説明

電子写真感光体の梱包材、電子写真感光体及び画像形成装置

【課題】感光体の感光層の摩耗を抑制して、クリーニング手段のクリーニングを可能にしてクリーニング手段の長期の使用を可能とする電子写真感光体の梱包材、梱包材で梱包された電子写真感光体及び電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】電子写真感光体の感光層を包み得る大きさのカーボンブラックを含有する黒色紙からなる基材2の片面上に粉末状研摩材3を担持する梱包材1を用意する。この梱包材1の粉末状研摩剤3が感光体1の感光層10aと対向するようにして緩みが生じないように巻きつけた後、粘着テープで梱包材1の端をとめることにより梱包する。これにより、梱包材1に担持された粉末状研摩剤3の少なくとも一部は、電子写真感光体10の感光層10aと接触して感光層10a表面に移行し、電子写真感光体10の感光層10a表面に付着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の梱包材、特に基材表面に粉末状研摩剤を担持させた電子写真感光体の梱包材、この梱包材で梱包された電子写真感光体及びこの電子写真感光体を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式による画像形成装置においては、無機又は有機の感光層を有する感光体が使用され、この感光体の感光層を帯電手段によって一様に帯電し、このように帯電された感光層上に画像情報に応じた露光を照射して静電潜像を形成している。そして、この静電潜像を現像手段でトナー像化し、このトナー像を直接又は中間転写体を介して転写材等の被転写体に転写し、この転写後に感光体の感光層に残存するトナーをクリーニングローラやクリーニングブレード等のクリーニング手段で感光層から除去し、再び帯電手段で感光層を帯電して次の画像形成処理に備えるようになっている。
【0003】
このような電子写真方式の画像形成装置に画像形成処理においては、感光層上の残存トナーの除去をクリーニング手段によって繰り返し行われるために、長期間の使用によりクリーニングブレードやクリーニングローラの表面にトナー等の異物が付着してクリーニング不良が発生し、その結果クリーニング不良による異常画像が発生する。
【0004】
このようなクリーニング不良による異常画像の発生を抑制するために、クリーニングローラの表面に、微小粒子の研摩剤を付着させ、この研摩剤で感光体の感光層表面を摺擦させることによって、感光層の表面に付着している異物を取除いてクリーニングローラのクリーニング性を改善することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、画像形成装置の最初の動作時に、感光体が移送する際に、感光体の感光層と摺接するクリーニングブレードの先端が感光層に引っかかって捲れ、クリーニングブレードによる感光層からの残留トナーの除去ができなくなるという問題がある。このような問題を解決するために、感光体を梱包するシート状梱包材の表面に粉末状の固体潤滑剤を担持させ、この梱包材で感光体の感光層表面に固体潤滑剤が対向する状態で梱包し、この梱包によって固体潤滑剤を感光体の感光層表面に移行させて最初の動作時にクリーニングブレードの先端の捲れを防止することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のものでは、感光体の感光層表面を研摩剤を有するクリーニングローラで摺擦して、感光層表面に固着している異物を良好に除去して画像ボケや画像流れの発生を抑制することが可能となる。しかしながら、この方法では、常に電子写真感光体の感光層表面が研摩されている状態になってしまうので、特に有機感光層では膜削れが大きく寿命を著しく縮めてしまうだけでなく、感光層表面に傷がついてしまい異常画像が発生する等の問題が生じる
【0007】
また、特許文献2記載のものでは、初期のクリーニングブレードのめくれを良好に防止することが可能であるが、長期間の使用に伴うクリーニングブレードのトナー等の付着による汚染を防止することができない。
【0008】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、感光体の感光層の摩耗を抑制して、クリーニング手段のクリーニングを可能にしてクリーニング手段の長期の使用を可能とする電子写真感光体の梱包材、この梱包材で梱包された電子写真感光体及びこの電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電子写真感光体を梱包するためのシート状の梱包材であって、当該梱包材は、シート状基材表面に粉末状の研摩剤を担持させてなり、前記電子写真感光体の感光層表面に前記研摩剤が対向するように前記梱包材で当該電子写真感光体を梱包した際に、前記研摩剤が前記電子写真感光体の感光層に移行するようにしたことを特徴とする電子写真感光体の梱包材としたものである。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の電子写真感光体の梱包材において、前記研摩剤が酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種の粉末状研摩剤であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の電子写真感光体の梱包材において、前記梱包材の基材表面に粉末状研摩剤と共に潤滑剤を担持させて、当該潤滑剤を前記粉末状研摩剤と共に、前記電子写真感光体の感光層に移行させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項3記載の電子写真感光体の梱包材において、前記潤滑剤は、高級脂肪酸金属塩であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の電子写真感光体の梱包材において、前記梱包材の基材は、カーボンブラックを含有する黒色紙であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子写真感光体の梱包材で梱包されていることを特徴とする電子写真感光体としたものである。
【0015】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子写真感光体の梱包材によって梱包されることによって、当該電子写真感光体の感光層に粉末状研摩剤が付着されていることを特徴とする電子写真感光体としたものである。
【0016】
また、請求項8の発明は、電子写真感光体と、当該電子写真感光体の感光層を一様に帯電する帯電手段と、当該帯電手段によって一様に帯電された電子写真感光体の感光層に画像情報に応じた画像露光を行って静電潜像を形成する画像露光手段と、当該画像露光手段によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像化する現像手段と、当該現像手段によって形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、当該転写手段によって前記トナー像を被転写体に転写後に電子写真感光体の感光層に残存するトナーを除去するクリーニング手段とを備えた画像形成装置において、前記電子写真感光体は、請求項7記載の電子写真感光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子写真感光体の感光層表面に研摩剤が対向するように梱包材で当該電子写真感光体を梱包した際に、前記研摩剤が前記電子写真感光体の感光層に移行するように、前記基材表面に粉末状の研摩材を担持させたことを特徴とする電子写真感光体の梱包材としたことによって、感光体の感光層の摩耗が抑制され、クリーニング手段のクリーニングを可能にしてクリーニング手段の長期の使用を可能とする電子写真感光体の梱包材を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子写真感光体の梱包材によって梱包されることによって、当該電子写真感光体の感光層に粉末状研摩剤が付着されている電子写真感光体としたことによって、感光体の感光層の摩耗が抑制され、クリーニング手段のクリーニングを可能にしてクリーニング手段の長期の使用を可能とする電子写真感光体を提供することができるようになる。
【0019】
また、本発明によれば、請求項7記載の電子写真感光体を備えた画像形成装置とすることによって、感光体の感光層の摩耗を抑制して、クリーニング手段のクリーニングを可能にしてクリーニング手段の長期の使用を可能とする画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による一実施形態に係る電子写真感光体の梱包材の平面図である。
【図2】図1のA−A線上で切断した断面図である。
【図3】本発明による他の実施形態に係る電子写真感光体の梱包材の断面図である。
【図4】図1で示す梱包材で梱包された電子写真感光体の断面図である。
【図5】本発明による一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、長期間の使用によってもクリーニング手段を交換することなくクリーニング不良による異常画像の発生を抑制する方法について検討を行った。この検討の結果、電子写真感光体の感光層表面に粉末状研摩剤を付着させた状態で、前述の画像形成処理を行ってクリーニング手段によって感光層表面をクリーニングするとクリーニング手段の先端のトナー等の異物による汚染がクリーニング手段の先端から除去されてリフレッシュされ、クリーニング不良に伴う異常画像の発生を抑制できることが判明した。
【0022】
しかしながら、電子写真感光体の感光層表面に常時粉末状研摩剤を供給すると、クリーニング手段の先端が良好にクリーニングされる一方、感光体の感光層表面が、研摩剤によって摩耗され、感光体の寿命が短くなったり、感光層表面が損傷されて異常画像が発生することに気がついた。
【0023】
このような、研摩剤によるクリーニング手段の先端の良好なクリーニング性と感光体の感光層に対する摩耗、損傷の防止という観点から種々検討を繰り返した。その結果、電子写真感光体を画像形成装置に取り付けた当初に粉末状研摩剤を感光層表面に供給するだけで研摩剤によるクリーニング手段の先端の良好なクリーニング性が長期に亘り維持されることを究明した。しかも、この場合に、当初に供給された粉末状研摩剤は、クリーニング手段によって残留トナーと共に感光層の表面から適切に除去されて、感光層表面の摩耗、損傷が抑制されることを究明した。
【0024】
このような究明に基づき更なる検討を進めた結果、長期間使用されると交換時期がくる交換用電子写真感光体に着目した。即ち、電子写真感光体の交換時に、電子写真感光体の感光層の表面に粉末状研摩剤を供給すればよいのではないかと考えた。このような粉末状研摩剤の供給方法として、運搬時や保管時に表面に汚れ等が付着することを防止するために交換用電子写真感光体の表面を被覆して梱包する梱包材から電子写真感光体の感光層に粉末状研摩剤を供給すると、感光層の表面に粉末状研摩剤が供給されて、研摩剤によるクリーニング手段の先端の良好なクリーニング性と感光体の感光層に対する摩耗、損傷の防止が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による一実施形態に係る電子写真感光体の梱包材の平面図である。図2は、図1のA−A線上で切断した断面図である。図3は、本発明による他の実施形態に係る電子写真感光体の梱包材の断面図である。図4は、図1で示す梱包材で梱包された電子写真感光体の断面図である。
【0026】
本実施形態に係る電子写真感光体の梱包材1は、図1および図2に示すように、シート状基材2の片面の少なくとも電子写真感光体の感光層と対向する領域全域に亘って、ほぼ均一厚みで粉末状研磨剤3が担持されて担持層9が形成されて構成されている。ここで担持とは、基材2の表面に粉末状研摩剤3が物理的な吸着によって付着しており、電子写真感光体の感光層との接触等によって容易に研摩剤が基材2の表面から離脱して当該感光層に移行し得る状態で保持されていることを言う。なお、図1及び図2においては、粉末状研摩剤3の粒径を大きく表示しているが、粉末状研磨剤の平均粒径は、1nm〜1000nmのものである。
【0027】
梱包材1の基材2としては、紙、PET(ポリエステル)フィルム、PP(ポリプロピレン)フィルムなどのポリマーフィルム、不織布、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォームなどの発砲状シート等の薄い可撓性を有するシート材が例示できるが、これに限定されない。特にカーボンブラックを含有させた黒色紙は、電子写真感光体の感光層に対する外光の光照射による感光層の感光特性の劣化を防止する上で好適である。
【0028】
粉末状研摩剤3としては、上記平均粒径を有する、例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロムの如き金属酸化物、窒化ケイ素の如き窒化物、タングステンカーバイド、炭化ケイ素の如き炭化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの如き金属塩などが例示できるが、これに限定されない。特に、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のモース硬度6以上の研摩剤が好ましい。このような硬さと上記粒径とを選択することによって、感光体の感光層とクリーニングブレードやクリーニングローラ等のクリーニング手段の先端とが摺接して、クリーニング手段の先端に付着しているトナー等の異物がクリーニング手段の先端から除去されてリフレッシュされ、良好なクリーニング性を発揮することが可能なる。
【0029】
本発明においては、粉末状研摩剤3の平均粒径が1nm未満の場合には、上記クリーニング効果が発揮されないので、1nm以上、好ましくは10nm以上のものを使用することによって良好なクリーニング効果を発揮することが可能となる。しかしながら、平均粒径が大きくなるにつれ、感光体の感光層を摩耗、損傷し易くなるので、1000nm以下、好ましくは、500nm以下が推奨される。
【0030】
このような粉末状研摩剤3は、基材2の表面の少なくとも上記所定領域の全領域内に、均一に1mg/m〜30mg/mの量で担持されていれば十分である。
【0031】
また、梱包体1の基材2上の担持層9には、上記粉末状研摩剤3とともに、潤滑剤4を図3に示すように混在させて保持させることが好ましい。このように、担持層9に粉末状研摩剤3と共に潤滑剤4を混在させて保持させることによって、潤滑剤4は感光層表面に潤滑被膜を形成して感光層表面への傷発生を防止して、粉末状研摩剤によるクリーニング手段先端の表面リフレッシュ効果を損なわず感光体表面の傷が防止できる利点を発揮させることができる。この場合、潤滑剤の混合量は、粉末状研摩剤100重量部に対して、1重量部〜100重量部が好適である。
【0032】
潤滑剤としては、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルの如きオイル類、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンの如きフッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛の如き高級脂肪酸金属塩、ソルビタン、蔗糖、グリセリン、プロピレングリコールなど多価アルコールの脂肪酸エステル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルの如きポリマー微粒子などが例示できるが、これに限定されない。
【0033】
潤滑剤として上記のようなオイル類を使用したときには、担持層9には潤滑剤オイル中に粉末状研摩剤が分散された状態で潤滑剤と粉末状研摩剤とが保持される。また、潤滑剤として粉末状固体潤滑剤を使用するときには、担持層9には、潤滑剤は、粉末状研摩剤と混合された状態で担持、保持される。特に、感光層に良好な潤滑被膜を確実に形成することができるので、平均粒径が20nm〜2000nmの高級脂肪酸金属塩からなる固体潤滑剤が好適である。
【0034】
電子写真感光体の梱包材1の基材2に粉末状研磨剤や粉末状潤滑剤を担持させる方法としては、例えば化粧用パフのような起毛した表面を有する弾性体に粉状の研磨剤や潤滑剤を含ませて、梱包材1の基材2の表面を軽くたたいて付着させる方法や、水やエタノール等に分散させて梱包材1の基材2の表面に塗布する方法や、結着力の弱い樹脂溶液に分散させて梱包材の基材2の表面に塗布する方法や、梱包材1の基材2の形成時に添加する方法などが例示できるが、これらに限定されない。
【0035】
このようにして形成された電子写真感光体の梱包材を用いて電子写真感光体を梱包する方法について、図4に基づいて説明する。
【0036】
上記の梱包材1を用いて感光体を梱包する場合は、例えば直径30mm、長さ340mmの円筒状感光体10を梱包する場合には、図1に示すように、縦横の長さが340mm×120mm程度の大きさのカーボンブラックを含有する黒色紙からなる基材2の片面上に上記のようにして粉末状研摩材3を担持する梱包材1を用意する。そして、図4に示すように、この梱包材1の粉末状研摩剤3が感光体10の感光層10aと対向するようにして緩みが生じないように巻きつけた後、図示しない粘着テープで梱包材1の端をとめることにより梱包する。これにより、梱包材1に担持された粉末状研摩剤3の少なくとも一部は、電子写真感光体10の感光層10aと接触して感光層10a表面に移行し、電子写真感光体10の感光層10a表面に付着される。なお、図4中、符号10bは感光体10の回転軸である。
【0037】
このようにして保管された交換用電子写真感光体を用いた画像形成装置について、図5に基づいて説明する。図5は、本発明による一実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0038】
本実施形態に係る画像形成装置は、図5に示すように、矢印A方向に回転駆動する円筒状の電子写真感光体10の周囲に、電子写真感光体10の感光層10aを一様に帯電する帯電チャージャ13、感光層10aに画像情報に応じた画像露光15によって形成された静電潜像にトナーを供給して静電潜像をトナー像化する現像ユニット16、感光層10a上に形成されたトナー像を被転写体である転写紙19に転写する転写チャージャ20に備えている。そして、さらに、転写紙19にトナー像を転写した後に感光体10の感光層10a上に残存するトナーを感光層10aから除去するクリーニング手段5を備えている。なお、図5中、符号11は、帯電チャージャによって感光体10の感光層を帯電する前に感光層10aの帯電を除電する除電ランプ、符号14は、感光層10aの端部等の感光層10aの所定領域に画像形成が行われないように感光層10aの一部の帯電を消去するイレーサ、符号17は、感光層10a上のトナー像に逆帯電を行って、転写を容易にする転写前チャージャである。また、符号21は、転写紙19を帯電して感光層10aから転写紙19を分離させる分離チャージャ、符号22は、感光層10aに張り付いた転写紙19を感光層10aから分離する分離爪、符号23は、感光層10a上に残存するトナーを除電するクリーニング前チャージャである。
【0039】
このような画像形成装置を使用して転写紙19上にトナー画像を形成する方法について説明する。
【0040】
先ず、矢印A方向に回転する電子写真感光体10の感光層10aに帯電チャージャ13によって、感光層10aの全面を一様に帯電する。このように一様に帯電された感光層10aに画像情報に応じた画像露光15を行って、感光層10aに静電潜像を形成する。このようにして形成された静電潜像に対して、現像ユニット16の現像ローラ16aからトナーを供給して静電潜像をトナー像化する。このようにして感光層10a上に形成されたトナー像は、レジストローラ18でタイミングを合せて送給される転写紙19上に転写チャージャ20からバイアス電圧を印加して転写する。このようにして転写紙19上に転写されたトナー像は、定着装置26の加熱ローラ26a及び加圧ローラ26bによって加熱、加圧されて、転写紙19上に定着され、転写紙9は系外に排出される。
【0041】
一方、転写紙19上にトナー像を転写して感光層10a上に残存するトナーは、クリーニング手段5によって感光層10aの表面から除去され、除去された残存トナーは、図示しない搬送スクリュー等によって系外に排出される。この場合、本実施形態に係るクリーニング手段5においては、回転しながら感光層10aの表面に摺接して感光層10aの表面から残存トナーを除去するブラシローラ等のクリーニングローラ6及び、感光層10aの表面と弾性的に摺接してクリーニングローラ6によって除去されなかった残留トナーを感光層10aの表面から除去するクリーニングブレード7を備えている。このようにしてクリーニングされた感光体10の感光層10aは、除電ランプ12によって除電されて再び帯電チャージャ13によって帯電され、次の画像形成処理に備え、以後、同様にして画像形成が行われる。
【0042】
このような画像形成装置においては、長期に亘って画像形成処理を行うと、クリーニング手段5に残存トナーや紙粉等の異物が付着し、クリーニング手段5のクリーニング性能を低下させてしまう。その結果、感光体10の感光層10aから充分に残存トナー等の異物が除去されず、これらの異物によって筋状画像等の異常画像を発生させてしまう。そのため、本実施形態における画像形成装置においては、画像形成装置の電子写真感光体10を交換する際に、交換用電子写真感光体10の感光層10aに粉末状研摩剤3、あるいは粉末状研摩剤3及び潤滑剤4を付着させた電子写真感光体10を使用している。
【0043】
感光層10aに粉末状研摩剤を付着させた電子写真感光体10は、前述のように、粉末状研摩剤3、あるいは粉末状研摩剤3及び潤滑剤4を担持した梱包材1で梱包された交換用電子写真感光体10を使用することによって適切に提供可能である。即ち、梱包材1の表面に担持されていた粉末状研磨剤3、あるいは粉末状研摩剤3及び潤滑剤4の一部は、梱包材1の表面と接していた電子写真感光体10の感光層10aの表面に移行し、経時で付着したクリーニングブレードやクリーニングローラ等のクリーニング手段5の表面の汚れを除去することができる。これにより、クリーニングブレードやクリーニングローラ等のクリーニング手段5を交換することなく、クリーニング不良による異常画像の発生や画像欠陥が改善され、フィルミング発生が防止できる。しかも、粉末状研摩剤3は、感光体交換時のみに供給されるので、感光体10の感光層10aの表面の削れがほとんどなく、感光体10寿命に影響しない。さらに、研摩ローラーやクリーニングローラ用クリーニングブラシ等のクリーニング手段5をクリーニングするための研摩用部品を必要としないので画像形成装置を小型化できる利点を有する。
【0044】
このような梱包材1によるクリーニング手段のリフレッシュ効果及び電子写真感光体の感光層の摩耗損傷防止効果は、電子写真感光体として比較的軟質の有機感光層を有する電子写真感光体に対して有効である。次に、本発明による実施例に基づいて本発明を説明する。
【0045】
上記においては、感光体の表面層である感光層に研磨剤、あるいは研磨剤及び潤滑剤を付着させることを説明してきたが、感光体が感光層上に保護層を有し、この保護層が感光体の表面層である場合には、研磨剤あるいは研磨剤及び潤滑剤の付着は保護層に対して行なわれる。
また、本発明の電子写真感光体は、上記の電子写真感光体10を交換した際の交換用電子写真感光体に限られず、交換用ではない当初から用いられる電子写真感光体であってもよい。
【実施例】
【0046】
先ず、本発明による実施例で使用される有機感光層を有する電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0047】
(電子写真感光体の作製)
導電性支持体として、直径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、18μmの電荷輸送層を形成した感光層を有する電子写真感光体Aを作製した。
【0048】
(下引き層用塗工液の組成)
・アルキッド樹脂 6質量部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂 4質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
・酸化チタン 40質量部
・メチルエチルケトン 50質量部
【0049】
(電荷発生層用塗工液の組成)
・下記構造式(A)のビスアゾ顔料 2.5質量部
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.5質量部
・シクロヘキサノン 200質量部
・メチルエチルケトン 80質量部
【0050】
【化1】

【0051】
(電荷輸送層用塗工液の組成)
・ビスフェノールZポリカーボネート 10質量部
(パンライトTS−2050、帝人化成社製)
・下記構造式(B)の低分子電荷輸送物質 7質量部
・テトラヒドロフラン 100質量部
・1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1質量部
(KF50−100CS、信越化学工業社製)
【0052】
【化2】

【0053】
次に上記のようにして製造された電子写真感光体を梱包する梱包材の具体的な実施例について説明する。
【0054】
〔実施例1〕
縦横の長さが340mm×120mm程度の大きさのカーボンブラックを含有する黒色紙からなる基材2の表面に、トリエタノールアミンで表面処理された酸化チタン微粒子(商品名:STT−65C−S チタン工業社製、粒子サイズ30nm〜50nm)をエタノールに超音波処理を30分間行なうことで分散させた分散液を刷毛にて塗布し、80℃の防爆乾燥機にて乾燥させて処理面を形成した梱包材を作製した。この梱包材を、処理面が上記で作製した電子写真感光体Aの感光層の表面と接するように巻き付け、粘着テープでとめて梱包した。
【0055】
〔実施例2〕
実施例1で使用された黒色紙基材の表面に、親水性フュームドシリカ微粒子(商品名:AEROSIL 130日本アエロジル社製、平均粒径約16nm)をエタノール中で超音波処理を30分間行なうことで分散させた分散液を刷毛にて塗布し、80℃の防爆乾燥機にて乾燥させて処理面を形成した梱包材を作製した。この処理面を上記で作製した電子写真感光体Aの感光層の表面と接するように巻き付け、粘着テープでとめて梱包した。
【0056】
〔実施例3〕
実施例1で使用された黒色紙基材の表面に、酸化アルミニウム微粒子(商品名:AEROXIDE Alu C日本アエロジル社製、平均粒径13nm)をエタノール中で超音波処理を30分間行なうことで分散させた分散液を刷毛にて塗布し、80℃の防爆乾燥機にて乾燥させて処理面を形成した梱包材を作製した。この処理面を上記作製した電子写真感光体Aの感光層の表面と接するように巻き付け、粘着テープでとめて梱包した。
【0057】
〔実施例4〕
実施例1で使用された黒色紙基材の表面に、トリエタノールアミンで表面処理された酸化チタン微粒子(商品名:STT−65C−S チタン工業社製、粒子サイズ30nm〜50nm)をエタノール中で超音波処理を30分間行なうことで分散させた分散液を刷毛にて塗布し、80℃の防爆乾燥機にて乾燥させ、続いてワイヤーブラシにより固体のステアリン酸亜鉛を微粉末状にして担持させて処理面を形成した梱包材を作製した。この処理面を上記作製した電子写真感光体Aの感光層の表面と接するように巻き付け、粘着テープでとめて梱包した。
【0058】
〔比較例1〕
実施例1で使用された黒色紙基材のみからなる梱包材を、電子写真感光体Aの感光層の表面と接するように巻き付け、粘着テープでとめて梱包した。
【0059】
上記比較例1で梱包された電子写真感光体Aを開梱し、この電子写真感光体Aをimagio MF2200(リコー社製の電子写真複写機)にセットし、15万枚A4通紙試験を行なった後、実施例1〜4及び比較例1で梱包された電子写真感光体を開梱して交換用電子写真感光体と交換し、画像品質を評価した。評価は、15万枚A4通紙を行なった後、白画像を5枚作成し、目視により、黒スジ画像の発生の有無で評価を行なった。さらに、ハーフトーン画像を5枚作成し、目視により濃度ムラ評価を行った。
【0060】
この評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
以上の結果から、比較例1のものでは、黒色紙基材のみで梱包された交換用電子写真感光体を使用すると、交換後においても電子写真感光体Aによる通紙試験により付着したクリーニングブレード表面やクリーニングローラ表面の汚れが除去されないために、黒スジ発生してクリーニング性が改良されない。これに対して、実施例1〜4のものでは、交換前に発生していたクリーニング不良による黒スジが改善されていることが明らかである。これは、各実施例のものでは、梱包材表面に担持されていた粉末状研磨剤の一部が梱包材表面と接していた電子写真感光体の感光層表面に移行し、交換前の電子写真感光体Aによる通紙試験により付着したクリーニングブレード表面やクリーニングローラ表面の汚れが除去されてリフレッシュされたため、クリーニング不良が改善され、黒スジの発生が無くなったものと推察される。
【0063】
また、実施例1〜3のものについては、ハーフトーン画像で僅かに画像濃度ムラが確認された。これは研磨剤により感光体表面に僅かに傷がつき、ハーフトーン画像に影響がでたものと推定される。これに対して、梱包材の基材表面に粉末状研摩剤と粉末状固体潤滑剤を混在させた担持層を有する実施例4のものでは、ハーフトーン画像も画像濃度ムラがなく、良好であった。これは、梱包材表面に担持されていた潤滑剤の一部が梱包材表面と接していた電子写真感光体の感光層表面に移行し、感光層表面に潤滑被膜が形成されることで感光層への傷の発生が抑制されたものと推察される。
【符号の説明】
【0064】
1 梱包材
2 基材
3 粉末状研摩剤
4 粉末状潤滑剤
5 クリーニング手段
6 クリーニングローラ
7 クリーニングブレード
9 担持層
10 電子写真感光体
10a 感光層
13 帯電チャージャ
16 現像ユニット
18 レジストローラ
19 転写紙
20 転写チャージャ
26 定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開平10−111629号公報
【特許文献2】特開2007−139891号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体を梱包するためのシート状の梱包材であって、当該梱包材は、シート状基材表面に粉末状の研摩剤を担持させてなり、前記電子写真感光体の感光層表面に前記研摩剤が対向するように前記梱包材で当該電子写真感光体を梱包した際に、前記研摩剤が前記電子写真感光体の感光層に移行するようにしたことを特徴とする電子写真感光体の梱包材。
【請求項2】
請求項1記載の電子写真感光体の梱包材において、
前記研摩剤が酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種の粉末状研摩剤であることを特徴とする電子写真感光体の梱包材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子写真感光体の梱包材において、
前記梱包材の基材表面に粉末状研摩剤と共に潤滑剤を担持させて、当該潤滑剤を前記粉末状研摩剤と共に、前記電子写真感光体の感光層に移行させるようにしたことを特徴とする電子写真感光体の梱包材。
【請求項4】
請求項3記載の電子写真感光体の梱包材において、
前記潤滑剤は、高級脂肪酸金属塩であることを特徴とする電子写真感光体の梱包材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の電子写真感光体の梱包材において、
前記梱包材の基材は、カーボンブラックを含有する黒色紙であることを特徴とする電子写真感光体の梱包材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子写真感光体の梱包材で梱包されていることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子写真感光体の梱包材によって梱包されることによって、当該電子写真感光体の感光層に粉末状研摩剤が付着されていることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項8】
電子写真感光体と、当該電子写真感光体の感光層を一様に帯電する帯電手段と、当該帯電手段によって一様に帯電された電子写真感光体の感光層に画像情報に応じた画像露光を行って静電潜像を形成する画像露光手段と、当該画像露光手段によって形成された静電潜像にトナーを供給してトナー像化する現像手段と、当該現像手段によって形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、当該転写手段によって前記トナー像を被転写体に転写後に電子写真感光体の感光層に残存するトナーを除去するクリーニング手段とを備えた画像形成装置において、
前記電子写真感光体は、請求項7記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−169796(P2010−169796A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10735(P2009−10735)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】