説明

電子写真感光体及び画像形成装置

【課題】長波長域において高感度及び高応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、耐摩耗性、クリーニング性の高い電子写真感光体等の提供。
【解決手段】支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とを有し、電荷輸送層がバインダー樹脂及び特定のトリフェニルアミノービススチリル系化合物を含有し、バインダー樹脂が一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体、温度22℃、相対湿度55%RHの環境下、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて設定加重9.8mN、電荷輸送層表面から1μmの押し込み深さにおける電荷輸送層の弾性仕事率が45〜55%、ユニバーサル硬度が160〜180N/mである電子写真感光体とする。


共重合モル比率(m:n)は35:65〜50:50である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体(以下、「感光体」、「像担持体」と称することもある)、及び該電子写真感光体を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行う光プリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され、所謂デジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため今後その需要性が益々高まっていくと予想される。更に、パーソナルコンピュータの普及、及び性能の向上にともない、画像及びドキュメントのカラー出力を行うためのデジタルカラープリンタの進歩も急激に進んでいる。
【0003】
電子写真技術の中核となる電子写真感光体については、有機光導電材料を用いた有機系感光体が、無公害、低コスト、材料選択の自由度が高いため感光体特性を様々に設計できるという多くの利点から、数多く提案され、実用化されている。このような有機系感光体の感光層は、電荷発生剤をバインダー樹脂に分散させた電荷発生層と、電荷輸送剤をバインダー樹脂に分散させた電荷輸送層とを積み重ねた積層構造、電荷発生剤及び電荷輸送剤の両方をバインダー樹脂に分散させた単層構造等が提案されている。これらの中でも、感光層として、電荷発生層上に電荷輸送層を積層させた機能分離型の感光体は、電子写真特性及び耐久性に優れ、広く実用化されている。
【0004】
最近のデジタル複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置は、小型化、高速化が進み、感光体特性として高速化に対応した高応答性化と、耐摩耗性向上による長寿命化の両方の特性が要求されている。これらのうち、高応答性化を満たすには高応答性の電荷輸送剤を用いることで、また、長寿命化を満たすためには耐摩耗性の高いバインダー樹脂を用いることで達成することができる。
【0005】
そこで、高速機に対応するために高光応答性、高耐久性の両立を目指した様々な方法が提案されている。しかし、これら従来の技術によっても未だ十分な高感度、高耐久性、及び高クリーニング性が完全に満たされていない。高移動度を達成するために通常電荷輸送層における電荷輸送剤のバインダー樹脂に対する比率を高めることが一般的であるが、電荷輸送剤の比率を高くすると耐摩耗性は悪化する傾向がある。更に、電荷発生剤による高感度化においても電荷輸送層とのマッチングや繰り返し特性の問題があり、実用上十分でないのが現状である。
【0006】
電荷発生剤としてのフタロシアニン系顔料のなかで長波長域に高い感度を有するものとしてオキシチタニウムフタロシアニンが挙げられる。このオキシチタニウムフタロシアニンには、いくつもの結晶型が報告されている。これらの中でも、27.2°に最大回折ピークを示すものが高感度であるとされている。しかし、高速プロセスで用いると、繰り返し使用後の感光体の電位特性が劣化し、得られる画像にカブリ、黒スジ、及び濃度ムラなどが生じてしまう。高速プロセスに用いた場合は、高感度であっても光応答性が十分でなければ感光層中に電荷が残り、次工程の電子写真プロセスで、カブリ、黒スジ、及び濃度ムラなどの原因となる。電荷発生剤としては、高い電荷輸送能力を持つことが必要であり、また、電荷発生剤と電荷輸送剤との組合せが重要である。
【0007】
そこで、長波長域の感度が高く、高応答性であり、高速で繰り返し使用しても電子写真特性、特に初期電位と繰り返し使用後の電位の再現性が安定している電子写真感光体が求められている。また、高い電荷発生効率を有する電荷発生剤を用いても、電荷輸送剤との相性が悪いと充分な感度を得ることができないだけでなく、高温高湿から低温低湿までさまざま使用環境においても高品質の画像が得られない。電荷発生剤と電荷輸送剤との相性は、様々な視点から研究されており、電子写真感光体に特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンとトリアリールアミンを含むスチリル系電荷輸送剤とを併用することが従来から検討されている。
【0008】
また、感光体を繰り返し使用する場合、感光体の光電気特性の劣化だけではなく、紙、クリーニング手段、接触タイプの帯電手段等との接触により感光体表面が摩耗し、得られる画像にカブリ、黒スジ、及び濃度ムラなどが生じてしまう。感光体表面の耐摩耗性を向上させるために数多くのバインダー樹脂の検討がなされている。例えば、トリアリ−ルアミンを含むスチリル系電荷輸送剤と合わせて用いられるバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂が数多く提案されている(特許文献1〜7参照)。
【0009】
更に、クリーニング性及び耐摩耗性の向上については、バインダー樹脂の選択、電荷輸送剤とバインダー樹脂との比率に加えて、感光層の電荷輸送層における弾性変形率及びユニバーサル硬度の適正化を図ることも重要であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−37858号公報
【特許文献2】特開平4−37860号公報
【特許文献3】特開平5−257298号公報
【特許文献4】特開平5−257297号公報
【特許文献5】特開平10−20527号公報
【特許文献6】特開2005−331735号公報
【特許文献7】特開2010−128187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、複写機、プリンター装置の小型化、高速化に伴い、感光体の小径化、周速の速いプロセスに対応でき、かつ長波長域において高感度及び高応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、耐摩耗性、及びクリーニング性の高い電子写真感光体、及び該電子写真感光体を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、電荷輸送層中に特定の電荷輸送剤と、バインダー樹脂として特定のポリカーボネート共重合体とを含有し、感光体表面である電荷輸送層が特定の弾性仕事率とユニバーサル硬度を有し、好ましくは電荷発生層中に特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンを含むことにより、前記従来からの課題を効果的に解決するできることを知見した。
【0013】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有する電子写真感光体であって、
前記電荷輸送層が、バインダー樹脂、及び下記一般式(1)で表される化合物を含有し、
前記バインダー樹脂が、下記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体であり、
温度22℃、相対湿度55%RHの環境下、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて設定加重9.8mN、前記電荷輸送層表面から1μmの押し込み深さにおける前記電荷輸送層の弾性仕事率が45%〜55%であり、かつユニバーサル硬度が160N/m〜180N/mであることを特徴とする電子写真感光体である。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、R〜Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、及び置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシル基のいずれかを表す。
【化2】

ただし、前記一般式(2)中、共重合モル比率(m:n)は35:65〜50:50である。
<2> 電荷発生層が電荷発生剤を含有し、該電荷発生剤がオキシチタニウムフタロシアニンであり、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKα線に対するX線回折ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2)として、少なくとも27.2°に最大回折角を有し、更に9.7°、14.2°、18.0°、及び24.2°に主要ピークを有する前記<1>に記載の電子写真感光体である。
<3> 電荷発生層が電荷発生剤を含有し、該電荷発生剤がオキシチタニウムフタロシアニンであり、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKα線に対するX線回折ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、及び24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有さない前記<1>に記載の電子写真感光体である。
<4> 電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、前記<1>から<3>のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置である。
<5> 電子写真感光体表面を除電する除電手段を有していないイレーズレス型画像形成装置である前記<4>に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、複写機、プリンター装置の小型化、高速化に伴い、感光体の小径化、周速の速いプロセスに対応でき、かつ長波長域において高感度及び高応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、耐摩耗性、クリーニング性の高い電子写真感光体、及び該電子写真感光体を用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【図2】図2は、合成例2で得られたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【図3】図3は、合成例3で得られたα型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【図4】図4は、合成例4で得られたβ型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図である。
【図5】図5は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に、電荷発生層及び電荷輸送層からなる感光層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0017】
本発明においては、前記電子写真感光体は、記録媒体(紙)、クリーニング手段、接触タイプの帯電手段等との接触により感光体表面が摩耗することから、前記感光体表面の電荷輸送層の摩耗を防止するには電荷輸送層の組成だけではなく、前記電荷輸送層の弾性仕事率及びユニバーサル硬度の適正化を図ることが重要である。
【0018】
前記電荷輸送層の弾性仕事率は、45%〜55%であり、45%〜50%が好ましい。前記弾性仕事率が、45%未満であると、耐刷性が低下することがあり、55%を超えると、電子写真感光体上に残留したトナーをクリーニングブレードでクリーニングする際のクリーニング性が低下することがある。
前記電荷輸送層のユニバーサル硬度(HU)は、160N/m〜180N/mであり、160N/m〜170N/mが好ましい。前記ユニバーサル硬度が、低すぎても高すぎても、耐刷性が低下する傾向がある。
【0019】
ここで、前記弾性仕事率及び前記ユニバーサル硬度は、ダイヤモンド圧子を被測定体に押しつける際に、圧子移動量及び圧子負荷荷重を同時に測定できる装置であれば測定可能である。前記弾性仕事率及び前記ユニバーサル硬度の測定には、例えば、フィッシャーインストルメンツ社から市販されているフィッシャースコープH−100、SHIMADZU社から市販されているダイナミック微小硬度計DUH−211などが挙げられる。前記弾性仕事率の測定条件にもよるが、測定においては下層(本発明においては支持体及び電荷発生層)の影響を受けやすいため、被測定体(本発明においては電荷輸送層)の厚みを十分厚くすることが好ましい。具体的には、弾性仕事率の測定におけるダイヤモンド圧子の変位量が被測定体の厚みの1/6以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。
前記電荷輸送層のユニバーサル硬度は圧子の最大荷重での変位を硬度の値として表し、前記弾性仕事率は負荷−除荷試験のグラフより計算して求めることができる。
【0020】
−層構成−
前記電子写真感光体としては、支持体と、該支持体上に電荷発生層と、該電荷発生層上に電荷輸送層とを有する機能分離型が用いられるが、電荷発生剤と電荷輸送剤とを同一層に含有する単層型電子写真感光体にも適用できる。
【0021】
<支持体>
前記支持体としては、体積抵抗値が1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体又はそれらの合金の加工体が挙げられる。前記支持体の形状は、シート状、フイルム状、ベルト状、ドラム状等のいずれでもよく、ベルト状の支持体の場合には無端又は有端を問わない。ドラム状の支持体の場合にはその直径は、60mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。
【0022】
これらの中でも、JIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金が好適に用いられ、EI(Extrusion Ironing)法、ED(Extrusion Drawing)法、DI(Drawing Ironing)法、II(Impact Ironing)法等の一般的な方法により成形を行った支持体が好ましく、更に、前記支持体の表面に、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨、陽極酸化処理等の表面処理、又はこれらの加工処理を行わない無切削管などのいずれのものでもよい。
【0023】
前記支持体として樹脂を用いる場合には、樹脂中に金属粉や導電性カーボン等の導電剤を含有させたり、支持体形成用樹脂として導電性樹脂を用いることもできる。
前記支持体としてガラスを用いる場合には、その表面に酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆し、導電性を持たせてもよい。
【0024】
また、前記支持体上に樹脂層を形成してもよい。前記樹脂層は接着向上機能、アルミニウム管からの流れ込み電流を防止するバリヤー機能、アルミニウム管表面の欠陥被覆機能等を有する。前記樹脂層としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の各種樹脂を用いることができる。これらの樹脂層は、単独の樹脂で構成してもよく、2種以上の樹脂を混合して構成してもよい。また、前記樹脂層中に金属化合物、カーボン、シリカ、樹脂粉末等を分散させることもできる。更に、特性改善のために各種顔料、電子受容性物質や電子供与性物質等を含有させることもできる。
【0025】
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、電荷発生剤と、バインダー樹脂とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0026】
−電荷発生剤−
前記電荷発生剤としては、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン(特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニン)が好適に用いられる。
このようなブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンとしては、図1に示すように、CuKα線に対するX線回折ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2)として、少なくとも27.2°に最大回折角を有し、更に9.7°、14.2°、18.0°、及び24.2°に主要ピークを有するオキシチタニウムフタロシアニンが、高感度を有する点で好ましい。
また、図2に示すように、CuKα線に対するX線回折ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、及び24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有さないオキシチタニウムフタロシアニンが、高感度を有する点で好ましい。
【0027】
前記特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンは、特に制限はなく、従来公知の方法で合成可能であり、例えば、特開2004−233465号公報などに記載の方法により合成することができる。
前記特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンの前記電荷発生層における含有量は、20質量%〜95質量%が好ましく、50質量%〜90質量%がより好ましい。
【0028】
このようなCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを示す特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生剤として用いることにより、長波長域に優れた感度を有し、しかも使用環境、特に湿度に影響されずに安定した特性を示す電子写真感光体を提供することができる。
【0029】
前記電荷発生層中には、適切な光感度波長や増感作用を得るために、前記特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニン以外にも、その他のオキシチタニウムフタロシアニン、アゾ顔料等のその他の顔料等を混合させることもできる。前記その他の顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩などが挙げられる。
【0030】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル)樹脂、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分子量の異なった樹脂を混合して用いた場合には、硬度及び耐摩耗性を改善できる点で好ましい。
【0031】
前記電荷発生層の形成方法としては、特に制限はなく、各種の方法を使用することができ、例えば、前記電荷発生剤及び前記バインダー樹脂、必要に応じてその他の成分を溶剤に分散又は溶解した電荷発生層塗布液を、支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
【0032】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素が特に好ましい。
【0033】
前記塗布方法としては、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法などが挙げられる。塗布後の乾燥はオーブン等を用いて加熱乾燥される。前記電荷発生層の乾燥温度は、50℃〜160℃が好ましく、80℃〜140℃がより好ましい。
【0034】
前記電荷発生層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.01μm〜5μmが好ましく、0.1μm〜2μmがより好ましい。
【0035】
<電荷輸送層>
前記電荷輸送層は、バインダー樹脂、及び電荷輸送剤として下記一般式(1)で表される化合物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0036】
−電荷輸送剤−
前記電荷輸送剤としては、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【化3】

ただし、前記一般式(1)中、R〜Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、及び置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシル基のいずれかを表す。
前記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
前記炭素数1〜6のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
前記アルキル基及びアルコキシ基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、などが挙げられる。
【0037】
前記電荷輸送剤としての前記一般式(1)で表される化合物は、前記電荷発生剤としての前記特定結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく、感度が高く、応答性も優れた電子写真感光体を提供することができる。
【0038】
以下、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0039】
【表A】

【0040】
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【0041】
前記一般式(1)で表される化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開昭60−174749号公報に記載の合成方法などが挙げられる。
【0042】
前記電荷輸送層における前記一般式(1)で表される化合物の含有量は、後述するバインダー樹脂100質量部に対して、30質量部〜90質量部が好ましく、40質量部〜80質量部がより好ましい。前記含有量が、30質量部未満であると、残留電位が上昇する等の電気特性が悪化することがあり、90質量部を超えると、耐摩耗性等の機械特性が低下することがある。
【0043】
なお、前記一般式(1)で表される化合物と、必要に応じてその他の電荷輸送剤を混合して用いることもできる。この場合、前記一般式(1)で表される化合物とその他の電荷輸送剤の含有質量比率(一般式(1)で表される化合物:その他の電荷輸送剤)は、50:50〜95:5が好ましく、70:30〜95:5が好ましい。
前記その他の電荷輸送剤としては、高分子化合物及び低分子化合物のいずれであってもよい。
前記高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物などが挙げられる。
前記低分子化合物として、例えば、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン又はこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物;インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物;フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベンなどが挙げられる。
また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。更に、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷移動錯体等も用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、下記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体が用いられる。
【化9】

前記一般式(2)において、共重合モル比率(m:n)は、35:65〜50:50であり、38:62〜45:55が好ましい。前記共重合モル比率(m:n)におけるmが、35モル%未満であると、感光体の耐刷性が悪くなることがあり、50モル%を超えると、バインダー樹脂と電荷輸送剤が均一に溶けず不透明となることがある。
【0045】
前記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【表B】

【0046】
【化10】

【化11】

【化12】

【0047】
前記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体は、特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びそれらを複合したいずれの形態も取り得る。
前記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)二価フェノール(1,1−ビス(4−ビドロキシフェニル)シクロヘキサン又は4,4’−ジヒドロキシビフェニル)とホスゲンなどを反応させて、ポリカーボネートオリゴマーを製造し、次いでこのポリカーボネートオリゴマーに、前記二価フェノールを、前記溶媒及び酸結合剤のアルカリ水溶液の混合液の存在下に重縮合反応させる方法、(2)前記二価フェノールとホスゲンを、前記溶媒とアルカリ水溶液との混合液中で重縮合反応させる方法などが挙げられる。これらの中でも、前記(1)の予めポリカーボネートオリゴマーを製造する方法が効率的である点で特に好ましい。
【0048】
前記ポリカーボネートオリゴマーを製造するには、まず、アルカリ水溶液に二価フェノール(1,1−ビス(4−ビドロキシフェニル)シクロヘキサン又は4,4’−ジヒドロキシビフェニル)を溶解し、二価フェノールのアルカリ水溶液を調製する。次いで、このアルカリ水溶液を塩化メチレンなどの有機溶媒共存下、ホスゲンを反応させ、二価フェノールのポリカーボネートオリゴマーを合成する。次いで、反応溶液を水相と有機相とに分離し、ポリカーボネートオリゴマーを含む有機相を得る。この際、アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、水相がアルカリ性となる濃度であればよい。
反応温度は、通常0℃〜70℃であり、反応時間は1分間〜4時間程度である。
【0049】
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーを含む有機相に、前記二価フェノールを加えて反応させる。反応温度は、通常0℃〜35℃である。
反応圧力は、減圧、常圧、及び加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧又は反応系の自圧程度で好適に行ない得る。反応時間は、反応温度等によって左右されるが、通常0.5分間〜10時間程度である。
また、重縮合反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0050】
なお、前記バインダー樹脂として、前記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体以外にも、必要に応じてその他の樹脂を混合して用いることができる。前記その他の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、前記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体以外のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記電荷輸送層の形成方法としては、特に制限はなく、各種の方法を使用することができ、例えば、前記電荷輸送剤及び前記バインダー樹脂、必要に応じてその他の成分を溶剤により分散又は溶解した電荷輸送層塗布液を、下地となる電荷発生層上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
なお、前記溶剤及び塗布方法としては、前記電荷発生層と同様のものを用いることができる。
【0052】
前記電荷輸送層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、5μm〜100μmが好ましく、15μm〜40μmがより好ましい。
【0053】
<その他の層>
本発明の電子写真感光体においては、前記支持体と前記電荷発生層との間に下引き層、表面の保護を目的として、保護層を前記電荷輸送層の上に設けることができる。また、前記支持体と前記電荷発生層との間には、ブロッキング層を設けることができる。
【0054】
−下引き層−
前記下引き層は、バインダー樹脂と、微粒子とを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、カゼイン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記下引き層に用いるバインダー樹脂として、前記電荷輸送層のバインダー樹脂であるポリカーボネート共重合体を用いてもよい。
前記微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタン酸、ジルコン酸、ランタン鉛、チタンブラック、シリカ、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化珪素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記下引き層の形成方法としては、特に制限はなく、各種の方法を使用することができ、例えば、前記バインダー樹脂及び前記微粒子、必要に応じてその他の成分を溶剤により分散又は溶解した下引き層塗布液を、支持体上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
なお、前記溶剤及び塗布方法としては、前記電荷発生層と同様のものを用いることができる。
前記下引き層の平均厚みは、0.01μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜7μmがより好ましい。
【0055】
本発明の電子写真感光体は、特性を損なわない範囲で、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、保護層等の各層に酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。これらの中でも、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を単独もしくは組み合わせて使用することにより感光体の耐久性向上に寄与し得るので特に好ましい。
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。
【0056】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピオン酸ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、n−オクタデシル−3−(3’−5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;2.2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、α,α’(テトラベンジル)ジアミノ−P−キシレン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−エチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジトリデシイル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3−チオプロピオネート、ビス〔2−メチル−4−(3−n−アルキルC12〜C14)チオプロピオネート)−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記フェノール系酸化防止剤の添加量は、フェノール系酸化防止剤を添加する層のバインダー樹脂に対して1質量%〜20質量%が好ましい。前記アミン系酸化防止剤の添加量は、アミン系酸化防止剤を添加する層のバインダー樹脂に対して1質量%〜20質量%が好ましい。前記硫黄系酸化防止剤の添加量は、硫黄系酸化防止剤を添加する層のバインダー樹脂対して0.1質量%〜5質量%が好ましい。
【0060】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤などが挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3.5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸フェニル、サリチル酸−p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸−p−オクチルフェニルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤の添加量は、紫外線吸収剤を添加する層のバインダー樹脂に対して1質量%〜20質量%が好ましい。
【0061】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段とを少なくとも有してなり、定着手段、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。なお、帯電手段と、露光手段とを合わせて静電潜像形成手段と称することもある。
本発明で用いられる画像形成方法は、帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程とを少なくとも含み、定着工程、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。なお、前記帯電工程と前記露光工程を合わせて静電潜像形成工程と称することもある。
【0062】
<電子写真感光体>
前記電子写真感光体としては、本発明の前記電子写真感光体が用いられる。
【0063】
<帯電工程及び帯電手段>
前記帯電工程は、電子写真感光体表面を帯電させる工程であり、帯電手段により行われる。前記帯電手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた帯電器や、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した帯電器などが挙げられる。
【0064】
<露光工程及び露光手段>
前記露光(書き込み)は、例えば、前記露光手段を用いて前記電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光手段としては、前記帯電手段により帯電された前記電子写真感光体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記電子写真感光体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
前記光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。
【0065】
<現像工程及び現像手段>
前記現像工程は、前記静電潜像を、トナー乃至現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記トナー乃至現像剤を収容し、前記静電潜像に該トナー乃至該現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
【0066】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、前記トナー乃至前記現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、などが好適に挙げられる。
【0067】
前記現像器内では、例えば、前記トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記電子写真感光体近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記トナーの一部は、電気的な吸引力によって該電子写真感光体の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該トナーにより現像されて電子写真感光体の表面に該トナーによる可視像が形成される。
前記現像器に収容させる現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0068】
<転写工程及び転写手段>
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する態様が好ましく、前記トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記電子写真感光体を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0069】
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記電子写真感光体上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0070】
<定着工程及び定着手段>
前記定着工程は、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる工程であり、定着手段を用いて、定着させることができる。なお、二色以上のトナーを用いる場合は、各色のトナーが記録媒体に転写される毎に定着させてもよいし、全色のトナーが記録媒体に転写されて積層された状態で定着させてもよい。定着手段としては、特に限定されず、公知の加熱加圧手段を用いた熱定着方式を採用することができる。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラを組合せたもの、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトを組合せたもの等が挙げられる。このとき、加熱温度は、通常、80℃〜200℃である。なお、必要に応じて、定着手段と共に、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0071】
<その他の工程及びその他の手段>
−除電工程及び除電手段−
前記除電工程は、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
なお、イレーズレス型の画像形成装置では、前記除電手段は設けられていない。これにより、感光体の小径化が図れ、画像形成装置の小型化が達成可能となる。
【0072】
−クリーニング工程及びクリーニング手段−
前記クリーニング工程は、前記電子写真感光体に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記電子写真感光体上に残留する前記トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが好適に挙げられる。
【0073】
−リサイクル工程及びリサイクル手段−
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記トナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0074】
−制御工程及び制御手段−
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0075】
ここで、本発明の画像形成装置の一例について図面を参照して説明する。図5は、本発明の電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図5中11は、電子写真感光体であって、該電子写真感光体と接触して帯電手段12が設けられている。この帯電手段12には、電源13から電圧が供給されるようになっている。
電子写真感光体11の周囲には、露光手段14、現像手段15、一次転写手段16、クリーニング手段19、及び除電手段21が設けられている。なお、22は定着手段である。図6は、本発明のイレーズレス型画像形成装置の一例を示す概略構成図であり、図5に示す画像形成装置において、除電手段21が設けられていない以外は、同一の構造を有しているので同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0076】
電子写真感光体11としては、本発明の電子写真感光体が用いられる。なお、電子写真感光体は、ドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
帯電手段12には、非接触のローラ形状の帯電器が用いられている。この帯電器により、電子写真感光体11表面には帯電が施される。
露光手段14には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。これらの光源のうち、発光ダイオード及び半導体レーザは照射エネルギーが高いので、良好に使用される。
現像手段15は、少なくとも1つの現像スリーブを有する。現像手段15では、トナーが使用され、静電潜像が現像される。また、トナーのみで現像を行う1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
【0077】
一次転写手段(一次転写ベルト)16は、一次転写ローラ17を有し、該一次転写ローラ17は定電圧電源18により電圧が供給される。即ち、定電圧制御の印加による転写が行われる。
20は、一次転写ベルト16上のトナー像を記録媒体(紙)23上に転写する二次転写手段である。
転写後において電子写真感光体11上に残留するトナーが生じた場合、クリーニング手段19のファーブラシ及びブレードにより、電子写真感光体11より残留トナーが除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行われることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシなどが用いられる。
【0078】
以上説明した画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形で画像形成装置本体内に着脱可能に組み込まれてもよい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
(フタロシアニンの合成例1)
フタロジニトリル64.4g、及び1−メチルナフタレン150mLの混合物中に、窒素気流下で6.5mLの四塩化チタンを5分間滴下した。滴下後、マントルヒーターにより200℃で2時間加熱して反応を完結させた。その後析出物をろ過し、ろ過残渣を1−メチルナフタレンで洗浄した後、アセトンで洗浄し、更にメタノールで洗浄した。その後、濃アンモニア水60mLとイオン交換水60mLの混合液により沸点下で10時間の加水分解反応を行ったのち、室温で吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄水が中性になるまで洗浄した。その後、メタノールで洗浄した後、90℃の熱風で10時間乾燥したところ、青紫色の結晶型チタニルフタロシアニン粉末64.6gを得た。
次に、結晶型チタニルフタロシアニン粉末10gを約10倍量の2℃の濃硫酸中に、ゆっくりと溶解し、その後氷水2,000mLにあけて結晶を析出させた、析出した結晶をろ過した後に、ろ別したウェットケーキ5gを水150mLに入れ、ナフタレン10gを入れ、液温を90℃で1時間加熱攪拌させた。その後室温に戻した後に、ろ別して、合成例1のオキシチタニウムフタロシアニン9.5gを得た。
【0081】
(フタロシアニンの合成例2)
1,3−ジイミノイソインドリン292質量部、及びスルホラン1,800質量部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204質量部を滴下した。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、アセトンで粉体が青色になるまで洗浄し、次に、メタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。
得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち60質量部を96質量%硫酸1,000質量部に3℃〜5℃下で撹拌、溶解し、濾過した。得られた硫酸溶液を氷水35,000質量部中に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを得た。
この水ペーストにテトラヒドロフラン1,500質量部を加え、室温下で撹拌し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキ98質量部を得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、合成例2のオキシチタニウムフタロシアニン78質量部を得た。
【0082】
(フタロシアニンの合成例3)
o−フタロジニトリル200g(156mmoL)と、チタンテトラブトキサイド146.1g(42.9mmoL)と、塩基触媒としてo−メチルイソ尿素硫酸塩(OMIU)と、反応溶媒としてトリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG)160mLとの混合物を150℃で5時間加熱攪拌した。その後冷却し、メタノール100mLを加え60℃で温時濾過をした。そしてメタノール、アセトンで洗浄し粗ケーキを得た。
次いで、ジメチルホルムアミド1,000mLを加えて100℃で30分間加熱懸洗を行い冷却後、メタノール、アセトンで洗浄したものをろ過し、粗チタニウムフタロシアニンを得た。
その後、熱水洗浄処理した粗チタニウムフタロシアニン顔料のうち、60質量部を96%硫酸1,000質量部に3℃〜5℃下、攪拌し、溶解し、ろ過した。得られた硫酸溶液を氷水35,000質量部中に攪拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過した。次いで、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、ろ過して乾燥し、合成例3のα型オキシチタニウムフタロシアニンを得た。
【0083】
(フタロシアニンの合成例4)
フタロジニトリル64.4g、及び1−メチルナフタレン150mLの混合物中に、窒素気流下で6.5mLの四塩化チタンを5分間滴下した。滴下後、マントルヒーターにより200℃で2時間加熱して反応を完結させた。その後析出物をろ過し、ろ過残渣を1−メチルナフタレンで洗浄した後、アセトンで洗浄し、更にメタノールで洗浄した。その後、濃アンモニア水60mLとイオン交換水60mLの混合液により沸点下で10時間の加水分解反応を行ったのち、室温で吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄水が中性になるまで洗浄した。その後、メタノールで洗浄した後、90℃の熱風で10時間乾燥したところ、青紫色の結晶型チタニルフタロシアニン粉末64.6gを得た。この結晶型チタニルフタロシアニン粉末を200℃、1時間、ジクロロトルエンで懸洗し、ろ過して得られた粉末をメタノールで洗浄した後、90℃の熱風で10時間乾燥し、合成例4のβ型オキシチタニウムフタロシアニンを得た。
【0084】
<X線回折>
シリコン無反射板にオキシチタニウムフタロシアニンを付着させ、それを風乾しX線回折の検体試料とした。検体試料を測定する場合は、粉末法にて測定し、X線源としてCuKα(波長1.54178Å)を用い測定した。なお、測定条件は以下の通りである。
X線回折装置:フリップス社製 X’Pert
測定条件:X線管球 Cu
:走査範囲 4°〜35°
:管電圧 45kV
:管電流 40mA
:ステップ角度 0.01度
:計数時間 20秒
:受光スリット、発散スリット 可変型
:照射幅 20mm
【0085】
フタロシアニンの合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図を図1に示す。図1によると、合成例1のオキシチタニウムフタロシアニンは、ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、27.2°に最大回折角を有し、更に9.7°、14.2°、18.0°、及び24.2°に主要ピークを有することが確認できた。
【0086】
フタロシアニンの合成例2で得られたチタニルフタロシアニンのX線回折図を図2に示す。図2によると、合成例2のチタニルフタロシアニンは、ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、及び24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有さないことが確認できた。
【0087】
フタロシアニンの合成例3で得られたα型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図を図3に示す。図3によると、合成例3のα型オキシチタニウムフタロシアニンは、ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、7.6°及び28.6°に特徴的な回折ピ−クを示し、10.3°、12.6°、18.4°、22.6°、及び25.4°にも回折ピークを有していることが確認できた。
【0088】
フタロシアニンの合成例4で得られたβ型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図を図4に示す。図4によると、合成例4のβ型オキシチタニウムフタロシアニンは、ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、26.2°に特徴的な回折ピ−クを示し、10.5°、13.1°、20.7°、及び23.2°にも回折ピークを有していることが確認できた。
【0089】
(実施例1)
<電子写真感光体の作製>
<<下引き層の形成>>
支持体としての直径30mmのアルミニウムからなる円筒ドラム上に、以下のようにして調製した下引き層塗布液を塗布し、乾燥後の厚みが1.5μmの下引き層を形成した。
−下引き層塗布液の調製−
アルキド樹脂(ベッコライトM−6401−50、DIC株式会社製)と、アミノ樹脂(スーパーベッカミンG−821−60、DIC株式会社製)とを65:35(質量比)の割合で混合した混合樹脂を調製した。この混合樹脂と、酸化チタン(CR−EL、石原産業株式会社製)とを1:3(質量比)となるように混合し、全固形分とメチルエチルケトンの質量比が1:1の混合液を分散処理して、下引き層塗布液を調製した。
【0090】
<<電荷発生層の形成>>
次に、以下のようにして調製した電荷発生層塗布液を用い、下引き層を形成した支持体を浸漬塗工し、乾燥させて、下引き層上に厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
−電荷発生層塗布液の調製−
電荷発生剤として合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン粉末10gに、メチルエチルケトン500mLにポリビニルブチラール樹脂(BM−1、積水化学工業株式会社製)10gを溶解した液を加え、ガラスビーズを添加してサンドミル分散機で20時間分散し、得られた分散液をろ過してガラスビーズを取り去り、電荷発生層塗布液を調製した。
【0091】
<<電荷輸送層の形成>>
次に、以下のようにして調製した電荷輸送層塗布液を用い、電荷発生層及び下引き層を形成した支持体を浸漬塗工し、120℃で60分間乾燥し、電荷発生層上に厚み25.0μmの電荷輸送層を形成した。以上により、実施例1の電子写真感光体を作製した。
−電荷輸送層塗布液の調製−
バインダー樹脂として下記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2(共重合モル比率(m:n)=40:60)と、電荷輸送剤として下記構造式で表される例示化合物No.1−1と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールと、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P、Geigy社製)とを、質量比(ポリカーボネート共重合体No.2−2:例示化合物No.1−1:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール:Tinuvin−P)が100:60:1.5:1.5となるように混合し、これらの固形分20質量部に対し、テトラヒドロフランを80質量部を加え、撹拌溶解し、電荷輸送層塗布液を調製した。
【化13】

【化14】

【0092】
(実施例2)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2を、下記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−1(共重合モル比率(m:n)=35:65)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化15】

【0093】
(実施例3)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2を、下記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−3(共重合モル比率(m:n)=50:50)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化16】

【0094】
(実施例4)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、電荷輸送剤として例示化合物No.1−1を、下記構造式で表される例示化合物No.1−2に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化17】

【0095】
(実施例5)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、電荷輸送剤として例示化合物No.1−1を、下記構造式で表される例示化合物No.1−3に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化18】

【0096】
(実施例6)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、電荷輸送剤として例示化合物No.1−1を、下記構造式で表される例示化合物No.1−4に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化19】

【0097】
(実施例7)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、電荷輸送剤として例示化合物No.1−1を、下記構造式で表される例示化合物No.1−5に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化20】

【0098】
(実施例8)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2と、電荷輸送剤として上記構造式で表される例示化合物No.1−1と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールと、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P、Geigy社製)とを、質量比(ポリカーボネート共重合体No.2−2:例示化合物No.1−1:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール:Tinuvin−P)が100:40:1.5:1.5となるように混合した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0099】
(実施例9)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2と、電荷輸送剤として上記構造式で表される例示化合物No.1−1と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールと、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P、Geigy社製)とを、質量比(ポリカーボネート共重合体No.2−2:例示化合物No.1−1:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール:Tinuvin−P)が100:80:1.5:1.5となるように混合した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0100】
(実施例10)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層塗布液の調製における、合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン粉末を、合成例2で得られたオキシチタニウムフタロシアニン粉末に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0101】
(実施例11)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層塗布液の調製における、合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン粉末を、合成例3で得られたα型オキシチタニウムフタロシアニン粉末に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0102】
(実施例12)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷発生層塗布液の調製における、合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン粉末を、合成例4で得られたβ型オキシチタニウムフタロシアニン粉末に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0103】
(比較例1)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、電荷輸送剤としての上記構造式で表される例示化合物No.1−1を、下記構造式(A)で表される電荷輸送剤に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化21】

【0104】
(比較例2)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、電荷輸送剤としての上記構造式で表される例示化合物No.1−1を、下記構造式(B)で表される電荷輸送剤に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化22】

【0105】
(比較例3)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、電荷輸送剤としての上記構造式で表される例示化合物No.1−1を、下記構造式(C)で表される電荷輸送剤に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化23】

【0106】
(比較例4)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2をZ型ポリカーボネート(パンライトTS2050、帝人化成株式会社製)に代え、このZ型ポリカーボネート(パンライトTS2050)と、電荷輸送剤として上記構造式で表される例示化合物No.1−1と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールと、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P、Geigy社製)とを、質量比(パンライトTS2050:例示化合物No.1−1:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール:Tinuvin−P)を100:40:1.5:1.5となるように混合した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0107】
(比較例5)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂としてバインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2をZ型ポリカーボネート(パンライトTS2050、帝人化成株式会社製)に代え、このZ型ポリカーボネート(パンライトTS2050)と、電荷輸送剤として上記構造式で表される例示化合物No.1−1と、酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールと、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P、Geigy社製)とを、質量比(パンライトTS2050:例示化合物No.1−1:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール:Tinuvin−P)を100:80:1.5:1.5となるように混合した以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【0108】
(比較例6)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2を、下記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.A(共重合モル比率(m:n)=30:70)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化24】

【0109】
(比較例7)
−電子写真感光体の作製−
実施例1において、電荷輸送層塗布液の調製における、バインダー樹脂として上記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.2−2を、下記化学式で表されるポリカーボネート共重合体No.B(共重合モル比率(m:n)=55:45)に代えた以外は、実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。
【化25】

【0110】
次に、実施例及び比較例で作製した各電子写真感光体について、以下のようにして、諸特性を測定及び評価した。結果を表1に示す。
【0111】
<弾性仕事率及びユニバーサル硬度>
実施例及び比較例で作製した各電子写真感光体について、弾性仕事率測定装置(フィッシャースコープ社製、フィッシャーインストルメンツH−100)を用いて、下記の条件で電荷輸送層表面から1μmの押し込み深さにおける電荷輸送層の弾性仕事率及びユニバーサル硬度の測定を行った。電荷輸送層のユニバーサル硬度は圧子の最大荷重での変位を硬度の値として表し、電荷輸送層の弾性仕事率は負荷−除荷試験のグラフより計算して求めた。
〔測定条件〕
・測定環境:温度22℃、湿度55%RH
・測定装置:フィッシャースコープ社製H−100
・ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子
・測定モード:dF/dt=const
・設定荷重:9.8mN
・負荷/除荷時間:各30sec
・クリープ時間:5sec
【0112】
<初期電気特性、疲労後の電位変化の評価)>
電子写真感光体の評価装置(山梨電子工業株式会社製)を用いて、実施例及び比較例で作製した各電子写真感光体を温度23℃、湿度50%RHの環境下(N/N)で、スコロトロン方式で感光体への放電電流25μAを流した時の感光体の表面電位(V0)を、初期と10,000サイクル疲労後に測定した。その後、表面電位が−700Vになるように放電電流を調節し、波長780nmの半導体レーザで照射した表面電位が1/2(−350V)に減衰した時の露光エネルギー量〔半減露光エネルギー量(E1/2);感度〕を計測した。また、1.0μJ/cmの露光エネルギーを照射した時の感光体表面電位を残留電位(VL)とし、初期と10,000サイクル疲労後に測定した。なお、これらの測定結果は、現像−露光間100msでの測定結果である。
〔評価指標〕
・V0は、初期及び1,000サイクル疲労試験後ともに700V±50Vが良好である。この範囲外になると、画像濃度変化が見られる。
・VL上限は100V程度、半減露光エネルギー量(E1/2)は0.13μJ/cm以上で画像濃度低下が生じる。
・V0降下は、Δ50V以上で画像ノイズが発生する。
【0113】
<耐刷性>
作製した実施例及び比較例の電子写真感光体を搭載したカラーレーザープリンター(株式会社リコー製、IPSiO C−220;除電手段を備えていないイレーズレス型の画像形成装置)を用いて、連続1,000枚のベタ黒を印字試験前後の感光層の厚み変化をフィッシャースコープMMS(株式会社フィッシャーインストルメンツ製)で、感光体の長手方向に16点×周方向に2点の合計32点計測し、平均値を求め、印字試験前後の厚み変化(Δμm)により、耐刷性を評価した。なお、厚み変化(Δμm)が0.42μm以下を合格とした。
【0114】
<クリーニング性>
作製した実施例及び比較例の電子写真感光体を搭載したカラーレーザープリンター(株式会社リコー製、IPSiO C−220;除電手段を備えていないイレーズレス型の画像形成装置)を用いて、5%濃度のテストパターンで10,000枚印字を行い、1,000枚毎にベタ黒を印字し、黒画像の中に現れる白抜けの状態から、下記基準によりクリーニング性を評価した。なお、評価時の環境は23℃、50%RHで行った。ここで、「白抜け」とは、クリーニング不良でトナーが感光体表面に固着し、その部分にトナーが載らなくなる状態を意味する。
〔評価基準〕
○:ベタ黒の画像に白抜けがない
△:ベタ黒の画像に白抜けが発生しないが、電子写真感光体上にトナー固着が見られる
×:ベタ黒の画像に白抜けが発生する
【0115】
<溶解性>
実施例及び比較例で調製した電荷輸送層塗布液について、目視観察により、透明な溶液であるか、曇りのある溶液であるかで、下記基準により、溶解性を判断した。
〔評価基準〕
○:電荷輸送層塗布液におけるバインダー樹脂及び電荷輸送剤が均一に溶けた透明の状態
×:電荷輸送層塗布液におけるバインダー樹脂及び電荷輸送剤が均一に溶けず不透明の状態、又は固形の樹脂が残る状態
【0116】
【表1−1】

【表1−2】

【0117】
表1の結果から、実施例1〜10の電子写真感光体は、初期電気特性、疲労後の電位変化、耐刷性、クリーニング性、及び溶解性の点で優れていることが分かった。
また、実施例11〜12は、耐刷性、クリーニング性、及び溶解性は良好であるが、特定結晶型の電荷発生剤を用いていないので、やや十分な感光体特性が得られていないことが分かった。
比較例1〜3の電子写真感光体は、電荷輸送層に上記一般式(1)で表される電荷輸送剤を用いていないために、十分な電気特性が得られていないことが分かった。
比較例4〜5の感光体は、電荷輸送層に上記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体以外のバインダー樹脂を用いているために、ユニバーサル硬度及び弾性仕事率のいずれかが本発明の範囲外であるため、十分な耐刷性、及びクリーニング性が得られない。
また、比較例6〜7は、電荷輸送層のバインダー樹脂である上記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体の共重合モル比率が、本発明の範囲外であるために、クリーニング性、感度は良好であるが十分な溶解性又は耐刷性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の電子写真感光体は、画像形成装置の小型化、高速化に伴う、感光体の小径化、周速の早いプロセスに対応でき、しかも耐久性に優れているので、例えば、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機、直接又は間接の電子写真多色画像現像方式を用いたフルカラー複写機、フルカラーレーザープリンタ、フルカラー普通紙ファックスなどに幅広く用いられる。
【符号の説明】
【0119】
11 電子写真感光体
12 帯電手段
13 電源
14 露光手段
15 現像手段
16 一次転写手段(転写ベルト)
17 一次転写ローラ
18 定電圧電源
19 クリーニング手段
20 二次転写手段(二次転写ローラ)
21 除電手段
22 定着手段(定着ローラ)
23 記録媒体(紙)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に、電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有する電子写真感光体であって、
前記電荷輸送層が、バインダー樹脂、及び下記一般式(1)で表される化合物を含有し、
前記バインダー樹脂が、下記一般式(2)で表されるポリカーボネート共重合体であり、
温度22℃、相対湿度55%RHの環境下、ビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて設定加重9.8mN、前記電荷輸送層表面から1μmの押し込み深さにおける前記電荷輸送層の弾性仕事率が45%〜55%であり、かつユニバーサル硬度が160N/m〜180N/mであることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、R〜Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、及び置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシル基のいずれかを表す。
【化2】

ただし、前記一般式(2)中、共重合モル比率(m:n)は35:65〜50:50である。
【請求項2】
電荷発生層が電荷発生剤を含有し、該電荷発生剤がオキシチタニウムフタロシアニンであり、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKα線に対するX線回折ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2)として、少なくとも27.2°に最大回折角を有し、更に9.7°、14.2°、18.0°、及び24.2°に主要ピークを有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
電荷発生層が電荷発生剤を含有し、該電荷発生剤がオキシチタニウムフタロシアニンであり、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKα線に対するX線回折ブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、及び24.0゜に主要なピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲にピークを有さず、更に26.3゜にピークを有さない請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された電子写真感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段とを有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体が、請求項1から3のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
電子写真感光体表面を除電する除電手段を有していないイレーズレス型画像形成装置である請求項4に記載の画像形成装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29588(P2013−29588A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164331(P2011−164331)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000180128)山梨電子工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】