記請求項1の構成によれば、プロセッサ装置が、接続されたスコープとの間で通信を行うことにより、スコープの種類が判定され、Aタイプスコープが接続されたときは、プロセッサ装置患者回路内のタイミングジェネレータ及び第1画像信号処理部がオンし、このタイミングジェネレータからCCD駆動信号がAタイプスコープのCCD(撮像素子)へ供給されることにより、CCDから撮像信号が出力される。この撮像信号は、第1画像信号処理部へ供給され、ここで所定の信号処理が施されることにより、被観察体画像が形成される。
【0012】
また、Bタイプスコープが接続されたときは、プロセッサ装置内の第2画像信号処理部がオンし、この場合は、スコープ内のタイミングジェネレータからのCCD駆動信号によってCCDが駆動されることにより、CCDから撮像信号が出力される。この撮像信号は、第2画像信号処理部へ供給され、ここで所定の信号処理が施されることにより、被観察体画像が形成される。
【0013】
上記請求項2の構成によれば、Aタイプ又はBタイプに関係なく、接続されたスコープの画像処理形式の相違に対応して、Dタイプデジタル信号プロセッサ又はDタイプデジタル信号プロセッサのいずれかが選択されることになり、同一タイプのスコープの画像処理形式に相違がある場合でも、良好な画像処理ができるようになる。即ち、CCDにおいては、原色系(R,G,B)CCD又は補色系(Y,Mg,Cy,G)CCD等のタイプがあると共に、画素クロック信号(或いは画素数)等においても相違しており、このような各種のCCDの画像処理形式に対応して、Dタイプデジタル信号プロセッサとDタイプデジタル信号プロセッサが選択される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子内視鏡装置によれば、タイミングジェネレータを搭載するスコープ、搭載しないスコープの両方を単一のプロセッサ装置に接続して使用することができ、高画素化された撮像素子に対応した高速の駆動信号で良好な画像を形成することができると共に、低コスト化も可能になるという効果がある。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、タイミングジェネレータを搭載するタイプかそうでないタイプかに関わらず、スコープの画像処理形式の相違に対応したデジタル信号プロセッサを用いることができ、撮像素子において原色系か補色系かの相違や画素数等に相違があっても、良好な画像処理が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図2には、実施例に係る電子内視鏡装置の構成が示されており、図1はプロセッサ装置(本体装置)の構成、図2はAタイプ及びBタイプのスコープ(電子内視鏡)の構成である。まず、図2(A)に示されるように、Aタイプのスコープ1Aは、タイミングジェネレータが設けられておらず、CCD2a、CDS(相関二重サンプリング)/AGC(オートゲイン制御)回路18a及びROM(読出し専用メモリ、又はマイコン等)20aを有し、画像信号がアナログ信号として出力される。
【0017】
また、図2(B)に示されるように、Bタイプのスコープ1Bは、タイミングジェネレータ(TG)21が搭載され、CCD2b、CDS/AGC回路18b、A/D変換器22及びROM20bを有し、画像信号がデジタル信号として出力される。なお、これらAタイプスコープ1AとBタイプスコープ1Bは、プロセッサ装置23に対し、形状の異なるコネクタ部(コネクタ及びプロセッサ装置側コネクタ受け)24a,24bで接続され、両者のスコープ1A,1Bを識別し、誤接続を防ぐようになっている。
【0018】
図1において、プロセッサ装置23内では、1枚の患者回路基板26がアイソレータ(パルストランス又はフォトカプラ等)27を介して2次回路基板28に接続されており、この患者回路基板26に、上記Aタイプスコープ1Aに対応したタイミングジェネレータ(TG)30、A/D変換器等を有しAタイプスコープ1Aからの出力信号に対する画像信号処理をする第1(画像)信号処理部31、バッファ回路等を有しBタイプスコープ1Bからの出力信号に対する画像信号処理をする第2信号処理部32が設けられ、また上記第1信号処理部31と第2信号処理部32のそれぞれに対し、DタイプDSP(デジタル信号プロセッサ)33とDタイプDSP34が接続される。
【0019】
また、患者回路基板26には、フロントCPU(又はマイコン)36、DSP用CPU37が設けられており、このフロントCPU36は、上記スコープ1A,1B側のROM(又はマイコン)20a,20bとの間で通信を行い、スコープ1A,1Bのタイプ(TGの有無、使用するDSPの種類等)を判定すると共に、上記タイミングジェネレータ30、第1信号処理部31及び第2信号処理部32の電源のオン(ON)、オフ(OFF)を行う。上記DSP用CPU37は、上記フロントCPU36からDSP選択指示信号を受けることにより、第1DSP33と第2DSP34の電源のオン、オフを行う。即ち、スコープ1A,1Bは、TGの有無とは別に、撮像素子の特性や種類、即ち画像処理形式によって用いるDSPの種類が決まっており、該当するいずれかのDSP(33,34)が選択される。
【0020】
実施例は以上の構成からなり、実施例の電子内視鏡装置は、図1に示されるように、複数のスコープ1A,1B等をプロセッサ装置23に対し異なる形状のコネクタ部24a,24bで接続できるように構成され、これらスコープ1A,1Bのいずれかが接続されたときには、フロントCPU36及びDSP用CPU37により図3の動作が実行される。
【0021】
図3において、まずフロントCPU36がスコープ1A,1B内のROM20a,20bと通信を行い(ステップ101)、次のステップ102では、接続されたスコープのタイプを識別しており、ここで、Aタイプスコープ1Aであると判定されると、ステップ103へ移行し、フロントCPU36は、タイミングジェネレータ30及び第1信号処理部31(の電源)をオン(ON)し、第2信号処理部32(の電源)をオフ(OFF)する。次に、ステップ104では、スコープDSPタイプを識別しており、ここで、Dタイプであると判定されると、ステップ105へ移行し、DSP用CPU37に対しDタイプDSP33をオンし、DタイプDSP34をオフする指示信号を出力することになり、これによって、DSP用CPU37がDタイプDSP33をオンし、DタイプDSP34をオフする(ステップ106)。
【0022】
上記ステップ104にて、Dタイプであると判定されると、ステップ107へ移行し、DSP用CPU37に対しDタイプDSP33をオフし、DタイプDSP34をオンする指示信号を出力し、これによってDSP用CPU37がDタイプDSP33をオフし、DタイプDSP34をオンする(ステップ108)。
【0023】
一方、上記ステップ102にて、接続されたスコープがBタイプスコープ1Bであると判定されると、ステップ110へ移行し、フロントCPU36は、タイミングジェネレータ30及び第1信号処理部31をオフし、第2信号処理部32をオンする。次に、ステップ111では、スコープDSPタイプを識別しており、ここで、Dタイプであると判定されると、ステップ112へ移行し、DSP用CPU37に対しDタイプDSP33をオンし、DタイプDSP34をオフする指示信号を出力し、これによって、DSP用CPU37がDタイプDSP33をオンし、DタイプDSP34をオフする(ステップ113)。
【0024】
上記ステップ111にて、Dタイプであると判定されると、ステップ114へ移行し、DSP用CPU37に対しDタイプDSP33をオフし、DタイプDSP34をオンする指示信号を出力し、これによってDSP用CPU37がDタイプDSP33をオフし、DタイプDSP34をオンする(ステップ115)。
【0025】
このようにして、Aタイプスコープ1Aが接続されると、患者回路基板26内のタイミングジェネレータ(TG)30を用いてCCD駆動信号がCCD2aへ供給され、これによって、CCD2aから撮像信号が出力される。この撮像信号は、CDS/AGC回路18aで処理され、スコープ1Aからはアナログ画像信号がプロセッサ装置23へ出力される。そして、このアナログ画像信号は、第1信号処理部31でデジタル画像信号へ変換され、このデジタル画像信号がDタイプDSP33又はDタイプDSP34のいずれかで処理される。このDSP33,34の出力は、2次回路基板28での信号処理を介してモニタへ出力されることにより、モニタに被観察体画像(映像)が表示される。
【0026】
また、Bタイプスコープ1Bが接続されると、スコープ1B内のタイミングジェネレータ(TG)21を用いてCCD駆動信号がCCD2bへ供給され、これによって、CCD2bから撮像信号が出力される。この撮像信号は、CDS/AGC回路18b及びA/D変換器22で処理され、スコープ1Bからはデジタル画像信号がプロセッサ装置23へ出力される。そして、このデジタル画像信号は、第2信号処理部32でバッファ処理され、このデジタル画像信号がDタイプDSP33又はDタイプDSP34のいずれかで処理され、2次回路基板28の処理を介してモニタへ被観察体画像が表示される。
【0027】
上記実施例では、フロントCPU36と共に、DSP用CPU37を用いたが、このDSP用CPU37を用いずに、フロントCPU36のみで、DSP33,34の電源オンオフの制御を行うようにしてもよく、これによれば、低コスト化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る電子内視鏡装置のプロセッサ装置(本体装置)内の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】実施例で使用されるAタイプスコープ[図(A)]とBタイプスコープ[図(B)]の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】実施例に電子内視鏡装置おける動作を示すフローチャートである。
【図4】従来において2つのタイプのスコープを接続する電子内視鏡装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1A…Aタイプスコープ、 1B…Bタイプスコープ、
2a,2b,2e,2f…CCD、
4,23…プロセッサ装置、 20a,20b…ROM、
21,30…タイミングジェネレータ(TG)、
26…患者回路基板、 31…第1信号処理部、
32…第2信号処理部、
33…DタイプDSP(デジタル信号プロセッサ)、
34…DタイプDSP、 36…フロントCPU、
37…DSP用CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイミングジェネレータを搭載しないAタイプスコープと、タイミングジェネレータを搭載するBタイプスコープと、をプロセッサ装置にコネクタ接続するように構成された電子内視鏡装置において、
上記プロセッサ装置には、上記Aタイプスコープに対応した患者回路内タイミングジェネレータ及び第1画像信号処理部と、上記Bタイプスコープに対応した第2画像信号処理部とを設け、
上記Aタイプスコープが上記プロセッサ装置に接続されたとき、上記患者回路内タイミングジェネレータ及び第1画像信号処理部を作動させ、上記Bタイプスコープが上記プロセッサ装置に接続されたとき、上記第2画像信号処理部を作動させるように制御したことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
上記第1画像信号処理部及び第2画像信号処理部の両方に接続可能となるDタイプデジタル信号プロセッサとDタイプデジタル信号プロセッサとを含み、スコープ画像処理形式の相違に対応して、上記Dタイプデジタル信号プロセッサと上記Dタイプデジタル信号プロセッサのいずれかを選択して作動させることを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−77845(P2009−77845A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248401(P2007−248401)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】