説明

電子写真用コート紙

【課題】原紙と塗工層との厚みの比率が特定の範囲であっても、表面での1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生が抑制される電子写真用コート紙を提供すること。
【解決手段】電子写真用コート紙は、パルプ繊維を含む原紙と、該原紙の少なくとも片面に設けられた顔料及び接着剤を含む塗工層とを有し、前記原紙の厚みと前記塗工層の厚みとの比率が、原紙の厚み:塗工層の厚み=9:2以上2:1以下であり、熱機械分析装置にて100℃で測定した、幅4mm、長さ20mmのコート紙全層のCD方向の収縮量と前記基材のCD方向の収縮量との差の絶対値が30μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真用コート紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタや複写機といった電子写真方式の画像形成装置は、高速化、高画質化が図られたことにより、小部数出版するオンデマンド分野においてカラー複写機やプリンターが対応可能となり、カタログ、パンフレットなどの印刷物をレーザープリンタや複写機で作成する動きが高まってきた。
【0003】
光沢度の高いコート紙は、通常、平均粒子径2μm以下の顔料を基紙に対して片面あたり10g/m以上となるよう各種コータで塗布し、その後カレンダー掛けにて表面を平滑化して作製される。これら白紙光沢度の高いコート紙は、通常、商業用印刷の分野で用いられてきたが、複写機、プリンターにおいても高画質な画像を得るために、従来使用している普通紙に代えて上記のコート紙を用いるケースが増えてきた。
【0004】
ここで、複写機やプリンターにおいて、定着器にて加熱定着した際のコート紙の波打ちを改善するため、120℃のオーブン中に30秒間放置した前後の水分変化率が0.3質量%以下とする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−195677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、原紙と塗工層との厚みの比率が特定の範囲であっても、表面での1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生が抑制される電子写真用コート紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
パルプ繊維を含む原紙と、該原紙の少なくとも片面に設けられた顔料及び接着剤を含む塗工層とを有し、
前記原紙の厚みと前記塗工層の厚みとの比率が、原紙の厚み:塗工層の厚み=9:2以上2:1以下であり、
熱機械分析装置にて100℃で測定した、幅4mm、長さ20mmのコート紙全層のCD方向の収縮量と基材のCD方向の収縮量との差の絶対値が30μm以下である電子写真用コート紙である。
ここで、CD方向とは、パルプ繊維の流れの方向をMD方向としたときに、これに垂直な方向のことをいう。
また、原紙とは、製紙段階におけるサイズプレス処理までの状態のものをいい、基材とは、後述の方法でCD方向の収縮量を測定するために、コート紙から塗工層を削り取った状態のものをいう。
【0007】
請求項2に係る発明は、
J Tappi No.5王研式透気度が1500秒以下である請求項1に記載の電子写真用コート紙である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、特定の坪量及び塗工層厚みであっても、表面での1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生が抑制される電子写真用コート紙を提供することができる。
本発明の請求項2によれば、本構成を有していない場合に比較して、表面での1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生がより抑制される電子写真用コート紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
例えば、電子写真方式の画像形成装置で用紙に画像を加熱定着した場合、ある特定の用紙では、加熱定着直後の用紙表面に1〜3cm四方の大きさの凸凹が発生する。
本発明者らは、電子写真用コート紙における表面での1〜3cm四方の大きさの凸凹発生のメカニズムを検討した。なお、以下の推測は本実施形態を制限するものではない。
【0010】
加熱定着直後の用紙は水分脱湿によりCD方向の収縮が発生する。このとき顔料及び接着剤を含む塗工層を有するコート紙では塗工層と原紙の収縮量が異なり、塗工層より原紙の収縮量が大きいため用紙表面に1〜3cm四方の大きさの凸凹を発生させているのではないかと推測される。
【0011】
またこの現象は、原紙の厚み:塗工層の厚み=9:2以上2:1以下である場合に生じることが分かった。これは、原紙の収縮力が、塗工層による原紙の収縮を抑える力よりも小さいためと推測される。
【0012】
以上の推測より、定着時の加熱による脱湿において塗工層が原紙の収縮に追随可能な範囲であれば、コート紙表面に1〜3cm四方の大きさの凸凹が発生するのを抑制できることが明らかになった。
具体的には、原紙の厚みと塗工層の厚みとの比率が、原紙の厚み:塗工層の厚み=9:2以上2:1以下の範囲にあるコート紙であっても、機械分析装置にて100℃で測定した、幅4mm長さ20mmのコート紙全層のCD方向の収縮量と基材のCD方向の収縮量の差の絶対値が30μm以下であれば、コート紙表面の1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生を抑制できることが判明した。
ここで、100℃という温度条件は、電子写真方式の画像形成装置での画像定着時にコート紙を加熱した状態を再現するためのものである。
【0013】
以下、本発明の電子写真用コート紙について詳細に説明する。
【0014】
(1)原紙
本実施形態のコート紙を構成する原紙は、パルプ繊維を含むものであり、実用上は、填料が更に含まれていることが好ましい。また、特に環境負荷を低減させるという観点から原紙としては、古紙パルプを30質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。また、上記と同様に環境負荷を低減させるという観点からは、間伐材から得られたパルプを10質量%以上含むことも好ましい。
【0015】
原紙を構成するパルプ繊維としては、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等の他、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等が挙げられる。
【0016】
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグラウンドパルプ、木材やチップに薬液をしみこませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及びチップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ、中でも高収率が特徴であるケミサーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを配合してもよい。
【0017】
特に前記バージンパルプとしては、塩素ガスを使用せずに二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free:ECF)や、塩素化合物を使用せずにオゾン/過酸化水素などを主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free:TCF)等で漂白処理されたものが用いられる。
【0018】
また、前記古紙パルプの原料としては、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆等で筆記された古紙;印刷された中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;等を配合することができる。
【0019】
原紙を作製する場合に使用する古紙パルプは、前記古紙原料を、オゾン処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものであることが好ましい。また、より白色度の高い電子写真用転写紙を得るという観点から、前記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50質量%以上100質量%以下の範囲とすることが好ましい。さらに資源の再利用という観点から、前記古紙パルプの配合率を70質量%以上100質量%以下の範囲とすることがより好ましい。
【0020】
前記オゾン処理漂白処理は上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、前記過酸化水素漂白処理は、脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ作用がある。前記古紙パルプは、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の二つの処理を組み合わせることによって、古紙の脱墨を容易にするだけでなくパルプの白色度もより向上させることができる。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物含有量低減において多大な効果を得ることができる。
【0021】
また、原紙には、パルプ繊維に加えて不透明度、白さ、及び表面性を調整するため填料を添加することが好適である。また、コート紙中のハロゲン量を低減したい場合にはハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。
【0022】
前記填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、ドロマイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機顔料、及び、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、ポリスチレン、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、尿素樹脂などの有機顔料を挙げることができる。
【0023】
また、原紙に古紙パルプを配合する場合には、古紙パルプ原料に含まれる灰分をあらかじめ推定して、その添加量を調整する必要がある。
【0024】
原紙には内添サイズ剤を配合してもよい。ここでもコート紙中のハロゲン量を低減するためにハロゲンを含まない内添サイズ剤や定着剤を使用することが望ましい。具体的には、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などを使用することができ、さらに硫酸バンド、カチオン化澱粉など、サイズ剤と繊維との定着剤を組み合わせて使用してもよい。また、コート紙の保存性を向上させる観点から中性サイズ剤を使用することが好ましい。
【0025】
原紙の表面に対しては、サイズプレス液が塗工処理される。このサイズプレス液に用いるバインダーは、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉などの未加工澱粉を始めとして、加工澱粉として酵素変性澱粉、燐酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化澱粉などを使用することができる。また、その他にもポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、グアーガム、カゼイン、カードランなどの水溶性高分子及びそれらの誘導体などを単独あるいは混合して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
原紙のサイズ度は、使用する内添サイズ剤の量、種類のみによっても必要な値に調整することができる。しかし、それだけではサイズ度の調整が十分でない場合には、さらに表面サイズ剤を使用してもよい。このような表面サイズ剤としてはロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤などを使用することができる。これら表面サイズ剤の具体例としては、スチレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、スチレンマレイン酸アクリル系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本実施形態に用いられる原紙は、表面電気抵抗率を調整することを目的として、表面に塗布されるサイズプレス液中に導電剤が配合されることが好ましい。但し、コート紙中のハロゲン量を低減するためにハロゲンを含まない導電剤を使用することが好ましい。
【0028】
このような導電剤としては硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、メタ珪酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、メタ燐酸ナトリウムなどの無機電解質;スルホン酸塩、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、リン酸塩などのアニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビット等の非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤;高分子電解質などの導電剤を使用することができる。
【0029】
また、サイズプレス液は、通常のサイズプレス処理のほか、シムサイズ、ゲートロール、ロールコータ、バーコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、ブレードコータ等の通常使用されている塗工手段によって原紙の表面に塗布することができる。
【0030】
原紙の坪量は、40g/m以上115g/m以下であることが、コート紙として電子写真装置への実用の観点から好適である。
【0031】
(2)塗工層
本実施形態において、塗工層は少なくとも原紙の片面に設けられていればよいが、実用上は両面に設けられていることが好ましい。
【0032】
原紙の表面には、上述したようにサイズプレス液が塗工処理された後に、顔料と接着剤とを含む塗工層が形成される。
塗工層に用いられる顔料としては、通常の一般コート紙に用いられる顔料、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドクレー、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクタイトなどの無機顔料、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルムアルデヒド樹脂微粒子、微小中空粒子およびその他の有機系顔料などが用いられる。なお、顔料は、2種類以上を組合せて使用することができる。
【0033】
塗工層に用いられる接着剤としては、ラテックスや水溶性接着剤が用いられる。
なお、本実施形態において「ラテックス」とは、水性媒体の中に高分子物質が安定して分散しているものである。また「水溶性接着剤」とは、水酸基、カルボキシル基、アミド基などの親水基をもち、これらを介して水和することによって水に溶解しているものをいう。
【0034】
なお、ラテックスは、植物の代謝作用による天然の生産物である天然ゴムラテックス、乳化重合法により合成された合成ゴムラテックスと、固形ゴムを水中に乳化分散した人工ラテックスの三種類に区別される。
具体例としては、ブタジエン系、スチレンブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系、イソプレン系、エチレン・酢酸ビニル系、エチレンプロピレンジエン系、アクリル系、ポリウレタン系などが挙げられる。
また、水溶性接着剤の具体例としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などを挙げることができる。
なお、これらの接着剤は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて利用できる。
【0035】
なお、塗工層には、顔料や接着剤以外にも、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤など通常のコート紙の塗工層に配合される各種助剤を必要に応じて使用することができる。
顔料と接着剤(水溶性接着剤とラテックスとの和)の配合比は、質量比で顔料:接着剤=8:2以上4:6以下の範囲が好ましく、8:2以上5:5以下の範囲であることがより好ましい。顔料と接着剤の配合比がこの範囲内にあると、塗工層強度が維持される。
【0036】
塗工層の形成に際しては、顔料、接着剤や必要に応じて使用される各種助剤を含む塗工層形成用塗布液を、一般のコート紙の製造に使用されるコーティング装置、例えばブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータなどを用いてオンマシンあるいはオフマシンによって、原紙上に一層あるいは多層に分けて形成することができる。
【0037】
なお、塗工層形成用塗布液の塗布量は、例えば乾燥質量で原紙の片面当たり7g/m以上20g/m以下の範囲となるように選択される。
【0038】
(3)コート紙
(厚み比)
本実施形態のコート紙における原紙の厚みと塗工層の厚みとの比率は、以下のようにして測定する。
・測定箇所:コート紙の四隅から、短辺に沿って1cm、長辺に沿って1cm内側へ入った箇所(4箇所)と、コート紙の対角線の交点(1箇所)
・測定個数(平均値):上記5箇所
・測定環境と測定方法:コート紙はJIS−P8111(1998年改正)規定の23℃50%RHに24時間放置したものを使用し、JIS−P8111で規定する環境内でコート紙をカットし、JIS−P8111で規定する環境室内でリアルサーフィスビュー顕微鏡(VE−7800:キーエンス社製)を利用し上記5箇所の厚みを測定し、それらの平均をとる。
【0039】
(CD方向の収縮量)
本実施形態のコート紙は、コート紙全層のCD方向の収縮量と基材のCD方向の収縮量の差の絶対値が30μm以下である。この値は小さければ小さい方が好ましく、0であっても構わない。コート紙全層と基材のCD方向の収縮量はTMA(熱機械分析装置)により測定が可能である。
ここで、CD方向とは、パルプ繊維の流れ方向(即ち、抄紙方向)をMD(Machine Direction)方向としたとき、これに垂直な方向(CD(Cross Direction))と規定される。
また上述のように、「原紙」とは、製紙段階におけるサイズプレス処理までの状態のものをいい、「基材」とは、後述の方法でCD方向の収縮量を測定するために、コート紙から塗工層を削り取った状態のものをいう。
【0040】
収縮量について説明する。
収縮量測定には熱機械分析装置(SII・ナノテクノロジー株式会社製、EXSTAR6100 TMA/SS 2007年度版)をJIS環境(23℃50%RH)下で使用する。
図1に熱機械分析装置(TMA)の概略を示す。図1において、1は熱機械分析装置、
2は引張プローブ、3は掴み具、4は加温チャンバー、5は温度センサー、10は短冊状電子写真用コート紙、12は張力発生部、14は寸法検出部を示す。
【0041】
図1に示す熱機械分析装置1の加温加湿チャンバー4の上方には張力発生部12が配置され、張力発生部12の下方側には、下端が加温加湿チャンバー4の中央部近傍にまで達する引張プローブ2が取り付けられている。そして、測定に際しては、引張プローブ2の下端に取り付けられた掴み具3と、加温加湿チャンバー4の底部に取り付けられた掴み具3とにより、短冊状電子写真用コート紙10の両端を挟持して固定できるようになっている。
【0042】
コート紙全層のCD方向の収縮量の測定方法について説明する。
測定に際しては、まず、電子写真用コート紙をCD方向を長手方向にして、四隅から幅が4mm、長さが30mmのサイズの測定用の短冊状電子写真用コート紙10を計4つ切り出す。この短冊状電子写真用コート紙10の長手方向両端部を2個の掴み具3によって挟持する。この際、短冊状電子写真用コート紙10は、2個の掴み具3の間隔が20mmとなるように掴み具によって挟持される。この状態で、短冊状電子写真用コート紙10を加温チャンバー4内部にセットして、2つの掴み具3および引張プローブ2と共に、加温チャンバー4内に密閉する。加温チャンバー4内で短冊状電子写真用コート紙10をJIS環境(23℃50%RH)に24時間以上調湿した後、引張プローブ2を9.8mNの張力をかけ、ゼロ点調整を行う。ここから張力は9.8mNを維持しながら加温チャンバー4内を設定温度120℃、昇温速度1000℃/minで上昇させ、温度センサー5が100℃になった時点の収縮量を測定する。
コート紙全層のCD方向の収縮量は、1枚の電子写真用コート紙から4つのサンプルを切り取り測定した4個の平均値を使用する。
【0043】
次に、基材のCD方向の収縮量の測定方法について説明する。
コート紙から、400番のカミヤスリと1200番のカミヤスリを使用して、基材上にある塗工層を表裏から丁寧に削っていく。顕微鏡で確認しながら、繊維上の塗工層がなくなるまで削る。繊維間に入り込んだ塗工層材料は取ることはできないのでそのままの状態でよい。削り残ったものを基材とする。この四隅から基材を幅4mm長さ30mmの大きさに切り出し、上記コート紙全層のCD方向の収縮量の測定と同様の方法によってCD方向の収縮量を測定する。
基材のCD方向の収縮量は、1枚の電子写真用コート紙から4つのサンプルを切り取り測定した4個の平均値を使用する。
【0044】
得られたコート紙全層のCD方向の収縮量の平均値と、基材のCD方向の収縮量の平均値の差を算出し、その絶対値を求める。
【0045】
コート紙全層のCD方向の収縮量と基材のCD方向の収縮量差の絶対値を30μm以下にする方法としては特に限定されるものではない。通常のコート紙よりも塗工層が原紙の収縮に追随しやすいように塗工層の組成を制御したり、基材のCD方向の収縮量を小さくしたりすることにより、コート紙全層のCD収縮量と基材のCD収縮量差の絶対値をより小さくすることができる。例えば、以下に示す方法を組み合わせることにより達成される。
【0046】
<A>塗工層の空隙を増やす方法
塗工層に使用する顔料の形状、大きさの組み合わせによって空隙を増やすことができる。顔料としては、紡錘状、柱状、立方体状の炭酸カルシウムを塗工液中に添加する。
【0047】
紡錘状炭酸カルシウムの場合には短径0.3μm以上0.8μm以下で、長径1.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。柱状炭酸カルシウムの場合には短径0.1μm以上0.3μm以下で、長径1.5μm以上2.5μmであることが好ましい。立方体状炭酸カルシウムの場合には1μm以上3μm以下であることが好ましい。
大きさが上記範囲内にある場合には、上記範囲外にある場合に比較して、空隙率を高まり、塗工層が原紙の収縮に追随しやすくなる。
【0048】
塗工層に使用する顔料としてカオリンクレーを併用する場合、カオリンクレーは粒径2μm以上の割合が20%より多く、50%より多いことがより好ましい。また、カオリンクレーと炭酸カルシウムの配合比は、質量比でカオリンクレー:炭酸カルシウム=9:1以上4:6以下の範囲が好ましく、8:2以上5:5以下の範囲がより好ましい。
上記配合比の範囲内にすると、塗工層は空隙率が高まり原紙の収縮に追随しやすい状態を保ちながら、且つ光沢発現性も確保される。
【0049】
また、塗工層中のラテックスのTgを高くし、ラテックスの粒子径を大きくすることにより塗工層の空隙を作ることも可能である。Tgが高いラテックスは球状に存在しやすく、塗工層の空隙を作りやすい。Tgとしては0℃以上100℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましい。Tgが60℃以上であると、60℃未満である場合に比較して、より塗工層が原紙の収縮に追随しやすくなる。なおTgが0℃未満のラテックスにTgが60℃以上ラテックスを配合してもよい。
またラテックスの粒子径は0.2μm以上であることが好ましく、0.25μm以上0.5μm以下であることがより好ましく、0.25μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。上記粒子径にすると、塗工層は空隙率が高まり原紙の収縮に追随しやすい状態を保ちながら、且つ光沢発現性も確保される。
【0050】
<B>塗工層中の水溶性接着剤に低粘性変性澱粉を使用する方法
ここで、「低粘性」とは、澱粉濃度が8質量%の溶液で40℃における粘度が2000mPa・s以下の粘性を有するものをいう。粘度計はアナログ式B型粘度計(BROOKFIELD Model LVT)を使用する。低粘性変性澱粉としては、酵素変性澱粉、酸変性澱粉、ピロデキストリンなどが挙げられる。低粘性変性澱粉の使用により塗工層内での顔料結着の強度が弱められるため、加熱時に原紙に追随しやすくなると考えられる。
【0051】
また、塗工層中の接着剤としてラテックスを併用する場合は、低粘度変性澱粉とラテックスとの配合比は、質量比で低粘度変性澱粉:ラテックス=1:9以上3:7以下の範囲であることが好ましく、1.5:8.5以上2.5:7.5以下の範囲であることがよりより好ましい。低粘度変性澱粉とラテックスとの配合比がこの範囲にあると、上記範囲外にある場合に比較し、塗工層強度が維持され、光沢発現性に優れる。
【0052】
<C>原紙の水分脱湿時の収縮を小さくする方法
パルプの種類としては、偏平で繊維間接触面積が大きくなる針葉樹の使用量が少ない方が好ましく、なるべく広葉樹パルプを使用することが好ましい。
【0053】
またパルプの叩解を進めることにより繊維が細かくなり繊維間接触面積が増大するため、濾水度(JIS P 8121(1995年改正))としては400ml以上530ml以下であることが好ましく、430ml以上500ml以下であることがより好ましい。
さらに、原紙を抄紙する際には繊維の配向が抄紙方向に並びやすくなるとCD方向の脱湿収縮量が大きくなるため、繊維配向比を小さくすることが望ましい。繊維配向比は公知のとおり、パルプ吹き付け速度をワイヤー速度に近づけることで小さくすることができる。
【0054】
さらに、繊維間の接触面積を小さくするため、原紙中の填料含有率を高くすることが好ましく、パルプ繊維全量に対する填料含有率は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
また原紙抄紙後のサイズプレス処理において表面にPVA(ポリビニルアルコール)を塗布することが好ましい。PVAが原紙内部まで浸透すると繊維間の接触面積が大きくなることから、平均重合度1700〜2400のPVAを片面あたり0.3g/m以上塗布することが好ましい。また、塗布量が1g/mを超えると、透気度が後述する好ましい範囲を外れる(J Tappi No.5透気度が1500秒を超える)可能性があるため、1〜3cm四方の大きさの凸凹を抑える観点では1g/m以下であることが好ましい。
【0056】
基材のCD方向の収縮量としては、100μm以上200μm以下とすることが好ましく、110μm以上180μm以下とすることがより好ましく、110μm以上160μm以下とすることが更に好ましい。
【0057】
コート紙全層のCD方向の収縮量としては、70μm以上170μm以下とすることが好ましく、80μm以上150μm以下とすることがより好ましく、80μm以上130μm以下とすることが更に好ましい。
【0058】
(透気度)
本実施形態のコート紙は、J Tappi No.5王研式透気度が1500秒以下であることが好ましい。透気度が1500秒以下であると、1〜3cm四方の大きさの凸凹をより一層低減することが容易となる。より好適には透気度は1200秒以下である。
透気度の下限値は特に限定されるものではないが、実用上は700秒以上であることが好ましい。
【0059】
透気度を低くする方法としては、スーパーカレンダーをかける温度や、圧力を低くする方法が挙げられる。しかし、当該方法を採用した場合、コート紙の白紙光沢度も低下しやすくなる。それゆえ、このような白紙光沢度の低下を抑制したい場合には、光沢発現性の高い有機顔料を配合することが好ましい。
【0060】
(白紙光沢度)
本実施形態のコート紙は、JIS P-8142(1993年改正)に規定の白紙光沢度が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。白紙光沢度が上記範囲であれば、形成された画像の鮮明さに優れる。
なお、白紙光沢度は、デジタル光沢計(村上色彩技術研究所製、GM−26D型)を用いて、入射角75°で測定した値とする。
【0061】
白紙光沢度を制御する方法としては、平滑化処理する方法、光沢発現性の高い有機顔料を配合する方法等が挙げられる。平滑化処理の方法としては、原紙上に塗工層を形成した後に、通常用いられる平滑化装置、例えば、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー等を用いる方法が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
下記配合で紙料スラリーを調整した。
・広葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度450mLになるように叩解調整したパルプ 90質量部
・針葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度450mLになるように叩解調整したパルプ 10質量部
・填料として軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121:奥多摩工業製)
10質量部
・アルケニル無水コハク酸内添サイズ剤(サイズパインSA−862:荒川化学工業製) 0.1質量部
・カチオン化澱粉 0.05質量部
【0064】
この紙料スラリーを用いて繊維配向比が1.3となるようジェトワイヤー比を調整し、抄紙を行い、坪量が52g/mの原紙を作製した。
【0065】
続いて、下記配合でサイズプレス液を調製した。
・水 94質量部
・PVA(クラレ社製、ポバール117、重合度1700) 4質量部
・導電剤として硫酸ナトリウム 2質量部
【0066】
前記得られた原紙の両面にこのサイズプレス液を塗工処理した。
なお、サイズプレス液は、固形分量が原紙片面当たり0.5g/mとなるように塗工した。これにより、サイズプレス液を塗工した後の原紙の坪量は53g/mとなった。
【0067】
更に、下記配合で固形分濃度が50質量%となるようして塗工層形成用塗布液を調製した。
・カオリンクレー(カビムNPKAOGLOSS−90、イメリス・ミネラルズジャパン社、粒子径2μm以下50質量%) 80質量部
・炭酸カルシウム(タマパール121−7C:奥多摩工業製、紡錘状、短径0.3μm〜0.8μm、長径1.5μm〜2.5μm) 20質量部
・水溶性接着剤として酵素変性澱粉(ソルダインCS50、大和化学工業)
10質量部
・ラテックスNipoV1004(ポリスチレンベースタイプ、日本ゼオン、Tg80℃、平均粒子径0.3μm) 45質量部
・ラテックスLatexia300J(SBR、チバ.ジャパン社製、Tg−10℃)
45質量部
・分散剤(東亜合成製、アロンA) 0.05質量部
【0068】
次に、サイズプレス液を塗工した後の原紙の両面に、ブレードコーティング法により上記塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。得られたコート紙の各種測定値を表2に示す。
【0069】
[実施例2]
水溶性接着剤を酸化澱粉(エースB 王子コーンスターチ社製)5質量部、ラテックスNipoV1004(ポリスチレンベースタイプ、日本ゼオン社製、Tg80℃、平均粒子径0.3μm)47.5質量部、ラテックスLatexia300J(SBR、チバ.ジャパン社製、Tg−10℃)47.5質量部に変更した以外は実施例1と同じ塗工材料、サイズプレス液、原紙を使用し、坪量73g/mの電子写真コート紙を得た。
得られたコート紙の各種測定値を表2に示す。
【0070】
[実施例3]
下記配合で固形分濃度が50質量%となるようして塗工層形成用塗布液を調製した。
・カオリンクレー(カビムNPKAOGLOSS−90、イメリス・ミネラルズジャパン社、粒子径2μm以下50質量%) 120質量部
・炭酸カルシウム(タマパール123:奥多摩工業製、柱状、短径0.1〜0.3μm、長径1.5〜2.5μm) 30質量部
・水溶性接着剤として酸化澱粉(エースB、王子コーンスターチ社製) 5質量部
・NipoV1004(ポリスチレンベースタイプ、日本ゼオン社製、Tg80℃、平均粒子径0.3μm) 47.5質量部
・ラテックスLatexia300J(SBR、チバ.ジャパン社製、Tg−10℃)
47.5質量部
・分散剤(東亜合成製、アロンA) 0.05質量部
【0071】
次に、実施例1と同じ原紙(実施例1の原紙に実施例1の方法でサイズプレス処理したものをいう。以下同様。)の両面に、ブレードコーティング法により上記塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。
得られたコート紙の各種測定値を表2に示す。
【0072】
[実施例4]
実施例3と同じ塗工層形成用塗布液を調整し、実施例1と同じ原紙の両面に、ブレードコーティング法により塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を40に調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。得られたコート紙の各種測定値を表2に示す。
【0073】
[実施例5]
下記配合で固形分濃度が50質量%となるようして塗工層形成用塗布液を調製した。
・カオリンクレー(カビムNPKAOGLOSS−90、イメリス・ミネラルズジャパン社、粒子径2μm以下50質量%) 184質量部
・炭酸カルシウム(タマパール123:奥多摩工業製、柱状、短径0.1μm〜0.3μm、長径1.5μm〜2.5μm) 46質量部
・水溶性接着剤として酸化澱粉(エースB、王子コーンスターチ社製) 5質量部
・ラテックスNipoV1004(ポリスチレンベースタイプ、日本ゼオン社製、Tg80℃、平均粒子径0.3μm) 30質量部
・ラテックスLatexia300J(SBR、チバ.ジャパン社製、Tg−10℃)
65質量部
・分散剤(東亜合成製、アロンA) 0.06質量部
【0074】
次に、実施例1と同じ原紙の両面に、ブレードコーティング法により塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。
得られたコート紙の各種測定値を表2に示す。
【0075】
[実施例6]
下記配合で紙料スラリーを調整した。
・広葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度450mLになるように叩解調整したパルプ 80質量部
・針葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度450mLになるように叩解調整したパルプ 20質量部
・填料として軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業製)
10質量部
・アルケニル無水コハク酸内添サイズ剤(サイズパインSA−862、荒川化学工業製) 0.1質量部
・カチオン化澱粉 0.05質量部
この紙料スラリーを用いて繊維配向比が1.5となるようジェトワイヤー比を調整し、抄紙を行い、坪量が52g/mの原紙を作製した。
【0076】
続いて、下記配合でサイズプレス液を調製した。
・水 95質量部
・酸化澱粉(エースA:王子コーンスターチ製) 5質量部
・導電剤として硫酸ナトリウム 2質量部
上記得られた原紙の両面にこのサイズプレス液を塗工処理した。
なお、サイズプレス液は、固形分量が原紙片面当たり0.5g/mとなるように塗工した。これにより、サイズプレス液を塗工した後の原紙の坪量は53g/mとなった。
【0077】
更に、下記配合で固形分濃度が50質量%となるようして塗工層形成用塗布液を調製した。
・カオリンクレー(カビムNPKAOGLOSS−90、イメリス・ミネラルズジャパン社製、粒子径2μm以下50質量%) 75質量部
・炭酸カルシウム(Megafile2000、スペシャリティーミネラルズFMT社製、立方体、粒径1.3μm〜1.9μm) 25質量部
・水溶性接着剤として酵素変性澱粉(ソルダインCS50、大和化学工業社製)
10質量部
・ラテックスNipoV1004(ポリスチレンベースタイプ、日本ゼオン社製、Tg80℃、平均粒子径0.3μm) 54質量部
・ラテックスLatexia300J(SBR、チバ.ジャパン社製)
36質量部
・分散剤(東亜合成製、アロンA) 0.06質量部
【0078】
次に、サイズプレス液を塗工した後の原紙の両面に、ブレードコーティング法により前記塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。
得られたコート紙の各種測定値を表4に示す。
【0079】
[実施例7]
下記配合で紙料スラリーを調整した。
・広葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度500mLになるように叩解調整したパルプ 100質量部
・填料として軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業製)
15質量部
・アルケニル無水コハク酸内添サイズ剤(サイズパインSA−862、荒川化学工業製) 0.1質量部
・カチオン化澱粉 0.05質量部
この紙料スラリーを用いて繊維配向比が1.1となるようジェトワイヤー比を調整し、抄紙を行い、坪量が52g/mの原紙を作製した。
【0080】
得られた原紙に実施例1と同様の方法でサイズプレス処理を行なった。
次に、実施例5と同じ塗工層形成用塗布液をブレードコーティング法により原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。
得られたコート紙の各種測定値を表4に示す。
【0081】
[実施例8]
下記配合で紙料スラリーを調整した。
・広葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度500mLになるように叩解調整したパルプ 100質量部
・填料として軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業製)
20質量部
・アルケニル無水コハク酸内添サイズ剤(サイズパインSA−862、荒川化学工業製) 0.1質量部
・カチオン化澱粉 0.05質量部
【0082】
この紙料スラリーを用いて繊維配向比が1.1となるようジェトワイヤー比を調整し、抄紙を行い、坪量が52g/mの原紙を作製した。
得られた原紙に実施例1と同様の方法でサイズプレス処理を行なった。但し、サイズプレス液は、固形分量が原紙片面当たり1.0g/mとなるように塗工した。これにより、サイズプレス液を塗工した後の原紙の坪量は54g/mとなった。
【0083】
下記配合で固形分濃度が50質量%となるようして塗工層形成用塗布液を調製した。
・カオリンクレー(カビムNPKAOGLOSS−90、イメリス・ミネラルズジャパン社、粒子径2μm以下50%) 320質量部
・炭酸カルシウム(タマパール123:奥多摩工業製、柱状、短径0.1μm〜0.3μm、長径1.5μm〜2.5μm) 80質量部
・水溶性接着剤として酸化澱粉(エースB、王子コーンスターチ社製) 5質量部
・ラテックスNipoV1004(ポリスチレンベースタイプ、日本ゼオン社製、Tg80℃、平均粒子径0.3μm) 30質量部
・ラテックスLatexia300J(SBR、チバ.ジャパン社製)
65質量部
・分散剤(東亜合成製、アロンA) 0.06質量部
【0084】
次に、実施例1と同じ原紙の両面に、ブレードコーティング法により塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量74g/mの電子写真用コート紙を得た。
得られたコート紙の各種測定値を表6に示す。
【0085】
[実施例9]
下記配合で紙料スラリーを調製した。
・広葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度400mLになるように叩解調整したパルプ 80質量部
・針葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度400mLになるように叩解調整したパルプ 20質量部
・填料として軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業製)
5質量部
・アルケニル無水コハク酸内添サイズ剤(サイズパインSA−862、荒川化学工業製) 0.1質量部
・カチオン化澱粉 0.05質量部
この紙料スラリーを用いて繊維配向比が1.7となるようジェトワイヤー比を調整し、抄紙を行い、坪量が52g/mの原紙を作製した。
【0086】
続いて、下記配合でサイズプレス液を調製した。
・水 95質量部
・酸化澱粉(エースA、王子コーンスターチ製) 5質量部
・導電剤として硫酸ナトリウム 2質量部
上記得られた原紙の両面にこのサイズプレス液を塗工処理した。
なお、サイズプレス液は、固形分量が原紙片面当たり0.5g/mとなるように塗工した。これにより、サイズプレス液を塗工した後の原紙の坪量は53g/mとなった。
【0087】
下記配合で固形分濃度が50質量%となるようして塗工層形成用塗布液を調製した。
・カオリンクレー(カビムNPKAOGLOSS−90、イメリス・ミネラルズジャパン社、粒子径2μm以下50%) 105質量部
・炭酸カルシウム(タマパールTP121−7C(紡錘状:奥多摩工業製、短径0.1μm〜0.3μm、長径1.5μm〜2.5μm) 45質量部
・水溶性接着剤として酵素変性澱粉(ソルダインCS50、大和化学工業) 15質量部
・ラテックスNipoV1004(ポリスチレンベースタイプ、日本ゼオン社製、Tg80℃、平均粒子径0.3μm) 42.5質量部
・ラテックスLatexia300J(SBR、チバ.ジャパン社製)
42.5質量部
・分散剤(東亜合成製、アロンA) 0.06質量部
【0088】
次に、実施例1と同じ原紙の両面に、ブレードコーティング法により塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。
得られたコート紙の各種測定値を表6に示す。
【0089】
[実施例10]
実施例1で使用したラテックスNipol V1004を Nipol LX407BP6(カルボキシ変性SBR 日本ゼオン社製Tg70℃)に変更した以外は全て実施例1と同じものを使用し実施例10の電子写真用コート紙を得た。得られたコート紙の各種測定値を表6に示す。
【0090】
[比較例1]
実施例1と同じ原紙を作製した。
次に、下記配合で固形分濃度が50質量%となるようして塗工層形成用塗布液を調製した。
・カオリンクレー(ULTRA WHITE90、菱三商事、粒子径2μm以下90質量%) 90質量部
・炭酸カルシウム(タマパール123、奥多摩工業製、柱状、短径0.1μm〜0.3μm、長径1.5〜2.5μm) 10質量部
・ラテックスLatexia300 J(SBR、チバ・ジャパン社製、Tg−10℃)
25質量部
・分散剤(アロンA、東亜合成製) 0.05質量部
【0091】
サイズプレス液を塗工した後の原紙の両面に、ブレードコーティング法により上記塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。得られたコート紙の各種測定値を表8に示す。
【0092】
[比較例2]
下記配合で紙料スラリーを調製した。
・広葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度450mLになるように叩解調整したパルプ 80質量部
・針葉樹クラフトパルプを漂白処理して濾水度450mLになるように叩解調整したパルプ 20質量部
・填料として軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121、奥多摩工業製)
5質量部
・アルケニル無水コハク酸内添サイズ剤(サイズパインSA−862、荒川化学工業製) 0.1質量部
・カチオン化澱粉 0.05質量部
この紙料スラリーを用いて繊維配向比が1.6となるようジェトワイヤー比を調整し、抄紙を行い、坪量が52g/mの原紙を作製した。
【0093】
続いて、下記配合でサイズプレス液を調製した。
・水 95質量部
・酸化澱粉(エースA、王子コーンスターチ製) 5質量部
・導電剤として硫酸ナトリウム 2質量部
上記得られた原紙の両面にこのサイズプレス液を塗工処理した。
なお、サイズプレス液は、固形分量が原紙片面当たり0.5g/mとなるように塗工した。これにより、サイズプレス液を塗工した後の原紙の坪量は53g/mとなった。
【0094】
次に、サイズプレス液を塗工した後の原紙の両面に、ブレードコーティング法により比較例1と同じ塗工層形成用塗布液を原紙片面当たりの固形分量が10g/mとなるように塗工、乾燥し、スーパーカレンダーにて光沢度を調整し、坪量73g/mの電子写真用コート紙を得た。得られたコート紙の各種測定値を表8に示す。
【0095】
[比較例3]
市販の印刷用コート紙(OKコートL、王子製紙製、坪量64g/m)を用いた。このコート紙の各種測定値を表8に示す。
【0096】
[比較例4]
市販の印刷用コート紙(OKトップコート+、王子製紙製、坪量73.3g/m)を用いた。このコート紙の各種測定値を表8に示す。
【0097】
[評価]
評価は、富士ゼロックス製の乾式間接電子写真方式のデジタルカラー複写機DocuCentreColor6550Iを用いて実施した。プリント原稿は白紙にて実施した。電子写真用コート紙のサイズをA4サイズ縦目用紙とし、長辺を先端として走行させた。また、各実施例および比較例で得られた電子写真用コート紙については、23℃/50%RH環境下にて24時間以上シーズニングした。評価結果を表2、4、6及び8に示す。
【0098】
なお、表2、4、6及び8中に示す1〜3cm四方の大きさの凸凹発生の評価基準は以下の通りである。なお、1〜3cm四方の大きさの凸凹とは、1cm×1cmの正方形には収まらないが、3cm×3cmの大きさの正方形には収まるサイズの、目視で確認できる凸凹を指す。
【0099】
<1〜3cm四方の大きさの表面凸凹発生頻度の評価>
評価用サンプルとしては、23℃/50%RH環境下にて24時間以上シーズニング処理したコート紙を連続10枚走行させ、10枚目のサンプルを評価した。
【0100】
◎:1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生は確認できない。
○:1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生は確認できるが、10cm×10cm内に凸部が1個以上4個未満(許容できる)。
△:1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生は確認でき、10cm×10cm内に目視で確認できる凸部が4個以上7個未満(許容できない)。
×:1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生は確認でき、10cm×10cm内に目視で確認できる凸部が7個以上(許容できない)。
【0101】
<光沢度の評価>
白紙光沢度は、JIS P−8142(1993改正)に従い、デジタル光沢計(村上色彩技術研究所製、GM−26D型)を用いて、入射角度75°で測定した。
【0102】
<強度の評価>
水性マジックにて塗工層表面を黒色に着色させ、23℃50%RH環境下に10時間調放置後、CD方向と平行に黒着色部を内側に谷折し、幅50mm、直径75mm、重さ825gの円柱状のロールを折り目に沿って1度転がし、脱脂綿で軽く折れ目をふき取った。その後、塗工層の剥がれの状態を観察した。
【0103】
−評価基準−
◎:折れ目が黒く全く剥がれていない又は折れ目が白くなっているが剥がれは発生していない。
○:折れ目が白く剥がれが生じており、幅200μm未満。
○−:折れ目が白く剥がれが生じており、幅200μm以上300μm未満。
△:折れ目が白く剥がれが生じており、幅300μm以上400μm未満。許容できない。
×:折れ目が白く剥がれが生じており、幅400μm以上。許容できない。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
【表6】

【0110】
【表7】

【0111】
【表8】

【0112】
表2,4,6及び8に示す通り、原紙の厚みと塗工層の厚みとの比率が、原紙の厚み:塗工層の厚み=9:2以上2:1以下の範囲にあっても、コート紙全層と基材とのCD方向の収縮量の差の絶対値を30μm以下とすれば、基材の材質や塗工層の組成によらず、コート紙表面の1〜3cm四方の大きさの凸凹の発生が抑制された。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】熱機械分析装置(TMA)の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 熱機械分析装置(TMA)
2 引張プローブ
3 掴み具
4 加温チャンバー(加熱部)
5 温度センサー
10 短冊状電子写真用コート紙
12 張力発生部
14 寸法検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維を含む原紙と、該原紙の少なくとも片面に設けられた顔料及び接着剤を含む塗工層とを有し、
前記原紙の厚みと前記塗工層の厚みとの比率が、原紙の厚み:塗工層の厚み=9:2以上2:1以下であり、
熱機械分析装置にて100℃で測定した、幅4mm、長さ20mmのコート紙全層のCD方向の収縮量と基材のCD方向の収縮量との差の絶対値が30μm以下である電子写真用コート紙。
【請求項2】
J Tappi No.5王研式透気度が1500秒以下である請求項1に記載の電子写真用コート紙。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−117436(P2010−117436A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289109(P2008−289109)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】