説明

電子写真感光体の検査方法

【課題】繰り返し使用によって顕在化される微小欠陥を精度よく検出することが可能な電子写真感光体の検査方法を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の検査方法において、第1の導電性ローラを電子写真感光体表面に圧接し、該電子写真感光体を回転させながら直流電圧を印加するとともに、該導電性ローラと該電子写真感光体との間で発生する放電領域に対して、電子写真感光体が感度を有する光を照射する第1の工程、及び、第1の工程の後に、電子写真感光体表面に第2の導電性ローラを圧接して、電子写真感光体に直流電圧を印加する第2の工程を行う。第2の工程により、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値を、電流測定手段により測定し、測定された電流値に基づいて、電子写真感光体の欠陥の有無を判定する工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体に存在する欠陥を検出するための検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられる像保持部材として、電子写真感光体があり、高生産性、材料設計の容易性および将来性の観点から、有機光導電性物質による有機電子写真感光体の開発が盛んに行われている。
有機系電子写真感光体は、有機光導電性物質を結着樹脂とともに溶解または分散させて感光層塗布液を作製し、それを導電性支持体上に塗布、乾燥することにより製造される。
【0003】
このような電子写真感光体には、導電性支持体上に存在する突起状の欠陥、感光層塗布液内の異物や感光体製造工程中に付着する異物による欠陥が存在することがある。これらの欠陥は、電子写真画像上の黒点や白点等の画像欠陥となったり、感光体の絶縁破壊の原因となったりする。
【0004】
そこで、これらの欠陥は感光体製造時の検査工程において検出して選別する必要がある。その検査方法としては、感光体表面に電圧を印加して、欠陥部に流れる過大電流や欠陥の有無による電流変化を検出して、欠陥の有無を評価する方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、初期においては画像欠陥となっていないが、繰り返し使用により画像欠陥として顕在化する微小欠陥を検査する方法としては、特定の導電性ローラを用いて高圧の直流電圧を印加する検査方法が挙げられる(例えば、特許文献2)。
【0006】
さらに、感光体の表面に印加する電圧を少なくし、より安全に検査する方法として、感光体に光を照射する方法が提案されている。(特許文献3)
【0007】
【特許文献1】特公平2−43134号公報
【特許文献2】特開平9−325169号公報
【特許文献3】特開2000−250233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている検査方法では、比較的大きな欠陥は検出することはできるが、初期においては画像欠陥がなくても、繰り返し使用することにより画像欠陥として顕在化するような微小欠陥を精度よく検出することは困難であった。特に、感光層の膜厚が薄い場合は、電子写真感光体内に存在する微小な突起状欠陥や異物欠陥が繰り返し使用によって画像欠陥となる可能性が高いため、それらの欠陥を精度よく検出可能な検査方法が求められている。
【0009】
また、特許文献2に記載されている検査方法では、高い電圧を印加することで微小欠陥を検出する能力は高くなったが、直流電圧のみを印加しているため、部分的な帯電ムラが発生し易く、検査精度が十分とは言えなかった。更に、検査精度を上げるためにかなりの高電圧を印加することを必要とするため、感光層の膜厚が薄い場合は電子写真感光体内に微小欠陥がない部分も絶縁破壊が起こり易く、生産性が低下することがあった。
【0010】
また、特許文献3に記載されている検査方法では、安全性の向上や安価な構成をとることが可能になるものの、感光体に印加する電圧を少なくしてしまう為、微小欠陥を精度よく検出することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の検査方法において、第1の導電性ローラを電子写真感光体表面に圧接し、該電子写真感光体を回転させながら直流電圧を印加するとともに、該導電性ローラと該電子写真感光体との間で発生する放電領域に対して、電子写真感光体が感度を有する光を照射する第1の工程、
及び、第1の工程の後に、電子写真感光体表面に第2の導電性ローラを圧接して、電子写真感光体に直流電圧を印加する第2の工程を有し、
第2の工程により、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値を、電流測定手段により測定し、測定された電流値に基づいて、電子写真感光体の欠陥の有無を判定する工程を有する、電子写真感光体の検査方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繰り返し使用によって顕在化される電子写真感光体の微小欠陥を精度よく検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、第1の導電性ローラを電子写真感光体表面に圧接し、該電子写真感光体を回転させながら直流電圧を印加するとともに、該導電性ローラと該電子写真感光体との間で発生する放電領域に対して、電子写真感光体が感度を有する光を照射する第1の工程、
及び、第1の工程の後に、電子写真感光体表面に第2の導電性ローラを圧接して、電子写真感光体に直流電圧を印加する第2の工程を有し、
第2の工程により、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値を、電流測定手段により測定し、測定された電流値に基づいて、電子写真感光体の欠陥の有無を判定する工程を有することを特徴とする。
【0014】
本発明者らは、従来用いられてきた導電性ローラに直流電圧を印加することにより欠陥を検出する方法の検査精度が低い原因について検討した。その結果、直流電圧のみを印加する場合、微視的にみると部分的に帯電ムラが発生し易いため、欠陥と帯電ムラが重なると欠陥を検出できない場合があることがわかった。また、直流電圧のみを印加する方法は、電子写真感光体が所定の電位に帯電されると放電が終了してしまうため、欠陥に電流が流れる時間が短く、欠陥が検出できるほど劣化が進まない場合があることがわかった。
【0015】
そこで、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、導電性ローラに直流電圧を印加した際に、電子写真感光体の放電領域に電子写真感光体が感度を有する光を照射することにより帯電性の均一性向上が図れることを見出した。更に、放電領域に光を照射することにより放電が継続され、加速的に欠陥を劣化させることが可能であることを見出した。
【0016】
しかし、放電領域に光を照射すると、放電が継続されることにより電子写真感光体に流れる電流が大きくなるために、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値を取り込んでも微小な欠陥を検出することが難しく、検査精度の向上が図れないことが判明した。
【0017】
そこで、本発明では、電子写真感光体の放電領域に電子写真感光体が感度を有する光を照射する第1の工程(以下、「第一工程」ともいう)を実施した後、直流電圧のみを印加して電流値を測定する第2の工程(以下、「電気検査第二工程」ともいう)を実施することにより、検出能力及び検査精度の向上を達成し、本発明に至った。
【0018】
本発明の電子写真感光体の検査方法は、微小欠陥が画像欠陥となりやすい感光層の膜厚が薄い電子写真感光体の検査方法として好適に用いられる。具体的には、感光層の膜厚が15μm以下、特には12μm以下の電子写真感光体の検査方法として好適に用いられる。
【0019】
また、本発明の検査方法は、接触帯電手段を有する電子写真装置に用いられる電子写真感光体の検査方法として好適に用いられる。特に、微小欠陥が画像欠陥となりやすい直流電圧のみを印加する接触帯電手段を有する電子写真装置に用いられる電子写真感光体の検査方法として好適に用いられる。
【0020】
以下に、本発明の第一工程の検査方法について詳細に説明する。
図1は本発明の第一工程の概略構成を示した図である。図1において、1は円筒状支持体上に感光層が形成された電子写真感光体であり、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、電子写真感光体1に圧接された導電性ローラ(第1の導電性ローラ)2と電子写真感光体1との間の放電領域に電子写真感光体が感度を有する光を光源6から照射される。電子写真感光体内に微小欠陥があると、その部分に集中的に電流が流れることにより微小欠陥部が劣化し、欠陥が顕在化される。電子写真感光体1は1周以上回転駆動しながら電圧印加を受けた後、必要に応じて除電工程を行い、顕在化された欠陥を検出する電気検査第二工程に移動される。
【0021】
本発明においては、導電性ローラに直流電圧のみを印加する場合、電子写真感光体の静電容量に応じた所定の電位に帯電されると放電が終了してしまう。その場合、より多くの電流を流して微少欠陥を加速的に劣化させることが困難である。そのために所定の電位にいたる前に光を照射して表面電位を低下させることで、より多くの電流を流せる。流れる電流の大きさ(電流値I)は、電子写真感光体の静電容量や帯電バイアスによっても変わるが、光量を変えることでも変動することが分かっている。そこで本発明では、照射する光量を変更した場合は、電流値によって光量の大小を判断するものとする。
【0022】
本発明の第一工程において、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値I(μA)は、感光層の膜厚をd(μm)、電子写真感光体を回転させた際の感光層表面のスピードをS(mm/sec)としたときに下記式(1)を満足することが検査精度の向上および生産性の点から好ましい。
I ≧ 2.0×S/d (1)
【0023】
残留電位になるまで除電した電子写真感光体を、暗所中にて電子写真感光体の放電領域に光を照射せず帯電したときに流れる電流値の1.5倍以上になるような光量設定が、検査精度の向上および生産性の点から好ましい。
【0024】
また、第一工程の電子写真感光体の回転周速度は200mm/sec以下にすることが検査精度の点から好ましい。特には、10mm/sec以上100mm/sec以下とすることがより好ましい。電子写真感光体の回転スピードを遅くして電圧を印加し続ける時間を長くすることで微小欠陥が加速的に劣化し、電気検査第二工程において検出され易くなる。
【0025】
次に、本発明の電気検査第二工程の検査方法について詳細に説明する.
図2は本発明の電気検査第二工程の概略構成を示した図である。図2において、1は円筒状支持体上に感光層が形成された電子写真感光体であり、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1は、回転過程において、電子写真感光体1に圧接された導電性ローラ(第2の導電性ローラ)2により直流電圧のみを高圧電源3から印加される。電子写真感光体1を1周以上回転駆動しながら電流値検出手段4により電流値を検出する。検出された電流値は電流値処理手段5により、所定の閾値に基づいて欠陥の有無が判定される。
本発明においては、電気検査第二工程は暗所で行うことが検査精度の向上の点から好ましい。
【0026】
次に、本発明の検査方法の対象である電子写真感光体の構成について説明する。
本発明における電子写真感光体は、感光層として、電荷発生物質と電荷輸送物質とを単一の層に含有する単層型感光層、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と電荷発生物質を含有する電荷発生層とに機能分離した機能分離型(積層型)感光層のいずれの構成を有してもよい。電子写真特性の点では、機能分離型(積層型)が好ましく、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した機能分離型(積層型)がより好ましい。以下、機能分離型(積層型)と表現する場合は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層したものをいう。
【0027】
本発明の電子写真感光体に用いる支持体としては、導電性を有するものであればいずれのものでもよい。例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成型したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したものが挙げられる。
【0028】
また、支持体の表面は、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止などを目的として、切削処理、粗面化処理(ホーニング処理やブラスト処理など)、アルマイト処理などを施してもよいし、アルカリリン酸塩やリン酸やタンニン酸を主成分とする酸性水溶液に金属塩の化合物またはフッ素化合物の金属塩を溶解してなる溶液で化学処理を施してもよい。
【0029】
ホーニング処理としては、乾式ホーニング処理と湿式ホーニング処理とがある。湿式ホーニング処理は、粉末状の研磨剤を懸濁させた水などの液体を、高速度で支持体の表面に吹き付けて支持体の表面を粗面化する方法であり、表面粗さは、吹き付け圧力、速度、研磨剤の量、種類、形状、大きさ、硬度、比重および懸濁温度などによって制御することができる。乾式ホーニング処理は、研磨剤をエアーによって高速度で支持体の表面に吹き付けて支持体の表面を粗面化する方法であり、湿式ホーニング処理と同じように表面粗さを制御することができる。ホーニング処理に用いられる研磨剤としては、炭化ケイ素、アルミナ、鉄、ガラスビーズなどの粒子が挙げられる。
【0030】
支持体の上には、レーザー光などの散乱による干渉縞防止、または、支持体の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。この導電層は、カーボンブラック、金属粒子などの導電性粒子を分散させた結着樹脂を塗布して形成することができる。
【0031】
導電層の膜厚は、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
また、支持体または導電層の上に、接着機能を有する中間層を設けてもよい。
中間層の材料としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタンなどが挙げられる。これらを適当な溶剤に溶解して支持体または導電層上に塗布し、中間層が形成される。
中間層の膜厚は、0.05〜5μmが好ましく、0.3〜1μmがより好ましい。
【0032】
機能分離型(積層型)感光層の場合、上述の支持体、導電層、又は中間層の上に、電荷発生層が形成される。
電荷発生層は、電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。
電荷発生層の膜厚は、5μm以下が好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
【0033】
電荷発生物質としては、通常知られているものが使用可能であり、例えば、セレン−テルル、ピリリウム、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクドリンなどの各顔料が挙げられる。
【0034】
これらの顔料は0.3〜4倍の質量の結着樹脂および溶剤ともにホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ミル、サンドミルアトライター、ロールミル、液衝突型高速分散機などを使用して、良く分散した分散液とする。機能分離型(積層型)感光層の場合、この分散液を支持体、導電層、または中間層上に塗布し、乾燥することによって電荷発生層が得られる。
【0035】
機能分離型(積層型)感光層の場合、電荷発生層の上には電荷輸送層が形成される。
電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂とを溶剤に溶解して塗布液とし、この塗布液を電荷発生層上に塗布後、乾燥することによって形成される。
【0036】
電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物などが挙げられる。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0037】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。特には、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましい。これらは単独で、または、2種以上の混合物もしくは共重合体として用いることができる。
電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、2:1〜1:2(質量比)の範囲が好ましい。
【0038】
また、電荷輸送層中に酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加してもよい。
【0039】
更に、必要に応じて、潤滑剤や微粒子を使用してもよい。潤滑剤又は微粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン微粒子、ポリスチレン微粒子などの樹脂微粒子;シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化スズ微粒子などの金属酸化物微粒子;又はこれらの微粒子に表面処理を施した微粒子;ステアリン酸亜鉛などの固体潤滑剤、アルキル基により置換されたシリコーン、フッ化アルキル基を有する脂肪族系オイル、ワニスなどが挙げられる。
【0040】
電荷輸送層の膜厚は、1〜30μmが好ましく、5〜15μmがより好ましい。
【0041】
電子写真感光体の各層の形成工程において、使用する溶剤としては、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、また、それらの2以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記塗布の方法としては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、バーコート法など通常知られている方法などが挙げられる。
【0042】
次に、本発明の検出方法の対象である電子写真感光体を備える電子写真装置について詳細に説明する。
【0043】
図3において、100はドラム状の電子写真感光体であり、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体100は、回転過程において、一次帯電手段117によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段121から出力される目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強調変調された露光光123を受ける。こうして感光体100の周面に対し、目的の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0044】
形成された静電潜像は、次いで現像手段140によりトナー現像され、不図示の給紙部から感光体100と転写手段114との間に感光体100の回転と同期して取り出されて給紙された転写材124に、感光体100の表面に形成担持されているトナー画像が転写手段114により順次転写されていく。
【0045】
トナー画像の転写を受けた転写材114は、感光体面から分離されて搬送ベルト125により像定着手段126へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0046】
像転写後の感光体100の表面は、クリーニング手段116によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、本発明においては、一次帯電手段117が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は前露光は必ずしも必要ではない。
【0047】
少なくとも上述の電子写真感光体100及び現像手段140を容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在な構成にしてもよい。例えば、一次帯電手段117、現像手段140及びクリーニング手段116を感光体100と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジとすることができる。
【0048】
また、露光光123は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例にしたがって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りのない限り、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0050】
[実施例1]
電子写真感光体の製造
直径24mm、長さ246mmのアルミニウムシリンダーを支持体とした。このアルミシリンダー表面には、突起状の微小欠陥が1箇所存在することがわかっているものと突起状の微小欠陥が存在しないことがわかっているものを用いた。
次に、10質量%酸化アンチモンを含有する酸化スズで被覆した酸化チタン粒子50部、レゾール型フェノール樹脂25部、メトキシプロパノール30部、メタノール20部及びシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体、重量平均分子量3000)0.002部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で2時間分散することによって、導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを20分間140℃で硬化させることによって、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0051】
次に、N−メトキシメチル化6ナイロン5部をメタノール95部に溶解させることによって、中間層用塗布液を調製した。
この中間層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを20分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.8μmの中間層を形成した。
【0052】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)10部、下記式(8)で示される構造を有する化合物0.1部、
【化1】

ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部、並びに、シクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散し、その後、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、これを10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0053】
次に、下記式(CT−1)
【化2】

で示される電荷輸送物質5部と、下記式(CT−2)
【化3】

で示される電荷輸送物質3部と、下記式(CTB−1)
【化4】

で示される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(重量平均分子量:50000)10部とをモノクロロベンゼン55部とジメトキシメタン15部の混合溶媒に溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製した。これを電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、110℃、1時間乾燥して、膜厚が12μmの電荷輸送層を形成した。以上のようにして、電子写真感光体を製造した。
【0054】
検査評価方法について:
図1及び図2に示す検査装置を用いて検査を行なった。
第一工程の検査は、暗所で行い、導電性ローラが圧接された上流側及び下流側の放電領域に光を照射した。電子写真感光体を回転駆動させた後、2周回転させながら放電領域に光を照射した。次に、直流電圧を0Vにして電子写真感光体を1周回転させて光を照射して除電を行った。その後、電気検査第二工程を行った。
電気検査第二工程は、暗所で行った。電子写真感光体を回転駆動させた後、2周回転させながら直流電圧を印加した。導電性ローラから電子写真感光体に流れる電流値を電流値検出手段4により検出した。検出した電流値を電流値処理手段5により、所定の閾値に基づいて欠陥の有無を判定した。
上述の検査装置を用い、上記「電子写真感光体の製造」でアルミニウムシリンダー表面に突起状の微小欠陥があるものを用いて作製した電子写真感光体の検査を行った。第一工程及び電気検査第二工程の電圧印加条件は、表1に記載の条件とした。評価本数は50本とした。検出された本数から微小欠陥の検出率を下記式(2)から算出した。また、微小欠陥がある場所以外から欠陥が検出されたものについても検出率を下記式(3)から算出した。なお、1本の電子写真感光体から2箇所以上微小欠陥がある場所以外から欠陥が検出された場合は、その個数から検出率を算出した。評価結果を表1に示す。

微小欠陥が検出された本数/評価本数×100 (2)
微小欠陥以外の場所から検出された個数/評価本数×100 (3)
【0055】
画像評価装置について:
画像形成装置として、図3に概略的に示される装置を用いた。
電子写真感光体として、上記の「電子写真感光体の製造」において製造したアルミニウムシリンダー表面に突起状の微小欠陥が存在しないものを用いた。この感光体について、表1の「実施例1」において示す条件で検査を行ったところ、欠陥は検出されなかった。この感光体に、一次帯電部材としてゴムローラー帯電器を当接させ(当接圧60g/cm)、直流電圧のみを印加して感光体上を一様に帯電した。一次帯電に次いで、レーザー光で画像部分を露光することにより静電潜像を形成した。この時、暗部電位Vd=−450V、明部電位VL=−100Vとした。
【0056】
感光体と現像スリーブとの間隙は280μmとした。トナー担持体として下記の組成
フェノール樹脂 100部
グラファイト(粒径約7μm) 90部
カーボンブラック 10部
を有する、層厚約7μm、JIS中心線平均粗さ(Ra)1.3μmの樹脂層を、表面が鏡面である直径20のアルミニウム円筒上に形成した現像スリーブを使用した。現像磁極の磁力を95mT(950ガウス)とし、厚み1.0mm、自由長10mmのウレタンゴム製ブレード(トナー規制部材)を14.7N/m(15kg/m)の線圧で現像スリーブに当接させた。
【0057】
現像バイアスとして、直流バイアス成分Vdc=−300Vに交流バイアス成分Vpp=1600V、f=2000Hzを重畳した電圧を用いた。また、現像スリーブの周速は感光体周速(120mm/sec)に対して順方向に110%のスピード(132mm/sec)とした。
また、転写ローラー(導電性カーボンを分散したエチレン−プロピレンゴム製、導電性弾性層の体積抵抗値108Ωcm、表面ゴム硬度24゜、直径20mm、当接圧59 N/m(6kg/m))を感光体回転方向の周速(120mm/sec)に対して等速とし、転写バイアスは直流1.5kVとした。
定着は、熱ローラ定着装置を用いて行なった。
【0058】
画像評価方法について:
評価は、常温常湿環境下(23℃、50%RH)で行った。
上述の検査において欠陥がないと判定された電子写真感光体を上述の電子写真装置に取り付けて使用した。A4サイズの普通紙を1枚画像出力ごとに1度停止する画像出力を10000枚行った。画像出力500枚ごとにベタ白画像、ベタ黒画像およびハーフトーン画像を出力し、画像欠陥があるかどうかを確認した。その結果、10000枚まで画像欠陥は確認されなかった。評価結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2〜4]
導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値を表1に記載の電流値になるように照射する光の光量を変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
[実施例5]
導電性ローラの上流側の放電領域のみに光を照射した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
[実施例6〜7]
光源を表1に記載の単一波長の光源に変更し、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値を表1に記載の電流値になるように照射する光の光量を変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例8〜13]
電気検査第一工程の印加電圧及び回転数を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
本発明の第一工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
本発明の第一工程を行わなず、電気検査第二工程の電圧を−4000Vとした以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
[比較例3]
本発明の第一工程で、光を放電領域に照射せず、導電性ローラが接する箇所と反対側の部分に照射した以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1乃至13の結果より、繰り返し使用によって顕在化される微小欠陥を精度よく検出することができることが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一工程の概略構成の例を示す図である。
【図2】本発明の電気検査第二工程の概略構成の例を示す図である。
【図3】本発明の電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 電子写真感光体
2 導電性ローラ
3 高圧電源
4 電流値検出手段
5 電流値処理手段
6 光源
100 電子写真感光体
117 一次帯電手段
121 露光手段
123 露光光
124 転写材
140 現像手段
114 転写手段
125 搬送ベルト
126 像定着手段
116 クリーニング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の検査方法において、
第1の導電性ローラを電子写真感光体表面に圧接し、該電子写真感光体を回転させながら直流電圧を印加するとともに、該導電性ローラと該電子写真感光体との間で発生する放電領域に対して、電子写真感光体が感度を有する光を照射する第1の工程、及び
第1の工程の後に、電子写真感光体表面に第2の導電性ローラを圧接して、電子写真感光体に直流電圧を印加する第2の工程を有し、
第2の工程により、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値を、電流測定手段により測定し、測定された電流値に基づいて、電子写真感光体の欠陥の有無を判定する工程を有する、電子写真感光体の検査方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値I(μA)が、感光層の膜厚をd(μm)、電子写真感光体を回転させた際の感光層表面のスピードをS(mm/sec)としたときに下記式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の検査方法。
I ≧ 2.0×S/d (1)
【請求項3】
前記第1の工程において、導電性ローラから電子写真感光体へ流れる電流値が、光を照射しない場合の電流値の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体の検査方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、第一の工程の電子写真感光体の回転周速度が、10mm/sec以上300mm/sec以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−169571(P2010−169571A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13124(P2009−13124)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】