説明

電子写真感光体及び電子写真装置

【課題】長波長域において高感度・高応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、しかも安定性が高い電子写真感光体を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤と電荷輸送剤と結着樹脂とを含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生剤がオキシチタニウムフタロシアニンであって、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを有し、かつ28.6゜にも同時にピークを有し、その強度が27.2°の強度の20%未満であり、さらに最も低角側の回折ピークとして7.3゜に回折ピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲に回折ピークを有さず、前記電荷輸送剤が特定のビスブタジエン構造を有する化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の結晶型のオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生剤として含有し、特定の化合物を電荷輸送剤として含有することにより、繰返し使用における電気特性の劣化、特に残留電位の上昇が特に少ない電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を採用する、ノンインパクトプリンタの露光光源としては半導体レーザやLED等長波長の光源が主に使用されている。さらにまた、複写機、プリンタ装置の小型化、高速化に伴い、感光体の小径化、周速の早いプロセスが採用されてきている。
そのため、電子写真感光体は長波長域に感度を有する電荷発生剤を使用するのが一般的である。
従来、このような材料としてフタロシアニン系顔料がよく用いられている。このフタロシアニン系顔料はその結晶型によって感度が異なることはよく知られている。また、近年の省電力化に伴い、プリンタ等電子写真装置の露光光源の出力を抑えるために電子写真感光体には高感度化の要求が高まっている。
【0003】
フタロシアニン系顔料のなかで長波長域に高い感度を有するものとしてはオキシチタニウムフタロシアニンが挙げられる。オキシチタニウムフタロシアニンには、いくつもの結晶型が紹介されているが、その中でも27.2°に最大回折ピークを示すものが高感度であるとされている。
しかしながら、高速プロセスで用いると、繰り返し使用後の感光体の電位特性が劣化し、得られる画像にカブリ、黒スジ及び濃度ムラなどが生じてしまう。高速プロセスに用いた場合は、高感度であっても光応答性が充分でなければ感光層中に電荷が残り、次工程の電子写真プロセスで、カブリ、黒スジ及び濃度ムラなどの原因となる。
電荷輸送剤としては、高い電荷輸送能力を持つことが必要であり、また、電荷発生剤と電荷輸送剤との組合せが重要である。
【0004】
そこで、長波長域の感度が高く、高応答性であり、高速で繰り返し使用しても電子写真特性、特に初期電位と繰り返し使用後の電位の再現性が安定している電子写真感光体が求められている。
また、高い電荷発生効率を有する電荷発生剤を用いても、電荷輸送剤との相性が悪いと充分な感度を得ることができないだけでなく、高温高湿から低温低湿までさまざまな使用環境においても高品質の画像が得られない。電荷発生剤と電荷輸送剤との相性は、さまざまな視点から研究されており、電子写真感光体に特定結晶構造のオキシチタニウムフタロシアニンとインドリン系電荷輸送物質とを併用することは従来から検討されているが、明確に見出されてはいないのが現状である。
【0005】
例えば、特許文献1の特開平3−75660号公報には、電荷輸送層に、特定構造のインドリン系電荷輸送物質(本発明におけるインドリン系電荷輸送物質とは異なる。)を用いた電子写真感光体が開示されている。
特許文献2の特開平5−6011号公報、特許文献3の特開平11−149170号公報おいても同様に、本発明における電荷移動物質の構造に近いが異なる電荷輸送剤が開示されている。
一方、特許文献4の特開2004−279939号公報の明細書比較例において、X線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°が最大ピークを有する特定結晶構造のオキシチタニウムフタロシアニンと特定構造のインドリン系電荷輸送物質(本発明におけるインドリン系電荷輸送物質とは異なる。)を既に開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、複写機、プリンタ装置の小型化、高速化に伴ない、感光体の小径化、周速の早いプロセスに対応できる感光体であって、且つ、長波長域において高感度・高応答性であり、繰り返し使用しても電気特性の劣化がなく、しかも安定性が高い電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電荷発生剤として特定のX線回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニンを用い、特定化合物の電荷輸送剤を用いた電子写真感光体が、前記従来の技術の問題点を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記課題は、以下(1)〜(13)の本発明によって解決される。
(1)「導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤と電荷輸送剤と結着樹脂とを含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生剤がオキシチタニウムフタロシアニンであって、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを有し、かつ28.6゜にも同時にピークを有し、その強度が27.2°の強度の20%未満であり、さらに最も低角側の回折ピークとして7.3゜に回折ピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲に回折ピークを有さず、前記電荷輸送剤が一般式(I)で表わされる化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0009】
【化1】

〔式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基を表わす。〕」
【0010】
(2)「前記電荷輸送剤が一般式(Ia)で表わされる化合物を含有することを特徴とする前記(1)項に記載の電子写真感光体。
【0011】
【化2】

【0012】
(3)「前記電荷輸送剤が一般式(Ib)で表わされる化合物を含有することを特徴とする前記(1)項に記載の電子写真感光体。
【0013】
【化3】

【0014】
(4)「前記電荷輸送剤が一般式(Ic)で表わされる化合物を含有することを特徴とする前記(1)項に記載の電子写真感光体。
【0015】
【化4】

【0016】
(5)「前記電荷輸送剤が一般式(Id)で表わされる化合物を含有することを特徴とする前記(1)項に記載の電子写真感光体。
【0017】
【化5】

【0018】
(6)「前記電荷輸送剤が一般式(Ie)で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【0019】
【化6】

【0020】
(7)「前記感光層にフェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする前記(1)項乃至(6)項のいずれかに記載の電子写真感光体。」
(8)「前記感光層にアミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする前記(1)項乃至(6)項のいずれかに記載の電子写真感光体。」
(9)「前記感光層に硫黄系酸化防止剤を含有することを特徴とする前記(1)項乃至(6)項のいずれかに記載の電子写真感光体。」
(10)「前記感光層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする前記(1)項乃至(9)項のいずれかに記載の電子写真感光体。」
(11)「帯電、露光、現像、転写、を行なう電子写真装置であって、除電工程を有さず、かつ、前記(1)項乃至(10)項のいずれかに記載の電子写真感光体を搭載することを特徴とする電子写真装置。」
(12)「露光から現像までに要する時間が100m秒以下であることを特徴とする前記(11)項に記載の電子写真装置。」
(13)「帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、転写手段の少なくとも一つと前記(1)項乃至(10)項のいずれかに記載の電子写真感光体とを具備することを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。」
【発明の効果】
【0021】
本発明の電荷発生剤と電荷輸送剤を組み合わせた電子写真感光体は、残留電位がきわめて低く、イレーズレス電子写真装置内で使用した場合にも、残像を現すことなく、優れた電子写真特性を示すことを発見した。
また、後述する実施例と比較例の特性差からみてもわかるように、本発明の電子写真感光体は、高い応答性を持ち、繰り返し安定性を有し、高い市場要求に応えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のフタロシアニン組成物のX線回折図を示す。
【図2】α型オキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図を示す。
【図3】本発明のイレーズレス型電子写真装置の概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の電子写真感光体は、特定のX線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニンを電荷発生材料として基体上の感光層に含有させてなるものである。
【0024】
本発明に係る電子写真感光体の好ましい実施の形態を、詳細に説明する。
本発明は例えば、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生剤が含有される電荷発生層が形成され、その上に少なくとも電荷輸送剤が含有される電荷輸送層が形成される機能分離型電子写真感光体が適用されるものである。
電荷発生層の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、例えば本発明のフタロシアニン組成物を電荷発生剤として用い、バインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、所定の下地となる支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥させて形成することができる。
【0025】
電荷輸送層は、少なくとも後述する電荷輸送剤を有するものであり、この電荷輸送層は、例えば、その下地となる電荷発生層上に電荷輸送剤をバインダー樹脂を用いて結着することにより形成することができる。
電荷輸送層の形成方法としては、各種の方法を使用することができるが、通常の場合、電荷輸送剤をバインダー樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗布液を、下地となる電荷発生層上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
また、電荷発生層と電荷輸送層を上下逆に積層させた逆積層型電子写真感光体等についても適用することができる。さらに、電荷発生剤と電荷輸送剤とを同一層に含有する単層型電子写真感光体にも適用できる。
【0026】
本発明に用いることができる導電性支持体としては、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、チタン、金、銀、銅、錫、白金、モリブデン、インジウム等の金属単体やそれらの合金の加工体が挙げられる。形状は、シート状、フイルム状、ベルト状等フレキシブルな形状であればいずれのものでもよく、そして、無端、有端を問わない。
また、導電性支持体の直径は、60mm以下、好ましくは30mm以下のものが特に有効である。
この中でも、JIS3000系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金が用いられ、EI(Extrusion Ironing)法、ED(Extrusion Drawing)法、DI(Drawing Ironing)法、II(Impact Ironing)法等、一般的な方法により成形を行なった導電性支持体が好ましく、更に、その導電性支持体の表面に、ダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨、陽極酸化処理等の表面処理、またはこれらの加工、処理を行なわない無切削管などいずれのものでもよい。
【0027】
また、基体として樹脂を用いる場合、樹脂中に金属粉や導電性カーボン等の導電剤を含有させたり、基体形成用樹脂として導電性樹脂を用いることもできる。
さらに、基体にガラスを用いる場合、その表面に酸化錫、酸化インジウム、ヨウ化アルミニウムで被覆し、導電性を持たせてもよい。
【0028】
また、支持体上に樹脂層を形成してもよい。
この樹脂層は接着向上機能、アルミニウム管からの流れ込み電流を防止するバリヤー機能、アルミニウム管表面の欠陥被覆機能等をもつ。この樹脂層には、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等の各種樹脂を用いることができる。これらの樹脂層は、単独の樹脂で構成してもよく、2種以上の樹脂を混合して構成してもよい。また、層中に金属化合物、カーボン、シリカ、樹脂粉末等を分散させることもできる。さらに、特性改善のために各種顔料、電子受容性物質や電子供与性物質等を含有させることもできる。
【0029】
電荷発生剤としては、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを示し、かつ28.6゜にも同時にピークを有し、その強度が27.2°の強度の20%未満であり、さらに最も低角側の回折ピークとして7.3゜に回折ピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲に回折ピークを有さない、オキシチタニウムフタロシアニンが用いられる。
使用されるオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折図の例を第1図に示す。
なお、上記に示す回折ピークは、感光層が形成された後に感光層からオキシチタニウムフタロシアニンを抽出した状態において測定されたものである。このオキシチタニウムフタロシアニンを用いることにより、長波長域に優れた感度を有し、しかも使用環境特に湿度に影響されずに安定した特性を示す電子写真感光体を提供できる。
【0030】
電子写真感光体に用いるオキシチタニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルは従来、合成後所望の結晶型にした粉末状のオキシチタニウムフタロシアニン、若しくは感光層を形成する際に作成される樹脂や分散溶媒等を含んだ塗工液をペレット状にしたものを試料として測定していた。
しかし、感光層形成前の段階でオキシチタニウムフタロアシアニンのX線回折スペクトルを測定しても、感光層中に含有されているオキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を正確に判断できない。すなわち、感光層の形成にあたってはさまざまな外因があり、感光層形成前と形成後では回折スペクトルが異なる可能性がある。
【0031】
すなわち、電荷発生層上に電荷輸送層を積層する積層型感光体においては、電荷発生剤を含有する塗工液を支持体上に塗布形成し、必要に応じて乾燥し、その後電荷輸送剤を含有する塗工液を塗布して電荷輸送層を形成し、乾燥して各層を固着させる工程により感光層を形成するため、乾燥工程による熱的外因、電荷輸送層形成用塗工液に用いられる溶媒との接触等により電荷発生剤の回折スペクトルが結晶転移し、必ずしも塗工液の状態の回折スペクトルと、感光体の最終状態での回折スペクトルと同じ結晶型を示さない可能性がある。よって、実際に機能している状態の電荷発生剤の回折スペクトルを調べるためには、感光層を形成した後に電荷発生剤を取り出して測定する必要がある。
【0032】
感光層中からオキシチタニウムフタロシアニンを抽出する際に、オキシチタニウムフタロシアニンが結晶転移しないように注意しなければならない。また、感光層中にはバインダー樹脂や電荷輸送剤等が含有されており、X線回折スペクトルを測定する上でそれらが障害となる。よって、バインダー樹脂や電荷輸送剤等を除去し、オキシチタニウムフタロシアニンの結晶型を変えない溶媒を適宜選択する必要がある。
【0033】
感光層中には、適切な光感度波長や増感作用を得るために、本発明のオキシチタニウムフタロシアニンとともに、本発明以外のオキシチタニウムフタロシアニンやアゾ顔料等を混合させることもできる。これらは、感度の相性がよい点で望ましい。
その他、例えば、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ポリアゾ顔料、インジゴ顔料、スレン顔料、トルイジン顔料、ピラゾリン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、ピリリウム塩等を用いることができる。
【0034】
感光層を形成するためのバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエーテル、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ニトリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニル)樹脂、ACS(アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂及びエポキシアリレート等の樹脂がある。
それらは単体で用いてもよいが、2種以上混合して使用することも可能である。分子量の異なった樹脂を混合して用いた場合には、硬度や耐摩耗性を改善できて好ましい。
なお、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とからなる場合には、前記樹脂はどちらの層にも適用できる。
【0035】
塗布液に使用する溶剤には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、メトキシエタノール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、あるいはアニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等がある。特にその中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、あるいはハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましく、これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0036】
本発明の電子写真感光体には、電荷輸送剤として一般式(I)で表わされる特定の化合物が含有される。
【0037】
【化7】

〔式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基を表わす。〕
【0038】
上記電荷輸送剤は、本発明のオキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく、耐久性の高い電子写真感光体を提供できるものである。
【0039】
一般式(I)に示す化合物において、特に一般式(Ia)〜(Id)で表わされる化合物が本発明のオキシチタニウムフタロシアニンとの相性がよく好ましい。
以下、具体的化合物を示すがこれらに限定されるものではない。
【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
この場合、電荷輸送層中の一般式(I)で表わされる化合物の含有量は、結着樹脂1重量部に対し、0.3〜2.0重量部とすることが好ましい。この化合物の含有量が0.3重量部より少ないと、残留電位が上昇するなど電気特性が悪化する。他方、2.0重量部より多いと、耐摩耗性等の機械特性が低下する。
【0046】
さらに、一般式(I)で表わされる化合物と他の電荷輸送剤とを混合して用いることもできる。この場合、一般式(I)の化合物と他の化合物の含有比率は、一般式(I):他の化合物=50:50〜95:5、好ましくは70:30〜95:5の範囲がよい。
【0047】
他の電荷輸送剤としては、ポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物を用いることができる。
また、低分子化合物として、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。
また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。さらに、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷移動錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加してまたは2種以上の化合物を混合して添加して、所望の感光体特性を得ることができる。
【0048】
本発明の電子写真感光体を製造するための塗布液には、特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。特に、酸化防止剤および紫外線吸収剤を単独もしくは組み合わせて使用することにより感光体の耐久性向上に寄与し有用である。その中でも該感光層にはヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤および、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。
【0049】
例えば、フェノール系酸化防止剤は、2.6−ジ−tert−ブチルフェノール、2.6−ジ−tert−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2.4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピオン酸ステアリル−β−(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、n−オクタデシル−3−(3’−5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、2.2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4.4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4.4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1.1.3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1.3.5−トリメチル−2.4.6−トリス(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3.5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のポリフェノール系等が好ましく、これらを1種若しくは2種以上を同時に感光層中に含有することができる。
【0050】
例えば、アミン系酸化防止剤は、α,α’(テトラベンジル)ジアミノ−P−キシレン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−エチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等を挙げることができる。これらを1種若しくは2種以上を同時に感光層中に含有することができる。
【0051】
硫黄系酸化防止剤は、ジラウリル−3.3−チオジプロピオネート、ジトリデシイル−3.3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3.3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3.3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3.3−チオプロピオネート、ビス〔2−メチル−4−(3−n−アルキルC12〜C14)チオプロピオネート)−5−t−ブチルフェニル〕スルフィド、ペンタエリスリトールテトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール等を挙げることができる。酸化防止剤は、1種若しくは2種以上を同時に感光層中に含有することができる。
例えば、酸化防止能が強いもの(自身の酸化性が強く、比較的短命のもの。例えば含有する活性水素の活性度が比較的高いアミン系のもの)と、比較的長持ちするもの(酸化防止能は、その反面比較的弱いもの。例えばフェノール系のもの)とを組合わせて用いることができる。
【0052】
紫外線吸収剤は、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3.5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3.5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル、サリチル酸−p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸−p−オクチルフェニル等のサリチル酸系が好ましい。以上の酸化防止剤を1種若しくは2種以上を同時に感光層に含有することができる。
【0053】
本発明の電子写真感光体に添加されるフェノール系酸化防止剤の添加量は、結着樹脂に対して1〜20重量%の範囲、アミン系酸化防止剤の添加量は結着樹脂に対し1〜20重量%の範囲、硫黄系酸化防止剤の添加量は結着樹脂対して0.1〜5重量%であることが好ましい。一方、紫外線吸収剤の添加量は、結着樹脂に対して1〜20重量%とすることが好ましい。
【0054】
加えて、感光層の上に、ポリビニルホルマール樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の有機薄膜や、シランカップリング剤の加水分解物で形成されるシロキサン構造体から成る薄膜を成膜して表面保護層を設けてもよく、その場合には、感光体の耐久性が向上するので好ましい。この表面保護層は、耐久性向上以外の他の機能を向上させるために設けてもよい。
【0055】
本発明の電子写真感光体が搭載される電子写真装置としては、通常、帯電方式はブラシ、ローラなどの接触式、スコロトロン、コロトロン等の非接触式の、いずれの方式でもよく、正負いずれの帯電電荷でもよい。露光方式は、LED,LD等いずれでもよい。現像方式は、2成分、1成分、磁性/非磁性いずれでもよい。転写方式もローラ、ベルト等いずれでもよい。
【0056】
次に、本発明の電子写真装置について説明する。
図3は、本発明の電子写真装置の概略構成図である。
(11)は感光体であって、それと接触して帯電部材(12)が設けられている。帯電部材には、電源(13)から電圧が供給されるようになっている。感光体の周囲には、露光装置(14)、現像装置(15)、転写装置(16)、クリーニング装置(17)が設けられ、除電器は設けられていない。なお、(19)は定着装置である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明に係る電子写真感光体の実施例を実験例、比較例とともに詳細に説明する。
【0058】
(フタロシアニンの合成例1)
特開2004−233465号公報記載の合成法にしたがって、フタロシアニン結晶を合成した。すなわち、1,3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行なった。
反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、アセトンで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。
得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち60部を96%硫酸1000部に3〜5℃下撹拌、溶解し、濾過した。得られた硫酸溶液を氷水35000部中に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを得た。
この水ペーストにテトラヒドロフラン1500部を加え、室温下で撹拌し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行なった。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキ98部を得た。
これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン1の結晶を78部を得た。
【実施例1】
【0059】
直径30mmのアルミニウムからなる円筒ドラム上に、アルキド樹脂(ベッコライトM−6401−50大日本インキ化学工業社製)とアミノ樹脂(スーパーベッカミンG−821−60大日本インキ化学工業社製)を65:35の割合で混合し、さらに前記混合樹脂と酸化チタン(CR−EL石原産業社製)を1:3の割合とし、メチルエチルケトンで分散処理し、塗布液として、1.5μmの膜厚で形成した。
【0060】
次に、合成例1で得られたオキシチタニウムフタロシアニン結晶1の粉末10gをガラスビーズとメチルエチルケトン500mlにポリビニルブチラール樹脂(BM−1積水化学工業社製)10gを溶解した液を加え、サンドミル分散機で20時間分散し、得られた分散液をろ過してガラスビーズを取り去り、電荷発生層用塗布液を作成した。これを前記下引層上に浸漬塗工し乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0061】
次にバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(パンライトTS2050 帝人化成社製)と、電荷輸送剤として、一般式(Ia)で表わされる化合物と、酸化防止剤として2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールとを、重量比1.0:1.0:0.05で用意し、テトラヒドロフランに溶解し、電荷輸送層用塗工液を調製した。電荷発生層を形成した基体を該電荷輸送層用塗工液に浸漬塗工し、120℃で60分乾燥し膜厚25.0μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0062】
<X線回折用検体試料の作成>
実施例1で得られた感光体表面に事務用カッターで円周方向とそれに交差する円筒軸方向にそれぞれ切込みを入れ、一辺が約2cmの切れ目を形成させる。その切り目の入った部分よりピンセットを用いて感光膜を剥離する。4−メトキシ−4−メチルペンタノン15mlを50mlビーカーに入れ、その中に前記剥離膜を浸漬し、電荷輸送層を完全に溶解させた後によくかき混ぜてゲル状の微細片として溶媒中に分散させる。これをテフロン(登録商標)製メンブランフィルター(Pore size 0.2μm)で吸引ろ過し、ろ過物をPTX 10mlで洗浄する。次にろ過物が内側になるようにメンブランフィルターをシリコン無反射板に密着させ、メンブランフィルターだけを剥がしてシリコン無反射板にオキシチタニウムフタロシアニンを付着させ、それを風乾しX線回折の検体試料とした。
【0063】
<X線回折>
上記のように作成された検体試料を測定する場合は、粉末法にて測定しX線源としてCuKα(波長1.54178Å)を用い、測定条件は以下のとおりである。
X線回折装置 フリップス社製 X’Pert
測定条件 X線管球:Cu
走査範囲:4°〜35°
管電圧:45kv
管電流:40mA
ステップ角度:0.01度
計数時間:20秒
受光スリット、発散スリット:可変型
照射幅:20mm
検体試料のX線回折図を図1に示す。
図1によると、感光層から抽出されたオキシチタニウムフタロシアニンは、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを有し、かつ28.6゜にも同時にピークを有し、その強度が27.2°の強度の20%未満であり、さらに最も低角側の回折ピークとして7.3゜に回折ピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲に回折ピークを有さないものであった。
【実施例2】
【0064】
実施例1で用いた電荷輸送剤に代えて、一般式(Ib)で表わされる電荷輸送剤を用いた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例3】
【0065】
実施例1で用いた電荷輸送剤に代えて、一般式(Ic)で表わされる電荷輸送剤を用いた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例4】
【0066】
実施例1で用いた電荷輸送剤に代えて、一般式(Id)で表わされる電荷輸送剤を用いた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例5】
【0067】
実施例1で用いた電荷輸送剤に代えて、一般式(Ie)で表わされる電荷輸送剤を用いた以外は、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例6】
【0068】
実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤の2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、イオウ系酸化防止剤のジステアリル3,3´チオジプロピオネート(セミライザーTPS 住友化学社製)を用い、バインダー樹脂:電荷輸送剤:イオウ系酸化防止剤の比率を1:1:0.01に変えた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例7】
【0069】
実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤の2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、紫外線吸収剤の2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin−P Geigy社製)を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例8】
【0070】
実施例1で用いたフェノール系酸化防止剤の2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールに代えて、アミン系酸化防止剤のα,α’−(テトラベンジル)ジアミノ−P−キシレンを用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【実施例9】
【0071】
実施例1で用いた電荷輸送層の組成に、更にイオウ系酸化防止剤のジステアリル3,3´チオジプロピオネートと紫外線吸収剤の2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを加え、バインダー樹脂:電荷輸送剤:フェノール系酸化防止剤:イオウ系酸化防止剤:紫外線吸収剤の比率を1:1:0.05:0.01:0.05とした。
【0072】
(比較例1)
実施例1で用いられた電荷発生剤に代えて、図3で表わされるα型オキシチタニウムフタロシアニンを用い、他は実施例2と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0073】
(比較例2)
実施例で用いられた電荷輸送剤に代えて、一般式(A)で表わされる電荷輸送剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0074】
【化13】

【0075】
(比較例3)
実施例1で用いられた電荷輸送剤に代えて、一般式(B)で表わされる電荷輸送剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0076】
【化14】

【0077】
(比較例4)
実施例1で用いられた電荷輸送剤に代えて、一般式(C)で表わされる電荷輸送剤を用い、他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0078】
【化15】

【0079】
[評価方法]
電子写真感光体評価装置(山梨電子工業社製)を用い、実施例、比較例で作製された電子写真感光体を温度23℃、湿度50%の環境下(N/N)で、スコロトロン方式で感光体への放電電流25μAを流したときの感光体の表面電位(V)を計測する。その後、表面電位が−700Vになるように放電電流を調節し、波長780nmの半導体レーザで照射した、表面電位が1/2(−350V)に減衰したときの露光エネルギー量:半減露光エネルギー量(E1/2)を計測した。また、1.0μJ/cmの露光エネルギーを照射したときの感光体表面電位を残留電位(V)としその結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
<現像−露光間100ms測定結果>
上限は100V程度、半減露光は0.13(μJ/cm)以上で画像濃度低下が生ずる。
降下は△50V以上で画像ノイズが発生する。
【0082】
表1から明らかなように、実施例1〜9は、本発明の電荷発生剤と電荷輸送剤との組み合わせにより、初期帯電電位、残留電位、1万サイクル後の帯電電位、残留電位も大きな変化がなく、感光体特性として良好なものであった。
これに対し、比較例1は半減露光低下、比較例2〜3は、本発明の電荷発生剤と他の電荷輸送剤との組み合わせにより、1万サイクル後のV、もしくは残留電位が大きく変化し、感光体特性として満足できるものではなかった。
【0083】
光応答性:電子写真感光体評価装置(山梨電子工業社製)を用い、実施例及び比較例によって作製された電子写真感光体に対し、電子写真感光体評価装置(山梨電子工業社製)を用い、実施例及び比較例によって作製された電子写真感光体に対し、半減露光量の5倍の光量を照射し、露光から現像器に到達するまでの時間を100m秒、50m秒、30m秒と変化させたときの現像器位置での表面電位を光応答性(−V)として評価しその結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
表2から明らかなように、実施例1〜9は、露光後現像器位置に到達するまでの時間が長い場合、短い場合にかかわらず表面電位は低く、優れた感光体特性であった。これに対し比較例1〜3では、到達時間が短くなると表面電位は著しく高くなり、感光体特性として満足できるものではなかった。
【0086】
(株)リコー社製CX−411カラープリンタを用い転写電流を変動させ画像確認した。
1サイクル目にベタ黒を印字し以降のハーフトーン上に現れる残像(ゴースト)を評価。
但しプロセス内に装備されているイレース露光器は排除し評価を行なった。
(23℃、50%RH環境)
【0087】
【表3】

○…残像発生無し、△…残像発生、×…強く残像が発生
【0088】
表3から明らかなように、実施例1〜9は、残像に良好な感光体となった。
これに対し比較例2〜4は残像が発生し感光体特性として満足できるものではなかった。
【0089】
以上の評価結果をまとめると、今発明の電荷移動材と電荷発生材を組み合わせることにより耐久性に優れかつ高速対応可能で画像ノイズに優れた感光体が提供可能となった。
【符号の説明】
【0090】
11 感光体
12 帯電部材
13 電源
14 露光装置
15 現像装置
16 転写装置
17 クリーニング装置
19 定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開平3−75660号公報
【特許文献2】特開平5−6011号公報
【特許文献3】特開平11−149170号公報
【特許文献4】特開2004−279939号公報明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤と電荷輸送剤と結着樹脂とを含有する感光層を積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生剤がオキシチタニウムフタロシアニンであって、該オキシチタニウムフタロシアニンがCuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°に最大ピークを有し、かつ28.6゜にも同時にピークを有し、その強度が27.2°の強度の20%未満であり、さらに最も低角側の回折ピークとして7.3゜に回折ピークを有し、7.4°以上9.4゜未満の範囲に回折ピークを有さず、前記電荷輸送剤が一般式(I)で表わされる化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

〔式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基を表わす。〕
【請求項2】
前記電荷輸送剤が一般式(Ia)で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】

【請求項3】
前記電荷輸送剤が一般式(Ib)で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化3】

【請求項4】
前記電荷輸送剤が一般式(Ic)で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化4】

【請求項5】
前記電荷輸送剤が一般式(Id)で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化5】

【請求項6】
前記電荷輸送剤が一般式(Ie)で表わされる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化6】

【請求項7】
前記感光層にフェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記感光層にアミン系酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記感光層に硫黄系酸化防止剤を含有することを特徴とする請請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項10】
前記感光層にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の電子写真感光体。
【請求項11】
帯電、露光、現像、転写、を行なう電子写真装置であって、除電工程を有さず、かつ、請求項1乃至10のいずれかに記載の電子写真感光体を搭載することを特徴とする電子写真装置。
【請求項12】
露光から現像までに要する時間が100m秒以下であることを特徴とする請求項11に記載電子写真装置。
【請求項13】
帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段、転写手段の少なくとも一つと請求項1乃至10のいずれかに記載の電子写真感光体とをs具備することを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−88620(P2012−88620A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236648(P2010−236648)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】