説明

電子写真用転写紙

【課題】填料として炭酸カルシウムが高配合されていても、摩擦の低下や抄紙機の汚れが少なく、適度なサイズ性及び良好な搬送性などの電子写真適性を有し、そして、インクジェット印字適性を有する電子写真用転写紙を提供すること。
【解決手段】本発明の電子写真用転写紙は、原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤し、原紙上に表面処理剤を塗布乾燥した電子写真用転写紙であって、前記共重合体が少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体であり、前記表面処理剤が導電剤を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用転写紙に関し、摩擦係数の低下や抄紙機の汚れを引き起こすことなく、サイズ効果を発揮する電子写真用転写紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙の製造においては、従来の酸性抄紙に代えて中性抄紙への移行が進んでいる。中性抄造においては、平滑性を上げることができ、不透明性が高く安価な炭酸カルシウムを多量に使用できることから、近年、電子写真用転写紙に配合する炭酸カルシウムの配合量は徐々に増加している。
【0003】
一方、電子写真方式で印字された用紙は、そのサイズ性(紙の吸水抵抗性)が不足していると、印字後にインクのにじみや毛羽立ちが起きるため、印字適性やペン書き適性といった点からサイズ性の確保が求められる。また、電子写真用転写紙において、摩擦係数の低下は複写機等で重送(機械内部への給紙時に2枚もしくはそれ以上の枚数を送る現象)やジャムトラブル(紙詰まり)といった搬送性の悪化を引き起こす怖れがある。
【0004】
更に、電子写真用転写紙は、インクジェット記録方式にも使用できる共用紙が求められている。インクジェット記録方式においては、個々の機構によりインクノズルからインクの微小滴を吐出して、記録用紙上に付着させることにより、ドットを形成し紙面上に記録保持されるので、インクを素早く吸収し、印字濃度の低下、にじみ及びドットの広がりにじみであるフェザーリング等を起こさないインクジェット印字適性のある紙が、要求されている。そして、近年、複写機、プリンター、ファクシミリの小型化・低価格化、カラー化・高画質化に向けて、記録方式の開発が活発に行われているので、その記録方式に対応する記録用紙の要求が変化している。
【0005】
一般に、中性抄紙においてサイズ性を付与するために添加される内添サイズ剤として、ロジンエステルや強化ロジンエステル等を用いた中性ロジンサイズ剤、ASA(アルケニルコハク酸無水物)、AKD(アルキルケテンダイマー)等が用いられている。しかし、填料、特に炭酸カルシウムを多量に用いる最近の抄造方法では、内添サイズ剤として知られる中性ロジンを使用した場合、中性ロジンの効果が著しく低下し、必要なサイズ性を確保するために、中性ロジンを高配合した場合、抄紙系の汚れや薬品コストの上昇が問題になる。また、中性ロジンはサイズ性の発現に硫酸アルミニウムの添加を必要とするが、サイズ性向上のために硫酸アルミニウムを増配すると、抄紙系のpHが低下して炭酸カルシウムが溶解し、抄紙機で石膏が析出して、欠陥や断紙の要因となる。一方、AKDを用いた場合は、添加量が多いと抄紙機の汚れが問題になることに加え、サイズ性の立ち上がりが遅いため、サイズプレスでの吸液量が増加する問題や、摩擦係数が著しく低下する。一方、ASAを用いた場合、添加量が多いと中性ロジン、AKD以上に抄紙機が汚れやすく、欠陥や断紙が頻発する問題があった。
そこで、填料自体の歩留まり、あるいは紙力などを改善することを目指した技術が提案されている。例えば、次の通りである。
(1)特許文献1
【0006】
カチオン性ポリマー又は両性ポリマーで被覆・吸着処理したカチオン性炭酸カルシウムをパルプスラリーに配合して、填料の歩留りや紙力低下を抑制することが記載されている(請求項1、段落[0007])。また、実施例1として、ジメチルアミノエチルアクリレートとアクリルアミドとの水溶性ポリマーで軽質炭酸カルシウムを被覆処理して、パルプスラリーに添加することが記載されている。
(2)特許文献2
填料をデンプンと有機高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド(PAM))で処理することが記載されている。
(3)特許文献3
【0007】
AKD、ASAなどのセルロース反応性サイズ剤をカチオン澱粉などの分散剤で水中に分散させた液を、炭酸カルシウムなどの填料と接触させた充填剤の製造方法によれば、高充填であってもサイズ性の低下を抑制できることが記載されている。
(4)特許文献4
カチオン変性AKDで処理された填料(好ましくはPCC(沈降炭酸カルシウム)を用いれば、サイズ剤の必要使用量を減少できることが記載されている。
(5)特許文献5
金属イオン(アルミニウム、バリウム、リチウム、マグネシウムなどのイオンの共存下で、C12〜C22水溶性脂肪酸塩(好ましくはステアリン酸ナトリウムにより被覆した填料(炭酸カルシウム、白土、酸化チタンなどを用いれば、内添サイズ剤の吸着を抑制できることが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平04−281094号公報
【特許文献2】特開昭56−049097号公報
【特許文献3】特開平04−228697号公報
【特許文献4】特開平05−247886号公報
【特許文献5】特表平08−507837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1は、カチオン性もしくは両性ポリアクリルアミドを用いて前処理することで填料自体の歩留りや紙力を確保するものであり、親水性ポリマーであるため填料および紙へ疎水性を付与する能力がなく、紙のサイズ性低下を抑制する効果は低い。上記特許文献2も、澱粉とカチオン性の有機高分子電解質を併用した前処理法であり、上記特許文献1と同様の効果を付与しようとするものである。
【0010】
上記特許文献3〜4は、AKDやASAなどの反応性サイズ剤、あるいはカチオン変性AKDで填料を前処理することで疎水性向上を図ろうとするものであるが、使用量が多い場合や処理温度が比較的高い場合には、紙の滑り問題や製紙工程内の汚れ問題を誘発する恐れが大きい。
また、上記特許文献5は、脂肪酸塩により填料を被覆するものであり、比表面積の大きい填料に対する内添サイズ剤の吸着を抑制する手法として効果的であるが、過剰の金属イオンの添加は製紙工程内の状態を変化させ、薬品の効果に影響を与える恐れがある。
【0011】
さらには、上記技術において填料を前処理するための処理剤の分子量は比較的低い範囲にあるため、製紙工程内の電気伝導度が高く、アニオントラッシュ量が多いと、填料およびパルプ繊維と処理剤自体との相互作用を阻害し、性能を低下させる恐れもある。
このように、既存の高填料化によるサイズ付与システムでは、それに伴う弊害に対応することは困難であった。これらの問題を解消でき、所望のサイズ度を得ることが出来る様になれば、印刷適性やペン書き適性が良化に繋がる。また、さらに填料の利用拡大が期待できることで、裏抜け防止効果が見込まれる。
【0012】
そこで、本発明の課題は、填料として炭酸カルシウムが高配合されていても、摩擦の低下や抄紙機の汚れが少なく、適度なサイズ性及び良好な搬送性などの電子写真適性を有し、そして、インクジェット印字適性を有する電子写真用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電子写真用転写紙は以下の構成を特徴とする。
(1)請求項1に係る発明の電子写真用転写紙は、原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤を含有し、原紙上に表面処理剤を塗布乾燥した電子写真用転写紙であって、前記共重合体が少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体であり、前記表面処理剤が導電剤を含むことを特徴とする。
(2)請求項2に係る発明の電子写真用転写紙は、前記共重合体がカチオン性共重合体、または、アニオン性モノマー(C)を含む両性共重合体であることを特徴とする。
(3)請求項3に係る発明の電子写真用転写紙は、前記両性共重合体が前記カチオン性モノマー(B)由来のカチオン当量に対する前記アニオン性モノマー(C)由来のアニオン当量の比率が0.1〜90%であるモノマー成分を重合して得られることを特徴とする。
(4)請求項4に係る発明の電子写真用転写紙は、前記填料が炭酸カルシウムを紙中灰分として10〜30重量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高灰分であっても、共重合体が少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体であり、表面処理剤が導電剤を含むことで、填料に適度の撥水性を具備させることができ、この撥水性を備えた填料がアニオン性を帯びたパルプ繊維に効率良く吸着するので、高灰分であってもAKDを用いた際の摩擦の低下やASAを用いた際の抄紙機の汚れを生じることなく、適度なサイズ性を有し、良好な電子写真適性、インクジェト適性を有する電子写真用転写紙を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1.前処理した填料:製紙用添加剤
本発明で用いられる第一の製紙用添加剤は、4級化率が特定以上のカチオン性共重合体で前処理した填料を有効成分とするものであり、第二の製紙用添加剤は、4級化率が特定以上で、アニオン当量とカチオン当量の比率が所定範囲にある両性共重合体で前処理した填料を有効成分とするものであり、本発明の電子写真用転写紙は、これらの製紙用添加剤をパルプスラリーに添加して湿式抄造したものである。
疎水性基含有モノマーを必須成分とするカチオン性または両性共重合体を填料と混合(前処理)し、填料に適度の撥水性を付与すると、撥水性の付与された填料がアニオン性を帯びたパルプ繊維に効率良く吸着して、紙に効果的なサイズ性が付与される。そして、この填料によれば、内添サイズ剤を用いないか、減量しつつ、充分なサイズ性を確保することができるので、抄紙機の汚れが発生しにくく、しかも、内添サイズ剤より比較的少量で高いサイズ度が得られる。
【0016】
(第一の製紙用添加剤)
本発明で用いられる第一の製紙用添加剤において、前処理に使用するカチオン性共重合体は、疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を必須とするモノマー成分を重合し、4級化率を40モル%以上としたものである。
上記疎水性モノマー(A)は、スチレンまたはその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルなどであり、特に、スチレンまたはその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸のC〜C12アルキルエステルが好ましい。
なお、本発明においては、「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を意味するものであり、同様に、「(メタ)アクリロ」は「アクリロ」または「メタクリロ」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0017】
上記スチレンまたはその誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられ、スチレンが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸のC〜C12アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの炭化水素エステルが挙げられ、脂肪族だけでなく、脂環系や芳香族系の炭化水素基を含有する(メタ)アクリル酸エステルも使用できる。特に好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートである。
【0018】
上記カチオン性モノマー(B)は、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライド等のように、分子内にカチオン性基を1個乃至複数個有するものであり、特に、3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドが好ましい。
【0019】
上記3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
また、上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドとしては、アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
上記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミドおよび4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートとしては、3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド又は3級アミノ基含有(メタ)アクリレートを、塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸メチル、エピクロルヒドリンなどの4級化剤で4級化したモノ4級塩基含有モノマーが挙げられる。具体的には、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、アクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0022】
上記カチオン性共重合体を構成するモノマー成分としては、上記疎水性モノマー(A)および上記カチオン性モノマー(B)以外に、必要に応じて、アニオン性モノマーを除くその他のビニルモノマーを使用することができる。
上記その他のモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、iso−プロピル(メタ)アクリルアミドのようなアミド基含有モノマー、酢酸ビニルなどが挙げられる。
上記カチオン性共重合体を構成するモノマー成分は、単用又は併用できる。モノマー成分の組成比は、填料に適度の撥水性を付与できる範囲で任意に設定できるが、疎水性モノマー(A)の含有量は60〜90重量%程度、カチオン性モノマー(B)の含有量は10〜40重量%程度がそれぞれ好ましい。
【0023】
(第二の製紙用添加剤)
一方、本発明で用いられる第二の製紙用添加剤において、前処理に使用する両性共重合体は、疎水性モノマー(A)、カチオン性モノマー(B)およびアニオン性モノマー(C)を必須とし、かつ前記モノマー(B)のカチオン当量に対して前記モノマー(C)のアニオン当量の比率が所定範囲であるモノマー成分を重合し、4級化率を40モル%以上としたものである。
上記アニオン性モノマー(C)は、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類などである。
【0024】
上記α,β−不飽和カルボン酸類としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸、そのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などが挙げられる。
上記α,β−不飽和スルホン酸類としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩などが挙げられる。
【0025】
上記両性共重合体を構成するモノマー成分のうち、疎水性モノマー(A)及びカチオン性モノマー(B)については、本発明の第一の製紙用添加剤におけるカチオン性共重合体を構成するモノマー成分として前述したものと同様である。また、必須モノマー以外のその他のビニルモノマーを使用することができる点も、第一の製紙用添加剤の場合と同様である。
上記両性共重合体を構成するモノマー成分の場合も、上記各モノマーは単用又は併用できる。モノマー成分の組成比は、填料に適度の撥水性を付与できる範囲で任意に設定できるが、疎水性モノマー(A)の含有量は60〜90重量%程度、カチオン性モノマー(B)の含有量は20〜40重量%程度、アニオン性モノマー(C)の含有量は0.2〜10重量%程度がそれぞれ好ましい。
【0026】
上記両性共重合体を構成するモノマー成分にあっては、カチオン性モノマー(B)由来のカチオン当量に対するアニオン性モノマー(C)由来のアニオン当量の比率が0.1〜90%であることが必要である。好ましい当量比率は5〜20%であり、より好ましくは5〜15%である。すなわち、本発明における両性共重合体は、カチオン当量リッチでアニオン当量の少ない方がサイズ効果を発現し易い。カチオン当量に対するアニオン当量の比率が多すぎると、アニオン性モノマー(C)がカチオン部分とイオンコンプレックスを形成して、パルプ繊維へのカチオンの作用を低下させ、サイズ性が発現しない恐れがあるので、上記比率の範囲のアニオン性モノマー(C)のアニオン当量が必要である。
【0027】
(4級化)
上記カチオン性共重合体または両性共重合体の4級化率は、いずれも40モル%以上であることが重要である。4級化率は、好ましくは50〜100モル%である。4級化率が40モル%未満であると、填料及びパルプ繊維への有効な撥水性付与効果が得られにくくなる恐れがある。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体の4級化に際しては、例えば、カチオン性モノマー(B)として3級アミノ基含有モノマーを含むモノマー成分を重合した後、得られた共重合体を4級化剤で4級化してもよいし、予め4級化して得られた4級アンモニウム塩基含有モノマーをカチオン性モノマー(B)として用いて重合するようにしてもよい。4級化剤としては、塩化メチル、塩化ベンジル、エピクロルヒドリンなどを用いることができる。
【0028】
(填料)
本発明の第一および第二の製紙用添加剤において、上記カチオン性共重合体または両性共重合体と混合(前処理)する填料としては、公知のものを任意で使用できる。例えば、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料、を単用または併用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。本発明では、本発明におけるカチオン性共重合体および両性共重合体が炭酸カルシウムへの作用に優れていること、炭酸カルシウムが安価であり且つ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、内添サイズ剤との相互作用により、裏抜けが顕著に改善する紡錘状、ロゼッタ型の形質炭酸カルシウムが好ましい。また、炭酸カルシウム−シリカ複合物(例えば、特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に開示の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)も使用可能である。
【0029】
上記カチオン性共重合体または両性共重合体による前記填料の前処理は、通常、パルプスラリーに添加する前に、予め当該共重合体の水溶液と填料スラリーとを混合撹拌することにより行う。混合温度は10〜50℃程度、混合時間は1分以上が好ましい。
上記カチオン性共重合体または両性共重合体と填料とを混合する際の、填料100重量部に対する共重合体の割合は0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.2〜5重量部であり、さらに好ましくは0.2〜2重量部である。共重合体の割合が少なすぎると、充分なサイズ効果が得られないおそれがある。一方、共重合体の割合を前記範囲より多くしても、得られるサイズ性の向上効果にはあまり変化がなく、コストの無駄になる傾向がある。
【0030】
2.電子写真用転写紙の製造
本発明の電子写真用転写紙は、前記製紙用添加剤をパルプスラリーに添加し、これを湿式抄造することにより製造される。
(添加量)
本発明では共重合体と填料を混合して製紙用添加剤とし、製紙用添加剤をパルプスラリーに添加する添加形態を取るが、対パルプ絶乾重量当たりの共重合体の添加量としては、通常0.05〜0.5重量部含有することが好ましい。より好ましくは対パルプ絶乾重量当たり0.10〜0.3重量%であるのがよい。0.05重量%未満であると、サイズ剤の効果が無い怖れがあり、0.50重量%以上であると、サイズが効き過ぎることによってインクジェット適性が劣る傾向にある。
【0031】
(パルプ)
前記パルプスラリーを構成するパルプ繊維は、特に制限はなく、製紙用に通常使用される、NBKP、LBKPなどの木材パルプ、TMPやGPなどの機械パルプ、脱墨パルプ(DIP)のほか、リンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、ワラなどの非木材パルプ、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成繊維等を使用できる。
【0032】
(填料)
本発明において、前記製紙用添加剤とは別に填料を配合しても良いし、配合しなくても良い。填料を配合する場合、填料としては酸性抄紙あるいは中性抄紙において、一般に使用されている填料が使用でき、特に限定されるものではない。例えば、中性抄紙では、クレー、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料が単独でまたは適宜2種類以上を組み合わせて使用される。また酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。平滑性、不透明度の点から、填料の配合量としては、パルプ重量に対して2〜30重量%が好ましい。
【0033】
また、本発明では、填料として炭酸カルシウムが好ましく、そして、紙中灰分が10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上、30重量%以下で、更に好ましい。紙中灰分が10重量%以下であると、比較的低分子量の既存サイズ剤は、比表面積が大きい填料に吸着されてしまい、サイズ性を確保しにくくなることから大量の添加が必要となり、それに伴う弊害が大きくなるが、本発明のサイズ剤は、サイズ効果を発揮することができる。
(その他添加剤)
前記パルプスラリーには、本発明の効果を損なわない範囲で、中性ロジンやAKD、ASAなどの既知の内添サイズ剤も併用して使用することができる。
【0034】
この他、従来から使用されている各種のノニオン性、カチオン性の歩留まり剤、濾水度向上剤、嵩高剤等の製紙用内添助剤が必要に応じて適宜選択して使用される。
また、製紙用内添助剤を添加しても良く、例えば、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダや、塩基性塩化アルミニウム、塩基性ポリ水酸化アルミニウム等の塩基性アルミニウム化合物や、水に易分解性のアルミナゾル等の水溶性アルミニウム化合物、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の多価金属化合物、シリカゾル等が挙げられる。
【0035】
また、製紙用助剤として各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド、ポリアミン樹脂、ポリアミン、ポリエチレンイミン、植物ガム、ポリビニルアルコール、ラテックス、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー粒子分散物及びこれらの誘導体あるいは変成物等の各種化合物を使用できる。
さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添剤を用途に応じて適宜添加することもできる。
これら添加剤の添加量は、所望の性能に応じて適宜設定すればよい。
本発明の電子写真用転写紙は、特に、中性抄造により得られる中性抄紙であることが、本発明の効果を有意に発揮させることができる点で好ましい。
【0036】
(抄紙機)
抄紙機の型式は特に限定は無く、長網抄紙機、ツインワイヤー機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できる。プレス線圧は通常の操業範囲内で用いられる。電子写真用転写紙の品質を向上させるために、表面処理剤を塗布することが好ましい。しなくても良い。表面処理剤を塗布する場合、表面処理剤の成分には特に限定は無く、またサイズプレスの型式も限定はなく、2ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレスのような液膜転写方式サイズプレスなどを適宜用いることができる。
【0037】
(表面処理)
表面処理剤は、特に限定は無く、例えば、表面紙力剤として、生澱粉や、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどを単用又は併用できる。
【0038】
また、表面処理剤には前記の薬剤の他に、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物、カチオン性サイズ剤などの表面サイズ剤を併用塗布することができる。サイズ性が向上すれば、電子写真用転写紙に要求されることが多い、ペン書きサイズ度を高くできる。更に、電気抵抗性をコントロールしてトナー定着性を向上させるために、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム、塩化カリウムなどの無機導電剤やジメチルアミノエチルメタアクリレートなどの有機導電剤を加えて、外添で塗布することが好ましい。導電剤を含む表面処理剤の塗布量は適宜調製されるものであるが、通常塗布量は、両面で0.5〜4.0g/m程度である。また、導電剤の塗布量としては、両面で0.02〜0.5g/m程度である。 本発明は、電子写真用転写紙であり、PPC用紙、レーザープリンター用紙等に用いられ、また、電子写真用転写紙とインクジェット記録適性を有する共用紙としても好適である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を、電子写真用転写紙に関する実施例を挙げて説明するが、当然のことながら、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中、部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。また、薬品添加率については、特に指定が無い場合は、固形分の添加率を示す。有姿と指定している場合は、固形分ではなく薬品そのものの添加率を示す。例えば1%濃度の薬品を固形分で0.2%添加する場合、有姿では20%添加となる。
【0040】
<測定・評価方法>
・紙中灰分:JIS P 8251、ISO 1762に準拠して測定した。
・ステキヒトサイズ度:JIS P 8122に準拠して測定した。
・摩擦係数:ISO 15359に準拠して測定した。
・抄紙機の汚れ評価:目視評価を行い、以下のように定めた。
○:操業性に問題なし
△:若干汚れが見られるが、操業可能
×:汚れが見られ、操業が難しい
・電子写真適性:富士ゼロックス製複写機(Vivace555)でA4用紙を55枚/分の速度で1000枚印字し、以下のように定めた。
○:重送、ジャムトラブル、印字後の紙の不揃いが抑えられ、搬送性が良好で、トナー定着性も良好
×:重送、ジャムトラブル、印字後の紙の不揃いの何れかが抑えられず、搬送性が不良で、あるいはトナー定着性が不良
【0041】
・インクジェット印字適性評価:キャノン製のインクジェット記録装置(iP4100)を用いて印字を行い、フェザーリングの目視評価を行い、以下のように定めた。
◎:フェザーリングが無く大変良好
○:フェザーリングがほとんどなく良好
△:やや劣る
×:劣る
【0042】
<カチオン性および両性共重合体の合成例>
(1)合成例1
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素導入管を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、イソプロパノール30部、スチレン50部、メタクリル酸メチル20部、ブチルアクリレート10部、ジメチルアミノエチルメタクリレート20部、n−ドデシルメルカプタン1.5部を加え、攪拌しながら加熱し、温度を85℃まで上昇させた。
【0043】
次いで、温度を85〜90℃に保持しながら、t−ブチルパーオキシエチルヘキサネート1.5部とイソプロパノール3部からなる重合開始剤溶液を3時間で全量滴下し、1時間熟成させて、反応を完結させた。
その後、温度を80℃に保持してカチオン性共重合体中和用の90%酢酸8.5部と温水260部を30分かけて添加して1時間保持し、エピクロルヒドリン9.5部を添加して80℃で2時間保持し、完全に水溶化させた。
冷却後、水を添加して、固形分20%のカチオン性共重合体水溶液を得た。なお、単量体成分におけるアニオン性モノマーのアニオン当量をカチオン性モノマーのカチオン当量に対する比率(百分率)で示すと24%、また、得られた内添サイズ剤中の共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%、重量平均分子量は26×10である。
【0044】
(2)合成例2
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素導入管を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、イソプロパノール25部、90%酢酸7.6部を入れ、撹拌しながら温度を80℃まで加熱した。
次いで、スチレン30部、iso−ブチルメタクリレート50部、無水マレイン酸1部、ジメチルアミノエチルメタクリレート19部のモノマー混合物に、n−ドデシルメルカプタン1.5部とアゾビスイソブチロニトリル1部を溶解した混合液を、フラスコ内温を80〜85℃に保ちながら3時間で全量滴下し、1時間熟成させて反応を完結させた。
その後、温度を80℃に保持して温水300部を添加して1時間保持し、エピクロルヒドリン9部を添加して80℃で2時間保持し、完全に水溶化させた。
冷却後、水を添加して、固形分20%の両性共重合体水溶液を得た。
なお、単量体成分におけるアニオン性モノマーのアニオン当量をカチオン性モノマーのカチオン当量に対する比率(百分率)で示すと34%、また、得られた内添サイズ剤中の共重合体について、そのカチオン性基の4級化率は80モル%、重量平均分子量は35×10である。
【0045】
<電子写真用転写紙の製造>
[実施例1]
合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.25%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加し、製紙用添加剤とした。
フリーネスを420mLに調整した原料パルプ(LBKP100%)に対し、対パルプ固形分に対し有姿0.5%の液体硫酸バンド、対パルプ固形分0.5%のカチオン変性澱粉、対パルプ固形分で有姿0.2%の蛍光染料、対パルプ固形分100ppmの歩留まり向上剤を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を、オントップ型ツインワイヤー抄紙機を用いて抄紙速度1200m/分で抄紙して印刷用紙(坪量64g/m、紙中灰分10%)を得た。その後、オンマシンのロッドメタリングサイズプレスで塩化ナトリウム(導電剤)を0.05g/m、澱粉(表面紙力剤)を1.5g/m両面で塗工、乾燥して、電子写真用転写紙を得た。この時の坪量は64g/m2、紙中灰分は10%であった。ステキヒトサイズ度、静及び動摩擦係数を測定し、抄紙機の汚れ、搬送性、トナー定着性、インクジェット印字適性を評価した。その測定及び評価の結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
実施例1において、合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分0.74%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加して製紙用添加剤とし、灰分18%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例3]
実施例1において、合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分0.50%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加して製紙用添加剤とし、灰分10%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。
【0047】
[実施例4]
実施例1において、合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分0.30%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加して製紙用添加剤とし、灰分18%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例5]
実施例1において、合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分2.50%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加して製紙用添加剤とし、灰分10%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例6]
実施例1において、合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液を、対填料固形分1.48%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加して製紙用添加剤とし、灰分18%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例7]
実施例1において、合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分1.25%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加して製紙用添加剤とし、灰分10%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例8]
実施例1において、合成例2で得られた両性共重合体水溶液を、対填料固形分0.74%となるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)に添加して製紙用添加剤とし、灰分18%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。
【0048】
[比較例1]
実施例1に置いて、合成例1で得られたカチオン性共重合体水溶液の代わりに、中性ロジン系サイズ剤を対パルプ固形分0.6%添加し、炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)を対パルプ固形量13固形重量%で添加し、灰分10%の電子写真用転写紙を得た以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)を対パルプ固形量23固形重量%で添加し、灰分18%の電子写真用転写紙を得た以外は、比較例1と同様に行った。
【0049】
[比較例3]
中性ロジン系サイズ剤の代わりにアルキルケテンダイマー系サイズ剤を、対パルプ固形分0.15%添加して電子写真用転写紙を得た以外は、比較例1と同様に行った。
[比較例4]
中性ロジン系サイズ剤の代わりにアルキルケテンダイマー系サイズ剤を、対パルプ固形分0.15%添加した以外は、比較例2と同様に行った。
[比較例5]
中性ロジン系サイズ剤の代わりにアルケニル無水コハク酸系サイズ剤を、対パルプ固形分0.2%添加した以外は、比較例1と同様に行った。
[比較例6]
中性ロジン系サイズ剤の代わりにアルケニル無水コハク酸系サイズ剤を、対パルプ固形分0.2%添加した以外は、比較例2と同様に行った。
【0050】
【表1】

【表2】

【0051】
表1の結果から次のことが示される。
1)実施例1〜8と比較例1〜6のステキヒトサイズ度、静及び動摩擦係数の測定結果、そして、抄紙機の汚れ、電子写真適性(搬送性、トナー定着性)及びインクジェット印字適性の評価結果を比較して、実施例1〜8は、サイズ性、静及び動摩擦係数の低下がなく、抄紙機の汚れ、電子写真適性(搬送性、トナー定着性)及びインクジェット印字適性の評価が優れていることを示している。
2)例えば、ステキヒトサイズ度に関して、比較例1、2、4、6のステキヒトサイズ度は27秒以下であるのに対して、全ての実施例1〜8のそれは30秒以上であるから、実施例1〜8は、サイズ性に優れることを示している。
3)静及び動摩擦係数に関して、比較例3及び4の静摩擦係数は0.53、0.54であるのに対して、実施例1〜8のそれは0.65〜0.70の範囲であり、比較例3及び4の動摩擦係数が0.46であるのに対して、実施例1〜8のそれが0.49〜0.51の範囲であるから、実施例1〜8は、摩擦係数の低下が少なく、優れることを示している。
【0052】
4)抄紙機の汚れに関して、比較例3〜6は操業性に問題があるのに対して、実施例1〜8のそれは問題がなく、優れることを示している。
5)電子写真適性に関して、比較例3及び4は搬送性に問題があるのに対して、実施例1〜8のそれは問題がなく、優れることを示している。
6)インクジェット印字適性に関して、比較例1、2、4及び6はインクジェット印字適性に問題があるのに対して、実施例1〜8のそれは問題がなく、優れることを示している。
【0053】
以上の実施例1〜8及び比較例1〜6の測定・評価結果から、本発明の電子写真用転写紙は、高灰分であっても特定の共重合体を含む製紙用添加剤が含有されることで、表面処理剤が導電剤を含むことで、摩擦の低下や抄紙機の汚れが少なく、適度なサイズ性を有し、そして、トナー定着性や搬送性が良好な電子写真適性を有し、インクジェット印字適性を有する電子写真用転写紙が得られることから、上述した本発明の課題を達成していることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙に共重合体及び填料の混合物である製紙用添加剤を含有し、原紙上に表面処理剤を塗布乾燥した電子写真用転写紙であって、
前記共重合体が少なくとも疎水性モノマー(A)およびカチオン性モノマー(B)を含むモノマー成分を重合して得られる4級化率が40モル%以上の共重合体であり、前記表面処理剤が導電剤を含むことを特徴とする電子写真用転写紙。
【請求項2】
前記共重合体がカチオン性共重合体、または、アニオン性モノマー(C)を含む両性共重合体であることを特徴とする請求項1記載の電子写真用転写紙。
【請求項3】
前記両性共重合体が前記カチオン性モノマー(B)由来のカチオン当量に対する前記アニオン性モノマー(C)由来のアニオン当量の比率が0.1〜90%であるモノマー成分を重合して得られることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真用転写紙。
【請求項4】
前記填料が炭酸カルシウムを紙中灰分として10〜30重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用転写紙。

【公開番号】特開2010−32618(P2010−32618A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192132(P2008−192132)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】