説明

電子写真感光体ユニットの製造方法、電子写真装置及びプロセスカートリッジ

【課題】導電層のクラックの発生が抑制され、ギアの結合が外れることなく、安定して画像形成を行える電子写真感光体ユニットの製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状基体3の外周に膜厚20〜50μmの導電層を有し、該基体の端部に結合部材1を組み付けてなる電子写真感光体ユニットの製造方法において、基体よりも大きく、結合部材よりも小さい熱膨張係数を有する樹脂層5が、結合部材の接触する基体内面にコートされる工程、基体の内径DS、結合部材の外径DG、基体内面の樹脂層の膜厚Rのとき、0℃以下の環境下で24時間以上保管し、組付ける前の状態で、下記式(DS−DG)/2≦R DG<DS10μm≦R≦40μmを満たし、該温度0℃以下の保管環境で円筒状基体3に結合部材1を組付け、基体の一部を食い込ませる又は基体の端部を切り曲げることで基体に結合部材を結合させる工程、を有している電子写真感光体ユニットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状部材の外表面に導電層及び感光層を設けた電子写真感光体ユニットの製造方法、該電子写真感光体ユニットを有する電子写真装置及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した電子写真装置は、
電子写真感光体と、
電子写真感光体の周面を帯電するための帯電手段と、
帯電された電子写真感光体の周面に静電潜像を形成するための露光手段と、
電子写真感光体の周面に形成された静電潜像を現像剤担持体に担持された現像剤により現像するための現像手段と、
電子写真感光体の周面に現像された像を紙等の転写材に転写するための転写手段と
を有するものが一般的である。
【0003】
一般に、電子写真感光体は、表面に円筒状基体の表面の欠陥を被覆するために、導電性材料と樹脂を含有した導電層が設けられ、更に導電層の上に感光層が設けられる。導電層の膜厚は、円筒状基体表面の欠陥に応じて設定することができ、繰り返し使用により感光層が薄膜になった状態においても円筒状基体表面の欠陥を隠蔽できるように、厚膜化する傾向にある。これは、繰り返し使用によって、感光層が薄膜になった場合、円筒状基体表面の突起物を確実に隠蔽しておかないと、電子写真感光体の帯電時にリークが発生し易くなり、画像欠陥が生じてしまうためである。なお、導電層と感光層の間には、必要に応じて、中間層(下引き層、バリア層)を設けることもある。
【0004】
電子写真感光体ユニットは、表面に感光層を有する円筒状基体及び該円筒状基体の両端又は片端に設けられた結合部材により構成される。結合部材は、一般にフランジ又はギアと呼ばれるものである。ギアには外部からの駆動を円筒状基体に伝達するために、歯車状の形状部を有している。
【0005】
円筒状基体を用いた電子写真感光体(以下、場合により単に「感光体」と称する)にギアやフランジ等の端部結合部材を結合させる方法としては、特開平4−9311号公報(特許文献1)のように接着剤を用いる方法が挙げられる。あるいは特開平7−152809号公報(特許文献2)、特開平10−288914号公報(特許文献3)のように円筒状基体を加熱膨張させた状態で外部的な圧力により円筒状基体に結合部材を圧入する方法が挙げられる。
【0006】
接着による方法では、結合部材の円筒状基体への挿入部分に接着剤を適量塗布して結合させた後、接着剤が完全に硬化するまでの間、温度や湿度の影響を受けないような環境に保存し、完全硬化させる。接着に使用される接着剤の種類としては瞬間接着剤あるいは、接着プライマーと嫌気性接着剤等が主に用いられており、その用途、目的、必要強度等により適宜使い分けられている。
【0007】
しかしながら、接着剤による結合では、下記のような課題が指摘されている。
(1)温度が32.5℃、相対湿度が85%のような高温高湿下の環境で接着を行い、同環境において完全硬化させた場合、硬化の途中で空気中に含有する水分が接着面に対して悪影響を及ぼすためトルク強度が低下する。
(2)接着剤の種類によっては接着剤が完全に硬化するまでに非常に長い硬化時間を必要とするものがある。そのため、完全硬化までの保管スペースを確保したり、また、保管環境の温度や湿度を一定に保つための設備等が必要であり、コスト、管理、生産性の観点からも不都合である。
(3)高い接着強度を得るために、ギアやフランジの材質に制約がある。
(4)ギア又はフランジ端部に円筒状基体内面と接触する電極板を設けて装置本体との導通をとる場合、接着後に接着剤が完全硬化するまでの間に接着剤がダレてしまい電極板と円筒内面との接触部分に接着剤が流れ込み、導通不良を起こすことがある。
【0008】
上記のような接着剤の課題を解決する製造方法として、端部を加熱膨張させた状態で結合部材を挿入し接着する方法を先に挙げたが、加熱による円筒状基体端部の変形が生じる場合があり、課題となっていた。
【0009】
以上のような課題を解決し、結合部材を安定に固定する方法として、特開平8−62877号公報(特許文献4)では、円筒状基体の端部内側に結合部材を挿入した後、円筒状基体の一部を突出させて結合部材側に食い込ませる方法が開示されている。
【0010】
また、特開平8−339135号公報(特許文献5)では、結合部材に凹部を部分的に設け、その凹部に円筒状基体の端部を部分的に折り曲げ加工して結合する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平4−9311号公報
【特許文献2】特開平7−152809号公報
【特許文献3】特開平10−288914号公報
【特許文献4】特開平8−62877号公報
【特許文献5】特開平8−339135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、電子写真装置の高速化が進んできており、それに伴って感光体の回転速度が速くなるばかりでなく、感光体への駆動トルクも大きくなっている。それに伴って、駆動伝達の結合部材であるギアにかかる負荷が大きくなるため、ギアの結合力も増大させなければならず、円筒状基体の端部の食い込み/折り曲げ度(長さ、幅等)を増やす必要が出てくる。しかしながら、円筒状基体上には導電層が設けられており、その膜厚が円筒状基体の欠陥の隠蔽性を高めるという観点から厚くなってくると、円筒状基体の食い込み/折り曲げ加工部分の近傍で、加工時の歪みの影響を受けて導電層のクラックが生じる場合がある。この傾向は、導電層の膜厚が厚いほど、顕著になる。よって、円筒状基体の食い込み/折り曲げ加工の強度を上げることなく、結合部材であるギアの結合力を増大させる方法が必要になってくる。
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、厚膜の導電層及び感光層を外表面に有する円筒状基体の食い込み/折り曲げ加工の強度を上げることなく、従来の技術を改善することにより、結合部材であるギアの結合力を増大させる方法を見出すことである。
【0013】
本発明の目的は、高速化された電子写真装置においても導電層のクラックの発生が抑制され、且つギアの結合が外れることなく、安定して画像形成を行うことができる電子写真感光体ユニットの製造方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、該電子写真感光体ユニットを有する電子写真装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に従って、円筒状基体の外周表面に少なくとも膜厚が20μm以上50μm以下である導電層を有し、該円筒状基体の少なくとも一方の端部に駆動伝達の役割を果たす結合部材を組み付けてなる電子写真感光体ユニットの製造方法において、
該円筒状基体よりも大きく、且つ該結合部材よりも小さい熱膨張係数を有する樹脂層が、結合部材の接触する円筒状基体の内面領域表面にコートされる工程、
円筒状基体の内径をDS、結合部材の外径をDG、円筒状基体内面の樹脂層の膜厚をRとしたとき、温度0℃以下の環境下で24時間以上保管した円筒状基体、結合部材及び円筒状基体内面の樹脂層が結合部材を円筒状基体に組付ける前の状態で、下記式(1)乃至式(3)
(DS−DG)/2≦R (1)
DG<DS (2)
10μm≦R≦40μm (3)
を満たしており、
該温度0℃以下の保管環境で円筒状基体に結合部材を組付け、更に円筒状基体の一部を食い込ませる又は円筒状基体の端部を切り曲げることで円筒状基体に結合部材を結合させる工程、
を有していることを特徴とする電子写真感光体ユニットの製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明に従って、上記電子写真感光体ユニットの製造方法により製造された電子写真感光体ユニットを有することを特徴とする電子写真装置が提供される。
【0017】
更に、本発明に従って、上記電子写真感光体ユニットの製造方法により製造された電子写真感光体ユニットを有し、電子写真装置本体の着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高速化された電子写真装置においても導電層のクラックの発生が抑制され、且つ駆動伝達の結合部材であるギアの結合が円筒状基体から外れることなく、安定して画像形成を行う電子写真感光体ユニットの製造方法を提供することが可能となる。また、該電子写真感光体ユニットを有する電子写真装置及びプロセスカートリッジを提供することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では、円筒状基体の少なくとも一方の端部に結合部材を有する電子写真感光体ユニットにおいて、円筒状基体の一部を食い込ませて又は端部が結合部材の挿入部分に相当する凹部内に曲げ切られて結合されていることを特徴とする電子写真感光体ユニットである。更に、円筒状基体と結合部材との間で強い結合力を発揮させるために、円筒状基体よりも大きく、且つ結合部材よりも小さい熱膨張係数を有する樹脂層が、結合部材の接触する円筒状基体の内面領域表面にコートされている。
【0020】
一般に、円筒状基体の素材としては電子写真感光体用支持体として導電性が十分であること、高精度で必要強度を満たす円筒状基体が容易に得られること、腐食に強いこと等の理由でアルミニウム又は3000系、5000系、6000系等のアルミニウム合金が用いられることが多い。アルミニウム以外の材料が用いられている例はまれである。
【0021】
一方、結合部材はギア等の駆動力を受け取る機能や本体との接続の軸の機能をもたせることが一般に行われるため、その形状は複雑になることが多く、量産の場合は成型加工により製造される場合がほとんどである。そのため一般に用いられる材料としては成型加工に適する材料、特に樹脂が選択される。一般に、樹脂の熱膨張係数はアルミニウムの熱膨張係数より大きい。そのため、温度変化があるたびに円筒状基体と結合部材の結合部は熱膨張係数の差によるストレスを受けることになる。
【0022】
更に、電子写真装置、プロセスカートリッジは生産された地域から使用される地域へ輸送時の環境や使用環境は、高温及び低温の環境が想定される。結合部材の材質が樹脂、円筒状基体の材質がアルミニウムの組み合わせである電子写真感光体ユニットでは、温度25℃の常温環境で円筒状基体、結合部材の間に隙間が発生しないように組み立てられた後に低温環境に移送、保管されると、結合部材の外径収縮が円筒状基体の接合部の内径収縮より上回り結合部材と円筒状基体の間に隙間ができ易い。この隙間があると、円筒状基体と結合部材の結合力が小さくなる。よって、低温時に晒された状態で、高速化対応の駆動トルク上昇に耐えられるようにするには、この隙間による結合強度の低下を抑える必要がある。その役目を果たすのが、本発明の円筒状基体よりも大きく、且つ結合部材よりも小さい熱膨張係数を有する樹脂層である。この樹脂層が円筒状基体と結合部材の隙間に存在することで、温度差の影響を受けた場合のストレスを吸収できるようになり、緩衝材として作用する。更に、円筒状基体の内径をDS、結合部材の外径をDG、円筒状基体内面の樹脂層の膜厚をRとしたとき、円筒状基体と結合部材の結合部の隙間が生じる低温環境で、両者の結合を下記関係式(1)乃至式(3)
(DS−DG)/2≦R (1)
DG<DS (2)
10μm≦R≦40μm (3)
を満たす条件で行うことにより、物流時や使用時の環境温度に関係なく安定した結合強度を維持することができる。一般に、電子写真装置、プロセスカートリッジの使用時には、環境温度が使用前よりも上昇するため、結合強度は有利となる。
【0023】
ただし、内面に樹脂層を設けた円筒状基体に結合部材を組付ける前の状態で、内面に樹脂層を設けた円筒状基体及び結合部材を温度0℃以下の環境下で24時間以上保管したときの関係式である。
【0024】
円筒状基体と結合部材の保管及び結合を行う環境は、温度0℃以下である。好ましくは温度−25℃以下である。一般に、物流時の低温としては温度−20℃までが想定されるが、円筒状基体と結合部材の保管及び結合の環境が、温度0℃以下でも後述の切り曲げ結合により、十分に強度を維持できる。更に、高速化対応として高度に結合強度を安定化させるには、円筒状基体と結合部材の保管及び結合の環境を温度−25℃以下にするとよい。
【0025】
また、円筒状基体と結合部材の保管及び結合の環境において、円筒状基体の内径は結合部材の外径よりも大きく、円筒状基体内面の樹脂層を設けるためのスペースとする。ただし、該スペースは、円筒状基体内面の樹脂層の膜厚よりも小さくなるように設定し、円筒状基体の端部に結合部材を圧入させる。
【0026】
円筒状基体内面の樹脂層は、膜厚Rが10μm≦R≦40μmである。膜厚が10μm未満では温度差が生じた時に、緩衝材としての効果が薄れて、結合強度を安定化させることができない。好ましくは20μm≦R≦40μmであり、より好ましくは30μm≦R≦40μmである。
【0027】
円筒状基体内面の樹脂層に用いる樹脂としては、以下のものが挙げられるが、これらに限られたものではない。ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、メタクリル樹脂、ポリメチルメタクリルイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等。なかでもポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましく、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂がより好ましい。これらは単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
【0028】
本発明における熱膨張係数は、単位温度あたりの材料の線膨張率を示した値であり、材料固有の値を示す。測定法はASTM D696に準ずる。上記の円筒状基体内面の樹脂層に用いられる樹脂の熱膨張係数(/℃)は、一般的に20×10−6〜100×10−6/℃である。該樹脂の熱膨張係数の例を挙げると、
ポリアミド樹脂(ナイロン6、80×10−6/℃)、
ポリアミドイミド樹脂(30〜38×10−6/℃)、
ポリベンゾイミダゾール樹脂(22〜24×10−6/℃)、
ポリエーテルイミド樹脂(55〜57×10−6/℃)、
メタクリル樹脂(68〜71×10−6/℃)、
ポリフェニレンサルファイド樹脂(26〜69×10−6/℃)
等である。前述したように、円筒状基体内面の樹脂層に用いられる樹脂の熱膨張係数は、円筒状基体よりも大きく、且つ結合部材よりも小さく設定する必要があり、円筒状基体及び結合部材に応じて、適宜、選択される。なお、樹脂層の熱膨張係数は、円筒状基体と結合部材の熱膨張係数の中間値よりも小さいことが好ましい。このような熱膨張係数の組合せにすることにより、温度差に対する緩衝効果を維持しつつ、円筒状基体と樹脂層の密着性を向上させることができるため、結合部材を円筒状基体に挿入する際に樹脂層が剥がれるといった課題を確実に抑えることができる。
【0029】
また、本発明における結合部材としては、公知の樹脂が用いられる。結合部材に用いられる樹脂の一般的な熱膨張係数は50×10−6〜150×10−6/℃である。結合部材としてよく用いられる材料の例としては、一般的な
ポリカーボネート樹脂(熱膨張係数65×10−6〜75×10−6/℃)、
ポリアセタール樹脂(熱膨張係数90×10−6〜120×10−6/℃)、
ABS樹脂(熱膨張係数95×10−6〜110×10−6/℃)
等である。一般的な樹脂製の結合部材はアルミニウムの円筒状基体より熱膨張係数が大きい。
【0030】
なお、円筒状基体の端部は、結合部材を結合させるときの歪みを抑制するため、肉厚0.3mm以上1.5mm以下が好ましく、特には0.5mm以上1.5mm以下が好ましい。結合方法については、後述する。
【0031】
次に、本発明にかかる電子写真感光体の構成について説明する。
【0032】
本発明にかかる電子写真感光体の表面層は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料とを同一の層に含有する単層型の場合はその層であり、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層と電荷発生材料を含有する電荷発生層とを有する積層型の場合は電荷輸送層である。更には、電荷輸送層上に保護層を設ける場合は、保護層である。保護層は導電性金属酸化物の如き導電性粒子を含有してもよい。
【0033】
本発明においては、電子写真特性の点から積層型であることが好ましい。以下に、積層型の電子写真感光体構成について説明する。
【0034】
本発明に用いられる円筒状基体としては前述したように、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄の如き金属又は合金が挙げられるが、特にアルミニウム又はアルミニウム合金が選択されることが多い。純アルミニウム又は3000系、5000系、6000系等のアルミニウム合金の熱膨張係数は、20〜24×10−6/℃である。円筒状基体に純アルミニウム又はアルミニウム合金を用いても熱膨張係数(/℃)は、同様の数値を示す。
【0035】
また、単一波長のレーザー光を用いたプリンターに本発明に係る電子写真感光体を用いる場合には、干渉縞を抑制するために円筒状基体はその表面を適度に粗しておくことが必要である。具体的には、本発明にかかる導電層のように導電性金属酸化物及び結着樹脂からなる導電性皮膜を形成させることが好ましい。
【0036】
本発明では円筒状基体と電荷発生層又は後述の中間層との間には、レーザー光の散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的として、導電層を設けている。
【0037】
導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子の如き導電性粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。好適な金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛や酸化チタンの粒子が挙げられる。また、導電性粒子として、硫酸バリウムの粒子を用いることもできる。導電性粒子には、表面に被覆層を設けてもよい。
【0038】
導電性粒子の体積抵抗率は0.1Ω・cm以上1000Ω・cm以下の範囲が好ましく、特には1Ω・cm以上1000Ω・cm以下の範囲がより好ましい。この体積抵抗率は、三菱油化(株)製の抵抗測定装置ロレスタAPを用いて測定して求めた値である。測定サンプルは49MPaの圧力で固めてコイン状としたものである。また、導電性粒子の体積平均粒径は0.05μm以上1.0μm以下の範囲が好ましく、特には0.07μm以上0.7μm以下の範囲がより好ましい。この体積平均粒径は、遠心沈降法により測定した値である。導電層中の導電性粒子の割合は、導電層全質量に対して1.0質量%以上90質量%以下の範囲が好ましく、特には5.0質量以上80質量%以下の範囲がより好ましい。
【0039】
導電層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂。これらは単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。これらは、円筒状基体に対する接着性が良好であるとともに、導電性粒子の分散性を向上させ、かつ、成膜後の耐溶剤性が良好である。これらの中でも、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリアミド酸樹脂が好ましい。
【0040】
導電層の膜厚は、前述したように円筒状基体の欠陥を完全に被覆するという観点から、20μm以上50μm以下であることが必須であり、30μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0041】
導電層の体積抵抗率は1013Ω・cm以下であることが好ましく、特には10Ω・cm以上1012Ω・cm以下の範囲であることがより好ましい。この体積抵抗率は、測定対象の導電層と同じ材料によってアルミニウム板上に被膜を形成し、この皮膜上に金の薄膜を形成して、アルミニウム板と金薄膜の両電極間を流れる電流値をpAメーターで測定して求めた値である。
【0042】
導電層には、必要に応じてフッ素あるいはアンチモンを含有させてもよいし、導電層の表面性を高めるために、レベリング剤を添加してもよい。
【0043】
円筒状基体又は導電層と電荷発生層との間には、必要に応じてバリア機能や接着機能を有する中間層(下引き層、接着層とも呼ばれる。)を設けてもよい。中間層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、円筒状基体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護等のために形成される。
【0044】
中間層を形成するための樹脂としては以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂の如き樹脂。更に、酸化チタンや酸化アルミニウムを含有させてもよい。
【0045】
中間層の膜厚は0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、特には0.3μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0046】
積層型感光体の場合、円筒状基体、導電層、又は中間層の上には電荷発生層が形成される。電荷発生層は電荷発生材料を0.3倍乃至4倍の質量のバインダー樹脂及び溶剤と共にホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル又は液衝突型高速分散機を使用して分散した分散液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0047】
本発明に用いられる電荷発生材料としては、以下のものが挙げられる。セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、ジスアゾ、モノアゾ、インジゴ、キナクリドン及び非対称キノシアニン系の各顔料。上記の各種電荷発生材料の中でも、高感度であるという点で、近年フタロシアニン顔料が広く使用されている。代表的なフタロシアニン顔料としては、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが挙げられる。
【0048】
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、セルロース樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルメタクリレート樹脂、ポリビニルアクリレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂。特には、ブチラール樹脂等が好ましい。これらは単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
【0049】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生材料の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
【0050】
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.01μm以上2μm以下であることがより好ましく、更には0.05μm以上0.3μm以下であることがより一層好ましい。
【0051】
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、電子搬送性剤を必要に応じて添加することもできる。
【0052】
電荷発生層上には電荷輸送層が形成される。電荷輸送層には電荷輸送材料が含有され、電荷輸送材料としては、以下のものが挙げられる。トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物。これら電荷輸送材料は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0053】
電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂。これらは単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
【0054】
電荷輸送材料とバインダー樹脂との割合は、質量比で2:1乃至1:2の範囲が好ましい。
【0055】
電荷輸送層の膜厚は、均一で平均5μm以上50μm以下であることが好ましく、特には平均7μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0056】
電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、フッ素含有オイルの如き界面活性剤、フッ素樹脂粉体の如きフィラー、更にフッ素原子含有化合物の如き添加剤が含まれていてもよい。
【0057】
また、感光層が単層型の場合は、上述のような電荷発生材料や電荷輸送材料を上述のようなバインダー樹脂に分散し及び溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。膜厚は5μm以上40μm以下であることが好ましく、特には15μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0058】
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法の如き塗布方法を用いることができる。塗布後は、熱風乾燥炉等を用いて乾燥させることで各層の塗膜を形成させる。塗布液の粘度は塗工性の観点から5mPa・s以上500mPa・s以下が好ましい。
【0059】
円筒状基体の一部を食い込ませる又は端部を切り曲げるための加工領域を確保するために、各層の塗布時に円筒状基体の長手方向の端部に未塗布領域を設ける必要があり、その未塗布幅は2mm以上であることが好ましい。浸漬塗布法では、20μm以上50μm以下といった厚膜の導電層を塗布する場合、潜像形成領域の膜厚を安定化させるために上端の未塗布幅を狭めて塗布することが望まれる。端部の未塗布幅は、2mm以上5mm以下であることが好ましい。また、円筒状基体の下端部に余分な塗料が残るが、溶剤を吹きつけながらゴムブレードで除去する等の工程を入れるとよい。
【0060】
なお、円筒状基体の内面領域表面の樹脂層のコートに関しても上記の塗布方法を用いることができるが、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法が好ましい。また、円筒状基体の外周表面に導電層及び感光層を浸漬塗布する際の上端側であることが好ましい。積層感光体の場合、表面層の汚染を防ぐため、最終工程での塗布はできないため、導電層を塗布する前の一番最初の工程で塗布を行うことが好ましい。ただし、各層の塗布を行った後には、余分な塗料を除去する工程が入ることが多い。このため、該除去工程により円筒状基体内面の樹脂層が剥れる可能性がある。そこで、浸漬塗布の場合、円筒状基体の上端側の内面に樹脂層を設けるとよい。この場合、導電層の塗布前に、円筒状基体表面に塗布された不要な塗料の除去を行い、その後に円筒状基体の反転を行う必要がある。
【0061】
また、導電層に限らず、浸漬塗布時には塗工液のダレを無くすことは難しいため、上端側端部の膜厚は下端側端部の膜厚に比べると薄くなるのが一般的である。よって、駆動伝達の役割を果たす結合部材の円筒状基体への結合は、導電層の膜厚が薄くなっている上端側で行うと、結合時のクラックが生じにくい。
【0062】
次に、本発明における円筒状基体への結合部材の結合方法を以下に説明する。結合部材をアルミニウム、銅、ステンレス等から形成されている円筒状基体の端部に挿入する。結合部材の挿入部には、結合部材の内部に向かって適当な形状(径、幅、高さ、深さ等)を持つ凹部が設けられている。該凹部に対して結合している円筒状基体の端部に先端が鋭角を成し、該凹部とほぼ同じ形状を有する突き当て部材を突き当てることにより、円筒端部をその位置から一定の進入量をもって該凹部の内部に向かって進入させることにより円筒状基体の端部が該凹部形状に沿った状態で結合する。突き当て部材を突き当て方には、円筒状基体の外周表面から基体の一部を食い込ませる方法と、円筒状基体の端部を切り曲げる方法が挙げられる。
【0063】
基体の一部を食い込ませる方法では、例えば図1aのように先端が円錐状の突き当て部材を用いることができ、円筒状基体に挿入された結合部材の凹部に合せて突き当て、基体の一部を凹部に食い込ませる。突き当て部材の直径は1.0mm以上1.5mm以下が好ましい。また、食い込ませる時の深さは、0.5mm以上1.5mm以下が好ましい。突き当て部材の先端形状は、円錐、三角推、四角推等のように尖っていることが好ましい。
【0064】
一方、円筒状基体の端部を切り曲げる方法では、図1bのような円筒状基体に挿入された結合部材の凹部内に、円筒状基体の端部の一部を単に結合部材の凹部内に曲げるだけでなく、切り曲げることによって、切り曲げられた円筒状基体の端部を結合部材の凹部に緊密に入り込ませている。円筒端部の切り曲げは、突き当て部材により容易に行うことができる。円筒端部の切り曲げ部分の切られている長さは0.2mm以上が好ましく、特には0.5mm以上1.2mm以下が好ましい。この切り曲げ結合では、曲げと剪断がほぼ同時に行なわれ、曲げ切れた円筒状基体の端部の剪断面が該凹部形状に緊密に密着した状態で結合し、更に曲げ切れた円筒状基体の端部の内面が該凹部の底面に緊密に密着した状態で結合されている。
【0065】
結合強度を高めるという観点からは、後者の円筒状基体の端部を切り曲げる方法が好ましい。
【0066】
更に、前述の図1a及び図1bを用いて、本発明の電子写真感光体ユニットを詳しく説明する。両図は、本発明による電子写真感光体ユニットの断面図である。図中、1は感光体の端部に結合され、感光体を支持、回転させるための結合部材(ギア又はフランジ)、2は結合部材における円筒状基体との結合部に設けた凹部、3はアルミニウム合金製の円筒状基体であり、その表面に導電層と感光層を有する。また、円筒状基体の端部内面には、少なくとも結合部材と接触する部分において樹脂層5が形成されており、円筒状基体の内径をDS、結合部材の外径をDG、円筒状基体内面の樹脂層の膜厚をRとしたとき、下記関係式(1)乃至式(3)を満たす。
【0067】
(DS−DG)/2≦R (1)
DG<DS (2)
10μm≦R≦40μm (3)
【0068】
ただし、内面に樹脂層を設けた円筒状基体に結合部材を組付ける前の状態で、内面に樹脂層を設けた円筒状基体及び結合部材を0℃以下の環境下で24時間以上保管したときの関係式である。
【0069】
以下に、円筒状基体の端部を切り曲げる方法を詳しく説明する。
【0070】
図2は円筒状基体の端部を切り曲げる工程の断面図であり、図3はその平面図である。突き当て部材4は結合部材1(ギア又はフランジ)と円筒状基体3(内面の樹脂層と、外面の導電層及び感光層等は不図示)を結合させた後、円筒状基体3の円筒状基体の端部を結合部材1に設けた凹部2に向かって進入、接触し、曲げと剪断を行なうための突き当て部材である。
【0071】
結合部材1(ギア又はフランジ)と円筒状基体3とを結合部材(ギア又はフランジ)1の結合部外径に沿って結合させる。この時、結合部材(ギア又はフランジ)1と円筒状基体3のはめあいは両者の間にガタの生じることなく且つ、円筒状基体3の外径に対して変形の無いことが好ましい。次に、結合部材(ギア又はフランジ)1と円筒状基体3を結合させた後、円筒状基体3の外周部から、その先端が鋭角をもったツメ形状の突き当て部材4が図2に示すように結合部材(ギア又はフランジ)1の円周方向に4箇所から円筒状基体3の外周面に接触する。この時、突き当て部材4の高さの位置が円筒状基体3の端面の位置と同じ高さであり、且つ、円筒状基体3の内部に結合している結合部材(ギア又はフランジ)1の結合部分に設けた凹部2の幅と前記突き当て部材4の先端部の幅とが同等の幅を持ち、更にその位置関係にズレの無い状態で突き当て部材4が直線移動し、円筒状基体3の外周部に接触する。そしてこの接触点からある一定の進入量をもって突き当て部材4が結合部材(ギア又はフランジ)1内部に向かって進入すると、円筒状基体3の端部から突き当て部材4の表面形状に沿って折れ曲がる。更に進入が進むとやがて、結合部材(ギア又はフランジ)1の結合部に設けた凹部2の幅に沿った円筒状基体3端部が剪断され、部分的に切れ曲がった円筒端部は凹部2形状に緊密に密着した状態で固定され、結合部材(ギア又はフランジ)1と円筒状基体3が結合される。
【0072】
この時、突き当て部材4を進入させることにより、円筒状基体3の端部が完全に剪断され、その剪断面が凹部2の形状に緊密に密着した状態であることが好ましい。このような状態であることにより部分的に曲げ切れた端部の剪断面が結合部材(ギア又はフランジ)1の結合部に設けた凹部2に密着して結合されているため、感光体の回転方向及び軸方向に対してガタ、緩み等が生じることなく、一層高い結合力を保持することが可能となる。更に、図4に示すごとく、この時の結合部材(ギア又はフランジ)1に設けた凹部2の位置は2箇所、3箇所、4箇所、8箇所等と多部にわたってもよい。これは、基体の一部を食い込ませる図1aの場合でも同様である。
【0073】
また、突き当て部材4により切り曲げが行なわれる円筒状基体3の端部は実質的には円筒表面が露出されており、その円筒表面に塗布される感光物質のコート層端面と円筒の端面との距離が1.0mm以上であることが好ましく、特には5.0mm以上であることが好ましい。
【0074】
図5は円筒端部を曲げ切る工程における寸法関係の説明図である。図5に示すaは突き当て部材4が円筒状基体3の外周面に接触した位置から円筒状基体3の径の中心に向かって進入させた進入量であり、この進入量aを調節することにより結合部材(ギア又はフランジ)1と円筒状基体3の結合力を制御することが可能である。bは円筒状基体3の肉厚寸法で、通常、複写機等に用いられる感光体としてはアルミニウムを基体とした引き抜き管が一般的である。後述の実施例においては、肉厚:0.8mm、素管外径:φ30.60mm、素管内径:φ29.00mm、長さ:260.5mmの円筒状基体を使用した。この肉厚bは厚ければ厚いほど、結合トルク強度は大きくなるが、余り厚すぎた場合は円筒状基体3の端部を突き当て部材4に曲げきる際に非常に大きな力を伴うためにその周辺部の寸法精度に影響を与えることになる。上記のような円筒寸法の場合には、0.3mm乃至1.5mm以内であることが好ましい。より好ましくは0.6mm乃至1.0mmの範囲である。突き当て部材4の先端角度eはその形状等により自由に設定できるが、基本的には鋭角をなし、好ましくは10°以上70°以下、より好ましくは20°以上40°以下の範囲である。なお、後述の実施例においては平滑な面より構成されるツメ型形状の突き当て部材とし、その先端角度が30°、幅が3mmのものを使用した。
【0075】
fは円筒状基体3の剪断面が凹部2に対して切り曲げられた時に切られる端部の長さであり、この切られる長さが大きい程、結合力が増す。この切られ長さfは進入量aにより左右されるが、前述したように0.2mm以上が好ましく、特には0.5mm以上であることが好ましい。また、fの上限は、円筒状基体の長手方向の端部から導電層までの距離(導電層の未塗布幅)にもよるが、1.2mm以下であることが好ましい。1.2mm超過であると、切曲げ時の歪みが大きくなり、膜厚の厚い導電層がその影響を受ける場合がある。
【0076】
図6はギア又はフランジの凹部の寸法関係の説明図である。cは結合部材(ギア又はフランジ)1に設けた凹部2の幅寸法であり、dは前記凹部2の高さ寸法である。これら凹部2の寸法に関してはドラムシリンダーの外径、肉厚等により適宜、任意の値に設定することが可能であるが、上記のような円筒寸法の場合は幅寸法cは1.0mm以上、高さ寸法dは0.5mm以上であることが望ましい。更に、この凹部2の形状はこのような角穴形状に限らず、丸穴形状、円弧形状、三角穴形状等、結合部材(ギア又はフランジ)1の形状や外径等によってその形状、寸法を設定してもよく更にその形状、寸法に合わせて突き当て部材4の先端部形状を自由に変化させてもよい。
【0077】
また凹部に曲げ込まれる円筒端部の幅は、凹部の幅×0.95乃至1.00の値、特には凹部の幅と同じであることが好ましい。
【0078】
なお、本発明による結合部材の結合方法は、感光体をはじめとする各像保持部材の円筒状基体と結合部材の間で、強い結合を実現することができる。プラテンローラー、搬送ローラー、現像スリーブ、定着ローラー、印刷版ロール等の駆動力を伝達される各種ローラー部材としても有効である。
【0079】
図7に感光体を用いた一般的な転写式電子写真装置の概略構成を示した。図において、101は像担持体としての感光体であり軸101aを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体はその回転過程で帯電手段102によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで露光部103にて不図示の像露光手段により光像露光L(スリット露光・レーザービーム走査露光等)を受ける。これにより感光体周面に露光像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0080】
その静電潜像は次いで現像スリーブ104aを内蔵する現像手段104でトナー現像され、そのトナー現像像が転写手段105により不図示の給紙部から感光体101と転写手段105との間に感光体の回転と同期取りされて給送された転写材Pの面に順次転写されていく。ここにおいて、現像スリーブ104aが本発明に示される方法で結合部材を組み付けた円筒状基体で形成されていてもよい。
【0081】
像転写を受けた転写材Pは、感光体面から分離されて定着手段108へ導入されて像定着を受けて複写物(コピー)として機外へプリントアウトされる。
【0082】
像転写後の感光体の表面は、クリーニング手段106にて転写残りトナーの除去を受けて清浄面化されて、更に、前露光手段107により除電処理されて繰り返して像形成に使用される。
【0083】
感光体の均一帯電手段102としては、コロナ帯電装置やローラー帯電装置が一般に広く使用されている。また転写装置5に関しても同様である。電子写真装置として、上述の感光体や現像手段、クリーニング手段等の構成要素のうち、複数のものを装置ユニットとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。例えば、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してユニットを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在の構成にしても良い。このとき、上記の装置ユニットのほうに帯電手段及び/又は現像手段を伴って構成しても良い。
【0084】
また、光像露光Lは、電子写真装置を複写機やプリンタとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、原稿を読取り信号化し、この信号によりレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイ駆動等により行われる。
【0085】
またファクシミリのプリンタとして使用する場合には、光像露光Lは受信データをプリントするための露光になっている。
【0086】
上述の帯電、露光、現像及び転写等における本発明の電子写真プロセスのスピードはサイクルタイム(電子写真感光体が1回転するのに要する時間)で表す。近年の高速化に対応するために、サイクルタイムは0.20秒乃至0.25秒に設定されている。
【0087】
なお、一般に広く使用されているプロセスカートリッジのように、上述の電子写真感光体101、帯電手段102、現像手段104、転写手段105及びクリーニング手段106等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めて一体に結合して構成してもよい。また、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
熱膨張係数が22×10−6/℃、内径DSがφ29.00mm、肉厚が0.8mm、長さ:260.5mmからなるアルミニウム円筒を円筒状基体とした。
【0089】
次に、熱膨張係数が56.0×10−6/℃であるポリエーテルイミド樹脂8部をN,N−ジメチルホルムアミド92部に溶解させることによって、基体内面に設ける樹脂用塗布液を調製した。この樹脂用塗布液を円筒状基体内面及び基体表面に浸漬塗布した。基体表面の余分な塗料はN,N−ジメチルホルムアミドを噴きつけながらゴムブレードで除去し、温度100℃で25分間乾燥させることによって、膜厚Rが30μmの樹脂層を形成した。浸漬塗布時の塗布幅は、円筒状基体の長手方向において端部から8mmとした。基体を反転させて、内面に樹脂層を設けた端部を上端にして、以降の塗布を行った。
【0090】
次に、
SnOコート処理硫酸バリウム 12部
酸化チタン 5部
フェノール樹脂 6部
メタノール 4部
メトキシプロパノール 18部
を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で3時間分散して、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を、円筒状基体の長手方向の上端未塗布幅が3mmとなるように浸漬塗布し、145℃で30分間熱硬化して、膜厚が20μmの導電層を形成した。
【0091】
次に、
ポリアミド樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製) 10部
メトキシメチル化6ナイロン樹脂 10部
(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)
を、メタノール300部/n−ブタノール250部の混合溶媒で溶解して、中間層用塗布液を調製した。この中間層用塗布液を、導電層上に上端未塗布幅が3mmとなるように浸漬塗布し、100℃で10分間熱風乾燥して、膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
【0092】
次に、
クロロガリウムフタロシアニン 6.5部
(CuKαの特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.4°、16.6°、25.5°及び28.2°に強いピークを有する結晶形)
ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学工業(株)製) 3部
シクロヘキサノン 50部
からなる溶液を直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で8時間分散し、次に、酢酸エチル100部を加えて電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、中間層上に上端未塗布幅が3mmとなるように浸漬塗布し、90℃で10分間乾燥して、膜厚が0.12μmの電荷発生層を形成した。
【0093】
次に、下記式(1)で示される構造を有する電荷輸送物質8部、
【0094】
【化1】

【0095】
下記式(2)で示される構造を有する電荷輸送物質4部、
【0096】
【化2】

【0097】
及び、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ−400、三菱ガス化学(株)製)10部を、モノクロロベンゼン80部/ジメトキシメタン20部の混合溶媒で溶解して、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に上端未塗布幅が3mmとなるように浸漬塗布し、130℃で1時間乾燥して、膜厚が17μmの電荷輸送層を形成した。
【0098】
このようにして、円筒状の電子写真感光体を作製した。
【0099】
次に、ポリアセタール樹脂(熱膨張係数90.0×10−6/℃)を射出成形により作製したギア及びフランジ(結合部外径DG:φ28.98mm、成形条件はノズル温度:200℃、シリンダー温度:先端部180℃、中間部170℃、後部160℃、射出圧力:800kg/cm、金型温度:キャビ60℃、コア60℃、フランジにはアース用金属板を装着)と、上記電子写真感光体を温度−25℃の環境で24時間放置し、同環境下でそれらを結合させた。感光体の内面に樹脂層がコートされている端部にギアを結合させた。
【0100】
なお、ギア及びフランジの結合は、感光体の長手方向の両端部から1.5mmの位置とし、ギア及びフランジの結合部には直径1.5mmの円形状の凹部をギア及びフランジの中心から直角方向に4箇所設けた。結合には感光体の周方向に等間隔に配置した4個の直径1.2mmの尖塔状(先端が円錐状)の突き当て部材を用い、ギア及びフランジの凹部に向けて深さ0.5mmとなるように感光体の円筒状基体の表面に突き当て、基体を食い込ませることで結合させ、感光体ユニットを作製した。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。
【0101】
ギアを結合した後に導電層のクラックの有無を確認したが、クラックの発生はなかった。また、温度60℃の環境に24時間放置してから、温度−20℃の環境に24時間放置することを1サイクルとしたヒートショック試験を前記感光体ユニットに対して3サイクル行った後、5Nmの回転トルクをかけて、結合部材であるギアの外れ、緩みを調べたが、それらの発生はなかった。それらの結果を表2に示す。
【0102】
次に、上記の感光体ユニットをヒューレットパッカード社から販売されているレーザービームプリンタ(LaserJet4350)のプロセスカートリッジに装着した。このプロセスカートリッジをレーザービームプリンタ本体に設置し、低温低湿環境(温度10.0℃、相対湿度10%RH)に24時間放置した。該低温低湿環境においてプリント間隔を10秒あけて15000枚の画出し耐久を行った。なお、本体は電子写真プロセスのサイクルタイムが0.25秒となるように改造しておいた。更に、画出しをした後、プロセスカートリッジから感光体を取り外し、ギアと円筒状基体との結合部に耐久による外れ、緩み等の有無を確認したところ、耐久後のギア結合部に外れ、緩み等は発生していなかった。また、耐久後の画像評価としてハーフトーン画像を確認したが、感光体周期のムラ、スジ等の画像欠陥も無く、良好な画像が得られた。それらの結果を表2に示す。
【0103】
(実施例2乃至3)
実施例1において、円筒状基体の内面に設けた樹脂層の膜厚Rを10μm、40μmにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0104】
(実施例4)
実施例1において、ギア及びフランジの結合部に角穴形状の凹部(幅:3mm、高さ:1.2mm、深さ:3mm)をギア及びフランジの中心から直角方向に4箇所設け、凹部に対し先端部の幅3mm、角度30度、材質SKD30である突き当て部材を円筒状基体の端部の剪断長さが0.3mmとなるように突き当て、円筒状基体の端部を凹部の形状に沿った状態で曲げ、剪断を行ない、ギア及びフランジと円筒状基体を結合させた感光体ユニットを作製した以外は、実施例1と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0105】
(実施例5乃至6)
実施例4において、円筒状基体の内面に設けた樹脂層の膜厚Rを10μm、40μmにそれぞれ変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0106】
(実施例7乃至8)
実施例4において、円筒状基体の肉厚を0.3mm、1.5mmにそれぞれ変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0107】
(実施例9乃至10)
実施例4において、円筒状基体の端部の切り曲げ長さを0.5mm、1.2mmにそれぞれ変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0108】
(実施例11乃至14)
実施例4において、円筒状基体内面に設ける樹脂層の樹脂を表1に示される樹脂にそれぞれ変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0109】
(実施例15)
実施例4において、結合部材であるギアの材料をポリカーボネート樹脂に変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0110】
(実施例16)
実施例4において、円筒状基体及び結合部材の放置、結合する環境を温度0℃に変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0111】
(実施例17)
実施例4において、円筒状基体上に電荷輸送層までを積層した後に、浸漬塗布における基体の下端側にスプレー塗布で内面にのみ樹脂層を設け、更に導電層の膜厚を30μmに変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0112】
(実施例18)
実施例17において、円筒状基体の外周表面に形成する導電層の膜厚を50μmに変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0113】
(実施例19乃至20)
実施例4において、評価時の電子写真プロセスのサイクルスピードを0.22秒、0.20秒にそれぞれ変更した以外は実施例4と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0114】
(比較例1)
実施例1において、円筒状基体内面に設ける樹脂層の樹脂を表1に示される樹脂に変更し、円筒状基体内面に設ける樹脂層の膜厚Rを10μmに変更した以外は実施例1と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0115】
(比較例2)
実施例1において、円筒状基体の内面に樹脂層を設けず、結合部材であるギアをシアノアクリレート系瞬間接着剤(商品名:アロンアルファ201、東亜合成化学工業(株)、接着剤量0.1g)により感光体の円筒状基体に接着した。その後、温度30.0℃、相対湿度80%RHの環境に24時間放置して接着剤を硬化させて、基体の一部を食い込ませずに結合させた。その他に関しては実施例1と同様に感光体ユニットを作製し、耐久評価を行った。ギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。なお、結合後のヒートショック試験においてギアの外れが発生したため、以降の耐久評価は中止とした。
【0116】
(比較例3)
実施例1において、円筒状基体の内面に樹脂層を設けず、結合強度を高めるために尖塔状の突き当て部材を深さ0.8mmとなるように基体表面に突き当てて食い込ませることで結合させた。それ以外は実施例1と同様に感光体ユニットを作製し、実施例1と同様に耐久評価を行った。ギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。なお、結合後に導電層のクラックが発生したため、以降の評価は中止とした。
【0117】
(比較例4)
実施例1において、常温常湿(温度25.0℃、相対湿度50%RH)の環境でギア/フランジ及び感光体の保管及び結合を行ったこと以外は実施例1と同様に感光体ユニットを作製し、実施例1と同様に耐久評価を行った。円筒状基体内面の樹脂層及びギアに用いた材料、結合条件等を表1に示す。評価結果を表2に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
以上の評価結果において、実施例2、5、14、16では耐久後の画像に軽微なムラやスジが見られたが、実用上、問題とならないレベルであった。また、実施例1乃至3、18では耐久後の導電層に軽微なクラックが見られたが、画像形成への影響はなく、実用上、問題ないレベルであった。
【0121】
更に、上記の実施例1乃至20において、耐久及び評価を終えたプロセスカートリッジから感光体ユニットを取り出し、前述のヒートショック試験を3サイクル行い、5Nmの回転トルクをかけて、結合部材であるギアの外れ、緩みの有無を確認した。その結果は、いずれの実施例においても外れ、緩みは発生しなかった。続いて、該感光体ユニットをプロセスカートリッジに戻し、ハーフトーン画像を確認したところ、実施例6、9、10、11、12、15では特に画像欠陥が発生しなかった。実施例6、9、10、11、12、15を除く実施例では極軽微な感光体周期のムラが発生していたが、実用上、問題ないレベルであった。
【0122】
一方、比較例1では耐久後に軽微なギアの緩みが発生し、ハーフトーン画像上では感光体周期のムラが発生した。比較例2では、前述したようにギアを結合した後のヒートショック試験においてギアの外れが発生した。比較例3では、ギアの結合後に導電層のクラックが発生した。比較例4では、耐久後において感光体とギアの結合部に隙間が生じており、ギアの緩みが確認された。また、ハーフトーン画像上においても感光体周期のムラが発生していた。
【0123】
以上の結果から、本発明によれば、高速化された電子写真プロセスにおいても画像形成に影響を与えるような導電層のクラックの発生が抑制され、且つ駆動伝達のための結合部材であるギアが外れることなく、安定して画像形成を行える電子写真感光体ユニットの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1a】本発明の円筒状基体の一部を食い込ませる方法による感光体及び結合部材の断面図である。
【図1b】本発明の円筒状基体の端部を切り曲げる方法による感光体及び結合部材の断面図である。
【図2】切り曲げる工程の円筒状基体端部の断面図である。
【図3】切り曲げる工程の円筒状基体端部の平面図である。
【図4】本発明による感光体に結合される結合部材の断面図例である。
【図5】円筒状基体端部を曲げ切る工程における寸法関係の説明図である。
【図6】結合部材の凹部における寸法関係の説明図である。
【図7】本発明による感光体ユニットを用いた一般的な電子写真装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0125】
1 結合部材(ギア及び/又はフランジ)
2 結合部材に設けた凹部
3 円筒状基体、感光体(外周表面に導電層と感光層を有し、内面に樹脂層を有する)
4 突き当て部材
5 樹脂層
a 進入量
b 円筒状基体の肉厚
c 凹部の幅
d 凹部の高さ
e 突き当て部材の先端角度
f 剪断部における円筒状基体の切られた長さ
101 感光体
101a 軸
102 帯電手段
103 露光部
104 現像手段
104a 現像スリーブ
105 転写手段
106 クリーニング手段
107 前露光手段
108 定着手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状基体の外周表面に少なくとも膜厚が20μm以上50μm以下である導電層を有し、該円筒状基体の少なくとも一方の端部に駆動伝達の役割を果たす結合部材を組み付けてなる電子写真感光体ユニットの製造方法において、
該円筒状基体よりも大きく、且つ該結合部材よりも小さい熱膨張係数を有する樹脂層が、結合部材の接触する円筒状基体の内面領域表面にコートされる工程、
円筒状基体の内径をDS、結合部材の外径をDG、円筒状基体内面の樹脂層の膜厚をRとしたとき、温度0℃以下の環境下で24時間以上保管した円筒状基体、結合部材及び円筒状基体内面の樹脂層が結合部材を円筒状基体に組付ける前の状態で、下記式(1)乃至式(3)
(DS−DG)/2≦R (1)
DG<DS (2)
10μm≦R≦40μm (3)
を満たしており、
該温度0℃以下の保管環境で円筒状基体に結合部材を組付け、更に円筒状基体の一部を食い込ませる又は円筒状基体の端部を切り曲げることで円筒状基体に結合部材を結合させる工程、
を有していることを特徴とする電子写真感光体ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記内面に樹脂層をコートした円筒状基体及び前記結合部材を保管する環境と、該円筒状基体に該結合部材を結合させる環境が温度−25℃以下である請求項1に記載の電子写真感光体ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記結合部材が前記円筒状基体の端部に圧入された後、前記導電層を表面に有する肉厚0.3mm以上1.5mm以下の円筒状基体の端部を0.5mm以上1.2mm以下の長さで結合部材の挿入部に設けた凹部内に切り曲げることにより結合されている請求項1又は2に記載の電子写真感光体ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記円筒状基体に前記結合部材を結合させている端部が、円筒状基体の外周表面に導電層及び感光層を浸漬塗布する際の上端側である請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層の熱膨張係数が、前記円筒状基体と前記結合部材の熱膨張係数の中間値よりも小さい請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体ユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体ユニットの製造方法により製造された電子写真感光体ユニットを有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体ユニットの製造方法により製造された電子写真感光体ユニットを有し、電子写真装置本体の着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図7】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−66668(P2010−66668A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234769(P2008−234769)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】