説明

電子写真機器用導電性ロール

【課題】低硬度かつ電気抵抗が均一で、優れた画像を得ることができる電子写真機器用導電性ロールの提供をその目的とする。
【解決手段】
軸体1の外周面にベース層2が形成され、さらにその外周面に表層3が形成されてなり、上記表層2が、下記の(A)と、(B)および(C)の少なくとも一方とを含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなる電子写真機器用導電性ロールである。
(A)オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物。
(B)硬化剤。
(C)重合開始剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性ロールに関するものであり、詳しくは、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器の帯電ロールや現像ロール等として用いられる電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、接触帯電方式の電子写真複写機における画像形成は、次のようにして行われる。すなわち、まず、感光ドラムに帯電ロールを圧接して感光ドラム表面を一様に帯電させ、光学系を介して感光ドラム表面に原稿像を投射し、光が投射された部分の帯電を打ち消すことにより、静電潜像を形成する。つぎに、現像ロール表面に均一にトナーを担持させ、このトナーを上記静電潜像に付着させてトナー像を形成した後、このトナー像を複写紙に転写する。このようにして、複写画像を得ることができる。
【0003】
上記帯電ロールや現像ロール等の電子写真機器用導電性ロールは、一般に、軸体となる芯金の外周にベース層(基層)が形成され、その外周面に表層が形成された2層構造、もしくはベース層(基層)の外周面に中間層が形成され、さらにその外周面に表層が形成された3層構造のものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特許第3444391号公報
【特許文献2】特許第3346970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電子写真機器用導電性ロールは、均一なトナーの付着や帯電性の付与が要求されており、電気抵抗の均一性が要求される。しかしながら、従来の導電性ロールは、中間層や表層の組成が不均一であり、電気抵抗のばらつきが大きいという難点がある。
【0005】
また、上記電子写真機器用導電性ロールは、感光ドラム等の各部材と圧接して使用される。これにより、トナーや各部材とのストレスが大きくなると、トナー融着が発生したり、感光ドラムとの均一な接触が得られず帯電が不均一になったりし、画像に不具合が生じる等のトラブルが発生しやすい。そのため、ロールの低硬度化が要求される。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低硬度かつ電気抵抗が均一で、優れた画像を得ることができる電子写真機器用導電性ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電子写真機器用導電性ロールは、軸体の外周面にベース層が形成され、その外周に、直接または他の層を介して表層が形成されてなる電子写真機器用導電性ロールであって、上記ベース層を除く少なくとも一層が、下記の(A)と、(B)および(C)の少なくとも一方とを含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなるという構成をとる。
(A)オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物。
(B)硬化剤。
(C)重合開始剤。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、電子写真機器用導電性ロールのベース層を除く少なくとも一層(例えば、中間層、表層)を、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤(熱硬化剤)および重合開始剤(熱によって酸を発生し、その酸がエポキシ化合物のグリシジル環を開環し、硬化触媒として作用するもの)の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体により構成すると、所期の目的が達成できること見いだし、本発明に到達した。すなわち、上記エポキシ組成物は、導電性を有するとともに、液状で比較的低粘度であり、例えば導電剤を添加した場合でも効率よく分散する。そのため、上記エポキシ組成物は、組成の均一化が容易であり、電気抵抗が均一となるとともに、低粘度であるため、加工性にも優れる。しかも、上記組成物中のエポキシ化合物が、柔軟なオキシアルキレン構造を分子中に有するため、導電性ロールが低硬度となる。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の電子写真機器用導電性ロールは、ベース層を除く少なくとも一層(例えば、中間層、表層)が、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなるものである。そのため、本発明の電子写真機器用導電性ロールは、低硬度かつ電気抵抗が均一で、優れた画像を得ることができ、耐久試験後においても優れた画像を得ることができる。また、上記エポキシ組成物の熱硬化体からなる層(例えば、中間層や表層)は、ゴム層を低硬度化する際に添加する可塑剤が不要であるため、可塑剤のブリードによる汚染も生じない。
【0010】
そして、上記エポキシ組成物が、イオン導電剤を含有すると、電気抵抗の調整が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の電子写真機器用導電性ロール(以下、「導電性ロール」と略す)としては、例えば、図1に示すように、軸体1の外周面に沿ってベース層2が形成され、さらにその外周面に表層3が形成されて構成された2層構造のものがあげられる。なお、本発明の導電性ロールは、2層構造のものに限定されず、ベース層1の外周面に、少なくとも一つの中間層を介して、表層3が形成された3層以上の多層構造であっても差し支えない。
【0013】
本発明においては、上記ベース層2を除く少なくとも一層(例えば、表層3,中間層)が、下記の(A)と、(B)および(C)の少なくとも一方とを含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなるのであって、これが本発明の最大の特徴である。
(A)オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物。
(B)硬化剤。
(C)重合開始剤。
【0014】
本発明の導電性ロールに用いる軸体1としては、例えば、金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体等があげられる。そして、その材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等があげられる。また、必要に応じ軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布しても差し支えない。なお、接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化してもよい。
【0015】
つぎに、上記軸体1の外周面に形成されるベース層2の形成材料(ベース層用材料)としては、例えば、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、低硬度、低へたりの点で、シリコーンゴムが好ましい。
【0016】
なお、上記ベース層用材料には、上記シリコーンゴム等に加えて、カーボンブラック等の導電剤等を必要に応じて分散しても差し支えない。
【0017】
つぎに、上記ベース層2の外周面に形成される表層3の形成材料(表層用材料)について説明する。上記表層3が、先に述べた、エポキシ組成物の熱硬化体からなる場合は、上記表層用材料としては、下記の(A)と、(B)および(C)の少なくとも一方とを含有するエポキシ組成物が用いられる。
(A)オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物。
(B)硬化剤。
(C)重合開始剤。
【0018】
上記オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物(A成分)としては、例えば、メタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7−ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1,11−ウンデカンジオールジグリシジルエーテル、1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、1,13−トリデカンジオールジグリシジルエーテル、1,14−テトラデカンジオールジグリシジルエーテル、1,15−ペンタデカンジオールジグリシジルエーテル、1,16−ヘキサデカンジオールジグリシジルエーテル、ポリモノメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオクタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリノナメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリウンデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリドデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリトリデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリペンタデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘプタデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、C12アルキルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル、エチレングリコール−エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、グリセリン−エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、0℃〜150℃の範囲内で液状状態であるエポキシ化合物が、低粘度で加工性等に優れるため、好ましい。
【0019】
また、上記特定のエポキシ化合物(A成分)は、数平均分子量(Mn)が130〜6000の範囲が好ましく、特に好ましくは400〜3000の範囲である。すなわち、A成分の数平均分子量(Mn)が小さすぎると、ロールの低硬度化が困難となる傾向がみられ、逆にA成分の数平均分子量(Mn)が大きすぎると、常温で高粘度もしくはワックス状態になるため、加工性が悪くなるおそれがあるからである。
【0020】
つぎに、上記特定のエポキシ化合物(A成分)とともに用いられる硬化剤(B成分)としては、熱硬化剤が好ましく、例えば、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類、イミダゾール類、ブレンステッド酸塩類、アミンのBF3 錯体化合物、有機酸ヒドラジッド類、ジシアンジアミド類、ポリカルボン酸類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0021】
上記アミン類としては、例えば、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5,5]ウンデカン等の脂肪族および脂環族アミン類、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−ウンデセン−7、1,5−アザビシクロ−(4,3,0)−ノネン−7等の第三級アミン類、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、メタキシレンジアミン、エチレンジアミンおよびその塩類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0022】
上記酸無水物類としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の環状脂肪族酸無水物類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0023】
上記多価フェノ−ル類としては、例えば、カテコ−ル、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノ−ルF、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルS、ビフェノ−ル、フェノ−ルノボラック類、クレゾ−ルノボラック類、ビスフェノ−ルA等の2価フェノ−ルのノボラック化物類、トリスヒドロキシフェニルメタン類、アラルキルポリフェノ−ル類、ジシクロペンタジエンポリフェノ−ル類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0024】
上記イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等があげられる。また、上記ブレンステッド酸塩類としては、例えば、脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩等があげられる。上記有機酸ヒドラジッド類としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジッド、フタル酸ジヒドラジッド等があげられる。また、上記ポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシル基含有ポリエステル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0025】
また、上記硬化剤(B成分)の配合量は、前記特定のエポキシ化合物(A成分)100重量部(以下、「部」と略す)に対して1〜200部の範囲が好ましく、特に好ましくは、2〜150部の範囲である。すなわち、B成分の配合量が少なすぎると、各層の熱硬化が充分になされないおそれがあり、逆にB成分の配合量が多すぎると、B成分の未反応分がブリードするおそれがあるからである。
【0026】
つぎに、前記特定のエポキシ化合物(A成分)とともに用いられる重合開始剤(C成分)としては、熱によって酸を発生し、その酸が前記特定のエポキシ化合物(A成分)のグリシジル環を開環し、硬化触媒として作用するものが好ましく、例えば、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、カチオン重合開始剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0027】
上記カチオン重合開始剤としては、例えば、六フッ化リン化合物、六フッ化アンチモン化合物、三フッ化ホウ素エーテル錯化合物、三フッ化ホウ素のようなカチオン系またはプロトン酸触媒等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0028】
また、上記重合開始剤(C成分)の配合量は、上記特定のエポキシ化合物(A成分)100部に対して0.01〜20部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜10部の範囲である。すなわち、C成分の配合量が少なすぎると、各層の熱硬化が充分になされないおそれがあり、逆にC成分の配合量が多すぎると、C成分の未反応分がブリードするおそれがあるからである。
【0029】
なお、上記エポキシ組成物には、前記A〜C成分とともに、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、イオン導電剤(第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の導電剤を、必要に応じて適宜に添加しても差し支えない。これら導電剤のなかでも、電気抵抗の均一化の点で、イオン導電剤が好ましい。また、上記エポキシ組成物には、第三級アミン類(ベンジルジメチルアミン等)等の硬化促進剤、充填剤、着色剤等を、必要に応じて適宜に添加しても差し支えない。
【0030】
上記イオン導電剤の配合量は、上記特定のエポキシ化合物(A成分)100部に対して0.01〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜5部の範囲である。
【0031】
上記エポキシ組成物は、前記A〜C成分とともに、イオン導電剤等を必要に応じて適宜に配合し、これら各成分を、攪拌羽根を有する攪拌機等により混合することにより調製することができる。
【0032】
本発明の導電性ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0033】
すなわち、まず、前記シリコーンゴム等に加えて、カーボンブラック等の導電剤等を必要に応じて分散することにより、ベース層用材料を調製する。また、上記A〜C成分とともに、イオン導電剤等を必要に応じて適宜に配合し、これら各成分を、攪拌羽根を有する攪拌機等により混合することにより、表層用材料(エポキシ組成物)を調製する。
【0034】
つぎに、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体1をセットし、上記円筒状金型と軸体1との空隙部に、上記ベース層用材料を注型した後、金型に蓋をし、加熱(50〜180℃×1〜300分)して、ベース層用材料を架橋させる。その後、上記円筒状金型から脱型することにより、軸体1の外周面にベース層2が形成されてなるベースロールを得る。なお、必要に応じて、ベース層2の外周面に、コロナ放電等による表面処理を施しても差し支えない。つぎに、上記ベース層2の外周面に、上記表層用材料(コーティング液)を塗工する。この塗工法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等があげられる。そして、上記塗工後、乾燥および加熱(120〜200℃で20〜90分)を行う。これにより、軸体1の外周面に沿ってベース層2が形成され、さらにその外周面に表層3が形成されてなる2層構造の導電性ロール(図1参照)を製造することができる。
【0035】
なお、本発明の導電性ロールは、前記図1に示した2層構造のものに限定されるものでなく、例えば、ベース層2と表層3との間に、1層もしくは2層以上の中間層を介在させても差し支えない。ただし、本発明においては、ベース層2を除く少なくとも一層(例えば、表層3、中間層)が、前記A成分と、B成分およびC成分の少なくとも一方とを含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなることが必要である。
【0036】
つぎに、上記ベース層2と表層3との間に、中間層が形成されてなる3層構造であって、上記中間層のみが、前記エポキシ組成物の熱硬化体からなる、本発明の導電性ロールについて説明する。
【0037】
上記ベース層用材料としては、前述と同様のものが用いられる。また、上記中間層を形成する中間層用材料としては、前記表層用材料と同様のエポキシ組成物を用いることができる。
【0038】
上記表層用材料としては、例えば、N−メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。また、導電性付与のため、必要により、カーボンブラック、金属酸化物、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩等の導電剤等を適宜に添加してもよい。また、上記表層用材料は、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤に溶解等させ、コーティング液として使用することが好ましい。
【0039】
ここで、上記ベース層2と表層3との間に、中間層が形成されてなる3層構造であって、上記中間層のみが、前記エポキシ組成物の熱硬化体からなる、本発明の導電性ロールの製法について説明する。
【0040】
すなわち、前述と同様にして、ベース層用材料を調製する。また、前記A〜C成分等の各成分を、攪拌羽根を有する攪拌機等により混合することにより、中間層用材料(エポキシ組成物)を調製する。さらに、N−メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド系樹脂と、導電剤とを、有機溶剤に溶解し、攪拌羽根を有する攪拌機によって攪拌することにより、表層用材料(コーティング液)を調製する。
【0041】
つぎに、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体1をセットし、上記円筒状金型と軸体1との空隙部に、上記ベース層用材料を注型した後、金型に蓋をし、加熱(50〜180℃×1〜300分)して、ベース層用材料を架橋させる。その後、上記円筒状金型から脱型することにより、軸体1の外周面にベース層2が形成されてなるベースロールを得る。なお、必要に応じて、ベース層2の外周面に、コロナ放電等による表面処理を施しても差し支えない。つぎに、上記ベース層2の表面に、上記中間層用材料(エポキシ組成物)をロールコート法等により塗工し、乾燥および加熱硬化(120〜200℃×20〜90分)を行うことにより、中間層を形成する。つぎに、上記表層用材料(コーティング液)中に、上記ロールを浸漬して引き上げた後(ディッピング法)、オーブン加熱硬化を行うことにより、表層を形成する。このようにして、ベース層2の外周面に中間層が形成され、さらにその外周面に表層3が形成されてなる、3層構造の導電性ロールを作製することができる。
【0042】
本発明の導電性ロールにおいて、上記ベース層2の厚みは、通常、0.5〜10mmの範囲であり、好ましくは1〜6mmの範囲である。また、上記中間層の厚みは、10〜1000μmの範囲が好ましく、特に好ましくは20〜800μmの範囲である。また、上記表層3の厚みは、3〜100μmの範囲が好ましく、特に好ましくは5〜50μmの範囲である。
【0043】
本発明の導電性ロールの硬度(MD−1硬度)は、15〜55の範囲が好ましく、特に好ましくは15〜50の範囲である。なお、上記硬度(MD−1硬度)は、JIS K 6253に記載のタイプAデュロメータに準ずる硬度であり、例えば、マイクロゴム硬度計MD−1型(高分子計器社製)を用いて測定することができる。
【0044】
また、本発明の導電性ロールは、ロール抵抗が108 Ω・cm以下となるよう設定することが好ましい。上記ロール抵抗は、例えば、導電性ロールを金属ドラムに押し付け、その状態で、金属ドラムを回転させながら、電流を連続印加させて測定することができる。
【0045】
本発明の導電性ロールは、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器の帯電ロールや現像ロール等として用いられる。
【実施例】
【0046】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0048】
〔エポキシ化合物A(A成分)〕
ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(数平均分子量:950)(四日市合成社製、エポゴーセーPT)
〔エポキシ化合物B(A成分)〕
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(数平均分子量:718)(ナガセケムテックス社製、EX−931)
〔エポキシ化合物C(A成分)〕
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(数平均分子量:230)(ナガセケムテックス社製、デナコール−EX−212)
【0049】
〔エポキシ化合物a〕
ビスフェノールA型エポキシ化合物(DIC社製、エピクロン840)
〔エポキシ化合物b〕
ポリブチレンジグリシジルエーテル(ダイセル化学工業社製、エポリードPB3600)
【0050】
〔重合開始剤(C成分)〕
芳香族スルホニウム塩(三新化学社製、サンエイドSI60L)
【0051】
〔硬化剤A(アミン系硬化剤)(B成分)〕
エチレンジアミン〔和光純薬工業社製、エチレンジアミン(試薬)〕
〔硬化剤B(酸無水物)(B成分)〕
3or4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成工業社製、HN−5500)
【0052】
〔イオン導電剤(第四級アンモニウム塩)
テトラブチルアンモニウムクロライド(東京化成工業社製、テトラブチルアンモニウムクロリド)
【0053】
つぎに、上記各材料を用いて、以下のようにしてエポキシ組成物を調製した。
【0054】
〔エポキシ組成物A〜J,a〜hの調製〕
下記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらを攪拌羽根を有する攪拌機により混合して、エポキシ組成物を調製した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
つぎに、上記エポキシ組成物を用いて、導電性ロールを作製した。
【0058】
〔実施例1〕
(ベース層用材料の調製)
シリコーンゴム(信越化学工業社製、X34−270A/B)100部に、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS100)10部を分散させて、ベース層用材料を調製した。
【0059】
(表層用材料の準備)
先に調製したエポキシ組成物A(表1参照)を用いた。
【0060】
(導電性ロールの作製)
軸体である芯金(直径6mm、SUS304製)をセットしたロール成形用金型内に、上記ベース層用材料を注型し、150℃×45分のオーブン加熱硬化を行い、ベース層を形成した。その後、ベースロールを脱型し、その表面上に、コロナ放電(0.3kW×20秒間)による表面処理を施した。その後、この表面処理面上に、上記表層用材料をロールコート法により塗工し、これを120℃×60分のオーブン加熱硬化を行い、表層を形成した。このようにして、ベース層(厚み2mm)の外周面に表層(厚み20μm)が形成されてなる、2層構造の導電性ロールを作製した。
【0061】
〔実施例2〜5、比較例1〜4〕
実施例1の表層用材料であるエポキシ組成物Aに代えて、下記の表3に示す各エポキシ組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、導電性ロールを作製した。このようにして、ベース層(厚み2mm)の外周面に表層(厚み20μm)が形成されてなる、2層構造の導電性ロールを得た。
【0062】
【表3】

【0063】
〔実施例6〕
(ベース層用材料の調製)
実施例1のベース層用材料と同様にして、ベース層用材料を調製した。
【0064】
(中間層用材料の準備)
先に調製したエポキシ組成物F(表2参照)を用いた。
【0065】
(表層用材料の調製)
N−メトキシメチル化ナイロン100部と、導電性酸化スズ60部と、クエン酸1部とを、メタノール/トルエン混合溶液〔メタノール:トルエン=7:3(重量比)〕500部に溶解し、攪拌羽根を有する攪拌機によって攪拌することにより、表層用材料(コーティング液)を調製した。
【0066】
(導電性ロールの作製)
実施例1と同様にして、軸体の外周面にベース層が形成されてなるベースロールを得た。つぎに、その表面上に、コロナ放電(0.3kW×20秒間)による表面処理を施した。その後、この表面処理面上に、上記中間層用材料をロールコート法により塗工し、これを120℃×60分のオーブン加熱硬化を行い、電気抵抗調整層となる中間層を形成した。つぎに、上記表層用材料(コーティング液)中に、上記ロールを浸漬して引き上げた後(ディッピング法)、185℃×60分のオーブン加熱硬化を行い、表層を形成した。このようにして、ベース層(厚み2mm)の外周面に中間層(厚み0.5mm)が形成され、さらにその外周面に表層(厚み20μm)が形成されてなる、3層構造の導電性ロールを作製した。
【0067】
〔実施例7〜10、比較例5〜8〕
実施例6の中間層用材料であるエポキシ組成物Fに代えて、下記の表4に示す各エポキシ組成物を用いる以外は、実施例6と同様にして、導電性ロールを作製した。このようにして、ベース層(厚み2mm)の外周面に中間層(厚み0.5mm)が形成され、さらにその外周面に表層(厚み20μm)が形成されてなる、3層構造の導電性ロールを得た。
【0068】
【表4】

【0069】
このようにして得られた実施例および比較例の導電性ロールについて、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記表3および表4に併せて示した。
【0070】
〔硬度(MD−1硬度)〕
各導電性ロールのロール表面の硬度を測定した。硬度はJIS K 6253に記載のタイプAデュロメータに準ずる硬度(MD−1硬度)を、マイクロゴム硬度計MD−1型(高分子計器社製)を用いて測定した。
【0071】
〔ロール抵抗〕
各導電性ロールを、金属ドラムに押し付け(ロールの片端に対し4.9Nの荷重となるよう、ロール両端に荷重をかけて押し付け)、その状態で、金属ドラムを30rpmで回転させながら(導電性ロールは連れ回りする)、DC200μAの定電流を連続印加させたときのロール抵抗(Ω・cm)を測定した。なお、この値が108 Ω・cm未満であれば、導電性に優れていることを示す。
【0072】
〔帯電ロールへたり評価〕
各導電性ロールを、片端500g加重にて、直径30mmの金属棒に押し付け、40℃×95%RH環境に1週間放置した。その後、この導電性ロールを、プリンター(リコー社製、CX3000)に帯電ロールとして組み込み、画だしを行った。へたり評価は、圧接癖が画像に発生しないものを○、わずかに発生するものを△、はっきりと発生するものを×とした。
【0073】
〔帯電ロール画像評価〕
各導電性ロールを、帯電ロールとしてプリンター(富士ゼロックス社製、DocuPrint C1616 )にセットし、文字チャートの画出しを1万(10K)枚行った。評価は、初期および耐久試験後(上記1万枚後)の画像を目視で確認し、画像にむらの無いものを○、むらがわずかに見られるものを△、むらが多いものを×とした。
【0074】
〔現像ロール画像評価〕
各導電性ロールを、現像ロールとしてプリンター(キャノン社製、LBP−2510)にセットし、32.5℃×80%の環境下、印字率5%で、文字チャートの画出しを1万(10K)枚行った。評価は、耐久試験後(上記1万枚後)の画像にかぶりが見られないものを○、かぶりがわずかに見られるものを△、かぶりが顕著に見られるものを×とした。
【0075】
上記表3および表4の結果より、実施例品は、低硬度、低抵抗で、帯電ロールへたり評価、帯電ロール画像評価、現像ロール画像評価がいずれも優れていた。なお、前記表1に示したエポキシ組成物B〜Eにおいて、硬化剤の配合量を1部および200部に変更したエポキシ組成物を用いた場合においても、エポキシ組成物B〜Eを用いた実施品と同様の優れた効果が得られた。同様に、前記表1に示したエポキシ組成物Aにおいて、重合開始剤の配合量を0.01部および20部に変更したエポキシ組成物を用いた場合においても、エポキシ組成物Aを用いた実施品と同様の優れた効果が得られた。
【0076】
これに対し、比較例品は、オキシアルキレン構造を有しないエポキシ化合物を主成分とするエポキシ組成物を用いているため、高硬度、高抵抗で、帯電ロールへたり評価、帯電ロール画像評価、現像ロール画像評価がいずれも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の導電性ロールは、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器の帯電ロールや現像ロール等として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の導電性ロールの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 軸体
2 ベース層
3 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面にベース層が形成され、その外周に、直接または他の層を介して表層が形成されてなる電子写真機器用導電性ロールであって、上記ベース層を除く少なくとも一層が、下記の(A)と、(B)および(C)の少なくとも一方とを含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなることを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
(A)オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物。
(B)硬化剤。
(C)重合開始剤。
【請求項2】
軸体の外周面にベース層が形成され、その外周面に中間層が形成され、さらにその外周面に表層が形成され、上記中間層および表層の少なくとも一方が、上記エポキシ組成物の熱硬化体からなる請求項1記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項3】
上記エポキシ組成物が、イオン導電剤を含有する請求項1または2記載の電子写真機器用導電性ロール。

【図1】
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【公開番号】特開2010−66306(P2010−66306A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229953(P2008−229953)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】