説明

電子写真感光体及び電子写真装置

【課題】電子写真装置の小型化、高速化に伴う電子写真感光体の小径化、周速の速いプロセスに対応でき、且つ長波長域において高感度、高光応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく高安定性の電子写真感光体並びにこれを用いた電子写真装置、電子写真方法及びプロセスカートリッジを提供する事。
【解決手段】導電性支持体と、感光層とを有し、前記感光層は、結着樹脂と、電荷発生剤と、電荷輸送剤とを含み、前記電荷発生剤は、非対称ジスアゾ顔料を含有し、前記電荷輸送剤は、一般式(II)で表されるインドリン化合物を含有する事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のジスアゾ顔料を電荷発生剤として含有し、特定のインドリン化合物を電荷輸送剤として含有する電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた電子写真装置、電子写真方法及び電子写真装置用プロセスカートリッジに関する。
【0002】
近年、電子写真方式を採用する、ノンインパクトプリンタの露光光源としては半導体レーザーやLED等の長波長の光源が主に使用されている。さらにまた、複写機、プリンタ装置の小型化、高速化に伴い、電子写真感光体の小径化、周速の速いプロセスが採用されてきている。そのため、電子写真感光体は長波長域に感度を有する電荷発生剤を使用するのが一般的である。従来、このような材料としてフタロシアニン系顔料がよく用いられている。このフタロシアニン系顔料はその結晶型によって感度が異なることはよく知られている。また、近年の省電力化に伴い、プリンタ等電子写真装置の露光光源の出力を抑えるために電子写真感光体には高感度化の要求が高まっている。
【0003】
フタロシアニン系顔料のなかで780nm付近の長波長域に高い感度を有するものとしてはオキシチタニウムフタロシアニンが挙げられる。その中でも27.2°に最大回折ピークを示すものが高感度であるとされている。しかしながら、高速のプロセスで用いると、繰り返し使用後の電子写真感光体の電位特性が劣化し、得られる画像にカブリ、黒スジ及び濃度ムラなどが生じてしまう。また、オキシチタニウムフタロシアニンのもつ高感度特性により、電荷の発生量が比較的多いため、通常では高応答性などの利点を有するものの、高速プロセスに用いた場合は、感光層中に電荷が残留し、電子写真感光体上にメモリーとなって残り、次工程の電子写真プロセスでメモリー現象として画像に現われてしまうものと考えられる。更に、低温低湿から高温高湿までの環境条件に対して感光層中の電荷が残留してしまうといったマイナス要素を有している。最近では波長650nm付近に感度を有するアゾ顔料が注目されている。(例えば、特許文献1、2参照。)しかし、電荷輸送剤の電荷輸送能力との関係もあり、両者の組み合わせが重要である。
【0004】
そこで、長波長域で高感度、高光応答性を有し、高速で繰り返し使用しても電子写真特性、特に初期電位と繰り返し使用後の電位の再現性が安定している電子写真感光体が求められている。また、高い電荷発生効率を有する電荷発生剤を用いても、電荷輸送剤の輸送能力が低かったり、電荷輸送剤との相性が悪いと充分な感度を得ることができないだけでなく、高温高湿から低温低湿までさまざま使用環境においても高品質の画像が得られない。電荷発生剤と電荷輸送剤との相性は、さまざまな視点から研究されているが、明確に見出されてはいないのが現状である。
【0005】
例えば、特許文献3(特開平3−75660号公報)には、電荷輸送層に、特定構造のインドリン系電荷輸送物質(本発明におけるインドリン系電荷輸送剤とは異なる。)を用いた電子写真感光体が開示されている。特許文献4(特開平5−6011号公報)、特許文献5(特開平11−149170号公報)においても同様に、本発明における電荷輸送剤の構造に近いが異なる電荷輸送剤が開示されている。しかしながら、特許文献3〜5で開示されている電荷輸送剤では、上述した電子写真感光体に求められている諸特性を充分に満たすものとすることはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを目的とし、複写機、プリンタ等の電子写真装置の小型化、高速化に伴う、電子写真感光体の小径化、周速の速いプロセスに対応できる電子写真感光体であって、且つ、長波長域において高感度、高光応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、しかも安定性が高い電子写真感光体を提供することを目的とする。
また本発明は、前記電子写真感光体を用いた電子写真装置、電子写真方法及び電子写真装置用プロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電荷発生剤として特定の非対称ジスアゾ顔料を用い、電荷輸送剤として特定のインドリン化合物を用いた電子写真感光体が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題は、以下の本発明によって解決される。
【0008】
(1):導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた感光層と、を有する電子写真感光体であって、前記感光層は、結着樹脂と、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、を含み、前記電荷発生剤は、下記一般式(I)で表される非対称ジスアゾ顔料を含有し、前記電荷輸送剤は、下記一般式(II)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0009】
【化1】

【0010】
(上記一般式(I)中、R及びRは、各々独立に置換あるいは無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、または複素環基を表す。但し、R及びRが互いに同一であるものは除く。)
【0011】
【化2】

【0012】
(上記一般式(II)中、R〜Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
【0013】
(2):前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIa)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体である。
【0014】
【化3】

【0015】
(3):前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIb)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体である。
【0016】
【化4】

【0017】
(4):前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIc)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体である。
【0018】
【化5】

【0019】
(5):前記電荷輸送剤は、下記化学式(IId)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体である。
【化6】

【0020】
(6):前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIe)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体である。
【0021】
【化7】

【0022】
(7):前記感光層は、前記電荷発生剤を含有する電荷発生層と、前記電荷輸送剤を含有する電荷輸送層と、を備えることを特徴とする上記(1)に記載の電子写真感光体である。
【0023】
(8):前記電荷輸送層は、フェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする上記(7)に記載の電子写真感光体である。
【0024】
(9):前記電荷輸送層は、アミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする上記(7)に記載の電子写真感光体である。
【0025】
(10):前記電荷輸送層は、硫黄系酸化防止剤を含有することを特徴とする上記(7)に記載の電子写真感光体である。
【0026】
(11):前記電荷輸送層は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする上記(7)に記載の電子写真感光体である。
【0027】
(12):上記(1)乃至(11)のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーによって可視化してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、を有し、前記電子写真感光体を除電する除電手段を有しないことを特徴とする電子写真装置である。
【0028】
(13):前記電子写真感光体、前記帯電手段、前記現像手段、及び前記転写手段をそれぞれ複数有するタンデム型であることを特徴とする上記(12)に記載の電子写真装置である。
【0029】
(14):前記現像手段は、1または2以上のトナー像を形成し、前記転写手段は、一次転写部と、中間転写体と、二次転写部と、を備え、前記一次転写部は、前記電子写真感光体上のトナー像を前記中間転写体上に一次転写し、前記二次転写部は、前記中間転写体上のトナー像を記録媒体上に二次転写し、前記現像手段が、2以上のトナー像を形成する場合、前記一次転写部は、前記中間転写体上に前記2以上のトナー像を積層するように一次転写し、前記二次転写部は、前記記録媒体上に前記中間転写体上の積層された2以上のトナー像を一括で二次転写することを特徴とする上記(12)または(13)に記載の電子写真装置である。
【0030】
(15):電子写真感光体を帯電させる帯電工程と、帯電した前記電子写真感光体表面に静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーによって可視化してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、を有する電子写真方法であって、前記電子写真感光体は、上記(1)乃至(11)のいずれか1項に記載の電子写真感光体であり、前記露光工程から前記現像工程までに要する時間が100m秒以下であることを特徴とする電子写真方法である。
【0031】
(16):帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び転写手段の中から選ばれる1以上の手段と、上記(1)乃至(11)の何れか1項に記載の電子写真感光体と、を具備することを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電子写真装置の小型化、高速化に伴う、電子写真感光体の小径化、周速の速いプロセスに対応でき、且つ、長波長域において高感度、高光応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、しかも安定性が高い電子写真感光体、並びに該電子写真感光体を用いた電子写真装置、電子写真方法及び電子写真装置用プロセスカートリッジが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の一実施の形態における構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の一実施の形態における構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた感光層と、を有する電子写真感光体であって、前記感光層は、結着樹脂と、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、を含み、前記電荷発生剤は、下記一般式(I)で表される非対称ジスアゾ顔料を含有し、前記電荷輸送剤は、下記一般式(II)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする。
【0035】
【化8】

【0036】
(上記一般式(I)中、R及びRは、各々独立に置換あるいは無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、または複素環基を表す。但し、R及びRが互いに同一であるものは除く。)
【0037】
【化9】

【0038】
(上記一般式(II)中、R〜Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
【0039】
次に、本発明に係る電子写真感光体(以下、単に感光体と称することもある。)の好ましい実施の形態を図面に沿って説明する。尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0040】
図1は本発明の電子写真感光体の構成例を示す断面図である。導電性支持体(1)上に、少なくとも電荷発生剤が含有される電荷発生層(2)が形成され、その上に少なくとも電荷輸送剤が含有される電荷輸送層(3)が形成される機能分離型電子写真感光体が適用されるものである。この場合、電荷発生層(2)と電荷輸送層(3)とにより感光層(4)が形成される。
【0041】
電荷発生層(2)の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、例えば前記一般式(I)で表される非対称ジスアゾ顔料を電荷発生剤として用い、結着樹脂と共に適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、所定の下地となる導電性支持体(1)上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
【0042】
電荷輸送層(3)は、少なくとも前記一般式(II)で表されるインドリン化合物である電荷輸送剤を有するものである。この電荷輸送層(3)は、例えば、その下地となる電荷発生層(2)上に結着樹脂を用いて電荷輸送剤を結着することにより形成することができる。
【0043】
電荷輸送層(3)の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、通常の場合、電荷輸送剤を結着樹脂と共に適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、下地となる電荷発生層(2)上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0044】
また、本発明はこれに限定されるものではなく、電荷発生層(2)と電荷輸送層(3)を上下逆に積層させた逆積層型電子写真感光体等についても適用することができる。さらに、電荷発生剤と電荷輸送剤とを同一層(単層構成の感光層(4))に含有する単層型電子写真感光体にも適用できる。また、必要に応じて導電性支持体(1)と電荷発生層(2)との間に下引き層(中間層)を設けても良いし、感光層(4)上に保護層を設けても良い。
【0045】
本発明に用いることができる導電性支持体(1)としては、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体やそれらの合金の加工体が挙げられる。形状は、シート状、フイルム状、ベルト状等のフレキシブルな形状であっても、ドラム状等のインフレキシブルな形状であってもよく、そして、無端、有端を問わない。また、導電性支持体(1)の直径は、60mm以下、好ましくは30mm以下のものが特に有効である。
【0046】
この中でも、JIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金が用いられ、EI(Extrusion Ironing)法、ED(Extrusion Drawing)法、DI(Drawing Ironing)法、II(Impact Ironing)法等の一般的な方法により成形を行なった導電性支持体が好ましく、更に、その導電性支持体の表面に、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨、陽極酸化処理等の表面処理、またはこれらの加工、処理を行なわない無切削管などいずれのものでもよい。
【0047】
また、導電性支持体(1)として樹脂を用いる場合、樹脂中に金属粉や導電性カーボン等の導電剤を含有させたり、導電性支持体形成用樹脂として導電性樹脂を用いたりすることもできる。
【0048】
さらに、導電性支持体(1)にガラスを用いる場合、その表面に酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆し、導電性を持たせてもよい。
【0049】
また、前述のとおり導電性支持体(1)上に下引き層を形成してもよい。この下引き層は接着向上機能、導電性支持体(1)としてのアルミニウム管からの流れ込み電流を防止するバリヤー機能、アルミニウム管表面の欠陥被覆機能等をもつ。この下引き層には、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の各種樹脂を用いることができ、下引き層は、これらの中から選ばれた単独の樹脂で構成してもよく、2種以上の樹脂を混合して構成してもよい。また、下引き層中に金属化合物、カーボン、シリカ、樹脂粉末等を分散させることもできる。さらに、特性改善のために各種顔料、電子受容性物質や電子供与性物質等を下引き層に含有させることもできる。
【0050】
これら下引き層は感光層(4)と同様に適当な溶媒、分散、塗工法を用いて形成することができる。下引き層の膜厚は、0.1μm〜50μm、好ましくは0.5μm〜20μmが適当である。
【0051】
電荷発生剤としては、前記一般式(I)に示す非対称ジスアゾ顔料が用いられる。使用される非対称ジスアゾ顔料の具体例を下記表1に示す。R、Rは同時に同じでない。
【0052】
【表1】

【0053】
感光層(4)中には、適切な光感度波長や増感作用を得るために、前記一般式(1)で表される非対称ジスアゾ顔料と共に、これ以外のアゾ顔料、例えば、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩等を用いることができる。その他、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料等を混合させることもできる。これらは、感度の相性が良い点で望ましい。
【0054】
感光層(4)を形成するための結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂及びエポキシアリレート等の樹脂が挙げられる。
【0055】
それらは単体で用いてもよいが、2種以上混合して使用することも可能である。分子量の異なった樹脂を混合して用いた場合には、硬度や耐摩耗性を改善できて好ましい。
【0056】
なお、感光層(4)が電荷発生層(2)と電荷輸送層(3)とからなる積層構成の場合には、前記樹脂はどちらの層にも適用できる。
【0057】
結着樹脂の量は、電荷発生剤100重量部に対し、10〜500重量部、好ましくは25〜300重量部が適当である。
【0058】
電荷発生層(2)の膜厚は、0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。
【0059】
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、リングコート、バーコートスピナーコート等の方法を用いることができる。尚、この塗布液の塗工法については、後述する電荷輸送層(3)も同様の方法を用いることができる。
【0060】
塗布液に使用する溶剤には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、あるいはアニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等がある。特にその中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素系溶媒(塩素系炭化水素)が好ましく、これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。尚、塗布液に用いられる溶剤については、後述する電荷輸送層(3)も同様の溶剤を用いることができる。
【0061】
本発明の電子写真感光体には、電荷輸送剤として下記一般式(II)で表されるインドリン化合物が含有される。
【0062】
【化10】

【0063】
上記一般式(II)中、R〜Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。また、上記一般式(II)中、R〜Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシ基を表すことがより好ましい。R〜Rの具体例としてはこれらに限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0064】
上記一般式(II)で表される電荷輸送剤は、高い光応答性を有し、前記一般式(I)で表される非対称ジスアゾ顔料との相性がよく、耐環境性に強い電子写真感光体を提供できるものである。
【0065】
一般式(II)に示すインドリン化合物において、特に下記化学式(IIa)〜(IIe)で表されるインドリン化合物が前記一般式(I)で表される非対称ジスアゾ顔料との相性がよく好ましい。
【0066】
以下、具体的化合物を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
【化11】

【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
この場合、電荷輸送層(3)中の前記一般式(II)で表される化合物の含有量は、結着樹脂1重量部に対し、0.3〜2.0重量部とすることが好ましい。この化合物の含有量が0.3重量部より少ないと、残留電位が上昇するなど電気特性が悪化する。他方、2.0重量部より多いと、耐摩耗性等の機械特性が低下する。
【0073】
さらに、前記一般式(II)で表される化合物と他の電荷輸送剤とを混合して用いることもできる。この場合、一般式(II)で表される化合物と他の化合物の含有比率は、一般式(II)で表される化合物:他の化合物=50:50〜95:5、好ましくは70:30〜95:5の範囲がよい。
【0074】
電荷輸送層(3)の膜厚は、3〜50μm、好ましくは10〜40μmである。
【0075】
他の電荷輸送剤としては、ポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物を用いることができる。又、低分子化合物として、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。さらに、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷輸送錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加して又は2種以上の化合物を混合して添加して、所望の感光体特性を得ることができる。
【0076】
本発明の電子写真感光体を製造するための塗布液には、特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、電子写真感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。特に、酸化防止剤は電子写真感光体の耐久性向上に寄与し有用である。
【0077】
感光層(4)に添加する酸化防止剤としては、以下に示すものが好ましいものとして挙げられる。
アミン系酸化防止剤は、例えば、α,α’(テトラベンジル)ジアミノ−P−キシレン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−エチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0078】
フェノール系酸化防止剤は、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピオン酸ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、n−オクタデシル−3−(3’−5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4.4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のポリフェノール系等が挙げられる。
【0079】
硫黄系酸化防止剤は、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジトリデシイル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3−チオプロピオネート、ビス〔2−メチル−4−(3−n−アルキルC12〜C14)チオプロピオネート)−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール等を挙げることができる。
酸化防止剤は、1種若しくは2種以上を同時に感光層(4)中に含有することができる。
【0080】
紫外線吸収剤は、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル、サリチル酸−p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸−p−オクチルフェニル等のサリチル酸系が好ましく、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤は、1種若しくは2種以上を同時に感光層に含有することができる。
【0081】
本発明の電子写真感光体に添加されるアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤の添加量は、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤では結着樹脂に対してそれぞれ1〜20重量%、硫黄系酸化防止剤では0.1〜5重量%の範囲であることが好ましい。一方、紫外線吸収剤の添加量も、結着樹脂に対して1〜20重量%とすることが好ましい。
【0082】
加えて、感光層(4)の上に、ポリビニルホルマール樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の有機薄膜や、シランカップリング剤の加水分解物で形成されるシロキサン構造体から成る薄膜を成膜して表面保護層(保護層)を設けてもよく、その場合には、電子写真感光体の耐久性が向上するので好ましい。この表面保護層は、耐久性向上以外の他の機能を向上させるために設けてもよい。表面保護層の膜厚は、0.1〜20μmが適当である。
【0083】
<電子写真装置>
本発明の電子写真感光体が搭載される電子写真装置としては、少なくとも帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程など通常用いられる方法により画像形成を行うものであって、これら各工程を実現するための手段を有する。
詳細には帯電方式はブラシ、ローラーなどの接触式、スコロトロン、コロトロン等の非接触式の、いずれの方式でもよく、正負いずれの帯電電荷でもよい。
露光方式は、LED,LD等いずれでもよい。
現像方式は、2成分、1成分、磁性/非磁性いずれでもよい。
転写方式は、ローラー、ベルト等いずれでもよい。
クリーニング方式はブレードクリーニング、ブラシクリーニング、帯電部や現像部をクリーニング工程として兼用してもよい。
また、クリーニング工程や除電工程を省略した方式でもよい。
【0084】
次に、本発明の電子写真装置について説明する。図2は、本発明の電子写真装置の概略構成図である。
11は図中の矢印方向に回転される電子写真感光体であって、電子写真感光体11と接触して帯電手段である帯電部材12が設けられている。
帯電部材12には、電源13から電圧が供給されるようになっていて、電子写真感光体11の表面を所定の電位に一様帯電させる。
【0085】
電子写真感光体11の周囲には、電子写真感光体11の回転方向に沿って順に、露光手段である露光装置14、現像手段である現像装置15、転写手段である転写装置16、およびクリーニング装置17が配置されている。また、転写装置16と電子写真感光体11との対向位置から記録媒体(記録紙)の搬送方向下流に定着装置19が配置されている。尚、除電装置は設けられない。
【0086】
露光装置14は、帯電装置12により一様帯電せしめられた電子写真感光体11の表面を像様に露光することにより、静電潜像を形成する。
この静電潜像は電子写真感光体11の表面に担持されたまま現像装置15との対向位置まで移動し、現像装置15内に収容されているトナーにより可視化され、トナー像が電子写真感光体11上に形成される。
このトナー像は、電子写真感光体11表面に担持されたまま転写装置16との対向位置まで移動し、電子写真感光体11と転写装置16とに狭持されてなる記録媒体である記録紙に転写される。
転写されたトナー像を有する記録紙は、定着装置19まで搬送され、熱及び圧力によりトナー像は記録紙に定着される。
また、トナー像が転写された後の電子写真感光体11は、クリーニング装置17により、転写残トナーなどが除去され、一連の電子写真法の画像形成プロセスを終える。
繰り返し画像形成を行う場合には、再度帯電装置12による帯電工程から始まる電子写真方法の画像形成プロセスを行う。
【0087】
このとき、露光装置14による電子写真感光体11表面の露光開始から、現像装置15によるトナー像の形成終了までに要する時間が100m秒以下であることが好ましい。即ち、露光装置14からの射出光が電子写真感光体11に到達する位置から、図2における現像装置15が有する現像ローラの中心と電子写真感光体11の中心とを結んだ線上における電子写真感光体11表面である現像位置まで、電子写真感光体11が回転するために要する時間が100m秒以下であることが好ましい。100m秒以下であることで、 電子写真装置の小型化、高速化に伴う電子写真感光体の小径化、周速の速いプロセスに対応できる。
【0088】
尚、図2に示す例は電子写真感光体、帯電手段、現像手段、及び転写手段を単数備える形態であるが、本発明はかかる形態に限られるものではなく、これらを複数、例えばYMCK各色に対応して4つずつ備えるものとした、所謂タンデム型のカラー電子写真装置としても良い。
【0089】
また、図2に示す例は電子写真感光体11から記録媒体に直接トナー像を転写する転写方式であるが、本発明はかかる転写方式に限られるものではなく、中間転写体を用いた中間転写方式であっても良い。
即ち、電子写真感光体上に担持されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段が、一次転写部と、中間転写体と、二次転写部と、を備える形態とすることができる。
【0090】
中間転写方式についてより詳しく説明すると、例えば、前述の現像手段が1のトナー像を形成した場合、電子写真感光体上に担持されたトナー像は、一次転写部との対向位置に搬送された後、ベルト状等の周知慣用の形態の中間転写体に一次転写される。次いで、中間転写体上に一次転写されたトナー像は、当該中間転写体表面に担持された状態で二次転写部との対向位置まで搬送された後、記録媒体上に二次転写される。ここで、一次転写部および二次転写部は、いずれも周知慣用の転写法を採用することができ、例えば転写ローラを配して所定の転写バイアスを印加することでトナー像を転写することができる。
またこのとき、前述のタンデム型のカラー電子写真装置において中間転写方式を採用したような、現像手段がYMCKのそれぞれに対応した4色のトナー像を形成した場合、中間転写体上の所定の位置に、4色のトナー像が積層するように各色ごと一次転写される。次いで、中間転写体上に一次転写され積層された状態の4色のトナー像は、当該中間転写体表面に担持された状態で二次転写部との対向位置まで搬送された後、記録媒体上に一括で二次転写される。
【0091】
<電子写真装置用プロセスカートリッジ>
また、以上説明した帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び転写手段の中から選ばれる1以上の手段と、電子写真感光体と、を具備する電子写真装置用プロセスカートリッジを、電子写真装置に一体で取り付け/取り外しを可能として、交換操作などを簡便なものとすることができる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明に係る電子写真感光体の実施例を実験例、比較例と共に詳細に説明する。
【0093】
(実施例1)
導電性支持体として、直径30mmのアルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルキド樹脂(ベッコライトM−6401−50大日本インキ化学工業社製)とアミノ樹脂(スーパーベッカミンG−821−60大日本インキ化学工業社製)を重量比65:35の割合で混合して混合樹脂を作製した。さらに前記混合樹脂と酸化チタン(CR−EL石原産業社製)を重量比で1:3の割合とし、メチルエチルケトンに溶解して塗布液として、1.5μmの膜厚で下引き層を形成した。
【0094】
次に、下記化学式(Ia)で表されるジスアゾ顔料粉末30gを、ガラスビーズとメチルエチルケトン500mlにポリビニルブチラール樹脂(BH−5積水化学工業社製)10gを溶解した液に加え、サンドミル分散機で20時間分散し、得られた分散液をろ過してガラスビ−ズを取り去り、電荷発生層用塗布液を作製した。これを前記下引き層上に浸漬塗工し乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0095】
【化16】

【0096】
次に結着樹脂としてポリカーボネート樹脂(パンライトTS2050 帝人化成社製)と、電荷輸送剤として、(段落〔0069〕記載の)前記化学式(IIc)で表される化合物と、フェノール系酸化防止剤として2.6−ジ−t−4メチルフェノールとを、重量比1.0:1.0:0.05で用意し、テトラヒドロフランに溶解し、電荷輸送層用塗工液を調製した。電荷発生層を形成した導電性支持体を該電荷輸送層用塗工液に浸漬塗工し、120℃で60分乾燥し膜厚25.0μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0097】
(実施例2)
実施例1で用いた電荷輸送剤を、(段落〔0067〕記載の)前記化学式(IIa)で表される電荷輸送剤に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0098】
(実施例3)
実施例1で用いた電荷輸送剤を、(段落〔0068〕記載の)前記化学式(IIb)で表される電荷輸送剤に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0099】
(実施例4)
実施例1で用いた電荷輸送剤を、(段落〔0070〕記載の)前記化学式(IId)で表される電荷輸送剤に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0100】
(実施例5)
実施例1で用いた電荷輸送剤を、(段落〔0071〕記載の)前記化学式(IIe)で表される電荷輸送剤に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0101】
(実施例6)
実施例1で用いたジスアゾ顔料を、下記化学式(Ib)で表されるジスアゾ顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0102】
【化17】

【0103】
(実施例7)
実施例1で用いたジスアゾ顔料を、下記化学式(Ic)で表されるジスアゾ顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0104】
【化18】

【0105】
(実施例8)
実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤の2.6−ジ−tert-ブチル−4−メチルフェノールに代えて、イオウ系酸化防止剤のジステアリル3,3’チオジプロピオネート(セミライザーTPS 住友化学製)を用い、結着樹脂:電荷輸送剤:イオウ系酸化防止剤の比率(重量比)を1:1:0.01に変えた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0106】
(実施例9)
実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤の2.6−ジ−tert-ブチル−4−メチルフェノールに代えて、紫外線吸収剤の2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P Geigy製)を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0107】
(実施例10)
実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤の2.6−ジ−tert-ブチル−4−メチルフェノールに代えて、アミン系酸化防止剤のα,α’−(テトラベンジル)ジアミノ−P−キシレンを用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0108】
(実施例11)
実施例1で用いた電荷輸送層の組成に、更にイオウ系酸化防止剤のジステアリル3,3’チオジプロピオネートと紫外線吸収剤の2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを加え、結着樹脂:電荷輸送剤:フェノール系酸化防止剤:イオウ系酸化防止剤:紫外線吸収剤の比率(重量比)を1:1:0.05:0.01:0.05として電子写真感光体を作製した。
【0109】
(比較例1)
実施例1で用いた電荷輸送剤に代えて、下記化学式(A)で表される電荷輸送剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0110】
【化19】

【0111】
(比較例2)
実施例1で用いた電荷輸送剤に代えて、下記化学式(B)で表される電荷輸送剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0112】
【化20】

【0113】
(比較例3)
実施例1で用いた電荷輸送剤に代えて、下記化学式(C)で表される電荷輸送剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0114】
【化21】

【0115】
(比較例4)
実施例1で用いたジスアゾ顔料に代えて、下記化学式(D)で表されるペリレン顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0116】
【化22】

【0117】
(比較例5)
実施例1で用いたジスアゾ顔料に代えて、下記化学式(E)で表されるジスアゾ顔料に代えた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0118】
【化23】

【0119】
(実験例1)
実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0120】
電子写真感光体評価
<簡易測定器での電気特性評価>
実施例1〜11及び比較例1〜5、並びに実験例1で作製した機能分離型電子写真感光体に、感光ドラム評価装置(ダイナミックモード測定)を使用し、以下の条件で電子写真特性を評価した。
【0121】
電子写真感光体評価装置(山梨電子工業社製)を用い、実施例1〜11及び比較例1〜5、並びに実験例1で作製された電子写真感光体を温度23℃、湿度50%の環境下(N/N)で、スコロトロン方式で電子写真感光体への放電電流25μAを流した時の電子写真感光体の表面電位(V0)を計測する。その後、表面電位が−700Vになるように放電電流を調節し、波長650nmの半導体レーザーで照射して、表面電位が1/2(−350V)に減衰した時の露光エネルギー量:半減露光エネルギー量(E1/2)を計測した。また、1.0μJ/cmの露光エネルギーを照射した時の電子写真感光体表面電位を残留電位(VL)とした。
【0122】
上記測定条件の温度湿度条件を温度10℃、湿度10%の環境下(L/L)、及び温度30℃、湿度80%の環境下(H/H)に変更して同様に電子写真感光体特性を評価し表面電位(V0)、露光エネルギー(E1/2)、残留電位(VL)をそれぞれ計測した。また、耐久性試験としてN/N環境下において電子写真感光体を帯電、露光、除電を1サイクルとして繰り返し1万サイクル実施した。その1サイクル後と、1万サイクル後の電子写真感光体の表面電位(VO)、半減露光エネルギー(E1/2)、残留電位(VL)をそれぞれ測定した。除電は波長660nmのLED(20μW)を用いた。電子写真感光体のドラム回転数は100rpmとし、レーザー光照射してから電位を測定するまでの時間(露光位置から測定位置までの移動時間)は0.06秒であった。尚、電位の測定位置は電子写真装置における現像位置と一致するものであり、例えば図2に示すような電子写真装置の場合、電子写真感光体11の中心と現像装置15が有する現像ローラの中心とを結んだ線上における電子写真感光体11表面が現像位置である。
結果を表2に示す。
【0123】
<光応答性評価>
電子写真感光体評価装置(山梨電子工業製)を用い、実験例、実施例及び比較例によって作製された電子写真感光体に対し、半減露光量の5倍の光量を照射し、露光から現像位置に到達するまでの時間を100m秒、50m秒、30m秒と変化させた時の現像位置での表面電位を光応答性(−V)として評価した。その結果を表3に示す。尚、現像位置(電位の測定位置)は上述の電気特性評価と同様である。
【0124】
<画像評価>
(株)リコー製CX−411カラープリンターを用い転写電流を変動させ画像確認した。1サイクル目にベタ黒画像を印字し以降のハーフトーン上に現れる残像(ゴースト)を23℃、50%RH環境で評価した。但しプロセス内に装備されているイレース露光器は排除し評価を行った。その結果を表4に示す。尚、残像発生無しを○、残像発生を△、強く残像が発生を×とした。
【0125】
【表2】

【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
電子写真感光体は、帯電性は高い程好ましく、E1/2は小さい程高感度感光体であり、実用的なレベルとしてはE1/2は0.15μJ/cm以下が好ましい。VLは実用的な範囲としては100V以下であり、それ以上であると、画像濃度が低下する問題を引き起こす。以下に今回の評価結果を考察する。
【0129】
表2から明らかなように、本発明の電子写真感光体が含有する電荷発生剤と電荷輸送剤とを組み合わせた実施例1〜11及び実験例1と、比較例1〜5と、を比較すると、環境変動に対する帯電(V0)、E1/2残留電位(VL)変動が少なく環境に対する安定性が高い事がわかる。
また、芳香族アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と組み合わせた実施例1〜11と、実験例1(本願特許電荷発生剤と電荷輸送剤を組み合わせ添加剤が入っていない組み合わせ)と、を比較すると、添加剤を組み合わせた実施例1〜11は繰り返しサイクル疲労後(1万サイクル後)の表面電位(V0)の低下が10V以内でより良好である事が分かり、さらにVLの上昇も20V以内であり耐久性がより良好である事が分る。
本発明の範囲に属する電子写真感光体は環境変動が少なく、耐久性に優れる事がわかる。
【0130】
表3から、本発明の電子写真感光体が含有する電荷発生剤と電荷輸送剤を組み合わせた実施例1〜11及び実験例1と、比較例1〜5と、を比較すると、明らかに本発明の範囲に属する電子写真感光体は露光後現像器位置に到達するまでの時間を短くしても変動が少なく、光応答性が優れている事がわかる。
【0131】
表4から明らかなように、実施例1〜11、実験例1は、残像に良好な電子写真感光体となった。これに対し比較例1は強い転写電流に若干残像が発生、比較例3〜5は残像が発生し電子写真感光体特性として満足できるものではなかった。
【0132】
以上をまとめると、本発明によれば、環境変動が少なく、高耐久で、光応答性が高く、高速電子写真プロセスに対応できる電子写真感光体、及びこれを用いた電子写真装置、電子写真方法及び電子写真装置用プロセスカートリッジを提供できる。
【符号の説明】
【0133】
1 導電性支持体
2 電荷発生層
3 電荷輸送層
4 感光層
11 電子写真感光体
12 帯電部材
13 電源
14 露光装置
15 現像装置
16 転写装置
17 クリーニング装置
19 定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【特許文献1】特開平7−70456号公報
【特許文献2】特開2000−147807号公報
【特許文献3】特開平3−75660号公報
【特許文献4】特開平5−6011号公報
【特許文献5】特開平11−149170号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、該導電性支持体上に設けられた感光層と、を有する電子写真感光体であって、
前記感光層は、結着樹脂と、電荷発生剤と、電荷輸送剤と、を含み、
前記電荷発生剤は、下記一般式(I)で表される非対称ジスアゾ顔料を含有し、
前記電荷輸送剤は、下記一般式(II)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】


(上記一般式(I)中、R及びRは、各々独立に置換あるいは無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、または複素環基を表す。但し、R及びRが互いに同一であるものは除く。)
【化2】


(上記一般式(II)中、R〜Rは、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
【請求項2】
前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIa)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化3】

【請求項3】
前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIb)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化4】

【請求項4】
前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIc)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化5】

【請求項5】
前記電荷輸送剤は、下記化学式(IId)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化6】

【請求項6】
前記電荷輸送剤は、下記化学式(IIe)で表されるインドリン化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化7】

【請求項7】
前記感光層は、前記電荷発生剤を含有する電荷発生層と、前記電荷輸送剤を含有する電荷輸送層と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記電荷輸送層は、フェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記電荷輸送層は、アミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記電荷輸送層は、硫黄系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項11】
前記電荷輸送層は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
該電子写真感光体表面を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体表面に静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナーによって可視化してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、を有し、
前記電子写真感光体を除電する除電手段を有しないことを特徴とする電子写真装置。
【請求項13】
前記電子写真感光体、前記帯電手段、前記現像手段、及び前記転写手段をそれぞれ複数有するタンデム型であることを特徴とする請求項12に記載の電子写真装置。
【請求項14】
前記現像手段は、1または2以上のトナー像を形成し、
前記転写手段は、一次転写部と、中間転写体と、二次転写部と、を備え、
前記一次転写部は、前記電子写真感光体上のトナー像を前記中間転写体上に一次転写し、
前記二次転写部は、前記中間転写体上のトナー像を記録媒体上に二次転写し、
前記現像手段が、2以上のトナー像を形成する場合、
前記一次転写部は、前記中間転写体上に前記2以上のトナー像を積層するように一次転写し、
前記二次転写部は、前記記録媒体上に前記中間転写体上の積層された2以上のトナー像を一括で二次転写することを特徴とする請求項12又は13に記載の電子写真装置。
【請求項15】
電子写真感光体を帯電させる帯電工程と、
帯電した前記電子写真感光体表面に静電潜像を形成する露光工程と、
前記静電潜像をトナーによって可視化してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、を有する電子写真方法であって、
前記電子写真感光体は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電子写真感光体であり、
前記露光工程から前記現像工程までに要する時間が100m秒以下であることを特徴とする電子写真方法。
【請求項16】
帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、及び転写手段の中から選ばれる1以上の手段と、
請求項1乃至11の何れか1項に記載の電子写真感光体と、を具備することを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−22138(P2012−22138A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159846(P2010−159846)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】