説明

電子写真感光体及び電子写真感光体の製造方法

【課題】製造が容易であるとともに、感度特性に優れる電子写真感光体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電荷発生剤と、正孔輸送剤と、を含む感光層を設けた電子写真感光体及びその製造方法であって、正孔輸送剤を、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成されたトリアリールアミン構造を有する化合物とする。


(一般式(1)中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立した炭素数5〜10の置換または非置換のアルキル基等であり、かつ、Ar1〜Ar3のうち、少なくとも1つは、置換または非置換のビフェニル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体及び電子写真感光体の製造方法に関する。特に、製造が容易であるとともに、感度特性に優れる電子写真感光体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置等に用いられる電子写真感光体として、正孔輸送剤、電荷発生剤及び結着樹脂等の有機材料からなる有機感光体が使用されている。かかる有機感光体は、従来の無機感光体に比べて、製造が容易であるとともに、感光体材料の選択肢が多様であることから、構造設計の自由度が高いという利点がある。
このような有機感光体に用いられる正孔輸送剤のうち、トリアリールアミン構造を有する化合物は、分子設計が容易で、かつ正孔移動度が高いことから、特に好適に用いられている。
そして、かかるトリアリールアミン構造を有する化合物の合成方法としては、ヨウ化ベンゼン類とアミン化合物とを、銅触媒を用いて合成する方法(Ullmann反応)が知られている。
しかしながら、かかる合成方法を採用した場合、多量の銅触媒を使用して、高温で長時間反応させることが必要となるため、トリアリールアミン構造を有する化合物の収率が低くなるばかりか、着色性の不純物や分解物が副生しやすく、その精製が困難であるという問題が見られた。さらには、かかる着色性の不純物や分解物が、電子写真感光体における電気特性を低下させる原因となるという問題も見られた。
【0003】
そこで、より収率が高く、安定的な合成方法として、ハロゲン化ベンゼン類とアミン化合物とを、トリアルキルホスフィン化合物とパラジウム化合物を含む触媒を用いて、塩基の存在下に反応させ、アリールアミン化合物を合成する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特許3161360号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された合成方法を採用した場合、銅触媒を用いて合成する方法と比較すれば、ある程度、収率及び安定性を向上させることができるものの、特に収率の点においては、未だ不十分であるという問題が見られた。
そればかりか、特許文献1において用いられるトリアルキルホスフィン化合物は、空気中における安定性が低く、自然発火を起こす危険性があることから、その管理及び取り扱いが非常に困難であって、トリアリールアミン構造を有する化合物の合成効率を低下させる要因となっていた。
したがって、正孔移動度に優れたトリアリールアミン構造を有する化合物を正孔輸送剤として含み、感度特性に優れた電子写真感光体を、容易に製造する技術が求められていた。
【0005】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、特定の構造を有するホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いてトリアリールアミン構造を有する化合物を合成するとともに、かかる化合物を正孔輸送剤として用いることにより、上述した問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、製造が容易であるとともに、感度特性に優れる電子写真感光体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、を含む感光層を設けた電子写真感光体であって、正孔輸送剤が、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成されたトリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする電子写真感光体が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(1)中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立した炭素数5〜10の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、あるいは炭素数5〜30の置換または非置換の環式炭化水素基であり、かつ、Ar1〜Ar3のうち、少なくとも1つは、置換または非置換のビフェニル基である。)
【0009】
すなわち、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒であれば、例えば、60〜90%の優れた収率で、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を合成することができる。
また、かかる特定の構造を有するホスフィン化合物であれば、空気中における安定性に優れ、自然発火を起こす危険性がなく、管理及び取り扱いが容易となることから、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を効率的に合成することができる。
したがって、正孔移動度に優れたトリアリールアミン構造を有する化合物を正孔輸送剤として含み、感度特性に優れた電子写真感光体を容易に得ることができる。
【0010】
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、トリアリールアミン構造を有する化合物が、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(2)中、A〜D及びR1〜R6は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、複数のR2のうちいずれか二つまたは複数のR5のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数a、c〜d及びfは0〜4の整数であり、b及びeは0〜5の整数である。)
【0013】
なお、一般式(1)において、置換基数aが2以上の整数である場合、複数のR1は異なってもよい。また、かかる記載内容は、R1以外の置換基においても同様であり、以下の一般式(2)〜(6)においても同様である。
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(3)中、R7〜R12は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、R7及びR8、複数のR9のうちいずれか二つまたは複数のR11のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数g及びiは0〜4の整数であり、h及びjは0〜5の整数であり、a´〜b´は0〜4の整数である。)
【0016】
【化4】

【0017】
(一般式(4)中、R13〜R24は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、R13及びR14、R20及びR21、複数のR16のうちいずれか二つ、または複数のR23のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数k、n〜o及びpは0〜4の整数であり、l〜m及びq〜rは0〜5の整数である。)
【0018】
【化5】

【0019】
(一般式(5)中、R25〜R32は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、R25及びR26、複数のR29のうちいずれか二つ、または複数のR31のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数s及びuは0〜4の整数であり、t及びv〜wは0〜5の整数であり、c´は0〜4の整数である。)
【0020】
このように構成することにより、より感度特性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
【0021】
また、本発明の別の態様は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、を有する感光層を設けた電子写真感光体の製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
(a)トリアリールアミン構造を有する化合物を、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成する工程。
(b)結着樹脂、有機溶剤及び電荷発生剤とともに、トリアリールアミン構造を有する化合物を正孔輸送剤として含む感光層用塗布液を作成する工程。
(c)感光層用塗布液を基体上に塗布及び乾燥して、感光層を形成する工程。
【0022】
すなわち、工程(a)において、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いていることから、優れた収率で、かつ効率的に正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を合成することができる。
したがって、続く工程(b)及び(c)を経て、感度特性に優れた電子写真感光体を容易に製造することができる。
【0023】
また、本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するにあたり、一般式(1)で表されるホスフィン化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
【化6】

【0025】
(一般式(6)中、R33及びR34は、それぞれ独立した炭素数1〜5の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換または非置換のアルコキシ基、あるいは置換または非置換のアミノ基であり、置換基数xは0〜3の整数であり、yは0〜4の整数である。)
【0026】
このように構成することにより、トリアリールアミン構造を有する化合物の収率を、より向上させることができるばかりか、ホスフィン化合物の空気中における安定性についてもさらに向上させることができる。
【0027】
また、本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するにあたり、ホスフィン化合物の融点を90〜250℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、ホスフィン化合物の空気中における安定性をさらに向上させることができる。
【0028】
また、本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するにあたり、ホスフィン化合物の添加量を、アミン化合物1モルに対して0.0005〜20モルの範囲内の値とするとともに、パラジウム化合物の添加量を、アミン化合物1モルに対して0.00025〜10モルの範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、工程(a)におけるトリアリールアミン構造を有する化合物の収率を、より向上させることができる。
【0029】
また、本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するにあたり、ホスフィン化合物を非溶液状態で添加することが好ましい。
このように実施した場合であっても、ホスフィン化合物が自然発火を起こすことなく、より容易に工程(a)を実施することができる。
【0030】
また、本発明の電子写真感光体の製造方法を実施するにあたり、トリアリールアミン構造を有する化合物を、塩基の存在下に合成することが好ましい。
このように実施することにより、上述した特定の構造を有するホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒の触媒活性が向上し、工程(a)におけるトリアリールアミン構造を有する化合物の収率を、さらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、を含む感光層を設けた電子写真感光体であって、正孔輸送剤が、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成されたトリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする電子写真感光体である。
以下、第1の実施形態の電子写真感光体について、主に単層型電子写真感光体を例にとって、各構成要件に分けて説明する。
【0032】
1.基本的構成
図1(a)に示すように、単層型電子写真感光体10は、基体12上に単一の感光層14を設けたものである。
また、かかる感光層は、結着樹脂と、特定の正孔輸送剤と、電荷発生剤と、を含むとともに、さらに必要に応じて電子輸送剤、レベリング剤またはシリル基含有化合物等の添加剤を含むことができる。
また、図1(b)に示すように、基体12と感光層14との間に、感光体の特性を阻害しない範囲で中間層16が形成されている単層型電子写真感光体10´でもよい。
なお、電荷輸送剤として、さらに電子輸送剤を含有させることによって、電荷発生剤と正孔輸送剤との間における電荷輸送効率を、さらに向上させることができる。
【0033】
また、基体としては、種々の材料を使用することができ、例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上述した金属が蒸着又はラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス、あるいはカーボンブッラク等の導電性微粒子を分散してなるプラスッチク材料等があげられる。
また、基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。
【0034】
2.感光層
(1)正孔輸送剤
(1)−1 合成方法
本発明の電子写真感光体において使用される正孔輸送剤としては、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成されたトリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする。
この理由は、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒であれば、例えば、60〜90%の優れた収率で、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を合成することができるためである。
また、かかる特定の構造を有するホスフィン化合物であれば、空気中における安定性に優れ、自然発火を起こす危険性がなく、管理及び取り扱いが容易であることから、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を効率的に合成することができるためである。
したがって、正孔移動度に優れた電子写真感光体を容易に得ることができる。
なお、かかる合成方法については、第2の実施形態において詳細に説明する。
【0035】
(1)−2 種類
また、本発明において用いられる正孔輸送剤としては、上述したように、トリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする。
この理由は、かかる特定の構造を有する化合物であれば、分子設計が容易であるとともに、優れた正孔移動度を有するためである。したがって、正孔輸送剤として用いることによって、電子写真感光体の感度特性を向上させることができるためである。
【0036】
また、トリアリールアミン構造を有する化合物の中でも、特に、一般式(2)〜(5)で表される化合物を用いることが好ましい。
この理由は、一般式(2)〜(5)で表される化合物であれば、より感度特性に優れた電子写真感光体を得ることができるためである。
すなわち、一般式(2)〜(5)で表される化合物であれば、電荷発生剤から発生した電荷を受容する能力、受容した電荷を迅速に輸送する能力、及び低電界においても十分に電荷輸送を行って、電荷を感光層中に残留電荷が発生することを抑制する能力等に優れるためである。
さらに、これらの化合物であれば、第2の実施形態において詳述する合成方法によって、特に効率的に合成することが可能であるためである。
【0037】
(1)−3 具体例
また、一般式(2)〜(5)で表される化合物の具体例としては、式(7)〜(13)で表される化合物(HTM−1〜7)を挙げることができる。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
(1)−4 添加量
また、特定の正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂の添加量を考慮して定めることが好ましい。より具体的には、特定の正孔輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる特定の正孔輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、かかる特定の正孔輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、かかる正孔輸送剤が結晶化しやすくなり、感光層として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、かかる特定の正孔輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜60重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(2)電子輸送剤
(2)−1 種類
本発明に用いられる電子輸送剤としては、従来公知の他の電子輸送剤を用いることができる。
例えば、ジフェノキノン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾキノン誘導体のほか、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0047】
(2)−2 具体例
これらの電子輸送剤の具体例として、下記式(14)〜(17)で表わされる化合物(ETM−A〜D)が挙げられる。
【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
(2)−3 添加量
また、電子輸送剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電子輸送剤の添加量が10重量部未満の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。一方、電子輸送剤の添加量が100重量部を超えた値になると、電子輸送剤が結晶化しやすくなり、感光層として適正な膜が形成されない場合があるためである。
したがって、電子輸送剤の添加量を20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0053】
なお、電子輸送剤の添加量を定めるにあたり、正孔輸送剤の添加量を考慮することが好ましい。より具体的には、電子輸送剤(全ETM)の添加割合(全ETM/全HTM)を、正孔輸送剤(全HTM)に対して、0.25〜1.3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる全ETM/全HTMの比率がかかる範囲外の値になると、感度が低下して、実用上の弊害が生じる場合があるためである。
したがって、かかる全ETM/全HTMの比率を0.5〜1.25の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0054】
(3)電荷発生剤
(3)−1 種類
また、本発明において使用される電荷発生剤としては、従来公知の電荷発生剤を用いることができる。
例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体や、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンといった無機光導電剤等の一種単独又は二種以上の混合物が挙げられる。
【0055】
(3)−2 具体例
また、これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(18)〜(21)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜D)を使用することがより好ましい。
【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
【化20】

【0059】
【化21】

【0060】
(3)−3 添加量
また、電荷発生剤の添加量を、結着樹脂100重量部に対して、0.2〜40重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の添加量が0.2重量部未満の値になると、量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度、電気特性、安定性等を向上させることができなくなるためである。一方、電荷発生剤の添加量が40重量部を超えた値になると、可視光における赤色領域、近赤外領域、あるいは赤外領域に波長を有する光に対する吸光係数を大きくする効果が不十分となり、電子写真感光体の感度特性、電気特性、及び安定性等を向上させることができない場合があるためである。
したがって、電荷発生剤の添加量を0.5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0061】
(4)添加剤
また、感光層には、上述した各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0062】
(5)結着樹脂
また、結着樹脂としては、例えば、スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、及びポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びその他の架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレート、及びウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用できるほか、2種以上を併用することもできる。
【0063】
(6)厚さ
また、単層型電子写真感光体における感光層の厚さは、5〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、感光層の厚さが5μm未満の値となると、感光層を均一に形成することが困難となったり、機械的強度が低下する場合があるためである。一方、感光層の厚さが100μmを超えた値となると、感光層が基体から剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって感光層の厚さを10〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜45μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0064】
(7)積層型電子写真感光体
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が、図2に示すように、電荷発生剤を含む電荷発生層24と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含む電荷輸送層22と、からなる積層型の感光層20であることも好ましい。
この積層型電子写真感光体20は、基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、それを乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製することができる。
また、上述した構造とは逆に、図2(b)に示すように、基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成してもよい。ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図2(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
また、単層型電子写真感光体の場合と同様に、基体上に中間層25を形成することも好ましい。
【0065】
また、電荷発生層形成用塗布液及び電荷輸送層形成用塗布液は、例えば、電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂などの所定の成分を、分散媒とともに、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機などを用いて分散混合することによって、調製することができる。
このとき、電荷輸送剤の添加量は、電荷輸送層における結着樹脂100重量部に対して10〜100重量部の範囲内の値とすることが好ましく、20〜80重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、電荷発生剤の添加量は、電荷発生層における結着樹脂100重量部に対して、5〜1000重量部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0066】
また、この積層型電子写真感光層20において、感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)の厚さは、特に限定されないが、電荷発生層については、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.1〜3μmの厚さであり、電荷輸送層については、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜50μmの厚さである。
【0067】
3.画像形成装置
また、本発明の電子写真感光体を搭載した画像形成装置としては、例えば、図3に示すような複写機30として構成することができる。かかる複写機30は、画像形成ユニット31、排紙ユニット32、画像読取ユニット33、及び原稿給送ユニット34を備えている。また、画像形成ユニット31には、画像形成部31a及び給紙部31bがさらに備えられている。そして、図示された例では、原稿給送ユニット34は、原稿載置トレイ34a、原稿給送機構34b、及び原稿排出トレイ34cを有しており、原稿載置トレイ34a上に載置された原稿は、原稿給送機構34bによって画像読取位置Pに送られた後、原稿排出トレイ34cに排出される。
そして、原稿が原稿読取位置Pに送られた段階で、画像読取ユニット33において、光源33aからの光を利用して、原稿上の画像が読み取られる。すなわち、CCD等の光学素子33bを用いて、原稿上の画像に対応した画像信号が形成される。
一方、給紙部31bに積載された記録用紙(以下、単に用紙と呼ぶ。)Sは、一枚ずつ画像形成部31aに送られる。この画像形成部31aには、像担持体である感光体ドラム41が備えられており、さらに、この感光体ドラム41の周囲には、帯電器42、露光器43、現像器44、及び転写ローラ45が、感光体ドラム41の回転方向に沿って配置されている。
【0068】
これらの構成部品のうち、感光体ドラム41は、図中、実線矢印で示す方向に回転駆動されて、帯電器42により、その表面が均一に帯電される。その後、前述の画像信号に基づいて、露光器43により感光体ドラム41に対して露光プロセスが実施され、この感光体ドラム41の表面において静電潜像が形成される。
この静電潜像に基づき、現像器44によりトナーを付着させて現像し、感光体ドラム41の表面にトナー像を形成する。そして、このトナー像は、感光体ドラム41と転写ローラ45とのニップ部に搬送される用紙Sに転写像として転写される。次いで、転写像が転写された用紙Sは、定着ユニット47に搬送されて、定着プロセスが行われる。
【0069】
また、定着後の用紙Sは、排紙ユニット32に送られることになるが、後処理(例えば、ステイプル処理等)を行う際には、用紙Sは中間トレイ32aに送られた後、後処理が行われる。その後、用紙Sは、画像形成装置の側面に設けられた排出トレイ部(図示せず)に排出される。一方、後処理を行わない場合には、用紙Sは中間トレイ32aの下側に設けられた排紙トレイ32bに排紙される。なお、中間トレイ32a及び排紙トレイ32bは、いわゆる胴内排紙部として構成されている。
【0070】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、を有する感光層を設けた電子写真感光体の製造方法であって、下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
(a)トリアリールアミン構造を有する化合物を、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成する工程。
(b)結着樹脂、有機溶剤及び電荷発生剤とともに、トリアリールアミン構造を有する化合物を正孔輸送剤として含む感光層用塗布液を作成する工程。
(c)感光層用塗布液を基体上に塗布及び乾燥して、感光層を形成する工程。
以下、第1の実施形態において記載した内容と異なる点を中心に、第2の実施形態としての電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0071】
1.工程(a)
本発明の工程(a)においては、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、トリアリールアミン構造を有する化合物を合成することを特徴とする。
かかるトリアリールアミン構造を有する化合物の合成は、大まかに、下記工程(i)〜(ii)に分けることができる。
(i) アリールハライドを合成する工程。
(ii)得られたアリールハライドとアミン化合物をカップリング反応させて、トリアリールアミン構造を有する化合物を合成する工程。
以下においては、トリアリールアミン構造を有する化合物として、式(7)で表される化合物(HTM−1)を例に挙げて、具体的に説明する。
【0072】
(1)工程(i)
(1)−1 第1のアリールハライドの合成
第1のアリールハライドの合成としては、まず、下記反応式(1)に準じて、式(22)で表される4−ブロモベンジルクロリド1モルに対して、式(23)で表される亜リン酸トリエチルを1〜5モルの範囲内の値となるように添加した後、150〜200℃で2〜10時間撹拌し、式(24)で表されるホスホナートを合成することができる。
【0073】
【化22】

【0074】
次いで、乾燥テトラヒドロフランに対して、得られた式(24)で表されるホスホナートと、かかる式(24)で表されるホスホナートに対して当量となるナトリウムメトキシドとを加えて、0〜25℃で20〜50分撹拌し、反応液を得ることができる。
次いで、下記反応式(2)に準じて、得られた反応液に対し、乾燥テトラヒドロフランに溶解させた式(25)で表されるベンズアルデヒドを、式(24)で表されるホスホナート1モルに対して1〜1.2モルの範囲内の値となるように加え、0〜25℃で2〜15時間撹拌し、次いで、得られた反応液に対して、トルエン等による抽出処理をして、式(26)で表されるアリールハライド(AH−1)を得ることができる。
【0075】
【化23】

【0076】
(1)−2 第2のアリールハライドの合成
次いで、第2のアリールハライドの合成としては、まず、下記反応式(3)に準じて、式(27)で表されるシンナミルクロリド1モルに対して、式(23)で表される亜リン酸トリエチルを1〜2モルの範囲内の値となるように添加した後、150〜200℃で2〜10時間撹拌し、式(28)で表されるホスホナートを合成することができる。
【0077】
【化24】

【0078】
次いで、乾燥テトラヒドロフランに対して、得られた式(28)で表されるホスホナートと、かかる式(28)で表されるホスホナートに対して当量となるナトリウムメトキシドとを加えて、0〜10℃で20〜50分撹拌し、反応液を得ることができる。
次いで、下記反応式(4)に準じて、得られた反応液に対し、乾燥テトラヒドロフランに溶解させた式(29)で表されるアルデヒド誘導体を、式(28)で表されるホスホナート1モルに対して1〜1.2モルの範囲内の値となるように加え、室温で2〜15時間撹拌し、次いで、得られた反応液に対して、トルエン等による抽出処理をして、式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)を得ることができる。
【0079】
【化25】

【0080】
(2)工程(ii)
(2)−1 第1のカップリング反応
次いで、下記反応式(5)に準じて、式(31)で表されるアミン化合物(Amine−1)1モルに対して、式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)を1〜2モルの範囲内の値となるように添加し、ホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒の存在下にて、80〜140℃で1〜8時間撹拌し、次いで、得られた反応液に対して、トルエン等による抽出処理をして、式(32)で表されるジアリールアミン構造を有する化合物(DAA−1)を得ることができる。
【0081】
【化26】

【0082】
(2)−2 第2のカップリング反応
次いで、下記反応式(6)に準じて、式(32)で表されるジアリールアミン構造を有する化合物(DAA−1)1モルに対して、式(26)で表されるアリールハライド(AH−1)を1〜2モルの範囲内の値となるように添加し、ホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒の存在下にて、80〜140℃で1〜8時間撹拌し、次いで、得られた反応液に対して、トルエン等による抽出処理をして、式(7)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−1)を得ることができる。
なお、得られた式(7)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−1)は、カラムクロマトグラフィー等を用いてさらに精製して、正孔輸送剤として用いることが好ましい。
【0083】
【化27】

【0084】
また、反応式(5)及び(6)において使用するホスフィン化合物が、一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする。
この理由は、一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒であれば、例えば、60〜90%の優れた収率で、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を合成することができるためである。
また、かかる特定の構造を有するホスフィン化合物であれば、空気中における安定性に優れ、自然発火を起こす危険性が無く、管理及び取り扱いが容易となることから、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を効率的に合成することができるためである。
したがって、正孔移動度に優れたトリアリールアミン構造を有する化合物を正孔輸送剤として含み、感度特性に優れた電子写真感光体を容易に得ることができる。
すなわち、一般式(1)中、Ar1〜Ar3のうち、少なくとも1つを、置換または非置換のビフェニル基とすることによって、ビフェニル基の電子リッチな構造により、アリールハライドへの酸化的付加が促進されるためである。
したがって、触媒活性が向上し、上述した反応式(5)及び(6)で示される反応が効率的に行われるため、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を効率的に合成することができる。
また、一般式(1)中、Ar1〜Ar3のうち、少なくとも1つを、置換または非置換のビフェニル基とするとともに、かかるビフェニル基以外の置換基における炭素数を所定の範囲内の値とすることにより、ホスフィン化合物の空気中における安定性を向上させて、自然発火の発生を防止することができる。
【0085】
また、一般式(1)で表されるホスフィン化合物が、一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
この理由は、トリアリールアミン構造を有する化合物の収率を、より向上させることができるばかりか、ホスフィン化合物の空気中における安定性についてもさらに向上させることができるためである。
すなわち、一般式(1)中、Ar1〜Ar3のうち、1つを置換または非置換のビフェニル基とするとともに、他の2つの置換基を、ともにシクロヘキシル基とすることにより、ホスフィン化合物の立体構造が嵩高くなる。そして、かかる嵩高いホスフィン化合物がパラジウム化合物に配位することによって、C-N結合が形成される際の還元的脱離が促進されるためである。
【0086】
また、特定の構造を有するホスフィン化合物の融点を90〜250℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、特定の構造を有するホスフィン化合物の融点をかかる範囲内の値とすることによって、特定の構造を有するホスフィン化合物の空気中における安定性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、特定の構造を有するホスフィン化合物の融点が90℃未満の値となると、空気中における自然発火が起こりやすくなって、保存安定性や、取り扱い性が過度に低下する場合があるためである。一方、特定の構造を有するホスフィン化合物の融点が250℃を超えた値となると、その立体構造が過度に制限されて、パラジウム化合物に対して配位することが困難となる場合があるためである。
したがって、特定の構造を有するホスフィン化合物の融点を95〜220℃の範囲内の値とすることがより好ましく、100〜200℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0087】
また、一般式(1)で表されるホスフィン化合物として、好適に使用されるホスフィン化合物の具体例としては、下記式(33)〜(36)で表される化合物(P−1〜4)が挙げられる。
【0088】
【化28】

【0089】
【化29】

【0090】
【化30】

【0091】
【化31】

【0092】
また、特定の構造を有するホスフィン化合物を非溶液状態で添加することが好ましい。
この理由は、特定の構造を有するホスフィン化合物を非溶液状態、すなわち、結晶状態のままで添加した場合であっても、かかる特定の構造を有するホスフィン化合物が自然発火を起こすことなく、容易に反応式(5)及び(6)を実施することができるためである。
すなわち、従来のトリアルキルホスフィン化合物等を用いた場合には、かかる化合物が自然発火を起こす危険性があったため、溶剤に対して溶解させた状態で添加する必要があった。
一方、本発明の特定の構造を有するホスフィン化合物であれば、空気中で自然発火を起こす危険性が無いため、溶剤に対して溶解する工程を省いて、結晶状態のまま、添加することができるためである。
【0093】
また、特定の構造を有するホスフィン化合物とともに触媒を構成するパラジウム化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサクロルパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物及びヘキサクロルパラジウム(IV)酸カリウム四水和物等の四価パラジウム化合物類、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセテート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロルビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラミンパラジウム(II)及びジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)などの二価のパラジウム化合物類、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム化合物類が挙げられる。
【0094】
また、特定の構造を有するホスフィン化合物の添加量を、アミン化合物1モルに対して0.0005〜20モルの範囲内の値とするとともに、パラジウム化合物の添加量を、アミン化合物1モルに対して0.00025〜10モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、反応式(5)及び(6)を経て合成されるトリアリールアミン構造を有する化合物の収率を、より向上させることができるためである。
すなわち、特定の構造を有するホスフィン化合物の添加量が、アミン化合物1モルに対して0.0005モル未満の値となると、触媒活性が過度に低下する場合があるためである。一方、特定の構造を有するホスフィン化合物の添加量が、アミン化合物1モルに対して20モルを超えた値となると、パラジウム化合物に対して配位できずに遊離するホスフィン化合物が過剰に増加して、生成物の純度を低下させる原因となる場合があるためである。
また、パラジウム化合物の添加量が、アミン化合物1モルに対して0.00025モル未満の値となると、触媒活性が過度に低下したり、パラジウム化合物に対して配位できずに遊離するホスフィン化合物が過剰に増加して、生成物の純度を低下させる原因となる場合があるためである。一方、パラジウム化合物の添加量が、アミン化合物1モルに対して10モルを超えた値となると、配位子の無いパラジウム化合物が過剰に増加して、効率が低下する場合があるためである。
したがって、特定の構造を有するホスフィン化合物の添加量を、アミン化合物1モルに対して0.001〜1モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.002〜0.02モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、パラジウム化合物の添加量を、アミン化合物1モルに対して0.0005〜0.5モルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.001〜0.01モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0095】
また、反応式(5)及び(6)の反応を、塩基の存在下に実施することが好ましい。
この理由は、塩基の存在下に実施することにより、特定の構造を有するホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒の触媒活性が向上し、反応式(5)及び(6)を経て合成されるトリアリールアミン構造を有する化合物の収率を、さらに向上させることができるためである。
すなわち、塩基の作用によって、ホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒における触媒サイクルの回転を速くすることができるためである。
【0096】
また、かかる塩基としては、無機塩基や有機塩基から選択することができ、特に限定されるものではないが、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド及びカリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコシドが好ましく、特に、ナトリウム−tert−ブトキシドが好ましい。また、リン酸三カリウム及びフッ化セシウム等の無機塩基も有効である。
なお、かかる塩基の添加量は、パラジウム化合物の量にもよるが、例えば、アミン化合物のN−H結合1モルに対して、パラジウム化合物0.005モルを加えた場合であれば、0.995〜5モルの範囲内の値とすることが好ましく、0.995〜2モルの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0097】
また、上述の記載においては、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物として、式(7)で表される化合物(HTM−1)を挙げて説明したが、その他のトリアリールアミン構造を有する化合物についても、それぞれ使用するアリールハライド及びアミン化合物を変えることで、合成することができる。
すなわち、反応式(5)及び(6)におけるアリールハライド及びアミン化合物を、それぞれ変えることで、所望のトリアリールアミン構造を有する化合物を合成することができる。
【0098】
2.工程(b)
本発明の工程(b)は、結着樹脂、有機溶剤及び電荷発生剤とともに、工程(a)で得られたトリアリールアミン構造を有する化合物を正孔輸送剤として含む感光層用塗布液を作成する工程である。
【0099】
すなわち、結着樹脂と、電荷発生剤と、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物と、を有機溶剤に添加して、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合し、塗布液とすることが好ましい。
より具体的には、固形分濃度が1〜7重量%の塗布液を作成することが好ましい。この理由は、塗布液の固形分濃度は1重量%未満の値になると、被膜欠陥を生じるおそれがあるためであり、一方、塗布液の固形分濃度は7重量%を超えると、層むらが生じやすくなり、電子写真感光体として均一な厚さを有する薄膜を形成することが困難となる場合があるためである。
また、電子写真感光体を単層型電子写真感光体として構成する場合は、有機溶剤に対して、結着樹脂、電荷発生剤、正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物とともに、電子輸送剤も添加して、感光層用塗布液とすることが好ましい。
一方、電子写真感光体を積層型電子写真感光体として構成する場合は、有機溶剤に対して、結着樹脂及び電荷発生剤を添加して得られる電荷発生層用塗布液と、有機溶剤に対して、結着樹脂及び正孔輸送剤としてのトリアリールアミン構造を有する化合物を添加して得られる電荷輸送層用塗布液と、をそれぞれ作成する必要がある。これらの電荷発生層用塗布液や電荷輸送層用塗布液に対して、適宜、電子輸送剤を添加してもよい。
なお、積層型電子写真感光体の場合には、電荷発生層と電荷輸送層とを合わせたものを感光層と称している。したがって、電荷発生層用塗布液と電荷輸送層用塗布液とを合わせたものを感光層用塗布液と称している。
【0100】
また、塗布液を作成するための有機溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能である。
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、電荷輸送剤や電荷発生剤等の分散性や、感光層表面における平滑性を良くするために、感光層用塗布液を作成する際に、界面活性剤やレベリング剤等を添加することも好ましい。
【0101】
3.工程(c)
(1)塗布工程
本発明の工程(c)は、工程(b)で得られた感光層用塗布液を基体上に塗布及び乾燥して、感光層を形成する工程である。
すなわち、基体上に、感光層用塗布液を直接的に塗布することも好ましいし、あるいは、中間層を介して間接的に塗布することも好ましい。
また、塗布方法としては、均一な厚さの感光層を形成するために、例えば、スピンコーター、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、ディップコーター、ドクターブレード等を用いることが好ましい。
【0102】
(2)乾燥工程
また、塗布工程の後、高温乾燥機や減圧乾燥機等を用いて、例えば、60℃〜150℃の乾燥温度で乾燥させることが好ましい。この理由は、かかる乾燥温度が60℃未満の値になると、乾燥時間が過度に長くなって、均一な厚さを有する感光層を効率的に形成することが困難になる場合があるためである。一方、かかる乾燥温度が150℃を超えると、感光層が熱分解する場合があるためである。
【実施例】
【0103】
1.単層型電子写真感光体の製造
(1)正孔輸送剤の合成
(1)−1 第1のアリールハライドの合成
第1のアリールハライドは、上述した反応式(1)及び(2)に準じて合成した。
すなわち、反応式(1)に準じて、200ミリリットルフラスコ内に、式(22)で表される4−ブロモベンジルクロリド20g(0.10モル)と、式(23)で表される亜リン酸トリエチル25g(0.15モル)とを加えた後、170℃で8時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、過剰な亜リン酸トリエチルを減圧留去し、白色オイル状の式(24)で表されるホスホナート27gを得た(収率90%)。
【0104】
次いで、反応式(2)に準じて、500ミリリットルの2口フラスコ内に、式(24)で表されるホスホナート25g(0.08モル)を加えた後、アルゴンガス置換を行い、乾燥テトラヒドロフラン200ミリリットルと、28%ナトリウムメトキシド15g(0.08モル)と、を加え、0℃で30分間撹拌した。次いで、式(25)で表されるベンズアルデヒド9g(0.08モル)を乾燥テトラヒドロフラン500ミリリットルに溶解させた状態で、反応液に対して加え、室温で12時間撹拌した。次いで、反応液をイオン交換水に対して注いだ後、トルエンにて有機相を抽出し、得られた有機相をイオン交換水で5回洗浄した。次いで、洗浄後の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。次いで、残渣をトルエン/メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=20ミリリットル/100ミリリットル)にて精製し、白色結晶である式(26)で表される第1のアリールハライド(AH−1)20gを得た(収率90%)。
【0105】
(1)−2 第2のアリールハライドの合成
また、第2のアリールハライドは、上述した反応式(3)及び(4)に準じて得ることができる。
すなわち、反応式(3)に準じて、200ミリリットルフラスコ内に、式(27)で表されるシンナミルクロリド15g(0.1モル)と、式(23)で表される亜リン酸トリエチル25g(0.15モル)とを加えた後、170℃で8時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、過剰な亜リン酸トリエチルを減圧留去し、無色オイル状の式(28)で表されるホスホナート24gを得た(収率90%)。
【0106】
次いで、反応式(4)に準じて、500ミリリットルの2口フラスコ内に、式(28)で表されるホスホナート19g(0.07モル)を加えた後、アルゴンガス置換を行い、乾燥テトラヒドロフラン200ミリリットルと、28%ナトリウムメトキシド14g(0.07モル)と、を加え、0℃で30分間撹拌した。次いで、式(29)で表される4−ブロモベンズアルデヒド13g(0.08モル)を乾燥テトラヒドロフラン50ミリリットルに溶解させた状態で、反応液に対して加え、室温で3時間撹拌した。次いで、反応液をイオン交換水に対して注いだ後、トルエンにて有機相を抽出し、得られた有機相をイオン交換水で5回洗浄した。次いで、洗浄後の有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去した。次いで、残渣をトルエン/メタノール混合溶媒(トルエン/メタノール=20ミリリットル/100ミリリットル)にて精製し、白色固体状態の式(30)で表される第2のアリールハライド(AH−2)18gを得た(収率85%)。
【0107】
(1)−3 第1のカップリング反応
次いで、反応式(5)に準じて、2リットルの2口フラスコ内に、式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)28g(0.10モル)と、式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)0.18g(0.0005モル)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)0.23g(0.00025モル)と、ナトリウム−tert−ブトキシド11g(0.11モル)と、式(31)で表されるアミン化合物(Amine−1)15g(0.10モル)と、精製o−キシレン500ミリリットルと、を収容した後、アルゴンガス置換を行い、130℃で4時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、反応液より得られた有機相をイオン交換水で3回洗浄した。次いで、洗浄後の有機相に対し無水硫酸ナトリウム及び活性白土を加え、乾燥及び吸着処理を行った後、o−キシレンを減圧留去した。次いで、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/へキサン)にて精製し、固体状の式(32)で表されるジアリールアミン構造を有する化合物(DAA−1)31gを得た(収率88%)。
【0108】
(1)−4 第2のカップリング反応
次いで、反応式(6)に準じて、300ミリリットルの二口フラスコ内に、式(26)で表されるアリールハライド(AH−1)15g(0.06モル)と、式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン化合物(P−1)0.10g(0.0003モル)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)0.14g(0.00015モル)と、ナトリウム−tert−ブトキシド6.7g(0.07モル)と、式(32)で表されるジアリールアミン構造を有する化合物(DAA−1)20g(0.06モル)と、精製o−キシレン250ミリリットルと、を収容した後、アルゴンガス置換を行い、130℃で5時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、反応液より得られた有機相をイオン交換水で3回洗浄した。次いで、洗浄後の有機相に対し無水硫酸ナトリウム及び活性白土を加え、乾燥及び吸着処理を行った後、o−キシレンを減圧留去した。次いで、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/へキサン)にて精製し、黄色結晶状の式(7)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−1)26gを得た(収率85%)。
【0109】
(2)感光層用塗布液の作成
電荷発生剤として、式(18)で表されるX型無金属フタロシアニン5重量部と、正孔輸送剤として、上述した工程で得られた式(7)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−1)80重量部と、電子輸送剤として、式(14)で表される化合物(ETM−A)50重量部と、結着樹脂としてポリカーボネート樹脂100重量部とを、溶剤としてのテトラヒドロフラン800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散させて、感光層用塗布液を作成した。
【0110】
(3)感光層用塗布液の塗布及び乾燥
次いで、得られた感光層用塗布液を、基体としてのアルミニウム素管に対して、ディップコート法によって塗布した。次いで、100℃で30分間熱風乾燥して、膜厚25μmの感光層を形成し、単層型電子写真感光体を得た。
【0111】
2.評価
得られた単層型電子写真感光体における残留電位を測定した。
すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC(株)製)に対し、得られた単層型電子写真感光体を設置して、表面電位(V0)が約+700Vとなるように帯電させた。次いで、ハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅20nm、光強度1.5μJ/m2)を、上述したように帯電させた単層型電子写真感光体の表面に対して1.5秒間照射し、照射開始から0.5秒経過した時点での電位を、残留電位Vr(V)として測定した。得られた結果を表1に示す。
【0112】
[実施例2]
また、実施例2においては、正孔輸送剤として、式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)を合成して使用したほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
【0113】
なお、式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)の合成においては、反応式(5)において使用した式(31)で表されるアミン化合物(Amine−1)のかわりに、下記式(37)で表されるアミン化合物(Amine−2)を用いるとともに、反応式(6)において使用した式(26)で表されるアリールハライド(AH−1)のかわりに、式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)を用いたほかは、実施例1と同様にして合成した。
【0114】
【化32】

【0115】
[実施例3]
また、実施例3においては、正孔輸送剤としての式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)を合成する際に、使用したパラジウム化合物をかえたほかは、実施例2と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例2において使用したトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)のかわりに、酢酸パラジウム(II)((CH3CO22Pd)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては、0.11g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.07g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0116】
[実施例4]
また、実施例4においては、正孔輸送剤としての式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例2と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例2において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(34)で表される(2´,4´,6´−トリイソプロピルビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−2)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.24g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.14g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0117】
[実施例5]
また、実施例5においては、正孔輸送剤としての式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例2と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例2において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(35)で表される(2´,6´−ジメトキシビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−3)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.21g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.12g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0118】
[実施例6]
また、実施例6においては、正孔輸送剤としての式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例2と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例2において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(36)で表される(2´―N,N−ジメチルアミノビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−4)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.02g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.12g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0119】
[実施例7]
また、実施例7においては、正孔輸送剤として、式(9)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−3)を合成して使用したほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
【0120】
なお、式(9)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−3)の合成においては、反応式(5)において使用した式(31)で表されるアミン化合物(Amine−1)のかわりに、下記式(38)で表されるアミン化合物(Amine−3)を用いるとともに、反応式(6)において使用した式(26)で表されるアリールハライド(AH−1)のかわりに、式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)を用いたほかは、実施例1と同様にして合成した。
【0121】
【化33】

【0122】
[実施例8]
また、実施例8においては、正孔輸送剤として、式(10)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−4)を合成して使用したほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
【0123】
なお、式(10)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−4)の合成においては、反応式(5)において使用した式(31)で表されるアミン化合物(Amine−1)のかわりに、下記式(39)で表されるアミン化合物(Amine−4)を用いるとともに、式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)のかわりに式(26)で表されるアリールハライド(AH−1)を用いた。
また、反応式(6)に相当する反応として、下記反応式(7)に示す反応を実施した。このとき、式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)は、式(40)で表されるジアリールアミン構造を有する化合物(DAA−2)1モルに対して、それぞれ0.005モル及び0.0025モルとなるように添加した。また、式(41)で表されるアリールハライド(AH−3)は、式(40)で表されるジアリールアミン構造を有する化合物(DAA−2)1モルに対して0.5モルとなるように添加した。
【0124】
【化34】

【0125】
【化35】

【0126】
[比較例1]
また、比較例1においては、正孔輸送剤としての式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例2と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例2において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、下記式(42)で表されるトリターシャルブチルホスフィン(P−5)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.10g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.06g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0127】
【化36】

【0128】
[比較例2]
また、比較例2においては、正孔輸送剤としての式(8)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−2)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例2と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例2において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、下記式(43)で表されるトリシクロヘキシルホスフィン(P−6)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.14g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.08g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0129】
【化37】

【0130】
[実施例9]
また、実施例9においては、正孔輸送剤として、式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成して使用したほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
【0131】
なお、式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)の合成においては、反応式(5)において使用した式(31)で表されるアミン化合物(Amine−1)のかわりに、下記式(44)で表されるアミン化合物(Amine−5)を使用した。また、反応式(5)において使用した式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)のかわりに、下記反応式(8)に示す反応により合成される式(46)で表されるアリールハライド(AH−4)を使用した。
それ以外は実施例1と同様にして正孔輸送剤として、式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成した。
【0132】
また、式(46)で表されるアリールハライド(AH−4)の合成方法を具体的に説明すると、下記反応式(8)に準じて、500ミリリットルフラスコ内に、式(29)で表される4−ブロモベンズアルデヒド15g(0.08モル)と、式(45)で表される1,1−ジフェニルヒドラジンヒドロクロライド18g(0.08モル)と、トルエン250ミリリットルとを収容した後、120℃で2時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、反応液より得られた有機相をイオン交換水で3回洗浄した。次いで、洗浄後の有機相に対し無水硫酸ナトリウム及び活性白土を加え、乾燥及び吸着処理を行った後、トルエンを減圧留去した。次いで、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/へキサン)にて精製し、白色固体状の式(46)で表されるアリールハライド(AH−4)27gを得た(収率95%)。
【0133】
【化38】

【0134】
【化39】

【0135】
[実施例10]
また、実施例10においては、正孔輸送剤としての式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成する際に、使用したパラジウム化合物をかえたほかは、実施例9と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例9において使用したトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)のかわりに、酢酸パラジウム(II)((CH3CO22Pd)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては、0.11g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.07g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0136】
[実施例11]
また、実施例11においては、正孔輸送剤としての式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例9と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例9において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(34)で表される(2´,4´,6´−トリイソプロピルビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−2)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.24g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.14g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0137】
[実施例12]
また、実施例12においては、正孔輸送剤としての式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例9と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例9において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(35)で表される(2´,6´−ジメトキシビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−3)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.21g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.12g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0138】
[実施例13]
また、実施例13においては、正孔輸送剤としての式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例9と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例9において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(36)で表される(2´−N,N−ジメチルアミノビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−4)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.20g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.12g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0139】
[実施例14]
また、実施例14においては、正孔輸送剤として、式(12)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−6)を合成して使用したほかは、実施例1と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
【0140】
なお、式(12)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−6)の合成においては、反応式(5)において使用した式(31)で表されるアミン化合物(Amine−1)のかわりに、式(39)で表されるアミン化合物(Amine−4)を用いるとともに、式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)のかわりに式(46)で表されるアリールハライド(AH−4)を用いた。
また、反応式(6)において使用した式(26)で表されるアリールハライド(AH−1)のかわりに式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)を用いた。
【0141】
[実施例15]
また、実施例15においては、正孔輸送剤として、式(13)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−7)を合成して使用したほかは、実施例8と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。得られた結果を表1に示す。
【0142】
なお、式(13)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−7)の合成においては、反応式(5)において式(30)で表されるアリールハライド(AH−2)のかわりに式(47)で表されるアリールハライド(AH−4)を用いた。
【0143】
[比較例3]
また、比較例3においては、正孔輸送剤としての式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例9と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例9において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(42)で表されるトリターシャルブチルホスフィン(P−5)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.10g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.06g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0144】
[比較例4]
また、比較例4においては、正孔輸送剤としての式(11)で表されるトリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−5)を合成する際に、使用したホスフィン化合物をかえたほかは、実施例9と同様に単層型電子写真感光体を製造するとともに評価した。
より具体的には、反応式(5)及び(6)に相当する反応を実施する際に、実施例9において使用した式(33)で表される(2−ビフェニル)ジシクロヘキシルホスフィン(P−1)のかわりに、式(43)で表されるトリシクロヘキシルホスフィン(P−6)を使用した。また、その添加量としては、反応式(5)に相当する反応においては0.14g(0.0005モル)とし、反応式(6)に相当する反応においては0.08g(0.0003モル)とした。得られた結果を表1に示す。
【0145】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明にかかる電子写真感光体及びその製造方法によれば、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、特定の構造を有するホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いてトリアリールアミン構造を有する化合物を合成するとともに、かかる化合物を正孔輸送剤として用いることにより、製造が容易であるとともに、感度特性に優れる電子写真感光体を得ることができるようになった。
したがって、本発明の電子写真感光体及びその製造方法は、複写機やプリンター等各種画像形成装置における性能を向上させるだけでなく、その生産性の向上についても著しく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】(a)〜(b)は、単層型電子写真感光体の構成を説明するために供する図である。
【図2】(a)〜(b)は、積層型電子写真感光体の構成を説明するために供する図である。
【図3】本発明の電子写真感光体を搭載した画像形成装置を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0148】
10:単層型感光体
12:基体
14:感光層
16:中間層
20:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
25:中間層
30:複写機
31:画像形成ユニット
31a:画像形成部
31b:給紙部
32:排紙ユニット
33:画像読取ユニット
33a:光源
33b:光学素子
34:原稿給送ユニット
34a:原稿載置トレイ
34b:原稿給送機構
34c:原稿排出トレイ
41:感光体ドラム
42:帯電器
43:露光源
44:現像器
45:転写ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷発生剤と、正孔輸送剤と、を含む感光層を設けた電子写真感光体であって、
前記正孔輸送剤が、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成されたトリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】


(一般式(1)中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立した炭素数5〜10の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、あるいは炭素数5〜30の置換または非置換の環式炭化水素基であり、かつ、Ar1〜Ar3のうち、少なくとも1つは、置換または非置換のビフェニル基である。)
【請求項2】
前記トリアリールアミン構造を有する化合物が、下記一般式(2)〜(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】


(一般式(2)中、A〜D及びR1〜R6は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、複数のR2のうちいずれか二つまたは、複数のR5のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数a、c〜d及びfは0〜4の整数であり、b及びeは0〜5の整数である。)
【化3】


(一般式(3)中、R7〜R12は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、R7及びR8、複数のR9のうちいずれか二つまたは複数のR11のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数g及びiは0〜4の整数であり、h及びjは0〜5の整数であり、a´〜b´は0〜4の整数である。)
【化4】


(一般式(4)中、R13〜R24は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、R13及びR14、R20及びR21、複数のR16のうちいずれか二つ、または複数のR23のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数k、n〜o及びpは0〜4の整数であり、l〜m及びq〜rは0〜5の整数である。)
【化5】


(一般式(5)中、R25〜R32は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換または非置換のアラルキル基、または炭素数3〜10の置換または非置換の縮合環式炭化水素基であり、R25及びR26、複数のR29のうちいずれか二つ、または複数のR31のうちいずれか二つは、結合または縮合して形成された炭素環構造であってもよく、置換基数s及びuは0〜4の整数であり、t及びv〜wは0〜5の整数であり、c´は0〜4の整数である。)
【請求項3】
電荷発生剤と、正孔輸送剤と、を含む感光層を設けた電子写真感光体の製造方法であって、
下記工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
(a)トリアリールアミン構造を有する化合物を、アミン化合物と、アリールハライドと、を原料として、下記一般式(1)で表されるホスフィン化合物と、パラジウム化合物と、を含む触媒を用いて合成する工程。
(b)結着樹脂、有機溶剤及び電荷発生剤とともに、前記トリアリールアミン構造を有する化合物を正孔輸送剤として含む感光層用塗布液を作成する工程。
(c)前記感光層用塗布液を基体上に塗布及び乾燥して、前記感光層を形成する工程。
【化6】


(一般式(1)中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立した炭素数5〜10の置換または非置換のアルキル基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、あるいは炭素数5〜30の置換または非置換の環式炭化水素基であり、かつ、Ar1〜Ar3のうち、少なくとも1つは、置換または非置換のビフェニル基である。)
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるホスフィン化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体の製造方法。
【化7】


(一般式(6)中、R33及びR34は、それぞれ独立した炭素数1〜5の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換または非置換のアルコキシ基、あるいは置換または非置換のアミノ基であり、置換基数xは0〜3の整数であり、yは0〜4の整数である。)
【請求項5】
前記ホスフィン化合物の融点を90〜250℃の範囲内の値とすることを特徴とする請求項3または4に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項6】
前記ホスフィン化合物の添加量を、前記アミン化合物1モルに対して0.0005〜20モルの範囲内の値とするとともに、前記パラジウム化合物の添加量を、前記アミン化合物1モルに対して0.00025〜10モルの範囲内の値とすることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
前記ホスフィン化合物を、非溶液状態で添加することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項8】
前記トリアリールアミン構造を有する化合物を、塩基の存在下に合成することを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−134406(P2008−134406A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319986(P2006−319986)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】