説明

電子写真装置用のブレードの表面検査方法及び表面検査装置

【課題】電子写真装置用のブレードの表面における、緩やかな凹凸や、極微小なキズ及びムラ、微妙なコントラストを効率的に検出する。
【解決手段】電子写真装置用のブレード1の表面を照明し、ブレード1を照明に直交する方向に搬送しつつ、複数の画素が配列されたラインセンサー11によって前記表面を撮像する第1ステップと、ラインセンサー11の1つの画素4が出力する像情報信号に、この1つの画素4と連続する複数の画素4からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して1つの画素4における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する第2ステップと、画像処理された結果に基づいてブレード1の表面状態を判定する第3ステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられるブレードの表面検査方法及び表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真装置用部品の外観検査では、検査対象の表面をイメージセンサーによって撮像し、得られた画像データに対してノイズの低減や輪郭強調等の画像処理を施している。これによって、画像データにおける欠陥部分を抽出するという手法が広く行われてきた。電子写真装置用ブレードの検査においても基本的には上記と同様の手法がとられるが、このときに用いられるカメラは、例えば図8に示すように構成されている。すなわち、ブレード101の表面状態の像を、カメラ102に装着されたレンズ103を通して、カメラ102内の、複数の画素104がライン状に配列されたラインセンサーに撮り込む。そして、該ラインセンサーは画素104の数に対応した像情報信号S1を出力し、この複数の像情報信号S1が画像処理手段5に送られ、画像処理部105で処理された後に、検査対象であるブレード101の表面状態が表示されて判定可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述の従来方法では、ラインセンサーを構成する複数の画素104の1つ1つに対応する、個々の像情報信号S1に基づいて画像処理部105が処理を行う。このため、例えば、1つの画素104が256階調の明度を検知することができる場合、このラインセンサー自体の明度階調の検出能力では、画素104の1つ1つの明度階調の256階調を超えた、更に微妙なコントラストを検知することはできない。したがって、画像処理部105が如何なる画像処理を行った場合であっても、基本的な検査能力は各画素104の256階調の範囲内に制限されて検知が行われることになる。
【0004】
目視検査の代わりに外観検査機を用いることを考えた場合、目視による明度階調は点状の検査対象に対しては150階調程度と言われているので、通常の検査対象を検査するためには256階調であれば充分ということになる。しかしながら、広がりを持った低コントラストな検査対象のような認識し難い検査対象に対する目視検査では、肉眼において画素に相当する錐体が複数の細胞間で視覚情報を積算させ、結果として最大で1600階調をもって識別することができるとされている。この目視能力と検査機性能の違いから、外観検査機において検査対象となるブレードの表面上に存在する微妙な明度階調については目視と同様に形状を捉えていたとしても、コントラストの不足のために外観的な不良を明瞭に区別することが難しい場合がある。したがって、ブレードの表面全体に極微小の凹凸がつけられた製品においては、傾斜が極緩やかな凹凸を検出することができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−239304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明では、以上の状況に鑑みて、ラインセンサーの各画素の明度階調を拡張することを可能にする。これにより、本発明は、電子写真装置用のブレードの表面における極微小の凹凸に埋もれがちな、傾斜が極緩やかな凹凸等の、微妙なコントラストを効率的に検出することができる電子写真装置用のブレードの表面検査方法及び表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明に係る、電子写真装置用のブレードの表面検査方法は、電子写真装置用のブレードの表面を照明し、ブレードを照明に直交する方向に搬送させつつラインセンサーによって前記表面を撮像する第1ステップと、ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する第2ステップと、画像処理された結果に基づいてブレードの表面状態を判定する第3ステップと、を有する。
【0008】
撮像のための第1ステップにおいては、前記ブレードの前記表面に対して、前記ラインセンサーを有する撮像手段の光軸がなす俯角及び、照明手段による照明光の光軸がなす照射角とが共に10°以上30°以下となるようにするのが望ましい。
【0009】
また同様に第1ステップでは、前記ブレードに照射する照明光が、照明手段本体を覆ったスリット状のマスキング手段か、あるいはブレード近傍の空間において遮光板等で拡散が制限された上で検査対象に照射されるものであると望ましい。
【0010】
また、本発明に係る、電子写真装置用のブレードを照明に直交する方向に搬送する搬送手段と、ブレードの表面を照明する照明手段と、ラインセンサーによってブレードを搬送させつつ前記表面を撮像する撮像手段と、を備える。また、本発明は、ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、この1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して前記1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行う画像処理手段と、画像処理手段による結果に基づいてブレードの表面状態を判定する判定手段と、を備える。
【0011】
さらに本発明においては、前記ブレードの前記表面に対して、前記ラインセンサーを有する撮像手段の光軸がなす俯角及び、照明手段による照明光の光軸がなす照射角とが共に10°以上30°以下となるように設定されるのが望ましく、また、前記ブレードに照射する照明光が、照明手段本体を覆ったスリット状のマスキング手段か、あるいはブレード近傍の空間において拡散が制限される手段を有し、その影響の元に検査対象に照射されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブレードの表面におけるコントラストを際立たせた画像が得られ、ブレードの表面における傾斜が緩やかな凹凸を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】各画素からの像情報信号を積算させる表面検査方法におけるカメラを示す概略図である。
【図2】ブレードを搬送させて撮像するためのカメラ配置を示す概略図である。
【図3】ブレードに対するカメラの距離及び光軸の角度を調整可能な支持機構を示す模式図である。
【図4】傾斜が緩やかな凹凸の定義を説明するための模式図である。
【図5】ラインセンサーによる画像と、エリアセンサーによる画像との違いを説明するための模式図である。
【図6】光の当て方の制御法を説明するための模式図である。
【図7】ブレードの形状を示す概略図である。
【図8】従来の表面検査方法で用いるカメラを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本発明に係る、電子写真装置用のブレードの表面検査方法は、図1に示す電子写真装置用のブレード1の表面を照明し、ブレード1を照明に直交する方向に搬送させつつ、複数の画素4が配列されたラインセンサー11によって前記表面を撮像する第1ステップを有する。また、この方法は、ラインセンサー11の1つの画素4が出力する像情報信号に、この1つの画素4と連続する複数の画素4からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する第2ステップを有する。この第2ステップでは、1つの画素4からの像情報信号に、所定領域における各画素4からの各像情報信号を加算して1つの画素4における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで、画像処理をする。また、この方法は、画像処理された結果に基づいてブレード1の表面状態を判定する第3ステップを有する。
【0016】
なお、本発明では、例えばラインセンサーの1つの画素の明度階調が256の場合、1つの画素が出力する像情報信号が256のいずれかの値として扱われる。そして今、この1つの画素を含みこの1つの画素に連続する5つの画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を、1つの画素が出力する像情報信号に加算することを考える。この加算処理によって、1つの画素が出力する像情報信号が、256×5=1280のいずれかの値として扱われる。つまり、1つの画素の明度階調を5倍に増えたものとして取り扱うことが可能になる。
【0017】
そして、このような加算処理を所定領域の5つの各画素について行うことで画像データ処理されたものを所定領域における1つのデータユニットとして、この所定領域に隣接する他の所定領域において画像データ処理された他のデータユニットとを比較する。これによって、ブレードの表面における微細な状態を判定する。
【0018】
また、上述した方法を採用した表面検査装置は、電子写真装置用のブレード1を照明に直交する方向に搬送させる搬送手段としての搬送機構、ブレード1の表面を照明する照明手段としての照明部と、を備える。また、この装置は、ブレード搬送機構によってブレード1を搬送させつつラインセンサー11で前記表面を撮像する撮像手段としての撮像部を備える。また、この装置は、ラインセンサー11の1つの画素4が出力する像情報信号に、この1つの画素4と連続する複数の画素4からなる所定領域における各画素4がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する画像処理手段としての画像処理部5を備える(図1参照)。この画像処理部5は、1つの画素4からの像情報信号に、所定領域における各画素4からの各像情報信号を加算して1つの画素4における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行う。また、この装置は、画像処理部5による結果に基づいてブレード1の表面状態を判定する判定手段としての判定部を備える。
【0019】
撮像部としてはラインセンサー11を有するカメラ2を使用する(図1)。ラインセンサーは、エリアセンサーと比較して、撮像対象を一定速度で動かしながら撮像しなければ面としての画像が得られない反面、画素数が比較的多いので解像度を上げるのに有利である。また、ラインセンサーは、画素と画素との間に電荷転送部が存在しないので、開口率が高く、微妙なコントラストを捉えるのに好適であるといった利点を有する。また、搬送中のブレード1を図5(a)に示すように矢印A方向に撮像していくとして、ラインセンサーで一度に取得できる各データB1,B2,B3に関して、図5(a)中の矢印aで示すように、複数の画素の配列方向に直交する方向について、データの比較を行うことを考える。このときには、同一の画素によって得られたデータを比較することになるので、画素のバラツキが存在しない。このことも、図5(b)に示すエリアセンサー12と比べた優位点である。画素のバラツキは通常3%程度存在するので、この画素バラツキを考慮すると、3%以内のコントラスト差は有意な差異として取り扱うことが許されない。個々の画素で検出可能な明度階調が256階調である場合には、有意な差異と見なせない画素のバラツキは7階調にも達する。
【0020】
後述するように、ラインセンサーの出力については複数の画素の像情報信号を積算するので、画素の大きさに比較してかなり小さな構造であっても存在自体は捉えることができる。したがって、解像度にこだわらないか、複数のカメラを配置するのであれば、ラインセンサーが有する画素数は3000画素以上であれば良い。複数のカメラを配置する方向は、図2(a)、図2(b)に示すように、ブレード1の長手方向に直交する方向とカメラ2のレンズの光軸とを一致させると良い。このとき、カメラ2に取付けるレンズの焦点距離は、ブレード1をいくつのカメラを用いて検査するかによって決まってくるが、ブレード1の全体がレンズの視野に収まるように設定すると、表面検査装置の構成が簡素になるので好ましい。
【0021】
ブレード1に照射する照明に関しては、スリットを通して光が拡散しないようにしてやるのが良い。または、ブレードの近傍に光の遮蔽板を配して、光が一度に異なる角度からブレードに照射されないようにしてやるのが良い。こうすることで、ブレード1に近く広がりを持った光源からの光が多方面から照射され、極緩やかな凹凸に満遍なく光が当たって影が無くなり、検出が困難となるのを防ぐ。図6(a)に示すように、光源からの光が凹みにそのまま当たれば様々な散乱光によって影が出来難くなるのに対し、図6(b)に示すようにスリット21や遮光板22によって光の多くをカットし、平行光が凹みに当たるようにすれば、影も出来易く凹みが一層見易くなる。
【0022】
ラインセンサー11としてはモノクロームセンサーであっても良いが、カラーセンサーを配置して3色の信号を別々に処理しても良い。ただし、カラーラインセンサーの中には、3つのラインセンサーを単純に平行に並べて配置したものがあり、この場合には、個々のラインセンサー間で被写体(ブレード)からの光路差が生じてしまう。このため、この場合には、どれかの色のイメージセンサーで焦点のずれが許容レベルを越えていないかに注意を払う必要がある。
【0023】
搬送機構によるブレード搬送の速度は、ラインセンサー11によって取得した画像が、ブレード1の搬送方向に対して充分な解像度を有するように設定する必要がある。例えば、速度が1cm/sec以上、20cm/sec以下程度であるのが望ましい。像情報信号の取り込み周波数が2000Hzであれば、搬送速度が20cm/secの場合でもブレードの搬送方向に対して1データ当たり100μmの細かさで表される。搬送速度が10cm/sec以下であれば更に望ましく、搬送速度が1cm/secのときの搬送方向の1データ当たりの細かさは5μmである。
【0024】
照明部としては、ブレード1の長手方向に対して均一な光量が得られるような光源であれば良く、例えば、ブレードの長手方向に略平行に配置されたライン光源10が用いられる。
【0025】
ブレード1の表面状態の判定を行うのに効果的な画像を得るために、ラインセンサー11は、例えば図3に示すように、ブレード1の表面からの距離と、ブレード1の表面を見下ろす俯角とを自由に調整可能な支持機構に支持される構成が望ましい。支持機構は、カメラ2を回転可能に支持する回転ステージ16を有して構成されている。また、この支持機構は、回転ステージ16をブレード1の長手方向に直交する鉛直方向にスライド可能に支持する鉛直ガイド15と、この鉛直ガイド15をブレード1の長手方向に直交する水平方向にスライド可能に支持する水平ガイド14とを有している。
【0026】
また、ブレード1の表面に接する接平面に対して、ラインセンサー11を有するカメラ2のレンズ3の光軸がなす俯角θ1及び、照明部による照明光の光軸がなす照射角θ2(図2(a))は共に30°以下に設定するのが好ましい。照明部による照明光の角度を浅くし、尚且つラインセンサーでそのほぼ全反射光を見ることにより、透過あるいは拡散しない反射光を、効率よく捕らえることができる。ただしあまりに角度が浅すぎると、反射光が一番明るくなるポイントがカメラから見てわかり難くなったり、カメラのピントがブレード表面に合い難くなったりする。このため、角度の下限は10°とするのが望ましい。以上により、角度θ1及びθ2は共に10°以上30°以下とする。このようにしてラインセンサー11によってブレード1の搬送時にブレード全体分のデータが連続的に取込まれ、画像処理部5に送られる。
【0027】
画像処理部5は、1つの画素4が出力する像情報信号に、この1つの画素4と連続する複数の画素4からなる所定領域における各画素4がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する。この画像処理部5は、1つの画素4からの像情報信号に、所定領域における各画素4からの各像情報信号を加算して1つの画素4における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する。このように画像処理された結果が所定領域における1データユニットとして表面状態の判定に用いられる。
【0028】
加算処理の方法としては、例えば以下に示すような3つの方法が考えられる。
(i)ラインセンサー11の画素配列方向のみに加算処理する。
(ii)ラインセンサー11の画素配列方向に直交する方向のみに加算処理する。この際加算処理対象となるデータは、ブレード1の搬送中に撮像されることによって、見かけ上画素が空間的にラインセンサー11の画素配列方向に直交する方向に並んでいる。したがってこれらの画素による各像情報信号の加算は、実際には同一の画素による時系列情報信号を加算することを指している。
(iii)ラインセンサー11の画素配列方向に直交する方向のみに一旦加算処理した後に、それら加算像情報データに対して画素配列方向に加算処理を加える。
【0029】
このような加算処理が行われれば、1画素として記録されるデータの中に、1つの画素毎が元々持つ階調×加算処理する画素数だけの階調を持たせることが可能になる。例えば、10画素を加算した場合には、1つの画素を256×10=2560階調で扱うことが可能になり、50画素を加算した場合には、1つの画素を256(階調)×50(画素)=12800階調で扱うことが可能になる。一般的なカメラの出力における256階調の積算画素数倍の階調性が得られるのに加えて、一般的なカメラにおける画素のバラツキは、積算データ上では中心極限定理によって軽減され、1/√(加算画素数)となる。具体的には、加算処理を行わないときに3%であるものが、50画素の積算データ上では0.4%となる。このときの像情報信号の流れの状態を図1に模式的に示す。図1では、3画素分の積算を行っている。256階調のS1信号が積算されることで、より一層多階調のS2信号を出力して判定が行われる。
【0030】
データの加算方法については、一般的に階調性を高めるためには(i)の加算処理を用いるのが好ましい。ただし、ブレード1の表面に、画素配列方向に沿って細長い欠陥が存在する場合、この欠陥に対して(i)の加算処理では画素配列方向にならされて、かえって欠陥が判り難くなってしまうことがある。欠陥を特に強調するためには、(iii)の加算処理を用いるのが効果的である。一旦、細長い欠陥の長手方向に対してデータの加算演算処理を行うので、欠陥が無い部分と有る部分との積算光量差が極めて大きくなる。その後で画素配列方向に対してさらに加算演算処理を施すことによって、元々の画像データに比べて欠陥部分のコントラストが著しく増大することになる。
【0031】
また、上述した画素間の加算演算処理によって消えてしまい易い微小な欠陥に対しては、(ii)の加算処理を用いるのが好ましい。(ii)の加算処理を用いることで、微小な欠陥であっても、加算演算処理によって周辺部とのコントラストが増すとともに、隣接する画素間のデータを加算処理することまでは行わないので、微小な欠陥であっても埋もれさせない効果がある。
【0032】
以上のようにして得られる所定領域R1のデータと、この所定領域R1に隣接する、同様の加算演算処理を行った所定領域R2のデータとの間の差分が、全画像領域について計算され、元々の加算演算済みデータと共に判定部に送られる。
【0033】
判定部では、全画像領域について計算された差分のデータが系統的な傾斜を持っていれば、必要に応じて水平化処理が行われ、急激な変化及び高低差が大きな変化のみが残される。続いて、このような補正を施した画像において、予め定められた上限値と下限値に対して超過している個々の所定領域全てを抽出し、抽出された個々の領域の面積のうちで任意に定めた量を超えるものが有るか無いかを判定する。任意に定めた量を超えるものが1つ以上存在したとき、その領域がブレードの表面における欠陥部分であると判定する。このように、取得された画像データは加算演算処理及び水平化処理が施され、意図した種類の欠陥のみが効果的に強調された上で、ブレードの表面における微細な状態の判定に使用される。
【0034】
上述したように、実施形態の表面検査方法では、ラインセンサー11の1つの画素4が出力する像情報信号に、この1つの画素4と連続する複数の画素4からなる所定領域における各画素4がそれぞれ出力する各像情報信号を加算する。そして、1つの画素4からの像情報信号に、所定領域における各画素4からの各像情報信号を加算して1つの画素4における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する。このような表面検査方法を実現する表面検査装置を用いることで、コントラストが微妙な、傾斜が緩やかな凹凸を欠陥部分として含む電子写真用ブレードの表面欠陥を、効率的に検出することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示して発明の効果をより明らかにするが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0036】
傾斜が緩やかな凹凸を少なくとも含む、複数の欠陥部分を有する電子写真装置用のブレード1を測定サンプルとして用意する。今回の検査用サンプルとしては弾性ブレードを用いるが、ブレード1は図7に示すように、主として平板状の弾性体ブレード本体25と、それを固定する板金24からなっている。ブレード本体は半透明で、平板状の弾性体部の幅は10mm、長さは215mmであって、弾性体の端部に長手方向に沿って張り合わされた金属製の板金は幅6mm、全長が250mmである。凹凸の具体的な項目名称としては、「凹み」「歪み」「裏突き上げ」という分類がなされている。ブレードの検査面から見て、それぞれの欠陥は以下のような特徴を有するとされる。
「凹み」・・・・・ブレードの内部、端部にかからない位置にできた、球型の窪み。
「歪み」・・・・・「凹み」と同様の窪みのうち、ブレード端部に生じ、それゆえ端部形状が歪んでいるもの。
「裏突き上げ」・・「凹み」とは逆に、裏面から突き上げられて緩やかに上面に盛り上がった形状をしているもの。
【0037】
これら傾斜が緩やかな凹凸はいずれも、従来の自動外観検査方法では判別できなかったものである。
【0038】
なお、ここでは電子写真装置用の弾性体部を有するブレード1を挙げて本発明を説明しているが、ブレードの幅、長さ、材料の多様性に合わせて本発明の構成要素を適宜調整することで、他のブレードにおいても同様の測定が可能となることは言うまでも無い。
【0039】
これら凹凸に関しては、特に変位量である傾斜が緩やかであるので判別が非常に困難である。これらの変位量については、以下のような大きさである。
【0040】
図4(a)から図4(d)に示すように、欠陥部分D1,D2の長手方向における一端から他端までわたるA−B断面、C−D断面における長さbの最大値をbmax(幅)、長手方向に直交する深さ方向の高低差tにおける最大値をtmaxとしたとき、
tmax/bmax≦0.15
を満たす凹凸を指している。
【0041】
上述した照明部と、撮像部と、画像処理部及び判定部とを有する表面検査装置として、株式会社テクノス製のスーパー5000Kを使用した。照明光にはスリット状のマスキング・遮蔽板等の遮蔽効果を取り入れたものと入れないものとを用意した。ブレード1は搬送機構に保持されて、5cm/secの速度で搬送させられつつ表面が撮像され、ブレード全体のデータが取得される。カメラ2は、5120画素のラインセンサー11を有しており、ブレード1の表面から450mmの距離に配置され、カメラ2に装着するレンズ3としては、ペンタックス社製のFA50mm、F1.4のものを用いた。このとき、レンズ3の視野はブレード1の長手方向に対して315mm程度あり、ブレード1の弾性体の部分をほぼ3500画素で捉えることになる。したがって、ブレード1の長手方向に関して1つの画素4で表現される長さは61μmである。カメラ2のデータ取得周波数は2kHzであり、ライン光源10としては高周波電源によって駆動される蛍光灯が用いられる。蛍光灯の周波数は20kHz、リップルは0.4%である。取得した画像データには次に示す加算処理が施されて、画像判定が行われた。
(加算処理1) 上述した(i)の加算処理を用いて、加算画素数30とする。
(加算処理2) 上述した(ii)の加算処理を用いて、加算画素数50とする。
(加算処理3) 上述した(iii)の加算処理を用いて、画素配列方向に直交する方向における加算画素数20、画素配列方向における加算画素数30とする。
(加算処理4) 上述した(iii)の加算処理を用いて、画素配列方向に直交する方向における加算画素数30、画素配列方向における加算画素数60とする。
【0042】
結果を表1に示す。加算処理を施していない原画像、あるいは加算処理1〜4のうちで、検出ができた項目を「〇」で示している。検出ができない場合には「×」で示した。原画像が比較例であって、加算処理1〜4をそれぞれ施したものが実施例である。原画像では少なくとも光量レベルで表面状態の判定ができないものが、4種類の加算処理のうちで適切な加算処理を施すことで、欠陥部分を判定することが可能となった。
【0043】
【表1】

【0044】
以上の実施例からわかるように、表面検査方法及び表面検査装置を用いることで、電子写真用ブレードの表面における、コントラストが微妙な、傾斜が緩やかな凹凸を、効率的に検出することができた。
【0045】
なお、本実施形態では、電子写真装置用のブレード1として半透明な弾性ブレードを一例に挙げて説明したが、本発明は他の材質のブレードに用いられても好適であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 ブレード
2 カメラ
3 レンズ
4 画素
5 画像処理部
10 ライン光源
11 ラインセンサー
12 ブレードの搬送方向
14 水平ガイド
15 鉛直ガイド
16 回転ステージ
17 ブレード搬送機構
θ1 俯角
θ2 照射角
18 凹み不良部
19 非並行散乱光
20 平行散乱光
21 スリット
22 遮光板
23 影部
24 板金
25 ブレード本体
101 ブレード
102 カメラ
103 レンズ
104 画素
105 画像処理部
A 撮像されていく順番
B 凹み・歪みが形成される方向
C 裏突き上げが形成される方向
D1 凹み不良発生部
D2 凸状不良発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置用の平板状のブレードの表面を照明し、前記ブレードを照明に直交する方向に搬送しつつ、複数の画素が配列されたラインセンサーによって前記表面を撮像する第1ステップと、
前記ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、該1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して前記1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行うことで画像処理する第2ステップと、
前記画像処理された結果に基づいて、前記ブレードの表面状態を判定する第3ステップと、
を有する、電子写真装置用のブレードの表面検査方法。
【請求項2】
前記第2ステップでは、前記画素の配列方向の前記所定領域において前記加算処理を行う、請求項1に記載の電子写真装置用のブレードの表面検査方法。
【請求項3】
前記第2ステップでは、前記ブレードの搬送に伴って見かけ上前記画素が空間的に並んでいる、前記画素の配列方向に直交する方向の前記所定領域において前記加算処理を行う、請求項1に記載の電子写真装置用のブレードの表面検査方法。
【請求項4】
前記第2ステップでは、前記ブレードの搬送に伴って見かけ上前記画素が空間的に並んでいる、前記画素の配列方向に直交する方向の前記所定領域において前記加算処理を行った後、前記画素の配列方向の他の前記所定領域において前記加算処理を行う、請求項1に記載の電子写真装置用のブレードの表面検査方法。
【請求項5】
前記第1ステップでは、前記ブレードの前記表面に対して、前記ラインセンサーを有する撮像手段の光軸がなす俯角と、照明手段による照明光の光軸がなす照射角とが共に10°以上30°以下とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子写真装置用のブレードの表面検査方法。
【請求項6】
前記第1ステップにおいて、前記ブレードに照射する照明光が、前記照明手段の本体をスリット状のマスキング手段によって覆うか、あるいは前記ブレードの近傍において遮蔽板によって拡散が制限された上で照射されることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電子写真装置用のブレードの表面検査方法。
【請求項7】
前記第1ステップでは、前記ブレードを1cm/sec以上、20cm/sec以下の速度で搬送する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電子写真装置用のブレードの表面検査方法。
【請求項8】
電子写真装置用のブレードの表面を照明する照明手段と、
前記ブレードを前記照明手段に直交する方向に搬送する搬送手段と、
前記ブレードを搬送しつつ、複数の画素が配列されたラインセンサーによって前記表面を撮像する撮像手段と、
前記ラインセンサーの1つの画素が出力する像情報信号に、該1つの画素と連続する複数の画素からなる所定領域における各画素がそれぞれ出力する各像情報信号を加算して前記1つの画素における加算像情報信号とする加算処理を画素毎に行う画像処理手段と、
前記画像処理手段による結果に基づいて、前記ブレードの表面状態を判定する判定手段と、
を備える、電子写真装置用のブレードの表面検査装置。
【請求項9】
前記表面検査装置において、前記照明手段が、前記照明手段の本体を覆ったスリット状のマスキング手段か、あるいは前記ブレードの近傍において拡散を制限する手段を有することを特徴とする、請求項8記載の電子写真装置用のブレードの表面検査装置。
【請求項10】
前記搬送手段は、前記ブレードを1cm/sec以上、20cm/sec以下の速度で搬送する、請求項8または9に記載の電子写真装置用のブレードの表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−107074(P2011−107074A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264908(P2009−264908)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】