説明

電子制御装置

【課題】通気孔に雨水等が溜まり、通気防水膜が塞がれると、筐体内部の通気性が失われる。
【解決手段】ケース12とカバー13からなる筐体の内部に回路基板を収容する。合成樹脂製のカバー13に、筐体の外壁を厚さ方向に貫通する通気孔36を形成するとともに、この通気孔36の外側開口部36bを所定間隙41を隔てて覆う防護壁40を一体的に形成する。通気孔36の内側開口部36aに、通気性及び防水性を有する通気防水膜38を取り付ける。通気孔36に溜まった水が通気防水膜38を塞ぐことのないように、通気孔36を、車体側への取付面19に対して約45度で傾斜する傾斜壁部35に設けて、車載状態で通気孔36及び通気防水膜38を水平面に対して傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内部の防水空間に回路基板が収容された車両の電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にも記載されているように、エンジンコントロールユニットや自動変速機用コントロールユニットなどの車両に搭載される電子制御装置は、複数の部材を接合してなる筐体内部の防水空間に、電子部品を実装した回路基板が収容された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−258360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子制御装置は、車両のエンジンルーム等に搭載されるために、高い防水性が要求されるものの、筐体内部を完全な密閉空間とすると、筐体内部の圧力の増減に伴って筐体及びそのシール部分に過大な応力が発生して、耐久性や信頼性の低下を招くおそれがる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、筐体内部の防水性及び通気性を両立し、かつ、簡素な構造でありながら耐久性・信頼性に優れた新規な電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の部材を接合してなる筐体内部の防水空間に、電子部品を実装した回路基板が収容された電子制御装置において、上記筐体の外壁を厚さ方向に貫通する通気孔が形成されるとともに、上記外壁の外面に開口する通気孔の外側開口部を所定間隙を隔てて覆う防護壁が設けられ、かつ、上記外壁の内面に開口する通気孔の内側開口部に、通気性及び防水性を有する通気防水膜が取り付けられている。そして、上記筐体の車体側への取付面に対し、上記通気防水膜が所定角度で傾斜するように、上記通気孔が、上記筐体の外壁のうちで、上記取付面に対して傾斜する傾斜壁部に設けられている。
【0007】
これにより、電子制御装置の車体側への搭載姿勢にかかわらず、通気防水膜が水平面に対して傾斜することとなり、通気孔が被水した場合にも、通気防水膜が全面にわたって水面下に閉塞されることを抑制・回避し、簡素な構造でありながら、所期の通気性・呼吸性を確保して、耐久性・信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、電子制御装置における筐体内部の防水性及び通気性を両立しつつ、簡素な構造でありながら耐久性及び信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子制御装置を示す分解斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図。
【図4】車体側への取付面がほぼ鉛直方向に沿う姿勢で搭載される縦置き姿勢の電子制御装置を単体で示す側面図(A)、及びこの電子制御装置における図2と同じ位置での断面図(B)。
【図5】車体側への取付面がほぼ水平方向に沿う姿勢で搭載される横置き姿勢の電子制御装置を示す側面図、及びこの電子制御装置における図2と同じ位置での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る電子制御装置を、自動車のエンジンコントロールユニットに適用した一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。先ず、図1を参照して、電子制御装置10の基本構成について説明する。なお、ここでの説明においては、便宜上、図1の上下方向、つまり回路基板11の厚さ方向を装置10自体の上下方向として説明することがあるが、これは、車載状態での鉛直方向に必ずしも対応するものではなく、例えば車両搭載状態が図4の縦置き姿勢の場合、装置10の上下方向が水平方向48に沿うものとなる。
【0011】
この電子制御装置10は、車体側に取り付けられる略板状のケース12と略箱状のカバー13とを液密に接合してなる筐体と、この筐体内部の防水空間に収容される電子部品14を実装した回路基板11と、により大略構成されており、図示していないが、エンジンルーム等に搭載され、車体側への取付面19となるケース12のブラケット23の底面において、車体側に取り付けられるものである。なお、車体側への取付面19は、この実施形態ではケース12の底面と平行に構成されているが、車体側への取付部(ブラケット23)の形状等によってはケース12の底面に対して傾斜する場合もある。
【0012】
各構成要素について具体的に説明すると、回路基板11は、その表裏面に所定の電子部品14が実装された、いわゆるプリント配線基板であり、例えばガラスエポキシ樹脂等からなる板材の表裏面あるいはその内部に配線回路パターンが形成され、この配線回路パターンに電子部品14が半田等により電気的に接続されている。ここで、電子部品14としては、例えばコンデンサやコイル、トランジスタやIC等が用いられる。なお、図1では、便宜上、比較的発熱性の高い電子部品14(例えばMOS−FETやIC等)のみを図示している。
【0013】
また、回路基板11の一側には、外部のコネクタとそれぞれ接続される2つの第1,第2接続口16,17を有するコネクタ15が取り付けられている。このコネクタ15は、その接続先に応じて2つに分割された各接続口16,17が取付基部18を介して一体化されたものであって、この取付基部18を介して回路基板11に複数のビス等により固定されている。このコネクタ15は、取付基部18によって連結された一連の接続口16,17が、ケース12とカバー13との間に形成される空間である窓部21を介して外部へと臨むようになっていて、ここにおいて図外のコネクタと接続される。
【0014】
コネクタ15には、基板上の配線回路パターンに電気的に接続された複数の雄型端子16a,17aが設けられており、これらの雄型端子16a,17aが図外のコネクタに収容される複数の雌型端子と接続されることで、当該図外のコネクタ(雌型端子)に接続されるセンサー類やポンプ等の所定の機器と電気的に接続されることとなる。
【0015】
上記のケース12は、鉄やアルミニウム等の放熱性に優れた金属材料によって略板状、より詳しくは周縁がわずかに立ち上がる浅い箱状に一体形成されたものである。具体的には、ほぼ矩形状の底壁12aの外周縁(各側辺)に側壁12bが立設され、全体が上方へ開口するように構成されている。
【0016】
また、ケース12の底壁12aの内側面には、回路基板11の取付固定に供する基板固定部22が立設されている。基板固定部22は、その上端部に、回路基板11を支持する平坦状の支持面22aが構成されていて、これら各支持面22aには、回路基板11の固定に供する図外のビスが螺合する雌ねじ穴22bが形成されている。ビスが各雌ねじ穴22bに螺着されることによって、回路基板11が各基板固定部22に支持された状態でケース12に固定されることとなる。
【0017】
また、ケース12における側壁12bの外側部には、電子制御装置10の車体(図示省略)への取付に供する一対のブラケット23が一体に設けられている。なお、図1では手前側のブラケット23のみを図示している。ブラケット23には、上下方向に貫通する貫通孔23a、あるいは側方に開口する切欠溝が設けられていて、これら貫通孔23aや切欠溝を挿通するボルト等によって、車体側への取付が行われる。
【0018】
上記のカバー13は、金属材料に比べて軽量かつ低コストな所定の合成樹脂材料によって略箱状に一体成形されたものであり、回路基板11及びコネクタ15の上方を覆う上壁部31と、上記の窓部21を除く上壁部31の周縁の三方を囲う側壁32と、を有している。このカバー13は、四隅に設けられた係止爪部24が、ケース12の四隅に設けられた突起部25に弾性変形を伴って引っ掛かるように嵌合するとともに、窓部21の周縁の二箇所に設けられたコネクタ用の係止爪部26が、コネクタ15側に設けられた突起部(図示省略)に弾性変形を伴って引っ掛かるように嵌合することで、ケース12及びコネクタ15を含む回路基板11側に堅牢に組み付けらる、いわゆるスナップフィット式の固定構造となっている。このように本実施形態では、筐体の固定構造として、合成樹脂製のカバー13の弾性変形を利用したスナップフィット式の簡素な固定構造を採用しているが、これに限らず、ビスやボルト等を用いた他の固定構造を用いることもできる。
【0019】
ケース12の上側の周縁部とカバー13の下側の周縁部との接合部分、更にはコネクタ15の外周部と窓部21の内周縁部との接合部分は、それぞれ、防水性を確保するために、シール剤を介して液密に接合されている。詳しくは図示していないが、これらの接合部分には、その一方にシール溝20が形成されるとともに、他方に突条が設けられ、この突条がシール溝20に隙間をもって入り込むことで、シール溝20と突条との隙間に充填されるシール剤の長さ、いわゆるシール長を十分に確保して、所期のシール性が得られるように構成されている。ここで、シール剤としては、流動性を有するシール剤であれば特に具体的な構成は限定されるものではなく、例えばエポキシ系やシリコーン系、アクリル系など、電子制御装置10の仕様や要求に応じて適宜に選択することができる。
【0020】
上述したように、この装置10においては、回路基板11の一端に、側方へ開口するコネクタ15が取り付けられた構造となっている。この関係で、カバー13は、基板厚さ方向の寸法(高さ)が異なる回路基板11とコネクタ15のそれぞれに応じた段付形状をなしている。具体的には、回路基板11及びコネクタ15を挟んでケース12と対向するカバーの上壁部31には、ケース12の取付面19に平行な上段部33と下段部34とが設けられている。コネクタ15の上方を覆う上段部33は、回路基板11の上方を覆う下段部34に対して、基板厚さ方向の寸法が大きく設定されている。そして、このように高さの異なる上段部33と下段部34とを滑らかに繋ぐ傾斜壁部35が設けられている。この傾斜壁部35は、ケース12の取付面19に対して所定の傾斜角度、具体的にはほぼ45度の傾斜角度で平坦に傾斜しており、従って、上段部33や下段部34に対しても同じ傾斜角度で傾斜している。
【0021】
図2及び図3に示すように、筐体の外壁の一部をなす傾斜壁部35には、厚さ方向に貫通する通気孔36が貫通形成されている。この通気孔36は、孔の形成に伴う剛性・強度の低下を補うように、傾斜壁部35の一般部よりも板厚方向厚さが厚肉化された厚肉部37を貫通しており、所定深さR1の断面円形に形成されている。
【0022】
筐体内部の防水空間に臨んだ通気孔36の内側開口部36aには、防水性及び通気性の双方を併せ持つゴアテックス(登録商標)などの薄膜状の通気防水膜38が取り付けられている。この通気防水膜38は、通気孔36の内側開口部36aの開口形状に応じた薄肉な円形シート状をなし、通気孔36の内側開口部36aを完全に閉塞するように、この通気孔36よりも大きな面積・寸法のものが用いられている。この通気防水膜38は、その外周縁部で、通気孔36の周縁に位置する厚肉部37の内面に対して、溶着等により液密に接合されている。また、通気防水膜38を保護するように、厚肉部37の内面側には、通気防水膜38の周囲を囲うようにリブ39が立設されている。
【0023】
また、洗車時等に高温・高圧の水が通気防水膜38へ直接吹き付けられることを防止するように、通気防水膜38の保護の目的で、通気孔36の外側開口部36bの上方を覆う防護壁40が設けられている。この防護壁40は、通気孔36への通気が可能なように、所定の間隙41を隔てて通気孔36の外側開口部36bの周囲を覆うように設けられている。詳しくは、防護壁40は、傾斜壁部35の外面と所定の間隙41を隔てて平行に延在する略矩形の板状をなすルーフ部42と、通気孔36の周囲の傾斜壁部45の外面より立設して、ルーフ部42の周縁部と傾斜壁部35の外面とを繋ぐ側壁部43と、により構成されており、合成樹脂製のカバー13の成形時に一体的に形成されるものである。ルーフ部42は、上記の洗車水等から通気防水膜38を確実に保護するように、この通気防水膜38が取り付けられる通気孔36よりも大きな面積・寸法に設定されている。
【0024】
図3にも示すように、型成形時の型抜き性を考慮しつつ、通気孔36への通気性・排水性を確保するように、ルーフ部42の四方の側部のうち、少なくも一箇所では側壁部が省略されており、代わりに、ルーフ部42と傾斜壁部35との間隙41に連通する開口部44が形成されている。また、この開口部44と反対側に位置するルーフ部42の側部には、帯状のスリット45が形成されている。このスリット45は、ルーフ部42を板厚方向に貫通するとともに、隣接する側壁部43に沿って延在しており、図1及び図3に示すように、一方の端部45aで側壁部43を貫通して外部へ開放している。また、このスリット45の下方に位置する傾斜壁部35にも、このスリット45に対応して溝部46が凹設されている。つまり、これらのスリット45及び溝部46によって、ルーフ部42から傾斜壁部35にわたってチャンネル形状の一連の溝が形成された構造となっている。
【0025】
図3にも示すように、これらの開口部44,スリット45,溝部46は、通気孔36に連通する上記の間隙41とともに、通気孔36への通気を可能とする一連の通気通路を構成するとともに、後述するように、通気孔36に溜まった雨水等を排水する排水通路としても機能するものである。
【0026】
次に、このような本実施形態の電子制御装置10における特徴的な構成及び作用効果について説明する。
【0027】
ケース12,カバー13等の複数の部材を接合してなる筐体は、その内部の防水性を確保するために部材間の接合部分がシール剤により液密にシールされている。そのため、筐体内部が密閉空間となり易く、内部回路の動作に伴う内部温度の上昇や内部回路の停止に伴う内部温度の低下等により、筐体内部の圧力が大きく変動し易く、これによってシール部分等に応力が集中し、信頼性・耐久性を損ねるおそれがある。
【0028】
これに対して本実施形態では、筐体の外壁を構成する傾斜壁部35に通気孔36を貫通形成するとともに、この通気孔36に、防水性及び通気性の双方の機能を兼ね備えるフィルタとしての通気防水膜38を取り付けている。従って、筐体内部の防水性を確保しつつ、筐体内部と外部との通気性を確保することが可能となり、筐体内の防水性を損ねることなく、筐体内部の圧力変動を抑制・緩和することができる。
【0029】
また、このような電子制御装置10はエンジンルーム内等に搭載されることから、洗車時等に高温・高圧の水が通気防水膜38に直撃すると、この通気防水膜38が外れたり損傷を受けるおそれがある。そこで、このような洗車水等から通気防水膜38を保護するように、通気防水膜38が取り付けられる通気孔36の外側開口部36bを覆う防護壁40を設けている。この防護壁40は、合成樹脂製のカバー13の成形時に一体的に形成されるもので、これによって、部品点数の削減や軽量化・低コスト化を図ることができる。
【0030】
但し、このように防護壁40をカバー13に一体形成する構造では、防護壁40に囲われている通気孔36の外側開口部36bに通気防水膜38を後から取り付けることは実質的に不可能であり、上記実施形態のように、筐体内部に臨んだ通気孔36の内側開口部36aに通気防水膜38を取り付けざるを得ない。このように通気孔36の内側開口部36aに通気防水膜38を取り付ける構造では、所定深さR1の通気孔36が通気防水膜38よりも外部に表出するレイアウトとなるために、雨水等に被水した場合に、この通気孔36内に雨水等が溜まり易い。通気孔36内に溜まった雨水等により通気防水膜38が完全に塞がれてしまうと、所期の通気性・呼吸性が失われてしまう。このように通気性・呼吸性が失われると、筐体内部に圧力変動が生じて、シール部分等に過大な応力が発生し、信頼性・耐久性を損ねるおそれがある。
【0031】
ここで、このような電子制御装置10の一般的な車載搭載姿勢としては、多くの場合、図4に示すように取付面19をほぼ鉛直方向49とする縦置き姿勢と、図5に示すように取付面19をほぼ水平方向48とする横置き姿勢と、のいずれかである。本発明者等はこの点に着目し、筐体の平坦な車体側への取付面19に対し、通気防水膜38が所定角度で傾斜するように、通気孔36を、筐体の外壁のうちで、車体側への取付面19に対して傾斜する傾斜壁部35に設けている。
【0032】
これによって、図4及び図5に示すように、縦置き姿勢及び横置き姿勢のいずれの搭載姿勢においても、通気防水膜38が水平面(図4、図5の左右方向)に対して傾斜する姿勢となるために、仮に通気孔36に雨水等が溜まっても、ある程度水が溜まった時点で、水面47の一部が傾斜する通気孔36の上端に達し、ルーフ部42との間隙41を介して外部へ排水されることとなり、それ以上、雨水等が溜まることはない。従って、雨水等により通気防水膜38が完全に閉塞されることはなく、簡素な構造でありながら、通気防水膜38による所期の通気性・呼吸性を確保して、信頼性・耐久性を向上することができる。
【0033】
特に本実施形態においては、あらゆる搭載姿勢に対応するために、取付面19に対する通気防水膜38の傾斜角度が、45度、あるいは45度を中心とする所定の範囲、具体的には30〜60度程度の傾斜角度に設定されている。これによって、縦置き姿勢及び横置き姿勢のいずれの搭載姿勢においても、水平面に対して45度程度の十分な傾斜角度を確保することができ、搭載姿勢にかかわらず通気防水膜38による通気性・呼吸性を確保することが可能となる。
【0034】
更に、通気防水膜38が閉塞される事態をより確実に回避するように、通気孔36等の寸法や形状が設定されている。具体的には、通気孔36の直径R2(径方向寸法)が、通気孔36の深さR1(軸方向寸法)に比して、十分に大きく設定されており、より具体的には、少なくとも2倍以上に設定されている。
【0035】
防護壁40は、通気性に加えて、通気孔36に溜まる雨水等の排水性をも考慮した形状に設定されている。具体的には、図3に示すように、防護壁40の一側に、側壁部のない開口部44が設けられるとともに、この開口部44の反対側には、一端部45aで側方へ開放するスリット45と溝部46とが設けられている。従って、車両への搭載姿勢にかかわらず、通気孔36の溜まった雨水等を、間隙41から開口部44あるいはスリット45及び溝部46を経由して速やかに外部へ排出することが可能となる。
【0036】
上記の通気孔36や防護壁40を、仮にカバー13の上段部33や側壁部32に設けた場合、この防護壁が装置10から上方あるいは側方へ部分的に張り出す形となり、装置全体の高さ方向寸法や幅方向寸法の増加を招いたり、エンジンルーム内の他の部品と干渉するなどの車両搭載性の低下を招くおそれがある。これに対して、本実施形態では防護壁40を傾斜壁部35に設けているために、図1にも示すように、防護壁40が、装置全体の寸法に影響のない傾斜壁部35の斜め前方のスペースに膨出する形となる。このため、防護壁40を設けたことに伴う装置の大型化等を招くことがなく、車両搭載性にも優れている。
【0037】
本実施形態のように、所定厚さを有するコネクタ15が側方に表出する形態の電子制御装置10にあっては、コネクタ15と回路基板11との厚さの相違に応じて、図1にも示すようにカバー13が段付形状となる。つまり、カバー13の上壁部31には、高さの異なる上段部33と下段部34とが取付面19に平行に設けられ、詳しくは、厚肉なコネクタ15を覆う上段部33が、薄肉な回路基板11を覆う下段部34に比して、基板厚さ方向の寸法が大きく設定されている。従って、高さの異なる上段部33と下段部34とを繋ぐ部分を傾斜壁部35として、この傾斜壁部35に通気孔36を形成すればよく、敢えて傾斜壁部35を別途設ける必要がないために、本発明の適用が極めて容易である。しかも、傾斜壁部35を上段部33や下段部34に対して傾斜させているために、例えば上段部33と下段部34とを垂直な壁部により繋ぐ構造に比して、上段部33及び下段部34と傾斜壁部35との接続部分(エッジ部分)の傾斜・湾曲角度が緩やかなものとなり、この部分への応力集中を緩和することができる。
【0038】
以上のように本発明を具体的な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形・変更を含むものである。例えば、筐体の一部を構成するケース12として、上記実施形態では金属製のものを用いているが、カバー13と同様に合成樹脂製のものとしても良い。また、各部の形状や寸法についても上記実施形態のものに限定されるものではなく、例えば搭載車両の仕様や要求に応じて、通気孔36を断面長円形状あるいは断面楕円形状としても良い。更に、排水性の向上を図るために、通気孔36の外側開口部36bに、テーパ面や湾曲面を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
10…電子制御装置
11…回路基板
12…ケース
13…カバー
15…コネクタ
19…取付面
31…上壁部
33…上段部
34…下段部
35…傾斜壁部
36…通気孔
36a…内側開口部
36b…外側開口部
38…通気防水膜
40…防護壁
41…間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を接合してなる筐体内部の防水空間に、電子部品を実装した回路基板が収容された電子制御装置において、
上記筐体の外壁を厚さ方向に貫通する通気孔が形成されるとともに、
上記外壁の外面に開口する通気孔の外側開口部を所定間隙を隔てて覆う防護壁が設けられ、
かつ、上記外壁の内面に開口する通気孔の内側開口部に、通気性及び防水性を有する通気防水膜が取り付けられ、
上記筐体の車体側への取付面に対し、上記通気防水膜が所定角度で傾斜するように、上記通気孔が、上記筐体の外壁のうちで、上記取付面に対して傾斜する傾斜壁部に設けられていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
上記複数の部材が、上記取付面が形成されたケースと、このケースに接合される合成樹脂製のカバーと、を有し、
このカバーに、上記通気孔が貫通形成されるとともに、上記防護壁が一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
上記回路基板の一側には、所定厚さを有するコネクタが設けられ、
上記カバーには、上記回路基板及びコネクタを挟んでケースと対向する上壁部に、上記コネクタを覆う上段部と、上記回路基板を覆う下段部と、が設けられ、
高さの異なる上記上段部と下段部とを繋ぐ傾斜壁部に、上記通気孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
上記傾斜壁部は、上記取付面に対して30〜60度の傾斜角度に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項5】
上記通気孔の直径が、上記通気孔の深さの2倍以上に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−69736(P2013−69736A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205476(P2011−205476)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】