説明

電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】優れた対磨耗性及び耐熱性を有する電子写真感光体、並びにその電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】下記一般式(I)、(II)で表される化合物の共重合体、若しくは単独重合体の混合物を含有する電子写真感光体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、導電性支持体上に感光層等の機能層が形成された電子写真感光体(以下、場合により「感光体」という)が搭載される。
【0003】
従来、かかる機能層の構成材料である結着樹脂としては、ポリカーボネートが広く用いられてきた。通常、結着樹脂を構成材料として使用する場合、機能層は浸漬塗布法等の塗布法により形成される。ポリカーボネートの中でも、特に、ビスフェノールZ型ポリカーボネートは、各種有機溶剤への溶解性が高いことから塗布液の調製が比較的容易であり、さらに機械的強度及び電気特性も比較的良好なことから感光体に使用される結着樹脂として主要なものであった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電子写真方式の画像形成装置には、電子写真プロセスにおける感光体表面の付着物や残存トナーを除去するクリーニング部材が設けられている。また、繰り返しの電子写真プロセスにより、画像形成装置内は、比較的高い温度となる。そのため、感光体にはある程度の耐磨耗性及び耐熱性を有することが要求される。
【0005】
このような事情から、感光体の耐磨耗性や耐熱性の向上を目的として、例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートや各種変性ポリカーボネート、芳香族多環系ポリカーボネート、各種ポリアリレートを電子写真感光体用の結着樹脂に適用しようとする報告もされている(例えば、特許文献2〜4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平1−246580号公報
【特許文献2】特開平6−75391号公報
【特許文献3】特開平8−123049号公報
【特許文献4】特開2003−43817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子写真方式の画像形成装置には、印刷並の高画質が要求されており、そのため感光体へのクリーニング部材の当接圧力が強化され、感光体が磨耗の進行しやすい条件に置かれている。また、プリンターの小型化に伴い、感光体とフューザー等の発熱部とが比較的近い位置に配置されるようになり、感光体にはさらなる耐熱性の向上が要求されている。
【0008】
しかしながら、上記従来の結着樹脂を使用した電子写真感光体は、未だに、その耐磨耗性及び耐熱性が上述したような要求を満足させるには不十分であった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた耐磨耗性及び耐熱性を有する電子写真感光体、並びにその電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を達成すべく、先ず、電子写真感光体用の結着樹脂として、耐磨耗性及び耐熱性の点で優れた特性を有する結着樹脂を得るべく鋭意検討した。その結果、ビフェニル骨格を有する重合体は、剛直な分子構造を有しており、機械的強度及び耐熱性が極めて高いことを見出した。
【0011】
しかしながら、かかる重合体は、ビフェニル骨格を有するが故に、結晶性が高く、有機溶剤への溶解性が極めて悪い。そのため、電子写真感光体の結着樹脂として適用することは困難であった。
【0012】
そこで、本発明者は、さらに鋭意研究した結果、ビフェニル骨格を有する特定の構成単位と屈曲性の高い特定の構成単位との双方を含む樹脂が電子写真感光体の結着樹脂として優れること、並びにその樹脂を用いた電子写真感光体により、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された感光層とを備え、上記感光層が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は下記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と下記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物を含有することを特徴とする。
【化1】

【化2】

【化3】

[上記式中、A及びAはそれぞれ独立に2価の置換基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、ケイ素原子を含む置換基又はフッ素原子を含む置換基を表し、a、b及びcは0〜4の整数を表す。但し、cが2以上の整数である場合には、それらの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0014】
本発明では、上記特定の共重合体、又は上記特定の単独重合体の混合物を感光層に含有させることで、優れた耐磨耗性及び耐熱性を有する電子写真感光体を得ることができる。
【0015】
なお、本発明により上記の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者は以下のように推察する。すなわち、上記一般式(I)で表される構成単位を有する重合体は、ビフェニル骨格を有することから、分子鎖が高い規則性をもって配列するため有機溶剤への溶解性が悪い。ここに、高い屈曲性を有する上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を同一分子内又は同一混合物内に共存させると、ビフェニル骨格に由来する高い規則性がある程度保たれつつ、部分的に屈曲が起こると考えられる。その結果、ビフェニル骨格に由来する優れた機械的強度及び耐熱性を維持しつつ有機溶剤への溶解性を改善でき、ビフェニル骨格を有する上記特定の重合体を、電子写真感光体の結着樹脂として使用可能となり、優れた耐磨耗性及び耐熱性を有する電子写真感光体を得ることができると考えられる。
【0016】
また、本発明では、使用される共重合体及び単独重合体が環境への負荷が低減されたものであり、また塗布法により機能層を形成する際に使用される有機溶剤の量を従来の結着樹脂を使用する場合に比べて低減することが可能となる。したがって、本発明の電子写真感光体は、環境の点でも好ましい。
【0017】
また、本発明の電子写真感光体は、上記共重合体が、下記一般式(II−1)で表される構成単位、又は下記一般式(III−1)で表される構成単位を有することが好ましい。
【化4】

【化5】

[上記式中、A及びAはそれぞれ独立に2価の置換基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、ケイ素原子を含む置換基又はフッ素原子を含む置換基を表し、a、b及びcは0〜4の整数を表す。但し、cが2以上の整数である場合には、それらの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0018】
上記共重合体において、上記ビフェニル骨格を有する特定の構成単位と上記屈曲性の高い特定の構成単位とが隣接して結合していることで、1本の分子鎖に剛直性をある程度保ちつつ屈曲性を付与でき、上記ビフェニル骨格を有する特定の構成単位により得られる機械的強度及び耐熱性を維持しつつ、有機溶剤に対する溶解性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明の電子写真感光体は、上記共重合体が、ランダム共重合体であることが好ましい。この場合には、ビフェニル骨格に由来する分子鎖の規則的な配列をさらに乱すことが可能となり、有機溶剤への溶解性をさらに向上させることができる。
【0020】
また、本発明の電子写真感光体は、上記共重合体が、さらに下記一般式(IV)で表される構成単位を有することが好ましい。
【化6】

[上記式中、X及びYはそれぞれ独立に2価の置換基を表す。]
【0021】
上記特定の共重合体を合成する際に、上記特定の構成単位の原料となる化合物が存在することで、所望の特性を有する特定の共重合体をより容易に合成することが可能となる。
【0022】
また、本発明の電子写真感光体は、上記共重合体及び上記単独重合体の重量平均分子量が、3万〜100万であることが好ましい。なお、かかる重量平均分子量はスチレン換算の値である。重量平均分子量が上記範囲を満たす場合には、優れた耐磨耗性及び耐熱性が十分に発揮される。
【0023】
また、本発明の電子写真感光体は、上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は上記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物において、上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とのモル比率が1:9〜9:1であることが好ましい。モル比率が上記範囲を満たす場合には、特に有機溶剤への溶解性が優れており、優れた耐磨耗性及び耐熱性が十分に発揮される。
【0024】
また、本発明の電子写真感光体の好適な構成としては、下記(i)又は(ii)の構成がある。すなわち、(i)上記感光層が電荷発生層と電荷輸送層とを備えており、上記電荷輸送層が上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は上記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物を含有する構成。
【0025】
(ii)上記感光層が上記導電性支持体から最も遠い側に保護層を備えており、上記保護層が上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は上記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物を含有する構成。
【0026】
また、本発明の画像形成装置は、上記本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、帯電した上記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置と、上記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、上記トナー像を被転写媒体に転写する転写装置と、を備えることを特徴とする。本発明の画像形成装置は、上記本発明の電子写真感光体を備えることから、長期にわたって良好な画質を得ることができる。
【0027】
また、本発明のプロセスカートリッジは、上記本発明の電子写真感光体と、上記電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した上記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置、上記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置、並びに上記電子写真感光体をクリーニングするクリーニング装置から選ばれる少なくとも1種と、を備えることを特徴とする。本発明のプロセスカートリッジは、上記本発明の電子写真感光体を備えることから、長期にわたって良好な画質を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、優れた耐磨耗性及び耐熱性を有する電子写真感光体、並びに長期にわたって良好な画質を得ることが可能な画像形成装置及びプロセスカートリッジが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0030】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、その感光層に、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は下記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と下記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物を含有する。
【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
ここで、上記式中、A及びAはそれぞれ独立に2価の置換基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、ケイ素原子を含む置換基又はフッ素原子を含む置換基を表し、a、b及びcは0〜4の整数を表す。但し、cが2以上の整数である場合には、それらの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0035】
上記A及びAで表される2価の置換基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基が挙げられる。上記アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。上記アリーレン基としては、炭素数6〜20のアリーレン基がより好ましい。また、上記アルキレン基又はアリーレン基の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0036】
上記A及びAで表される2価の置換基としては、より具体的には、下記(A−1)〜(A−33)で表されるものが挙げられる。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
上記R、R、R及びRで表されるアルキレン基としては、上記炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましい。
【0040】
上記R、R及びRで表されるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。また、アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましい。また、ケイ素原子を含む置換基としては、例えば、シリル基、シリルジシラニル基等の上述したアルキル基の炭素原子の一部又は全部がケイ素原子で置換されたものが挙げられる。また、フッ素原子を含む置換基としては、例えば、上述したアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0041】
また、cが2以上の整数である場合には、上記R、R及びRで表される置換基は互いに結合して環を形成してもよい。その場合に形成する環は、脂肪族のものでも、芳香族のものでもよく、さらに複素環であってもよい。特に、上記一般式(III)で表される構造単位においては、cが2であり、ナフチレン基となっていることが好ましい。
【0042】
上記一般式(I)で表される構成単位としては、より具体的には、A、R、R、R、R、a及びbが、下記(1−1)〜(1−11)で表される組み合わせのものが挙げられる。なお、下記表中、−Cは、フェニル基を示す。
【0043】
【表3】

【0044】
また、上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位としては、より具体的には、A、R、R、R及びcが、下記(2−1)〜(2−11)で表される組み合わせのものが挙げられる。
【0045】
【表4】

【0046】
上記共重合体は、下記一般式(II−1)で表される構成単位、又は下記一般式(III−1)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
ここで、上記式中、A、A、R、R、R、R、R、R、R、a、b及びcとしては、上記一般式(I)、(II)及び(III)において説明したA、A、R、R、R、R、R、R、R、a、b及びcと同様のものである。また、上記一般式(II−1)及び(III−1)におけるA、A、R、R、R、R、R、R、R、a、b及びcの組み合わせは、上記(1−1)〜(1−11)及び(2−1)〜(2−10)で表される組み合わせがあり、それぞれ(1−1)と(2−1)、(1−2)と(2−2)の規則性で組み合わせられていることが好ましい。なお、(1−11)は(2−10)と組み合わせられていることが好ましい。
【0050】
ここで、上記共重合体と単独重合体の混合物とでは、上記特定の構成単位を有する共重合体が、有機溶剤への溶解性の点で好ましい。なお、上記共重合体が、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0051】
また、上記共重合体は、さらに下記一般式(IV)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0052】
【化12】

【0053】
ここで、上記式中、X及びYはそれぞれ独立に2価の置換基を表す。X及びYとしては、より具体的には、置換若しくは無置換のアルキレン基、置換若しくは無置換のアリーレン基が挙げられる。上記アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。上記アリーレン基としては、炭素数6〜20のアリーレン基がより好ましい。また、上記アルキレン基又はアリーレン基の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0054】
上記共重合体及び上記単独重合体の重量平均分子量は、3万〜100万であることが好ましく、4万〜20万であることがより好ましい。なお、かかる重量平均分子量はスチレン換算の値である。この重量平均分子量が3万未満になると、機械的強度が不十分となりやすい傾向がある。他方、100万を越えると、有機溶剤への溶解性が不十分となり塗布成形が困難となる傾向がある。
【0055】
また、上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は上記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物において、上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とのモル比率が1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜8:2であることがより好ましい。このモル比率が1:9未満になると、上記一般式(I)で表される構成単位に起因する、高い機械的強度及び耐熱性の効果が不十分となる傾向がある。他方、9:1を越えると、上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位に起因する有機溶剤への溶解性の効果が不十分となる傾向がある。
【0056】
以上説明した上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は上記一般式(I)、(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体は、公知の方法で製造することが可能である。しかしながら、上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とのみから構成される共重合体は、以下に説明する方法にて合成することが好ましい。
【0057】
すなわち、先ず、上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体の原料となるジカルボン酸誘導体及びジオールを準備する。その原料のジカルボン酸誘導体及びジオールを、ジカルボン酸誘導体:ジオール=1:1〜1:4の範囲の比率で重合装置に入れる。この中に、さらに、金属酢酸塩、金属酸化物、チタン酸エステル等の公知のエステル交換触媒を、原料に対して1〜1000ppm程度加える。
【0058】
そして、目的の共重合体の構造にもよるが、重合装置内を140〜180℃に加熱し、原料が溶解したところで、攪拌を開始する。次に、重合装置内を30℃/時間の昇温速度で昇温し、留去される水又はアルコールを計量する。装置内の温度が220〜250℃に達したら、昇温をやめ、この温度を維持する。留去される水又はアルコールが理論量の90%以上に達したら、エステル交換反応を終了する。
【0059】
ここで、金属酸化物、チタン酸エステル等の重合触媒を、原料に対して1〜1000ppm程度加え、攪拌を継続し、重合装置内を徐々に減圧する。さらに、減圧と同時に、60℃/時間の昇温速度で昇温する。1〜3時間で重合装置内の圧力を10Pa以下に、温度を260〜300℃にし、この状態を維持する。攪拌トルクが所定の値に達したら、重合反応を終了し、目的の共重合体が得られる。その後、重合装置内を若干加圧し、得られた共重合体をストランド状に押し出し、冷却プールを通過させた後、カッターにてペレット化すると、後作業がより容易となるので好ましい。
【0060】
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を備えるものである。かかる感光層は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層に含有する単層型感光層、又は電荷発生材料を含有する層(電荷発生層)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層)とを別個に設けた機能分離型感光層のいずれであってもよい。
【0061】
なお、感光層が、電荷発生層と電荷輸送層とを備える場合には、上記電荷輸送層が上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は上記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物を含有することが好ましい。
【0062】
また、感光層が、上記導電性支持体から最も遠い側に保護層を備える場合には、保護層が上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は上記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と上記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物を含有することが好ましい。
【0063】
図1は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、電子写真感光体1は、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。
【0064】
図1の電子写真感光体1は、電荷輸送層6に上述した共重合体又は2種の単独重合体の混合物を含有している。
【0065】
以下、電子写真感光体1の各要素について説明する。
導電性支持体2としては、特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラムを使用することができる。また、ポリマー製シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したもの;酸化インジウム、酸化錫等の導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したもの;さらには、カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材上に塗布することによって導電処理したものが挙げられる。なお、これらの形状は、ドラム状、シート状、プレート状等の何れの形状でも使用可能である。
【0066】
ここで、金属パイプ基材を導電性支持体2として用いる場合、その表面は素管のままであってもよいが、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理等の処理を行なうことが好ましい。表面処理を行ない、基材表面を粗面化することにより、レーザービームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0067】
次に、電荷発生層5について説明する。電荷発生層5は、電荷発生材料を含有して構成され、少なくとも電荷発生材料及び結着樹脂を含有して構成されることが好ましい。
【0068】
電荷発生材料は、電荷発生機能を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料、ジブロモアントアントロン等の縮合環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、セレン等が挙げられる。
【0069】
これらの中でも、フタロシアニン顔料が好ましく、その中でもヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が特に好ましい。
【0070】
更に、ヒドロキシガリウムフタロシアニンとしては、分光吸収スペクトルにおいて810〜839nmに吸収極大を有するヒドロキシガリウムフタロシアニンが、電荷発生層5中における分散性に優れ、また高い光感度と、かぶり等画像欠陥を起こさない高画質を実現できることから特に好ましい。
【0071】
結着樹脂についても特に限定されるものではない。具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、或いはこれらの共重合体等が挙げられる。また、本発明にかかる共重合体、又は単独重合体、或いはそれらの混合物を使用してもよい。
【0072】
これらの中でも、電荷発生材料の分散性の点で、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレンとアクリル樹脂の共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0073】
電荷発生層5は、電荷発生材料及び結着樹脂を所定の溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液を用いて形成される。なお、電荷発生層5が電荷発生材料のみを含有して構成される場合には、かかる電荷発生層5は蒸着法により形成される。
【0074】
上記溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いもよい。
【0075】
かかる溶剤に、電荷発生材料及び結着樹脂を混合、分散させる際には、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダー等を用いることができる。
【0076】
また、電荷発生層形成用塗布液を塗布する際には、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を採用することができる。そして、導電性支持体2上に、塗布液を塗布し、乾燥することによって、電荷発生層5を形成する。
【0077】
電荷発生層5の膜厚は、良好な電気特性と画質を得るために、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層5の膜厚が0.05μm未満であると、十分な感度を得ることが困難となる傾向がある。他方、電荷発生層5の膜厚が5μmを超えると、帯電性の不良等の弊害が生じ易くなる傾向がある。
【0078】
なお、電荷発生層5上に電荷輸送層6等の他の層をさらに成膜する場合には、その塗布液に使用される溶剤によって電荷発生層5が溶解或いは膨潤することのないように、電荷発生層5の結着樹脂と電荷発生層5上に塗布される塗布液の溶剤との組み合わせは適宜選択される。また、電荷発生層5の結着樹脂と後述する電荷輸送層6の結着樹脂とは、互いの屈折率同士が近いものを組み合わせて使用することが好ましく、具体的には、互いの屈折率の差が1以下であることが好ましい。このように屈折率の近い結着樹脂を組み合わせて用いると、電荷発生層5と電荷輸送層6との界面での光の反射が抑制され、干渉縞防止効果が向上する傾向にある。
【0079】
次に、電荷輸送層6について説明する。電荷輸送層6は、少なくとも電荷輸送材料と結着樹脂を含有して構成される。なお、結着樹脂としては、上述した本発明にかかる共重合体及び単独重合体の混合物を含有する。
【0080】
電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を持つものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ピラゾリン誘導体、芳香族第3級アミノ化合物、芳香族第3級ジアミノ化合物、1,2,4−トリアジン誘導体、ヒドラゾン誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、α−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、カルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール誘導体等の正孔輸送材料、キノン系化合物、テトラシアノキシジメタン系化合物、フルオレノン化合物、オキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、ジフェノキノン化合物等の電子輸送性化合物、或いはこれらの構造を含む高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
これらの中でも、易動度が高いという点で、一般式(V)〜(VII)で表される化合物が特に好ましい。
【0082】
【化13】

【0083】
ここで、上記式(V)中、Ar、Arはそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基を表し、dは0〜2の整数を表す。かかるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましい。また、アリール基の置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)、炭素数1〜3のアルキル基で置換された置換アミノ基、ハロゲン原子が好ましい。
【0084】
【化14】

【0085】
また、上記式(VI)中、R11、R12はそれぞれ独立にアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)、ハロゲン原子を表す。また、R13〜R16はそれぞれ独立にアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)、炭素数1〜2のアルキル基で置換された置換アミノ基、置換又は無置換のアリール基、或いは下記式(VI−1)、(VI−2)で表される置換基を表す。e〜hは、それぞれ独立に0〜2の整数を表す。
【0086】
【化15】

【0087】
【化16】

【0088】
ここで、上記式(VI−1)中、R31〜R33はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。また、上記式(VI−2)中、Ar、Arはそれぞれ独立に置換又は無置換のアリール基を表す。
【0089】
【化17】

【0090】
また、上記式(VII)中、R17は水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)、置換若しくは無置換のアリール基、又は上記式(VI−1)若しくは(VI−2)で表される置換基を表す。R18〜R21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基)、炭素数1〜2のアルキル基で置換された置換アミノ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。また、k1〜k5は、1〜4の整数を表す。
【0091】
結着樹脂としては、上述した本発明にかかる共重合体及び単独重合体の混合物を含有するが、通常使用される他の結着樹脂と併用してもよい。他の結着樹脂としては、電荷発生層5において、例示したものと同様のものが挙げられる。
【0092】
電荷輸送層6は、電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。かかる塗布液における、結着樹脂と電荷輸送材料との配合比(質量比)は、電気特性、膜強度を考慮しつつ任意に設定することができる。
【0093】
電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。かかる溶剤に、電荷輸送材料及び結着樹脂を混合、分散させる際には、電荷発生層5において説明した公知の手段を用いることができる。
【0094】
電荷輸送層6を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。そして、電荷発生層5上に、塗布液を塗布し、乾燥することによって、電荷輸送層6は形成する。
【0095】
この電荷輸送層6の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。
【0096】
図2は、本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。図2に示すように、電子写真感光体1aは、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5及び電荷輸送層6がこの順序で積層された構造を有している。なお、電子写真感光体1aは、感光層3が下引層4を備えること以外は、電子写真感光体1と同様の構成を有する。
【0097】
以下、下引層4について説明する。この下引層4は、感光層3の帯電時において、導電性支持体2から感光層3への電荷の注入を阻止する機能を有する。また、この下引層4は、感光層3を導電性支持体2に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この下引層4は、導電性支持体2の光反射を防止する機能を有する。
【0098】
下引層4は、結着樹脂を含有して構成され、さらに有機化合物又は無機化合物の粉末、電子輸送性物質等から任意に選択されるものを含有して構成されてもよい。
【0099】
結着樹脂としては、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物が挙げられる。
【0100】
また、下引層4は、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を含有して構成されてもよい。そして、これらの化合物及び上述した結着樹脂は、1種を単独で又は複数の化合物の混合物或いは重縮合物として用いることができる。
【0101】
更に、これらの中でも、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は、残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ない等性能上優れている。
【0102】
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0103】
特に好ましく用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0104】
また、上記チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0105】
上記アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0106】
下引層4中には、電気特性の向上や光散乱性の向上等の目的により、各種の有機化合物の微粉末若しくは無機化合物の微粉末を添加することができる。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子等が有効である。添加微粉末の粒径は、0.01〜2μmのものが好ましい。微粉末は必要に応じて添加されるが、その添加量は下引層4の固形分の総質量に対して、質量比で10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。これらの中でも、電子移動性が特に高い酸化亜鉛又は酸化チタンが特に好ましい。
【0107】
また、下引層4中には、先に説明した電子輸送性物質、電子輸送性顔料等を含有させることも低残留電位化や環境安定性の観点から有効である。
【0108】
下引層4は、上述した構成材料を含む下引層形成用塗布液を用いて形成される。下引層形成用塗布液を調製する際には、微粉末状の物質を添加する場合には樹脂成分を溶解した溶液中に添加して分散処理が行われる。
【0109】
この分散処理方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。そして、得られた塗布液を、導電性支持体2上に塗布し、乾燥させることにより、下引層4は形成する。
【0110】
このときの塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0111】
このようにして形成した下引層4の膜厚は、0.01〜30μmが好ましく、0.05〜25μmがより好ましい。
【0112】
図3は、本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。図3に示すように、電子写真感光体1bは、導電性支持体2と、感光層3とから構成されている。感光層3は、導電性支持体2上に、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有している。なお、電子写真感光体1bは、感光層3が保護層7を備えること以外は、電子写真感光体1と同様の構成を有する。
【0113】
図3の電子写真感光体1bは、電荷輸送層6及び/又は保護層7に上述した本発明にかかる共重合体又は単独重合体の混合物を含有している。
【0114】
保護層7は、電子写真感光体1cの帯電時の電荷輸送層6の化学的変化を防止したり、感光層3の機械的強度をさらに改善する為に用いられる。
【0115】
保護層7は、導電性材料及び結着樹脂を含有して構成される。この導電性材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、N,N’−ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン化合物、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫とアンチモン、硫酸バリウムと酸化アンチモンとの固溶体の担体、上記金属酸化物の混合物、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を混合したもの、或いは、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、又は硫酸バリウムの単一粒子中に上記の金属酸化物を被覆したものが挙げられる。
【0116】
結着樹脂としては、本発明にかかる共重合体又は単独重合体の混合物が挙げられる。また、他の結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の公知の樹脂が用いられる。また、これらは必要に応じて互いに架橋させて使用することもできる。
【0117】
保護層7としては、強度、電気特性、画質維持等の観点から、電荷輸送性を有し且つ架橋構造を有するものが好ましく、電荷輸送性を有する架橋膜であることがより好ましい。かかる架橋膜としては、シロキサン系樹脂からなるものがより好ましく、一般式(X)で表される構造のものが特に好ましい。
G−D−F …(VIII)
ここで、上記式中、Gは無機ガラス質ネットワークサブグループ、Dは可とう性有機サブユニット、Fは電荷輸送性サブユニットを表す。
【0118】
電荷輸送性サブユニットとしては、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物、キノン系化合物、フルオレノン系化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等が挙げられ、これらの中でも、本発明の電子写真感光体の電荷輸送層6との組み合わせからトリアリールアミン系化合物が好ましい。
【0119】
また、無機ガラス質ネットワークサブグループは、例えば、反応性を有するSi基を有する構造が挙げられる。これが互いに架橋反応を起こし、3次元的なSi−O−Si結合を形成する。
【0120】
また、可とう性有機サブユニットは、硬いが脆い無機ガラス質ネットワークに適度な可とう性を付与するものであり、具体例を挙げると、アルキレン直鎖や不飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0121】
保護層7は、上述した構成材料を含有する保護層形成用塗布液を用いて形成される。この塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独或いは2種以上混合して用いることができるが、できるだけこの塗布液が塗布される下層(電子写真感光体1bでは、電荷輸送層6)を溶解しにくい溶剤を用いることが好ましい。
【0122】
この保護層7を形成するための塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0123】
このようにして形成された保護層7の膜厚は1〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
【0124】
以上、本発明の電子写真感光体の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図4に示す電子写真感光体1cのように、感光層3は、導電性支持体2上に、下引層4、電荷発生層5、電荷輸送層6及び保護層7がこの順序で積層された構造を有していてもよい。また、電荷発生層5と電荷輸送層6とは、その積層順序が逆であってもよい。
【0125】
通常、保護層7を形成するには、電荷輸送層6において保護層7の硬化に耐えられるだけの耐熱性、機械的強度が必要であり、これが不足すると、電荷輸送層6表面に熱劣化や、収縮に伴うクラックの発生が生じる。本発明にかかる共重合体又は単独重合体の混合物を含有する電荷輸送層6は、耐熱性が高く、機会強度も高いため、このような問題が抑制されたものである。
【0126】
また、上記の実施形態の電子写真感光体1,1a,1b,1cにおいては、感光層3が機能分離型の場合について説明したが、本発明の電子写真感光体は機能分離型のものでなくてもよく、例えば、図5に示す電子写真感光体1dのように、単層型であってもよい。なお、この場合にも、導電性支持体2と単層型感光層8との間に下引層4を備えて感光層を構成してもよく、単層型感光層上に保護層7を備えて感光層を構成してもよい、さらに下引層4と保護層7を共に有するものであってもよい。
【0127】
本発明の電子写真感光体は、近赤外光若しくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリ等の画像形成装置や、このような画像形成装置に備えられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は、一成分系、二成分系の正規現像剤或いは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また、本発明の電子写真感光体は、帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の画像形成装置に搭載されて、電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる
【0128】
また、本発明の電子写真感光体は、露光波長として紫外範囲、詳しくは380〜500nmの光源を用いた画像形成装置に用いると好適である。特に、上記波長範囲の短波長レーザ光やLEDを露光光源に用いると、高エネルギーであることから、照射時に感光体表面の温度が高くなり、通常の感光体は熱劣化を起こし易くなるが、本発明の感光体は耐熱性が極めて高いため、熱劣化を起こすこともなく、熱的安定性や耐久性に優れ、かぶりも生じ難い。
【0129】
(画像形成装置)
次に、本発明の画像形成装置について説明する。本発明の画像形成装置は、本発明の電子写真感光体を搭載している。
【0130】
図6は、本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。図6に示す画像形成装置100は、電子写真感光体1と、電子写真感光体1を帯電させる帯電装置8と、帯電装置8に接続された電源9と、帯電した電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成させる露光装置10と、静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置11と、現像装置11により電子写真感光体7に現像されたトナー像を被転写媒体に転写する転写装置12と、クリーニング装置13と、除電器14と、定着装置15とを備える。
【0131】
なお、画像形成装置100において、露光装置10、現像装置11、転写装置12、クリーニング装置13及び除電器14は、電子写真感光体1の周方向に沿って、この順に配置されている。
【0132】
また、本発明の電子写真感光体1は、優れた耐磨耗性を有することから、直流電圧に交流電圧を重畳した接触帯電方式の帯電装置8を採用する画像形成装置100においても好ましく使用できる。また、帯電装置8は、コロナ放電方式により帯電させる帯電装置であってもよい。
【0133】
また、露光装置10の光源には、露光波長として紫外範囲、具体的には、380〜500nmの光源を用いてもよい。
【0134】
画像形成装置100は、球形トナー、更に詳細には平均形状指数(ML/A)が100〜150の球形トナーを用いるときに、画質の点で特に良好である。このような球形トナーでは通常、クリーニングブレードと感光体の接触部でトナー滑りが起こり、クリーニング性が悪くなる傾向があるが、本発明の電子写真感光体は、適度な硬度を有しており、上記トナー滑りを起こすことなく、良好なクリーニング性を実現することができる。
【0135】
トナーの平均粒径は、2〜12μmが好ましく、3〜9μmがより好ましい。平均粒径が2μm未満になると、クリーニングしにくくなり、凝集が起こり画質不良が起こりやすくなる傾向がある。他方、12μmを越えると、解像度が低下しやすくなる傾向がある。
【0136】
球形トナーについて詳細に説明すると、製造方法は例えば、結着樹脂と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ形成された分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱溶融させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法、結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等が使用できる。
【0137】
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造を持たせる製造方法等公知の方法を用いることができる。これらの中でも、形状、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。トナー母体は結着樹脂と着色剤、離型剤とからなり、必要であれば、分散助剤としてのシリカや帯電制御剤を用いてもよい。
【0138】
トナーに使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のエチルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体等が挙げられる。
【0139】
特に代表的なものとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変形ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。
【0140】
また、トナーの着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、アニリンブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デユポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3等が具体例として挙げられる。
【0141】
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピッシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が具体例として挙げられる。
【0142】
帯電防止剤としては、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプのもの等が挙げられる。
【0143】
本実施形態に用いるトナーは、上記以外の添加剤を用いてもよい。例えば、滑剤粒子や研磨粒子等である。滑剤粒子としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブテン、滑石、低分子量ポリオレフィン、脂肪族アミド類、シリコーン類、各種植物性ワックス等が挙げられる。また研磨剤としては、例えば、酸化セリウム、チタン酸マグネシウム、窒化ケイ素等の無機粒子や、スチレン樹脂微粒子、スチレンアクリル樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。
【0144】
また、電子写真用カラートナーは、キャリアと混合して使用されるが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉又はそれらの表面に樹脂コーティングを施したものが使用される。また、キャリアとの混合割合は、適宜設定することができる。
【0145】
図7は、本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態の基本構成を示す模式図である。画像形成装置200は、中間転写方式の画像形成装置であり、ハウジング220内において4つの電子写真感光体201a〜201d(例えば、201aがイエロー、201bがマゼンタ、201cがシアン、201dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成可能である)が中間転写ベルト209に沿って相互に並列に配置されている。ここで、画像形成装置200に搭載されている電子写真感光体201a〜201dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。
【0146】
電子写真感光体201a〜201dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール202a〜202d、現像装置204a〜204d、1次転写ロール210a〜210d、クリーニングブレード215a〜215dが配置されている。現像装置204a〜204dのそれぞれには、トナーカートリッジ205a〜205dに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給可能である。また、1次転写ロール210a〜210dは、それぞれ中間転写ベルト209を介して電子写真感光体201a〜201dに当接している。
【0147】
さらに、ハウジング220内の所定の位置にはレーザー光源(露光装置)203が配置されている。レーザー光源203から出射されたレーザー光は、帯電後の電子写真感光体201a〜201dの表面に照射できるようになっている。これにより、電子写真感光体201a〜201dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト209上に重ねて転写される。
【0148】
中間転写ベルト209は、駆動ロール206、バックアップロール208及びテンションロール207により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール213は、中間転写ベルト209を介してバックアップロール208と当接するように配置されている。バックアップロール208と2次転写ロール213との間を通った中間転写ベルト209は、例えば駆動ロール206の近傍に配置されたクリーニングブレード216により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0149】
また、ハウジング220内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)211が設けられており、トレイ211内の紙等の被転写媒体230が移送ロール212により中間転写ベルト209と2次転写ロール213との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール214の間に順次移送された後、ハウジング220の外部に排紙される。
【0150】
なお、上述の説明においては中間転写体として中間転写ベルト209を使用する場合について説明したが、中間転写体は、上記中間転写ベルト209のようにベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。中間転写体として中間転写ベルト209のようなベルトの形状の構成を採用する場合、一般にベルトの厚さは50〜500μmが好ましく、60〜150μmがより好ましい。なお、ベルトの厚さは、材料の硬度に応じて適宜選択することができる。また、中間転写体としてドラム形状を有する構成を採用する場合、基材としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等で形成された円筒状基材を用いることが好ましい。この円筒状基材上に、必要に応じて弾性層を被覆し、該弾性層上に表面層を形成することができる。
【0151】
なお、本発明でいう被転写媒体とは、電子写真感光体状に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写媒体であり、また、中間転写体を用いる場合には中間転写体が被転写媒体になる。
【0152】
(プロセスカートリッジ)
次に、本発明の電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジについ説明する。図8は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。
【0153】
プロセスカートリッジ300は、ケース20内に、電子写真感光体1とともに帯電装置8、露光装置10、現像装置11、クリーニング装置13及び除電器14を取り付けレール16を用いて組み合わせて一体化したものである。なお、ケース20には、露光装置10の代わりに、露光のための開口部10が設けられていてもよい。かかるプロセスカートリッジ300は、転写装置12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【実施例】
【0154】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例になんら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
【0155】
(実施例1)
84mmφ×347mm、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(昭和タイタニウム社製、商品名;アルミナビーズCB−A30S、平均粒径D50=30μm)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化したものを導電性支持体として準備した。
【0156】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)6部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)12部、酸化亜鉛(Nano Tech ZnO、シーアイ化成社製、一次粒径30nm)41部、シリコーンボール(トスパール120、東芝シリコーン社製)1部、レベリング剤としてシリコーンオイル(SH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)100ppm及びメチルエチルケトン52部からなる材料をバッチ式ミルにて10時間の分散を行い、下引層形成用塗布液を調製した。得られた下引層用形成用塗布液を導電性支持体上に浸漬塗布し、150℃で30分間加熱乾燥し、膜厚20.0μmの下引層を形成した。
【0157】
次に、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)1部を酢酸n−ブチル100部に溶解させた溶液と、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン1部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150部とともに5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0158】
次に、電荷輸送層用の結着樹脂として、下記式(I−a)、(II−a)及び(IV−a)で表される構成単位をモル比率で40:10:50の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が60000であり、ランダム共重合体であった。かかる結着樹脂6部、電荷輸送材料としてN、N’−ジフェニル−N、N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4部、テトラヒドロフラン80部及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を浸漬塗布装置によって、電荷発生層上に塗布し、120℃で40分間加熱乾燥した。そして、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、実施例1の電子写真感光体を得た。
【0159】
【表5】

【0160】
得られた電子写真感光体を、図6に示す構成を有するフルカラー・レーザープリンター(DocuPrint C620、富士ゼロックス社製)に装着して、実施例1の画像形成装置を作製した。なお、上記のフルカラー・レーザープリンターにおいては、帯電装置としてローラー帯電器(BCR)、露光装置として780nmの半導体レーザーを使用したROS、現像方式として2成分系反転現像方式、転写装置としてローラー帯電器(BTR)、転写方式としてベルト中間転写方式を採用した。
【0161】
(実施例2)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、先ず、電荷輸送層用の結着樹脂として、上記式(I−a)、(II−a)及び(IV−a)で表される構成単位をモル比率で70:10:30の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が45000であり、ランダム共重合体であった。かかる共重合体を結着樹脂として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層上に電荷輸送層を形成し、実施例2の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の画像形成装置を作製した。
【0162】
(実施例3)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、先ず、電荷輸送層用の結着樹脂として、上記式(I−a)、(II−a)及び(IV−a)で表される構成単位をモル比率で20:20:60の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が65000であり、ランダム共重合体であった。かかる共重合体を結着樹脂として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層上に電荷輸送層を形成し、実施例3の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の画像形成装置を作製した。
【0163】
(実施例4)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、先ず、電荷輸送層用の結着樹脂として、上記式(I−b)、(II−b)及び(IV−b)で表される構成単位をモル比率で40:20:40の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が55000であり、ランダム共重合体であった。かかる共重合体を結着樹脂として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層上に電荷輸送層を形成し、実施例4の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の画像形成装置を作製した。
【0164】
(実施例5)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、先ず、電荷輸送層用の結着樹脂として、上記式(I−c)、(II−c)及び(IV−c)で表される構成単位をモル比率で40:20:40の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が55000であり、ランダム共重合体であった。かかる共重合体を結着樹脂として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層上に電荷輸送層を形成し、実施例5の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の画像形成装置を作製した。
【0165】
(実施例6)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層を形成した。次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に強い回折ピークを持つクロロガリウムフタロシアニン1部をポリブチラール樹脂(積水化学製、BM−S)1部及び酢酸ブチル100部と混合し、ガラスビーズとともに1時間ペイントシェーカーで分散し、電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間乾燥することにより、電荷発生層を形成した。
【0166】
この電荷発生層上に実施例1と同様にして電荷輸送層を形成し、実施例6の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の画像形成装置を作製した。
【0167】
(実施例7)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、電荷輸送材料をN、N’−ジフェニル−N、N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4部から下記式(X−1)に示す化合物3部に変えた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層を形成し、実施例7の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の画像形成装置を作製した。
【0168】
【化18】

【0169】
(実施例8)
実施例1と同様にして導電性支持体を準備した。次に、二酸化錫コート処理硫酸バリウム10部、酸化チタン2部、フェノール樹脂6部、シリコーンオイル0.001部をメタノール4部、メトキシプロパノール16部の混合溶剤に分散し、第一の下引層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を、導電性支持体上に浸漬塗布し、140℃、30分間硬化させ、膜厚15μmの第一の下引層を形成した。次に、第一の下引層上に、N−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部、n−ブタノール30部の混合溶剤に溶解した第二の下引層形成用塗布液を浸漬塗布し、乾燥することにより、膜厚0.5μmの第二の下引層を設けた。次に、実施例1と同様にして電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、実施例8の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の画像形成装置を作製した。
【0170】
(比較例1)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、結着樹脂としてビスフェノールA型ポリカーボネート(帝人製、パンライト)を用いた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層を形成し、比較例1の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の画像形成装置を作製した。
【0171】
(比較例2)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、結着樹脂としてビスフェノールA型ポリアリレート(ユニチカ製、Uポリマー)を用いた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層を形成し、比較例2の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の画像形成装置を作製した。
【0172】
(耐熱性、耐磨耗性及び画質評価試験)
実施例1〜8及び比較例1〜2の電子写真感光体について、電荷輸送層の荷重たわみ温度をJIS K−7207に示される方法に準拠し、1.82MPaの荷重で評価した。また、実施例1〜8及び比較例1〜2の画像形成装置を用いて、1万枚プリント後の感光体磨耗率(プリント前後の膜厚差を感光体回転サイクル数で割った値)を自作の渦電流膜厚計を用いて評価した。更に、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表6に示す。
【0173】
【表6】

【0174】
表6に示すように、実施例1〜8の電子写真感光体は耐熱性が高く、磨耗も抑制されていることが確認された。また、実施例1〜8の画像形成装置は、長期プリント後も良好な画質が得られた。
【0175】
一方、比較例1及び2の電子写真感光体は耐熱性が低く、磨耗が顕著であることが確認された。また、比較例1及び2の画像形成装置は長期プリント後に、熱劣化、磨耗に起因すると思われる筋状欠陥が発生した。
【0176】
(実施例9)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成した。次に、下記式(X−2)に示す化合物2部、メチルトリメトキシシラン2部、テトラメトキシシラン0.5部及びコロイダルシリカ0.3部をイソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部及び蒸留水0.3部の混合溶剤に溶解させ、イオン交換樹脂(アンバーリスト15E:ローム・アンド・ハース社製)0.5部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。
【0177】
【化19】

【0178】
加水分解したものからイオン交換樹脂をろ過分離し、得られたろ液に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(aqaq))0.1部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4部、ポリテトラフルオロエチレン粒子(ダイキン工業製、ルブロンL−2)0.02部を加え、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を、電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法により塗布して室温で30分乾燥した。その後、170℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約3μmの保護層を形成し、実施例9の電子写真感光体を得た。この電子写真感光体について、電荷輸送層表面のクラックの有無を目視で評価した。さらに、得られた電子写真感光体を、図6に示す構成を有するフルカラー・レーザープリンター(DocuPrint C620、富士ゼロックス社製)に装着して実施例9の画像形成装置を作製し、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表7に示す。
【0179】
【表7】

【0180】
(実施例10)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成した。次に、下記式(X−3)及び(X−4)で示される化合物をそれぞれ2部ずつと、テトラメトキシシラン0.05部とを、イソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部及び蒸留水0.3部の混合溶剤に溶解させ、これにイオン交換樹脂(アンバーリスト15E:ローム・アンド・ハース社製)0.05部を加え、室温で攪拌することにより、24時間加水分解を行った。
【0181】
【化20】

【0182】
【化21】

【0183】
こうして得られた液体からイオン交換樹脂をろ過分離し、得られたろ液2部に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート0.04部、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン0.02部を加え、保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層状に、リング型浸漬塗布法により塗布して室温で30分乾燥した。その後、170℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約3μmの保護層を形成し、実施例10の電子写真感光体を得た。この電子写真感光体について、電荷輸送層表面のクラックの有無を目視で評価した。さらに、得られた電子写真感光体を、図6に示す構成を有するフルカラー・レーザープリンター(DocuPrint C620、富士ゼロックス社製)に装着して実施例10の画像形成装置を作製し、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表7に示す。
【0184】
(比較例3)
電荷輸送層の高分子化合物としてビスフェノールA型ポリカーボネート(帝人製、パンライト)を用いた以外は、実施例9と同様にして導電性支持体上に、下引層、電荷発送層、電荷輸送層及び保護層を形成し、比較例3の電子写真感光体を得た。この電子写真感光体について、電荷輸送層表面のクラックの有無を目視で評価した。さらに、得られた電子写真感光体を、図6に示す構成を有するフルカラー・レーザープリンター(DocuPrint C620、富士ゼロックス社製)に装着して比較例3の画像形成装置を作製し、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表7に示す。
【0185】
(比較例4)
電荷輸送層の高分子化合物としてビスフェノールA型ポリカーボネート(帝人製、パンライト)を用いた以外は、実施例10と同様にして導電性支持体上に、下引層、電荷発送層、電荷輸送層及び保護層を形成し、比較例4の電子写真感光体を得た。この電子写真感光体について、電荷輸送層表面のクラックの有無を目視で評価した。さらに、得られた電子写真感光体を、図6に示す構成を有するフルカラー・レーザープリンター(DocuPrint C620、富士ゼロックス社製)に装着して比較例4の画像形成装置を作製し、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表7に示す。
【0186】
表10に示した結果からも明らかなように、実施例9及び10の電子写真感光体は、保護層を設けても、電荷輸送層表面にクラックが発生せず、それを用いた画像形成装置の画質は長期プリント後も良好であった。
【0187】
一方、比較例3及び4の電子写真感光体は、保護層を設けることにより、熱劣化や収縮による機械劣化によって、電荷輸送層表面にクラックが発生していることが確認された。また、このクラックが原因で、画像形成装置は長期プリント後、画質欠陥を生じた。
【0188】
(実施例11)
実施例1と同様にして、導電性支持体上に、下引層を形成した。次に、電荷発生層を形成する際に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部の替わりに、t−セレン1部を用いたこと以外は実施例1と同様にして下引層上に電荷発生層を形成した。さらに、実施例1と同様にして電荷発生層上に電荷輸送層を形成し、実施例11の電子写真感光体を得た。
【0189】
得られた電子写真感光体を、フルカラー・レーザープリンター(DocuPrint C620、富士ゼロックス社製)の露光光源を波長420nmの窒化ガリウムレーザーに替えた改造機に装着して、実施例11の画像形成装置を作製した。かかるが像形成装置を用いて1万枚プリントを行い、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表8に示す。
【0190】
【表8】

【0191】
(比較例5)
実施例1と同様にして、導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層を形成する際に、電荷輸送層の結着樹脂としてビスフェノールA型ポリカーボネート(帝人製、パンライト)を用いた以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層を形成、比較例5の電子写真感光体を得た。得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例11と同様にして画像形成装置を作製した。かかる画像形成装置を用いたこと以外は、実施例11と同様にして1万枚プリントを行い、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表8に示す。
【0192】
表8に示した結果から明らかなように、実施例11の電子写真感光体は耐熱性が高く、機械的強度も高く、短波長レーザーを用いた画像形成装置においても良好な画質が得られた。一方、比較例5の電子写真感光体は、短波長レーザー照射によって、電荷輸送層の高分子材料が熱、機械的に劣化し、その結果、画像形成装置においてかぶりが発生した。
【0193】
(実施例12)
実施例1と同様にして、導電性支持体上に、下引層、電荷発生層及び電荷輸送層を形成し、実施例12の電子写真感光体を得た。一方、テレフタル酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン及びシクロヘキサンジメタノールが10:7:3のモル比で含まれているポリエステル樹脂100部と、カーボンブラック4部と、カルナウバワックス5部とからなる平均形状係数(ML/A)が141の母粒子を準備した。次に、その母粒子を用いて、ブラックトナー、カーボンブラックをCIピグメントブルー15:3に変えたシアントナー、カーボンブラックをR122に変えたマジェンタトナー、カーボンブラックをY180に変えたイエロートナーとを準備した。
【0194】
得られたトナー及び実施例12の電子写真感光体を、フルカラー・レーザープリンター(DocuPrint C620、富士ゼロックス社製)に装着し、実施例12の画像形成装置を作製した。得られた画像形成装置を用いて1万枚プリントを行い、1万枚プリント後の画質を目視で評価した。得られた結果を表9に示す。
【0195】
【表9】

【0196】
(比較例6)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、結着樹脂としてビスフェノールA型ポリカーボネート(帝人製、パンライト)を用いた以外は実施例1と同様にして電荷輸送層を形成し、比較例6の電子写真感光体を得た。得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例12と同様にして比較例6の画像形成装置を作製した。かかる画像形成装置を用いたこと以外は、実施例12と同様にして1万枚プリントを行い、1万枚プリント後のプリント画質を目視で評価した。得られた結果を表9に示す。
【0197】
表9に示した結果から明らかなように、実施例12の電子写真感光体は機械的強度が高く、球形トナーを用いても、高いクリーニング性が確保でき、画像形成装置は長期プリント後も良好な画質が得られた。一方、比較例6の電子写真感光体は、機械的強度が低いため、球形トナーのプアクリ、デイレッション発生が起こり、その結果、画像形成装置は、長期プリント後に筋状ムラが発生した。
【0198】
(比較例7)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、先ず、電荷輸送層用の結着樹脂として、上記式(I−a)で表される構成単位、(II−a)で表される構成単位においてフェニレン基がp位で結合している構成単位、及び(IV−a)で表される構成単位をモル比率で70:10:20の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が4500であり、ランダム共重合体であった。かかる共重合体を結着樹脂として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液の調製を試みた。しかしながら、フェニレン基がp位で結合している構成単位を有しているために、塗布液中で共重合体が溶解せずに、塗布液を調整することができなかった。そのため、電子写真感光体を製造することができなかった。
【0199】
(比較例8)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、先ず、電荷輸送層用の結着樹脂として、上記式(I−a)及び(IV−a)で表される構成単位をモル比率で70:30の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が45000であり、ランダム共重合体であった。かかる共重合体を結着樹脂として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電荷輸送層形成用塗布液の調製を試みた。しかしながら、高い屈曲性を有する構成単位が共重合体に含まれていないために、塗布液中で共重合体が溶解せずに、塗布液を調整することができなかった。そのため、電子写真感光体を製造することができなかった。
【0200】
(比較例9)
実施例1と同様にして導電性支持体上に、下引層及び電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層の形成の際には、先ず、電荷輸送層用の結着樹脂として、上記式(II−a)及び(IV−a)で表される構成単位をモル比率で70:30の割合で有する共重合体を合成した。なお、かかる共重合体は、重量平均分子量が45000であり、ランダム共重合体であった。かかる共重合体を結着樹脂として用いたこと以外は、実施例1と同様にして電荷発生層上に電荷輸送層を形成し、比較例9の電子写真感光体を得た。また、得られた電子写真感光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例9の画像形成装置を作製した。
【0201】
比較例9の電子写真感光体について、電荷輸送層の荷重たわみ温度をJIS K−7207に示される方法に準拠し、1.82MPaの荷重で評価した。また、比較例9の画像形成装置を用いて、1万枚プリント後の感光体磨耗率(プリント前後の膜厚差を感光体回転サイクル数で割った値)を自作の渦電流膜厚計を用いて評価した。その結果、比較例9の電子写真感光体では、電荷輸送層の結着樹脂である共重合体中に、一般式(I)に相当する構成単位が含まれていないために、耐熱性が低く、また耐磨耗性が不十分であり、画像形成に耐えられないことが確認された。
【0202】
以上説明したように、本発明の電子写真感光体は、耐熱性が高く、機械的強度も高いことが確認された。また、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置は、長期プリント後も良好な画質が得られることが確認された。
【0203】
更に、本発明の電子写真感光体では、本発明にかかる共重合体が耐熱性が高く、機械的強度も高いため、かかる共重合体を電荷輸送層に含有させた場合には、その電荷輸送層上に保護層を設けた場合にも、電荷輸送層表面にクラックが生じないことが確認された。また、本発明の電子写真感光体を備える画像形成装置では、450nm以下の短波長レーザーを露光光源とした場合でも、劣化を起こさず、また、平均形状係数(ML2/A)が100〜150の球形トナーを用いた場合でも高いクリーニング性を実現でき、いずれの場合も、長期プリント後も良好な画質が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明の電子写真感光体の好適な他の実施形態を示す模式断面図である。
【図6】本発明の画像形成装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。
【図7】本発明の画像形成装置の好適な他の実施形態の基本構成を示す模式図である。
【図8】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0205】
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…感光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に形成された感光層とを備え、
前記感光層が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は下記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と下記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

【化2】

【化3】

[上記式中、A及びAはそれぞれ独立に2価の置換基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、ケイ素原子を含む置換基又はフッ素原子を含む置換基を表し、a、b及びcは0〜4の整数を表す。但し、cが2以上の整数である場合には、それらの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項2】
前記共重合体が、下記一般式(II−1)で表される構成単位、又は下記一般式(III−1)で表される構成単位を有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体。
【化4】

【化5】

[上記式中、A及びAはそれぞれ独立に2価の置換基を表し、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R、R及びRはそれぞれ独立に置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、ケイ素原子を含む置換基又はフッ素原子を含む置換基を表し、a、b及びcは0〜4の整数を表す。但し、cが2以上の整数である場合には、それらの置換基は互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項3】
前記共重合体が、ランダム共重合体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記共重合体が、さらに下記一般式(IV)で表される構成単位を有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化6】

[上記式中、X及びYはそれぞれ独立に2価の置換基を表す。]
【請求項5】
前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とを有する共重合体、又は前記一般式(I)で表される構成単位を有する単独重合体と前記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位を有する単独重合体との混合物において、前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)若しくは(III)で表される構成単位とのモル比率が1:9〜9:1であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置と、
前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電装置、帯電した前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成させる露光装置、前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置、並びに前記電子写真感光体をクリーニングするクリーニング装置から選ばれる少なくとも1種と、
を備えることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−11307(P2006−11307A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192023(P2004−192023)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】