説明

電子写真機器の帯電ロール用ゴム組成物及び帯電ロール

【課題】導電性弾性層における半導電性を長期間維持して帯電性能を確保すると共に、帯電ロール表面に過剰のイオン導電剤が滲み出すことによる画像ムラや画像欠陥等が発生しない電子写真機用の帯電ロール用ゴム組成物及び帯電ロールを提供する。
【解決手段】イオン導電性ゴムポリマー、BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子、及びイオン導電剤を配合してなる帯電ロール用ゴム組成物を、軸体2の外周面に押出し成形して導電性弾性層3を設けて帯電ロール1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器の帯電ロールの導電性弾性層の形成に用いられる帯電ロール用ゴム組成物及び帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器において、像坦持体面となる感光体に接触或いは近接して該感光体を帯電させるために、半導電性のゴムローラ型の帯電ロールが用いられている。この帯電ロールは、金属製芯金の外周面上に、該帯電ロール表面の電気抵抗の調整等を目的として、半導電性の弾性体からなる導電性弾性層が設けられている。帯電ロールの導電性弾性層は、自身がイオン導電性を有する半導電性ゴムポリマーにイオン導電剤を含有せしめてなるゴム組成物から形成されている(例えば、特許文献1参照)。帯電ロールの導電性弾性層は、イオン導電剤を含有していることで半導電性及び低硬度等の特性を維持することができるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−154634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導電性弾性層中のイオン導電剤は、帯電ロールに高圧が印加されることにより徐々に消費される。その結果、帯電ロールの使用時間に応じて、導電性弾性層中のイオン導電剤の含有量は減少する。近年、電子写真装置の高耐久化が進められ、帯電ロールが使用される期間も長くなっている。そのため帯電ロールにおいて、導電性弾性層中のイオン導電剤の高圧印加による消費量が増加する傾向にある。帯電ロールの使用される時間が長くなって、導電性弾性層中のイオン導電剤の含有量が減少すると、導電性弾性層の半導電性が低下する。帯電ロールにおいて、導電性弾性層の半導電性が低下すると電気抵抗が上昇し帯電性が低下する。このように電子写真装置の耐久化が進んだことで、帯電ロールの使用期間が長くなると帯電ロールの帯電性が低下し、形成される画像に画像ムラや画像欠陥等の種々の不具合が発生し易くなるという問題があった。
【0005】
帯電ロールの帯電性能を長期にわたり維持できるようにするため、導電性弾性層中のイオン導電剤の消費量増加に対し、予め導電性弾性層の組成物中のイオン導電剤の配合量を増やしておくことが考えられる。しかしながら、イオン導電剤の配合量を増やすと、過剰のイオン導電剤が導電性弾性層中に存在することになる。このような状態で帯電ロールが、高温・高湿下にさらされると、帯電ロール表面にイオン導電剤が滲み出すブリード・ブルーム現象が発生し易くなる。帯電ロール表面に滲み出たイオン導電剤が存在すると、形成された画像に画像欠陥が発生する。そのため導電性弾性層中のイオン導電剤の配合量には限界があり、イオン導電剤の配合量を単純に増加させるだけでは、帯電ロールの通電耐久性を向上させることができなかった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、導電性弾性層における半導電性を長期間維持して帯電性能を確保すると共に、帯電ロール表面に過剰のイオン導電剤が滲み出すことによる画像ムラや画像欠陥等が発生しない電子写真機用の帯電ロール用ゴム組成物及び帯電ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る帯電ロール用ゴム組成物は、電子写真機器用の帯電ロールの導電性弾性層を形成するためのゴム組成物であって、少なくとも、イオン導電性ゴムポリマー、BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子、及びイオン導電剤を配合してなることを要旨とするものである。
【0008】
本発明の帯電ロール用ゴム組成物において、前記絶縁粒子が、シリカであり、pHが7〜9であることが好ましい。また、前記絶縁粒子を、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し10〜100質量部配合してなることや、前記イオン導電剤を、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し0.01〜10質量部配合してなることが好ましい。また前記イオン導電性ゴムポリマーは、エピクロルヒドリンゴム又は/及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムであることや、エピクロルヒドリンゴム70〜100質量部とアクリロニトリル−ブタジエンゴム30〜0質量部を配合したものであることが好ましい。
【0009】
本発明の帯電ロールは、上記帯電ロール用ゴム組成物を用いて押出成形された導電性弾性層を少なくとも有することを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性弾性層を形成するためのゴム組成物が、少なくともイオン導電性ゴムポリマー、BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子、及びイオン導電剤を配合してなることにより、未解離の状態のイオン導電剤が絶縁粒子に吸着され保持される。絶縁粒子は高いBET比表面積を有するため、多量のイオン導電剤が吸着される。絶縁粒子に未解離のイオン導電剤が吸着されていると、イオン導電剤の無駄な消費が抑制される。導電性弾性層中のイオン導電剤の消費量を抑制できるので、イオン導電剤を過剰に配合しなくても、長期にわたり導電性弾性層の半導電性を維持することができ、帯電ロールの耐用期間を延ばすことができる。更にイオン導電剤の配合量を増やす必要がないので、過剰のイオン導電剤が帯電ロールの表面にブリード・ブルームせず、画像ムラや画像欠陥等の不具合が生じない。その結果、帯電ロールを組み込んだ電子写真装置において、帯電ロールの電気抵抗を長期間上昇させず、長期にわたり良好な画像形成を行うことができ、電子写真装置の高耐久化に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本実施形態に係る帯電ロール用ゴム組成物及び帯電ロールについて詳細に説明する。図1は本発明の帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。本発明の帯電ロールは、例えば図1に示すように、軸体2の外周に沿って導電性弾性層3が形成され、さらに該導電性弾性層3の外周に沿って表層4が形成されている。
【0012】
図2は本発明の帯電ロールの他の例を示す周方向断面図である。図2に示す帯電ロール1は、軸体2の外周に沿ってベース層5が形成され、該ベース層5の外周に沿って導電性弾性層3が形成され、さらに該導電性弾性層3の外周に沿って表層4が形成されている。このように本発明の帯電ロールは、少なくとも導電性弾性層3を有していれば、その他の層を設けて構成してもよい。
【0013】
軸体2は、アルミニウム、ステンレスなどの金属製の中実体よりなる芯金、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体、又はこれらにめっきが施された導電性シャフトが用いられる。また必要に応じ、軸体2表面に接着剤、プライマーなどを塗布してもよい。上記接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行ってもよい。
【0014】
ベース層5は、非発泡体(ソリッド状)又は発泡体(スポンジ状)のいずれの形態でも良い。またベース層5の形成材料は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、などが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合されていても良い。
【0015】
また、ベース層5には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤を、上記材料中に適宜添加することができる。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加することができる。
【0016】
なお、軸体2の外周にベース層5を形成するには、軸体2の表面に上記のベース層5を構成する各成分を配合したベース層組成物を押出成形する方法や、軸体2をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、ベース層組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する方法等を用いることができる。
【0017】
導電性弾性層3は、感光体等の被帯電体に対し、直接接触或いは表層4を介して接触して帯電させるための抵抗調整、及びロール自体に柔軟性を付与することを目的として設けられている。導電性弾性層3は、非発泡体(ソリッド状)又は発泡体(スポンジ状)により構成される。導電性弾性層3の厚みは、特に限定されないが、通常、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは1〜5mmに形成される。導電性弾性層3は、特定の組成からなる帯電ロール用ゴム組成物を用いて軸体2の外周に押出成形されて形成されている。以下、本発明の帯電ロール用ゴム組成物について説明する。
【0018】
導電性弾性層3の形成に用いられる帯電ロール用ゴム組成物は、少なくともイオン導電性ゴムポリマー、BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子、及びイオン導電剤を含むものである。
【0019】
イオン導電性ゴムポリマーは、イオン導電性を有するゴムポリマーが用いられる。具体的には、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体(ECO)、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GCO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GECO)等のエピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは混合して使用してもよい。
【0020】
イオン導電性ゴムポリマーは、エピクロルヒドリンゴムとNBRの混合ゴムの場合、エピクロルヒドリンゴム70〜100質量部とNBR30〜0質量部を配合したものであるのが、十分なイオン導電性が得られることから好ましい。
【0021】
BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子としては、未解離の状態のイオン導電剤を吸着して保持することができる比表面積の大きな絶縁性の無機粒子を用いることができる。このような絶縁粒子としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等が挙げられる。絶縁粒子としては、シリカが好ましく、中でも加工性に優れ安価であることから、湿式法シリカが好ましい。
【0022】
帯電ロール用ゴム組成物において、BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子を配合することにより、帯電ロールの通電耐久性が向上するのは以下の理由によると考えられる。BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子は、未解離の状態のイオン導電剤を吸着して保持する。絶縁粒子は、BET比表面積が200m/g以上といった、高い比表面積を有しており、未解離のイオン導電剤を多量吸着することができる。帯電ロールに通電すると、イオン導電性ゴム内のイオン導電剤が消費される。イオン導電性ゴム内のイオン導電剤の濃度が低下すると、絶縁粒子に吸着されている未解離のイオン導電剤がイオン導電性ゴム内に放出される。このとき未解離のイオン導電剤が絶縁粒子に吸着されていると、イオン導電剤の無駄な消費が抑制され、イオン導電剤が短期間に消費されることを防止できる。イオン導電剤の消費量を抑制することができれば、イオン導電剤の配合量を増やさずに、導電性弾性層3に対するイオン導電剤による導電性付与効果が得られる期間を長くすることができる。その結果、帯電ロールの通電耐久性が向上し、帯電ロールの耐用期間が延びる。
【0023】
これに対し絶縁粒子のBET比表面積が200m/g未満では、絶縁粒子が未解離のイオン導電剤を十分吸着することができず、帯電ロールの通電時に未解離のイオン導電剤が短時間に消費されてしまい、導電性弾性層3の導電性を維持できる期間が短くなり、帯電ロールの通電耐久性を向上させることができない。
【0024】
本発明において用いられる絶縁粒子は、BET比表面積の上限が300m/g以下であることが好ましい。絶縁粒子のBET比表面積が300m/gを超えると、帯電ロール用ゴム組成物を用いて導電性弾性層3を押出し成形する際に、押出し圧力が大きくなり押出し性が低下して、形成された導電性弾性層3の表面外観が不良となり易く、更に導電性弾性層自体が硬くなる虞がある。これに対し、絶縁粒子のBET比表面積が300m/g以下であれば、押出し性が良く表面の外観が良好であり、導電性弾性層が硬くなりすぎる虞もなく、導電性弾性層3を確実に形成することができる。更に好ましい絶縁粒子のBET比表面積は、上記と同じ理由で更に有利な範囲として、220〜260m/gが望ましい。
【0025】
本発明における絶縁粒子のBET比表面積は、JIS−K−6217−1997の「ゴム用カーボンブラックの基本性能試験方法」における、「7.窒素吸着比表面積」の「D法:流動式比表面積自動測定装置2300型を用いる方法」に準じて、測定されたものである。
【0026】
帯電ロール用ゴム組成物中のBET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子の配合量は、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して10〜100質量部の範囲で配合することが好ましい。絶縁粒子の配合量が10質量部未満の場合には、帯電ロールの電気抵抗の増加を効果的に抑制できない虞がある。また絶縁粒子の配合量が100質量部を超える場合は、成型時の混練性が著しく低下する虞がある。更に好ましいBET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子の配合量は、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対して30〜60質量部の範囲である。
【0027】
BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子は、pHが7〜9であることが好ましい。絶縁粒子のpHが前記範囲内であると、帯電ロールの電気抵抗の上昇を更に良好に抑制することができる。より好ましい絶縁粒子のpHは、硫黄加硫を阻害しにくいことから、8〜9の範囲である。絶縁粒子のpH測定方法は、調整水(pH6.8〜7.0)100mlに、試料(絶縁粒子)4gを加えて十分に攪拌して分散させた後、pHメータを用いて測定した場合の値である。
【0028】
イオン導電剤は、例えばテトラブチルアンモニウムクロライド、トリオクチルオクタデシルアンモニウムパークロレート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、過塩素酸リチウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩等が用いられる。
【0029】
帯電ロール用ゴム組成物中のイオン導電剤の配合量は、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し、0.01〜10質量部が好ましい。イオン導電剤の配合量が0.01質量部未満では導電性弾性層3の電気抵抗を下げることができない虞があり、また、イオン導電剤の配合量が10質量部を超えると、形成された導電性弾性層3からイオン導電剤がブリードする虞がある。更に好ましいイオン導電剤の配合量は、0.1〜1.0質量部である。
【0030】
帯電ロール用ゴム組成物には、イオン導電性ゴムを加硫させるための公知の加硫剤や加硫促進剤が配合される。帯電ロール用ゴム組成物には、必要に応じ、亜鉛華やステアリン酸等の加硫助剤やカップリング剤等の各種助剤を添加してもよい。
【0031】
軸体2の外周に導電性弾性層3を形成するには、帯電ロール用ゴム組成物をチューブ状に押出成形する方法や、軸体2の表面(外周面上)やベース層5の表面に、直接帯電ロール用ゴム組成物を押出成形する方法等が用いられる。上記押出成形方法は、具体的には、クロスヘッド押出装置を用いて帯電ロール用ゴム組成物を押出し、その後、加硫を行う。押出しは連続押出しでもバッチ押出しでもよい。加硫方法は、通常、オーブン加硫が用いられる。加硫は、通常、120〜180℃程度で、30〜120分程度行うことができる。
【0032】
また導電性弾性層3の形成は、軸体2(或いはベース層5を形成した軸体2)をロール成形用金型の中空部に同軸的に設置し、帯電ロール用ゴム組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型する方法を用いてもよい。
【0033】
帯電ロール1において表層4は、帯電ロール1の最表面に位置し、表面保護層として設けられる。表層4の厚みは、通常、3〜20μm程度に形成される。表層4は、ポリマーに、カーボンブラックや導電性金属酸化物等の導電剤を配合してなる表層組成物を、導電性弾性層3の外周に沿ってコーティングし、硬化させることで形成されている。表層組成物は、形成された表層4の体積抵抗値が1×10〜1×1013になるように構成される。
【0034】
表層組成物に用いられるポリマーとしては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴムなどのゴム、これら樹脂やゴムをシリコーン、フッ素などで変性した変性物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0035】
表層組成物中には、導電剤(カーボンブラックなどの電子系導電剤、及び/又は、第4級アンモニウム塩などのイオン系導電剤)、離型剤、硬化剤などの添加剤を1種又は2種以上配合してもよい。
【0036】
表層組成物のコーティング方法としては、例えば、ロールコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
実施例1〜4、比較例1、2
先ず、表1に示すBET比表面積及びpHを有するシリカを用いて、帯電ロール用ゴム組成物を調整し、該帯電ロール用ゴム組成物を内径12mm、外径14mmのチューブ状に押出成形し、180℃で60分加熱して導電性弾性層を予め形成した。次いで、直径6mm、長さ260mmのステンレス製(SUS304)芯金と、上記の予め形成した導電性弾性層を金型にセットし、芯金と弾性層の空隙部にベース層組成物(ポリノルボルネンゴム)を注型した後、金型に蓋をし、150℃で60分間加熱してベース層組成物を硬化させ、脱型後、導電性弾性層の表面にフッ素系の表層組成物をコートして帯電ロールを得た。得られた帯電ロールの通電耐久性試験を行った。その結果を表1に示す。なお、実施例1〜4及び比較例1、2の帯電ロールは、導電性弾性層の成形の際の押出し作業性及び外観は何れも良好であった。
【0038】
[帯電ロール用ゴム組成物の調製]
主成分としてエピクロルヒドリンゴム(日本ゼオン(株)製、ハイドリンT3102)100質量部と、酸化亜鉛5質量部と受酸剤(協和化学工業(株)製、DHT4A)、ステアリン酸(花王(株)製、ルーナックS30)0.5質量部とイオン導電剤(テトラブチルアンモニウムクロライド)1質量部と、表1に示すBET比表面積及びpHを有するシリカ50質量部と、架橋促進剤(ジベンゾチアゾールジスルフィド1.5重量部と、架橋促進剤(テトラメチルチウラムモノサルファイド)0.5質量部と、架橋剤(イオウ)1.05質量部とを、ニーダーにて混練することにより、帯電ロール用組成物を調製した。
【0039】
[表層組成物の調製]
アクリルフッ素樹脂(エルフ・アトケム・ジャパン(株)製、カイナーSL)100質量部と、グラフトカーボン30重量部と、MEK200重量部を配合し、サンドミルを用いて分散処理し、表層組成物を調製した。
【0040】
[通電耐久性試験方法]
帯電ロールの通電耐久性試験方法は以下の通りである。温度15℃、湿度10%の低温低湿環境下、金属ドラム上に帯電ロールを載せ、帯電ロールに片端500gの荷重を載せ、φ30の金属ドラムを30rpmにて回転させ、帯電ロールが金属ドラムと摺擦回転している状態で直流電流が1000μAになるような印加電圧を24時間通電する。この電圧印加前と後に、帯電ロールの体積固有抵抗を測定する。通常、電圧印加後は、電圧印加前と比較して体積固有抵抗が大きくなる。電圧印加前の電気抵抗に対する電圧印加後の電気抵抗の変化桁数を抵抗変動桁数として表す。抵抗変動桁数の値が小さい程、通電耐久性が良好である。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、BET比表面積が200m/g以上のシリカを配合した実施例1〜4は、BET比表面積が200m/g未満のシリカを配合した比較例1及び2と比較して、いずれも抵抗変動桁数が低く、低温低湿環境で電圧を印加した場合の帯電ロールの電気抵抗を低く抑制することができた。このように本発明によれば、帯電ロールの耐用期間を延ばし、帯電ロールの通電耐久性を向上せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の帯電ロールの一例を示す周方向断面図である。
【図2】本発明の帯電ロールの他の例を示す周方向断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 帯電ロール
2 軸体
3 導電性弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真機器の帯電ロールの導電性弾性層を形成するためのゴム組成物であって、
少なくとも、イオン導電性ゴムポリマー、BET比表面積が200m/g以上の絶縁粒子、及びイオン導電剤を配合してなることを特徴とする電子写真機器の帯電ロール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記絶縁粒子が、シリカであり、pHが7〜9であることを特徴とする請求項1記載の電子写真機器の帯電ロール用ゴム組成物。
【請求項3】
前記絶縁粒子を、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し10〜100質量部配合してなることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真機器の帯電ロール用ゴム組成物。
【請求項4】
前記イオン導電剤を、イオン導電性ゴムポリマー100質量部に対し0.01〜10質量部配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の電子写真機器の帯電ロール用ゴム組成物。
【請求項5】
前記イオン導電性ゴムポリマーが、エピクロルヒドリンゴム又は/及びアクリロニトリル−ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の電子写真機器の帯電ロール用ゴム組成物。
【請求項6】
前記イオン導電性ゴムポリマーが、エピクロルヒドリンゴム70〜100質量部とアクリロニトリル−ブタジエンゴム30〜0質量部を配合したものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の電子写真機器の帯電ロール用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の帯電ロール用ゴム組成物を用いて押出成形された導電性弾性層を少なくとも有することを特徴とする電子写真機器の帯電ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−86645(P2009−86645A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200312(P2008−200312)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】