説明

電子写真用トナーおよび金属含有化合物

【課題】本発明の目的は、良好な色相を有し、耐光性、帯電性の湿度依存性(耐水性、帯電安定性)が良好で、画像形成した際の画像の中抜けが無い電子写真用トナーおよびそのための金属含有化合物を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)で表される金属含有化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオン供給化合物を用いた電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用したカラーコピア(登録商標)、カラープリンターにおいて使用される電子写真用トナーに要求される性能としては、色再現性、画像の透過性、耐光性などが挙げられるが、現在一般に用いられている顔料を着色材として粒子中に分散させた電子写真用トナーは、顔料を用いているため耐光性には優れるが、着色剤が不溶性であるため凝集し易く、透明性の低下や透過色の色相変化が問題となっている。
【0003】
そこで、着色剤を顔料から染料に変更したトナーが開示されている(例えば特許文献1参照)が、これらのトナーは逆に透明性、色相変化に優れるものの耐光性に問題があり、更には、極く一般的な染料は比較的低分子量であるため熱定着の際に昇華してしまい、定着ローラー表面やプリンタ機内の汚染、画像濃度の低下、滲み等を引き起こすという欠点を有していた。
【0004】
これらの欠点を解決する為に、近年では、金属錯体色素を着色剤として使用したトナーが開示されている(例えば特許文献2参照)が、上記記載の金属錯体色素を含有するトナーは耐光性には優れるが、溶解性が低く、凝集などが原因で、プリント後の反射スペクトルが異なる等、更なる改良が望まれていた。
【0005】
これらの問題は、金属含有化合物を用いた電子写真用トナー(例えば特許文献3参照)により、大きく改良され、このトナーから得られる画像は色再現性、耐光性に優れ非常に良好であった。
【0006】
また、電子写真用トナーは、通常、結着樹脂を顔料、必要に応じてワックス等の離型剤や帯電制御剤と共に溶融混練した後、微粉砕し、更に分級する混練粉砕法により製造されている。
【0007】
通常の混練粉砕法により得られるトナーは、一般的には不定形で、その粒径分布はブロードで流動性が低く、転写性が低く、定着エネルギーが高く、トナー粒子間で帯電量が不均一で、帯電安定性が低いと言う問題点があった。更に、このようなトナーから得られる画像はその画質が未だ不満足のものであった。
【0008】
一方、混練粉砕法による前記トナーの問題点を克服するために、重合法によるトナーの製造方法が提案されている。この方法は、粉砕工程が含まれていないため、そのトナーの製造には練り工程及び粉砕工程が必要でなく、エネルギーの節約、生産時間の短縮、製品収率の向上等のコスト削減の寄与が大きい。また、このような重合法により得られる重合トナー粒子における粒度分布も、粉砕法によるトナーの粒度分布に比べてシャープな分布の形成が容易である上、ワックスの内包化も容易でトナーの流動性を大きく向上させることもできる。また、球形トナーを得ることも容易である。
【0009】
しかし、重合法によるトナーには未だ解消されていない課題も多い。例えば上記方法で得られたトナーは製造時に洗浄されたとしてもトナー粒子には界面活性剤が残存するため、トナーを高温高湿下で使用したり、保存すると、トナー粒子が吸湿し、帯電立ち上がり性や帯電安定性が低下するため、画像上に中抜けやカブリが発生したり、ドット再現性や細線再現性が低下し、画質が悪化した。特に、複数のトナー像を重ね合わせるフルカラー画像の形成時には画像上に中抜けやカブリの発生が顕著であった(特許文献4参照)。
【0010】
このような背景から、色再現性、耐光性を十分に満足し、かつ耐水性、帯電安定性が良好で画像の中抜けの無いトナーが望まれていた。
【特許文献1】特開平3−276161号公報
【特許文献2】特開平10−20559号公報
【特許文献3】特開2007−34264号公報
【特許文献4】特開2004−302066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、本発明の目的は、良好な色相を有し、耐光性、帯電性の湿度依存性(耐水性、帯電安定性)が良好で、画像形成した際の画像の中抜けが無い電子写真用トナーおよびそのための金属含有化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の特定の金属含有化合物を電子写真用トナー中に存在させることで、良好な色相を有し、耐光性、耐水性、帯電安定性が良好で、画像形成した際の画像の中抜けが無い電子写真用トナーが得られることを確認し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の上記目的は以下の構成により達成できる。
1.下記一般式(1)で表される金属含有化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、Mは2価の金属イオンを表し、Aはアリール基、アルケニル基、アルキニル基、6員の複素アリール基又は6員の複素環基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Bは下記一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
で表され、Lはアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、Lはアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−O−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、nは0〜10の整数を表し、Cはアリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はヘテロ環基を表し、*の位置で一般式(1)と結合する。〕
2.一般式(1)におけるMがCu2+であることを特徴とする前記1に記載の電子写真用トナー。
3.下記一般式(3)で表されることを特徴とする金属含有化合物。
【0017】
【化3】

【0018】
〔式中、Aはアリール基、アルケニル基、アルキニル基、6員の複素アリール基又は6員の複素環基を表し、Ra1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Bは下記一般式(4)
【0019】
【化4】

【0020】
で表され、La1はアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、La2はアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−O−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、mは0〜10の整数を表し、Cはアリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はヘテロ環基を表し、*の位置で一般式(3)と結合する。〕
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、良好な色相を有し、耐光性、帯電性の湿度依存性(耐水性、帯電安定性)が良好で、画像形成した際の画像の中抜けが無い電子写真用トナーおよびそのための金属含有化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
《一般式(1)で表される金属含有化合物》
本発明の一般式(1)で表される金属含有化合物について説明する。
【0024】
本発明の一般式(1)は下記一般式(1a)および一般式(1b)の極限構造式を用いて表すこともできる。本発明において一般式(1)と一般式(1a)と一般式(1b)は本質的に同一であり、区別されない。尚、共有結合(−で示す)と配位結合(…で示す)の区別も形式的なもので、絶対的な区別を表すものではない。
【0025】
【化5】

【0026】
本発明の金属含有化合物は、下記一般式(1−2)の化合物を合成した後に2価の金属化合物と反応させて得られるものであることが好ましい。これらの金属含有化合物の合成方法は、「キレート化学(5)錯体化学実験法[I](南江堂編)」などに記載の方法に準じて合成することが出来る。使用される2価の金属化合物としては、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化チタン(II)、塩化鉄(II)、塩化銅(II)、塩化コバルト、塩化マンガン(II)、塩化鉛、酢酸鉛、塩化水銀、酢酸水銀、過塩素酸銅等が挙げられるが、前述のとおり、金属含有化合物自身の色およびキレート化した色素の色調の点から、好ましくは塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、塩化銅、酢酸銅、過塩素酸銅であり、最も好ましいのは酢酸銅である。また、本発明の金属含有化合物は中心金属に応じて中性の配位子を有してもよく、代表的な配位子としてはHO或はNHが挙げられる。
【0027】
【化6】

【0028】
一般式(1)、(1a)、(1b)、において、Mは2価の金属イオンを表し、好ましくは2価の遷移金属イオンである。2価の遷移金属イオンの中でも金属含有化合物自身の色および一般式(1)と相互作用した色素の色調からニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオンが好ましく、最も好ましくは銅イオンである。
【0029】
一般式(1)、一般式(1a)、一般式(1b)および一般式(1−2)において、Aはアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、又は6員の複素アリール基(例えば、ピリジル基、ピリダジル基等)、6員の複素環基(例えば、ピペリジニル基、モルホリル基、チオモルホリニル基等)を表し、これらはさらに置換基を有しても良い。
【0030】
Aに置換することのできる置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、複素アリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等)などが挙げられ、これらの基はさらに同様の基で置換されていてもよい。
【0031】
Aに置換する置換基のうち、少なくとも1つは電子吸引性基であることが好ましく、好ましい電子吸引性基としてはハメットの置換基定数(σp値)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基が挙げられる。
【0032】
σp値が0.1以上0.9以下の置換基について説明する。ここでいうハメットの置換基定数σpの値としては、Hanch,C.Leoらの報告(例えば、J.Med.Chem.16、1207(1973);ibid.20、304(1977))に記載の値を用いるのが好ましい。
【0033】
例えば、σpの値が0.10以上の置換基または原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基(例えば、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチルチオメチル、トリフルオロメタンスルホニルメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロフェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、置換芳香族基(例えば、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル)、複素環残基(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ)、ジトリフルオロメチルアミノ基、トリフルオロメトキシ基、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、アシロキシ基(例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えば、ベンゼンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えば、ジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)などが挙げられる。
【0034】
またσpの値が0.35以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フッ素置換アルキル基(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、フッ素またはスルホニル基置換芳香族基(例えば、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル)、複素環残基(例えば、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えば、ジメトキシホスホリル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基などが挙げられる。
【0035】
σpの値が0.60以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、ジフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)などが挙げられる。
【0036】
Aに置換する電子吸引性基として好ましくはハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基(特にフッ素置換アルキル基)、アシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基である。
【0037】
Aとして好ましくはハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基が少なくとも1つ以上置換したアリール基、6員の複素アリール基、6員の複素環基である。
【0038】
は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ハロゲン原子、又はシアノ基を表し、各々の例としては、上述したAに置換できる置換基の例の中で、該当する同義の基を挙げることができる。
【0039】
として好ましくは複素環基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、シアノ基であり、さらに好ましくはアルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基である。
【0040】
前記一般式(2)において、Lはアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基等)、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−S−、−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、Lは上述したAに置換できる置換基を有しても良い。
【0041】
として好ましくはアルキレン基、−NH−、−S−、−CO−であり、さらに好ましくはアルキレン基、−NH−、−CO−である。
【0042】
前記一般式(2)において、Lはアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基等)、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−O−、−S−、−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、Lは上述したAに置換できる置換基を有しても良く、nは0〜10の整数を表し、nが0の場合、LとCが直接結合する。
【0043】
として好ましくはアルキレン基、−NH−、−CO−、−O−、−OOCである。
【0044】
前記一般式(2)において、nは0〜10までの整数を表し、好ましいnの値は0〜7であり、さらに好ましくは0〜5であり、nが2以上の整数の場合、Lで表される2価の連結基は同一であっても異なっていても良い。
【0045】
前記一般式(2)において、Cはアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、複素アリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)を表し、Cは置換基を有してもよく、Cに置換できる置換基としては一般式(1)のAに置換することのできる置換基と同様の基をあげることができる。
【0046】
Cとして好ましくはアリール基、シクロアルキル基、複素アリール基、複素環基であり、さらに好ましくはアリール基、複素アリール基、複素環基であり、特に好ましくはアリール基である。
【0047】
、L及びCに置換する好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基であり、特に好ましい基はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基である。
【0048】
前記一般式(3)におけるA、Ra1は、それぞれ一般式(1)のA、Rと同義の基を表し、好ましい基も同義の基である。
【0049】
前記一般式(4)におけるLa1、La2、及びCは、一般式(1)におけるL、L、及びCと同義の基を表し、好ましい置換基も同義の基である。
【0050】
前記一般式(4)において、mは0〜10までの整数を表し、好ましいmの値は0〜7であり、さらに好ましくは0〜5であり、mが2以上の整数の場合、La2で表される2価の連結基は同一であっても異なっていても良い。
【0051】
以下に一般式(1)で表される金属含有化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。表中の*はそれぞれの基の結合位置を示す。
【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
【化13】

【0059】
【化14】

【0060】
【化15】

【0061】
【化16】

【0062】
本発明の金属含有化合物を電子写真用トナー中に添加して使用する場合には、画像形成の為に少なくとも1種のキレート可能な色素が用いられる。キレート可能な色素とは、本発明の金属含有化合物とキレートすることが可能であればよく、この様な色素として、例えば特開平3−114892号、同4−62092号、同4−62094号、同4−82896号、同5−16545号、同5−177958号、同5−301470号に記載の色素が挙げられる。
【0063】
イエロー色素として好ましくは、下記一般式(5)の色素が挙げられる。
【0064】
【化17】

【0065】
式中、R11及びR12は各々、水素原子又は置換基を表し、R13は置換基を有してもよいアルキル基又はアリール基を表し、Zは2個の炭素原子と共に5〜6員の芳香族環を構成するに必要な原子群を表す。
【0066】
一般式(3)で表される色素は、例えば下記一般式(B)で表される化合物をChemical Reviews,Vol.75,241(1975)に記載の方法に準じてジアゾ化し、下記一般式(A)で表される化合物との公知のカップリング反応に従って製造することができる。
【0067】
【化18】

【0068】
式中、R11、R12、R13及びZは、それぞれ前記一般式(5)のR11、R12、R13及びZと同義である。
【0069】
以下に一般式(5)で表されるイエロー色素の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0070】
【化19】

【0071】
【化20】

【0072】
【化21】

【0073】
マゼンタ色素として好ましくは、下記一般式(6)で表される色素が挙げられる。
【0074】
【化22】

【0075】
式中、R21は水素原子、ハロゲン原子又は置換基を表し、R22は、それぞれ置換されてもよい芳香族炭素環基又は芳香族複素環基を表す。Xはメチン基又は窒素原子を表す。R23は下記一般式(7)又は(8)を表し、X′は炭素原子又は窒素原子を表し、Yは含窒素芳香族複素環を形成する原子群を表す。Wは芳香族炭素環又は芳香族複素環を形成する原子群を表し、R24はアルキル基を表す。
【0076】
【化23】

【0077】
一般式(6)で表される色素は、従来公知の方法に準じて合成することが出来る。例えば、一般式(6)中のアゾメチン色素は特開昭63−113077号、特開平3−275767号、同4−89287号に記載の酸化カップリング方法に準じて合成することが出来る。
【0078】
以下に一般式(6)で表されるマゼンタ色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0079】
【化24】

【0080】
【化25】

【0081】
【化26】

【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
シアン色素として好ましくは、下記一般式(9)の色素が挙げられる。
【0085】
【化29】

【0086】
式中、R31及びR32は各々、置換又は無置換の脂肪族基を表し、R33は置換基を表す。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の時、複数のR33は同じでも異なってもよい。R34、R35及びR36は何れもアルキル基を表すが、R34、R35及びR36は同一でも異なってもよい。ただし、R35及びR36は炭素数3〜8のアルキル基である。
【0087】
一般式(9)で表される色素は、従来公知の方法に準じて合成することが出来る。例えば特開2000−2255171号、同2001−334755号、同2002−234266号等に記載の酸化カップリング方法に準じて合成することが出来る。
【0088】
以下に一般式(9)で表されるシアン色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
【化30】

【0090】
【化31】

【0091】
【化32】

【0092】
【化33】

【0093】
【化34】

【0094】
【化35】

【0095】
前記一般式(1)で表される金属含有化合物と、前記一般式(5)、(6)又は(9)で表される色素から成る金属キレート色素は、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表されるものである。
【0096】
【化36】

【0097】
一般式(10)〜(12)において、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R31、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ前述の一般式(5)、(6)及び(9)に記載の置換基と同義である。又、A、R1及びBも、それぞれ前述の一般式(1)に記載の置換基と同義であり、M2+は2価の金属イオンを表す。
【0098】
本発明に用いられるキレート色素は、電子写真用トナー以外にも様々な用途で用いることが出来る。トナー用としては、特開10−265690、特開2000−345059等に記載の方法に準じて用いることが出来るが、本発明の色素の使用用途や使用方法はこれらに限定されるものではない。
【0099】
以下に、本発明の電子写真用トナーについて説明する。
【0100】
(染料分散方法)
本発明の電子写真用トナーは染料分散液を結着樹脂中に直接分散、或いは着色微粒子分散液を混合し、更に後述する所望の添加剤を使用し、混練・粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化分散造粒法、カプセル化法等その他の公知の方法により製造することができる。これらの製造方法の中で、画像の高画質化に伴うトナーの小粒径化を考慮すると、製造コスト及び製造安定性の観点から乳化重合の方が好ましい。乳化重合方は、乳化重合によって製造された熱可塑性樹脂エマルジョンを、他の染料固体分散物等、トナー粒子成分の分散液と混合し、pH調整により生成した粒子表面の反発力と電解質添加による凝集力のバランスを取りながら緩慢凝集させ、粒径・粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に加熱撹拌することで微粒子間の融着・形状制御を行うことによりトナー粒子を製造する。
【0101】
染料分散液を直接分散する場合は通常用いられるロール練肉分散機、ビーズ分散機、高速攪拌分散機、媒体型攪拌機などを用いて分散することも可能であるが、以下の着色微粒子分散物と同様の方法により作製することができる。即ち、染料を有機溶剤中に溶解(あるいは分散)し、水中で乳化分散後、有機溶剤を除去することにより得ることもできる。
【0102】
(着色微粒子)
本発明の電子写真用トナーの1つの形態として、熱可塑性樹脂中に少なくとも着色微粒子を分散することができる。該着色微粒子は少なくとも本発明の一般式(1)で表される金属含有化合物(金属錯体化合物)を含有することを特徴としており、後述の液中乾燥法などの分散方法を使用することで着色微粒子の分散粒径を制御可能である。また、該熱可塑性樹脂とは異なる組成の樹脂又は高沸点溶剤を更に含有してなることも好ましく、上述の染料を用いたトナーとして一般に知られているトナー結着樹脂中に染料を直接分散、もしくは、溶解させる代わりに、着色微粒子(染料を単に分散させただけのものも含む)を熱可塑性樹脂中に分散させることができる。
【0103】
着色微粒子中の色素は樹脂中に分子レベルで溶解するため、トナー中において光を遮断する隠蔽性粒子などの成分を無くすことが可能となり、それぞれのトナーの単色における透明性が向上し、更には重ね合わせ色における透明性も向上すると考えられる。図1は熱可塑性樹脂中に着色微粒子を分散させた本発明の電子写真用トナー粒子の断面を模式的に示している。また好ましい形態の一例としては、図2で示す様に着色微粒子が外殻樹脂(シェル)で被覆されていてもよく、この場合、着色微粒子の内部(コア)を構成する樹脂と熱可塑性樹脂(結着樹脂)の組み合わせに制限がなく、材料の自由度が大きく、またカラートナー4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に関して外殻樹脂(シェル)のみが同一であれば、同様の製造条件で製造可能となるため、コスト面での利点も大きい。また、着色剤である染料の着色微粒子外への移行(着色微粒子表面への露出)が起こらないため、一般的に染料を使用したトナーにおいて問題視される、熱定着時の染料の昇華やオイル汚染が生じる心配がない。
【0104】
(着色微粒子の作製方法)
次いで、本発明に係る好ましい形態の1つである着色微粒子の作製方法の1例について説明する。
【0105】
本発明に係る着色微粒子は、例えば、色素(又は色素及び樹脂、高沸点有機溶媒、添加剤など)を有機溶剤中に溶解(あるいは分散)し、水中で乳化分散後、有機溶剤を除去すること(液中乾燥法と言う)により得ることができ、更に樹脂を添加し外殻樹脂(シェル)で被覆する場合は、該着色微粒子に重合性不飽和二重結合を有するモノマーを添加し、活性剤の存在下、乳化重合を行い、重合と同時にコア表面に沈着させることによってコアシェル構造を有する着色微粒子を得ることができる。あるいは、例えば、乳化重合により予め樹脂微粒子の水性分散体を形成し、この樹脂微粒子水性分散体に染料を溶解した有機溶媒溶液を混合し、あとから樹脂微粒子中に染料を含浸した後、該着色微粒子をコアとして、シェルを形成する等の方法等、種々の方法により得ることができる。
【0106】
シェルは有機樹脂からなることが好ましく、シェルを形成する方法としては有機溶剤に溶解した樹脂を徐々に滴下し、析出と同時に樹脂を該着色微粒子コア表面に吸着させる方法などもあるが、本発明においては色素と樹脂を含有したコアとなる着色微粒子を形成した後、重合性不飽和二重結合を有するモノマーを添加し活性剤の存在下、乳化重合を行い、重合と同時にコア表面に沈着させシェルを形成する方法が好ましい。
【0107】
この他にも色素を界面活性剤などを用いて水中でビーズ分散機、高速攪拌分散機、媒体型攪拌機などを用いて分散させて形成してもよい。
【0108】
(通常の界面活性剤)
本発明に係る好ましい形態の1つである着色微粒子調製時の乳化に際しては、必要に応じて通常のアニオン系乳化剤(界面活性剤)、及び/またはノニオン系乳化剤(界面活性剤)を用いることができる。
【0109】
上記通常のノニオン系乳化剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックコポリマーなどを挙げることができる。
【0110】
また上記通常のアニオン系乳化剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル類、ポリエトキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩、及びその誘導体類などを挙げることができる。
(染料)
本発明で用いられる染料について説明する。
【0111】
本発明は、一般に知られている染料を用いることができ、本発明においては色素が油溶性染料であることが好ましい。油溶性染料は通常カルボン酸やスルホン酸等の水溶性基を有さない有機溶剤に可溶で水に不溶な染料であるが、水溶性染料を長鎖の塩基と造塩することにより油溶性を示す染料も含まれる。例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料と長鎖アミンとの造塩染料が知られている。
【0112】
以下に限定されるものではないが、例えば、オリエント化学工業株式会社製のValifast Yellow 4120、Valifast Yellow 3150、Valifast Yellow 3108、Valifast Yellow 2310N、Valifast Yellow 1101、Valifast Red 3320、Valifast Red 3304、Valifast Red 1306、Valifast Blue 2610、Valifast Blue 2606、Valifast Blue 1603、Oil Yellow GG−S、Oil Yellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow 107、Oil Yellow 105、Oil Scarlet 308、Oil Red RR、Oil Red OG、Oil Red 5B、Oil Pink 312、Oil Blue BOS、Oil Blue 613、Oil Blue 2N、Oil Black BY、Oil Black BS、Oil Black 860、Oil Black 5970、Oil Black 5906、Oil Black 5905、日本化薬株式会社製のKayaset Yellow SF−G、Kayaset Yellow K−CL、Kayaset Yellow GN、Kayaset Yellow A−G、Kayaset Yellow 2G、Kayaset Red SF−4G、Kayaset Red K−BL、Kayaset Red A−BR、Kayaset Magenta 312、Kayaset Blue K−FL、有本化学工業株式会社製のFS Yellow 1015、FS Magenta 1404、FS Cyan 1522、FS Blue 1504、C.I.Solvent Yellow 88、83、82、79、56、29、19、16、14、04、03、02、01、C.I.Solvent Red 84:1、C.I.Solvent Red 84、218、132、73、72、51、43、27、24、18、01、C.I.Solvent Blue 70、67、44、40、35、11、02、01、C.I.Solvent Black 43、70、34、29、27、22、7、3、C.I.Solvent Violet 3、C.I.SolventGreen 3及び7、Plast Yellow DY352、Plast Red 8375、三井化学社製MS Yellw HD−180、MS Red G、MS Msgenta HM−1450H、MS Blue HM−1384、住友化学社製ES Red 3001、ES Red 3002、ES Red 3003、TS Red 305、ES Yellow 1001、ES Yellow 1002、TS Yellow 118、ES Orange 2001、ES Blue 6001、TS Turq Blue 618、Bayer社製MACROLEX Yellow 6G、Ceres Blue GNNEOPAN Yellow O75、Ceres Blue GN、MACROLEX Red Violet R等が挙げられる。
【0113】
油溶性染料として分散染料を用いることができ、以下に限定されるものではないが、例えば、C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等が挙げられる。
【0114】
その他、油溶性染料として特に好ましいものとしては、フェノール、ナフトール類、ピラゾロン、ピラゾロトリアゾールなどの環状メチレン化合物、開鎖メチレン化合物などのカプラーから誘導されるアゾメチン色素、インドアニリン色素なども好ましく用いられる。
【0115】
そのような色素として好ましくは、例えば特開平3−114892号、同4−62092号、同4−62094号、同4−82896号、同5−16545号、同5−177958号、同5−301470号に記載の色素が挙げられる。
【0116】
(粒径)
本発明における好ましい形態の1つである着色微粒子は体積平均粒子径が10nm〜1μmの範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が10nmよりも大きいことで、単位体積あたりの表面積が大きくなりすぎないので、染料を着色微粒子のポリマー中に封入する効果、更に着色微粒子の安定性、保存安定性、の観点から好ましく、一方、1μmよりも小さいことで、微粒子作製時での沈降の起き易さ、停滞安定性、また、トナーとした場合の光沢感、透明感の観点から好ましい。従って着色微粒子の平均粒子径は10〜1μmであることが好ましく、10〜500nmがより好ましく、更に好ましくは10〜100nmである。
【0117】
体積平均粒子径は動的光散乱法、レーザ回折法、遠心沈降法、FFF法、電気的検知体法などを用いて求めることが可能であるが、本発明では、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて動的光散乱法で求めるのが好ましい。
【0118】
(染料含有量)
本発明に係る着色微粒子は染料の含有量が10〜70質量%の範囲が好ましく、染料が10〜70質量%含有されることで、十分な濃度が得られ、樹脂による色材の保護能が発現し、また微粒子分散体としての保存安定性にも優れるため、凝集等による粒径増大を防止することができる。
【0119】
(金属含有化合物含有量)
一般式(1)で表される金属含有化合物は単独で用いても2種を併用しても良いが、着色剤に対して0.8〜3倍モルである事が好ましく、更に好ましくは1〜2倍モルであり、併用する色素にもよるが、0.8倍モルより多いと耐光性が著しく向上し、また、3倍モルより少なくすることにより着色微粒子の分散安定性が向上し、トナー化の際に有利となる。
【0120】
(トナー)
本発明の電子写真用トナーにおいては上記の熱可塑性樹脂及び着色微粒子の他、公知の荷電制御剤、オフセット防止剤等を使用することができる。荷電制御剤としては特に限定されるものではない。カラートナーに用いる負荷電制御剤としては、カラートナーの色調、透光性に悪影響を及ぼさない無色、白色あるいは淡色の荷電制御剤が使用可能であり、例えば、サリチル酸誘導体の亜鉛やクロムの金属錯体、カリックスアレーン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物等が好適に用いられる。上記サリチル酸金属錯体としては、例えば、特開昭53−127726号公報、特開昭62−145255号公報等に記載のものが、カリックスアレーン系化合物としては、例えば、特開平2−201378号公報等に記載のものが、有機ホウ素化合物としては、例えば、特開平2−221967号公報に記載のものが、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物としては、例えば、特開平3−1162号公報に記載のものが使用可能である。このような荷電制御剤を用いる場合、熱可塑性樹脂(結着樹脂)100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5.0質量部使用することが望ましい。
【0121】
オフセット防止剤としても特に制限されることはなく、例えば、ポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油ワックス、蜜ろうワックス等が使用可能である。このようなワックスの添加量は、熱可塑性樹脂(結着樹脂)100質量部に対して0.5〜5質量部、好ましくは1〜3質量部が望ましい。これは添加量が0.5質量部以上であることで添加による効果の観点から好ましく、5質量部以下であることで透光性や色再現性の良化の観点から好ましい。
【0122】
また、色素の保存性を向上させるために画像安定化剤として例えば特開平8−29934公報の10〜13頁に記載及び引用されている化合物を添加してもよく、市販されているフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系の化合物なども挙げられる。同様の目的で紫外線吸収剤として例えば有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線吸収剤を添加してもよい。有機系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾーエート等のヒドロキシベンゾエート系化合物等を挙げられる。無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウム等を挙げることが出来るが、有機系紫外線吸収剤の方が好ましく、紫外線吸収剤としては、50%透過率での波長が350〜420nmが好ましく、より好ましくは360nm〜400nmである。350nm以上であることで紫外線遮断能の良化の観点から好ましく、420nm以下であることで着色回避の観点から好ましい。添加量については特に制限はないが、色素に対して10〜200質量%の範囲が好ましく、50〜150質量%がより好ましい。
【0123】
(熱可塑性樹脂)結着樹脂
本発明の電子写真用トナーに含有される熱可塑性樹脂としては、好ましい形態の1つである着色微粒子又は銅錯体化合物微粒子との密着性が高くなる熱可塑性樹脂が好ましく、特に溶剤可溶性のものが好ましい。更に、ポリマーの前駆体が溶剤可溶性であれば3次元構造を形成する硬化性樹脂も使用可能である。熱可塑性樹脂としては、一般にトナーの結着樹脂として用いられているものが特に制限なく用いられるが、例えば、スチレン系の樹脂やアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート等のアクリル系樹脂、スチレンアクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂あるいはエポキシ系樹脂などが好適に用いられるが、透明性や重ね合わせ画像の色再現性を高めるため、透明性が高く、溶融特性が低粘度でシャープメルト性の高い樹脂が要求される。このような特性を有する結着樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が適している。
【0124】
また、結着樹脂としては数平均分子量(Mn)が3000〜6000、好ましくは3500〜5500、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2〜6、好ましくは2.5〜5.5、ガラス転移点が50〜70℃、好ましくは55〜70℃及び軟化温度が90〜110℃、好ましくは90〜105℃である樹脂を使用することが望ましい。
【0125】
結着樹脂の数平均分子量が3000以上であることでフルカラーのベタ画像を折り曲げた際の折り曲げ定着性(画像部の剥離、画像欠損の発生防止)の良化の観点から好ましく、6000以下であることで定着時の熱溶融性、定着強度の良化の観点から好ましい。また、Mw/Mnが2以上であることで高温オフセット発生防止の良化の観点から好ましく、6以下であることで定着時のシャープメルト特性、ひいてはトナーの透光性ならびにフルカラー画像形成時の混色性の良化の観点から好ましい。また、ガラス転移点が50℃以上であることでトナーの耐熱性、ひいては保管時でのトナーの凝集発生防止の良化の観点から好ましく、70℃以下であることで溶融性、ひいては定着性、フルカラー画像形成時の混色性の良化の観点から好ましい。また、軟化温度が90℃以上であることで高温オフセット防止の良化の観点から好ましく、110℃以下であることで定着強度、透光性、混色性及びフルカラー画像の光沢性の良化の観点から好ましい。
【0126】
本発明の電子写真用トナーは上記した熱可塑性樹脂(結着樹脂)、着色微粒子及びその他の所望の添加剤を使用し(微粒子については数種混合でも、一種類毎の微粒子を混合しても良く)、混練・粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化分散造粒法、カプセル化法等その他の公知の方法により製造することができる。これらの製造方法の中で、画像の高画質化に伴うトナーの小粒径化を考慮すると、製造コスト及び製造安定性の観点から乳化重合方が好ましい。
【0127】
乳化重合方は、乳化重合によって製造された熱可塑性樹脂エマルジョンを他の着色微粒子等、トナー粒子成分の分散液と混合し、pH調整により生成した粒子表面の反発力と電解質添加による凝集力のバランスを取りながら緩慢凝集させ、粒径・粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に加熱撹拌することで微粒子間の融着・形状制御を行うことによりトナー粒子を製造する。本発明の電子写真用トナー粒子は、体積平均粒径を4〜10μm、好ましくは6〜9μmに調整することが画像の高精細再現性の観点から好ましい。
【0128】
本発明の電子写真用トナーにおいては、トナーの流動性付与やクリーニング性向上等の観点から後処理剤を添加・混合して使用することができ、特に限定されるものではない。このような後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子やアルミナ微粒子、チタニア微粒子等の無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等の無機ステアリン酸化合物微粒子、またチタン酸ストロンチウムやチタン酸亜鉛等の無機チタン酸化合物微粒子等を使用することができ、単独あるいは異種の添加剤を併用して使用することが可能である。これらの微粒子は、耐環境安定性や耐熱保管性の観点からシランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等で表面処理して用いることが望ましく、添加量はトナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部用いることが望ましい。
【0129】
本発明の電子写真用トナーは、キャリアと混合して用いる2成分現像用トナーとして、また、キャリアを使用しない1成分現像用トナーとして使用可能である。
【0130】
本発明の電子写真用トナーと組み合わせて使用するキャリアとしては、従来より2成分現像用のキャリアとして公知のものを使用することができ、例えば、鉄やフェライト等の磁性体粒子からなるキャリア、このような磁性体粒子を樹脂で被覆してなる樹脂コートキャリア、あるいは磁性体微粉末を結着樹脂中に分散してなるバインダー型キャリア等を使用することができる。これらのキャリアの中でも、被覆樹脂としてシリコーン系樹脂、オルガノポリシロキサンとビニル系単量体との共重合樹脂(グラフト樹脂)またはポリエステル系樹脂を用いた樹脂コートキャリアを使用することがトナースペント等の観点から好ましく、特にオルガノポリシロキサンとビニル系単量体との共重合樹脂にイソシアネートを反応させて得られた樹脂で被覆したキャリアが、耐久性、耐環境安定性及び耐スペント性の観点から好ましい。上記ビニル系単量体としては、イソシアネートと反応性を有する水酸基等の置換基を有する単量体を使用する必要がある。また、キャリアの体積平均粒径は20〜100μm、好ましくは20〜60μmのものを使用することが高画質の確保とキャリアかぶり防止の観点から好ましい。
【0131】
(画像形成方法)
次に、本発明の電子写真用トナーを用いる画像形成方法について説明する。
【0132】
本発明において、画像形成の方式については特に限定されるものではない。例えば、感光体上に複数の画像を形成し、一括で転写する方式、感光体に形成された画像を転写ベルトなどに逐次転写する方式など、特に限定されないが、より好ましくは感光体上の複数の画像を形成し、一括で転写する方式である。
【0133】
この方式は感光体に対して均一帯電させ第一の画像に応じた露光を与え、その後第一回目の現像を行い、感光体上に第一のトナー像を形成させる。次いで、その第一の画像が形成された感光体を均一帯電し第二の画像に応じた露光を与え、第二回目の現像を行い、感光体上に第二のトナー像を形成させる。更に第一及び第二の画像が形成された感光体を均一帯電し、第三の画像に応じた露光を与え、第三回目の現像を行い、感光体上に第三のトナー像を形成させる。更に第一、第二及び第三の画像が形成された感光体を均一帯電し、第四の画像に応じた露光を与え、第四回目の現像を行い、感光体上に第四のトナー像を形成させる。
【0134】
例えば、第一回目をイエロー、第二回目をマゼンタ、第三回目をシアン、第四回目を黒トナーで現像することで、フルカラートナー画像を感光体上に形成するものである。その後、感光体上に形成された画像を紙等の画像支持体に一括して転写を行い、更に画像支持体に定着し、画像を形成する。
【0135】
本方式では感光体上に形成された画像を一括して紙等に転写し、画像を形成する方式であるため、いわゆる中間転写方式とは異なり、画像を乱す要因となる転写の回数が1回ですみ、画像品質を高くすることができる。
【0136】
感光体に現像する方式としては複数の現像が必要であることから、非接触現像が好ましい。また、現像に際しては交番電界を印加する方式も好ましい方式である。
【0137】
また前記した如く、現像方式としては像形成体上に重ね合わせカラー画像を形成し、一括転写する方式については非接触現像方式が好ましい。
【0138】
二成分現像剤として使用することのできるキャリアの体積平均粒径は15〜100μm、より好ましくは25〜60μmのものが良い。キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0139】
キャリアは更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0140】
本発明に使用される好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式を挙げることができる。特に、接触加熱方式の代表的なものとして、熱ロール定着方式及び固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
【0141】
(画像)
本発明の電子写真用トナーを使用して現像・転写・定着を行う画像形成において、その転写から定着の状態は、転写材の上に転写された本発明の電子写真用トナーが、定着後においてもその着色微粒子が崩壊せず、トナー粒子中に分散された状態で紙の表面に付着した状態である。
【0142】
本発明においては、上記のように着色微粒子をトナー粒子中に分散させることにより、トナー粒子が高濃度の染料を含むにもかかわらず、染料がトナー粒子の表面に遊離しない(移行しない)ため、従来のように染料をそのまま熱可塑性樹脂(トナー結着樹脂)中に分散、もしくは、溶解して得られた染料がトナー粒子表面に露出しているトナーの問題点である、1)帯電量が低い、2)高温高湿下及び低温低湿下での帯電量の差が大きい(環境依存性)、3)着色剤の種類例えばフルカラー画像記録のようにシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各顔料を用いる場合の各色トナーについて帯電量がばらつく、などを払拭することができる。また、転写材への熱定着の際、着色剤である染料の着色微粒子外への移行(着色微粒子表面への露出)が起こらないため、一般的な染料を使用したトナーにおいて問題となる熱定着時の染料の昇華やオイル汚染が生じることはない。
【0143】
以下に、本発明の一般式(1)で表される金属含有化合物の例示化合物の合成例を示す。
合成例1
<例示化合物2の合成>
【0144】
【化37】

【0145】
リガンド1の合成
100mlの3つ口フラスコに化合物1を10g、トルエン50ml、トリエチルアミン20.9g、塩化カルシウム13.9gを加えて80℃まで加熱、撹拌した。内温が80℃に達した後に、化合物2 13.0gを1hかけて滴下した。滴下終了後、冷却し、塩酸で分液後に純水でpHを中性にして溶媒を留去した。トルエン、酢酸エチルを展開溶媒として用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、リガンド1を12.3g得た。
【0146】
H−NMR、CDCl δ=3.65−3.75(s、2H)、δ=7.10−7.20(m、4H)、δ=7.28−7.38(m、2H)、δ=7.44−7.48(d、2H)、δ=7.59−7.68(t、1H)、δ=7.90−7.99(d、2H)、δ=14.15(s、1H)
例示化合物2の合成
200mlの3つ口フラスコにリガンド1を5g、アセトンを40ml加えて内温が55℃になるまで加熱、撹拌した。その後MeOH/水=5/1の溶媒40mlに酢酸銅1水和物を2.1g溶解し、30分かけて滴下した。滴下終了後、析出している固体をろ過することで例示化合物2を4.3g得た。
合成例2
<例示化合物9の合成>
【0147】
【化38】

【0148】
化合物3の合成
KOH 6.8gを溶解したエタノールに3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸 10g、NaI 0.1gを加えて加熱還流した。C1837Br 21.1gをゆっくりと滴下し、5時間加熱還流した。冷却後、反応液を水400ml中に加え、濃塩酸を加えた。析出した固体をろ過し、酢酸から再結晶することで6.3gの化合物3を得た。
化合物4、リガンド2の合成
100mlのナスフラスコに化合物3を6.3g、SOClを3.6g、DMFを0.05g、トルエンを30ml加えて70℃に加熱した、1h後、冷却して溶媒をエバポレーターで留去した(化合物4)。
【0149】
200mlの3つ口フラスコに化合物5を4.97g、トリエチルアミンを4.6g、塩化カルシウムを3.33g、トルエン25mlを加えて水冷した。化合物4をトルエン20mlに溶解し、1hで滴下した。滴下終了後、塩酸で分液後に純水でpHを中性にして溶媒を留去した。トルエン、酢酸エチルを展開溶媒として用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、リガンド2を8.3g得た。
H−NMR、CDCl δ=1.15−1.29(t、3H)、δ=2.72−2.89(m、4H)、δ=4.18−4.28(m、4H)、δ=7.13−7.38(m、4H)、δ=7.37−7.44(t、2H)、δ=14.21(s、1H)
例示化合物9の合成
200mlの3つ口フラスコにリガンド2を5g、トルエンを40ml加えて内温が80℃になるまで加熱、撹拌した。その後MeOH/水=5/1の溶媒15mlに酢酸銅1水和物を0.9g溶解し、30分かけて滴下した。滴下終了後、析出している固体をろ過することで例示化合物9を3.4g得た。
【0150】
その他の金属含有化合物も同様の方法で合成することができる。
<比較の金属含有化合物1、2、3、4の合成>
【0151】
【化39】

【0152】
上記、比較の金属含有化合物1、2、3、4は合成例1、2と同様の方法で合成した。
【実施例】
【0153】
以下に本発明を実施例にて説明するが、これらの態様に限定されるものではない。尚、実施例中、「部」又は「%」とあるのは、特に断りない限り質量基準である。
実施例1
以下に示す粉砕法トナーの製造方法、重合法トナーの製造方法(2種)を用いて、粉砕法トナー及び重合法トナーを作製した。
〈粉砕法カラートナーの作製〉
ポリエステル樹脂96部、表1に示す着色剤及び本発明の金属含有化合物の混合物(1/1.02モル比)を下記の添加部数、ポリプロピレン樹脂(ビスコール550P:三洋化成社製)2.3部、とを、混合、練肉、粉砕、分級し、平均粒径8.7μmの粉末を得た。更にこの粉末100部と、シリカ微粒子R805(日本エアロジル社製,粒子径12nm,疎水化度60)1.0部とをヘンシェルミキサーで混合し、粉砕法カラートナーを得た。
イエロー 4.2部
マゼンタ 2.1部
シアン 2.2部
〈重合法カラートナーの作製〉
〈着色剤分散液の調製〉
表1に示す着色剤及び本発明の金属含有化合物の混合物(1/1.03モル比)19.5gを、ドデシル硫酸ナトリウム5gを純水200ml中に溶解した溶液中に添加し、撹拌及び超音波を付与することにより着色剤水分散液を調製した。また、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量3100)を熱を加えながら界面活性剤により固形分濃度が32.5%となるように水中に乳化させた乳化分散液を調製した。
〈カラートナーの作製〉
上記着色剤分散液に低分子量ポリプロピレン乳化分散液62gを混合し、更にスチレン220g、ブチルアクリレート40g、メタクリル酸12g、及び連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン5.5g、脱気済み純水2,000mlを追加した後、窒素気流下にて撹拌を行いながら70℃にて3時間保持し乳化重合を行った。
【0154】
得られた着色剤含有樹脂微粒子の分散液1,000mlに水酸化ナトリウムを加えてpH=7.0に調整後、2.7mol/L塩化カリウム水溶液を270ml添加し、更にi−プロピルアルコール160ml及びエチレンオキシド平均重合度が10であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル9.0gを純水67mlに溶解して添加し、75℃に保持して6時間撹拌、反応を行った。得られた反応液を濾過・水洗し、更に乾燥・解砕して着色粒子を得た。
【0155】
この着色粒子とシリカ微粒子R805(前出)1.0部とをヘンシェルミキサーで混合し、重合法カラートナーを得た。
〈キャリアの製造〉
スチレン/メチルメタクリレート(4/6)の共重合体微粒子(平均粒径80nm)40g、Cu−Znフェライト粒子(比重5.0,質量平均粒径45μm,1,000エルステッドの外部磁場を印加した時の飽和磁化62emu/g)1,960gを高速撹拌型混合機に投入し、30℃で15分間混合した後、105℃に設定し、機械的衝撃力を30分間繰り返し付与し、冷却してキャリアを得た。
〈実写テスト用現像剤の作製〉
上記キャリア214gと各トナー16gとを、V型混合機を用いて20分間混合し、実写テスト用の現像剤1〜28を作製した。得られた現像剤組成は表1に表した。
〈画像形成〉
画像形成装置としてカラー複写機(KL−2010:コニカミノルタ社製)を用いて実写評価を行った。
【0156】
定着器としては、通常使用される熱ロール定着方式のものを用いた。具体的には、中央部にヒーターを内蔵するアルミ合金から成る円筒状(内径=40mm,肉厚=1.0mm,全幅=310mm)の芯金表面を、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の厚み120μmのチューブで被覆することにより加熱ローラーを構成し、鉄から成る円筒状(内径=40mm,肉厚=2.0mm)の芯金表面を、スポンジ状シリコーンゴム(アスカーC硬度48,厚み2mm)で被覆することにより加圧ローラーを構成し、該加熱ローラーと該加圧ローラーとを150Nの荷重により当接させて5.8mm幅のニップを形成させた。
【0157】
この定着装置を使用して、印字の線速を440mm/secに設定した。尚、定着装置のクリーニング機構として、ポリジフェニルシリコーン(20℃の粘度が10Pa・sのもの)を含浸したウェッブ方式の供給方式を使用した。定着温度は加熱ローラーの表面温度で制御した(設定温度176℃)。尚、シリコーンオイルの塗布量は0.1mg/A4とした。
〈評価〉
本発明のカラートナーを用いたトナーセットによって、上記の画像形成装置を用いて、紙に、それぞれ反射画像(紙上の画像)を作製し、以下に示す方法で評価した。尚、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm)の範囲で評価した。
(色相)
色相については、10人の被験者により目視にて行い、10点満点で評価をおこない、下記評価基準に基づいて評価した。
A:10人の平均点が9点以上〜10点未満
B:10人の平均点が8点以上〜9点未満
C:10人の平均点が7点以上〜8点未満
D:10人の平均点が7点未満
(耐光性)
記録直後の画像濃度Dを測定した後、スガ試験機社製「キセノンロングライフウェザーメーター」(キセノンアークランプ,70,000ルックス,24.0℃)による6日間の暴露試験を行った。再び画像濃度Dを測定し、キセノン光照射前後の画像濃度の差から色素残存率を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。
A:色素残存率 80%以上
B:色素残存率 70%以上〜80%未満
C:色素残存率 60%以上〜70%未満
D:色素残存率 60%未満
A,Bが実用上問題ないレベルである。
(帯電性の湿度依存性)
帯電性の湿度依存性については、市販のデジタルカラー複写機(複合機)bizhub c352(コニカミノルタビジネステクノロジーズ製)のマゼンタ現像器を駆動する単体駆動機にマゼンタ現像器をセットし、本発明のトナーをキャリアと混合したトナー濃度6%となるように現像剤をセットした。
【0158】
72時間、20℃50%RHに放置した現像器2台を、1)33℃80%RH環境に移送し、2時間放置した。更に、2)10℃12%RHの環境に移送し、2時間放置した。
【0159】
1)および2)の現像器を30秒、1200秒駆動し、それぞれ現像剤を5gサンプリングして、トナーの帯電量を公知のブローオフ法で測定した。下記評価基準に基づいて評価した。
A:30秒値、1200秒値とも、2)の環境の帯電量の値と、1)の環境の帯電量の値との差の絶対値が3マイクロC/g未満
B:30秒値、1200秒値とも、2)の環境の帯電量の値と、1)の環境の帯電量の値との差の絶対値が3マイクロC/g以上、7マイクロ未満
C:30秒値、1200秒値とも、2)の環境の帯電量の値と、1)の環境の帯電量の値との差の絶対値が7マイクロC/g以上。
(帯電速度)
画素率75%とし、トナー消費量、補給量が著しく多いプリントモードで1000枚プリントを行い、機内のトナーこぼれとプリント画像の画像かすれを目視観察し下記評価基準に則り評価した。
A:帯電不良によるトナーこぼれ、画像のかすれ全くなし
B:帯電不良によるトナーこぼれはないが、プリントの後端に軽微な画像のかすれが発生した。しかし、実用上問題なし
C:帯電不良によるトナーこぼれ、画像のかすれが発生し実用上問題。
(画像の中抜け)
フルカラー複写機(CF−3102:2成分現像方式コニカミノルタ社製)に表1に記載の現像剤をそれぞれセットし、CW比各色5%(レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のTota1 35%)の画像を1000枚印字した。その後、実験室環境(23℃、55%RH)および過酷な条件となる高温高湿(HH)環境(30℃、85RH%)でマシンを24時間保管した後で得られた画像サンプルについて目視観察し、下記基準に則り画像の中抜け性能(転写性)を評価した。評価環境が高温高湿下においては、トナー間の凝集力が強くなり、また、帯電量が低下する為、画像の中抜け性能は悪化する。
A:画像上中抜けが発生しなかった
B:画像上中抜けが若干発生しているが、画像欠損のレベルまでには到らず、実用上問題がなかった
C:画像上中抜けが多数発生しており、一部画像欠損も発生している為、実用上問題があった。
尚、比較例の現像剤を用いて画像を印字した際にはヒートロールに中抜けによる汚れが確認されたが、本発明の現像剤を用いて画像を印字したものはすべてヒートロールに汚れは確認されなかった。
【0160】
結果を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
表1から明らかなように、本発明のカラートナーを用いることにより耐光性が良好なので長期に亘って良好な保存性を示す画像を提供することができ、更にトナーの耐水性が向上することにより帯電性が安定し、画像の中抜けも改善することが出来た。
実施例2
《金属含有化合物の耐湿熱性、熱安定性》
例示化合物2、9、31及び比較の金属含有化合物3、4を55℃90%RH環境下で7日間保存したサンプル、及び80℃55%RH環境下で7日間保存したサンプルの保存前後の紛体の色を目視観察し、それぞれ耐湿熱性、及び熱安定性を下記基準に則り評価した。
A:変化無し
B:僅かに黄変が見られる
C:黄変している
結果を併せて表2に示す。
【0163】
【表2】

【0164】
《金属含有化合物の耐光性》
例示化合物2、9、31及び比較化合物3、4の粉体をアトラス社製ウェザーメーターを用いて85,000ルクスのキセノン光を7日間照射した。キセノン光照射前後のサンプルを酢酸エチルに溶解し、吸光度を測定したところ本発明の化合物は吸光度に変化が見られなかったが、比較化合物はすべて吸光度の低下が見られた。
【0165】
表2および上記耐光性の結果から、本発明の金属含有化合物は比較化合物よりも耐光性、耐湿熱性、熱安定性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される金属含有化合物を少なくとも1種含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【化1】

〔式中、Mは2価の金属イオンを表し、Aはアリール基、アルケニル基、アルキニル基、6員の複素アリール基又は6員の複素環基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Bは下記一般式(2)
【化2】

で表され、Lはアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、Lはアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−O−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、nは0〜10の整数を表し、Cはアリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はヘテロ環基を表し、*の位置で一般式(1)と結合する。〕
【請求項2】
一般式(1)におけるMがCu2+であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする金属含有化合物。
【化3】

〔式中、Aはアリール基、アルケニル基、アルキニル基、6員の複素アリール基又は6員の複素環基を表し、Ra1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、Bは下記一般式(4)
【化4】

で表され、La1はアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、La2はアルキレン基、−NH−、−OSO−、−SO−、−CO−、−O−、−S−又は−OOC−から選ばれる2価の連結基を表し、mは0〜10の整数を表し、Cはアリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はヘテロ環基を表し、*の位置で一般式(3)と結合する。〕

【公開番号】特開2010−122269(P2010−122269A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293116(P2008−293116)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】